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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-193690(P2016-193690A)
(43)【公開日】2016年11月17日
(54)【発明の名称】自動操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20161021BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20161021BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20161021BHJP
【FI】
   B62D6/00
   B62D113:00
   B62D137:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-75360(P2015-75360)
(22)【出願日】2015年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小野田 祐子
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232CC46
3D232DA02
3D232DA08
3D232DA22
3D232DA23
3D232DA63
3D232DA87
3D232DC08
3D232DC10
3D232DC33
3D232DC34
3D232DC40
3D232DD01
3D232DD17
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC23
3D232EC34
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】操舵機構における操舵に滑らかな動きを与えること。
【解決手段】自動操舵装置は、所定周期毎に入力される下位指令状態量に基づいて、操舵機構の舵角制御を行うEPS用マイコンと、下位指令状態量の今回値の入力後、前回値と今回値との間の状態量をEPS用マイコンが補間するための目標状態量を所定周期よりも短い周期で演算する状態量補間部とを備えている。そして、状態量補間部は、今回値の入力があったとき、該入力時の実モータ回転速度ωrと、前回値に対する今回値の変化率Δθr*との差分の絶対値について、所定閾値α未満のとき補間パターンとして直線パターンを選択する一方、所定閾値α以上のとき補間パターンとして曲線パターンを選択する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定周期毎に入力される指令状態量に基づいて、操舵機構の舵角制御を行う舵角制御部と、
前記指令状態量の前回値と今回値との間の状態量を前記舵角制御部が補間するための目標状態量を前記所定周期よりも短い周期で演算する状態量補間部と、を備え、
前記状態量補間部は、前記今回値の入力があったとき、該入力時の操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量と、前記前回値に対する前記今回値の変化率とに基づいて、適切な補間方法を選択可能に構成される自動操舵装置。
【請求項2】
前記状態量補間部が選択可能な補間方法には、前記前回値と前記今回値との間の状態量を直線的に補間する方法と、前記前回値と前記今回値との間の状態量を曲線的に補間する方法とを含む請求項1に記載の自動操舵装置。
【請求項3】
上記状態量補間部は、前記曲線的に補間する方法を選択するとき、前記今回値の入力後の前記操舵機構における操舵の舵角速度の変化を一定にする関数を用いる請求項2に記載の自動操舵装置。
【請求項4】
前記状態量補間部は、前記曲線的に補間する方法を選択するとき、前記操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量と、前記前回値に対する前記今回値の変化率とに基づいて、異なる関数を選択しうる請求項2又は請求項3に記載の自動操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者によるステアリングホイールの操作を必要なしに自動的に操舵機構を操舵することで、車両の自動運転を可能にする自動操舵装置がある。こうした自動操舵装置では、上位ECUからの舵角指示値と、操舵機構に関連して設けられる舵角センサの出力とに基づき、操舵機構のモータが制御されることで該操作機構の舵角制御が行われている。
【0003】
