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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-205415(P2016-205415A)
(43)【公開日】2016年12月8日
(54)【発明の名称】車輪用軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20161111BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20161111BHJP
   F16C 33/76 20060101ALI20161111BHJP
   B60B 35/02 20060101ALI20161111BHJP
【FI】
   F16C41/00
   F16C19/18
   F16C33/76 A
   B60B35/02 Z
   B60B35/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-83222(P2015-83222)
(22)【出願日】2015年4月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】高麗 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 茂
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 有一
【テーマコード(参考)】
3J016
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J016AA01
3J016BA02
3J217JA02
3J217JA13
3J217JA24
3J217JA34
3J217JA44
3J217JA48
3J217JB17
3J217JB23
3J217JB25
3J217JB52
3J217JB55
3J217JB64
3J217JB85
3J217JB87
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701BA80
3J701FA46
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】部品点数の増大を抑制しながら低コスト化を図ることが可能な車輪用軸受装置を提供する。
【解決手段】車輪用軸受装置1は、車体側に取り付けられる外方部材2と、車輪が取り付けられる内方部材3と、外方部材2と内方部材3との間に配置された転動体4と、複数の磁極が交互に配置された磁性リング5と、磁性リング5の磁極の磁界を検出する磁界センサ7を支持する樹脂キャップ8とを備える。樹脂キャップ8は、外方部材2に外嵌される円筒状の嵌合部81と、磁界センサ7が固定される固定部82とを一体に有する樹脂製であり、固定部82に磁界センサ7の検出部71を挿通させる挿通孔820が形成されると共に、挿通孔820の近傍にあたる嵌合部81の内周に内方突起812が形成され、この内方突起812が外方部材2の外周面に形成された凹部230に係合することで、樹脂キャップ8が外方部材2に対して抜け止め及び回り止めされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周に外側軌道面が形成され、車体側に取り付けられる外方部材と、
外周に内側軌道面が形成され、車輪が取り付けられる車輪取付フランジを有する内方部材と、
前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に配置された複数の転動体と、
磁性の異なる複数の磁極が周方向に沿って交互に配置され、前記内方部材と一体に回転する環状の磁性リングと、
前記磁性リングの前記複数の磁極の磁界を検出する磁界センサを支持する支持部材とを備え、
前記支持部材は、前記外方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、前記磁界センサが固定される固定部とを一体に有する樹脂製であり、前記固定部に前記磁界センサの検出部を挿通させる挿通孔が形成されると共に、前記挿通孔の近傍にあたる前記嵌合部の内周に径方向内側に突出する内方突起が形成され、
前記内方突起が前記外方部材の外周面に形成された凹部に係合することで、前記支持部材が前記外方部材に対して抜け止め及び回り止めされる、
