【解決手段】第1の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスQ1、Q2、Q3、Q4および第2の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスQ5、Q6を含む修正ギルバート乗算器回路500であって、第1の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスは、第1のチャネル幅に基づき、指数制御特性を有すし、第2の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスは、第2のチャネル幅に基づき、線形制御特性を有する。第1の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスのチャネル幅は、第2の複数のカーボンナノチューブトランジスターデバイスのチャネル幅よりも大きい。
前記第1の複数のCNTデバイスのそれぞれのチャネル幅は、前記第2の複数のCNTデバイスのそれぞれのチャネル幅よりも少なくとも10倍大きい、請求項1に記載のギルバート乗算器回路。
前記第1の複数のCNTデバイスは、局部発振器(LO)信号を受信するように構成され;そして前記第2の複数のCNTデバイスは、無線周波数(RF)信号を受信するように構成される、請求項1〜6のいずれか1つに記載のギルバート乗算器回路。
前記IF信号は、0 dBmよりも大きくない電力を有するLO信号に対し、少なくとも30 dBmの3次インターセプトポイント(IP3)を有する、請求項8に記載のギルバート乗算器回路。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
ミクサの設計は、2つの因子、すなわち感度範囲およびダイナミックレンジに基づいている。感度は、唯一のシグナルが存在する際に、検出され得る最少のシグナルである。感度は、シグナルがノイズレベルより上に発生しなければならないとの理由で雑音指数に依存する。ダイナミックレンジは、多数の大きなシグナルが存在する際に検出され得る最少のシグナルである。ダイナミックレンジは、非線形性が小さなシグナルを覆う大きなシグナルの偽相互変調積を生じるとの理由で、線形性に依存する。
【0010】
シグナルが混雑している環境において、ダイナミックレンジは、感度よりより重要であり得る。例えば、バグダート上を飛行するグローバル ホーク機(Global Hawk plane)は、ノイズレベルより上のテロリストの携帯電話からの信号を受信するかもしれない。しかし、地理位置情報のための信号源を選別するのが不可能である領域中に非常にたくさんの他の信号がある。それはミクサの線形性によるであろう。
【0011】
ミクサの線形性は、一般に3次インターセプトポイント(IP3)に関して表され、より高い数は、偽信号がない高いダイナミックレンジである。もし局部発振器駆動部が増えれば、ミクサは高いIP3に達することができる。したがって、ミクサの設計トレードオフは、どのくらいの局部発振器駆動部が可能であるかに依存して、通常製作される。ミクサの出力は、局部発振器に対して規定される。例えば、多数の8 dB (デシベル、10 log出力比)は、ミクサの出力(IP3 number)が、局部発振器より高い8 dBであることを意味する。もし、局部発振器駆動部に対するミクサの出力が、8 dBからより高い数になり得れば、ミクサのダイナミックレンジは、改善され得る。
【0012】
例としてレーダーシステムの使用は、レーダー受信機部分における高いIP3ミクサ演算を達するために、大きな局部発振器駆動部が必要とされる。同様に、局部発振器は、低い位相ノイズを有することを必要とする。きれいな局部発振器は、高品質で、周波数安定源として水晶発振器を用いる低周波で始動する。これらの発振器は、一般的に、100 MHzで作動し、最大でGHz周波数まで乗算されなければならず、そうするための一連の種々のチップを必要とする。局部発振器増幅部チップ、それらの電力消費、およびそれらの付加された位相ノイズが、レーダー受信機の最大の設計問題に存在する。
【0013】
システムおよび方法の1つの具体的態様は、低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積が実質的にないカーボンナノチューブトランジスタ(CNT)ミクサを提供する。CNTミクサは、理想的なギルバートセルミクサに近いか、あるいは完全な線形ミクサとしても言及される。具体的には、システムおよび方法の1つの具体的態様は、同一の集積回路上のデバイス電流電圧(I−V)特性:指数および線形の2種を提供する。CNT I−V特性は、(物理定数により決定される)理想的な指数制御特性および(同様に物理定数により決定される)理想的な線形制御特性の両方を裏付け、結果として(完全な乗算器としても言及される)理想的な乗算器をもたらす。言い換えれば、CNTミクサは、理想的な乗算器と数学的に等しい。そのような理想的な乗算器は、低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積が実質的にないミクサとして用いられ得る。
