特開2016-219448(P2016-219448A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2016219448-太陽電池用封止材製造用組成物 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-219448(P2016-219448A)
(43)【公開日】2016年12月22日
(54)【発明の名称】太陽電池用封止材製造用組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/048 20140101AFI20161125BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20161125BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20161125BHJP
【FI】
   H01L31/04 560
   C08L23/08
   C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-98785(P2015-98785)
(22)【出願日】2015年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】吉武 晃
(72)【発明者】
【氏名】片岡 央尚
(72)【発明者】
【氏名】深川 欣将
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
5F151
【Fターム(参考)】
4H017AB07
4H017AC01
4H017AC09
4H017AC19
4H017AE05
4J002BB051
4J002BB151
4J002FD020
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GQ00
5F151BA18
5F151JA03
5F151JA04
5F151JA05
5F151JA06
(57)【要約】
【課題】太陽電池用封止材の製造時にダレやシート切れが発生することなく安定的な生産が可能であり、高い透明性を有する太陽電池用封止材を製造することができる太陽電池用封止材製造用組成物を提供すること。
【解決手段】融点の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの融点(JIS K 7121に準拠、熱流束示差走査熱量測定における融解ピーク温度、以下同じ)がエチレン・α−オレフィン共重合体Bの融点より低く、その差が10℃〜35℃であり、エチレン・α−オレフィン共重合体Bに対するエチレン・α−オレフィン共重合体Aの質量比が3〜33であり、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの貯蔵弾性率が、80℃において50〜80kPa且つ90℃において20〜50kPaであり、エチレン・α−オレフィン共重合体Bの貯蔵弾性率が、80℃において150〜200kPa且つ90℃において20〜50kPaであることを特徴とする太陽電池用封止材製造用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを含み、
エチレン・α−オレフィン共重合体Aの融点(JIS K 7121に準拠、熱流束示差走査熱量測定における融解ピーク温度、以下同じ)がエチレン・α−オレフィン共重合体Bの融点より低く、その差が10℃〜35℃であり、
エチレン・α−オレフィン共重合体Bに対するエチレン・α−オレフィン共重合体Aの質量比が3〜33であり、
エチレン・α−オレフィン共重合体Aの貯蔵弾性率が、80℃において50〜80kPa且つ90℃において20〜50kPaであり、
エチレン・α−オレフィン共重合体Bの貯蔵弾性率が、80℃において150〜200kPa且つ90℃において20〜50kPaであることを特徴とする太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項2】
エチレン−α−オレフィンAの融点が、55〜70℃である、請求項1に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項3】
エチレン−α−オレフィンBの融点が、80〜100℃である、請求項1又は2に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項4】
エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの密度の差が、0.01g/cm以上0.04g/cm未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項5】
エチレン−α−オレフィンAの密度(JIS K 7112に準拠)が、0.87〜0.89g/cmである、請求項1〜4の何れか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項6】
エチレン−α−オレフィンBの密度(JIS K 7112に準拠)が、0.89〜0.91g/cmである、請求項1〜5の何れか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項7】
当該太陽電池用封止材製造用組成物の、温度80℃及び歪み速度0.05s−1における伸長粘度が300kPa・s以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項8】
当該太陽電池用封止材製造用組成物のメルトフローレート(JIS K7210に準拠、温度190℃、荷重2.16kg)が、2〜10g/10minである、請求項1〜7の何れか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項9】