車輪用軸受装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記外方部材の上端部における1箇所に形成された、
請求項1に記載の車輪用軸受装置。
【請求項3】
前記凹部は、前記外方部材の周方向に延在し、かつ周方向の中央部において前記外方部材の径方向における深さが最も深くなるように形成された、
請求項1又は2に記載の車輪用軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪用軸受装置として、車体側に取り付けられる外方部材と、車輪が取り付けられる内方部材と、磁性の異なる磁極が周方向に沿って交互に配置されたパルサリングと、パルサリングの磁界を検出するセンサを支持するセンサキャップとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1のセンサキャップは、合成樹脂からなるキャップ本体と、キャップ本体にモールドされた芯金とからなる。キャップ本体は、外方部材の内周に圧入される円筒状の嵌合部と、外方部材の端面に密着する段付部と、嵌合部から段付部を介して径方向内方に延びる底部とを備える。芯金は、キャップ本体の嵌合部及び段付部にモールドされ、キャップ本体を補強している。この芯金により、センサキャップが外方部材に強固に固定されている。センサキャップの底部には、センサの一部を挿通させる挿通孔が形成されている。
【0004】
特許文献2のセンサキャップは、カチオン電着塗装や亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鋼板をプレス成形してカップ状に形成されている。このセンサキャップは、外方部材2の端部外周に圧入される円筒状の嵌合部と、外方部材の端面に密着する底部とを備えている。センサキャップの底部には、センサが嵌挿される嵌挿孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−117549号公報
【特許文献2】特開2011−117583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の車輪用軸受装置のセンサキャップは、外方部材に圧入される嵌合部が芯金によって補強されているが、この芯金をキャップ本体にモールドするために、芯金の分だけセンサキャップの部品点数が増大してしまう。一方、特許文献2に記載のセンサキャップは、車両の走行に伴って跳ね上げられた泥水等による錆の発生を防ぐため防錆処理が必要となり、この防錆処置が製造コスト削減の妨げとなる。また、特許文献2に記載のものでは、センサキャップを外方部材に圧入する際の摩擦により、防錆処理として施された塗装やメッキが剥がれてしまうおそれもある。
【0007】
そこで、本発明は、部品点数の増大を抑制しながら低コスト化を図ることが可能な車輪用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、内周に外側軌道面が形成され、車体側に取り付けられる外方部材と、外周に内側軌道面が形成され、車輪が取り付けられる車輪取付フランジを有する内方部材と、前記外側軌道面と前記内側軌道面との間に配置された複数の転動体と、磁性の異なる複数の磁極が周方向に沿って交互に配置され、前記内方部材と一体に回転する環状の磁性リングと、前記磁性リングの前記複数の磁極の磁界を検出する磁界センサを支持する支持部材とを備え、前記支持部材は、前記外方部材に外嵌される円筒状の嵌合部と、前記磁界センサが固定される固定部とを一体に有する樹脂製であり、前記固定部に前記磁界センサの検出部を挿通させる挿通孔が形成されると共に、前記挿通孔の近傍にあたる前記嵌合部の内周に径方向内側に突出する内方突起が形成され、前記内方突起が前記外方部材の外周面に形成された凹部に係合することで、前記支持部材が前記外方部材に対して抜け止め及び回り止めされる、車輪用軸受装置を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車輪用軸受装置によれば、部品点数の増大を抑制しながら低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置を示す断面図である。
図2図1の一部を拡大して示す拡大図である。
図3】樹脂キャップを装着する前の車輪用軸受装置を車体側から見た状態を示す構成図である。
