特開2016-197014(P2016-197014A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000003
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000004
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000005
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000006
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000007
  • 特開2016197014-建物被災推定システムおよび方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-197014(P2016-197014A)
(43)【公開日】2016年11月24日
(54)【発明の名称】建物被災推定システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/00 20060101AFI20161028BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20161028BHJP
【FI】
   G01M7/00
   G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-75661(P2015-75661)
(22)【出願日】2015年4月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】若林 久人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD34
2G024BA15
2G024BA17
2G024BA22
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA12
2G024FA06
(57)【要約】
【課題】地震発生後の建物の被災度を従来よりも安価に推定する。
【解決手段】建物被災推定システムは、建物被災推定装置1と、建物2の基礎地盤面に設置された地震センサ20とから構成される。建物被災推定装置1は、建物2の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、建物2の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力部10と、地震発生中に地震センサ20で計測された地動加速度を設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析部11と、地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と建物の地震による動きを示す動き情報を算出する地震・動き情報算出部12と、地震終了後に地震情報と動き情報を用いて、建物の被災度を推定する被災度推定部13とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推定対象の建物の基礎地盤面に設置された地震センサと、
前記建物の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、前記建物の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力手段と、
地震発生中に前記地震センサで計測された地動加速度を前記設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析手段と、
地震発生中に前記地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と、前記建物の地震による動きを示す動き情報とを算出する地震・動き情報算出手段と、
地震終了後に、前記地震・動き情報算出手段が地震発生中に算出した地震情報と動き情報とを用いて、前記建物の被災度を推定する被災度推定手段とを備えることを特徴とする建物被災推定システム。
【請求項2】
請求項1記載の建物被災推定システムにおいて、
前記地震応答解析手段で得られる地震応答解析結果は、前記建物の各階の変位、各階の速度、各階の加速度であり、
前記地震・動き情報算出手段で得られる地震情報は、前記建物の基礎地盤面での計測震度、各階の計測震度、各階の長周期地震動階級であり、
前記地震・動き情報算出手段で得られる動き情報は、各階の最大加速度、各階の最大速度、各階の最大変位、各階間の最大層間変形角であることを特徴とする建物被災推定システム。
【請求項3】
推定対象の建物の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、前記建物の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力ステップと、
前記建物の基礎地盤面に設置された地震センサで地震発生中に計測された地動加速度を前記設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析ステップと、
地震発生中に前記地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と、前記建物の地震による動きを示す動き情報とを算出する地震・動き情報算出ステップと、
地震終了後に、前記地震・動き情報算出ステップで地震発生中に算出した地震情報と動き情報とを用いて、前記建物の被災度を推定する被災度推定ステップとを含むことを特徴とする建物被災推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震発生後の建物の被災度を推定する建物被災推定システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外乱を受けた建物の各部に発生したであろう損傷を算出して報知する損傷状況報知システムが提案されている(特許文献1参照)。損傷状況報知システムは、建物の各部に設置された地震センサにより各部の振動を検知し、複数の地震センサからの信号を受信して各部の振動に基づいて各部の最大応答値を算出し、最大応答値と建物の構造体の強度に基づいて予め設定された各部ごとの損傷限界閾値とを重ね合わせて表示するようにしたものである。