特開2016-203888(P2016-203888A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2016203888-車両用制動制御装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-203888(P2016-203888A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】車両用制動制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/00 20060101AFI20161111BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20161111BHJP
   B60T 7/22 20060101ALI20161111BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   B60T8/00 Z
   B60T7/12 C
   B60T7/22
   B60T8/17 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-90308(P2015-90308)
(22)【出願日】2015年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】中川 友佑
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA22
3D246GB04
3D246GB15
3D246GB30
3D246GB34
3D246GB36
3D246GB40
3D246GC14
3D246GC16
3D246HA02A
3D246HA13A
3D246HA64A
3D246HA81A
3D246HA87B
3D246HA93A
3D246HB12A
3D246HB16B
3D246JB31
3D246JB41
(57)【要約】
【課題】車両用制動制御装置において、次元の異なる要求値を適切に調停する。
【解決手段】車両用制動制御装置20は、一又は複数の運転支援制御装置11a,11bから要求車体減速度をそれぞれ入力可能であり、入力した要求車体減速度のうちから優先要求車体減速度を選択する第一入力調停部21と、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する制動力算出部22と、一又は複数の運転支援制御装置11c,11dから要求制動力をそれぞれ入力可能であり、入力した要求制動力のうちから優先要求制動力を選択する第二入力調停部25と、制動力算出部22から入力した対応制動力と、第二入力調停部25から入力した優先要求制動力とのうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する出力調停部26と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数の車両用運転制御装置から要求車体減速度をそれぞれ入力可能であり、入力した前記要求車体減速度のうちから最も優先する要求車体減速度を優先要求車体減速度として選択する第一入力調停部と、
前記第一入力調停部から入力した前記優先要求車体減速度から対応制動力を算出する制動力算出部と、
一又は複数の車両用運転制御装置から要求制動力をそれぞれ入力可能であり、入力した前記要求制動力のうちから最も優先する要求制動力を優先要求制動力として選択する第二入力調停部と、
前記制動力算出部から入力した前記対応制動力と、前記第二入力調停部から入力した前記優先要求制動力とのうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する出力調停部と、
前記出力調停部によって選択された前記出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータに出力する変換出力部と、
を備えたことを特徴とする車両用制動制御装置。
【請求項2】
前記出力調停部は、前記車両用運転制御装置に対して、いずれの車両用運転制御装置からの要求車体減速度または要求制動力が最終的に選択されたかを送信することを特徴とする請求項1記載の車両用制動制御装置。
【請求項3】
前記各車両用運転制御装置のうち、前記出力調停部によって最終的に選択された前記要求車体減速度または前記要求制動力に対応する車両用運転制御装置以外の車両用運転制御装置は、選択されなかったことによる影響の発生を防止あるいは影響を低減するような非選択時対応処理を行うことを特徴とする請求項2記載の車両用制動制御装置。
【請求項4】
前記非選択時対応処理は、出力する前記要求車体減速度と前記出力制動力によって発生する車体減速度が異なることが連続することによる影響、または前記要求制動力と前記出力制動力との乖離による影響の発生を防止あるいは影響を低減することを特徴とする請求項3記載の車両用制動制御装置。
