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特開2017-212898シュー用改良材、及び、シュー用油脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-212898(P2017-212898A)
(43)【公開日】2017年12月7日
(54)【発明の名称】シュー用改良材、及び、シュー用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/34 20060101AFI20171110BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20171110BHJP
   A21D 10/00 20060101ALI20171110BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20171110BHJP
【FI】
   A21D2/34
   A21D13/08
   A21D10/00
   A23D7/00 506
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-107743(P2016-107743)
(22)【出願日】2016年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝波 祐介
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG20
4B026DH10
4B026DL08
4B026DX03
4B032DB20
4B032DK26
4B032DK41
4B032DL20
(57)【要約】
【課題】ソフトで口溶けが良好で、且つ、容積が大きく保型性が良好なシューケースを安定して得ることができるシュー用改良材、及び、シュー用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】シュー用改良材は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を含有する。シュー用油脂組成物は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を含有する。上記乳原料は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分に対し3質量%以上であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳原料の酸処理品を含有し、
前記乳原料は、乳由来の固形分を含み、該固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%以上であるシュー用改良材。
【請求項2】
乳原料の酸処理品を含有し、
前記乳原料は、乳由来の固形分を含み、該固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%以上であるシュー用油脂組成物。
【請求項3】
シュー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳原料の酸処理品を固形分として0.1質量部〜12質量部含有し、
前記乳原料は、乳由来の固形分を含み、該固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%以上であるシュー生地。
【請求項4】
請求項3記載のシュー生地の焼成体からなるシューケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトで口溶けが良好で、且つ、容積が大きく保型性が良好なシューケースを安定して得ることができるシュー用改良材、及び、シュー用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シューケース(シュー皮)を製造するためのシュー生地は、シュー用油脂を水とともに加熱煮沸して熱水と溶解した油脂の混合物とし、この中に小麦粉を添加して捏和して十分に糊化状態にした後、液卵をミキシングしながら数回に分けて加えて十分に乳化することにより得ることができるが、使用するシュー用油脂の選択によって、その容積や風味や食感が大きく異なることが知られている。シューケースの焼成には従来、バターかラードが使用されてきたが、これらには以下の長所と短所がある。
【0003】
即ち、バターは、風味と口溶けは良好だが、シューケースの皮が厚くなり、焼き伸びがやや悪いとされ、ラードは、口溶けと容積は良好であるが、特有の風味を有し、風味劣化が起こりやすいとされている。
また、液状油を用いると、ソフトな食感で口溶けは良好であり、生地は伸びるが、保型性が劣るためつぶれて容積が出なくなり、融点の高い油脂、例えば牛脂を使用すると、容積は出るものの、ワキシーな食感となり口溶けが著しく悪化してしまうという問題があった(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
このため、バター、ラード、液状油、牛脂等の天然の油脂を使用すると、容積の大きなシューケースを安定して製造することはできなかった。
容積の大きなシューケースを安定して生産するためには、シュー生地を製造する際に小麦粉等のデンプン類を十分に糊化させ、その生地に十分な伸展性があることが必要である。このため、油脂、乳化剤、カゼインのナトリウム塩の3種成分を使用するのが有効であり、これらの3種成分を含むシュー用油脂が広く使用されている。
【0005】
しかし、最近では、乳化剤や、カゼインのナトリウム塩に起因する風味が問題になりつつあり、また、最近の食品添加物の使用を控える風潮からもこれらの乳化剤やカゼインのナトリウム塩の使用量を減じた場合、或いは使用しない場合であっても、容積の大きなシューケースを安定して製造することのできるシュー用油脂が求められるようになってきた。
ここで、単に、乳化剤を使用しないでシューケースを製造するには、ラードやバター等の乳化剤を含有しない油脂組成物を使用すればよいが、上述のように、容積の大きなシューケースを安定して得ることはできない。