特許文献1によれば、損傷状況報知システムを使用することにより、建物の継続使用可否判定、建物の補修の要否判定、などの判定の支援が可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−134413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、建物の各部の振動を検知するために複数の地震センサが必要となり、コストがかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、地震発生後の建物の被災度を従来よりも安価に推定することができる建物被災推定システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物被災推定システムは、推定対象の建物の基礎地盤面に設置された地震センサと、前記建物の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、前記建物の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力手段と、地震発生中に前記地震センサで計測された地動加速度を前記設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析手段と、地震発生中に前記地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と、前記建物の地震による動きを示す動き情報とを算出する地震・動き情報算出手段と、地震終了後に、前記地震・動き情報算出手段が地震発生中に算出した地震情報と動き情報とを用いて、前記建物の被災度を推定する被災度推定手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の建物被災推定システムの1構成例において、前記地震応答解析手段で得られる地震応答解析結果は、前記建物の各階の変位、各階の速度、各階の加速度であり、前記地震・動き情報算出手段で得られる地震情報は、前記建物の基礎地盤面での計測震度、各階の計測震度、各階の長周期地震動階級であり、前記地震・動き情報算出手段で得られる動き情報は、各階の最大加速度、各階の最大速度、各階の最大変位、各階間の最大層間変形角である。
【0008】
また、本発明の建物被災推定方法は、推定対象の建物の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、前記建物の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力ステップと、前記建物の基礎地盤面に設置された地震センサで地震発生中に計測された地動加速度を前記設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析ステップと、地震発生中に前記地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と、前記建物の地震による動きを示す動き情報とを算出する地震・動き情報算出ステップと、地震終了後に、前記地震・動き情報算出ステップで地震発生中に算出した地震情報と動き情報とを用いて、前記建物の被災度を推定する被災度推定ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建物に複数の地震センサを設ける必要がなくなり、建物の基礎地盤面に地震センサを設置すればよいので、最小単位の構成で建物被災推定システムを実現することができ、地震発生後の建物の被災度を従来よりも安価に推定することができる。また、本発明では、地震発生中に、地震情報と、建物の地震による動きを示す動き情報とを算出することができるので、避難誘導に関わる情報を建物の管理者に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る建物被災推定システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る建物被災推定システムの動作を説明するフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態における地震情報と動き情報と被災度の表示例を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における動き情報の別の表示例を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における地震情報の別の表示例を示す図である。
図6】本発明の実施の形態における動き情報の別の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態に係る建物被災推定システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態の建物被災推定システムは、建物被災推定装置1と、推定対象の建物2の基礎地盤面に設置された地震センサ20とから構成される。
【0012】
建物被災推定装置1は、建物2の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて導出された、建物2の地震による動きを数式化した設計建物モデルを入力する設計建物モデル入力部10と、地震発生中に地震センサ20で計測された地動加速度を設計建物モデルに入力して、設計建物モデルの地震応答解析を行う地震応答解析部11と、地震発生中に地震応答解析の結果および地動加速度を用いて、地震情報と、建物の地震による動きを示す動き情報とを算出する地震・動き情報算出部12と、地震終了後に、地震・動き情報算出部12が地震発生中に算出した地震情報と動き情報とを用いて、建物の被災度を推定する被災度推定部13と、情報表示のための表示部14とを備えている。
【0013】
以下、本実施の形態の建物被災推定システムの動作を図2のフローチャートを用いて説明する。
まず、設計建物モデル入力部10には、推定対象の建物2の地震による動きを数式化した設計建物モデルが入力される(図2ステップS1)。本実施の形態では、建物2の設計図書から抽出された構造設計パラメータに基づいて、ユーザが設計建物モデルを予め導出するものとする。構造設計パラメータとしては、建物2の減衰定数、各階の質量、各階の剛性がある。これら減衰定数、各階の質量、各階の剛性から設計建物モデルの状態方程式を得る。
dX/dt=A×X+B×U+D×z ・・・(1)
【0014】
ここで、Xは状態変数である。状態変数Xには、各階の変位、各階の速度、制振装置の変位(建物2に制振装置がある場合)などが含まれる。Uは制振装置を制御する制御器への制御入力(制振装置および制御器がない場合にはU=0)、zは地動加速度を示す。
【0015】