ただし、操舵機構の舵角制御では、上位ECUによる舵角指示値の指示が所定周期毎に行われることから、操舵機構の舵角がステップ状に変化する。こうした操舵機構の舵角の変化を滑らかにすべく舵角指示値を補間するようにしたものもある(例えば、特許文献1)。特許文献1では、舵角指示値の変化分を所定周期よりも短い周期でさらに分割することで、操舵機構の舵角がより細かいステップ状に変化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−272530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した操舵機構の舵角制御では、舵角指示値の変化分に関係なく新たな指示によって実際のモータの回転速度を急変させている場合もある。例えば、前回の舵角指示値におけるさらに前の舵角指示値の変化分が大きい且つ該前回の舵角指示値と今回の舵角指示値の変化分が小さいとき、実際のモータの回転速度が急変しうる。特に、舵角指示値の増減(正負)が変化するときには、実際のモータの回転速度の急変が顕著である。このように、操舵指示値の新たな指示時において、操舵機構における操舵に滑らかな動きを与える点で改良の余地が残されている。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、操舵機構における操舵に滑らかな動きを与えることができる自動操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する自動操舵装置は、所定周期毎に入力される指令状態量に基づいて、操舵機構の舵角制御を行う舵角制御部と、指令状態量の前回値と今回値との間の状態量を舵角制御部が補間するための目標状態量を所定周期よりも短い周期で演算する状態量補間部とを備える。そして、状態量補間部は、今回値の入力があったとき、該入力時の操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量と、前回値に対する今回値の変化率とに基づいて、適切な補間方法を選択可能に構成される。
【0008】
上記構成によれば、指令状態量の今回値の入力時の操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量と、指令状態量の前回値に対する今回値とからは、今回値の入力の前後の舵角速度の変化量が得られる。これにより、今回値の入力があったとき、該入力の後の補間方法を選択することで、該入力の前後の操舵機構の操舵の舵角速度の変化量の変化具合の調整が可能になる。すなわちこの場合、操舵機構における操舵に与える動きの自由度を高めることができる。
【0009】
こうした構成において、今回値の入力があったとき、該入力の前の操舵機構の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構の操舵の舵角速度の変化が小さくなるような補間方法を選択可能にすることができる。すなわちこの場合、今回値の入力があったとき、操舵機構の操舵の舵角速度の急変が抑えられることとなり、操舵機構における操舵に滑らかな動きを与えることができる。
【0010】
こうした状態量補間部が選択可能な補間方法としては、具体的に、指令状態量の前回値と今回値との間の状態量を直線的に補間する方法と、指令状態量の前回値と今回値との間の状態量を曲線的に補間する方法とを含むことが好ましい。
【0011】
上述したように、今回値の入力の前の操舵機構の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構の操舵の舵角速度の変化が小さくなるように曲線的に補間する方法を選択するとき、該入力の直後の操舵機構の操舵の舵角速度に比べて、前回値に対する今回値の変化率が大きいと、前回値と今回値との間にて操舵機構の操舵の舵角速度を急変させてしまいかねない。
【0012】
そこで、上記状態量補間部は、曲線的に補間する方法を選択するとき、指令状態量の今回値の入力後の操舵機構における操舵の舵角速度の変化を一定にする関数を用いることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、指令状態量の今回値の入力の前の操舵機構の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構の操舵の舵角速度の変化が小さくなるように曲線的に補間する方法が選択されるときであっても、前回値と今回値との間における操舵機構の操舵の舵角速度の急変を抑えることができる。したがって、操舵機構における操舵に滑らかな動きを好適に与えることができる。
【0014】