【0006】
一方、カゼインのナトリウム塩を使用せずとも大きな容積のシューケースを得る方法としては、水相のpHが5.2〜5.9であるシュー皮用乳化油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献1参照)や、ホエイ蛋白質:カゼイン蛋白質の質量比率が3:7〜5:5である乳蛋白質を固形分換算で0.5〜4.5質量%含有することを特徴とするシュー用乳化油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献2参照)、更には、油相中に、SLOSL(SL:炭素数16〜22である飽和脂肪酸残基、O:オレイン酸残基)で表わされるトリアシルグリセロールを60質量%以上含有する油脂を、10〜100質量%含有することを特徴とするシュー用油脂組成物を使用する方法(例えば特許文献3参照)、特定の油脂と特定の乳成分を含有するシュー用油脂(特許文献4参照)が提案されている。
【0007】
しかし、特許文献1〜3に記載された方法で得られたシューケースは硬く乾いた食感のシューケースになってしまうという問題があった。また、特許文献4に記載された方法で得られたシューケースは口溶けの点でやや問題があった。
このように、乳化剤やカゼインのナトリウム塩の使用量を減じた場合、或いは使用しない場合であっても容積が大きく、保型性が良好で、ソフトで口溶けが良好であるシューケースを製造することができるシュー用油脂は存在しなかった。
【0008】
一方、シューケースの食感の改良を目的とした、シュー用の改良材が何種か提案されている。例えば、卵殻粉(特許文献5参照)、遊離アミノ酸(特許文献6参照)、特定の水不溶性食物繊維(特許文献7参照)などであるが、特許文献5と6に記載された素材はシュー皮をサクサクさせる、或いは歯切れを改良する効果であり、容積やソフト性や口溶けを改良するものではなかった。また、特許文献7に記載された素材は生地の伸展性を向上させ、且つ、弾力のある食感とするものであり、ソフト性や口溶けを改良するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平06−165632号公報
【特許文献2】特開2001−224308号公報
【特許文献3】特開2004−267165号公報
【特許文献4】特開2008−295414号公報
【特許文献5】特開2005−269993号公報
【特許文献6】特開2011−036174号公報
【特許文献7】特開2014−008007号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】月刊世界の菓子PCG、全日本洋菓子工業会、1991年10月号、p94〜97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、乳化剤やカゼインのナトリウム塩の使用量を減じた場合、或いは使用しない場合であっても、容積が大きく、保型性が良好で、ソフトで口溶けが良好であるシューケースを製造することができるシュー用改良材及びシュー用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定の乳原料の酸処理品をシュー生地製造の糊化段階に添加することで、上記目的を達成し得ることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を含有するシュー用改良材、及び、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を含有するシュー用油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乳化剤やカゼインのナトリウム塩の使用量を減じた場合、或いは使用しない場合であっても、容積が大きく、保型性が良好で、ソフトで口溶けが良好であるシューケースを安定的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のシュー用改良材及びシュー用油脂組成物について好ましい実施形態に基づき詳述する。
まず本発明で使用する、乳原料の酸処理品について述べる。
本発明に用いられるのは、乳原料の酸処理品であるが、まず、酸処理前の、乳由来の固形分を含み、該固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%以上である乳原料(以下、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料ともいう)について述べる。
上記乳原料は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、該固形分に対し2質量%以上、好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、最も好ましくは5〜40質量%である。乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%未満である乳原料を用いると、シューケース製造時の糊化工程で、十分な糊化が行われず、容積の大きなシューケースが得られないことに加え、ソフトな食感のシューケースが得られない。
本明細書において、乳由来の固形分とは、無脂乳固形分(乳タンパクを主成分とする乳脂肪以外の固形分)と乳脂肪分との合計をいう。
上記の乳由来の固形分中のリン脂質とは、乳由来の固形分中に含まれる乳由来のリン脂質のことを示し、具体的には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジジン酸、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン等を示す。
【0015】
また、上記の乳原料は、液体状でも、粉末状でも、濃縮物でも構わない。但し、本発明においては、溶剤を用いて乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮した乳原料は、風味上の問題から本発明における乳原料として用いないのが好ましい。
【0016】
