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特開2017-223270スラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-223270(P2017-223270A)
(43)【公開日】2017年12月21日
(54)【発明の名称】スラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/54 20060101AFI20171124BHJP
   F16C 19/30 20060101ALI20171124BHJP
【FI】
   F16C33/54 A
   F16C19/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-118248(P2016-118248)
(22)【出願日】2016年6月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128211
【弁理士】
【氏名又は名称】野見山 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100145171
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮輔
【テーマコード(参考)】
3J701
【Fターム(参考)】
3J701AA13
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA53
3J701AA62
3J701BA35
3J701BA45
3J701BA46
3J701BA47
3J701BA50
3J701DA09
3J701EA01
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA11
(57)【要約】
【課題】保持器の割れや微小クラックの発生を抑制可能なスラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器を提供する。
【解決手段】保持器3は、ころ2を保持する第1保持穴44の外側に形成された第1外側円環部42と、第1保持穴44の内側に形成された第1内側円環部41と、第1外側円環部42と第1内側円環部41とを連結する複数の第1柱部43とを有する外側保持器4と、ころ2を保持する第2保持穴54の外側に形成された第2外側円環部52と、第2保持穴54の内側に形成された第2内側円環部51と、第2外側円環部52と第2内側円環部51とを連結する複数の第2柱部53とを有する内側保持器5とを有し、第1内側円環部41及び第1外側円環部42はころ2側に突出する複数の係合凸部45を有し、第2内側円環部51及び第2外側円環部52は係合凸部45が係合される複数の係合凹部55を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のころと、前記複数のころを転動可能に保持する環状の保持器と、を備え、
前記保持器は、
前記複数のころを保持する複数の第1保持穴の外側に形成された第1外側円環部と、前記第1保持穴の内側に形成された第1内側円環部と、前記第1外側円環部と前記第1内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における一方向への前記ころの移動を規制する複数の第1柱部と、を有する第1保持器と、
前記複数のころを保持する複数の第2保持穴の外側に形成された第2外側円環部と、前記第2保持穴の内側に形成された第2内側円環部と、前記第2外側円環部と前記第2内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における他方向への前記ころの移動を規制する複数の第2柱部と、を有する第2保持器と、を有し、
前記第1内側円環部及び前記第1外側円環部は、前記ころ側に突出する複数の係合凸部を有し、
前記第2内側円環部及び前記第2外側円環部は、その少なくとも一部が前記第1内側円環部と前記第1外側円環部との間に配置されると共に、前記係合凸部が係合される複数の係合凹部を有する、
スラストころ軸受。
【請求項2】
前記第1保持器と前記第2保持器とは、金属からなる、
請求項1に記載のスラストころ軸受。
【請求項3】
前記複数の係合凸部は、前記第1内側円環部に径方向外方に突出するように形成された複数の内側係合凸部と、前記第1外側円環部に径方向内方に突出するように形成された複数の外側係合凸部と、を含み、
前記複数の係合凹部は、前記第2内側円環部に形成され前記内側係合凸部を係合する内側係合凹部と、前記第2外側円環部に形成され前記外側係合凸部を係合する外側係合凹部と、を含む、
請求項1または2に記載のスラストころ軸受。
【請求項4】
前記内側係合凸部と前記外側係合凸部とは、対をなし前記保持器の径方向に対向して形成されており、
前記内側係合凹部と前記外側係合凹部とは、対をなし前記保持器の径方向に対向して形成されており、
3対以上の前記内側係合凸部と前記外側係合凸部の対、及び、前記内側係合凹部と前記外側係合凹部の対が、前記保持器の周方向に等間隔に形成されている、
請求項3に記載のスラストころ軸受。