また、上記自動操舵装置において、状態量補間部は、曲線的に補間する方法を選択するとき、操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量と、指令状態量の前回値に対する今回値の変化率とに基づいて、異なる関数を選択しうることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、指令状態量の今回値の入力の前後の舵角速度の変化量に基づいて、曲線的に補間する方法を選択するとき、該舵角速度の変化が増加及び減少するいずれの場合であっても適切な補間を行うことができる。すなわちこの場合、今回値の入力の前の操舵機構の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構の操舵の舵角速度が変化するなかで、該舵角速度の変化が増加又は減少するように変化するいずれであっても、操舵機構における操舵に滑らかな動きを好適に与えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、操舵機構における操舵に滑らかな動きを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自動操舵装置の概略を示す図。
図2】自動操舵装置における上位ECU及びEPS−ECUの制御構成を示すブロック図。
図3】EPSマイコンにおける状態量補間部の処理手順を示すフローチャート。
図4】(a),(b)は舵角速度の変化の態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という)を備えた自動操舵装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、車両には、運転者のステアリング操作を補助する電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という)を有する自動操舵装置1が搭載される。EPSは、運転者のステアリング操作に基づいて転舵輪を転舵させる操舵機構7、運転者のステアリング操作を補助する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ20、及びEPSアクチュエータ20の作動を制御するEPS−ECU28を備える。
【0019】
操舵機構7は、運転者により操作されるステアリングホイール2、及びステアリングホイール2と一体回転するステアリングシャフト3を備える。ステアリングシャフト3は、ステアリングホイール2の中心に連結されたコラムシャフト8、コラムシャフト8の下端部に連結されたインターミディエイトシャフト9、及びインターミディエイトシャフト9の下端部に連結されたピニオンシャフト10からなる。ピニオンシャフト10の下端部は、ピニオンシャフト10に交わる方向へ延びるラック軸5(正確にはラック歯が形成された部分4)に噛合される。したがって、ステアリングシャフト3の回転運動は、ピニオンシャフト10及びラック軸5からなるラックアンドピニオン機構6によりラック軸5の往復直線運動に変換される。こうした往復直線運動が、ラック軸5の両端にそれぞれ連結されたタイロッド11を介して左右の転舵輪12,12にそれぞれ伝達されることにより、これら転舵輪12,12の転舵角が変更される。
【0020】
EPSアクチュエータ20は、コラム型のEPSアクチュエータであり、アシスト力の発生源であるモータ21を備える。モータ21としては、ブラシレスモータなどが採用される。モータ21は、減速機構22を介してコラムシャフト8に連結される。減速機構22は、モータ21の回転を減速し、当該減速した回転力をコラムシャフト8に伝達する。すなわち、ステアリングシャフト3にモータ21のトルクがアシスト力(操舵補助力)として付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0021】
また、本実施形態の自動操舵装置1は、所定周期毎に生成する指令状態量としての上位指令状態量θs*(本実施形態では、舵角指示値)に基づいて操舵機構7のモータ21の状態量制御、すなわちモータ回転角制御を行うことで操舵機構7におけるコラムシャフト8(転舵輪12,12)の舵角制御を行う。自動操舵装置1は、上位指令状態量θs*を車内ネットワーク90(CAN)を介して、EPS−ECU28に所定周期毎に送信する上位コントローラである上位ECU29を備える。
【0022】
EPS−ECU28及び上位ECU29は、車両に設けられる各種のセンサの検出結果を運転者の要求あるいは走行状態を示す情報として取得し、これら取得される各種の情報に応じて上記モータ回転角制御を行う。すなわち、EPS−ECU28には、回転角センサ23が接続される。また、上位ECU29には、カーナビ等のGPS24、及び車速センサ25が接続される。
【0023】
回転角センサ23は、モータ21に設けられてモータ21の実モータ回転角θrを検出する。GPS24は、車両の上位位置情報θconを検出する。車速センサ25は、車速(車両の走行速度)SPを検出する。
【0024】
次に、自動操舵装置1における電気的構成について、詳しく説明する。
図2に示すように、上位ECU29は、GPS24で検出される上位位置情報θcon、車速センサ25で検出される車速SPをそれぞれ入力とする。上位ECU29は、マイクロプロセッシングユニット等からなる上位用マイコン30を備える。上位用マイコン30は、車速SP及び上位位置情報θconに基づき最適な上位指令状態量θs*を生成する上位指令状態量生成部31を有する。そして、上位用マイコン30における上位指令状態量生成部31は、上記各種入力に基づき上位指令状態量θs*を車内ネットワーク90(CAN)を介して、EPS−ECU28に所定周期毎に送信する。