本発明で用いる上記の乳原料における乳由来の固形分中のリン脂質の含有量は、例えば以下の方法にて測定することができる。但し、抽出方法などについては、乳原料の形態などによって適正な方法が異なるため、以下の定量方法に限定されるものではない。
まず、乳原料の脂質をFolch法を用いて抽出する。次いで、抽出した脂質溶液を湿式分解法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載の湿式分解法に準じる)にて分解した後、モリブデンブルー吸光度法(日本薬学会編、衛生試験法・注解2000 2.1食品成分試験法に記載のリンのモリブデン酸による定量に準じる)によりリン量を求める。求められたリン量から以下の計算式を用いて乳原料の乳由来の固形分100g中のリン脂質の含有量(g/100g)を求め、それに100を乗ずることにより、乳由来の固形分中のリン脂質の該固形分に対する含有量(質量%)を算出する。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳原料−乳原料の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
【0017】
上記の乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料としては、例えば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分が挙げられる。このクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクとは組成が大きく異なり、リン脂質を多量に含有しているという特徴がある。バターミルクは、その製法の違いによって大きく異なるが、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、通常、0.5〜1.5質量%程度であるのに対して、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分は、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が、大凡、2〜15質量%であり、多量のリン脂質を含有している。
本発明では、上記のような通常のクリームからバターを製造する際に生じるいわゆるバターミルクそのものを用いることはできないが、バターミルクを乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上となるように濃縮したものを用いることは可能である。
【0018】
次に上記のクリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法について説明する。
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まず、牛乳を遠心分離して得られる脂肪濃度30〜40質量%のクリームをプレートで加温し、遠心分離機によってクリームの脂肪濃度を70〜95質量%まで高める。次いで乳化破壊機で乳化を破壊し、再び遠心分離機で処理することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。
一方、バターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の製造方法は、例えば以下の通りである。まずバターを溶解機で溶解し熱交換機で加温する。これを遠心分離機で分離することによってバターオイルが得られる。本発明で用いられる上記水相成分は、最後の遠心分離の工程でバターオイルの副産物として発生するものである。該バターオイルの製造に用いられるバターとしては、通常のものが用いられる。
【0019】
また、本発明で用いられる上記水相成分としては、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が該固形分に対し2質量%以上であれば、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分をそのまま用いてもよく、また噴霧乾燥、濃縮、冷凍などの処理を施したものを用いてもよい。
また、本発明では、上記の乳原料中のリン脂質の一部又は全部がリゾ化されたリゾ化物を使用することもできる。該リゾ化物は、乳原料をそのままリゾ化したものであっても良く、また乳原料を濃縮した後にリゾ化したものであっても良い。また、得られたリゾ化物に、更に濃縮或いは噴霧乾燥処理等を施しても良い。これらのリゾ化物は本発明におけるリン脂質の含有量に含めるものとする。
上記の乳原料中のリン脂質をリゾ化するには、ホスホリパーゼAで処理すれば良い。ホスホリパーゼAは、リン脂質分子のグリセロール部分と脂肪酸残基とを結びつけている結合を切断し、この脂肪酸残基を水酸基で置換する作用を有する酵素である。ホスホリパーゼAは、作用する部位の違いによってホスホリパーゼA1とホスホリパーゼA2とに分かれるが、ホスホリパーゼA2が好ましい。ホスホリパーゼA2の場合、リン脂質分子のグリセロール部分の2位の脂肪酸残基が選択的に切り離される。
【0020】
本発明で使用する、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」は、上記の乳原料を酸と接触させ、好ましくはpHが3〜6、より好ましくはpH4〜6、更に好ましくは4.7〜5.8となるように酸処理を行ったものである。上記の乳原料を酸と接触させることによって、本発明の効果がなぜ得られるのかは明らかではないが、おそらくは、乳原料に含まれる蛋白質成分が凝固沈殿し、リン脂質の効果をより高めるものと思われる。
上記酸処理を行うには、上記乳原料に酸を添加する方法であってもよく、また、上記乳原料に乳酸醗酵等の醗酵処理を行う方法であってもよいが、好ましくは上記乳原料に酸を添加する。上記乳原料に添加する酸としては、無機酸であっても有機酸であってもよいが、有機酸であることが好ましい。該有機酸としては、酢酸、乳酸、クエン酸、グルコン酸、フィチン酸、ソルビン酸、アジピン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等が挙げられ、果汁、濃縮果汁、発酵乳、ヨーグルト等の有機酸を含有する飲食品も用いることができるが、本発明においてはより酸味が少なく、風味に影響しない点でフィチン酸及び/又はグルコン酸を使用することが好ましい。
