特開2016-216696(P2016-216696A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2016216696-非石綿系摩擦材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-216696(P2016-216696A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】非石綿系摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20161125BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   C09K3/14 520C
   F16D69/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-106800(P2015-106800)
(22)【出願日】2015年5月26日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】小島 敬治
(72)【発明者】
【氏名】加藤 領幹
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅明
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058BA34
3J058BA76
3J058CA42
3J058FA06
3J058GA07
3J058GA23
3J058GA24
3J058GA28
3J058GA30
3J058GA31
3J058GA32
3J058GA33
3J058GA35
3J058GA37
3J058GA55
3J058GA57
3J058GA58
3J058GA73
3J058GA82
3J058GA85
(57)【要約】
【課題】 フェードなどの過酷な条件下でも摩擦係数が安定し得る非石綿系摩擦材を提供すること。
【解決手段】 繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む非石綿系摩擦材において、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアを配合する。これによれば、ブレーキングによる圧壊が少なくなり、低温状態から高温状態まで安定した摩擦係数を示すとともに、摩擦材が摩耗し難くなる。そして、フェード時またはフェードと同様な高負荷でのブレーキング時でもその前後で同等の摩擦係数を保つなど摩擦特性を安定したものとすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む非石綿系摩擦材であって、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアを配合した非石綿系摩擦材。
【請求項2】
前記安定化または部分安定化ジルコニアは、カルシアまたはマグネシアを安定化剤とするものであり、前記純度は、前記カルシアまたはマグネシアを含んだ前記安定化または部分安定化ジルコニアの純度であることを特徴とする請求項1に記載の非石綿系摩擦材。
【請求項3】
前記安定化または部分安定化ジルコニアは、イットリアを安定化剤とするとともに助剤として酸化アルミニウムを用いてなり、前記純度は、前記イットリア及び酸化アルミニウムを含んだ前記安定化または部分安定化ジルコニアの純度であることを特徴とする請求項1に記載の非石綿系摩擦材。
【請求項4】
前記安定化または部分安定化ジルコニアは、平均粒子径が1〜40μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非石綿系摩擦材。
【請求項5】
前記安定化または部分安定化ジルコニアを摩擦材組成物全体に対して0.2〜12.0重量%配合したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非石綿系摩擦材。
【請求項6】
モース硬度7以上の無機物を非含有とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非石綿系摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両用ディスクブレーキなどに用いられる非石綿系摩擦材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高性能化、高出力化に伴い、自動車のドラムブレーキ、ディスクブレーキ等に使用されているブレーキライニングなどの摩擦材にも熱に対する安定性が求められている。具体的には、耐熱強度、耐熱摩耗性が要求されるとともに、温度変化に対する摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性が要求される。
【0003】
そうしたなか、フェードなどの過酷な条件でのブレーキ使用でも摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性を有することを目的として、例えば特許文献1に開示される技術が提案されている。該技術では、摩擦材に含有される安定化ジルコニアの格子定数を規定することで摩擦特性の安定化を図るようにしている。
【0004】