【請求項5】
前記第2内側円環部及び前記第2外側円環部は、前記ころ側に突出する複数のころ側突起を有する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のスラストころ軸受。
【請求項6】
前記ころと同数の前記ころ側突起を有し、
前記ころ側突起は、放射状に配置された柱状の前記ころの端面における前記ころの回転中心部に臨むように形成されている、
請求項5に記載のスラストころ軸受。
【請求項7】
複数のころを転動可能に保持する環状のスラストころ軸受用保持器であって、
前記複数のころを保持する複数の第1保持穴の外側に形成された第1外側円環部と、前記第1保持穴の内側に形成された第1内側円環部と、前記第1外側円環部と前記第1内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における一方向への前記ころの移動を規制する複数の第1柱部と、を有する第1保持器と、
前記複数のころを保持する複数の第2保持穴の外側に形成された第2外側円環部と、前記第2保持穴の内側に形成された第2内側円環部と、前記第2外側円環部と前記第2内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における他方向への前記ころの移動を規制する複数の第2柱部と、を有する第2保持器と、を有し、
前記第1内側円環部及び前記第1外側円環部は、前記ころ側に突出する複数の係合凸部を有し、
前記第2内側円環部及び前記第2外側円環部は、その少なくとも一部が前記第1内側円環部と前記第1外側円環部との間に配置されると共に、前記係合凸部が係合される複数の係合凹部を有する、
スラストころ軸受用保持器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向配置された2つのレースの間に複数のころを転動可能に介在させたスラストころ軸受が知られている。スラストころ軸受は、例えば、車両のトランスミッションにおいて非回転部材と回転部材との間に介挿され、回転軸方向のスラスト力を受けながら回転部材の回転を円滑にするために用いられている。
【0003】
スラストころ軸受では、複数のころは、2つのレースの間に配置された保持器に転動可能に保持されている。スラストころ軸受に用いられる保持器として、2枚の板材を組み合わせたもの(以下、二枚保持器という)が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
二枚保持器は、一方の板材である外側保持器と、他方の板材である内側保持器とを組み合わせて構成されている。外側保持器と内側保持器とは、外側保持器内に内側保持器を収容した状態で、外側保持器の外周に加締め加工を施すことで、一体化されている。
【0005】
外側保持器と内側保持器には、複数のころを保持する複数の保持穴がそれぞれ形成されている。保持穴の幅はころの直径よりも小さく形成されており、ころを保持穴の周縁の外側保持器又は内側保持器に係止させることで、ころの保持器からの脱落が抑制されている。
【0006】
保持穴の幅はころの直径よりも小さいため、保持器を組み立てる際には、内側保持器の保持穴にころを配置した状態で、内側保持器を外側保持器内に収容し、外側保持器と内側保持器とを加締めにより一体化する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−075752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、保持器ところとは、異なる材料からなり、異なる熱処理、異なる仕上げ加工が施される。したがって、保持器ところとを一体化した状態で熱処理を行うことはできない。
【0009】
そのため、従来のスラストころ軸受では、予め熱処理や表面加工等を施した外側保持器と内側保持器とを加締める必要がある。熱処理後の外側保持器及び内側保持器は、表面硬度が高くなるため、加締めの際に材料強度を上回る引張り応力が発生すると、加締め部分に割れや微小クラックが生じてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、保持器に割れや微小クラックが発生してしまうことを抑制可能なスラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するため、複数のころと、前記複数のころを転動可能に保持する環状の保持器と、を備え、前記保持器は、前記複数のころを保持する複数の第1保持穴の外側に形成された第1外側円環部と、前記第1保持穴の内側に形成された第1内側円環部と、前記第1外側円環部と前記第1内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における一方向への前記ころの移動を規制する複数の第1柱部と、を有する第1保持器と、前記複数のころを保持する複数の第2保持穴の外側に形成された第2外側円環部と、前記第2保持穴の内側に形成された第2内側円環部と、前記第2外側円環部と前記第2内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における他方向への前記ころの移動を規制する複数の第2柱部と、を有する第2保持器と、を有し、前記第1内側円環部及び前記第1外側円環部は、前記ころ側に突出する複数の係合凸部を有し、前記第2内側円環部及び前記第2外側円環部は、その少なくとも一部が前記第1内側円環部と前記第1外側円環部との間に配置されると共に、前記係合凸部が係合される複数の係合凹部を有する、スラストころ軸受を提供する。