【請求項5】
前記出力調停部は、前記要求制動力が最終的に選択された場合、前記制動力算出部に対して、前記要求制動力が最終的に選択された旨を送信し、
前記制動力算出部は、前記要求制動力が最終的に選択された旨を受信した場合、前記対応制動力の算出を停止することを特徴とする請求項1記載の車両用制動制御装置。
【請求項6】
前記第二入力調停部は、前記各車両用運転制御装置からの前記要求制動力に、ブレーキ操作部材の操作量に相当するドライバ要求制動力をそれぞれ考慮して前記優先要求制動力を選択することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項記載の車両用制動制御装置。
【請求項7】
前記制動力算出部は、前記第一入力調停部から入力した前記優先要求車体減速度から対応制動力を算出する際に、ブレーキ操作部材の操作量に相当するドライバ要求制動力を考慮することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項記載の車両用制動制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用制動制御装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図3に示されているように、車両用制動制御装置は、アダプティブクルーズ制御が行われて、先行車両に追従走行しているときには、設定車間距離を維持するためのACC目標加速度が算出される。また、プリクラッシュブレーキ制御が開始されると、自車両を減速させるためのPCSB目標加速度が算出される。ACC目標加速度とPCSB目標加速度がともに算出された場合、これらの目標加速度を加算して、最終的な目標加速度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−296887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている車両用制動制御装置においては、2つの目標加速度を調停して出力するようになっている。しかし、最近では、同じ次元である目標加速度同士を調停する場合だけでなく、目標加速度と次元の異なる目標制動力と、目標加速度とを調停する要請、すなわち次元の異なる要求値同士を調停する要請が高まっている。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、車両用制動制御装置において、次元の異なる要求値を適切に調停することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る車両用制動制御装置の発明は、一又は複数の車両用運転制御装置から要求車体減速度をそれぞれ入力可能であり、入力した要求車体減速度のうちから最も優先する要求車体減速度を優先要求車体減速度として選択する第一入力調停部と、第一入力調停部から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する制動力算出部と、一又は複数の車両用運転制御装置から要求制動力をそれぞれ入力可能であり、入力した要求制動力のうちから最も優先する要求制動力を優先要求制動力として選択する第二入力調停部と、制動力算出部から入力した対応制動力と、第二入力調停部から入力した優先要求制動力のうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する出力調停部と、出力調停部によって選択された出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータに出力する変換出力部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
これによれば、制動力算出部は、第一入力調停部から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出することにより、要求車体減速度を要求制動力と同じ次元のパラメータに変換することができる。さらに、出力調停部が、制動力算出部から入力した要求車体減速度に対応する対応制動力と、第二入力調停部から入力した優先要求制動力とのうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する。その結果、車両用制動制御装置は、次元の異なる要求値同士(例えば要求車体減速度と要求制動力)を適切に調停することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明による車両用制動制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用制動制御装置を適用した一実施形態を図面を参照して説明する。図1に示すように、車両Mは、第一〜第四運転支援制御装置(車両用運転制御装置に相当する。)11a〜11d、車体Gセンサ12、ブレーキペダル13、ブレーキアクチュエータ14、および車両用制動制御装置20を備えている。