【0025】
また、図2に示すように、EPS−ECU28は、上位ECU29よりCAN90を介して所定周期毎に送信されてくる、上位指令状態量θs*を入力する。そして、EPS−ECU28は、モータ21を回転させるモータ回転制御指令を生成し、モータ21に出力する。
【0026】
次に、EPS−ECU28の各機能について、詳しく説明する。
EPS−ECU28は、マイクロプロセッシングユニット等からなる舵角制御部としてのEPS用マイコン40と、モータ21の実モータ電流Irを検出する電流センサ50と、PWM信号に基づきモータ21へ駆動電力を供給するように駆動するインバータ回路等の駆動回路部44とを有する。
【0027】
EPS用マイコン40は、モータ制御信号を生成するための目標電流値を演算する、状態量補間部41及びPID制御部42を有する。また、EPS用マイコン40は、状態量補間部41及びPID制御部42を通じて演算された目標電流値に基づきモータ制御信号を生成してPWM信号として出力するPWM制御部43とを有する。
【0028】
また、EPS用マイコン40は、所定周期で入力する上位指令状態量θs*を、所定の変換係数を用いて実モータ回転角θrに関わる情報に変換する変換器45を有する。変換器45は、上位指令状態量θs*を減速比等を乗算して指令状態量としての下位指令状態量θr*(本実施形態では、モータ回転角指示値)に変換する。
【0029】
ここで、状態量補間部41、PID制御部42、PWM制御部43、及び駆動回路部44の機能について、さらに詳しく説明する。
状態量補間部41は、変換器45で変換される下位指令状態量θr*と、その時に回転角センサ23で検出される実モータ回転角θrを微分器46で微分して得られる実モータ回転速度ωrとを入力する。実モータ回転速度ωrは、減速機構22の減速比等を用いて、操舵機構7における操舵(コラムシャフト8)の舵角速度に換算可能な状態量である。
【0030】
そして、状態量補間部41は、下位指令状態量の今回値(以下、「下位指令状態量θr*」という)を入力すると、その下位指令状態量の前回値(以下、「下位指令状態量θr0*」という)に対する下位指令状態量θr*の変化率、及び実モータ回転速度ωrに基づいて適切な補間パターン(補間方法)を選択する。続いて、状態量補間部41は、下位指令状態量θr0*(前回値)と下位指令状態量θr*(今回値)との下位指令状態量間(モータ回転角指示値間)を補間するための目標状態量θp*を生成する。
【0031】
状態量補間部41は、上位ECU29が上位指令状態量θs*を送信する所定周期よりも短い周期で目標状態量θp*を生成する。すなわち、上位ECU29が上位指令状態量θs*を送信する所定周期を周期T(例えば、50msec)とし、該周期TをN分割(例えば、20分割)する場合、周期T/N(この場合には、2.5msec)毎に目標状態量θp*が状態量補間部41によって生成(更新)される。
【0032】
具体的に、状態量補間部41は、選択した補間パターン毎の演算によって目標状態量θp*を生成し、該目標状態量θp*を減算器47に周期T/N毎に出力する。本実施形態では、こうした補間パターンとして、下位指令状態量θr0*と下位指令状態量θr*との下位指令状態量間を直線的に補間する直線パターンでの補間パターンと、該下位指令状態量間を曲線的に補間する曲線パターンでの補間パターンとが用意されており、それぞれに予め定めた関数に当て嵌めてN個の目標状態量θp*が演算される。
【0033】
例えば、図3に示すように、直線パターンでの補間パターンにおいて目標状態量θp*は、下位指令状態量θr0*と下位指令状態量θr*との下位指令状態量間が直線によって結ばれるように(モータ回転角指示値間をN等分した平均値毎に変化するように)演算される。また、曲線パターンでの補間パターンにおいて目標状態量θp*は、下位指令状態量θr0*と下位指令状態量θr*との下位指令状態量間が放物線によって結ばれるように(モータ回転角指示値間を二次関数的に変化するように)演算される。こうした補間パターンの詳細については、後述する。
【0034】
PID制御部42は、状態量補間部41が出力する目標状態量θp*と、その時に回転角センサ23で検出される実モータ回転角θrとを減算器47が減算して得られる下位指令状態量偏差Δθpを入力する。またさらに、PID制御部42は、下位指令状態量偏差Δθpを入力すると、比例制御+積分制御+微分制御(PID制御)を行い、目標電流値Ir*を生成し、該目標電流値Ir*を減算器48に対して出力する。
【0035】
PWM制御部43は、PID制御部42が出力する目標電流値Ir*と、その時に電流センサ50で検出される実モータ電流Irとを減算器48が減算して得られる電流偏差ΔIrを入力する。またさらに、PWM制御部43は、電流偏差ΔIrを入力すると、駆動回路部44を駆動させるためのモータ制御信号Srを生成し、該モータ制御信号Srを駆動回路部44に対して出力する。