【0012】
また、本発明は、上記目的を達成するため、複数のころを転動可能に保持する環状のスラストころ軸受用保持器であって、前記複数のころを保持する複数の第1保持穴の外側に形成された第1外側円環部と、前記第1保持穴の内側に形成された第1内側円環部と、前記第1外側円環部と前記第1内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における一方向への前記ころの移動を規制する複数の第1柱部と、を有する第1保持器と、前記複数のころを保持する複数の第2保持穴の外側に形成された第2外側円環部と、前記第2保持穴の内側に形成された第2内側円環部と、前記第2外側円環部と前記第2内側円環部とを径方向に連結し、前記保持器の軸方向における他方向への前記ころの移動を規制する複数の第2柱部と、を有する第2保持器と、を有し、前記第1内側円環部及び前記第1外側円環部は、前記ころ側に突出する複数の係合凸部を有し、前記第2内側円環部及び前記第2外側円環部は、その少なくとも一部が前記第1内側円環部と前記第1外側円環部との間に配置されると共に、前記係合凸部が係合される複数の係合凹部を有する、スラストころ軸受用保持器を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保持器に割れや微小クラックが発生してしまうことを抑制可能なスラストころ軸受、及びスラストころ軸受用保持器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係るスラストころ軸受を示す斜視図である。
図2図1のスラストころ軸受の破断面図である。
図3】(a)は図1のスラストころ軸受の周方向に垂直な断面を示す断面図であり、(b)は保持器のころ保持部分を径方向外方から見た図である。
図4】内側保持器の斜視図である。
図5】(a)〜(d)は、保持器の組立手順を説明する説明図である。
図6】(a)は係合凸部又は係合凹部を形成する際に用いる治具の一例を示す斜視図、(b)〜(d)はその治具を用いて係合凸部又は係合凹部を形成する手順を説明する説明図である。
図7図6(a)の治具の一変形例を示す図である。
図8】(a)は係合凸部又は係合凹部を形成する際に用いる治具の一例を示す斜視図、(b)〜(e)はその治具を用いて係合凸部又は係合凹部を形成する手順を説明する説明図である。
図9】(a)は係合凸部又は係合凹部を形成する際に用いる治具の一例を示す斜視図、(b)〜(d)はその治具を用いて係合凸部又は係合凹部を形成する手順を説明する説明図である。
図10】(a)〜(c)は係合凸部又は係合凹部を形成する手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図1乃至図10を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0016】
(スラストころ軸受1の全体構成)
図1は本実施の形態に係るスラストころ軸受1を示す斜視図であり、図2はその破断面図である。また、図3(a)は、保持器3におけるころ2の保持部分を径方向外方から見た図である。
【0017】
図1〜3に示すように、スラストころ軸受1は、複数の円柱状のころ2と、複数のころ2を転動可能に保持する環状の保持器(スラストころ軸受用保持器)3と、を備えている。また、図示していないが、スラストころ軸受1は、保持器3を挟み込むように対向して配置され、複数のころ2が転動する軌道面を有する2つのレースを有している。
【0018】
スラストころ軸受1は、例えば車両のトランスミッションに用いられ、軸状の回転部材と、トランスミッションハウジング等の非回転部材との間に介挿され、保持器3に保持された複数のころ2の転動により、軸方向のスラスト力を受けながら回転部材の回転を円滑にするものである。
【0019】
(保持器3の説明)
保持器3は、外側保持器4と内側保持器5とを組み合わせてなる。なお、外側保持器4は、本発明の第1保持器の一態様であり、内側保持器5は、本発明の第2保持器の一態様である。
【0020】
外側保持器4は、複数のころ2を保持する複数の第1保持穴44の外側に形成された第1外側円環部42と、第1保持穴44の内側に形成された第1内側円環部41と、第1外側円環部42と第1内側円環部41とを径方向に連結し、保持器3の軸方向における一方向(図3(a)における上方向)へのころ2の移動を規制する複数の第1柱部43と、を一体に有している。
【0021】
第1内側円環部41と第1外側円環部42とは同心状に形成されて対をなし、第1柱部43と共に第1保持穴44を形成する。第1保持穴44は、外側保持器4の径方向に沿って長辺が延び、外側保持器4を厚さ方向(軸方向)に貫通する長方形状の貫通孔である。外側保持器4には、放射状に配置された複数のころ2を転動可能に保持するように、複数のころ2と同数(本実施の形態では30個)の複数の第1保持穴44が放射状に形成されている。第1保持穴44の短辺方向の幅は、ころ2の直径よりも小さい。