図4】樹脂キャップを示す斜視図である。
図5】(a)は樹脂キャップを車体側から見た正面図、(b)は樹脂キャップを内方部材側から見た背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
(車輪用軸受装置の全体構成)
図1は本発明の実施の形態に係る車輪用軸受装置を示す断面図である。図2は、図1の一部を拡大して示す拡大図である。図3は、後述する樹脂キャップを装着する前の車輪用軸受装置を車体側から見た状態を示す構成図である。図3では、図面上方が鉛直方向の上方にあたる。
【0012】
この車輪用軸受装置1は、車両の懸架装置のナックルに取り付けられ、車輪を回転可能に支持するために用いられる。車輪用軸受装置1は、車体側に取り付けられる外方部材2と、車輪が取り付けられる内方部材3と、外方部材2と内方部材3との間に配置される複数の転動体4と、内方部材3と一体に回転する磁性リング5と、キャップ状の封止部材6と、磁界センサ7を支持する支持部材としての樹脂キャップ8とを有する。以下の説明では、車輪用軸受装置1において車輪が取り付けられる側(図1の左側)を車両アウタ側といい、その反対側(図1の右側)を車両インナ側という。
【0013】
外方部材2は、円筒状の基部21と、車体側のナックルへの取り付けのための複数の車体取付フランジ22と、車体取付フランジ22よりも車体側に延出された円筒状の延出部23とを一体に有している。外方部材2は、例えば中炭素鋼からなる。
【0014】
基部21の内周には、転動体4を転動させる第1外側軌道面2a及び第2外側軌道面2bが周方向に沿って互いに平行に形成されている。第1外側軌道面2aは第2外側軌道面2bよりも車両アウタ側に形成されている。複数の車体取付フランジ22のそれぞれには、ナックルに螺合するボルトを挿通させるボルト挿通孔22aが形成されている。
【0015】
延出部23は、互いに外径が異なる大径部231と小径部232とを有し、小径部232が大径部231よりも車両インナ側に位置している。大径部231の外周面231aは、ナックルに嵌合される嵌合面として形成されている。小径部232の外周面232aには、後述する樹脂キャップ8の内方突起812が係合する凹部230が形成されている。凹部230は、図3に示すように、外方部材2の上端部における1箇所に形成されている。
【0016】
本実施の形態では、凹部230の断面形状が矩形状である。凹部230の内面は、図2に示すように、車両アウタ側の第1内側面230aと、第1内側面230aに向かい合う第2内側面230bと、底面230cとによって構成されている。第1内側面230a及び第2内側面230bは、底面230cに対して垂直となるように形成されている。凹部230は、例えば旋削によって形成することができる。
【0017】
内方部材3は、回転軸線Oを中心として外方部材2に対して回転可能に配置されている。図1及び図2は、この回転軸線Oに沿った断面を図示している。内方部材3の外周には、転動体4を転動させる第1内側軌道面3a及び第2内側軌道面3bが周方向に沿って互いに平行に形成されている。第1内側軌道面3aは外方部材2の第1外側軌道面2aに対向し、第2内側軌道面3bは外方部材2の第2外側軌道面2bに対向する。
【0018】
本実施の形態では、内方部材3がハブ輪31及び環状の内輪部材32からなる。ハブ輪31は、車輪が取り付けられる車輪取付フランジ311と、外方部材2の基部21の内側に配置される胴部313と、車輪取付フランジ311と胴部313とを連結する連結部312とを一体に有している。ハブ輪31は、例えば中炭素鋼からなる。内輪部材32は、例えば冷間圧延鋼板からなる。
【0019】
車輪取付フランジ311には、車輪取付用のセレーション付きボルト33を圧入して挿通させる複数のボルト挿通孔311aが形成されている。連結部312は、胴部313側から車輪取付フランジ311側に向かって内径が徐々に拡大している。
【0020】
胴部313は、車輪取付フランジ311側の大径部314と、車輪取付フランジ311側とは反対側の小径部315とを有している。大径部314の外周面には、第1内側軌道面3aが形成されている。小径部315の外周面には、内輪部材32が嵌着されている。内輪部材32は、小径部315の車両インナ側の端部を塑性変形させた加締め部315aによってハブ輪31に固定されている。内輪部材32の外周面には、第2内側軌道面3bが形成されている。
【0021】