エチレン・α−オレフィン共重合体A及びエチレン・α−オレフィン共重合体Bがいずれともメタロセン触媒により重合されたものである、請求項1〜8の何れか1項に記載の太陽電池用封止材製造用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の太陽電池用封止材組成物を形成してなる太陽電池用封止材。
【請求項11】
表面側保護部材、太陽電池素子及び裏面側保護部材を有し、前記太陽電池素子が請求項1〜10の何れか1項に記載の太陽電池用封止材により封止されている太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用封止材製造用組成物、太陽電池用封止材及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を電気エネルギーに直接変換する太陽電池モジュールが広く使用され、更に、耐久性や発電効率等の点から開発が進められている。
【0003】
太陽電池モジュールの構造としては、例えば、図1に示すように、ガラス基板等からなる表面側透明保護部材11、表面側封止材13A、シリコン結晶系セル等の太陽電池素子14、裏面側封止材13B、及び裏面側保護部材(バックカバー)12をこの順で積層し、接着一体化した構造が知られている。
【0004】
太陽電池モジュールでは、高い電気出力を得るために、複数の太陽電池素子14を接続タブ15で接続して用いられている。したがって、太陽電池素子14の絶縁性を確保するために、絶縁性のある封止材13A、13Bを用いて太陽電池素子14を封止している。
【0005】
これらの太陽電池モジュールに用いられる封止材としては、高い透明性及び接着性を有するエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)フィルムが従来から用いられている。そして、封止材用のEVAフィルムには、膜強度や耐久性を向上させるために、EVAの他に有機過酸化物等の架橋剤が配合され、太陽電池モジュールの製造時にEVAフィルム中のEVAを架橋させている。
【0006】
ところが、EVAは構成成分として酢酸ビニルを含むため、太陽電池用封止材中に酸が発生し、太陽電池モジュールの電極の腐食を発生させるという問題がある。そのため、EVAに代わるポリマーとして、酸が発生しないエチレン・α−オレフィン共重合体が近年用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−179634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いると、太陽電池用封止材の製造時にダレやシート切れが発生し、太陽電池用封止材の効率的な生産を行うことが難しいという問題があった。そして、特に表面側に使用される太陽電池用封止材には、太陽光を可能な限り太陽電池素子に入射させるために高い透明性が求められる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、太陽電池用封止材の製造時にダレやシート切れが発生することなく安定的な生産が可能であり、高い透明性を有する太陽電池用封止材を製造することができる太陽電池用封止材製造用組成物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、この太陽電池用用封止材製造用組成物を成形してなる太陽電池用封止材及びこの太陽電池用封止材を用いて作製された太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、融点の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの融点(JIS K 7121に準拠、熱流束示差走査熱量測定における融解ピーク温度、以下同じ)がエチレン・α−オレフィン共重合体Bの融点より低く、その差が10℃〜35℃であり、エチレン・α−オレフィン共重合体Bに対するエチレン・α−オレフィン共重合体Aの質量比が3〜33であり、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの貯蔵弾性率が、80℃において50〜80kPa且つ90℃において20〜50kPaであり、エチレン・α−オレフィン共重合体Bの貯蔵弾性率が、80℃において150〜200kPa且つ90℃において20〜50kPaであることを特徴とする太陽電池用封止材製造用組成物により達成される。
【0012】
融点の差が上記範囲であり且つ上記貯蔵弾性率を有する2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを上記質量比で配合することにより、太陽電池用封止材を製造する際において、太陽電池用封止材組成物のダレやシート切れを防止することができるとともに十分な透明性も得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)エチレン・α−オレフィンAの融点が、55〜70℃である。
(2)エチレン・α−オレフィンBの融点が、80〜100℃である。
(3)エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの密度の差が、0.01g/cm以上0.04g/cm未満である。
(4)エチレン−α−オレフィンAの密度(JIS K 7112に準拠)が、0.87〜0.89g/cmである。
(5)エチレン−α−オレフィンBの密度(JIS K 7112に準拠)が、0.89〜0.91g/cmである。
(6)当該太陽電池用封止材製造用組成物の、温度80℃及び歪み速度0.05s−1における伸長粘度が300kPa・s以上である。
(7)当該太陽電池用封止材製造用組成物のメルトフローレート(JIS K7210に準拠、温度190℃、荷重2.16kg)が、2〜10g/10minである。
(8)エチレン・α−オレフィン共重合体A及びエチレン・α−オレフィン共重合体Bがいずれともメタロセン触媒により重合されたものである。
【0014】