【0010】
各運転支援制御装置11a〜11dは、車両Mの運転の制御を行う制御装置である。この車両用運転制御は、例えば運転支援制御である。運転支援制御としては、車間距離制御、衝突軽減制御、車速維持制御、車線維持制御、駐車支援制御などがある。車間距離制御(先行車追従制御ともいう)は、車両M(自車)の前方を走行する前方車両と車両Mとの車間距離を一定(例えば車速に応じて一定)に維持する制御であり、車両Mを加速させたり減速させたりする制御である。衝突軽減制御は、車両Mが障害物を感知して衝突に備える制御であり、車両Mがブレーキを自動的にかける制御である。車速維持制御は、車両Mを一定速度に維持して走行させる制御であり、車両Mを加速させたり減速させたりする制御である。
【0011】
車線維持制御は、車両Mが走行している車線を維持する制御であり、ステアリングアクチュエータ(図示しない)を自動的に操舵したり、左右輪(図示しない)のいずれかに制動力を付与したりすることにより、車両Mを操舵する制御である。駐車支援制御は、車両Mを自動的に駐車させる制御であり、車両Mを自動的に前進、後進、旋回、停車させる制御である。なお、駐車支援制御は、ペダル踏み間違い・踏み過ぎによる衝突を軽減することも可能である。
【0012】
いずれの制御においても、車両Mを減速(停車)させる際には、駆動源(エンジン、モータ)の出力を低減したり、制動力を付与したりする制御が行われる。
なお、運転支援制御装置は、異なる別々の装置でなく1つの制御装置で構成するようにしてもよい。この場合、その1つまたは複数の制御装置は、異なる制御毎に異なるアプリケーションを備えている。
【0013】
各運転支援制御装置11a〜11dは、車両用制動制御装置20に対して制動に係る要求値を送信する。要求の種類は、車体減速度に係る要求である要求車体減速度、制動力(車輪制動トルク相当の減速度である。)に係る要求である要求制動力などがある。車体減速度と制動力とは次元が異なっている。
【0014】
要求車体減速度を要求する運転支援制御装置としては、第一および第二運転支援制御装置11a,11bである。要求制動力を要求する運転支援制御装置としては、第三および第四運転支援制御装置11c,11dである。
【0015】
例えば、第一運転支援制御装置11aは、車間距離制御を行う制御装置である。第二運転支援制御装置11bは、衝突軽減制御を行う制御装置である。第三運転支援制御装置11cは、車線維持制御を行う制御装置である。第四運転支援制御装置11dは、駐車支援制御を行う制御装置である。
【0016】
撮像装置は、車両Mの前方(自車前方)の車線を示す区画線である白線を撮像する装置である。撮像装置は、例えば、カメラであり、詳しくは、CCDカメラ、CMOSカメラなどである。撮像装置は撮像した画像データを運転支援制御装置11a〜11dに出力する。
【0017】
車速センサは、車両Mの車速を検出するセンサである。車速センサは、例えば、車両Mの車輪の速度である車輪速を検出する車輪速センサ、駆動輪に駆動を出力する出力軸の回転速度を検出する車速センサにより構成されている。車速センサの検出信号は、運転支援制御装置11a〜11dに出力されている。
ヨーレートセンサは、車両Mのヨーレートを検出するセンサである。車両Mのヨーレートは、ヨー角の変化する速さであり、車両Mの重心点を通る鉛直軸まわりの回転角速度である。ヨーレートセンサの検出信号は、運転支援制御装置11a〜11dに出力されている。
【0018】
舵角センサは、車両Mのステアリングハンドル(図示しない)の操舵角の大きさを検出するセンサである。舵角センサの検出信号は、運転支援制御装置11a〜11dに出力されている。
【0019】
車体Gセンサ12は、車両Mの車体に係る減速度を検出して車両用制動制御装置20に出力するものである。
ブレーキペダル13は、ドライバによって操作され、その操作状態(操作量、操作力)に応じて車両Mに制動力を発生させるものである。ブレーキペダル13の操作状態は、検出装置(図示省略)によって検出され、その検出結果が車両用制動制御装置20に出力されている。
【0020】
ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキペダル13の操作に応じた制動力を車輪に付与する装置である。また、ブレーキアクチュエータ14は、ブレーキペダル13が操作されていない場合、全車輪に対して独立かつ能動的に制動力を付与することができる装置である。
【0021】
車両用制動制御装置20は、第一入力調停部21、制動力算出部22、外部要求制動力算出部23、内部要求制動力算出部24、第二入力調停部25、出力調停部26、および変換出力部27を備えている。
【0022】