しかしながら、安定化または部分安定化ジルコニアは、一般に用いられるもののうち、例えば、純度98重量%以下程度のものでは、靱性が比較的低く、摩擦時にジルコニアが砕けてフェード前後で摩擦係数が変化しやすく、耐熱摩耗性を高く維持することが困難となることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4138801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、フェードなどの過酷な条件下でも摩擦係数が安定し得る非石綿系摩擦材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む非石綿系摩擦材であって、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアを配合したことを要旨とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、安定化または部分安定化ジルコニアの純度を99.0重量%以上とすることで、フェード時またはフェードと同様な高負荷でのブレーキング時でもその前後で同等の摩擦係数を保つなど摩擦特性を安定したものとすることができる。これは、純度が99.0重量%以上となることで、安定化または部分安定化ジルコニアの靱性がさらに増し、これにより、ブレーキングによる圧壊が少なくなり(摩耗粉として排出され難くなり)、低温状態から高温状態まで安定した摩擦係数を示すとともに、摩擦材が摩耗し難くなるためであると考えられる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、上記安定化または部分安定化ジルコニアは、カルシアまたはマグネシアを安定化剤とするものであり、上記純度は、上記カルシアまたはマグネシアを含んだ上記安定化または部分安定化ジルコニアとしての純度であることを要旨とする。
この場合、安定化または部分安定化ジルコニアは、カルシアまたはマグネシアを不純物としない。本発明ではこの安定化または部分安定化ジルコニアの純度が99.0重量%以上となる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1に記載の発明において、上記安定化または部分安定化ジルコニアは、イットリアを安定化剤とするとともに助剤として酸化アルミニウムを用いてなり、上記純度は、上記イットリア及び酸化アルミニウムを含んだ上記安定化または部分安定化ジルコニアとしての純度であること要旨とする。
この場合、安定化または部分安定化ジルコニアは、イットリア及び酸化アルミニウムを不純物としない。本発明ではこの安定化または部分安定化ジルコニアの純度が99.0重量%以上となる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、上記安定化または部分安定化ジルコニアは、平均粒子径が1〜40μmであることを要旨とする。
この発明によれば、高い摩擦係数を得ることができ、さらに、高温状態での耐摩耗性を良好なものとすることができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、上記安定化または部分安定化ジルコニアを摩擦材組成物全体に対して0.2〜12.0重量%配合したことを要旨とする。
この発明によれば、高い摩擦係数を得ることができ、さらに、高温状態での耐摩耗性を良好なものとすることができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の発明において、モース硬度7以上の無機物を非含有とすることを要旨とする。
例えば、モース硬度7以上の無機物を含有した場合、相手材(ロータなど)を削ることによるブレーキ振動や摩耗増大が懸念される。本発明では、モース硬度7以上の無機物を非含有とすることで、そうした不都合を回避している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る摩擦材の実施例及び比較例の摩擦材原料の組成とその性能評価を要約した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態により具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0016】
1.摩擦材
以下、本発明に係る摩擦材の一実施形態について詳細に説明する。本発明の摩擦材は、繊維基材、結合材及び摩擦調整材を含む非石綿系摩擦材において、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアを配合したものである。
【0017】
本発明の摩擦材には、繊維基材、結合材、及び摩擦調整材が含まれるが、摩擦材を製造する際に使用されるその他の摩擦材原料を含ませてよい。
【0018】
繊維基材として使用されるものにはアラミド繊維(例えば、アラミドパルプ)、セルロース繊維、アクリル繊維等の有機繊維、ガラス繊維、ロックウ−ル、セラミックス繊維、ワラストナイト等の無機繊維が例示される。これらを単独または2種類以上を併用してもよい。特に好ましくは、アラミド繊維やロックウールを挙げることができる。繊維基材の配合割合は特に限定されるものではないが、摩擦材全体に対して3〜20重量%程度となるように添加すればよい。
【0019】
結合材は、摩擦材の各配合成分を結合させる役割を有するものであり、公知の材料を用いることができる。好ましくは、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、及びそれらの変性品等が例示される。これらを単独で、若しくは2種類以上を併用してもよい。特に好ましくは、フェノール樹脂が挙げられる。結合材の配合割合は特に限定されるものではないが、摩擦材全体に対して6〜16重量%程度となるように添加すればよい。
【0020】
摩擦調整材は、摩擦材の摩擦係数や摩耗等の摩擦性能を調整する役割を有するものであり、各種充填材、潤滑材等を含ませることができる。例えば、カシューダスト、ゴム粉等の有機充填材、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム等の無機充填材、黒鉛、コークス、硫化錫等の潤滑材を挙げることができる。これらを単独で、若しくは2種類以上を併用してもよい。好ましくは、カシューダスト、ゴム粉、ジルコニア、酸化鉄、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、チタン酸カリウム、黒鉛、コークス、硫化錫を挙げることができる。