また、上記目的は、本発明の太陽電池用封止材組成物を形成してなる太陽電池用封止材、並びに、表面側保護部材、太陽電池及び裏面側保護部材を有し、本発明の太陽電池用封止材により封止されている太陽電池モジュールによっても達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、太陽電池用封止材の製造時にダレやシート切れが発生することなく効率的な生産が可能であり、高い透明性を有する太陽電池用封止材の製造用組成物を提供することができる。したがって、透明性に優れる太陽電池用封止材を安定的且つ効率的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一般的な太陽電池モジュールの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。上述したように、本発明の太陽電池用封止材は、融点の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを含んでいる。
【0018】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン由来の構成単位を主成分とし、更に炭素数3〜12のα−オレフィン、例えば、プロピレン、1−ブテン、1-へキセン、1−オクテン、4−メチルペンテン−1、4−メチル−へキセン−1、4,4−ジメチル−ペンテン−1等由来の1種又は複数種の構成単位を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(ターポリマー等も含む)である。エチレン・α−オレフィン共重合体の具体例としては、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−ペンテン−1共重合体、エチレン・ブテン・ヘキセンターポリマー、エチレン・プロピレン・オクテンターポリマー、エチレン・ブテン・オクテンターポリマー等が挙げられる。エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンの含有量は、5〜40質量%が好ましく、10〜35質量%がより好ましく、15〜30質量%が更に好ましい。α−オレフィンの含有量が少ないと太陽電池用封止材の柔軟性や耐衝撃性が十分でない場合があり、多過ぎると耐熱性が低い場合がある。
【0019】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体は、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いて重合されたものを使用することができ、特に直鎖状のエチレン・α−オレフィン共重合体を好ましく使用することができる。本発明では、メタロセン触媒により重合されたエチレン・α−オレフィン共重合体(以下、m−LLDPEとも称する。)を使用することが特に好ましい。m−LLDPEはシャープな分子量分布を有することから加工性の点で優れている。
【0020】
メタロセン触媒としては、公知のメタロセン触媒を用いれば良く、特に制限はない。メタロセン触媒は、一般に、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属をπ電子系のシクロペンタジエニル基又は置換シクロペンタジエニル基等を含有する不飽和環状化合物で挟んだ構造の化合物であるメタロセン化合物と、アルキルアルミノキサン、アルキルアルミニウム、アルミニウムハライド、アルキルアルミニウムルハライド等のアルミニウム化合物等の助触媒とを組合せたものである。メタロセン触媒は、活性点が均一であるという特徴があり(シングルサイト触媒)、通常、分子量分布が狭く、各分子のコモノマー含有量がほぼ等しい重合体が得られる。
【0021】
上述したように、本発明では、融点の異なる2種のエチレン・α−オレフィン共重合体、即ち、融点が低い方のエチレン・α−オレフィン共重合体A及び融点が高い方のエチレン・α−オレフィン共重合体Bを使用する。エチレン・α−オレフィン共重合体Aとエチレン・α−オレフィン共重合体Bの融点の差は、10〜35℃、好ましくは20〜35℃である。融点の差がこの程度あることにより、融点の低いエチレン・α−オレフィン共重合体Aを単独で使用した場合と比較して、太陽電池用封止材の製造時におけるダレやシート切れが防止され、太陽電池用封止材を安定的に製造することができる。
【0022】
具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの融点は、好ましくは55〜70℃、より好ましくは57〜65℃である。エチレン・α−オレフィン共重合体Bの融点は、好ましくは80〜100℃、より好ましくは85〜95℃である。
【0023】
本発明においてエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの融点は、JIS K 7121に従い、熱流束示差走査熱量測定で得られたDSC曲線における融解ピーク温度のことをいう。
【0024】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体Bに対するエチレン・α−オレフィン共重合体Aの質量比(A/B)は、3〜33であり、好ましくは3〜19、特に好ましくは4〜9である。これにより、加工性に優れる太陽電池用封止材製造用組成物が得られ、製造される太陽電池用封止材は透明性に優れたものとなる。
【0025】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体Aの貯蔵弾性率は、80℃において50〜80kPa且つ90℃において20〜50kPaであり、エチレン・α−オレフィン共重合体Bの貯蔵弾性率は、80℃において150〜200kPa且つ90℃において20〜50kPaである。上記2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを上記質量比で太陽電池用封止材を製造する際における混合時の温度約90℃及び搬送時の温度約80℃において両共重合体A及びBの貯蔵弾性率が上記範囲であれば、搬送時に必要な硬さを確保することができるとともに混合を均一且つ高効率で行うことができる。