次に、地震応答解析部11は、推定対象の建物2の基礎地盤面に設置された地震センサ20で計測された地動加速度zが所定の地震判定閾値以上の場合、地震発生と判定し(図2ステップS2においてYES)、地震センサ20で計測された地動加速度zと制振装置の制御システムで演算された制御入力U(制振装置および制御器がない場合にはU=0)とを設計建物モデルに入力し、数値シミュレーションにより設計建物モデルの地震応答解析を行う(図2ステップS3)。この地震応答解析により、地震応答解析部11は、各階の変位、各階の速度を得ることができる。また、各階の速度を微分することにより、各階の加速度を得ることができる。
【0016】
数値シミュレーションは、以下の式(2)に示す4次のルンゲクッタ法を用いて行う。
X1=X
b1=dt×(A×X1+B×U+D×z)
X2=X+b1/2
b2=dt×(A×X2+B×U+D×z)
X3=X+b2/2
b3=dt×(A×X3+B×U+D×z)
X4=X+b3
b4=dt×(A×X4+B×U+D×z)
Y=X+(b1+2×b2+2×b3+b4)/6 ・・・(2)
【0017】
ここで、dtはサンプリング時間を表す。次に、地震・動き情報算出部12は、地震の発生中は、現在時刻から一定時間ΔT1だけ遡った地震応答解析部11の地震応答解析結果(各階の変位、各階の速度、各階の加速度)と地動加速度zとを用いて、地震情報と、推定対象の建物2の地震による動きを示す動き情報とを算出する(図2ステップS4)。
【0018】
地震情報としては、建物2の基礎地盤面での計測震度、各階の計測震度、各階の長周期地震動階級がある。動き情報としては、各階の最大加速度、各階の最大速度、各階の最大変位、各階間の最大層間変形角がある。建物2の基礎地盤面での計測震度は、地震センサ20で計測された地動加速度zから算出することができる。各階の計測震度は、各階の加速度から算出することができる。各階の長周期地震動階級は、地動加速度zを積分して得た地動速度と各階の速度とから求めることができる絶対速度応答に基づいて算出することができる。各階間の最大層間変形角は、各階間の最大層間変位を階高で割ることで算出することができる。
【0019】
表示部14は、地震・動き情報算出部12が算出した地震情報と動き情報とを一定時間ΔT2の間隔で表示する(図2ステップS5)。
次に、被災度推定部13は、地震センサ20で計測された地動加速度zが地震判定閾値未満になると、地震が止んだと判定し(図2ステップS6においてYES)、地震発生中に地震・動き情報算出部12が算出した全データを用いて建物2の被災度を推定する(図2ステップS7)。
【0020】
各階の計測震度、各階の長周期地震動階級、各階の最大加速度、各階の最大速度、各階の最大変位、各階間の最大層間変形角のそれぞれには、建物の損傷無しと判定する無被害判定閾値や、建物の損傷有りと判定する被害判定閾値が予め設定されている。被災度推定部13は、例えば建物2のある階の計測震度が計測震度判定用に予め設定された無被害判定閾値未満であれば、当該階に損傷無しと判定し、計測震度が計測震度判定用に予め設定された被害判定閾値以上であれば、当該階に損傷有りと判定する。
【0021】
同様に、被災度推定部13は、建物2のある階の最大加速度が最大加速度判定用に予め設定された無被害判定閾値未満であれば、当該階に損傷無しと判定し、最大加速度が最大加速度判定用に予め設定された被害判定閾値以上であれば、当該階に損傷有りと判定する。被災度推定部13は、以上のような判定を、各階の計測震度、各階の長周期地震動階級、各階の最大加速度、各階の最大速度、各階の最大変位、各階間の最大層間変形角のそれぞれについて階毎に行えばよい。なお、建物2の基礎地盤面での計測震度についても閾値と比較することで、建物2の損傷を判定するようにしてもよい。また、被害判定閾値については複数のレベルを設定して損傷の程度(損傷大、損傷小など)を判定できるようにしてもよい。
【0022】
表示部14は、被災度推定部13が推定した建物2の被災度を表示する(図2ステップS8)。このとき、表示部14は、被災度と共に、地震情報と動き情報を表示するようにしてもよい。
【0023】
図3は地震情報と動き情報と被災度の表示例を示す図である。図3では、推定対象の建物2が10階建ての例を示しており、表示部14の画面140に、地震情報として、震度階級(建物2の基礎地盤面での計測震度)と、最大加速度(3方向の地動加速度zの最大値で、NSは南北方向、EWは東西方向、UDは鉛直方向)と、地震の継続時間と、各階の震度階級(計測震度)とが表示されている。
【0024】
また、画面140には、動き情報として、各階間の南北方向の最大層間変形角および東西方向の最大層間変形角が表示されている。さらに、画面140には、被災度推定部13が各階間の最大層間変形角から推定した被災度が表示されている。図3の例では、最大層間変形角に基づく被災度推定結果が全て無被害(損傷無し)となっている。
【0025】
図4は動き情報の別の表示例を示す図である。図4の例では、表示部14の画面140に、各階の最大加速度、各階の最大変位、各階間の南北方向の最大層間変形角がグラフ表示されている。
図5は地震情報の別の表示例を示す図である。図5の例では、表示部14の画面140に、南北方向の地動加速度zおよび東西方向の地動加速度zの時刻歴波形が表示されている。
図6は動き情報の別の表示例を示す図である。図6の例では、表示部14の画面140に、建物の特定の階の東西方向の加速度、速度および変位の時刻歴波形が表示されている。
【0026】
以上のように、本実施の形態では、建物に複数の地震センサを設ける必要がなくなり、建物の基礎地盤面に地震センサを設置すればよいので、地震発生後の建物の被災度を従来よりも安価に推定することができる。従来より、地震で被災した建物について、損傷度合の状況や継続使用の可否判断に関する情報提供の迅速化が求められているが、本実施の形態では、建物の安全性を素早く確認することができる。
【0027】
また、本実施の形態では、地震発生中に地震・動き情報算出部12が算出した地震情報と動き情報とを表示することにより、避難誘導に関わる情報を建物の管理者に提供することができる。
また、本実施の形態では、地震センサ20が計測する地動加速度zの代わりに、過去の地震波形に基づく地動加速度zあるいは模擬地震動に基づく地動加速度zを設計建物モデルに入力して、図2のステップS3〜S5,S7,S8の処理を行えば、被害想定シミュレーションを実現することができる。
【0028】
本実施の形態で説明した建物被災推定装置1は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、地震発生後の建物の被災度を推定する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…建物被災推定装置、2…建物、10…設計建物モデル入力部、11…地震応答解析部、12…地震・動き情報算出部、13…被災度推定部、14…表示部、20…地震センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6