第一入力調停部21は、一又は複数の運転支援制御装置から要求車体減速度をそれぞれ入力可能であり、入力した要求車体減速度のうちから最も優先する要求車体減速度を優先要求車体減速度として選択する。第一入力調停部21は、要求車体減速度のみを入力しそれらを調停する要求車体減速度入力調停部である。具体的には、第一入力調停部21は、第一運転支援制御装置11aから第一要求車体減速度を入力するとともに、第二運転支援制御装置11bから第二要求車体減速度を入力する。
【0023】
そして、第一入力調停部21は、第一要求車体減速度および第二要求車体減速度のうちから最も優先する要求車体減速度を優先要求車体減速度として選択する。例えば、第一入力調停部21は、入力した要求車体減速度のうち最大のものを選択(MAX選択)するようにしている。なお、第一入力調停部21は、MAX選択以外の方法、例えば、入力した要求車体減速度のうち最小のものを選択するMIN選択によって選択するようにしてもよい。あるいは、運転支援制御装置が実施している制御の緊急度に基づいて選択するようにしても良い。より具体的には、例えば、緊急度を衝突防止のような安全機能では高く、駐車支援のような利便性向上機能では低く設定し、緊急度のもっとも高い制御の要求車体減速度を選択するようにしても良い。
【0024】
第一入力調停部21は、選択した優先要求車体減速度に、それに対応する運転支援制御装置を関連付けて出力する。選択した優先要求車体減速度に対応する運転支援制御装置は、選択した優先要求車体減速度を出力した運転支援制御装置のことである。例えば、選択した優先要求車体減速度が第一要求車体減速度である場合、対応する運転支援制御装置は第一運転支援制御装置11aである。
【0025】
制動力算出部22は、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する。具体的には、制動力算出部22は、フィードバック制御を行うための制御量を算出する。例えば、制動力算出部22は、要求車体減速度と検出車体減速度との差分(動作信号)を入力し、実際の車体減速度が要求車体減速度となるような制御量(制御信号)を算出する。この制御量は、車輪制動トルク相当の減速度である制動力である。言い換えると、制御量は、要求車体減速度を車両に発生させるために必要な車輪制動トルクを実際の車体減速度と要求車体減速度との差分に従ってフィードバックして求め、求めた車輪制動トルクをそのまま車輪制動トルク値として、あるいはその他の制動力値として表したものであり、第二入力調停部25の出力する優先要求制動力と比較可能な値である。
【0026】
さらに、制動力算出部22は、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する際に、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル13の操作量に相当するドライバ要求制動力を考慮する。
例えば、ブレーキペダル13が操作されていない場合には、制動力算出部22は、入力した対応制動力をそのまま出力する。ブレーキペダル13が操作されている場合には、制動力算出部22は、入力した対応制動力に対応する運転支援制御装置に応じて、その入力した対応制動力にドライバ要求制動力を加算したり減算したり、あるいはドライバ要求制動力と対応制動力の大きい方を選択したり、ドライバ要求制動力に基づいて対応制動力を補正するなどして出力する。
【0027】
外部要求制動力算出部23は、一又は複数の運転支援制御装置から要求制動力をそれぞれ入力し、入力した各要求制動力にブレーキペダル13の操作に係るドライバ要求制動力を考慮して処理を行う。
例えば、外部要求制動力算出部23は、第三運転支援制御装置11cから第一要求制動力を入力するとともに、第四運転支援制御装置11dから第二要求制動力を入力する。
【0028】
また、例えば、ブレーキペダル13が操作されていない場合には、外部要求制動力算出部23は、入力した要求制動力をそのまま出力する。ブレーキペダル13が操作されている場合には、外部要求制動力算出部23は、要求制動力を入力した運転支援制御装置に応じて、その入力した要求制動力にドライバ要求制動力を加算したり減算したり、あるいはドライバ要求制動力と対応制動力の大きい方を選択したり、ドライバ要求制動力に基づいて対応制動力を補正するなどして出力する。
【0029】
内部要求制動力算出部24は、車両用制動制御装置20自身が行う制御(アプリケーション)、例えば横滑り抑制制御(アンダステア抑制制御、オーバステア抑制制御)、上り坂発進支援制御や下り坂走行支援制御などで使用される要求制動力を算出して出力する。横滑り抑制制御は、アンダステア抑制制御およびオーバステア抑制制御であり、所定の車輪に制動力を付与する制御である。上り坂発進支援制御は、上り坂での車両Mの発進を支援する制御であり、所定の車輪に制動力を付与する制御である。下り坂走行支援制御は、下り坂で車両Mを一定の低速度で走行させる制御であり、所定の車輪に制動力を付与する制御である。
【0030】
なお、外部要求制動力算出部23から出力される要求制動力が、車両用制動制御装置20の外部から要求される制動力である外部要求制動力である。また、内部要求制動力算出部24から出力される要求制動力が、車両用制動制御装置20の内部で要求される制動力である内部要求制動力である。