【0021】
昨今では、上述したように、自動車の高性能化、高出力化に伴い、ブレーキに用いられる摩擦材に対して、耐熱強度、耐熱摩耗性が要求されるとともに、温度変化に対する摩擦係数の変化が少ない安定した摩擦特性が要求される。
【0022】
そうしたなか、本発明者らは鋭意研究し、その結果、無機充填材として用いるジルコニアを、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアとすることで上述の要求に応えることが可能となることを見出した。
【0023】
詳細な実施例は後述するが、ジルコニアにかかる上記の構成を採用することで、フェード時またはフェードと同様な高負荷でのブレーキング時でもその前後で同等の摩擦係数を保つなど摩擦特性を安定したものとすることができる。これは、純度が99.0重量%以上となることで、安定化または部分安定化ジルコニアの靱性がさらに増し、これにより、ブレーキングによる圧壊が少なくなり(摩耗粉として排出され難くなり)、低温状態から高温状態まで安定した摩擦係数を示すとともに、摩擦材が摩耗し難くなるためであると考えられる。
【0024】
また、安定化または部分安定化ジルコニアについては、これを、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)、及びイットリア(Y)のうちのいずれかひとつのみ安定化剤として用いている。この場合、安定化または部分安定化ジルコニアの純度に関しては、上記の各安定化剤を含んだ安定化または部分安定化ジルコニアとしての純度を99.0重量%以上としている。なお、上記安定化剤のうちイットリアを用いる場合に限っては、焼結助剤として酸化アルミニウムを併せて用いるため、イットリア及び酸化アルミニウムを含んだ安定化または部分安定化ジルコニアとしての純度を99.0重量%以上としている。
【0025】
ここで、安定化または部分安定化ジルコニアに含まれる不純物としては、一般的に、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化鉄(Fe)等が挙げられるが、上述のように、安定化剤としてイットリアを用いた場合に限り、上記酸化アルミニウムは助剤として機能するため不純物としては扱わない。
【0026】
また、本実施形態では、安定化または部分安定化ジルコニアの好ましい形態として、平均粒子径が1〜40μmのものを採用している。これによれば、平均粒子径が1μm以上であることで、高い摩擦係数を得ることができ、さらに、高温状態での耐摩耗性を良好なものとすることができる。また、相手材であるロータに被膜が生成し難くなることから異音が生じ難くなる。また、平均粒子径が40μm以下であることで、フェード時の摩擦係数を比較的高くすることができるとともにロータに対する攻撃性を良好なものとすることができる。
【0027】
また、本実施形態では、好ましい態様として、安定化または部分安定化ジルコニアを摩擦材組成物全体に対して0.2〜12.0重量%配合したものを採用している。これによれば、高い摩擦係数を得ることができ、さらに、高温状態での耐摩耗性を良好なものとすることができる。また、フェード時の摩擦係数を比較的高くすることができるとともに鳴き性能を良好なものとすることができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、好ましい態様として、例えば、ジルコンや炭化ケイ素といったモース硬度7以上の無機物を非含有としたものを採用している。例えば、上記のようなモース硬度7以上の無機物を含有した場合、ロータを削ることによるブレーキ振動や摩耗増大が懸念される。この態様では、モース硬度7以上の無機物を非含有とすることで、そうした不都合を回避している。
【0029】
本発明の摩擦材は、例えば車両等のディスクブレーキ用パッドに適用できるが、これに限定されるものではない。例えば、ブレーキシュー等、従来公知の摩擦材が要求される技術に適用することができる。製造された摩擦材は、例えば、裏板として金属板等の板状部材と一体化してブレーキパッドとして使用することができる。
【0030】
2.摩擦材の製造方法
以下、本発明の摩擦材の製造方法についての実施形態を詳細に説明する。本発明の摩擦
材の製造方法は、上述した繊維基材、結合材、及び摩擦調整材を含む摩擦材原料の混合物を加熱成形して得られた成形体を160℃以上300℃未満で1〜8時間加熱することにより上記結合材を硬化させる熱硬化工程を有する。
【0031】
まず、上述した繊維基材、結合材、摩擦調整材等の摩擦材原料を秤量し、これらを均一に混合する。混合は、ヘンシェルミキサやレーディゲミキサ等の混合機に投入することにより行うことができ、例えば、常温で10分程度混合する。このとき、混合機が昇温しないように、公知の冷却手段によって冷却しながら混合するようにしてもよい。
【0032】
次いで、得られた混合物を所定量秤量し、加圧して予備成形を行い、これを加圧しながら加熱成形する。加熱成形は、例えば、熱成形型に投入しこれを熱プレスすること等で行うことができる。このとき、金属板等の板状部材の裏板を重ねて熱成形型に投入してもよい。裏板は、予め洗浄した後、適当な表面処理を施し、予備成形後の混合物を載置する側に接着材を塗布したものを使用することができる。加熱成形は、成形温度を、140℃〜180℃、特に好ましくは160℃とし、成形圧力を、100〜250kgf/cm、特に好ましくは200kgf/cmとし、成形時間を3〜15分、特に好ましくは10分とするのがよい。
【0033】