複数の転動体4は、第1外側軌道面2aと第1内側軌道面3aとの間、及び第2外側軌道面2bと第2内側軌道面3bとの間に配置されている。以下の説明では、複数の転動体4のうち、第1外側軌道面2aと第1内側軌道面3aとの間に配置された転動体4を第1列の転動体41といい、第2外側軌道面2bと第2内側軌道面3bとの間に配置された転動体4を第2列の転動体42という。第1列の転動体41は、第1保持器43によって転動可能に保持され、第1外側軌道面2a及び第1内側軌道面3aを転動する。第2列の転動体42は、第2保持器44によって転動可能に保持され、第2外側軌道面2b及び第2内側軌道面3bを転動する。
【0022】
本実施の形態では、転動体4(第1列の転動体41及び第2列の転動体42)が球体であるが、これに限らず円錐ころであってもよい。また、本実施の形態では、内方部材3が1つの内輪部材32を有しているが、これに限らず、内方部材3が2つの内輪部材を有し、このうち車両アウタ側の内輪部材に第1内側軌道面3aが形成され、車両インナ側の内輪部材に第2内側軌道面3bが形成されていてもよい。
【0023】
磁性リング5は、図2に示すように、芯金51と、芯金51に取り付けられた環状の磁性部材52とを有している。芯金51は、内輪部材32の外周面に嵌着された円筒状の円筒部511と、円筒部511の一端部から外周側に折り曲げられた折曲部512と、折曲部512の外周縁から内周側に折り返された折り返し部513とを有している。芯金51は、例えばステンレスや鉄等の金属からなり、円筒部511が圧入によって内輪部材32の外周面に嵌着されている。
【0024】
磁性部材52は、例えば加硫接着によって芯金51の折曲部512及び折り返し部513に接合されている。磁性部材52は、例えばゴム製の円環部材にフェライト系のステンレス鋼粉を混入して形成されている。また、磁性部材52には、磁性の異なる複数の磁極(N極及びS極)が周方向に沿って交互に配置されている。
【0025】
封止部材6は、金属からなる有底円筒状の本体部61と、合成ゴム等の弾性体からなるシール部62とを有している。本体部61は、円筒状の円筒部611と、円筒部611の一端を閉塞する円板状の底部612とを一体に有している。本体部61は、例えばオーステナイト系ステンレス等の非磁性の鋼板をプレス加工して形成されている。円筒部611は、底部612側の端部がテーパ状に縮径しており、このテーパ状の部分の外周面にシール部62が例えば加硫接着によって接合されている。
【0026】
封止部材6の本体部61は、外方部材2の延出部23に内嵌されている。外方部材2の延出部23は、車両インナ側に開口する円筒状であり、封止部材6は、この開口から延出部23の内部に圧入されている。封止部材6のシール部62は、延出部23の内部への圧入によって延出部23の内周面23aに押し付けられ、延出部23の内周面23aと本体部61との間を封止する。
【0027】
磁性リング5の磁性部材52は、封止部材6の本体部61における底部612の内面612aに僅かな隙間を介して対向している。磁性リング5及び複数の転動体4が収容された外方部材2と内方部材3との間の収容空間1aは、車両インナ側が封止部材6によって封止され、車両アウタ側がシール部材91によって封止されている。シール部材91は、外方部材2の基部21における車両アウタ側の端部内周に取り付けられ、ハブ輪31の連結部312との間を封止している。
【0028】
磁界センサ7は、ホール素子等の磁界検出素子70を有する検出部71と、樹脂キャップ8に固定される固定部72と、ケーブル部73とを有している。本実施の形態では、検出部71が円柱状であり、この検出部71が樹脂キャップ8に形成された挿通孔820に挿通されている。固定部72は、樹脂キャップ8の外部において、ボルト92によって樹脂キャップ8に固定されている。なお、図1では、固定部72の一部を破断して、その断面を図示している。
【0029】
検出部71には、その先端部に磁界検出素子70が収容されている。磁界検出素子70は、樹脂からなる封止材に封止されている。図2では、ケースの内部に収容された磁界検出素子70を破線で示している。検出部71の先端面71aは、封止部材6の本体部61における底部612の外面612bに僅かな隙間を介して対向している。磁界検出素子70は、封止部材6の底部612を介して、磁性部材52の複数の磁極の磁界を検出する。
【0030】