【0031】
第二入力調停部25は、一又は複数の運転支援制御装置から要求制動力をそれぞれ入力可能であり、入力した要求制動力のうちから最も優先する要求制動力を優先要求制動力として選択する。第二入力調停部25は、要求制動力のみを入力しそれらを調停する要求制動力入力調停部である。
【0032】
第二入力調停部25は、外部要求制動力算出部23から、一又は複数の運転支援制御装置に対応した各外部要求制動力、またはドライバ要求制動力を考慮した各外部要求制動力を入力する。具体的には、第二入力調停部25は、第三運転支援制御装置11cからの第一要求制動力を入力するとともに、第四運転支援制御装置11dからの第二要求制動力を入力する。
さらに、第二入力調停部25は、内部要求制動力算出部24から内部要求制動力を入力する。
【0033】
そして、第二入力調停部25は、第一外部要求制動力、第二外部要求制動力および内部要求制動力のうちから最も優先する要求制動力を優先要求制動力として選択する。例えば、第二入力調停部25は、入力した要求制動力のうち最大のものを選択(MAX選択)するようにしている。
【0034】
第二入力調停部25は、選択した優先要求制動力に、それに対応する運転支援制御装置を関連付けて出力する。選択した優先要求制動力に対応する運転支援制御装置は、選択した優先要求制動力を出力した運転支援制御装置のことである。
【0035】
なお、上述したように、第二入力調停部25は、各運転支援制御装置11c、11dからの各要求制動力に、ブレーキペダル13の操作量に相当するドライバ要求制動力をそれぞれ考慮して優先要求制動力を選択する。
【0036】
出力調停部26は、制動力算出部22から入力した対応制動力と、第二入力調停部25から入力した優先要求制動力のうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する。例えば、出力調停部26は、入力した各制動力のうち最大のものを選択(MAX選択)するようにしている。
【0037】
出力調停部26は、全ての運転支援制御装置11a〜11dに対して、いずれの運転支援制御装置からの要求車体減速度または要求制動力が最終的に選択されたかを送信する。
各運転支援制御装置11a〜11dのうち、出力調停部26によって最終的に選択された要求車体減速度または要求制動力に対応する運転支援制御装置以外の運転支援制御装置(選択外運転支援制御装置)は、出力する要求車体減速度と出力制動力とのによって発生する減速度が異なることが連続することによる影響、または要求制動力と出力制動カとの乖離による影響が発生する恐れがある。具体的には、例えば、要求車体減速度や要求制動力が適正値から外れたり、異常を誤検出する可能性がある。従って、選択外運転支援制御装置は必要に応じて影響の発生を防止あるいは影響を低減するような非選択時対応処理を行う。例えば、非選択時対応処理は、選択外車両用制動制御装置が、自身が選択されるまで自身の制御(要求値の算出)を停止したり、異常検出を中止したりする処理である。なお、選択外車両用制動制御装置は、自身が選択された場合には、自身の制御を再開する。
【0038】
出力調停部26は、要求車体減速度でなく要求制動力が最終的に選択された場合、制動力算出部22に対して、要求制動力が最終的に選択された旨を送信する。このとき、制動力算出部22は、要求制動力が最終的に選択された旨を受信した場合、フィードバックを停止するなどして、対応制動力の算出を停止する。これにより、選択されなった間に誤った対応制動力を算出することを確実に防止でき、また、最終的な選択が要求車体減速度に切り替わった場合に誤って算出した対応制動力を出力することを防止できる。
【0039】
変換出力部27は、出力調停部26によって選択された出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータ14に出力する。
【0040】
上述したように構成した車両用制動制御装置の作動について説明する。例えば、自車Mが先行車に対して車間距離制御中である場合、自車Mと先行車との間に他の車両が割り込んだ場合について説明する。まず、車間距離制御中である場合、車両用制動制御装置20は、第一運転支援制御装置11aからの要求車体減速度(第一要求車体減速度)を優先要求車体減速度として選択する。他の要求車体減速度の入力がないためである。
【0041】
他の車両が割り込んだ場合、車両用制動制御装置20は、第一運転支援制御装置11aからの第一要求車体減速度と、第二運転支援制御装置11bからの第二要求車体減速度とを入力し、それらのうち最大のものを優先要求車体減速度として選択する(第一入力調停部21)。そして、車両用制動制御装置20は、優先要求車体減速度から、優先要求車体減速度に対応した対応制動力を算出する(制動力算出部22)。
【0042】
