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特開2016-203851電動パワーステアリング用ウォーム減速機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203851(P2016-203851A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】電動パワーステアリング用ウォーム減速機
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20161111BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20161111BHJP
   F16C 23/06 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B62D5/04
   F16H1/16 Z
   F16C23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-89352(P2015-89352)
(22)【出願日】2015年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(72)【発明者】
【氏名】山内 麻衣
【テーマコード(参考)】
3D333
3J009
3J012
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB12
3D333CC14
3D333CD05
3D333CD12
3D333CD13
3D333CD16
3D333CD17
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD39
3D333CD45
3D333CE04
3D333CE10
3D333CE14
3D333CE15
3D333CE16
3J009DA05
3J009DA11
3J009EA19
3J009EA23
3J009EB17
3J009EB24
3J009EC06
3J009FA08
3J012AB03
3J012AB05
3J012AB07
3J012BB01
3J012CB04
3J012DB07
3J012DB13
3J012FB10
3J012GB10
(57)【要約】
【課題】雰囲気温度の変化による樹脂製ウォームホイールの寸法形状変化や噛み合い部の摩耗に伴うウォームの変位によって生じるバックラッシュの拡大を防止する機構を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機を提供する。
【解決手段】ウォーム2の一端を支持し軸直角方向のウォームホイール3側に移動可能な軸端側軸受5と、軸端側軸受5の半径方向でかつウォームホイール3側の空間11内にハウジング1と一体的に設けられたベルト保持部9と、軸端側軸受5の外輪6の外周及びベルト保持部9に長さ方向に伸長された状態で掛けられた環状弾性ベルト10とを有し、環状弾性ベルト10が収縮力によりウォーム2をウォームホイール3に対して所定の力で加圧する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のウォームと、
前記ウォームの両側の軸部を支持する一対の支持軸受と、
前記ウォームに噛合する樹脂製のウォームホイールと、
前記ウォーム、前記支持軸受及び前記ウォームホイールを収容するハウジングと、
を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機であって、
前記ハウジングは、前記支持軸受の一方である軸端側軸受を収容する部分に前記軸端側軸受の半径方向でかつウォームホイール側に広がる空間を有し、
前記空間内の前記ウォームホイール側に前記ハウジングと一体的に設けられたベルト保持部と、
長さ方向に伸縮可能な環状のベルトであって前記軸端側軸受の外周及び前記ベルト保持部に自然長より伸長され収縮力を有した状態で掛けられた環状弾性ベルトを有しており、
前記軸端側軸受が前記空間内で前記ウォームホイール側に変位可能であり、
前記環状弾性ベルトの収縮力により、前記ウォームが前記ウォームホイールに対して所定の力で加圧されていることを特徴とする電動パワーステアリング用ウォーム減速機。
【請求項2】