【0026】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの貯蔵弾性率は、アルファテクノロジーズ社製粘弾性測定機RPA2000を用いて歪み量10%、周波数1Hzの条件で、任意の温度で求めた値である。
【0027】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの密度の差が、0.01g/cm以上0.04g/cm未満、特に0.013〜0.025g/cmであることが好ましい。これにより、更に加工性に優れる太陽電池用封止材製造用組成物を得ることができる。
【0028】
具体的には、エチレン−α−オレフィン共重合体Aの密度は、0.87〜0.89g/cmであることが好ましく、0.875〜0.885g/cmであることが更に好ましい。また、エチレン−α−オレフィン共重合体Bの密度は、0.89〜0.91g/cmであることが好ましく、0.895〜0.905g/cmであることが更に好ましい。なお、本発明において、エチレン−α−オレフィンA及びBの密度は、JIS K 7112に従って求めた値のことをいう。
【0029】
そして、2種のエチレン・α−オレフィン共重合体A及びBを混合した後、即ち、本発明の太陽電池用封止材用製造用組成物のメルトフローレートは、2〜10g/minが好ましく、2〜6g/10minが特に好ましい。この範囲であれば、太陽電池用封止材製造用組成物の流動性が太陽電池用封止材を製造する際において適したものとなるので、生産性が更に向上する。
【0030】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びエチレン・α−オレフィン共重合体Bそれぞれのメルトフローレートも同様に2〜10g/minが好ましく、2〜6g/10minが特に好ましい。なお、本発明において、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に従って温度190℃荷重2.16kgの条件で得られた値のことをいう。
【0031】
本発明において、エチレン・α−オレフィン共重合体としてm−LLDPEを使用する場合、m−LLDPEは市販のものを使用することもできる。例えば、日本ポリエチレン社製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、プライムポリマー社製のエボリューシリーズ、住友化学社製のエクセレンGMHシリーズ、エクセレンFXシリーズ等が挙げられる。m−LLDPEは、メタロセン(系)ポリエチレンやメタロセン触媒ポリエチレンとして一般に知られている。
【0032】
本発明では、融点の差が上記範囲であり且つ上記弾性率を有する2種のα−オレフィン共重合体A及びBを上記質量比で配合することにより、太陽電池用封止材を製造する際において、太陽電池用封止材組成物のダレやシート切れを防止することができるとともに十分な透明性も得ることができる。したがって、透明性に優れる太陽電池用封止材を安定的且つ効率的に製造することが可能となる。
【0033】
[架橋剤]
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物には、架橋剤を含有させ、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋構造を形成することが好ましい。架橋剤は、有機過酸化物又は光重合開始剤を用いることが好ましい。なかでも、接着力、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善された封止材が得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0034】
有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0035】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0036】
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、又はtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。これにより、良好に架橋され、優れた透明性を有する太陽電池用封止材が得られる。
【0038】
太陽電池用封止材製造用組成物に使用する有機過酸化物の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの合計量100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.2〜3質量部であることが好ましい。有機過酸化物の含有量は、少ないと架橋硬化時において架橋速度が低下する場合があり、多くなると共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
【0039】
また、光重合開始剤としては、公知のどのような光重合開始剤でも使用することができるが、配合後の貯蔵安定性の良いものが望ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタ−ルなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレ−トなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系又は、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種単独または2種以上の混合で使用することができる。
【0040】
前記光重合開始剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの合計量100質量部に対して0.1〜5質量部、好ましくは0.2〜3質量部である。
