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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2016-68736(P2016-68736A)
(43)【公開日】2016年5月9日
(54)【発明の名称】液圧制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/175 20060101AFI20160404BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20160404BHJP
【FI】
   B60T8/175
   B60T8/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-199611(P2014-199611)
(22)【出願日】2014年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(72)【発明者】
【氏名】天本 慶
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA14
3D246GB02
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA43A
3D246HA44A
3D246HA64A
3D246HA86A
3D246JA02
3D246JA15
3D246JB05
3D246JB27
3D246JB32
3D246LA04Z
3D246LA33Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】駆動輪の空転を抑制する簡素な構成の液圧制動装置を提供する。
【解決手段】車両の停車時に、液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧を保持しておき、車両の発進時に、駆動輪の空転量がその目標量未満である場合に、車両の停車時に保持したフルードの液圧を減圧し、駆動輪の空転量がその目標量以上である場合に、車両の停車時に保持したフルードの液圧の減圧を中断し、制動トルク付与部にフルードの液圧を供給する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ操作に応じたフルードの液圧を発生させる液圧発生部と、
フルードの液圧に応じた制動トルクを車両の駆動輪に付与する制動トルク付与部と、
前記車両の発進時における前記駆動輪の空転を抑制すべく、前記車両の停車時に、前記液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧を保持しておき、前記車両の発進時に、前記駆動輪の空転量とその目標量とに応じて、前記車両の停車時に保持した前記フルードの液圧を保持または減圧し、制動トルク付与部にフルードの液圧を供給する調圧手段と、
を備えていることを特徴とする液圧制動装置。
【請求項2】
ドライバーによる前記駆動輪の空転を抑制する指示である空転抑制指示を受け付ける受付手段、または、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことを指示するブレーキ操作指示手段を備え、
前記調圧手段は、前記受付手段により受け付けられた前記空転抑制指示または前記ブレーキ操作指示手段による前記指示に伴うブレーキ操作によって前記液圧発生部により発生されている、前記車両の停車時におけるフルードの液圧を保持することを特徴とする請求項1に記載の液圧制動装置。
【請求項3】
前記液圧発生部により発生されているフルードの液圧が、前記調圧手段により前記制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧よりも高いか否かを判定する液圧判定手段を備え、
前記調圧手段は、前記液圧判定手段により、前記液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧が前記調圧手段により前記制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧よりも高いことが判定されている場合に、前記調圧手段により前記制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧を、前記液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧に基づいて増圧する請求項1または2に記載の液圧制動装置。
【請求項4】
ブレーキ操作に応じたフルードの液圧を発生させる液圧発生部と、
フルードの液圧に応じた制動トルクを車両の駆動輪に付与する制動トルク付与部と、
前記液圧発生部により発生されているフルードの液圧の前記制動トルク付与部への導入経路を開閉する保持弁と、前記制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧の排出経路を開閉する減圧弁とを有し、前記保持弁および前記減圧弁の閉弁により前記制動トルク付与部に供給されるフルードの液圧の保持が、前記保持弁の開弁により前記液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧を上限とする前記制動トルク付与部に供給されるフルードの液圧の増圧が、前記減圧弁の開弁により前記制動トルク付与部に供給されるフルードの液圧の減圧が可能に構成されている調圧手段と、
