【0018】
[尿素(誘導体)]
本発明で用いる尿素(誘導体)としては、分子量300以下程度の低分子化合物であることが好ましく、尿素(誘導体)尿素誘導体としては、例えば、下記一般式(I)で表されるもの、具体的には尿素(H
2N−CO−NH
2)、ビウレット(H
2N−CO−NH−CO−NH
2)、ポリウレア、その他、セミカルバジド、アラントイン、シトルリン、チオ尿素、チオセミカルバジド、チオ尿素誘導体などが挙げられる。
(R
1)(R
2)N−C(O)−N(R
3)(R
4) (I)
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は、各々独立して水素原子、アルキル基、アリール基、又は−R
5CONH
2(式中、R
5は単結合又はアルキレン基を表す。)を有するアミドアシル基を表す。)
これらの尿素(誘導体)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの尿素(誘導体)のうち、RO膜の保護効果、溶解性、入手の容易性の面で尿素、ビウレットが好ましく、特に尿素が好ましい。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0027】
[実験I]
以下の(1)〜(3)の手順で塩素剤の非消費性を調べる実験を行った。
【0028】
(1) 塩化ナトリウム500mg/L、炭酸水素ナトリウム20mg/Lの水溶液に、スルファミン酸を0.9mg/L添加し、塩酸と水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した後に、有効塩素濃度が1.75mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウムを添加し、その後、マンガン濃度が0.6mg/Lとなるように塩化マンガン(MnCl
2)を、銅濃度が0.02mg/Lとなるように塩化銅(CuCl
2)をそれぞれ添加し、最終的に塩酸と水酸化ナトリウムでpH6.5に微調整することで模擬供給水(ORP600mV)を調製した。
(2) 模擬供給水の遊離塩素濃度、結合塩素濃度、及びTOCを測定した。
(3) 模擬供給水に劣化抑制剤を添加した後、遊離塩素濃度、結合塩素濃度、及びTOCの経時変化を測定した。
【0029】
比較例I−1:劣化抑制剤としてアスパラギン酸を1mg/L使用し、上記(1)〜(3)を実施した。
実施例I−1:劣化抑制剤として尿素を1mg/L使用し、上記(1)〜(3)を実施した。
【0030】
図1に劣化抑制剤添加後の遊離塩素濃度と結合塩素濃度の経時変化を示す。アスパラギン酸を添加した比較例I−1は、遊離塩素濃度が低下しているが、結合塩素濃度も低下しており、結合塩素剤を消費していることが分かる。一方、尿素を添加した実施例I−1は遊離塩素濃度、結合塩素濃度共に減少は緩やかである。
図2に劣化抑制剤添加後のTOC濃度の経時変化を示す。このTOC濃度は、ブランクとして、劣化抑制剤を添加する前のTOC濃度を除いている。アスパラギン酸を添加した比較例I−1は、尿素を添加した実施例I−1よりも初期TOC濃度が上昇しており、時間と共に減少している。これは、アスパラギン酸が遊離塩素や結合塩素によって分解していることを意味している。尿素の場合はほとんど変化しておらず、尿素は遊離塩素や結合塩素の影響を受け難いことが分かる。
【0031】
[実験II]
以下の(1)〜(4)の手順で劣化抑制効果を調べる実験を行った。
【0032】
(1) 塩化ナトリウム500mg/L、炭酸水素ナトリウム20mg/Lの水溶液に、スルファミン酸を0.9mg/L添加し、塩酸と水酸化ナトリウムでpH6.5に調整した後に、有効塩素濃度が1.75mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウムを添加し、その後、マンガン濃度が0.6mg/Lとなるように塩化マンガン(MnCl
2)を、銅濃度が0.02mg/Lとなるように塩化銅(CuCl
2)をそれぞれ添加し、最終的に塩酸と水酸化ナトリウムでpH6.5に微調整することで模擬供給水(ORP600mV)を調製した。
(2) 模擬供給水に劣化抑制剤を添加し、RO供給水とした。
(3)
図3(a),(b)に示す平膜試験装置を用いて、RO処理を行った。使用したRO膜は日東電工社製「ES20」で、回収率は80%とした。
この平膜試験装置において、RO膜供給水は、配管11より高圧ポンプ4で、密閉容器1のRO膜をセットした平膜セル2の下側の原水室1Aに供給される。
図3(b)に示すように、密閉容器1は、原水室1A側の下ケース1aと、透過水室1B側の上ケース1bとで構成され、下ケース1aと上ケース1bとの間に、平膜セル2がOリング8を介して固定されている。平膜セル2はRO膜2Aの透過水側が多孔質支持板2Bで支持された構成とされている。平膜セル2の下側の原水室1A内はスターラー3で攪拌子5を回転させることにより攪拌される。RO膜透過水は平膜セル2の上側の透過水室1Bを経て配管12より取り出される。濃縮水は配管13より取り出される。密閉容器1内の圧力は、給水配管11に設けた圧力計6と、濃縮水取出配管13に設けた圧力調整バルブ7により調整される。
(4) 脱塩率を以下の式で算出し、脱塩率の経時変化を求めた。
脱塩率[−]=1−透過水の電気伝導度/濃縮水の電気伝導度
【0033】
比較例II−1:劣化抑制剤を使用せず、(1)〜(4)を実施した。
比較例II−2:劣化抑制剤としてアスパラギン酸を1mg/L使用し、(1)〜(4)を実施した。
実施例II−1:劣化抑制剤として尿素を1mg/L使用し、(1)〜(4)を実施した。
【0034】
図5に脱塩率の経時変化を示す。劣化抑制剤を使用しない比較例II−1では脱塩率が最も低下している。劣化抑制剤としてアスパラギン酸を使用した比較例II−2では、脱塩率の低下を抑制できているが、実験Iで示したように結合塩素が消費されていると考えられる。劣化抑制剤として尿素を使用した実施例II−1では、脱塩率の低下を抑制しており、実験Iで示したように結合塩素を消費していない。尿素の添加量を変えることで、脱塩率低下の抑制効果を向上させることができると考えられる。
【0035】
[実験III]
以下の(1)〜(4)の手順で劣化抑制効果を調べる実験を行った。
【0036】
(1) 塩化ナトリウム500mg/L、炭酸水素ナトリウム20mg/Lの水溶液に、有効塩素濃度が100mg/Lとなるように次亜塩素酸ナトリウムを添加し、塩酸と水酸化ナトリウムでpH6.5に微調整して模擬供給水(ORP900mV)を調製した。
(2) 調製した模擬供給水に劣化抑制剤を添加し、RO供給水とした。
(3)
図3(a),(b)に示す平膜試験装置を用いて、RO処理を行った。使用したRO膜は日東電工社製「ES20」で、回収率80%とした。
(4) 脱塩率は実験IIと同様にして算出し、脱塩率の経時変化を求めた。
【0037】
比較例III−1:劣化抑制剤を使用せず、(1)〜(4)を実施した。
実施例III−1:劣化抑制剤として尿素を100mg/L使用し、(1)〜(4)を実施した。
【0038】
図5に脱塩率の経時変化を示す。劣化抑制剤を使用しない比較例III−1では経時により脱塩率が大きく低下しているが、劣化抑制剤として尿素を使用した実施例III−1では、脱塩率の低下を抑制できている。