前記環状弾性ベルトは、弾性を有するゴム材料或いは樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング用ウォーム減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パワーステアリング用ウォーム減速機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動パワーステアリングは、運転者の操舵力を補助する操舵アシスト力の駆動源として電動機を用いている。電動機の駆動力は電動機に連結された減速機を介して減速増力されてステアリングシャフトに伝達され、運転者による手動操舵力を補助するアシスト力となる。この減速機はウォーム減速機を使用するのが一般的であり、金属製のウォームと樹脂製のウォームホイールが用いられる場合が多い。
【0003】
ウォーム及びウォームホイールは噛み合い部にバックラッシュがほとんどない状態に初期設定されている。樹脂製ウォームホイールは、雰囲気温度の変化による膨張収縮や変形、或いは金属製ウォームとの噛み合いによる歯面の摩耗が発生したりすることがある。その結果、樹脂製ウォームホイール歯面と金属製ウォーム歯面との間で、バックラッシュが拡大する。このバックラッシュの拡大は、ウォームホイールの回転方向が変化する際に発生する歯面同士の打音発生の原因となり、運転者に不快な異音として伝わる場合がある。
【0004】
これを防止するため、特許文献1には、ウォーム軸先端の支持軸受の外周を反ウォームホイール側からコイルばねでウォームホイール側に加圧して、ウォーム及びウォームホイール間の予圧を保持し予圧の増減を抑制することによりバックラッシュの拡大を防止する構造が開示されている。
【0005】
特許文献2には、図4及び図5に示すように、ウォーム22の軸端側軸受25の外輪26外周とハウジング21内周の間に環状の板ばね30を配置して、軸端側軸受25の外輪26をウォームホイール23の反対側から加圧して、ウォーム22及びウォームホイール23の間の予圧を保持しバックラッシュの拡大を防止する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−27368号公報
【特許文献2】特開2012−56459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のバックラッシュ拡大防止構造では、支持軸受の半径方向反ウォームホイール側に加圧手段であるコイルばねを収容する空間が必要となり、現状のハウジングの一部を外側に張り出したより大きなハウジングを使用せざるを得ないという問題があった。また、特許文献2のバックラッシュ拡大防止構造では、既存のハウジング空間で使用できる板ばねを用いるが、板ばねの伸び(作動範囲)が小さく必要な加圧力を得るためにばね定数を小さくすることができない。そのため、ウォームの変位に対して加圧力の変化が大きくなり、ウォームの変位の全範囲をカバーして安定した加圧力を得ることが難しく、ウォームの変位が大きい場合に板ばねが追随できないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、大きなハウジングを必要とすることなく、樹脂製ウォームホイールの寸法形状変化に伴うウォーム変位の全範囲を確実にカバーして安定した加圧力を得ることが可能で、ウォーム及びウォームホイール間のバックラッシュの拡大を防止することができる構造を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、金属製のウォームと、前記ウォームの両側の軸部を支持する一対の支持軸受と、前記ウォームに噛合する樹脂製のウォームホイールと、前記ウォーム、前記支持軸受及び前記ウォームホイールを収容するハウジングと、を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機であって、前記ハウジングは、前記支持軸受の一方である軸端側軸受を収容する部分に前記軸端側軸受の半径方向でかつウォームホイール側に広がる空間を有し、前記空間内の前記ウォームホイール側に前記ハウジングと一体的に設けられたベルト保持部と、長さ方向に伸縮可能な環状のベルトであって前記軸端側軸受の外周及び前記ベルト保持部に自然長より伸長され収縮力を有した状態で掛けられた環状弾性ベルトを有しており、前記軸端側軸受が前記空間内で前記ウォームホイール側に変位可能であり、前記環状弾性ベルトの収縮力により、前記ウォームが前記ウォームホイールに対して所定の力で加圧されていることである。
【0010】