前記車両の発進時に、前記駆動輪の空転量とその目標量とに応じて、前記保持弁および前記減圧弁を開閉させる空転抑制制御を行う空転抑制手段と、
を備えていることを特徴とする液圧制動装置。
【請求項5】
ドライバーに対してブレーキ操作を空転抑制制御中に行うことを指示するブレーキ操作指示手段を備えている請求項4に記載の液圧制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動輪の空転を抑制する液圧制動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の発進時や加速時に、駆動輪に対して制動力を付与することにより、駆動輪の空転を抑制する制御(以下「トラクションコントロール」という)が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−503279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ホイルシリンダ圧を付加ポンプにより加圧して、トラクションコントロールを行っている。しかしながら、特許文献1では、付加ポンプを備えていなければ、トラクションコントロールを行うことができない。
本発明の課題は、駆動輪の空転を抑制する簡素な構成の液圧制動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車両の停車時に、液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧を保持しておき、車両の発進時に、駆動輪の空転量とその目標量とに応じて、車両の停車時に保持したフルードの液圧を保持または減圧し、制動トルク付与部にフルードの液圧を供給する。これにより、簡素な構成で車両の発進時における駆動輪の空転を抑制することができる。
【0006】
請求項2に記載の発明では、ドライバーによる駆動輪の空転を抑制する指示(以下「空転抑制指示」という)またはドライバーに対してブレーキ操作を行うことの指示(以下「ブレーキ操作指示」という)に伴うブレーキ操作によって発生する、車両の停車時におけるフルードの液圧を保持する。これにより、車両の発進時における駆動輪の空転を抑制する制御(以下「空転抑制制御」という)を行うために必要なフルードの液圧を、確実に保持することができる。
【0007】
「ブレーキ操作指示に伴うブレーキ操作」とは、ドライバーがブレーキ操作指示に従って行うブレーキ操作である。「空転抑制指示に伴うブレーキ操作」とは、空転抑制指示後にドライバーが自主的に行うブレーキ操作や、空転抑制指示後のブレーキ操作指示に従って行うブレーキ操作である。
【0008】
請求項2に記載の発明においては、ブレーキ操作指示または空転抑制指示に伴うブレーキ操作によって発生している、フルードの液圧が所定圧以上になった場合に、その液圧を保持してもよい。この構成によれば、空転抑制制御に必要なフルードの液圧をより確実に保持することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明においては、ブレーキ操作指示または空転抑制指示から所定時間経過後のフルードの液圧を保持してもよい。この構成によれば、フルードの液圧を検出する構成要素を備えていない液圧制動装置にも、請求項2の発明が適用可能になる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧が制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧よりも高いことが判定されている場合に、制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧を、液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧に基づいて増圧する。これにより、ドライバーによるブレーキ操作によっては、駆動輪の空転量がその目標量以上である場合に駆動輪に付与される制動トルクを増大させることができ、駆動輪の空転を好適に抑制することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、液圧発生部により発生されているフルードの液圧の制動トルク付与部への導入経路を開閉する保持弁と、制動トルク付与部に供給されているフルードの液圧の排出経路を開閉する減圧弁とを有し、保持弁の開弁によって液圧発生部により発生されているフルードの液圧を上限とする制動トルク付与部のフルードの液圧の増圧が可能に構成されている調圧手段を備える液圧制動装置に適用される。このような液圧制動装置(例えば、アンチロックブレーキ装置)では、従来のトラクションコントロールを行うことができない。
【0012】
これに対して、請求項4に記載の発明では、車両の発進時に、駆動輪の空転量とその目標量とに応じて、保持弁および減圧弁を開閉させる。これにより、車両の発進時に、ブレーキ操作が行われていれば、液圧発生部により発生されているブレーキ操作に応じたフルードの液圧を上限として制動トルク付与部のフルードの液圧を増圧して、駆動輪の空転を抑制することができる。
請求項5に記載の発明では、ドライバーに対してブレーキ操作を空転抑制制御中に行うことを指示するため、駆動輪の空転を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施例の液圧制動装置のブロック図である。
図2】第1実施例の液圧制動装置で実行されるプログラムのフローチャートである。
図3】第1実施例の液圧制動装置の作動を示すタイミングチャートである。