【0036】
次に、補間パターンの選択において、EPS−ECU28におけるEPS用マイコン40の処理手順を説明する。
図3に示すように、EPS用マイコン40における状態量補間部41は、下位指令状態量θr*の入力があったとき、該入力時の実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する該下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分(ωr−Δθr*)の絶対値が所定閾値α未満であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0037】
変化率Δθr*は、下位指令状態量θr*と下位指令状態量θr0*との差分を、上位ECU29が上位指令状態量θs*を送信する周期Tで除算して得られるものであって、下位指令状態量θr0*と下位指令状態量θr*との下位指令状態量間の勾配を表す。すなわち、変化率Δθr*は、下位指令状態量θr*に向けたモータ回転角制御において、生じさせることとなるモータ回転速度を表すものであって、操舵機構7における操舵の舵角速度に換算することができる。なお、実モータ回転速度ωrは、下位指令状態量θr*に向けたモータ回転角制御の直前までにおいて、生じさせているモータ回転速度を表すものであって、操舵機構7における操舵の舵角速度に換算することができる。
【0038】
そして、実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分の絶対値は、該下位指令状態量θr*の入力の前後のモータ回転速度の変化量を表すものであって、操舵機構7における操舵の舵角速度の変化量に換算することができる。所定閾値αは、下位指令状態量θr*の入力の前後のモータ回転速度の変化量について、該モータ回転速度(操舵機構7の操舵の舵角速度)が急変するとして経験的に導かれる値に設定される。
【0039】
実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分の絶対値が所定閾値α未満の場合には、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量が小さく、該舵角速度が急変しないことが判定される。また、実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分の絶対値が所定閾値αよりも大きい場合には、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量が大きく、該舵角速度が急変することが判定される。
【0040】
ステップS101にて、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分の絶対値が所定閾値α未満であるとき(ステップS101:YES)、状態量補間部41は、下位指令状態量間の補間パターンとして直線パターンを選択する(ステップS102)。
【0041】
続いて、状態量補間部41は、下位指令状態量θr0*を始点(原点)として、周期Tに対して下位指令状態量θr*に向かう直線に沿って周期T/N毎の目標状態量θp*を演算して生成する(ステップS103)。ステップS103にて、状態量補間部41は、生成した目標状態量θp*を該周期T/N毎に順次出力する。
【0042】
一方、ステップS101にて、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分の絶対値が所定閾値α以上であるとき(ステップS101:NO)、状態量補間部41は、下位指令状態量間の補間パターンとして曲線パターンを選択する(ステップS104)。
【0043】
続いて、状態量補間部41は、ステップS101で用いた実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が大きい(Δθr*>ωr)か否かを判定する(ステップS105)。
実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が大きい(Δθr*>ωr)場合には、下位指令状態量θr*の入力の前後のモータ回転速度の変化量について、該モータ回転速度(操舵機構7の操舵の舵角速度)が急変するなかで、大きく増加(正)するように変化することが判定される。また、実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が大きくない(Δθr*≦ωr)場合には、下位指令状態量θr*の入力の前後のモータ回転速度の変化量について、該モータ回転速度(操舵機構7の操舵の舵角速度)が急変するなかで、大きく減少(負)するように変化することが判定される。
【0044】