上記の構成によれば、加圧手段に使用する環状弾性ベルトの収容空間をウォームホイール側のハウジングの内部に設けることができるため、加圧手段にコイルばねを使用する場合のようにハウジングを外側、すなわち反ウォームホイール側に張り出して大きくする必要がない。また環状弾性ベルトを使用すれば、加圧手段に板ばねを使用する場合に比べて、伸び(作動範囲)を大きくばね定数を小さくすることができる。そのため雰囲気温度による変形や歯面の摩耗による樹脂製ウォームホイールの寸法形状変化の結果、加圧するウォームの変位量が大きくなる場合においても、加圧力を大きく変化させることなくウォームの変位量の全範囲で加圧力を安定して保持することができる。また環状弾性ベルトの伸びがウォームの変位量に追随できなくなる加圧の抜けも発生しない。従ってウォーム及びウォームホイール間のバックラッシュの拡大を防止することができる。
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項2に係る発明の構成上の特徴は、前記環状弾性ベルトは、弾性を有するゴム材料或いは樹脂材料からなることである。
【0012】
上記の構成によれば、環状弾性ベルトに弾性を有するゴム材料或いは樹脂材料を使用することにより、伸びをより大きくばね定数をより小さくとることができるため、樹脂製ウォームホイールの寸法形状変化の結果、加圧するウォームの変位量が大きくなる場合においても、変位量の変化に対する加圧力の変化をより小さくし安定して加圧を保持することができるほか、ウォーム変位量に追随できなくなる加圧の抜けも避けられ、ウォーム及びウォームホイール間のバックラッシュの拡大をより効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
上記の発明によれば、ウォームのウォームホイールに対する加圧手段に環状弾性ベルトを用いることにより、加圧手段の収容空間を支持軸受のウォームホイール側のハウジング内部に設けることができるほか、樹脂製ウォームホイールの寸法形状変化に伴うウォームの変位量の全範囲を確実にカバーして安定した加圧力を得ることが可能で、ウォーム及びウォームホイール間のバックラッシュの拡大を防止することできる構造を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態における電動パワーステアリング用ウォーム減速機のウォーム軸方向断面の概略図である。
図2】本発明の一実施形態における電動パワーステアリング用ウォーム減速機のウォーム軸端側から見た歯面隙間補償機構の概略図である。
図3】本発明の一実施形態における環状ゴムベルト及び従来技術における金属製板ばねにおける、ばね荷重に対する温度の影響を示した図である。
図4】従来技術における電動パワーステアリング用ウォーム減速機のウォーム軸方向断面の概略図である。
図5】従来技術におけるウォームを加圧するばねの装着状態をウォーム軸端側からみた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
まず、本発明の一実施形態におけるウォーム減速機の構成を、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態における電動パワーステアリング用ウォーム減速機のウォーム軸方向断面の概略図である。ウォーム減速機は、ハウジング1、ウォーム2、ウォームホイール3、電動機側軸受4、軸端側軸受5、環状弾性ベルト10、及びカバー16を含んでいる。図2は本発明の一実施形態におけるウォーム減速機を、カバー16を取り外した状態でウォーム軸端側から見た概略図である。
【0017】
ウォーム2は、金属材料(例えば、合金鋼)で形成されており、ウォームホイール3と噛み合った状態で、ウォーム2の両側の軸に装着された電動機側軸受4及び軸端側軸受5により、ハウジング1に回転可能に支持されている。ウォーム2の電動機側軸端にカップリング17が装着されており、電動機(図なし)の軸に連結されている。ウォーム2の外周とハウジング1の内周の間には隙間があり、ウォーム2の歯面を潤滑するグリースが封入されている。
【0018】
ウォームホイール3は、樹脂材料(例えば、MCナイロン樹脂)で形成されたウォームホイール外周部13及び金属材料で形成されたウォームホイールコア部14で構成され、ウォームホイール外周部13の最外周は歯部が形成されている。ウォームホイール3の中心部はステアリングシャフト15が圧入され一体化されている。ウォームホイール3は、その両側に配置されステアリングシャフト15に装着された支持軸受(図なし)により、ハウジング1に回転可能に支持されている。ウォームホイール3の外周とハウジング1の内周の間には隙間があり、ウォームホイール3の歯面を潤滑するグリースが封入されている。
【0019】