図4】第2実施例の液圧制動装置で実行されるプログラムのフローチャート
図5】第2実施例の液圧制動装置の作動を示すタイミングチャートである。
図6】第3実施例の液圧制動装置で実行されるプログラムのフローチャート
図7】第3実施例の液圧制動装置の作動を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本願発明の複数の実施例を説明する。本願発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種種の変更、改良を施して実施することが可能である。
(第1実施例)
【0015】
以下、本発明の一実施例である液圧ブレーキ装置について図面に基づいて詳細に説明する。第1実施例では、前輪2輪が駆動輪とされた車両に本発明が適用されている。
【0016】
図1は、第1実施例の制動装置のブロック図である。液圧制動装置1は、ブレーキペダル10と、マスタシリンダ12と、リザーバ14と、調圧部16と、ブレーキシリンダ20、22、30、32を備えている。マスタシリンダ12が液圧発生部に相当し、ブレーキシリンダ20、22が制動トルク付与部に相当する。
【0017】
マスタシリンダ12は、ブレーキペダル10の操作(以下「ブレーキ操作」という)に応じたフルード液圧(以下「マスタシリンダ圧」という)を発生させる。マスタシリンダ12はタンデムマスタシリンダである。マスタシリンダ12の2つの加圧室のうちの一方に左右前輪(以下「左右駆動輪」という)FL、FRのブレーキシリンダ20、22が接続され、他方に左右後輪RL、RRのブレーキシリンダ30、32が接続されている。
【0018】
調圧部16は、マスタシリンダ圧を調圧して、ブレーキシリンダ20、22、30、32にフルードの液圧(以下「ホイルシリンダ圧」いう)を供給する。調圧部16はアンチロックブレーキ装置である。調圧部16は、ブレーキシリンダ30、32にホイルシリンダ圧を供給する前輪部161と、ブレーキシリンダ20、22にホイルシリンダ圧を供給する後輪部162とを有している。後輪部162は、前輪部161と実質的に同一である。よって、図1では後輪部162の構成要素の図示を省略している。
【0019】
前輪部161は、マスタシリンダ12の一方の加圧室と左右前輪のブレーキシリンダ20、22との間にそれぞれ設けられた保持弁44、46と、ブレーキシリンダ20、22とリザーバ48との間にそれぞれ設けられた減圧弁50、52と、保持弁44、46と並列にそれぞれ設けられた逆止弁54、56とを含んでいる。
【0020】
保持弁44、46は、ソレノイドへの供給電流の制御により開閉させられる常開型の電磁開閉弁であり、マスタシリンダ圧のブレーキシリンダ20、22への導入経路L1、L2をそれぞれ開閉する。減圧弁50、52は、ソレノイドへの供給電流の制御により開閉させられる常閉型の電磁開閉弁であり、ブレーキシリンダ20、22のホイルシリンダ圧をリザーバ48に排出する排出経路L3、L4をそれぞれ開閉する。逆止弁54、56は、ブレーキシリンダ20、22からマスタシリンダ12に向かうフルードの流れを許容し、逆向きの流れを阻止する。
【0021】
前輪部161は、リザーバ48とマスタシリンダ12の加圧室との間に設けられたポンプ60と、逆止弁62、64とを、更に含んでいる。ポンプ60は、電動モータ66により駆動され、リザーバ48内のフルードを汲み上げてマスタシリンダ12に戻す。
【0022】
左前輪FLのブレーキシリンダ20の液圧は、保持弁44、減圧弁50の開閉により制御される。右前輪FRのブレーキシリンダ22の液圧は、保持弁46、減圧弁52の開閉により制御される。これらブレーキシリンダ20、22の液圧は、別個独立に制御可能である。
【0023】
マスタシリンダ12と保持弁44、46との間の液圧経路には、マスタシリンダ圧を検出する圧力センサ71が接続されている。保持弁44、46とブレーキシリンダ20、22との間の液圧経路には、ホイルシリンダ圧を検出する液圧センサ72が接続されている。
【0024】
後輪部162は、電動モータ66に対応する電動モータを含んで構成してもよいし、電動モータ66によりポンプ60に対応するポンプを駆動するように構成してもよい。
電子制御装置100は、実行部102、記憶部104、入出力部106を有している。
【0025】
入出力部106には、左右前後の各車輪にそれぞれ設けられた車輪速センサ110〜116、車両の車体速度を検出する車体速センサ118、ブレーキペダル10が操作されたことを検出するブレーキスイッチ120、図示しないアクセルペダルが操作されたことを検出するアクセルスイッチ122、前輪部161の電磁開閉弁44、46、50、52、電動モータ66、表示部126、音声出力部128等が接続されている。表示部126は、モニタやランプ等を有している。音声出力部128は、スピーカやブザー等を有している。
記憶部104にはプログラム等が記憶されている。実行部102は、記憶部104に記憶されているプログラムを実行する。
【0026】
ここで、液圧制動装置1では、従来のトラクションコントロールを行うことはできない。そこで、第1実施例では、車両の停車時に、所定圧以上のホイルシリンダ圧(以下「初期ホイルシリンダ圧」という)を確保しておく。そして、車両の発進時に、左右駆動輪FL、FRの空転量とその目標量未満とに応じて、車両の停車時に保持しておいたホイルシリンダ圧を保持または減圧することにより、車両の発進時における左右駆動輪FL、FRの空転を抑制するようにしている。
【0027】
そのため、入出力部106には、上述した車両の発進時に左右駆動輪FL、FRの空転を抑制する制御(以下「空転抑制制御」という)のドライバーによる実行意思を検出する制御実行スイッチ124が接続されている。