【0014】
低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積が実質的にないCNTミクサを提供するためのシステムおよび方法は、ギルバート乗算器回路に対する改善である。システムおよび方法の具体的態様は、ミクサのダイナミックレンジを増加する。以下に述べるように、(
図1に示されている)オリジナルのギルバート乗算器において、第2の平衡入力の陽極側を表す変数を表す記号(
図1において示されるy)に関するトランジスタは、線形特性を有する必要がある。しかしながら、目盛り付きの電流源(
図1において示されるB5およびB6)は、指数特性を有する。この問題への対処において、ギルバートは、直線特性に近似するこれら2つのトランジスターのエミッターにおいてエミッター減衰抵抗を用いた。この近似は、理想的な乗算器としてオリジナルの回路に妥協して解決した。システムおよび方法の具体的態様により提供されたCNTミクサの上記のアバブスレッショルドトランジスターは本質的に線形であり、従って、ギルバートが理論的には有したが、実際には達成できなかった理想的な乗算器の演算を果たす。
【0015】
図1は、オリジナルのギルバート乗算器回路100における能動素子B1〜B4、すなわち、バイポーラー接合トランジスター(BJTs)を図解する。B1のエミッターは、B2のエミッターに接続され;そしてB3のエミッターは、B4のエミッターに接続されている。B1の集電器は、B3の集電器に接続され;B2の集電器は、B4の集電器に接続されている。B2の基底部はB3の基底部に接続されている。B1およびB4の基底部はxとして示されており、第1の平衡出力の陽極側を表す。B2およびB3の基底部は、(1−x)として示されており、第1の平衡出力の負極側を表す。
【0016】
能動素子B1〜B4は指数制御特性を有し、I
c = I
s exp(qV
BE/kT)であり、ここで、I
cは集電器電流であり;I
sは飽和電流であり; exp(x)はe
xであり、低e, ここでeは2.718であり;qは電子の電荷1.602×10
-19Cであり;V
BEは基底部エミッター電圧であり;kはボルツマン定数1.38x10
-23 J/Kであり;そしてTはケルビン絶対温度における温度である。
【0017】
2つの目盛り付き電流源は
図1に示されており、yI
Eおよび(1−y)I
Eとしての電流をそれぞれ供給し、ここで、yは第2の平衡入力のプラス面を表し、そして(1−y)は第2の平衡入力の陰極側を表し、そしてI
Eはエミッター電流である。これらの2つの目盛り付き電流源は、能動素子として示されておらず、線形制御特性I = gmVを有し、ここでgmは相互コンダクタンスであり、そしてVは電圧である。指数および線形制御特性は、数学的な必要条件である。もし、平方根または二乗検波特性を有するデバイスがギルバートBJTsのために置き換えられたら、その回路は乗算器として作動しないであろう。例えば、もし、平方根特性が指数制御特性のために置き換えられたら、Z = XYの歪みだけでなく、異なる関数であり、そして純粋なXY積に対する乗算器を修復できる最大限の補正ですらない。
図2は、ベース電圧ステップを有するBJTのシミュレーションを図説する例示的チャート200であり、必要とされるギルバート乗算器回路の指数制御特性を示す。
【0018】
指数 平方根 線形
I = exp(V) I = kV
1/2 I = gmV
Z = XY Z = XY/(Y
2-1) Z = 0
【0019】
正弦関数および局部発振器入力を有するミクサとして用いられる理想的な乗算器は、総数、ならびにどんな相互変調積もない差周波数を生じるであろう。理想的な乗算器内へ出力される多重RF信号は、総数、ならびにどんな相互変調積もない局部発振器に関して差周波数を生じるであろう。以下で述べているように、システムおよび方法の1つの具体的態様は、理想的な乗算器を提供するためにギルバート乗算器回路を修正する。
【0020】
CNTデバイスは、エンハンスメントモード電界効果トランジスタ(FET)として機能し、演算の2つの領域:1)アバブスレッショルドおよび2)サブスレッショルドを有する。アバブスレッショルド領域において、電源電圧に対するドレインは、電源電圧に対するゲートより大きく、4kT/q (すなわち、V
DS > V
GS> 4kT/q、ここで、V
DSは電源電圧に対するドレインであり、そしてV