ハウジング1は、ダイキャストにより形成されたアルミニウム合金製の部材で、ウォーム2の軸端側の内部に空間11が設けられている。空間11は、ウォーム軸直角方向の断面形状が、軸端側軸受5の外周よりやや大きい半径を持つ円弧状の部分、それに相対する位置にある軸受外径より短い長さのひとつの直線、及び円弧状の部分とひとつの直線とを繋ぐ二つの直線からなる略前方後円形状を形成している。空間11は空間底面12及びカバー16によりウォーム2の軸方向に閉じられており、軸端側軸受5の幅よりやや大きい深さを有している。
【0020】
ベルト保持部9は、空間底面12に固定され、空間底面12からウォーム2の軸に平行に空間11内に突出して設けられている。ベルト保持部9は、空間11の深さにほぼ等しいかやや短い突出長さを有しており、ウォームホイール3の軸方向に一定の幅を有している。ベルト保持部9の反ウォーム側外周は、曲面或いは曲面に平面を含む滑らかな形状を有している。ベルト保持部9は、ハウジング1の一部であってもよい。
【0021】
ウォーム2の電動機側軸受4は、内輪が電動機側からウォーム2の軸に圧入され、外輪がハウジング1内における電動機側所定位置に装着されており、電動機側軸受4の半径方向の動きは規制されている。ウォーム2の軸端側軸受5は、内輪7がウォーム軸端8に圧入され、外輪6が空間11内にハウジング1の内周との間で隙間を有しかつ半径方向でウォームホイール側に変位可能に収容されているため、ウォーム2は軸直角でウォームホイール3と噛み合う方向に変位可能である。
【0022】
環状弾性ベルト10は、弾性を有するゴム材料(例えば、AEM:エチレンアクリレートゴム)からなる環状のベルトで、ウォーム2の軸端側軸受5の外輪6の幅に近いベルト幅を有している。環状弾性ベルト10は、長さ方向に少し引き伸ばされ張力を与えられた状態で、ウォーム2の軸端側軸受5の外輪6の外周と、空間11内に突出したベルト保持部9のウォームホイール側外周との間に掛けられている。
【0023】
カバー16は、軸端側軸受5、環状弾性ベルト10及びベルト保持部9を収容する空間11を外部から蓋い、ハウジング1に固定されている。カバー16により空間11は外部との間を遮断されている。カバー16とハウジング1との間の接触面に、密封性を高めるために密封部材を設置する場合もある。
【0024】
次に、本発明の一実施形態におけるウォーム減速機の作用と効果を、図1及び図2を参照して説明する。
【0025】
電動機の駆動力は、カップリング17を介してウォーム2に伝達され、ステアリングシャフト15に固定されたウォームホイール3に減速増力されて伝達され、運転者による手動操舵力を補助するアシスト力となる。ステアリングシャフト15は車両の旋回方向に合わせて左右両方向に回転するため、電動機及びそれに連結するウォーム2も両方向に回転する。ウォーム2とウォームホイール3との間の噛み合い歯面におけるバックラッシュが大きければ、回転方向の転換時に歯面同士の打音が発生する。
【0026】
上述のように、ウォーム2の電動機側軸受4はハウジング1の所定位置に装着され、半径方向の動きが規制され、軸端側軸受5は空間11内に変位可能に収容されて外輪6の外周とベルト保持部9の間に所定の張力を有して環状弾性ベルト10が掛けられている。従って、ウォーム2は軸端側軸受5に加えられる環状弾性ベルト10の張力によって、電動機側軸受4を支点としてウォームホイール3に押付けられ加圧されている。このため、通常の駆動力伝達時や回転方向の転換時に、ウォーム2とウォームホイール3との噛み合い面にバックラッシュは生じず、歯面同士の打音が発生することはない。
【0027】
本発明の一実施形態のように、環状弾性ベルト10を加圧手段に使用した構造であれば、ハウジング1の内部に環状弾性ベルト10を収容する空間11を設置すればよいため、ハウジング1を外側に張り出させる必要がなく、バックラッシュの拡大を防止する機構を既存のハウジングを基にコンパクトに構成することができる。
【0028】
歯部を含むウォームホイール外周部13は樹脂で形成されている。電動パワーステアリングが搭載される車両の使用地域、減速機の作動状態による雰囲気温度の影響で樹脂が膨張収縮や変形を生じる場合や、潤滑状態の悪化で歯面摩耗の発生する場合には、樹脂で形成されたウォームホイール外周部13に寸法形状の変化が生じることがある。このとき、ウォーム2の変位がウォームホイール3に追随できなければ、噛み合い歯面のバックラッシュが拡大し、回転方向の転換時に歯面同士の打音が発生する。
【0029】