【0028】
図2は、実行部102で実行される空転抑制制御プログラム(以下「第1実施例のプログラム」という)のフローチャートである。電子制御装置100の実行部102は、空転抑制制御プログラムを所定周期で実行する。
【0029】
ステップS1において、実行部102は空転抑制制御中か否かを判定する。具体的には例えば、実行部102は、空転抑制制御実行フラグがオン状態か否かを判定する。ここで、空転抑制制御実行フラグは、オン状態で空転抑制制御中であることを示し、オフ状態で空転抑制制御中ではないことを示すフラグである。実行部102は、ステップS1において空転抑制制御中であること(空転抑制制御実行フラグがオン状態であること)を判定すると、ステップS4の処理に進み、ステップS1において空転抑制制御中ではないこと(空転抑制制御実行フラグがオフ状態であること)を判定すると、ステップS2の処理に進む。
【0030】
ステップS2において、実行部102は、ドライバーによる空転抑制制御の実行意思の有無を判定する。ドライバーによる空転抑制制御の実行意思の有無の判定は、具体的には例えば、制御実行スイッチ124の検出結果に基づいて行う。実行部102は、ステップS2においてドライバーによる空転抑制制御の実行意思があることを判定すると、ステップS3において空転抑制制御実行フラグをオン状態にした上で、ステップS4の処理に進み、ステップS2においてドライバーによる空転抑制制御の実行意思がないことを判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0031】
ステップS4において、実行部102は、マスタシリンダ圧の保持(初期ホイルシリンダ圧の確保)が完了しているか否かを判定する。実行部102は、ステップS4においてマスタシリンダ圧の保持が完了していることを判定すると、ステップS10の処理に進み、ステップS4においてマスタシリンダ圧の保持が完了していないことを判定すると、ステップS5の処理に進む。
【0032】
ステップS5において、実行部102は、マスタシリンダ圧の保持許可条件が成立しているか否かを判定する。マスタシリンダ圧の保持許可条件としては、例えば、車両が停車している状態であり、かつ、図示しないアクセルペダルの操作(以下「アクセル操作」という)がない状態であることが考えられる。車両が停車状態であるか否かの判定は、例えば、車輪速センサ110〜116の検出結果に基づいて行う。アクセル操作の有無の判定は、例えば、アクセルスイッチ122の検出結果に基づいて行う。実行部102は、ステップS5においてマスタシリンダ圧の保持許可条件が成立していると判定すると、ステップ6の処理に進み、ステップS5においてマスタシリンダ圧の保持許可条件が成立していないと判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0033】
ステップS6において、実行部102は、ドライバーに対してブレーキ操作を指示し、ステップS7の処理に進む。この指示を行う手段としては、例えば、表示部126に指示を表示することや、音声出力部128から指示を示す音声を出力することが考えられる。
【0034】
ステップS7において、実行部102は、マスタシリンダ圧Pmが車両の発進時に左右駆動輪FL、FRの空転を抑制するために必要なホイルシリンダ圧(以下「空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧」という)P1以上であるか否かを判定する。実行部102は、ステップS7においてマスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P1以上であることを判定すると、ステップS8の処理に進み、ステップS7においてマスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P1未満であることを判定すると、今回周期の処理を終了する。マスタシリンダ圧は、例えば、圧力センサ71の検出結果に基づいて算出する。
【0035】
ステップS8において、実行部102は、マスタシリンダ圧を初期ホイルシリンダ圧として保持した上で(初期ホイルシリンダ圧を確保した上で)、ステップS9の処理に進む。具体的には、実行部102は、保持弁44、46を閉弁させ、減圧弁50、52を閉弁させる。
ステップS9において、実行部102は、保持完了フラグをオン状態にした上で、ステップS10の処理に進む。
【0036】
ステップS10において、実行部102は、ドライバーに対してアクセル操作を行うことを指示し、ステップS12の処理に進む。この指示を行う手段としては、例えば、表示部126に指示を表示することや、音声出力部128から指示を示す音声を出力することが考えられる。ドライバーに対してアクセル操作を行うことを指示は、例えばマスタシリンダ圧の保持が完了したことを示す表示等、間接的な指示でもよい。
【0037】
ステップS11おいて、実行部102は、車両が発進したか否かを判定する。例えば、実行部102は、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量よりも大きくなったことを、車両が発進したと判定する。空転量は、例えば、車輪速センサ110、112および車体速センサ118の検出結果に基づいて算出する。実行部102は、ステップS11において車両が発進したことを判定すると、ステップS12に進み、ステップS11において車両が未だ発進していないことを判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0038】