GSは電源電圧に対するゲートである)より大きい。サブスレッショルド領域において、電源電圧に対するドレインは、0より大きく、電源電圧に対するゲートは、kT/q (すなわち、V
DS > 0および V
GS < kT/q (負の値を含む))未満である。
【0021】
図3Aは、CNTデバイスのアバブスレッショルド領域における電流電圧(I−V)特性を説明する例示的チャート310である。I−V特性は、飽和状態(すなわち、I
dはV
DS > 0.3 Vに対して横ばい状態である)にあり、物理定数により決定されたように適合したゲートステップ(すなわち、完全に線形)を有する。
【0022】
図3Bは、CNTデバイスのサブスレッショルド領域におけるI−V特性を説明する例示的チャート320である。I−V特性も飽和にあるが、しかし指数的に変化するゲートステップを有する。
図3BのCNTデバイスは、サイズをスケールアップでき、サブスレッショルドで使用され、
図2のBJT特性に都合よく比較される。
【0023】
Baumgardnerら、"Inherent linearity in CN FETs," Appl. Phys. Lett. 91, 05-21-07において更に記載されているように方程式(1)により与えられるように、CNTデバイスはユニークなI−V特性を有しており、参照として本明細書に組み込まれる。
【0025】
式中、Nはチューブの数であり、一般的には数百また数千であり、Δはバンドギャップの1/2であり、hはプランクの定数6.63x10
-34 J/Hzである。
【0026】
方程式(1)は、指数関数の引数が0より大きい場合に、線形素子演算が生じ、指数関数における対数の低e(ln)は線形であるとの理由で、線形デバイス演算が生じる。指数関数の引数が0より小さい場合、方程式(1)は、小さいεに対しln(1+ε) = ε(式中、εは指数関数である)であるとの理由で指数関数デバイス演算が生じる。
【0027】
図3Aおよび3BのI−V特性は、例えばAgilent Technologies Inc.によるAdvanced Design System (ADS)おける大信号モデルと一緒に生成される。方程式(1)のI−V曲線に加え、大信号モデルは、チャネル長さ、および低いKゲート誘電体定数のような非理想的効果を含み得、ここで、相互コンダクタンス(gm)はスケールケースにより下側であるが、しかしその(線形)関数形式をいまだに維持している。これらの非理想的効果は、線形性に影響を有さないという理由で以下に記載される。
【0028】
方程式(2)に示されているように、因数1 + L / Lm (式中、Lはチャネル長さであり、Lmは平衡自由路、一般的には1.4μm (すなわち、10
-6メートル)である)が、電流制御方程式に加えられる。
【0030】
式中、Vtは熱電圧kT/qである。
この効果は、3〜10の因数によりgmを一般に減らすが、しかし線形性には影響を及ぼさない。
【0031】
CNTは、ゲート制御ノードへの接続が可能ではないユニークな状況を有する。これは、ゲートと直列に静電容量を有するが、しかしゲートへの直接的な接続が利用できない擬似格子整合型光電子移動度トランジスターに似ている。
【0032】
図4は、2つの静電容量、すなわち、静電容量C
Eおよび量子容量C
Qの組合わせにより決定される小さな全入力容量を有する例示的なCNT 400を説明する。静電容量C
Eが量子容量C
Qと比較できる点で、電圧分配器比により値が減らされている効果的なgmを生じる電圧分配器がある。方程式(3)は量子容量C
Qが何であるかを提供する。
【0034】
式中、V
uはアクセスできないゲート制御ノードにおける電圧である。高ゲートバイアスにおいて、V
u > Δであり、ナノチューブ容量は漸近的に定数、C
Q= 4q^2/(hV
F) = 175 aF/μmに近づき、ここで、V
Fはフェルミ速度8.8E5 m/sであり;aFは100京分の1ファラッド(Farads)、10
-18ファラッドFaradsであり;そしてμmは10
-6メートルである。
【0035】
静電容量C
Eは、方程式(4)に従って、ワイヤがCNTである接地面上のワイヤの関係により決定される。
【0037】
静電容量C
Eは、匹敵するか、あるいはいくつかの場合において、量子容量C
Qより小さく、これはgmを減らす。静電容量C
Eの外部金属ゲート電極は、CNTに対する充電に影響を与え得るが、しかしCNTそれ自身はアクセス可能ではない。大信号モデルは、静電容量C
Eおよび量子容量C
Q、ならびにそれらに比を演算処理することによる効果を含むが、効果的なgmを決定する。
【0038】