ステップS105にて、実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が大きい(Δθr*>ωr)とき(ステップS105:YES)、状態量補間部41は、下位指令状態量間の補間パターンとして曲線パターンのなかでも、下に凸の放物線に沿った関数(正の二次関数)による曲線パターンを選択する(ステップS106)。このとき本実施形態では、現状の実モータ回転速度ωrで進む直線(一次関数)に下に凸の放物線に沿った関数(正の二次関数)を足し合わせることで、下位指令状態量θr*の入力の後の目標状態量θp*の増加の変化を緩やかにした曲線パターンによる補間がなされることとなる。
【0045】
そして、ステップS106にて、状態量補間部41は、下位指令状態量θr0*(前回値)を始点(原点)として、周期Tに対して下位指令状態量θr*(今回値)に向かう下に凸の放物線に沿って周期T/N毎の目標状態量θp*を演算して生成する。ステップS106にて、状態量補間部41は、生成した目標状態量θp*を該周期T/N毎に順次出力する。
【0046】
一方、ステップS105にて、実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が大きくない(Δθr*≦ωr)とき(ステップS105:NO)、状態量補間部41は、下位指令状態量間の補間パターンとして曲線パターンのなかでも、上に凸の放物線に沿った関数(負の二次関数)による曲線パターンを選択する(ステップS107)。このとき本実施形態では、現状の実モータ回転速度ωrで進む直線(一次関数)に上に凸の放物線に沿った関数(負の二次関数)を足し合わせることで、下位指令状態量θr*の入力の後の目標状態量θp*の減少の変化を緩やかにした曲線パターンによる補間がなされることとなる。
【0047】
そして、ステップS107にて、状態量補間部41は、下位指令状態量θr0*(前回値)を始点(原点)として、周期Tに対して下位指令状態量θr*(今回値)に向かう上に凸の放物線に沿って周期T/N毎の目標状態量θp*を演算して生成する。ステップS107にて、状態量補間部41は、生成した目標状態量θp*を該周期T/N毎に順次出力する。
【0048】
また、ステップS106及びステップS107の曲線パターンでの補間で用いられる関数としては、正負の二次関数が用いられることから、下位指令状態量θr*の入力の後の目標状態量θp*の増加及び減少の変化速度が一次関数をなすこととなる。すなわちこの場合、下位指令状態量θr*の入力の後の目標状態量θp*の変化速度の変化(変化加速度)、すなわちモータ回転速度の加速度(操舵機構7の操舵の舵角速度の加速度)が一定であるということとなる。
【0049】
以上に説明した自動操舵装置1によれば、以下の(1)〜(4)に示す作用及び効果を奏する。
(1)実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分(ωr−Δθr*)の絶対値からは、該下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7における操舵の舵角速度の変化量が得られる。
【0050】
そして、本実施形態では、下位指令状態量θr*の入力があったとき、こうして得られる操舵機構7における操舵の舵角速度の変化量に応じて、該入力の後の補間パターンを選択することで、該入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量の変化具合の調整が可能になる。すなわちこの場合、操舵機構7における操舵に与える動きの自由度を高めることができる。
【0051】
具体的に、状態量補間部41は、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量が小さく、該舵角速度が急変しないことを判定するとき(ステップS101:YES)、従来同様、補間パターンとして直線パターンを選択する。
【0052】
これにより、図4(a)に示すように、下位指令状態量θr*の入力の前の操舵機構7の操舵の舵角速度v0に対して該入力の後の操舵機構7の操舵の舵角速度vsの変化量βが所定閾値α未満のとき、そもそも該舵角速度が急変しない(変化が小さい)ことが判定されていることから直線パターンにより補間される。したがって、制御の効率化の観点でメリットを有している。
【0053】
一方、状態量補間部41は、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量が大きく、該舵角速度が急変することを判定するとき(ステップS101:NO)、従来同様、直線パターンで補間しようとすると、操舵機構7における操舵の舵角速度の急変を抑えることができなくなる。
【0054】
その点、状態量補間部41は、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度の変化量が大きく、該舵角速度が急変することを判定するとき(ステップS101:NO)、補間パターンとして曲線パターンを選択する。