ステップS12において、実行部102は、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満であるか否かを判定する。実行部102は、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満であることを判定すると、ステップS13において減圧弁50、52を開弁させた上でステップS15の処理に進み、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量以上であることを判定すると、ステップS14において減圧弁50、52を閉弁させた上でステップS15の処理に進む。
【0039】
ステップS15において、実行部102は、車両の走行状態が発進状態か巡航状態かを判定する。具体的には例えば、実行部102は、車体速度が所定速度V1未満であるか否かを判定する。実行部102は、ステップS15において車両の走行状態が発進状態であること(車体速度が所定速度V1未満であること)を判定すると、ステップS16において空転抑制制御実行フラグをオン状態にした上で、今回周期の処理を終了し、ステップS15において車両の走行状態が巡航状態であること(車体速度が所定速度V1以上であること)を判定すると、ステップS17において空転抑制制御実行フラグをオフ状態にし、ステップS18において保持フラグをオフ状態にし、ステップS19において空転抑制制御終了処理を行った上で、今回周期の処理を終了する。
【0040】
空転抑制制御終了処理としては、例えば、空転抑制制御において左右後輪RL、RRに対する制動トルクの制御(ステップS12〜S14参照)に加えて駆動トルクの制御を行う場合には、駆動トルクをアクセル操作に応じた値に戻すことが考えられる。左右後輪RL、RRに対する駆動トルクの制御とは、例えば、左右後輪RL、RRの空転量がその目標量以上である場合に駆動トルクを減少させ、左右後輪RL、RRの空転量がその目標量未満である場合に駆動トルクを増大させる制御である。
【0041】
図3は、第1実施例の作動を示すタイミングチャートである。図3では、タイミングt1からt6までアクセル操作がされておらず車両が停車している状態であること、タイミングt2においてドライバーに対してブレーキ操作が指示されると、タイミングt3においてドライバーがブレーキペダル10を踏み増すこと、タイミングt5においてドライバーに対してアクセル操作を行うことが指示されると、ドライバーがブレーキ操作を止めて、タイミングt6においてドライバーがアクセル操作を開始することを想定している。
【0042】
タイミングt1において、制御実行スイッチ124が空転抑制制御の実行意思があることを示す状態に操作されると、タイミングt2において、空転抑制制御実行フラグがオン状態になる。また、タイミングt2では、アクセル操作が行われておらず車両が停車している状態である。すなわち、タイミングt2では保持条件が成立している。そのため、タイミングt2において、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことが指示される。
【0043】
タイミングt3において、ドライバーがブレーキ操作を行うと、マスタシリンダ圧が上昇する。タイミングt4において、マスタシリンダ圧がP1に達すると、タイミングt5において、マスタシリンダ圧が初期ホイルシリンダ圧として保持され、保持フラグがオン状態になり、ドライバーに対してアクセル操作を行うことが指示される。
【0044】
タイミングt6において、ドライバーがアクセル操作を行うと、エンジン回転数が上昇する。その結果、タイミングt7において、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量を上回り、車両が発進状態になると、タイミングt7からt8では、減圧弁50、52が開閉する。これにより、左右駆動輪FL、FRの空転量とその目標量とに応じてホイルシリンダ圧が保持または減圧される。
タイミングt8において、車体速度が所定速度V1に達すると、空転抑制制御実行フラグおよび保持フラグがオフ状態になる。
【0045】
以上説明した第1実施例では、車両の停車時に、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧を初期ホイルシリンダ圧として保持しておき、車両の発進時に、左右駆動輪FL、FRの空転量に応じてホイルシリンダ圧を保持または減圧するため、マスタシリンダ圧を加圧する構成要素(例えば、特許文献1の負荷ポンプ)を備えていない液圧制動装置においても、車両の発進時における左右駆動輪FL、FRの空転を抑制することができる。
また、第1実施例では、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことを指示するため、初期ホイルシリンダ圧を確実に確保することができる。
【0046】
さらに、第1実施例では、マスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P1以上であることが判定されている場合に、マスタシリンダ圧を初期ホイルシリンダ圧として保持するため、空転抑制制御に必要な初期ホイルシリンダ圧を確実に確保することができる。
(第2実施例)
【0047】
第2実施例では、車両の発進時に、ホイルシリンダ圧をブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧に基づいて増圧するようにしている。
