【課題】 インクジェットプリンター用油性インクは、黒色着色剤としてアゾ含クロム染料等がよく使用されている。これは、溶媒への溶解性が優れており明確な黒色が表現できるものである。しかし、六価クロムなどの環境上問題のある重金属を用いている。よって、このような金属を用いない染料を提供する。
前記式(1)または式(2)で表すアゾ含鉄染料が、メチルエチルケトンに対して、7重量%の濃度の溶液にしたときの電気伝導度Kが、0.3〜2.6mS/cmである請求項1または2記載のアゾ含鉄染料。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0021】
産業用インクジェット油性インクでは、現在、アルコール・グリコール系有機溶剤を主に構成するインクとケトン系有機溶剤を主に構成するインクと、特性の違う2種類のインク系に分かれてインクジェットプリンターに使用されている。本発明の黒色アゾ含鉄染料は、モノアゾ色素の構造骨格とその骨格を構成するベンゼン環に有する置換基の種類を調整し、更に対イオンを構成するアンモニウム塩の構造を調整し、アルコール・グリコール系有機溶剤にも、ケトン系有機溶剤にも、実用的に問題のない、溶解性を示すことができる。そのため、本発明の黒色アゾ含鉄染料は、両方の溶剤系油性インクを用いる産業用インクジェットに対応することができる。
【0022】
本発明に用いる黒色染料は、式(1)または式(2)に示されるアゾ含鉄染料で、モノアゾ色素と3価の鉄とが2:1型の錯体構造を構成し、これがアニオンを形成し、アンモニウムイオンと結合したものと推定される。
【化5】
(式(1)中、R
1は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基であり、R
2、R
3は、同一または異なり、炭素数3〜10のアルキル基であり、A
+は炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオンまたはグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから得られる残基を示す。)
【0023】
炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオンまたはグアニジン誘導体のアンモニウムイオンは、
好ましくは式(3)
【化6】
(式(3)中、R
4、R
6は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基を示し、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基を示す。)
で表すアンモニウムイオン
または式(4)
【化7】
(式(4)中、R
7、R
8は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
で表すグアニジン誘導体のアンモニウムイオンである。
【0024】
本発明のアゾ含鉄染料の好ましい実施様態としては、式(5)に示すアゾ含鉄染料を挙げることができる。
【化8】
(式(5)中、R
2、R
3は、同一または異なり、炭素数3〜10のアルキル基であり、A
+は、炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアンモニウムイオンまたはグアニジン誘導体のアンモニウムイオンから得られる残基である。)
式(1)に示すアゾ含鉄染料の置換基のニトロ基は、深色化する効果を有し、式(5)に示すアゾ基に対して、p-位に置換すると、深色化効果が最大となるため、漆黒の黒色を呈する。
更に式(5)に示すアゾ含鉄染料の対イオンが式(3)で表すアンモニウムイオンまたは式(4)で表すグアニジン誘導体のアンモニウムイオンであることが好ましい
式(3)で表すアンモニウムイオンまたは式(4)で表すグアニジン誘導体のアンモニウムイオンを混合して用いても良い。
【0025】
前記式(1)または式(2)または式(5)に示すアゾ含鉄染料の置換基R
1のアルキル基は、炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、ラウリル基などを挙げることができる。更にi−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0026】
前記式(1)または式(2)または式(5)に示すアゾ含鉄染料の置換基R
2、R
3のアルキル基は、炭素数3〜10の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、より好ましくは炭素3〜8の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、より具体的には、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などを挙げることができる。更にn−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、n-ヘキシル、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基が好ましい。
【0027】
式(3)中のR
4、R
6のアルキル基は、同一または異なり、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基である。式(3)中のR
5のアルキル基は、炭素数1〜18の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、トデシル基、ラウリル基、ステアリル基などを挙げることができる。好ましくは、炭素数7〜16の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、特に好ましくは、炭素数8〜15の分岐鎖アルキル基である。
【0028】
式(4)中のR
7、R