本発明の一実施形態の加圧手段である環状弾性ベルト10は、弾性を有するゴム材料で形成されており、このゴム材料は弾性係数が金属材料に比べて小さい。そのため環状弾性ベルト10は断面積を大きくしてもばね定数を低く設定することができ、ベルト全体の伸びも大きい。従ってウォームホイール3の寸法形状変化の影響でウォーム2の変位量が大きくなっても、環状弾性ベルト10は安定した加圧力でウォーム2の変位に対応することができるため、ウォーム2及びウォームホイール3のバックラッシュが拡大することを防止できる。
【0030】
環状弾性ベルト10を形成するゴム材料は、金属材料に比べて、歯部を含むウォームホイール外周部13を形成する樹脂材料に近い線膨張係数を有するため、雰囲気温度の上昇に伴う樹脂製のウォームホイール3の膨張によるウォーム2の変位(ウォームホイール3から離れる方向)に対して、環状弾性ベルト10の長さが同様に膨張するため、ウォーム2のウォームホイール3への加圧力に対する温度変化の影響を低下させて、安定した加圧力を保持することができる。また、雰囲気温度の低下に伴う樹脂製のウォームホイール3の収縮によるウォーム2の変位(ウォームホイール3に近づく方向)に対して、環状弾性ベルト10の長さも同様に収縮するため、ウォーム2のウォームホイール3への加圧力に対する温度変化の影響を低下させて、安定した加圧力を保持することができる。
【0031】
またゴム材料は、温度上昇に対して軟化して弾性係数が低下する特性があるため、雰囲気温度の上昇による樹脂製のウォームホイール3の膨張によるウォーム2の変位(ウォームホイール3から離れる方向)に対して、環状弾性ベルト10のばね定数を低下させ、ウォーム2の変位の増大に対してばね荷重が増大することを抑制する効果を有している。逆に、雰囲気温度の低下に伴う樹脂製のウォームホイール3の収縮によるウォーム2の変位(ウォームホイール3に近づく方向)に対しては、環状弾性ベルト10のばね定数を増加させ、ウォーム2の変位の増大に対してばね荷重が低下することを抑制する効果を有している。
【0032】
図3は、環状弾性ベルト10にエチレンアクリレートゴム(AEM)を使用した場合の、ばね荷重(指数)に対する温度の影響(即ちウォームホイール3の寸法形状変化によるウォーム2の変位量に対応した加圧力)を、従来技術における金属製板ばねを用いた場合と比較したものである。横軸は温度、縦軸はばね荷重(温度20℃における荷重を1.0としたときの指数)を示している。環状ゴムベルトの場合は、温度0℃〜100℃の変化に対して、ばね荷重の変化は10%程度である。それに対し、金属製板ばねの場合は、温度0℃〜100℃の変化に対して、ばね荷重の変化は50%程度と大きい。
【0033】
環状弾性ベルト10にエチレンアクリレートゴムを使用した本発明の構造は、金属製板ばねを使用した従来技術の構造に比べて、雰囲気温度に対するばね荷重の変化が小さい。即ち本発明によれば、ウォームホイール3の寸法形状変化に対し、ウォーム2をウォームホイール3に対して安定した加圧力で噛み合いを維持し、バックラッシュの拡大を防止できる。
【0034】
上述の説明のように、本発明により大きいハウジングを必要とすることなく、ウォームホイールの寸法形状変化に伴うウォームの変位の全範囲を確実にカバーして安定した加圧力を保持ことが可能で、ウォーム及びウォームホイール間のバックラッシュの拡大を防止できる構造を備えた電動パワーステアリング用ウォーム減速機を提供することができる。
【0035】
環状弾性ベルト10は、本発明の一実施形態で使用したゴム材料製に限らず、樹脂材料製或いは金属材料製であっても、環状弾性ベルト10の形状において長さ方向に伸縮性を有し、ばね定数を低くできる構造を持つものであればよい。例えば、扁平な略楕円形状のコイルばねの両端を接続して環状ベルトに形成したものでも、本発明による効果は十分に発揮される。また、環状弾性ベルト10は、断面形状が厚さと幅がほぼ等しい略円或いは略正方形状の弾性リングであってもよい。
【0036】
本発明は、上述の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる様態で実施しうることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1:ハウジング、 2:ウォーム、 3:ウォームホイール、 4:電動機側軸受、
5:軸端側軸受、 6:外輪、 7:内輪、 8:ウォーム軸端、 9:ベルト保持部、 10:環状弾性ベルト、 11:空間、 12:空間底面、
13:ウォームホイール外周部、 14:ウォームホイールコア部、
15:ステアリングシャフト、 16:カバー、 17:カップリング、
21:ハウジング、 22:ウォーム、 23:ウォームホイール、
25:軸端側軸受、 26:外輪、 30:板ばね
図1
図2
図3
図4
図5