第2実施例は、実行部102で実行される空転抑制制御プログラム(以下「第2実施例のプログラム」という)が第1実施例のプログラムと異なる。よって、プログラム以外の構成の説明は省略する。
【0048】
図4は、第2実施例のプログラムを示すフローチャートである。実行部102は、図4のプログラムを所定周期で実行する。図4では、図2のステップと同一のステップに同一の符号を付している。よって、以下の第2実施例のプログラムの説明では、第1実施例のプログラムのステップと同一のステップの説明を適宜省略する。
【0049】
実行部102は、ステップS2において空転抑制制御中であることを判定すると、ステップS3において、空転抑制制御実行フラグをオン状態にし、ステップS21において、アクセルペダルとブレーキペダル10が同時に操作された際にブレーキ操作を優先する制御(以下「ブレーキオーバライド制御」という)を禁止した上で、ステップS4の処理に進む。具体的には例えば、実行部102は、ステップS21において、BO制御許可フラグをオフすることを、図示しないエンジンを制御する電子制御装置に要求する。BO制御許可フラグは、オン状態でブレーキオーバライド制御が許可されている状態を示し、オフ状態でブレーキオーバライド制御が禁止されている状態を示すフラグである。
マスタシリンダ圧を保持する処理(初期ホイルシリンダ圧を確保する処理)は、図2のステップS4からS9と実質的に同一である。
【0050】
実行部102は、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満であることを判定すると、ステップS13において減圧弁50、52を開弁させた上でステップS23の処理に進み、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量以上であることを判定すると、ステップS14において減圧弁50、52を閉弁させた上でステップS22の処理に進む。
【0051】
ステップS22において、実行部102は、ホイルシリンダ圧Pwがマスタシリンダ圧Pm以上であるか否かを判定する。実行部102は、ステップS22においてホイルシリンダ圧Pwがマスタシリンダ圧Pm以上であることを判定すると、ステップS23の処理に進み、ステップS22においてホイルシリンダ圧Pwがマスタシリンダ圧Pm未満であること(マスタシリンダ圧Pmがホイルシリンダ圧Pwよりも高いこと)を判定すると、ステップS24の処理に進む。ホイルシリンダ圧は、例えば、圧力センサ72の検出結果に基づいて算出する。
【0052】
ステップS23において、実行部102は保持弁44、46を閉弁した上でステップS15の処理に進む。ステップS24において、実行部102は保持弁44、46を開弁した上で、ステップS15の処理に進む。
【0053】
ステップS15において、実行部102は、車両の走行状態が巡航状態であると判定すると、図2のステップS17からS19と実質的に同一の処理に加えて、ステップS25においてブレーキオーバライド制御を許可する。具体的には例えば、実行部102は、ステップS25において、BO制御許可フラグをオフ状態にすることを、図示しないエンジンを制御する電子制御装置に要求する。
【0054】
図5は、第2実施例の作動を示すタイミングチャートである。図5では、タイミングt1からt6までアクセル操作がされておらず車両が停車している状態であること、タイミングt2においてドライバーに対してブレーキ操作が指示されると、タイミングt3においてドライバーがブレーキペダル10を踏み増すこと、タイミングt5においてドライバーに対してアクセル操作を行うことが指示された後も、ドライバーがブレーキ操作を継続すること、タイミングt6においてドライバーがアクセル操作を開始することを想定している。
【0055】
図5では、図3のタイミングと同様のタイミングに同一の符号を付している。よって、以下の第2実施例の作動の説明では、第1実施例の作動と同様の作動の説明を適宜省略する。
【0056】
タイミングt1において、制御実行スイッチ124が空転抑制制御の実行意思があることを示す状態に操作されると、タイミングt2において、空転抑制制御実行フラグがオン状態になり、BO制御許可フラグがオフ状態になる。
【0057】
タイミングt7からt8では、保持弁44、46および減圧弁50、52が開閉することにより、左右駆動輪FL、FRの空転量とその目標量とマスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧とに応じて、ホイルシリンダ圧が保持、減圧または増圧される。
【0058】
ホイルシリンダ圧の増圧の上限は、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧である。例えば、タイミングt21、t22では、マスタシリンダ圧がそれぞれP1、P2であり、ホイルシリンダ圧はマスタシリンダ圧以上である。そのため、減圧弁50、52が閉弁され、保持弁44、46が開弁されると、ホイルシリンダ圧はそれぞれP1、P2まで増圧される。
タイミングt8において、車体速度がV1に達すると、空転抑制制御実行フラグおよび保持フラグがオフ状態になり、BO制御許可フラグがオン状態になる。
【0059】
以上説明した第2実施例では、車両の停車時に、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧を初期ホイルシリンダ圧として保持しておき、車両の発進時に、左右駆動輪FL、FRの空転量に応じて、ホイルシリンダ圧を保持、減圧に加えてマスタシリンダ圧に基づいて増圧するため、車両の発進時における左右駆動輪FL、FRの空転をより一層抑制することができる。