8のアルキル基は、同一または異なり、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、neo−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基である。
【0029】
前記黒色アゾ含鉄染料は、分子内に、ニトロ基と特定範囲の炭素数を有する2つのアルキル基が結合したアミノ基を有することにより、アゾ鉄錯体においても、可視光域の吸収波長が深色化し、実用的に、充分な黒色を呈することができる。このことによって、クロムやコバルトの様な環境上の問題とされて敬遠されている特定の遷移金属を使用せず、さらに六価クロムのリスクも回避できる。
また三原色を利用した減法混色を用いた黒色配合した着色剤では、各着色剤の堅牢性、溶解性、色相が違うため、退色した場合、大きく色相が変色する。それに対し、単一で黒色を呈する着色剤は、退色後の変色が少ないため、印字物に好適である。
【0030】
また、本発明に用いる黒色アゾ含鉄染料は、分子内に、特定範囲の炭素数を有するジアルキル基が結合したアミノ基と、特定範囲の炭素数のアルキル基を有する一価のアンモニウム構造またはグアニジン誘導体のアンモニウム構造を有することにより、黒色アゾ含鉄染料分子の溶解性をコントロールしている。そのため、アルコール系またはグリコール系有機溶媒とケトン系有機溶剤に対して、実用的に充分な溶解安定性を示し、更に溶解した状態で、漆黒性の高い黒色を示す。
【0031】
また、本発明のアゾ含鉄染料である前記式(1)または式(2)で表すアゾ含鉄染料が、メチルエチルケトンに対して、7重量%(wt%)の濃度の溶液にしたときの電気伝導度Kが、0.3〜2.6mS/cmであり、0.8〜2.3mS/cmことが更に好ましい。このことにより、電荷のコントロールが良好で、純度の高いインクジェット用インクに好適な染料を提供できる。
更に、産業用インクジェットプリンターとして、広く用いられている荷電量制御式のコンティニュアス型(連続式)インクジェットプリンター用のインクにおいては、染料の電気伝導度が、重要なファクターになり、安定的な電導度特性が好まれる。
【0032】
本発明のアゾ含鉄染料である前記式(1)または式(2)で表すアゾ含鉄染料のアルカリ金属イオンが1000ppm以下であり、500ppm以下であることが更に好ましい。このことにより、インクジェット用インクの好適な表面張力に調整できる。
更に、インクジェットインクに添加される添加剤、例えば、特開2013−23636号公報のレベリング剤、ジメチルシロキサン鎖とポリアルコキシ基を有する化合物や特開2002−348508号公報に示すはじき防止剤の式(2)のシリコン化合物やシリコン系界面活性剤などのシリコン化合物とのNa錯体の生成を抑制することができる。このようなことにより、インクジェットプリンターのヘッドの目詰まりやインクジェットインクの吐出安定性の改善に貢献できる。
【0033】
本発明のアゾ鉄錯体の製造方法は、
工程1:ジアゾ化カップリング反応でモノアゾ色素を得る工程
工程2:モノアゾ色素を鉄化して、アゾ含鉄染料を得る工程
工程3:得られたアゾ含鉄染料の対イオンを調節する工程
工程4:得られたアゾ含鉄染料を濾過・水洗する工程
工程5:濾過されたアゾ含鉄染料を乾燥する工程
を少なくとも有する。この製造方法によれば、高純度のアゾ含鉄染料を得ることができる。以下、各工程を詳しく説明する。
【0034】
第1工程 モノアゾ色素の合成
第1の工程である反応工程は、下記式(6)に示すように、特定構造の芳香族アミンを公知の方法でジアゾ化し、特定のジアルキルアミノを有するアミノフェノールに、常法により、ジアゾ化カップリング反応させて、モノアゾ色素を得る工程である。
【化9】
(式(6)中、R
1、R
2及びR
3は、前記と同定義である)
【0035】
一例を示すと、水系または水−低級アルコール系溶媒に、水酸基のような金属錯塩形成に適する置換基を有するアミノフェノール(ジアゾ成分)が塩酸で希釈調製された水溶液と、亜硝酸ナトリウム(例えば、36重量%調製水溶液)とを加え、0〜5℃の温度にて1〜3時間攪拌することによりアミノフェノールをジアゾ化し、ジアゾ化溶液を得る。過剰な亜硝酸を、スルファミン酸等で分解する。
【0036】
次いでアミノフェノール誘導体を、アルカリ水溶液に溶解または細かく分散し、その溶液にジアゾ化溶液を滴下し、水系または水−低級アルコール系溶媒中で、室温または低温で、数時間攪拌しながら、ジアゾ化カップリング反応を行ってモノアゾ色素を得る。
前記工程では、モノアゾ色素を濾過、水洗し、ウェットケーキを得る。さらにそのウェットケーキを乾燥しても良い。また得られたモノアゾ色素の反応液を次の工程に使用しても良い。
【0037】
第2工程 モノアゾ色素の鉄化
第2の工程である金属化工程は、前記工程で得られたモノアゾ色素を鉄化してアゾ含鉄中間体(アゾ含鉄錯塩)を得る工程である。
【0038】
モノアゾ色素を、溶媒に分散または溶解させ、更に鉄化剤を加え、鉄化反応させる。それにより所望の対イオンを有するアゾ含鉄中間体が簡便に得られる。溶媒は、水、水−有機溶剤混合溶液、有機溶媒であることが好ましく、なかでも水−一価低級アルコールであることが好ましい。
鉄化剤として、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、酢酸鉄、及び乳酸鉄が挙げられる。鉄化剤の量は、配位子となるモノアゾ色素1当量に対して、鉄の量が1/2〜2当量であることが好ましく、1/2〜2/3当量であることがより好ましい。また鉄化反応は、使用する溶媒の種類に適した温度で、加熱反応または還流撹拌しながら行うものであることが好ましい。鉄化反応は、反応促進剤やpH調整剤のような添加剤を加えて行ってもよい。酸や塩基を加えることによってpH調整を行うことにより、アゾ含鉄中間体の対イオンを、例えば、水素イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオンまたはこれらの混合物の対イオンに調製できる。