【0055】
これにより、図4(b)に示すように、下位指令状態量θr*の入力の前の操舵機構7の操舵の舵角速度v0に対して下位指令状態量θr*の入力の後の操舵機構7の操舵の舵角速度vsの変化量γが所定閾値α以上のとき、曲線パターンにより補間することで該舵角速度が急変されることなく滑らかに変化される。したがって、操舵機構7における操舵の舵角速度の急変を抑える観点でメリットを有している。
【0056】
このように、下位指令状態量θr*の入力があったとき、該入力の前の操舵機構7の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構7の操舵の舵角速度の変化が小さくなるような補間パターンを選択可能にすることができる。すなわちこの場合、下位指令状態量θr*の入力があったとき、操舵機構7の操舵の舵角速度の急変が抑えられることとなり、操舵機構7における操舵に滑らかな動きを与えることができる。
【0057】
(2)また、状態量補間部41が曲線パターンを選択するとき、該入力の直後の操舵機構7の操舵の舵角速度に比べて、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*が大きいと、下位指令状態量間にて操舵機構7の操舵の舵角速度を急変させてしまいかねない。
【0058】
そこで、状態量補間部41は、補間パターンとして曲線パターンを選択するとき、下位指令状態量θr*の入力後の操舵機構7における操舵の舵角速度の変化(加速度)を一定にする二次関数を用いた補間を行うこととしている。
【0059】
すなわちこの場合、下位指令状態量θr*の入力の前の操舵機構7の操舵の舵角速度に対して該入力の後における操舵機構7の操舵の舵角速度の変化が小さくなるように曲線パターンが選択されるときであっても、下位指令状態量間における操舵機構7の操舵の舵角速度の急変を抑えることができる。したがって、操舵機構7における操舵に滑らかな動きを好適に与えることができる。
【0060】
(3)また、状態量補間部41は、曲線パターンを選択するとき、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度が急変するなかで、大きく増加(正)するように変化することを判定するとき(ステップS105:YES)、下に凸の放物線に沿った関数(正の二次関数)による曲線パターンを選択する。
【0061】
すなわちこの場合、図4(b)に示すように、下位指令状態量θr*の入力の後のモータ回転速度(操舵機構7の操舵の舵角速度)の増加の変化が滑らかであるということとなる。
【0062】
一方、状態量補間部41は、曲線パターンを選択するとき、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度が急変するなかで、大きく減少(負)するように変化することを判定するとき(ステップS105:NO)、上記同様、下に凸の放物線に沿った関数で補間しようとすると、該舵角速度の急変を却って招きうる。
【0063】
その点、状態量補間部41は、補間パターンとして曲線パターンを選択するとき、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度が急変するなかで、大きく減少(負)するように変化することを判定するとき(ステップS105:NO)、上に凸の放物線に沿った関数(負の二次関数)による曲線パターンを選択する。
【0064】
すなわちこの場合、図4(b)における舵角速度v0と舵角速度vsとを入れ替えて示されるように、下位指令状態量θr*の入力の後のモータ回転速度(操舵機構7の操舵の舵角速度)の減少の変化が滑らかであるということとなる。
【0065】
これにより、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度が急変するなかで、こうした急変が増加及び減少するいずれの場合であっても適切な補間を行うことができる。すなわちこの場合、下位指令状態量θr*の入力の前後の操舵機構7の操舵の舵角速度が急変するなかで、大きく増加又は大きく減少するように変化するいずれであっても、操舵機構7における操舵に滑らかな動きを好適に与えることができる。
【0066】
(4)本実施形態では、操舵機構7における操舵の舵角速度に換算可能な状態量として、回転角センサ23で検出される実モータ回転角θrを微分して得られる実モータ回転速度ωrを用いている。これにより、例えば、操舵機構7におけるコラムシャフト8の舵角を直接的に検出するようなセンサを設ける必要がなくなり、自動操舵装置1の構成を簡素化してコスト面においてもメリットを見出すことができる。
【0067】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・曲線パターンでは、実モータ回転速度ωrと変化率Δθr*との大小に関係なく共通の関数を定めるようにしてもよい。
【0068】