上記酸の添加によるpHの調整は、上記酸を上記乳原料自体に添加することにより行ってもよいし、上記乳原料を有効成分とするシュー用改良材、或いは、シュー用油脂組成物の製造の際に、上記酸を添加することにより行ってもよい。
尚、上記乳原料が粉末状の場合や、液状であっても濃厚溶液やペースト状の場合は、加水して水溶液としてから酸処理を行うことが好ましい。
【0021】
尚、本発明では、シューケースのソフト性向上効果をより高めることができる点で、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料は上記酸処理前及び/又は酸処理後に均質化処理を行なったものであることが好ましい。特に上記リゾ化処理を行なう場合は、その効果を高めるために均質化処理を行なうことが特に好ましい。均質化処理は1回でも良く、2回以上行っても良い。また、上記の乳原料の粘性が高い等の場合は、加水により上記の乳原料の粘度を調整してから均質化処理を行なってもよい。
上記均質化処理に用いられる均質化機としては、例えば、ケトル型チーズ乳化釜、ステファンミキサーの様な高速せん断乳化釜、スタティックミキサー、インラインミキサー、バブル式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル、ディスパーミル等があげられる。均質化圧力は特に制限はないが、好ましくは0〜100MPaである。2段式ホモジナイザーを用いて均質化処理をする場合は、例えば、1段目3〜100MPa、2段目0〜5MPaの均質化圧力にて行っても良い。
更に上記乳原料の酸処理品は、UHT加熱処理を行っても良い。UHT加熱処理の条件としては特に制限はないが、処理温度は好ましくは120〜150℃であり、処理時間は好ましくは1〜6秒である。
【0022】
このようにして得られる本発明で用いる上記の、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」は、液状、ペースト状、粉末状、固形状等の状態のものとすることができ、本発明では何れの状態のものでも使用できるが、液状又はペースト状のものを使用することが、本発明の効果が安定して得られる点で好ましい。
尚、上記酸処理を行った後は、中和してもよく、そのままの酸性の溶液のままであってもシューの改良効果に差はない。
【0023】
次に本発明のシュー用改良材について述べる。
本発明のシュー用改良材は、上記のようにして得られた「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」を有効成分として含有するものである。
本発明のシュー用改良材における上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」の配合割合は、改良材の形態や、改良材のシュー生地への添加量に依存するため、特に限定されるものではなく、固形分として1質量%〜100質量%の範囲から適宜選択可能であるが、好ましくは2〜40質量%である。
ここで、本発明のシュー用改良材における上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」の配合割合が1質量%未満であると、少ない添加量で改良効果を付与するという改良材としての意義がなくなるおそれがある。
【0024】
また、本発明のシュー用改良材は、更に上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」由来のリン脂質含量が0.01〜10質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることがより好ましい。
上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」由来のリン脂質含量が0.01質量%よりも少ないと少ない添加量で改良効果を付与するという改良材としての意義がなくなるおそれがある。また、10質量%よりも多いとシュー用改良材中での分散性が悪く、また、最終的に得られるシューケースの容積が小さくなってしまう場合があるため好ましくない。
【0025】
本発明のシュー用改良材は液状、ペースト状、粉末状、固形状等の状態のものとすることができ、本発明では何れの状態のものでも使用できるが、液状又はペースト状のものを使用することが、シュー生地製造時の糊化工程での混合性が良好である点で好ましい。本発明のシュー用改良材が液状又はペースト状である場合、本発明のシュー用改良材の水の含有量は、好ましくは30〜99質量%、更に好ましくは35〜97質量%、最も好ましくは40〜97質量%である。
本発明のシュー用改良材中の水の含有量が30質量%より少ないと、シュー生地製造時の糊化工程での熱水への分散性が悪い。また、水の含有量が99質量%よりも多いと、シューケースの内相が悪くなりやすい。尚、ここでいう水とは、水道水や天然水等の水の他、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」に含まれる水分をはじめ、下記のその他の成分に含まれる水分も含めたものである。
【0026】
本発明のシュー用改良材は、上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」及び水以外に、必要に応じその他の成分を含有していてもよい。
上記のその他の成分としては例えば、食用油脂、ゲル化剤や安定剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤、糖類・甘味料、澱粉類、蛋白質、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品以外の乳や乳製品、卵製品、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β−ガラクトシダーゼ)、α―アミラーゼ、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー、乾燥果実、果肉、野菜、野菜汁、香辛料、香辛料抽出物、ハーブ、デキストリン類、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等を配合してもよい。