【0039】
有機溶剤としては、親水性有機溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、スルホキシド系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤を挙げることができ、なかでも親水性有機溶剤が好適である。
【0040】
親水性有機溶剤としては、例えば、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アミルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールのようなアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテートのようなグリコールのアセテート類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールのようなグリコール類が挙げられる。なかでもアルコール類またはグリコール類が好ましい。
【0041】
第3工程 イオン交換
第3の工程であるイオン交換工程は、本発明に用いるアミン(炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアミンまたはグアニジン誘導体)を用いて、金属化工程で得られたアゾ含鉄中間体の対イオンを所望の対イオンに交換し、アゾ含鉄染料のウエットケーキを得る工程である。前記工程で得られたアゾ含鉄中間体の対イオンが水素イオンとする場合、水素イオンを、アンモニウム化剤(炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアミンまたはグアニジン誘導体)を用いて対イオンを再交換し、アゾ含鉄染料を得る。アンモニウム化剤(炭素数3〜18のアルキル基を有する一価のアミンまたはグアニジン誘導体)は、炭素数の異なるアミンの混合物であってもよい。
【0042】
対イオンの交換に用いられる酸、塩基、及びアンモニウム化剤の量や反応温度のような各条件を組み合わせることにより、混合イオンを対イオンとして有するアゾ含鉄染料が得られる。混合イオン中のカチオンの86モル%以上、特に90モル%以上が所望のアンモニウムイオンであるアゾ含鉄染料を簡便に得ることができる。
【0043】
第2の工程である金属化工程と第3の工程であるイオン交換工程は、同一の反応系において、同時または順次に反応することができる。
【0044】
【化10】
(式(7)中、R
1〜R
8は、前記と同定義である)
【0045】
第4工程及び第5工程 濾過・洗浄・乾燥・粉砕工程
金属化工程の後、またはイオン交換工程の後、濾過工程を行ってもよい。濾過工程は、金属化工程(或いはその後のアルカリ処理)またはイオン交換工程で得られたアゾ含鉄染料を含む反応液を、濾過によってアゾ含鉄染料の固形物と溶媒とに分離して、アゾ含鉄染料のウエットケーキを得る工程である。濾過方法としては、濾紙濾過、袋濾過、遠心分離のような重圧濾過法;ヌッチェ、ムーアフィルター、ディスクフィルター、ドラムフィルター、オリバーフィルターを用いた真空濾過法;フィルタープレス、密閉式リーフフィルター、密閉式多段フィルターを用いた加圧濾過法を挙げることができる。濾過工程の後、洗浄工程を行ってもよい。水及び/または有機溶媒によってアゾ含鉄染料のウエットケーキを十分に洗浄する。洗浄液としては、水が好ましい。
上記アゾ含鉄染料のウエットケーキを用途目的に応じた組成物の中間体として用いることができる。
上記の工程を経た後、必要に応じて、乾燥工程を行う。得られたアゾ含鉄染料は、用途目的に応じて、公知の粉砕機を用い、解砕または粉砕することができる。
【0046】
以下に、本発明のアゾ含鉄染料を具体的に例示する。本発明の範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【化11】
(式(8)中、R
2〜R
8は、前記と同定義であり、R
9〜R
12は、ニトロ基またはR
1と同定義である。)
【0049】
油性インク組成物
本発明の油性インク組成物は、少なくとも油性液媒体と黒色アゾ含鉄染料を含有している。
いずれの適切な有機溶媒も使用することができ、好ましくは揮発性有機溶媒が挙げられる。好適には、アルコール・グリコール系有機溶剤及びケトン系有機溶剤が挙げられる。
【0050】
ケトン系有機溶剤
ケトン系有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトンなどの低級アルキルケトン又はシクロヘキサノンなどの環状ケトンが挙げられる。なかでも、メチルエチルケトンは、樹脂類の溶解性、顔料の分散性、導電性や、インクの乾燥性について考慮すると、コンティニュアス型インクジェットプリンター用インク組成物に好ましく用いることができる。
【0051】
アルコール・グリコール系有機溶剤
アルコール系有機溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノール等の低級アルキルアルコールが挙げられる。
【0052】
グリコール系有機溶剤として、グリコール、グリコールエール及びそのエステルが挙げられる。
ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルグリコール、エチレングリコールモノベンジルグリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルグリコール、ジエチレングリコールモノベンジルグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙がられる。
【0053】
また、上記以外の溶剤として、例えば、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル系溶剤、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤なども適宜用いることができる。