そして、要求制動力の入力がない場合には、車両用制動制御装置20は、制動力算出部22から入力した対応制動力を出力制動力(最終的に一つだけ優先する制動力)として選択して出力する(出力調停部26)。車両用制動制御装置20は、出力調停部26によって選択された出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータ14に出力する(変換出力部27)。
【0043】
よって、自車Mが先行車に対して車間距離制御中である場合であって、自車Mと先行車との間に他の車両が割り込んだ場合、車両用制動制御装置20は、入力した複数の要求車体減速度から適切な要求車体減速度を選択することにより、最適な制動制御方法および最適な制動量を決定することができる。
【0044】
さらに、自車Mが先行車に対して車間距離制御中である場合であって、自車Mが車線維持制御を行った場合(特に制動付与によって車線維持制御を行った場合)について説明する。まず、車間距離制御中である場合、車両用制動制御装置20は、第一運転支援制御装置11aからの要求車体減速度(第一要求車体減速度)を優先要求車体減速度として選択する。他の要求車体減速度の入力がないためである。
【0045】
自車Mが車線維持制御を行った場合、車両用制動制御装置20は、第一運転支援制御装置11aからの第一要求車体減速度と、第三運転支援制御装置11cからの第一要求制動力とを入力し、それらのうち制動力ベースで最大のものを出力制動力として選択して出力する(出力調停部26)。なお、第一要求車体減速度は、制動力算出部22にて制動力ベースである対応制動力に変換されて、出力調停部26に入力される。第一要求制動力は、外部要求制動力算出部23および第二入力調停部25を経て、出力調停部26に入力される。他の要求制動力の入力がないためである。車両用制動制御装置20は、出力調停部26によって選択された出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータ14に出力する(変換出力部27)。
【0046】
よって、自車Mが先行車に対して車間距離制御中である場合であって、自車Mが車線維持制御を行った場合、車両用制動制御装置20は、入力した次元の異なる要求車体減速度および要求制動力から、適切な制御対象パラメータ(要求制動力の方が大きい場合には、制御対象パラメータは要求制動量である。)を適切に選択することにより、最適な制動制御方法および最適な制動量を決定することができる。
【0047】
なお、複数の要求制動力が入力され、要求車体減速度の入力がない場合、車両用制動制御装置20は、入力した複数の要求制動力から適切な要求制動力を選択することにより、最適な制動制御方法および最適な制動量を決定することができる。
【0048】
上述した説明から明らかなように、本実施形態の車両用制動制御装置20は、一又は複数の運転支援制御装置11a,11bから要求車体減速度をそれぞれ入力可能であり、入力した要求車体減速度のうちから最も優先する要求車体減速度を優先要求車体減速度として選択する第一入力調停部21と、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する制動力算出部22と、一又は複数の運転支援制御装置11c,11dから要求制動力をそれぞれ入力可能であり、入力した要求制動力のうちから最も優先する要求制動力を優先要求制動力として選択する第二入力調停部25と、制動力算出部22から入力した対応制動力と、第二入力調停部25から入力した優先要求制動力とのうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する出力調停部26と、出力調停部26によって選択された出力制動力を油圧に変換してブレーキアクチュエータ14に出力する変換出力部27と、を備えている。
【0049】
これによれば、制動力算出部22は、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出することにより、要求車体減速度を要求制動力と同じ次元のパラメータに変換することができる。さらに、出力調停部26が、制動力算出部22から入力した要求車体減速度に対応する対応制動力と、第二入力調停部25から入力した優先要求制動力とのうちから、最終的に一つだけ優先する制動力を出力制動力として選択する。その結果、車両用制動制御装置20は、次元の異なる要求値同士(例えば要求車体減速度と要求制動力)を適切に調停することが可能となる。
【0050】
また、出力調停部26は、運転支援制御装置11a〜11dに対して、いずれの運転支援制御装置11a〜11dからの要求車体減速度または要求制動力が最終的に選択されたかを送信している。
【0051】
これによれば、各運転支援制御装置11a〜11dは、出力調停部26から受信すると、最終的に選択された要求車体減速度または要求制動力に対応する運転支援制御装置11a〜11dに関する情報を確認することができる。その結果、運転支援制御装置11a〜11dは、出力調停部26からの情報に基づいて適切な制御を行うことができる。
【0052】