内方部材3が回転すると、磁界センサ7の検出部71に封止部材6の底部612を介して向かい合う部位における磁性部材52の磁極の磁性が変化する。これにより、磁界検出素子70によって検出される磁界が変化する。磁界検出素子70は、内方部材3の回転に伴う磁界の変化を電気信号として出力し、この電気信号がケーブル部73の図略の電線によって車両のECU(Electronic Control Unit)に伝送される。ECUは、磁界センサ7の電気信号に基づいて、車輪の回転速度を検出可能である。そして、ECUは、検出した車輪の回転速度に応じて例えば車輪に付与する制動力を調節し、制動時における車輪のロックを抑止する。
【0031】
図4は、樹脂キャップ8を示す斜視図である。図5(a)は、樹脂キャップ8を車両インナ側から見た正面図であり、図5(b)は、樹脂キャップ8を車両アウタ側から見た背面図である。
【0032】
樹脂キャップ8は、外方部材2に外嵌される円筒状の嵌合部81と、磁界センサ7が固定される固定部82とを一体に有する樹脂製である。樹脂キャップ8を構成する樹脂材料としては、硬質で耐候性に優れた66ナイロンを好適に用いることができる。また、この樹脂材料として、ガラス繊維や炭素繊維を添加した66ナイロンを用いるとより好ましい。樹脂キャップ8は、例えば射出成型によって形成される。
【0033】
樹脂キャップ8の嵌合部81は、円筒形の円筒部811と、円筒部811の内周面811aから内方に突出した内方突起812とを有し、全体として円筒状を呈している。内方突起812は、挿通孔820の近傍にあたる嵌合部81の内周に、径方向内側に突出して形成されている。本実施の形態では、内方突起812が、挿通孔820の外周側にあたる1箇所に形成されている。樹脂キャップ8は、内方突起812が外方部材2に形成された凹部230に係合することで、外方部材2に対して抜け止め及び回り止めされている。
【0034】
内方突起812は、図2に示すように、その断面形状が台形状である。円筒部811の先端側(固定部82とは反対側)における内方突起812の第1側面812aは、円筒部811の内周面811aに垂直な方向に対して傾斜している。内方突起812の第1側面812aと円筒部811の内周面811aとの間の角度は鈍角である。このため、内方突起812の第1側面812aは、周方向溝230の第1内側面230aとの間隔が、周方向溝230の底面230c側ほど広くなっている。
【0035】
一方、内方突起812における第1側面812aとは反対側(固定部82側)の第2側面812bは、円筒部811の内周面811aに対して垂直に形成されている。このため、内方突起812の第2側面812bは、凹部230の第2内側面230bに対して平行に向かい合う。
【0036】
樹脂キャップ8は、車両インナ側から外方部材2に装着される。樹脂キャップ8は、固定部82に磁界センサ7を固定してから外方部材2に装着してもよく、樹脂キャップ8を外方部材2に装着してから固定部82に磁界センサ7を固定してもよい。樹脂キャップ8は、外方部材2への嵌合によって装着される。
【0037】
樹脂キャップ8を外方部材2に嵌合する際には、内方突起812の第1側面812aが外方部材2の延出部23の先端部に当接することで、嵌合部81の一部が弾性的に外方に膨らむ。これにより、樹脂キャップ8を容易に外方部材2に嵌合することが可能となる。また、外方に膨らんだ嵌合部81は、内方突起812が外方部材2の凹部230に係合することにより元の大きさに復元する。この状態では、前述のように第2側面812bが凹部230の第2内側面230bに対して平行に向かい合い、樹脂キャップ8の外方部材2からの離脱が抑止される。
【0038】
樹脂キャップ8の固定部82には、磁界センサ7の検出部71を挿通させる挿通孔820が形成されている。また、樹脂キャップ8の固定部82には、中心部にネジ孔821aが形成された円柱状のボス部821が形成されている。このネジ孔821aには、磁界センサ7の固定部72を挿通するボルト92が螺合する。なお、ボルト92としては、PPS(ポリフェニレンサルファイド)やPC(ポリカーボネート)等の樹脂材料からなる樹脂ネジを用いることが望ましい。
【0039】
また、樹脂キャップ8には、水分を排出するための排出口80が形成されている。この排出口80は、外方部材2の延出部23における小径部232の外周面232aと樹脂キャップ8の嵌合部81との間から浸入した泥水等を外部に排出する。本実施の形態では、排出口80が嵌合部81と固定部82との間に跨って形成されているが、排出口80は、嵌合部81のみ、又は固定部82のみに形成されていてもよい。樹脂キャップ8は、挿通孔820が鉛直方向の上方に位置し、かつ排出口80が鉛直方向の下方に位置するように、外方部材2に嵌合される。