【0054】
本発明のインク組成物は、1種以上の溶媒可溶性樹脂、つまり有機溶媒または有機溶媒混合物に可溶である公知の樹脂を含有する。具体的な樹脂の例には、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ロジン樹脂、ロジンエステル系樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ノボラック樹脂、ケトン樹脂、アルデヒド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ケタール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂が選ばれ、1種または2種以上の樹脂が挙げられる。
【0055】
セルロース系樹脂としては、ニトロセルロース(ニトロ基置換体)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの低級アシル基置換体、メチルセルロース、エチルセルロースなどの低級アルキル基置換体、硝酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどを挙げることができる。これらセルロース誘導体は、単独または2種以上を混合して使用できる。
【0056】
これらセルロース樹脂としては、分子量や水酸基に対する置換度などが異なるものが各種有るが、目的とするインクジェット記録用インク組成物の粘度に合わせて各種のものを適宜選択して使用するのが好ましい。例えば、2〜8個の炭素原子、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する1種以上のエステル基によって、そのヒドロキシル基の幾つか又は全てがエステル官能基又は混在するエステル官能基を有するように修飾されているセルロースエステルが挙げられる。具体的にセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースの低級アシル基置換体が好ましく、セルロースアセテートブチレートとしては、アセチル基およびブチリル基の置換度(ここで、置換度とは、グルコース単位の3個の水酸基がある置換基で完全に置換された場合、その置換基の置換度を100%とする)がそれぞれ2〜20%および32〜53%であるものが特に好ましい。またセルロースアセテートプロピオネートとしては、アセチル基およびプロピオニル基の置換度がそれぞれ0.5〜10%および35〜55%であるものが特に好ましい。
【0057】
スチレン・アクリル樹脂としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系モノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、メタクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等のアクリル系モノマーとの共重合樹脂で、酸価が120以下のものが好ましい。スチレン・アクリル系共重合樹脂の分子量は3000〜30000とすることが好ましい。具体例としては、ジョンソンポリマー社製ジョンクリル68、586、611など、三洋化成社製ハイマーSBM−100、ハイマーSAM−955など、日本カーバイド社製ニカライトNC−6531、ニカライトNC−6100などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、同時に2種類以上組み合わせることができる。
【0058】
テルペンフェノール樹脂は、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン等のテルペン類とフェノール、ビスフェノール等のフェノール類との共重合体であり、目的に合わせてテルペン類及びフェノール類の種類を選択し、そのモル比を設定することができる。具体的一例を挙げれば、YP90、YP−90L、YSポリスターS145、同#2100、同#2115、同#2130、同T80、同T100、同T115、同T130、同T145、マイティエースG125、同G150(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、同時に2種類以上組み合わせて使用する事もできる。
【0059】
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドを縮合することにより調製でき、目的に合わせてブチラール化度や水酸基、アセチル基の組成割合、重合度を設定することができる。油性インキとしては、インキ粘度や溶剤への溶解性を考慮すると、低重合度タイプの樹脂が好ましい。具体的一例を挙げれば、エスレックBL−1、同BL−2、同BL−3、同BL−S、同BM−1、同BM−2、同BM−5、同BM−S、同BH−3、同BH−S、同BX−1、同BX−2、同BX−5、同BX−10、同BX−55、同BX−L(以上、積水化学工業(株)製)、デンカブチラール#2000−L、同#3000−1、同#3000−2、同#3000−4、同#3000−K、同#4000−1、同#4000−2、同#5000−A、同#6000−C(以上、電気化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0060】
ケトン樹脂は、ケトン化合物とホルムアルデヒドとの縮合によって得られる。平均分子量が3000以上の高分子化合物であれば、特に制限はない。これらは、例えば、続く水素化や、末端基修飾などの化学的に修飾されたものであってもよい。具体的には、日立化成工業社製の商品名ハイラック111、ハイラック222、荒川化学社製の商品名K−90等が挙げられる。
【0061】