【0041】
[架橋助剤]
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物は、さらに架橋助剤を含んでいることが好ましい。架橋助剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBのゲル分率を向上させ、太陽電池用封止材の接着性、耐候性を向上させることができる。
【0042】
架橋助剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの合計量100質量部に対して、通常0.1〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、特に好ましくは0.5〜2.5質量部で使用される。これにより、更に架橋後の硬度が向上した封止材が得られる。
【0043】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0044】
[接着性向上剤]
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物においては、更に、接着向上剤を含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、更に優れた接着力を有する太陽電池用封止材とすることができる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
【0045】
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物におけるシランカップリング剤の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBの合計量100質量部に対して5質量部以下、好ましくは0.1〜2質量部であることが好ましい。
【0046】
[その他]
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物は、膜の種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整、特に機械的強度の改良のため、必要に応じて、可塑剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0047】
本発明の太陽電池用封止材製造用組成物は、温度80℃及び歪み速度0.05s−1における伸長粘度が300kPa・s以上、特に300〜9000kPa・sであることが好ましい。伸長粘度は太陽電池用封止材の製造時におけるダレやシート切れの発生の有無の基準となる指標であり、300kPa・s以上、特に300〜9000であればダレやシート切れが生じず、安定的に太陽電池用封止材を製造することができる。
【0048】
[太陽電池用封止材]
本発明の太陽電池用封止材を形成するには、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、上述した各成分を含む本発明の太陽電池用封止材製造用組成物を、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得る方法により製造することができる。本発明の太陽電池用封止材の厚さは特に制限されないが、0.05〜2mm、好ましくは0.3〜0.8mm、更に好ましくは0.4〜0.7mmである。
【0049】
[太陽電池モジュール]
本発明の太陽電池モジュールの構造は、本発明の太陽電池用封止材を用いて太陽電池素子を封止することにより製造された構造を含んでいれば特に制限されない。例えば、表面側透明保護部材と裏面側保護部材との間に、本発明の太陽電池用封止材を介在させて架橋一体化させることにより太陽電池素子(単結晶又は多結晶シリコンセル等)を封止させた構造などが挙げられる。
【0050】
なお、本発明において、太陽電池素子の光が照射される側(表面側)を「表面側」と称し、太陽電池素子の受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
【0051】
太陽電池モジュールにおいて、太陽電池素子を十分に封止するには、例えば、図1に示すように表面側透明保護部材11、表面側封止材13A、太陽電池素子14、裏面側封止材13B及び裏面側保護部材12を積層し、加熱加圧など常法に従って、封止材を架橋硬化させればよい。
【0052】
加熱加圧するには、例えば、各部材を積層した積層体を、真空ラミネータで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。
【0053】
この加熱加圧時に、表面側封止材13Aおよび裏面側封止材13Bに含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体A、Bを架橋させることにより、表面側封止材13Aおよび裏面側封止材13Bを介して、表面側透明保護部材11、裏面側透明部材12、および太陽電池素子14を一体化させて、太陽電池素子14を封止することができる。太陽電池素子14は接続タブ15で互いに電気的に接続される。
【0054】
なお、本発明の太陽電池用封止材は、図1に示したような単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールだけでなく、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池モジュールの封止材にも使用することもできる。この場合は、例えば、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等の表面側透明保護部材の表面上に化学気相蒸着法等により形成された薄膜太陽電池素子層上に、本発明の太陽電池用封止材、裏面側保護部材を積層し、接着一体化させた構造、裏面側保護部材の表面上に形成された太陽電池素子上に、本発明の太陽電池用封止材、表面側透明保護部材を積層し、接着一体化させた構造、又は表面側透明保護部材、表面側封止材、薄膜太陽電池素子、裏面側封止材、及び裏面側保護部材をこの順で積層し、接着一体化させた構造等が挙げられる。なお、本発明において、太陽電池セルや薄膜太陽電池素子を総称して太陽電池素子という。