【0040】
樹脂キャップ8の嵌合部81における円筒部811の内径は、常温(25℃)において、外方部材2の延出部23における小径部232の外径よりも大きい。このため、樹脂キャップ8の中心点Cが内方部材3の回転軸線O上にある場合、樹脂キャップ8における円筒部811の内周面811aと、外方部材2の延出部23における小径部232の外周面232aとの間には、径方向寸法がgの第1隙間Sが形成される。また、内方突起812の内周面812cと凹部230の底面230cとの間にも、径方向寸法がgの第2隙間Sが形成される。すなわち、樹脂キャップ8の嵌合部81は、常温において、外方部材2の外周面に隙間嵌めにより外嵌される。
【0041】
この構成は、外方部材2と樹脂キャップ8との熱膨張率の違いを考慮して、樹脂キャップ8が外方部材2から外れたり、樹脂キャップ8に割れが生じないように配慮されたものである。つまり、樹脂材料は一般に金属材料よりも熱膨張率が高いので、仮に常温における樹脂キャップ8の円筒部811の内径と外方部材2の延出部23における小径部232の外径とを同一にした場合、低温時において樹脂キャップ8に割れが生じやすくなる。これは、低温時において樹脂キャップ8が外方部材2よりも高い割合で収縮することによるものである。樹脂キャップ8を66ナイロンによって形成した場合、その熱膨張率は、例えば8×10−5cm/cm・℃である。また、外方部材2を冷間圧延鋼板によって形成した場合、その熱膨張率は、例えば10×10−6cm/cm・℃である。
【0042】
本実施の形態では、樹脂キャップ8及び外方部材2の温度が−40℃となっても樹脂キャップ8に熱収縮による割れが発生しないように、常温時における第1隙間Sの径方向寸法g及び第2隙間Sの径方向寸法gが設定されている。具体的には、常温時における第1隙間Sの径方向寸法g、及び第2隙間Sの径方向寸法gは、例えば0mm以上3mm以下である。また、図3に示すように外方部材2の延出部23における小径部232の外径寸法をDとし、図5(b)に示すように樹脂キャップ8の嵌合部81における円筒部811の内径寸法をDとすると、DのDに対する割合(D/D)は、例えば1.00以上1.01以下である。
【0043】
また、本実施の形態では、内方突起812の突出高さhが、高温時における樹脂キャップ8の熱膨張によって凹部230との係合状態が解除されない高さに設定されている。具体的には、樹脂キャップ8及び外方部材2の温度が120℃となっても内方突起812と凹部230との係合状態が解除されないように内方突起812の突出高さhが設定されている。この内方突起812の円筒部811の内周面811aからの突出高さhは、例えば1.0mm以上1.5mm以下である。
【0044】
図3に示すように、凹部230は、外方部材2の周方向に延在し、かつ周方向の中央部において外方部材2の径方向における深さが最も深くなるように形成されている。本実施の形態では、凹部230の底面230cが、外方部材2の径方向に対して垂直な直線状に形成されている。このような凹部230は、例えば切削によって容易に形成することができる。
【0045】
外方部材2の径方向における凹部230の最深部の深さdは、内方突起812の突出高さhよりも深い。また、凹部230の深さは、周方向の端部に近づくほど浅くなる。これにより、内方突起812が凹部230の中央部に係合した後に樹脂キャップ8が外方部材2に対して回転すると、内方突起812が底面230cに当接し、さらなる樹脂キャップ8の回転が規制される。この結果、樹脂キャップ8が外方部材2に対して回り止めされる。
【0046】
また、内方突起812は、樹脂キャップ8の中心点Cから見た場合に、挿通孔820の外側にあたる範囲に少なくとも一部が形成されていることが望ましい。すなわち、図5(b)に示すように、樹脂キャップ8の中心点Cを通って挿通孔820の外縁に接する2本の接線(図5(b)に二点鎖線で示す)の間の範囲に、内方突起812の少なくとも一部が形成されていることが望ましい。本実施の形態では、内方突起812の全体がこの範囲に形成されている。
【0047】