ロジン変性マレイン酸樹脂は、ロジンとマレイン酸と多価アルコールのポリエステルであり、具体的には大日本インキ化学工業製のベッカサイトPー720、J−896等、日立化成ポリマー社製の商品名テスポール1101、テスポール1103、テスポール1104、テスポール1105、テスポール1150、テスポール1151、テスポール1152、テスポール1155、テスポール1158、テスポール1161等が挙げられる。
【0062】
本発明にかかるインク組成物は、インクジェットプリンター、好ましくは産業用インクジェットプリンター、特に荷電量制御式のコンティニュアス型(連続式)インクジェットプリンターに好適に用いることができる。この場合は、プリンタから吐出されたインク滴の電界による偏向量を調整するために、必要に合わせて導電調整剤が用いられる。
コンティニュアス型インクジェットプリンターに用いられる場合、本発明のインク組成物は、本発明のアゾ含鉄染料が有する導電性の働きが充分な導電性をインクに与えるため、実際には導電性塩を添加する必要がない場合を除いて、更に、導電調整剤として、1種以上の導電性塩を含んでもよい。
【0063】
コンティニュアス型インクジェットプリンターに用いるインク組成物としては、液体状態で十分な電気伝導性が必要である。本発明のインク組成物は必要な導電性を調製するため、例えば塩などのイオン性化合物を添加できる。例えば、通常リチウム、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属塩;マグネシウム及びカルシウムなどのアルカリ土類金属塩;及び単純アンモニウム塩または第4級アンモニウム塩から選択される;これらの塩はハロゲン化合物(塩化物、臭化物、ヨウ化物、フッ化物)、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、プロピオン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリフラート(トリフルオロ‐メタンスルホン酸塩)、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロ‐アンチモン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ピクリン酸塩及びカルボン酸塩、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラフェニルホウ素4級アンモニウム塩などが挙げられる。導電性塩がインク組成物中に、好ましくは、これらの量は、インク組成物の総重量の0.1から10重量%、より好ましくは0.1から5重量%、更に好ましくは0.3から3重量%である。
【0064】
本発明のインク組成物は、更に、これらの成分のいくつかの溶解安定性、印刷品質、定着性、粘度、表面張力等を調整するため、1種以上の添加剤を含んでもよい。
インク組成物は、支持体上におけるインクの液滴サイズを制御可能するために、公知の任意の適切な湿潤剤を使用することができる。湿潤剤の例は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤が使用できる。
【0065】
アニオン性活性剤としては、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルアリールスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等を例示できる。
【0066】
非イオン性活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等の非イオン性活性剤が例示できる。
カチオン性活性剤としては、アルキルアミン塩,第4級アンモニウム塩,アルキルピリジニウム塩,アルキルイミダゾリウム塩等を例示できる。
両イオン性活性剤としては、アルキルベタイン,アルキルアミンオキサイド,ホスファジルコリン等が例示できる。
【0067】
その他の添加剤は、例えば、消泡剤、化学安定剤、UV安定剤、塩の腐食を阻害する安定化剤;殺菌剤、防かび剤等のバイオサイド、及びpH調整剤などが挙げられる。
【0068】
本発明のインク組成物を製造する方法について説明する。アゾ含鉄染料、樹脂(バインダー)、溶剤、必要に応じて各種添加剤を密閉容器に入れ、攪拌し均一に混合溶解し、その後、メンブランフィルター等で濾過する方法などが利用できる。必要に応じて加熱工程を含んでも良い。
【0069】
本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタがプリンタヘッドからのインク小滴の流れを噴出して、プリンタヘッドを通過する被印刷物の搬送に伴い、通常、高速で被印刷物に打ち込む。小滴は、制御された配列で配置されるように制御されることにより、被印刷物に対して、所望の文字、図形などを印刷することができる。例えば、印字物としてコード番号や文字、「賞味期限」などの日付および他の文字数字式データ等が挙げられる。また、本発明のインクを用いると、伝票、段ボール、商品パッケージ、プラスチックボトルまたは容器上にコンティニュアス型インクジェット記録できる。ボトルまたは容器は、いずれの種類のプラスチックからなっていてもよい。プラスチックの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC、ナイロン、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスチレン及びポリイミド等がある。
【0070】
本発明のインク組成物は、湿潤ガラス、プラスチック及び金属製品の表面上(例えば、ガラスビン、プラスチックボトル、アルミニウム容器上)にジェット印刷をすることができる。本発明のジェットインクは、ソーダ石灰ガラス、ホウ素化シリケートガラス、アルミノシリケートガラス、鉛ガラス及びホウ酸塩ガラス等を含む種々のガラス上にコンティニュアス型インクジェット記録ができる。
【0071】