ギルバート乗算器は、完全なZ = X Y (式中、Zは出力であり、そしてX、Yは2つの入力である)を提供できる。もし、そのような回路が実現され得れば、相互変調乗算器ではないであろう。上記のように、ギルバート乗算器の完全な遂行は、2つのタイプのデバイス:指数制御特性を有する1つのタイプ、および完全またはほぼ完全な線形制御特性を有する物を必要とし得る。また上記のように、CNTデバイスは、2つの演算領域を有し、ミクサとしてほぼ完全な線形性を提供できる。
【0039】
低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積が実質的にないCNTミクサを提供するためのシステムおよび方法の1つの具体的態様は、理想的な乗算器を提供するために、
図1のギルバート乗算器回路100を修正する。具体的には、システムおよび方法の1つの具体的態様は、
図1のBJTs B1−B4を、指数制御特性を達成するためにギルバート乗算器回路100の1部に対し、サブスレッショルド領域における比較的大きな表面CNTデバイスで置き換え、
図1の目盛り付き電流源B5−B6を、線形制御特性を達成するためにギルバート乗算器回路100のもう1つの部分に対し、アバブスレッショルドにおける比較的小さな表面CNTデバイスで置き換え、結果として、低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積が実質的にない理想的な乗算器をもたらす。
【0040】
図5は、低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積を実質的に有さないCNTミクサを提供するためのシステム方法との具体的態様を実行する修正ギルバート乗算器回路500を説明する。4つのサブスレッショルドCNTデバイスQ1−Q4は、
図1のBJTs B1−B4にとって代わる。サブスレッショルドCNTデバイスQ1−Q4は、チャネル幅の比較的大きな表面を有するCNTデバイスの(たすき掛けの4つの部分から構成されるものとしても言及される)2つのたすき掛けの異なるペアーである。Q1のソースはQ2のソースに接続され;そしてQ3のソースは、Q4のソースに接続されている。Q1のドレインは、Q3のドレインに接続され;Q2のドレインはQ4のドレインに接続されている。Q2のゲートは、Q3のゲートに接続されている。Q1およびQ4のゲートは、xとして示され、第1の平衡入力の陽極側を表す。Q2およびQ3のゲートは、(1−x)として示され、第1の平衡入力の陰極側を表す。
【0041】
サブスレッショルドCNTデバイスQ1−Q4は、指数制御特性;
【数5】
を有する。
【0042】
図5への参照を持続して、2つのアバブスレッショルドCNTデバイスQ5−Q6は、
図1の目盛り付き電流源B5−B6にとって代わり、テール電流yI
Eおよび(1−y)I
E (式中、yは第2の平衡入力の陽極側を表し、(1−y)は第2の陰極側を表し、そしてI
Eはエミッタ電流を表す)をそれぞれ提供する。アバブスレッショルドCNTデバイスQ5−Q6 (2つのテール電流CNTデバイスとしても言及される)は、チャネル幅の比較的小さな表面を有する線形トランスコンダクタンストランジスター(linear transconductance transistor)であり得る。アバブスレッショルドCNTデバイスQ5−Q6は、線形制御特性、I = gmV (式中、gmはトランスコンダクタンスであり、Vは電圧である)を有する。
【0043】
他のCNTデバイスの小さな表面に対して、いくつかのCNTデバイスの大きな比較的大きな表面は、異なる売主により作製されたミクサを比較するときに検出され得る。サブスレッショルドCNTデバイスQ1−Q4はアバブスレッショルドCNTデバイスQ5−Q6と直列にあるので、それらは同一の電流を通す。チャネル幅の比率(すなわち、スケール係数)は、どちらのデバイスがアバブスレッショルドであり、どちらのデバイスがサブスレッショルドであるかを決定し得る。1つの実施形態では、サブスレッショルドCNTデバイスQ1−Q4 (すなわ
ち、たすき掛けの4つの部分から構成されるトランジスター)は、アバブスレッショルドCNTデバイスQ5−Q6 (すなわち、線形トランスコンダクタンストランジスター)よりもチャネル幅においてさらに10x広い。この比率は、低電力、ズーム式実体顕微鏡で観察され得る。当業者は、他の比率も等しく適用できることに感謝するであろう。
【0044】
システムと方法の1つの具体的態様は、数学的手法を用いてZ = X Yの乗算を実行する。もし、X = sin AおよびY = sin Bであれば、その時は乗算XYは、合計成分であるsin A−Bおよびsin A+Bを生じ、sin A+Bは中間周波数(IF)から容易に分離される。例えば、もし、2つのRF周波数が修正ギルバート乗算器回路500に入力されたら、X = sin A1+sin A2、それからX Yは、出力において他の周波数成分を伴わず、sin A1−B + sin A1+Bおよびsin A2−B + sin A2+Bのだけを含む。このように、乗算器技術は、RFを左右する局部発振器を必要とはしない。したがって、高いIP3を伴う混合作用は、少量の局部発振器電力を得ることができる。さらに、例示的な修正ギルバート乗算器回路500は、修正ギルバート乗算器回路500がZ = X Yを意味し、相互変調積を生じることが数学的に可能ではないと理由で、実質的に相互変調積を生じない。