【0027】
本発明のシュー用改良材の製造方法としては特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
例えば、本発明のシュー用改良材の形態が顆粒状、或いは粉末状の場合は、粉体混合用混合機を使用し、各原料を混合することによって得る方法や、各原料を含有する水溶液や懸濁液或いは水中油型乳化物を製造し、製造した水溶液等をスプレードライやフリーズドライ等により粉末化する方法を挙げることができる。
また、本発明のシュー用改良材の形態が液状、流動状、或いはペースト状の場合は、水や食用油脂等に各原料を溶解又は分散し、必要に応じ、更に均質化することによって得ることができる。水を使用する場合を例に挙げると、まず水に、「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」を溶解し、必要に応じ更にその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。本発明のシュー用改良材が油脂を含む場合は、水中油型乳化物とすることが好ましい。そしてこの水相(または水中油型乳化物)を殺菌することが好ましい。尚、本発明における殺菌には滅菌も含む。
該殺菌は、インジェクション式、インフュージョン式等の直接加熱方式、或いはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、或いは直火等の加熱調理により行うことができる。そして前記水相を冷却することにより、本発明のシュー用改良材が得られる。
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化しても良い。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
【0028】
次に本発明のシュー用油脂組成物について述べる。
本発明のシュー用油脂組成物は、上記のようにして得られた「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」を含有するものである。
本発明のシュー用油脂組成物における上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」の配合割合は、好ましくは固形分として0.1質量%〜20質量%の範囲から適宜選択可能であるが、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0029】
また、本発明のシュー用油脂組成物は、更に上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」由来のリン脂質含量が組成物基準で0.01〜2質量%であることが好ましく、0.03〜1.0質量%がより好ましく、0.03〜0.6質量%が最も好ましい。上記「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」由来のリン脂質含量が組成物基準で0.01質量%未満であるとシュー生地製造時の糊化工程での熱水への分散性が悪く、また、吸卵性も悪いため、最終的に得られるシューケースの容積が小さくなってしまう場合があるため好ましくない。また、2質量%超であると、保形性の悪いシューケースとなってしまうおそれがある。
【0030】
本発明のシュー用油脂組成物は食用油脂を含有する。本発明のシュー用油脂組成物に使用する食用油脂としては特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の食用油脂、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することができる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明のシュー用油脂組成物における食用油脂含有量は、組成物中50〜99質量%、好ましくは60〜95質量%である。
【0031】
また、本発明のシュー用油脂組成物は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、トランス脂肪酸の含有量が、本発明の油脂組成物に含まれている油脂の全構成脂肪酸中、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、これによって得られる水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス脂肪酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。すなわち、本発明のシュー用油脂組成物に含まれる食用油脂は、水素添加油脂(但し、完全水素添加油脂は除く)を含有しないことが好ましい。
【0032】
本発明のシュー用油脂組成物は蛋白質を含有することが好ましい。該蛋白質としては、特に制限されるものではないが、例えば、ホエイ蛋白質、カゼイン蛋白質、その他の乳蛋白質、低密度リポ蛋白質、高密度リポ蛋白質、ホスビチン、リベチン、リン糖蛋白質、オボアルブミン、コンアルブミン、オボムコイド等の卵蛋白質、グリアジン、グルテニン、プロラミン、グルテリン等の小麦蛋白質、その他の動物性蛋白質及び植物性蛋白質等が挙げられる。これらの蛋白質は、目的に応じて、一種又は二種以上の蛋白質の形で添加してもよく、或いは一種又は二種以上の蛋白質を含有する食品素材の形で添加してもよい。
【0033】
本発明のシュー用油脂組成物においては、上記蛋白質のうち、風味が良好な食感のシューケースが得られることから、乳蛋白質を使用することが好ましい。