本発明のインク組成物は、また、金属容器上にコンティニュアス型インクジェット記録ができる。金属容器の例としては、アルミニウム、スチール、錫及び銅等からなる容器が挙げられる。また、金属容器の表面を、サンドブラスチング及び酸洗(acid cleaning)等の前処理を施して、記録することにより、好適に印字できる。
【0072】
本発明のアゾ含鉄染料を含有するインク組成物は、筆記具インクとしても好適である。本発明のインク組成物中に含有される含鉄染料の量は、インクの用途に依存して種々異なる。一般にマーキングペン用インクとしては5〜10重量%。ボールペン用インクとしては15〜25重量%の量で用いられる。
【実施例】
【0073】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。本実施例では、重量%をwt%と表記する。
以下、本発明のアゾ含鉄染料及びそれが含有された油性インク組成物の実施例について、詳細に説明する。
【0074】
(調製実施例1:アゾ含鉄染料A1の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール7.5gと、35wt%の濃塩酸 13.6gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36wt%亜硝酸ナトリウム水溶液 8.3gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを200gの水に加え、N、N−ジ−n−ブチル−3−アミノフェノール10.0gを加えて分散させ、この分散液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.6に調整して、析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、86.6gのウェットケーキを得た。
【0075】
得られたモノアゾ化合物のウェットケーキ86.6gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液21.5gと水225g、n−ブタノール11.2gを加え90℃で2.5時間撹拌した後、40wt%第二硫酸鉄水溶液11.8gを徐々に加え、90℃で5時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH2.5に調整し、析出した生成物を濾別、水洗し、ウェットケーキを得た。
得られた鉄錯体化合物のウェットケーキに水250gとメタノール50gを加えて40℃に加熱し、この溶液に予め水100.0gと35wt%の濃塩酸2.7g、1,3−ジ−O−トリルグアニジン(大内新興化学工業社製 商品名:ノクセラーDT)5.4gで調整した水溶液を徐々に加えて、40℃で30分間撹拌した後に濾別、水洗、乾燥させ、下記式で示されるアゾ含鉄染料A1が19.0g得られた。
【0076】
【化12】
【0077】
吸光度の測定方法
得られたアゾ含鉄染料を、メチルエチルケトンを用いて10mg/1000mlの濃度に調整した溶液を作製し、紫外可視分光光度計(島津製作所社製 商品名:UV−1700)を用い、測定した。
得られたアゾ含鉄染料A1の可視吸収スペクトルを
図1に示す。この図からもわかる通り、この濃度で十分な黒色である。
電気伝導度Kの測定方法
得られたアゾ含鉄染料を、メチルエチルケトンを用いて7wt%の濃度に調整した溶液を作製し、電気電導度計(Eutech Instruments社製 商品名:CyberScan CON100)を用いて測定した。
得られたアゾ含鉄染料A1の電気伝導度Kを測定すると、0.39mS/cmであった。
アルカリ金属イオンの測定方法
原子吸光測定器(バリアン テクノロジーズ ジャパンリミテッド社製 商品名:SpectrAA−220FS)を用い、アゾ含鉄染料中のNa含有量を測定した
得られたアゾ含鉄染料A1のアルカリ金属イオンが1000 ppm以下であった。
【0078】
(調製比較例1:アゾ含鉄染料B1の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール7.5gと、35wt%の濃塩酸13.6gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36wt%亜硝酸ナトリウム水溶液8.3gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを200gの水に加え、N、N−ジ−エチル−3−アミノフェノール7.5gを加えて分散させ、この分散液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.8に調整して析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、80.5gのウェットケーキを得た。
得られたモノアゾウェットケーキ80.5gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液21.5gと水225gを加え90℃で2.5時間撹拌した後、40%第二硫酸鉄水溶液11.8gを徐々に加え、90℃で5時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH3.0に調整し、析出した生成物を濾別、水洗し、ウェットケーキを得た。
【0079】
得られた鉄錯体化合物のウェットケーキに水250gとメタノール50gを加えて40℃に加熱し、この溶液に予め水100.0gと35wt%の濃塩酸2.7g、1,3−ジ−O−トリルグアニジン(大内新興化学工業社製 商品名:ノクセラーDT)5.4gで調整した水溶液を徐々に加えて、40℃で30分間撹拌した。その後に濾別、水洗、乾燥させ、下記式で示されるアゾ含鉄染料B1が17.5g得られた。
【0080】
【化13】
【0081】
得られたアゾ含鉄染料B1の電気伝導度Kを測定0.20mS/cmであった。
得られたアゾ含鉄染料B1のアルカリ金属イオンが1000ppm以下であった。