得られた成形品を更に加熱して、結合材の硬化を終了させる。加熱硬化は、硬化温度を、160℃以上300℃未満に設定することが好ましく、特に好ましくは、180℃以上230℃未満である。硬化時間は、硬化温度に反比例し、硬化温度を高く設定した場合には短時間で硬化を行うことができ、硬化温度を低く設定した場合には硬化に要する時間が長くなる。好ましくは、1〜8時間で行うことができる。
【0034】
なお、高純度(ここでは、99.0重量%以上)の安定化または部分安定化ジルコニアを得る方法としては、先ず、ジルコンサンド等の原料をアルカリ分解しpH調整して得た溶液を用いて上記不純物を除去し、この不純物の除去が完了した水酸化ジルコニウムを焼成して高純度のジルコニアを得る、といった一般的な方法でよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
本実施例では、図1に示す配合量に従って摩擦材原料を配合し、実施例1〜16及び比較例1〜3の摩擦材組成物を得た。なお、図中の各摩擦材原料の配合量の単位は、摩擦材組成物全体に対する重量%である。この摩擦材組成物をレーディゲミキサで10分間混合し、この混合物を成形温度160℃、成形圧力200kgf/cm、成形時間10分の条件において加圧加熱成形した。続いて、この成形物を200℃にて4時間の条件で硬化させた。
【0037】
ちなみに、本実施例及び比較例にて用いたジルコニア単体の圧壊強度(JIS Z 8841:1993に準じて測定)は次のとおりである。すなわち、カルシア安定化ジルコニアについては、比較例に用いた純度97.7%のものが29kgfであるのに対して実施例に用いた純度99.7%(高純度)のものが46kgfである。また、マグネシア安定化ジルコニアについては、比較例に用いた純度96.4%のものが30kgfであるのに対して実施例に用いた純度99.3%(高純度)のものが45kgfである。また、イットリア安定化ジルコニアについては、比較例に用いた純度97.8%のものが28kgfであるのに対して実施例に用いた純度99.6%(高純度)のものが55kgfである。このように、安定化ジルコニアの圧壊強度は、高純度のものがそうでないものに対して1.5倍から2倍程度の値を示すことが確認されている。
【0038】
作製した実施例1〜16及び比較例1〜3の摩擦材について下記の項目について評価を行った。
【0039】
(摩擦係数)
JASO C406に従って第二効力試験(フェード前及びフェード後)の初速50km/h時及び100km/h時の平均摩擦係数と第一フェード試験時の最低摩擦係数を測定した。上記第二効力試験時の平均摩擦係数は0.4±0.03が望ましく、上記第一フェード試験時の最低摩擦係数は0.25以上あると望ましい。
【0040】
(温度別摩耗量(耐摩耗性))
JASO C427に従って摩耗試験を行い、摩擦材の摩耗量を測定し、所定制動回数あたりの摩耗量に換算し、4段階で評価した。具体的には、その換算値の大きさにより、0.20mm未満を「◎」、0.20mm以上0.25mm未満を「○」、0.25mm以上0.30mm未満を「△」、0.30mm以上を「×」と、それぞれ判定した。
【0041】
(低面圧攻撃性(相手攻撃性))
低面圧状態での相手攻撃性を調べるため、相手材(ロータ)を回転させながら摩擦材を低面圧(0.05MPa)で所定時間押圧し、その後、相手材の摩耗量を測定して3段階で評価した。具体的には、その摩耗量の大きさにより、5μm未満を「○」、5μm以上10μm未満を「△」、10μm以上を「×」と、それぞれ判定した。
【0042】
(ノイズ・振動性能)
ブレーキダイナモ試験においてブレーキ液圧0.1〜2.0MPa、ロータ温度40〜200℃において制動試験を行い、その試験中に発生した所定のレベル以上の高周波音(500Hz以上の音)の発生回数を測定して4段階で「鳴き」の発生状況を評価した。具体的には、その発生回数により、「◎」:鳴き発生が全くなし、「○」:鳴き発生が極僅かにあり、「△」:鳴き発生がややあり、「×」:鳴き発生が多い、と判断した。また、実車にて高周波ノイズ(500Hz以上)及び低周波ノイズ(500Hz未満)の発生回数を測定して4段階で「異音」の発生状況を評価した。具体的には、その発生回数により、「◎」:異音発生が全くなし、「○」:異音発生が極僅かにあり、「△」:異音発生がややあり、「×」:異音発生が多い、と判断した。さらに、ブレーキペダルに伝わる振動を次のように官能評価した。すなわち、「◎」:振動発生が全くなし、「○」:振動発生が極僅かにあり、「△」:振動発生がややあり、「×」:振動発生が多い、と判断した。
【0043】
結果を図1に示す。本発明の実施例1〜16では、いずれについても、摩擦係数に関してフェード前及びフェード後の平均摩擦係数が上述の0.4±0.03範囲内に収まっており安定性という点で良好な結果が得られた。これにより、純度99.0重量%以上の安定化または部分安定化ジルコニアを配合することで摩擦係数安定性に優れた摩擦材が得られることが判明した。そして、これに対して、純度98重量%未満の安定化または部分安定化ジルコニアを配合した比較例1〜3では、特にフェード後の平均摩擦係数が上述の範囲から外れ摩擦係数安定性が劣ることから、本発明の実施例で確認された摩擦係数安定性が高純度の安定化または部分安定化ジルコニアによってもたらされたものであることが明らかとなった。
【0044】
また、安定化または部分安定化ジルコニアとして平均粒子径が1〜40μmのもののみ採用し、これら安定化または部分安定化ジルコニアを摩擦材組成物全体に対して0.2〜12.0重量%配合するとともに、モース硬度7以上の無機物を非含有とした実施例1〜11については、それと異なる実施例12〜16と比較して、特に高温状態での摩擦材摩耗量や相手攻撃性、ノイズ・振動性能において優れることが見て取れる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の摩擦材及び摩擦材の製造方法は、車両等のディスクブレーキ用パッドやブレー
キシュー等、従来公知の摩擦材が要求されるものに適用することができる。
図1