また、上記乳蛋白質としては、乳蛋白質を含有する乳原料、例えば、生乳、牛乳、加糖練乳、加糖脱脂れん乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン(TMP)、脱脂粉乳、全粉乳、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白濃縮物(WPC)、ホエイ蛋白単離物(WPI)、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、酸カゼイン、クリーム、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ等を使用することもでき、また、上記クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分も乳蛋白質を含有することから、これを使用することもできるが、本発明では、良好な風味とソフト性とを有するシューケースが得られるため、蛋白質として、クリーム又はバターからバターオイルを製造する際に生じる水相成分のみを使用することが最も好ましい。
本発明のシュー用油脂組成物における蛋白質含有量は、組成物基準で1〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%である。1質量%未満であると保型性の良好なシューケースが得られず、10質量%を超えると、硬い食感となりやすく、また焦げを生じたりするおそれがある。尚、上記蛋白質含有量には、下記のその他成分に含まれる蛋白質も含むものとする。
【0034】
尚、本発明のシュー用油脂組成物は、良好な風味のシューケースを得るために、上記乳蛋白質のうち、カゼインのナトリウム塩(カゼインナトリウム)の含有量が、好ましくは3質量%未満、より好ましくは2質量%未満、更に好ましくは1質量%未満であることが好ましく、最も好ましくは含有しないことが好ましい。
カゼインのナトリウム塩は、シューケースの容積・保型性の改良のために、シュー用油脂に一般的に3〜6質量%配合されているが、焼成により風味が変化し、膠臭に似た洋菓子に相応しくない臭いを有するのが欠点であり、特にシュークリームを包装し密封した場合、消費者が袋を開けて食しようとするときに、カゼインのナトリウム塩による膠臭に似た臭いが口内に広がり、シュークリームのおいしさを損なっていた。
本発明のシュー用油脂組成物においては、カゼインのナトリウム塩を含まなくても、容積が大きく、保型性及び風味が良好なシューケースを得ることができる。
【0035】
また、本発明のシュー用油脂組成物は、良好な風味のシューケースを得るためには、乳化剤の含有量を好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%未満であることが好ましく、最も好ましくは含有しないことが好ましい。
上記の乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
【0036】
本発明のシュー用油脂組成物には、上記原料以外に、通常のシュー用油脂に使用される各種の食品素材や食品添加物を使用することができる。
本発明のシュー用油脂組成物には、例えば、水、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、糖類や糖アルコール類、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー等の食品素材や食品添加物を含有させることができる。
本発明のシュー用油脂組成物におけるこれら食品素材や食品添加物の含有量は、一般的なシュー用油脂に準じたものであればよいが、通常は合計で45質量%以下とするのが好ましい。
【0037】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のシュー用油脂組成物における上記増粘安定剤の好ましい含有量は、0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%である。
【0038】
本発明のシュー用油脂組成物は、水相を含まないショートニングや流動ショートニングであっても、水相を含むマーガリンやファットスプレッドでも良く、また水相を含む場合は、水中油型、油中水型、油中水中油型等どのような乳化形態であっても構わないが、シュー生地製造時の糊化工程での熱水への分散性が良好な点及び物性面で扱いやすいことから水相を含むマーガリンやファットスプレッドであることが好ましく、シュー用乳化油脂組成物の表面からの水分の飛散及びカビ等の発生を抑制する点から、油中水型乳化組成物とするのが好ましい。
【0039】
次に、本発明のシュー用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
まず、食用油脂を組成物基準で好ましくは50〜99質量%となる量を含有する油相を溶解し、ここへ「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」を添加するか、或いは「乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品」を含有する水相を混合乳化する。そして、次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
【0040】
次に、冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却可塑化する。冷却条件は、好ましくは−0.5℃/分以上、更に好ましくは−5℃/分以上とする。この際、徐冷却より、急速冷却の方が好ましい。
冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
また、本発明のシュー用油脂組成物を製造する際の何れかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
【0041】
次に、本発明のシュー生地について述べる。
本発明のシュー生地は、本発明のシュー用改良材又はシュー用油脂組成物を使用して得られるものであり、シュー生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品を固形分として好ましくは0.1質量部〜12質量部、より好ましくは0.5〜10質量部、更に好ましくは0.5〜7質量部含有するものである。
尚、本発明のシュー生地におけるその他の原料の種類や配合量については、特に限定されるものではないが、好ましくは、小麦粉100質量部に対し、水100〜250質量部、特に120〜200質量部、全卵(正味)150〜300質量部、特に200〜280質量部、油脂(純分)70〜150質量部、特に100〜140質量部含有する。