調製比較例1は、溶解性、電気伝導度が低く、インクに使用できなかった。
【0082】
溶解性データ
【表3】
【0083】
調製実施例1で得られたアゾ含鉄染料A1は、調製比較例1で得られたアゾ含鉄染料B1と比較すると、構造上では、エチル基とブチル基の炭素数2個の違いである。メチルエチルケトンとエタノールとのそれぞれの溶解性をみると、明らかにケトン溶解性も、アルコール溶解性も向上している。特にメチルエチルケトンの溶解性は、実用上、充分な溶解性を示した。
【0084】
(調製実施例2:アゾ含鉄染料A2の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール7.5gと、35wt%の濃塩酸13.6gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36%亜硝酸ナトリウム水溶液8.3gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを200gの水に加え、N、N−ジ−n−ブチル−3−アミノフェノール10.0gを加えて分散させ、この分散液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.6に調整して、析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、86.3gのウェットケーキを得た。
【0085】
得られたモノアゾ化合物のウェットケーキ86.3gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液21.5gと水225g、n−ブタノール11.2gを加え90℃で2.5時間撹拌した後、40wt%第二硫酸鉄水溶液11.8gを徐々に加え、90℃で5時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH3.0に調整し、析出した生成物を濾別、水洗し、ウェットケーキを得た。
得られた鉄錯体化合物のウェットケーキに水250gとメタノール50gを加えて40℃に加熱し、この溶液に予め水83.2gと35wt%の濃塩酸2.3g、tert−アルキル一級アミン(ダウケミカル社製 商品名:PRIMENE 81-R)4.5gで調整した水溶液を徐々に加えて、40℃で30分間撹拌した。その後に濾別、水洗、乾燥させ、下記式で示されるアゾ含鉄染料A2が17.3g得られた。
【0086】
【化14】
【0087】
得られたアゾ含鉄染料A2の可視吸収スペクトルを
図2に示す。
図1と同様十分黒色であった。
得られたアゾ含鉄染料A2の電気伝導度Kを測定すると、0.99mS/cmであった。
得られたアゾ含鉄染料A2のアルカリ金属イオンが1000ppm以下であった。
溶解性データ
【0088】
(調製比較例2:アゾ含鉄染料B2の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール7.5gと、35wt%の濃塩酸13.6gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36wt%亜硝酸ナトリウム水溶液8.3gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液26.1gを200gの水に加え、N、N−ジ−エチル−3−アミノフェノール 7.5gを加えて分散させ、この分散液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.8に調整して析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、80.5gのウェットケーキを得た。
【0089】
得られたモノアゾウェットケーキ80.5gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液21.5gと水225gを加え、90℃で2.5時間撹拌した後、40wt%第二硫酸鉄水溶液11.8gを徐々に加え、90℃で5時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH3.0に調整し析出した生成物を濾別、水洗し、ウェットケーキを得た。
得られた鉄錯体化合物のウェットケーキに水250gとメタノール50gを加えて40℃に加熱し、この溶液に予め水83.2gと35wt%の濃塩酸2.3g、tert−アルキル一級アミン(ダウケミカル社製 商品名:PRIMENE 81-R)4.5gで調整した水溶液を徐々に加えて40℃で30分間撹拌した後に、濾別、水洗、乾燥させ下記式で示されるアゾ含鉄染料B2が15.6g得られた。
【0090】
【化15】
【0091】
得られたアゾ含鉄染料B2の電気伝導度Kを測定すると、0.86mS/cmであった。
得られたアゾ含鉄染料B2のアルカリ金属イオンが1000ppm以下であった。
溶解性データ
【表4】
【0092】
調製実施例2で得られたアゾ含鉄染料A2は、調製比較例2で得られたアゾ含鉄染料B2と比較すると、構造上では、エチル基とブチル基の炭素数2個の違いである。メチルエチルケトンとエタノールとのそれぞれの溶解性をみると、明らかにケトン溶解性も、アルコール溶解性も向上している。特にメチルエチルケトンの溶解性は、実用上、充分な溶解性を示した。アルキル第1級アミンを対イオンにしたアゾ含鉄染料は、グアニジンを対イオンにしたアゾ含鉄染料より良好な傾向があった。
【0093】
(調製実施例3:アゾ含鉄染料A3の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール16.1gと、35wt%の濃塩酸32.9gとを、125.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36%亜硝酸ナトリウム水溶液18.1gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液57.0gを200gのメタノールに加え、N、N−ジ−n−ヘキシル−3−アミノフェノール27.7gを加えて溶解させ、この溶液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.6に調整して、析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、117.0gのウェットケーキを得た。