また、各運転支援制御装置11a〜11dのうち、出力調停部26によって最終的に選択された要求車体減速度または要求制動力に対応する運転支援制御装置11a〜11d以外の運転支援制御装置11a〜11dは、選択されなかったことによる影響の発生を防止あるいは影響を低減するような非選択時対応処理を行う。
これによれば、選択されなかった運転支援制御装置11a〜11d(選択外運転支援制御装置)は、必要に応じて影響の発生を防止あるいは影響を低減するような非選択時対応処理を行うことが可能となる。よって、要求車体減速度や要求制動力が適正値から外れたり、異常を誤検出するのを抑制することができる。
【0053】
また、出力調停部26は、要求制動力(要求制動力に対応する運転支援制御装置11c、11d)が最終的に選択された場合、制動力算出部22に対して、要求制動力が最終的に選択された旨を送信し、制動力算出部22は、要求制動力が最終的に選択された旨を受信した場合、対応制動力の算出を停止する。
これによれば、要求制動力に対応する運転支援制御装置11c、11dや要求制動力に対応するドライバのブレーキ操作によるブレーキ要求制動力が選択されている間において、制動力算出部22は、要求車体減速度から対応制動力を算出するのを停止するので、誤った対応制動力の算出を確実に抑制することが可能となる。また、要求制動力に対応する運転支援制御装置11c、11dから要求車体減速度に対応する運転支援制御装置11a、11bに切り替わった場合にも、制動力算出部22は、誤った対応制動力の算出を抑制することが可能となるので、誤った車両挙動を抑制することが可能となる。
【0054】
また、車両用制動制御装置20は、無駄な変換処理を省略することができ、演算負担を低減することができる。また、調停対象のアプリケーションが増加する場合でも、対応することができるため、拡張性を高くすることができる。
【0055】
また、第二入力調停部25は、各運転支援制御装置11c、11dからの要求制動力に、ブレーキペダル13の操作量に相当するドライバ要求制動力をそれぞれ考慮して優先要求制動力を選択する。
これによれば、車両用制動制御装置20は、より適切に優先要求制動力を選択することが可能となる。
【0056】
また、制動力算出部22は、第一入力調停部21から入力した優先要求車体減速度から対応制動力を算出する際に、ブレーキペダル13の操作量に相当するドライバ要求制動力を考慮する。
これによれば、車両用制動制御装置20は、より適切に対応制動力を算出することが可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、出力調停部26から要求制動力が最終的に選択された旨を制動力算出部22が受けて、制動力算出部22は対応制動力の算出を停止していたが、第二入力調停部25から制動力算出部22へ優先要求制動力を送信し、制動力算出部22は優先要求制動力に基づいて、対応制動力の算出を停止しても良い。この場合出力調停部26を経ることによる時間的な遅れが発生しない。
【0058】
また、本実施形態では、外部要求制動力算出部23で一旦、運転支援制御装置からの要求制動力とブレーキ操作による対応制動力から外部要求制動力を算出し、内部要求制動力算出部24で、車両用制御装置20自身が行う制御の要求制動力から内部要求制動力を算出し、第二入力調停部25で外部要求制動力と内部要求制動力に基づいて優先要求制動力を算出するように構成していたが、これに限られるものではない。例えば、内部要求制動力算出部24にもブレーキ操作による対応制動力が入力され、内部要求制動力の算出に用いられても良い。あるいは、外部要求制動力算出部23と内部要求制動力算出部24を削除し、直接、第二入力調停部25に運転支援制御装置からの制動要求と、車両用制御装置20自身が行う要求制動力と、ブレーキ操作による対応制動力を入力し、第二入力調停部25が入力された要求制動力とブレーキ操作による対応制動力に基づいて、優先要求制動力を算出するように構成してもよい。あるいは、外部要求制動力算出部23と内部要求制動力算出部24と第二入力調停部25を削除し、出力調停部26に運転支援制御装置からの制動要求と、車両用制御装置20自身が行う要求制動力と、ブレーキ操作による対応制動力を入力し、出力調停部26が入力された要求制動力とブレーキ操作による対応制動力に基づいて優先要求制動力を算出し、算出した要求制動力と制動力算出部22から入力された対応制動力から出力制動力を選出するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11a〜11d…第一〜第四運転支援制御装置(第一〜第四車両用運転制御装置)、12…車体Gセンサ、13…ブレーキペダル(ブレーキ操作部材)、14…ブレーキアクチュエータ、20…車両用制動制御装置、21…要求車体減速度入力調停部(第一入力調停部)、22…制動力算出部、23…外部要求制動力算出部、24…内部要求制動力算出部、25…要求制動力入力調停部(第二入力調停部)、26…出力調停部、27…変換出力部、M…車両(自車)。
図1