(第3実施例)
【0060】
第3実施例では、車両の停車時にマスタシリンダ圧を保持しない。第3実施例では、車両の発進時に、空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧に相当するマスタシリンダ圧をブレーキ操作によって発生させることを前提として、マスタシリンダ圧をホイルシリンダ圧として保持、ホイルシリンダ圧を減圧または増圧するようにしている。
【0061】
第3実施例は、実行部102で実行される空転抑制制御プログラム(以下「第3実施例のプログラム」という)が第1実施例のプログラムおよび第2実施例のプログラムと異なる。よって、プログラム以外の構成の説明は省略する。
【0062】
図6は、第3実施例のプログラムを示すフローチャートである。実行部102は、図6のプログラムを所定周期で実行する。図6では、図2および図4のステップと同一のステップに同一の符号を付している。よって、以下の第3実施例のプログラムの説明では、第1実施例のプログラムまたは第2実施例のプログラムのステップと同一のステップの説明を適宜省略する。
【0063】
実行部102は、ステップS1において、空転抑制制御中であることを判定すると、ステップS33の処理に進み、ステップS1において、空転抑制制御中ではないことを判定すると、ステップS2の処理に進む。
実行部102は、ステップS2において、ドライバーによる空転抑制制御の実行意思があることを判定すると、ステップS31に進む。
【0064】
ステップS31において、実行部102は、空転抑制制御許可条件が成立しているか否かを判定する。空転抑制制御許可条件としては、例えば、車両が停車している状態であり、かつ、アクセル操作が行われていない状態であることが考えられる。実行部102は、ステップS31において空転抑制制御許可条件が成立していることを判定すると、ステップS3において、空転抑制制御実行フラグをオン状態にし、ステップS21において、ブレーキオーバライド制御を禁止し、ステップS32において、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことを指示した上で、ステップS33の処理に進み、ステップS31において空転抑制制御許可条件が成立していないことを判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0065】
ステップS33において、実行部102は、マスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P3以上であるか否かを判定する。実行部102は、ステップS33において、マスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P3以上であることを判定すると、ステップS10において、ドライバーに対してアクセル操作を行うことを指示した上で、ステップS11の処理に進み、マスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P3未満であることを判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0066】
ステップS11おいて、実行部102は、車両が発進したか否かを判定する。実行部102は、ステップS11において車両が発進したことを判定すると、ステップS12に進み、ステップS11において車両が未だ発進していないことを判定すると、今回周期の処理を終了する。
【0067】
実行部102は、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満であることを判定すると、ステップS13において減圧弁50、52を開弁させるとともに、ステップS34において保持弁44、46を閉弁させた上で、ステップS15の処理に進み、ステップS12において左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量以上であることを判定すると、ステップS14において減圧弁50、52を閉弁させるとともに、ステップS35において保持弁44、46を開弁させた上でステップS15の処理に進む。
【0068】
図7は、第3実施例の作動を示すタイミングチャートである。図7では、タイミングt1からt6まで、アクセル操作がされておらず車両が停車状態であること、タイミングt2においてドライバーに対してブレーキ操作が指示されると、タイミングt3においてドライバーがブレーキペダル10を踏み増すこと、タイミングt5においてドライバーに対してアクセル操作を行うことが指示された後も、ドライバーがブレーキ操作を継続すること、タイミングt6においてドライバーがアクセル操作を開始することを想定している。
【0069】
図7では、図3のタイミングと同様のタイミングに同一の符号を付している。よって、以下の第3実施例の作動の説明では、第1実施例の作動と同様の作動の説明を適宜省略する。
【0070】
タイミングt1において、制御実行スイッチ124が空転抑制制御の実行意思があることを示す状態に操作されると、タイミングt2において、空転抑制制御実行フラグがオン状態になる。また、タイミングt2では、アクセル操作がされておらず車両が停車している状態である。すなわち、タイミングt2では空転抑制制御許可条件が成立している。そのため、タイミングt2において、BO制御許可フラグがオフ状態になり、続いてドライバーに対してブレーキ操作を行うことが指示される。
【0071】