このように内方突起812を形成することにより、例えば磁界センサ7のケーブル部73によって樹脂キャップ8が車両インナ側に引っ張られても、樹脂キャップ8が外れてしまうことが抑止される。つまり、車両の走行に伴う振動によって磁界センサ7のケーブル部73に張力が発生し、この張力によって樹脂キャップ8が引っ張られても、この力を内方突起812が挿通孔820の近傍で受け止めることにより、樹脂キャップ8が外れてしまうことが抑止される。
【0048】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
【0049】
(1)本実施の形態では、樹脂キャップ8の内方突起812が外方部材2の外周面に形成された凹部230に係合することで、樹脂キャップ8が外方部材2に対して抜け止めされる。これにより、例えば特許文献1に記載されたもののように、樹脂キャップ8に芯金を一体モールドしなくとも、樹脂キャップ8が外方部材2から脱落してしまうことを抑止できる。このため、部品点数及び製造コストの削減が可能となる。また、本実施の形態では、樹脂キャップ8の内方突起812が外方部材2の外周面に形成された凹部230に係合することで、樹脂キャップ8が外方部材2に対して回り止めされる。これにより、内方突起812の凹部230への係合によって樹脂キャップ8を適正な位置、すなわち挿通孔820が中心点Cの上方に配置され、かつ排出口80が中心点Cの下方に配置される位置に、位置決めすることができる。
【0050】
(2)本実施の形態では、凹部230が外方部材2の上端部における1箇所に形成され、挿通孔820の近傍に形成された内方突起812がこの凹部230に係合する。これにより、磁界センサ7のケーブル部73に作用する張力によって樹脂キャップ8が車両インナ側に引っ張られても、樹脂キャップ8が外れてしまうことが抑止される。
【0051】
(3)本実施の形態では、凹部230が外方部材2の周方向に延在し、かつ周方向の中央部において外方部材2の径方向における深さが最も深くなるように形成されている。これにより、内方突起812の凹部230への位置合わせが容易となる。つまり、樹脂キャップ8を外方部材2に嵌合した際、内方突起812の位置が凹部230の最深部から周方向にずれていても、その位置から内方部材812が凹部230の最深部へ近づく方向へは樹脂キャップ8が回りやすく、逆方向へは回りにくい。このため、作業者は、内方突起812が凹部230の最深部に係合するように、容易に位置合わせを行うことが可能となる。
【0052】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0053】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、磁界センサ7をボルト92によって樹脂キャップ8の固定部82に固定する場合について説明したが、磁界センサ7の固定方法はこれに限らない。また、磁性リング5や封止部材6の構成等は、その機能を満たす限り、適宜変形することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…車輪用軸受装置、1a…収容空間、21…基部、22…車体取付フランジ、22a…ボルト挿通孔、23…延出部、230…凹部、230a…第1内側面、230b…第2内側面、230c…底面、231…大径部、231a…外周面、232…小径部、232a…外周面、23a…内周面、2a…第1外側軌道面、2b…第2外側軌道面、3…内方部材、31…ハブ輪、311…車輪取付フランジ、311a…ボルト挿通孔、312…連結部、313…胴部、314…大径部、315…小径部、315a…加締め部、32…内輪部材、33…ボルト、3a…第1内側軌道面、3b…第2内側軌道面、4…転動体、41…第1列の転動体、42…第2列の転動体、43…第1保持器、44…第2保持器、5…磁性リング、51…芯金、511…円筒部、512…折曲部、513…折り返し部、52…磁性部材、6…封止部材、61…本体部、611…円筒部、612…底部、612a…内面、612b…外面、62…シール部、7…磁界センサ、70…磁界検出素子、71…検出部、71a…先端面、72…固定部、73…ケーブル部、8…樹脂キャップ(支持部材)、81…嵌合部、811…円筒部、811a…内周面、812…内方突起、812a…第1側面、812b…第2側面、812c…内周面、82…固定部、820…挿通孔、821…ボス部、821a…ネジ孔、80…排出口、91…シール部材、92…ボルト、C…中心点、O…回転軸線、S…第1隙間、S…第2隙間
図1
図2
図3
図4
図5