【0045】
図6Aおよび6Bは、
図5の例示的な修正ギルバート乗算器械論おシミュレーション結果を説明する。CNTデバイス用の大信号モデルは、ミクサ(すなわち、乗算器)性能をシミュレーションするために用いられる。
図5に示されているように、CNTデバイスは、スケール(scaled)され、バイアスをかけられる。スケーリングは、Q1−Q4が、Q5−Q6と比較して表面で大きいことを意味し、バイアスをかけることは、Q1およびQ2を通る電流フローがQ5を通る電流フローに合計され、Q3およびQ4を通る電流フローがQ6を通る電流フローに合計されることを意味する。もし、ギルバート基準が満たされた場合、非常に低い相互変調積が、数学的に理想的な乗算器に起因して生じる。
図6Aおよび6Bに示されているシミュレーションの結果は、非常に低い相互変調積が生じたことを裏付ける。具体的には、31.8 dBm (ミリワット10 log P/.001に対するデシベル)出力インターセプトポイントが、0 dBmの非常に小さな局部発振器電力と共に得られる。
図6Aは、31.8 dBmに投影する相互変調積の3:1勾配を示す。
図6Bは、出力インターセプトポイントがRF出力レベルの広範囲に亘り平らであることを示す。
図6Aおよび6Bのシミュレーションは、電力および周波数の範囲にわたり実施され、インターセプトポイント31.8 dBmに寄与した無効な点はなかった。何故ならば、例示的な修正ギルバート乗算器回路500は、指数および線形制御特性を満たし、局部発振器電力の量は低いからである。
【0046】
図7は、低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積を実質的に有さないCNTミクサを提供するための方法700を説明するフローチャートである。この方法は、指数制御特性(ブロック706)を有する複数のアバブスレッショルドCNTデバイスを提供することを含み、修正ギルバート乗算器回路(ブロック704)を提供すること、ならびに線形制御特性(ブロック708)を有する複数のアバブスレッショルドCNTデバイスを提供することにより出発(ブロック702)する。複数のサブスレッショルドのCNTデバイスは、複数のサブスレッショルドCNTデバイスがチャネル幅の比較的大きな表面を有することができ、そして複数のアバブスレッショルドCNTデバイスがチャネル幅の比較的小さな表面を有することができるように、スケール係数によりスケールアップされる。方法は、ブロック710において終了する。
【0047】
要約すれば、ギルバート乗算器回路内に2つの異なる機能が存在し;CNTの2つの作動領域が存在し;そして2つの作動領域用の所要の適切なスケーリングは異なる。これらの3つの概念は、遂行されるべきギルバート乗算器の数学的な要件を可能にする。一度これらが満たされると、理想的な乗算器が開発され、局部発振器および実質的に相互変調積を実質的に有さないRFを混合することを可能にする。
【0048】
表1は、電流ミクサと比較して、
図5の例示的な修正ギルバート乗算器回路500のミクサ性能を示す。
【0050】
電流ミクサは、低い局部発振器電力を有すると説明されている出力3次インターセプトポイント(IP3)を達成するために必要とされる局部発振器電力に関して説明され得る。電流ミクサ出力IP3 30 dBmは、一般的に局部発振器電力23〜25 dBmを必要とする。低い局部発振器所要電力を有し、相互変調積を実質的に有さないCNTミクサを提供するためのシステムおよび方法の具体的態様は、局部発振器電力0 dBmを有するミクサ出力IP3 30 dBmを可能にする。これは、中のチップの数を減らし、そしてレーダーシステムまたは携帯ラジオの消費電力を減らす。またミクサが、送信/受信モジュール内におかれることを可能にする。
【0051】
また、ミキサは、送信/受信モジュール内に配置されることを可能にする。システムおよび方法の具体的態様は、レーダー受信機および通信受信機において使用され得る。
【0052】
本明細書で用いられる用語および記述は、説明のためだけに記載されており、何ら制限するものではない。当業者は、以下のクレーム中に規定されたとおりの本発明の精神と範囲内で、多くの変形したものが可能であり、そしてそれらは等価なものであり、そこにおける全用語は、他に別段の指示がない限り、それらの最も広い可能な常識内で、理解されるべきであることを認識するであろう。