タイミングt3において、ドライバーがブレーキ操作を行うと、マスタシリンダ圧が上昇する。タイミングt34において、マスタシリンダ圧がP3に達すると、タイミングt35においてドライバーに対してアクセル操作を行うことが指示される。
【0072】
タイミングt6において、ドライバーがアクセル操作を行うと、エンジン回転数が上昇する。タイミングt7からt8において、左右駆動輪FL、FRの空転量とその目標量とマスタシリンダ圧とホイルシリンダ圧とに応じて保持弁44、46および減圧弁50、52が開閉することにより、ホイルシリンダ圧が保持、減圧または増圧される。ホイルシリンダ圧の増圧は、ブレーキ操作に応じたマスタシリンダ圧を上限する。
タイミングt8において、車体速度がV1に達すると、空転抑制制御実行フラグおよび保持フラグがオフ状態になり、BO制御許可フラグがオン状態になる。
【0073】
以上説明した第3実施例では、車両の発進時に、アクセル操作に加えてブレーキ操作を行うことにより、車両の発進時における左右駆動輪FL、FRの空転を抑制することができる。
(他の実施例)
【0074】
(1)上記複数の実施形態では、マスタシリンダ圧を圧力センサ71の検出結果に基づいて算出するようにしたが、マスタシリンダ圧は既知の構成により取得するようにしてもよい。この場合、圧力センサ71は必須の構成ではない。
(2)上記第1実施例では、ホイルシリンダ圧を算出する必要がないため、圧力センサ72は必須の構成ではない。
【0075】
(3)上記第2実施例および第3実施例では、ホイルシリンダ圧を圧力センサ72の検出結果に基づいて算出するようにしたが、ホイルシリンダ圧は既知の構成により取得するようにしてもよい。この場合、圧力センサ72は必須の構成ではない。
【0076】
(4)上記複数の実施例では、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満である場合に、ホイルシリンダ圧を減圧し、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量以上である場合に、ホイルシリンダ圧を保持または増圧するようにした。しかしながら、ホイルシリンダ圧の制御は、車両の発進時の左右駆動輪FL、FRの空転が抑制されるように、左右駆動輪FL、FRの空転量とその目標量とに基づいて行えばよく、上記複数の実施例の制御に限定されない。例えば、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量未満ではあっても、空転量がその目標値に近づくように増大している場合には、ホイルシリンダ圧を保持または増圧してもよい。
【0077】
(5)上記第1実施例および第2実施例では、マスタシリンダ圧Pmが空転抑制制御に必要なホイルシリンダ圧P1以上であることを判定し、その時点のマスタシリンダ圧を初期ホイルシリンダ圧として保持するようにした。しかしながら、ドライバーに空転抑制制御の実行意思があることが判定されてから所定時間経過後のマスタシリンダ圧を保持するようにしてもよいし、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことを指示してから所定時間経過後のマスタシリンダ圧を保持するようにしてもよい。
【0078】
(6)上記第2実施例では、マスタシリンダ圧Pmがホイルシリンダ圧Pwよりも大きい場合に、ホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧に基づいて増圧するようにした。しかしながら、マスタシリンダ圧Pmとホイルシリンダ圧Pwとを比較することなく、左右駆動輪FL、FRの空転量がその目標量以上である場合に、保持弁44、46を開弁するようにしてもよい。このように構成したとしても、ホイルシリンダ圧よりも高いマスタシリンダ圧がブレーキ操作によって発生していれば、第2実施例と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(7)上記複数の実施例では、ドライバーに対してブレーキ操作を行うことを指示するようにした。しかしながら、ドライバーに空転抑制制御の実行意思があれば、自主的にブレーキ操作が行われることが考えられるため、上記指示を行う処理を省略してもよい。
【0080】
(8)上記複数の実施例では、ドライバーに対してアクセル操作を行うことを指示するようにした。しかしながら、ドライバーに空転抑制制御の実行意思があれば、アクセル操作によらず左右駆動輪FL、FRに駆動トルクを発生させるようにしてもよい。
【0081】
(9)上記複数の実施例では、ドライバーによる空転抑制制御の実行意思を制御実行スイッチ124により受け付けるようにした。しかしながら、ドライバーに対して空転抑制制御を実行する必要性があることを通知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0082】
12…マスタシリンダ(液圧発生部)、20…ブレーキシリンダ(制動トルク付与部)、22…(制動トルク付与部)、16…調圧部(調圧手段)、71…圧力センサ(液圧判定手段)、72…圧力センサ(液圧判定手段)、100…電子制御装置(調圧手段、受付手段、ブレーキ操作指示手段、液圧判定手段、空転抑制手段)、124…制御実行スイッチ(受付手段)、126…表示部(ブレーキ操作指示手段)、128…音声出力部(ブレーキ操作指示手段)、FL…左前輪(駆動輪)、FR…右前輪(駆動輪)、L1…導入経路、L2…導入経路、L3…排出経路、L4…排出経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7