【0055】
表面側透明保護部材11は、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0056】
裏面側保護部材12は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアミドなどのプラスチックフィルムが好ましく用いられる。また、耐熱性、耐湿熱性を考慮してフッ化ポリエチレンフィルム、特にフッ化ポリエチレンフィルム/Al/フッ化ポリエチレンフィルムをこの順で積層させたフィルムでも良い。また、ガラス板でもよい。
【0057】
なお、本発明の太陽電池用封止材は、太陽電池モジュール(薄膜太陽電池モジュールを含む)の表面側及び/又は裏面側に用いられる封止材に特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、裏面側保護部材、および太陽電池素子などの封止材以外の部材については、従来公知の太陽電池モジュールと同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【0058】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0059】
1.太陽電池用封止材の作製
下記表に示す配合で各材料をロールミルに供給し、90℃において混練して太陽電池用封止材組成物を調製した。この太陽電池用封止材組成物を、90℃においてカレンダ成形し、放冷後、シート状の太陽電池用封止材(厚さ0.5mm)を作製した。
【0060】
2.架橋サンプルの作製
上記太陽電池用封止材を2枚の白板ガラス(厚さ3.2mm)で挟み、得られた積層体を真空ラミネータで90℃において真空時間2分、プレス時間8分で圧着した後、155℃のオーブン中で30分間加熱して架橋硬化させることにより、架橋サンプルを作製した。
【0061】
3.評価
(1)80℃伸長粘度(kPa・s)
80℃に加熱した上記太陽電池用封止材組成物を[TAインスツルメント製粘弾性測定機ARES−G2]を用いて歪み速度0.05/sで伸ばし、Hencky歪み1.0となったときの値を80℃伸長粘度(kPa・s)とした。80℃における伸長粘度が300〜9000kPa・sの場合にはシート切れやダレが発生することなく安定的に太陽電池用封止材を製造可能であることを示している。
【0062】
(2)可視光透過率
上記サンプルの任意の3箇所について、分光光度計(日立製作所社製、U−4100)を用いて400〜1100nmのスペクトル測定を実施し、その平均値を可視光透過率(%)とした。
【0063】
(3)HAZE(ヘイズ)
このサンプルについて、JIS K 7105(2000年)に従って、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製 NDH 2000型)を用いてヘイズ値(%)を測定した。
【0064】
(4)貯蔵弾性率
エチレン・α−オレフィン共重合体A及びBについて、アルファテクノロジーズ社製粘弾性測定機RPA2000を用いて歪み量10%、周波数1Hzの条件で、80℃及び90℃での貯蔵弾性率を測定した。
【0065】
結果を表1〜3に示す。なお、各材料の詳細は以下のとおりである。
【0066】
ポリマー1:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体(カーネルKS340T、日本ポリエチレン社製)
融点:60℃
密度:0.880g/cm
80℃における貯蔵弾性率:66kPa
90℃における貯蔵弾性率:45kPa
MFR:3.5g/10min
【0067】
ポリマー2:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体(カーネルKF360T、日本ポリエチレン社製)
融点:90℃
密度:0.898g/cm
80℃における貯蔵弾性率:185kPa
90℃における貯蔵弾性率:28kPa
MFR:3.5g/10min
【0068】
ポリマー3:メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状エチレン・α−オレフィン共重合体(カーネルKF370、日本ポリエチレン社製)
融点:97℃
密度0.905g/cm
MFR3.5g/10min
80℃における貯蔵弾性率:1800kPa
90℃における貯蔵弾性率:140kPa
【0069】
ポリマー4:低密度ポリエチレンLDPE(MG70、QAPCO社製)
融点:102℃
密度:0.918g/cm
MFR:70g/10min
80℃における貯蔵弾性率:1460kPa
90℃における貯蔵弾性率:960kPa
【0070】
架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン
シランカップリング剤:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
【0071】
実施例1〜5において、太陽電池用封止材製造用組成物のMFRは3.5g/10minであった。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
<評価結果>
ポリマー1とポリマー2を所定範囲の比で配合した実施例では全ての評価項目において良好な結果が得られた。ポリマー2が30%以上であると可視光透過率が低下する結果となった。融点がポリマー2よりも高いポリマー3及びポリマー4を使用した場合には可視光透過率及びHAZEが低下していた。
【符号の説明】
【0076】
11 表面側透明保護部材
12 裏面側保護部材
13A 表面側封止材
13B 裏面側封止材
14 太陽電池素子
15 接続タブ
図1