・実モータ回転速度ωrと変化率Δθr*との大小の比較について、これらが同値の場合、補間パターンを選択する処理においてステップS105(YES)からステップS107へと移行してもよい。すなわちこの場合、ステップS105では、実モータ回転速度ωrに対して変化率Δθr*が小さくない(Δθr*≧ωr)か否かが判定される。
【0069】
・曲線パターンで用いる関数としては、二次以上の関数に変更することもできる。また、例えば、曲線パターンで用いる関数を三次関数に定めるときには、下位指令状態量θr*の入力後の操舵機構7における操舵の舵角速度の変化(加速度)の変化(躍度又は加加速度)を一定にすることができる。
【0070】
・曲線パターンで用いる関数としては、下位指令状態量θr*の入力後の操舵機構7における操舵の舵角速度の変化(加速度)が一定でなくてもよい。例えば、補間すべき所定周期の間で複数の関数を切り替えたりすることで、下位指令状態量θr*の入力後の操舵機構7における操舵の舵角速度の変化(加速度)に変化を与えるようにしてもよい。
【0071】
・上記実施形態は、実モータ回転速度ωrと、下位指令状態量θr0*に対する下位指令状態量θr*の変化率Δθr*との差分(ωr−Δθr*)の絶対値に基づいて、補間パターンを選択可能であればよく、補間すべき所定周期の間で直線パターンと曲線パターンとを切り替える補間パターンを含ませてもよい。
【0072】
・実モータ回転速度ωrと変化率Δθr*との差分の絶対値と所定閾値αの比較について、これらが同値の場合、補間パターンを選択する処理においてステップS101(YES)からステップS102へと移行してもよい。すなわちこの場合、ステップS101では、実モータ回転速度ωrと変化率Δθr*との差分の絶対値が所定閾値α以下であるか否かが判定される。
【0073】
・上記実施形態では、操舵機構7における操舵の舵角速度に換算可能な状態量として、回転角センサ23で検出される実モータ回転角θrを微分して得られる実モータ回転速度ωrを用いていたが、操舵角センサを用いて操舵機構7における操舵(コラムシャフト8)の舵角速度を得られるようにしてもよい。操舵角センサは、磁気式の回転角センサであってコラムシャフト8に設けられる。この場合、補間パターンを選択する処理のステップS101では、操舵角センサで検出される操舵角を微分して得られる舵角速度vsと、上位指令状態量θs0*(前回値)に対する上位指令状態量θs*(今回値)の差分を周期Tで除算して得られる変化率Δθs*との差分(vs−Δθs*)の絶対値に基づいて、所定閾値αとの比較を行えばよい。またこの場合には、上位指令状態量θs*と操舵角センサで検出される操舵角を用いてモータ回転制御指令を生成するようにしてもよい。すなわちこの場合、変換器45を省略することができる。
【0074】
・上位指令状態量生成部31は、モータ回転角指示値を生成、出力するようにしてもよい。すなわちこの場合、変換器45を省略することができる。
・上位指令状態量生成部31は、ピニオン角指示値を生成、出力するようにしてもよい。この場合にも、補間パターンを選択する処理においてステップS101では、操舵角センサで検出される操舵角を微分して得られる舵角速度vsを用いるようにしてもよいが、自動操舵装置1をコラムアシストEPS以外のラックアシストEPSやピニオンアシストEPSに具体化する場合、減速比等に基づき変換する必要がある。
【0075】
・上記実施形態では、上位用マイコン30及びEPS用マイコン40の2個のマイコンを用いて具体化したが、これらの機能を兼ね備えた1個のマイコンで具体化してもよい。
・上記実施形態では、自動操舵装置1をコラムアシストEPSに具体化したが、自動操舵装置1をラックアシストEPSやピニオンアシストEPSに適用してもよい。
【0076】
・EPSアクチュエータ20の駆動源であるモータ21として、誘導モータやステッピングモータ等、その種類を問わず採用することができる。
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0077】
(イ)上記自動操舵装置において、舵角制御部は、操舵機構のモータの回転制御を行うことで操舵機構の舵角制御を行うようになっており、操舵機構の操舵の舵角速度に換算可能な状態量は、操舵機構のモータの回転角を検出して得られる回転速度である。上記構成によれば、例えば、操舵角を直接的に検出するようなセンサを設ける必要がなくなり、自動操舵装置の構成を簡素化してコスト面においてもメリットを見出すことができる。
【符号の説明】
【0078】
θs*…上位指令状態量(舵角指示値)、θr*…下位指令状態量(モータ回転角指示値)、θp*…目標状態量、Δθr*…変化率、θr…実モータ回転角、ωr…実モータ回転速度、1…自動操舵装置、7…操舵機構、8…コラムシャフト、12…転舵輪、20…EPSアクチュエータ、21…モータ、30…上位用マイコン、40…EPS用マイコン(舵角制御部)、41…状態量補間部。
図1
図2
図3
図4