【0042】
尚、本発明のシュー生地には、上記の成分に加えて、一般のシューケース製造に使用される重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム等の膨張剤を加えることができ、更に必要に応じ、乳化剤、糖類及び糖アルコール、澱粉、無機塩、有機酸塩、ゲル化剤、乳や乳製品、卵製品、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤等も適宜使用できる。
【0043】
次に、本発明のシュー生地の好ましい製造方法について述べる。
本発明のシュー生地は、本発明のシュー用改良材又はシュー用油脂組成物を使用する以外は、一般のシュー生地の製造方法に準じて行えばよく、例えば以下のようにして製造することができる。
本発明のシュー用油脂組成物を、水とともに加熱煮沸して熱水と溶解した油脂との混合物を製造し、この混合物中に小麦粉を添加して捏和し、一般のシュー皮と同様にシュー皮を形成するに適した十分な糊化状態にした後、液卵をミキシングしながら数回に分けて加えて十分に乳化し、必要に応じ更に液卵で硬さを調整してシュー生地を得る。該液卵としては、膨張剤を溶解した液卵を使用してもよい。尚、必要に応じ、前述した乳化剤、糖類及び糖アルコール、澱粉類、無機塩、有機酸塩、ゲル化剤、乳や乳製品、卵製品、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤等を、加熱煮沸時或いは液卵の乳化時に添加、混合する。
また、本発明のシュー生地は、本発明のシュー用改良材を用いて製造する場合、シュー用油脂を別途用意し、そのシュー用油脂を上記本発明のシュー用油脂組成物の代わりに使用し、本発明のシュー用改良材を別途添加する以外は、本発明のシュー用油脂組成物を用いたシュー生地製造方法と同様にして製造することができる。
尚、シュー用改良材の添加時期はシュー用油脂と同時に添加することが好ましい。
【0044】
また、シュー生地は、生地の状態で、或いは絞って玉にした状態で冷凍することも可能である。シュー生地を冷凍する場合は、−30℃〜−45℃の急速冷凍庫を使用し、急速冷凍を行うことが好ましい。
【0045】
次に、本発明のシューケースについて述べる。
本発明のシューケースは、本発明のシュー生地を焼成してなるものである。
尚、シュー生地を焼成する際は、通常、天板或いはコンベア上に積置するが、焼型に入れて焼成してもよい。焼成する際の温度は、通常のシューケース同様、好ましくは160℃〜250℃、より好ましくは170℃〜220℃である。焼成温度が160℃未満であると火どおりが悪く、焼成時間が延びてしまうことに加え、窯落ちが発生するおそれがある。また焼成温度が250℃を超えると、シューケースが焦げついてしまい、外観が悪化することに加え容積も劣ったものとなってしまうおそれがある。尚、焼成時に蓋をかぶせる等の方法で蒸気圧を高めた状態で焼成することで、更に容積の大きなシューケースとすることも可能である。
【実施例】
【0046】
次に、実施例、比較例等を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例等は本発明を制限するものではない。
【0047】
〔実施例1〕
<シュー用改良材の製造>
デキストリン4質量部、クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含量11質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)10質量部に水85.97質量部を添加し、更にフィチン酸0.03質量部を添加して、pHを5.5に調整した。更にこれをホモジナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモジナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し本発明のシュー用改良材Aを得た。
【0048】
<シュー生地及びシューケースの製造>
水140質量部、シュー用マーガリン140質量部及びシュー用改良材A10質量部をミキサーボウルに計量し、ガスコンロにかけ、105℃になるまで加熱溶解した。これに小麦粉100質量部を一気に投入し、十分糊化・混合して糊化物を得た。ミキサーボウルをミキサーにセットし、中速2分ミキシングし、糊化物が55℃まで冷えたところで、全卵220質量部に重炭酸アンモニウム1質量部を溶解した卵液を、中速でミキシングしながら徐々に加え、均一なシュー生地とした。絞り袋にシュー生地を充填し、ベーキングシートを敷いた展板に25g絞り、210℃に設定した固定オーブンで25分(13分経過後は上火カット)焼成し、シューケースAを得た。
得られたシューケースAは、ソフトで口溶けが良好で、且つ、容積が大きく保型性が良好であった。
【0049】
〔比較例1〕
フィチン酸を無添加とし、水85.97質量部を86質量部に変更した以外は実施例1と同様の配合及び製法で比較例のシュー用改良材Bを得た。
そして、実施例1と同様の配合及び製法でシューケースBを得た。
得られたシューケースBは、容積が大きく保型性が良好であったが、シューケースAに比べてやや口溶けが劣るものであった。
【0050】
〔実施例2〕
<シュー用改良材の製造>
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含量11質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)80質量部に水19.65質量部及びフィチン酸0.35質量部を添加し、これをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却しpH5.2の本発明のシュー用改良材Cを得た。
<シュー生地及びシューケースの製造>
そして、シュー用改良材A10質量部に代えて、上記シュー用改良材C5質量部を使用した以外は実施例1と同様の配合及び製法でシューケースCを得た。
得られたシューケースCは、ソフトで口溶けが良好で、且つ、容積が大きく保型性が良好であった。
【0051】
〔比較例2〕
フィチン酸を無添加とし、水19.65質量部を20質量部に変更した以外は実施例2と同様の配合及び製法で比較例のシュー用改良材Dを得た。