【0094】
得られたモノアゾ化合物のウェットケーキ104.0gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液22.6gと水217g、n−ブタノール11.2gを加え90℃で2.5時間撹拌した後、40wt%第二硫酸鉄水溶液11.8gを徐々に加え、90℃で5時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH2.2に調整し、析出した生成物を濾別、水洗、乾燥し、20.6gの鉄錯体化合物を得た。
得られた鉄錯体化合物にプロピレングリコールモノメチルエーテル375gとtert−アルキル一級アミン(ダウケミカル社製 商品名:PRIMENE 81-R)4.5gを加えて125℃で2時間撹拌して90℃に冷却した。この反応液を予め調整した水600g中に投入し、pH 7.0に調整し、濾別、水洗、乾燥させ、下記式で示されるアゾ含鉄染料A3が23.3g得られた。
【0095】
【化16】
【0096】
得られたアゾ含鉄染料A3の可視吸収スペクトルを
図3に示す。
図1と同様十分黒色であった。
得られたアゾ含鉄染料A3の電気伝導度Kを測定すると、0.92mS/cmであった。
得られたアゾ含鉄染料A3のアルカリ金属イオンが 1000ppm以下であった。
溶解性データ
【表5】
【0097】
調製実施例3で得られたアゾ含鉄染料A3は、調製実施例2で得られたアゾ含鉄染料A2及び調製比較例2で得られたアゾ含鉄染料B2と比較すると、構造上では、エチル基、ブチル基、ヘキシル基の炭素数2個ずつの違いである。メチルエチルケトンとエタノールとのそれぞれの溶解性をみると、明らかにケトン溶解性も、アルコール溶解性もかなり向上している。
【0098】
(調製比較例3:アゾ含鉄染料B3の合成)
5−ニトロ−2−アミノフェノール9.3gと、35wt%の濃塩酸17.1gとを、50.0gのイソプロパノールに加え溶解させ、氷浴で氷冷しながら36wt%亜硝酸ナトリウム水溶液11.2gを徐々に加え、ジアゾ化してジアゾニウム塩を得た。
20wt%水酸化ナトリウム水溶液28.9gを60gの水に加え、βーナフトール8.4gを加えて溶解させ、この溶液に前記ジアゾニウム塩を滴下し、3時間反応させた。その後、pH2.8に調整して析出したモノアゾ化合物を濾別、水洗し、85.0gのウェットケーキを得た。
【0099】
得られたモノアゾウェットケーキ85.0gに、20wt%水酸化ナトリウム水溶液27.5gと水275gとn−ブタノール13.7gを加え、90℃で2.5時間撹拌した後、40wt%第二硫酸鉄水溶液13.7gを徐々に加え、90℃で3時間反応を行った。反応後、室温まで冷却してpH3.0に調整し析出した生成物を濾別、水洗し、ウェットケーキを得た。
得られた鉄錯体化合物のウェットケーキに水250gとメタノール50gを加えて40℃に加熱し、この溶液に予め水101gと35wt%の濃塩酸2.7g、tert−アルキル一級アミン(ダウケミカル社製 商品名:PRIMENE 81-R)5.5gで調整した水溶液を徐々に加えて40℃で30分間撹拌した後に濾別、水洗、乾燥させ下記式で示されるアゾ含鉄染料B3が18.5g得られた。
【0100】
【化17】
【0101】
得られたアゾ含鉄染料B3の可視吸収スペクトルを
図4に示す。
得られたアゾ含鉄染料B3の電気伝導度Kを測定すると、1.45mS/cmであった。
得られたアゾ含鉄染料B3のアルカリ金属イオンが1000ppm以下であった。
溶解性データ
【表6】
【0102】
調製比較例3で得られたアゾ含鉄染料B3は、調製実施例2で得られたアゾ含鉄染料A2と比較すると、溶解性は、同等であるが、メチルエチルケトンに溶解すると、茶色の色相を呈し、単独では黒色インクとしては使えないものであった。
【0103】
油性インク組成物の作成
実施例1
セルロース系樹脂6重量部、硝酸リチウム1重量部、アゾ含鉄染料A1 3重量部を、メチルエチルケトン70重量部、エタノール10重量部、イソプロピルアルコール10重量部を撹拌溶解する。その後、混合溶液を目開き1.0μmのフィルターでろ過して、インクジェットプリンター用のインクを得た。
インクジェットプリンターを用い、得られたインクを、インクカートリッジに装填して使用した結果、黒色の印字を得た。印字濃度及びインクの吐出安定性は実用的に問題はなかった。
【0104】
実施例2
実施例1のアゾ含鉄染料A1に代えて、アゾ含鉄染料A2を使用する以外、同じ手順でインクを得た。
得られたインクを、実施例1と同様に、インクジェットプリンターで、インクカートリッジに装填して使用した結果、黒色の印字を得た。印字濃度及びインクの吐出安定性は実用的に問題はなかった。
【0105】
実施例3
実施例1のアゾ含鉄染料A1に代えて、アゾ含鉄染料A3を使用する以外、同じ手順でインクを得た。
得られたインクを、実施例1と同様に、インクジェットプリンターで、インクカートリッジに装填して使用した結果、黒色の印字を得た。印字濃度及びインクの吐出安定性は実用的に問題はなかった。
【0106】
比較例1
実施例1のアゾ含鉄染料A1に代えて、アゾ含鉄染料B1を使用する以外、同じ手順でインクを得た。
得られたインクは溶剤への溶解性が悪く、インクジェットプリンター用インクとしては使用できなかった。
【0107】
比較例2
実施例1のアゾ含鉄染料A1に代えて、アゾ含鉄染料B2を使用する以外、同じ手順でインクを得た。
得られたインクを、実施例1と同様に、インクジェットプリンターで、インクカートリッジに装填して使用した結果、隠蔽性のない茶色の薄い印字を得た。