そして、実施例2と同様の配合及び製法でシューケースDを得た。
得られたシューケースDは、容積が大きく保型性が良好であったが、シューケースCに比べてやや口溶けが劣るものであった。
【0052】
〔実施例3〕
<シュー用油脂組成物の製造>
ヨウ素価55のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂A80質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解した後、下記の製法で得られた「酸処理品A」13質量部及び食塩1質量部からなる水相を混合、乳化し、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、油中水型のマーガリンである、本発明のシュー用油脂組成物Aを得た。得られたシュー用油脂組成物Aは、トランス脂肪酸含有量が2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有せず、また、乳化剤を含有せず、カゼインのナトリウム塩を含有するものでもなかった。
<乳由来の固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の酸処理品の製造>
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量11質量%、乳由来の固形分38質量%、及び乳由来の固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)を55℃に加温し、50%フィチン酸水溶液を0.7質量%添加し、pH4.8に調整した後、3MPaの圧力で均質化し、酸処理品Aを得た。
<シュー生地及びシューケースの製造>
シュー用油脂組成物A140質量部と水140質量部とをミキサーボウルに計量し、ガスコンロにかけ、105℃になるまで加熱溶解した。これに小麦粉100質量部を一気に投入し、十分糊化・混合して糊化物を得た。ミキサーボウルをミキサーにセットし、中速2分ミキシングし、糊化物が55℃まで冷えたところで、全卵250質量部に重炭酸アンモニウム1質量部を溶解した卵液を、中速でミキシングしながら徐々に加え、均一なシュー生地とした。絞り袋にシュー生地を充填し、ベーキングシートを敷いた展板に25g絞り、210℃に設定した固定オーブンで25分(13分経過後は上火カット)焼成し、シューケースEを得た。
得られたシューケースEは、ソフトで口溶けが良好で、且つ、容積が大きく保型性が良好であった。
【0053】
〔比較例3〕
酸処理品Aをクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(リン脂質含有量3.7質量%、蛋白質含有量11質量%、乳由来の固形分38質量%、乳由来の固形分中のリン脂質の含有量9.8質量%)に等量置換した以外は実施例3と同様の配合及び製法で、油中水型のマーガリンである、比較例のシュー用油脂組成物Bを得た。
そして実施例3と同様の配合及び製法でシューケースFを得た。
得られたシューケースFは、容積が大きく保型性が良好でソフトであったが、シューケースEに比べて口溶けが劣るものであった。
【0054】
〔比較例4〕
ヨウ素価55のパーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂A80質量部、グリセリンモノ脂肪酸エステル0.3質量部、レシチン0.1質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、カゼインナトリウム4質量部、50%フィチン酸水溶液0.2質量部、食塩1質量部及び水14.4質量部からなる水相(pH5.0)を混合、乳化し、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、油中水型のマーガリンである、比較例のシュー用油脂組成物Cを得た。得られたシュー用油脂組成物Cのトランス脂肪酸含有量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有せず、また、乳化剤を0.4質量%、カゼインのナトリウム塩を4質量%含有するものであった。
そして実施例3と同様の配合及び製法でシューケースGを得た。
得られたシューケースGは、容積が大きく保型性が良好であったが、シューケースEに比べて風味が悪く、ソフト性と口溶けが劣るものであった。
【0055】
〔比較例5〕
酸処理品A19質量部及び食塩1質量部からなる水相を、脱脂粉乳4質量部、50%フィチン酸水溶液0.2質量部、食塩1質量部及び水10.8質量部からなる水相(pH5.0)に変更した以外は実施例3と同様の配合及び製法で、油中水型のマーガリンである、比較例のシュー用油脂組成物Dを得た。得られたシュー用油脂組成物Dはややざらが感じられた。
そして実施例3と同様の配合及び製法でシューケースHを得た。
得られたシューケースHは、シューケースEに比べて容積が小さく・保型性も劣り、またソフト性と口溶けも劣るものであった。
【0056】
〔実施例4〕
酸処理品A19質量部及び食塩1質量部からなる水相を、酸処理品A10質量部、カゼインナトリウム2質量部、食塩1質量部及び水6質量部からなるからなる水相に変更した以外は実施例3と同様の配合及び製法で、油中水型のマーガリンである、実施例のシュー用油脂組成物Eを得た。
そして実施例3と同様の配合及び製法でシューケースIを得た。
得られたシューケースIは、ソフトで口溶けが良好で、シューケースEに比べて容積が大きく保型性が良好であったが、シューケースEに比べてやや風味が劣るものであった。
【0057】
〔実施例5〕
酸処理品A19質量部及び食塩1質量部からなる水相を、酸処理品A10質量部、脱脂粉乳3質量部、食塩1質量部及び水5質量部からなるからなる水相に変更した以外は実施例3と同様の配合及び製法で、油中水型のマーガリンである、実施例のシュー用油脂組成物Fを得た。
そして実施例3と同様の配合及び製法でシューケースJを得た。
得られたシューケースJは、シューケースEに比べてやや容積が大きく保型性もやや良好であったが、シューケースEに比べて若干ソフト性と口溶けが劣るものであった。