【0022】
本実施の形態では、第1内側円環部41は、軸方向に垂直な板状かつ環状の垂直部41aと、垂直部41aの内周側の端部から軸方向に延出された短円筒状の内筒部41bと、を一体に有する。垂直部41aと内筒部41bとの接続部分は丸みを帯びた形状に形成されている。
【0023】
また、第1外側円環部42は、軸方向に垂直な板状かつ環状の垂直部42aと、垂直部42aの外周側の端部から軸方向に延出された短円筒状の外筒部42bと、を一体に有する。垂直部42aと外筒部42bとの接続部分は丸みを帯びた形状に形成されている。
【0024】
第1内側円環部41と第1外側円環部42の垂直部41a,42aは、軸方向における同じ位置に同軸状に配置されている。また、内筒部41bと外筒部42bは、垂直部41a,42aから軸方向の同じ方向に延出され、垂直部41a,42aからの延出長が等しく形成されており、同軸状に配置されている。第1柱部43は、軸方向に対して垂直に形成されており、第1内側円環部41と第1外側円環部42の垂直部41a,42a同士を連結している。
【0025】
図4は、内側保持器5の破断面図である。図1〜4に示すように、内側保持器5は、複数のころ2を保持する複数の第2保持穴54の外側に形成された第2外側円環部52と、第2保持穴54の内側に形成された第2内側円環部51と、第1外側円環部52と第1内側円環部51とを径方向に連結し、保持器3の軸方向における他方向(図3(a)における下方向)へのころ2の移動を規制する複数の第2柱部53と、を一体に有している。
【0026】
第2内側円環部51と第2外側円環部52とは同心状に形成されて対をなし、第2柱部53と共に第2保持穴54を形成する。第2保持穴54は、内側保持器5の径方向に沿って長辺が延び、内側保持器5を厚さ方向(軸方向)に貫通する長方形状の貫通孔である。内側保持器5には、放射状に配置された複数のころ2を転動可能に保持するように、複数のころ2と同数(本実施の形態では30個)の複数の第2保持穴54が放射状に形成されている。第2保持穴54の短辺方向の幅は、ころ2の直径よりも小さい。
【0027】
第2内側円環部51は短円筒状に形成されており、第2外側円環部52は、第2内側円環部51と同軸の短円筒状に形成されている。第2内側円環部51と第2外側円環部52の軸方向の長さは等しい。第2柱部53は、軸方向に対して垂直に形成されており、第2内側円環部51と第2外側円環部52の軸方向の端部同士を連結している。第2内側円環部51と第2柱部53との連結部分に形成される角部(第2内側円環部51の内周側で、かつ軸方向における第2柱部53の連結側の端部の角部)、及び、第2外側円環部52と第2柱部53との連結部分に形成される角部(第2外側円環部52の外周側で、かつ軸方向における第2柱部53の連結側の端部の角部)は、丸みを帯びた形状に形成されている。
【0028】
第2内側円環部51と第2外側円環部52は、その少なくとも一部が第1内側円環部41と第1外側円環部42との間に配置されている。本実施の形態では、内側保持器5の全体が外側保持器4に収容されているが、内側保持器5の一部が外側保持器4から突出していてもよい。内側保持器5は、第2内側円環部51と第2外側円環部52の先端部(第2柱部53を設けた側と反対側の端部)から、外側保持器4内に挿入され収容される。
【0029】
外側保持器4と内側保持器5とは、共に金属からなる。本実施の形態では、外側保持器4及び内側保持器5は、鋼板をプレス等によって打ち抜き及び屈曲して形成されている。外側保持器4と内側保持器5とを金属製とすることにより、外側保持器4や内側保持器5を樹脂製とした場合と比較して、保持器3の機械的強度や耐久性を向上できる。また、樹脂を適用できない用途にもスラストころ軸受1を用いることが可能になる。
【0030】
ただし、外側保持器4と内側保持器5とを金属製とした場合、両者をどのように係合させるかが問題となる。例えば、従来のように熱処理後に加締め加工を行った場合、加締め部分に割れや微小クラックが生じ易くなる。以下、本実施の形態における外側保持器4と内側保持器5とを係合させる構造を具体的に説明する。
【0031】
(外側保持器4と内側保持器5との係合)
本実施の形態に係るスラストころ軸受1では、第1内側円環部41及び第1外側円環部42は、ころ2側に突出する複数の係合凸部45を有し、第2内側円環部51及び第2外側円環部52は、係合凸部45が係合される複数の係合凹部55を有している。
【0032】
複数の係合凸部45は、第1内側円環部41に径方向外方に突出するように形成された複数の内側係合凸部45aと、第1外側円環部42に径方向内方に突出するように形成された複数の外側係合凸部45bと、を含んでいる。複数の係合凹部55は、第2内側円環部51に形成され内側係合凸部45aを係合する内側係合凹部55aと、第2外側円環部52に形成され外側係合凸部45bを係合する外側係合凹部55bと、を含んでいる。
【0033】
内側係合凸部45aと外側係合凸部45bとは、対をなし保持器3の径方向に対向して形成されている。同様に、内側係合凹部55aと外側係合凹部55bとは、対をなし保持器3の径方向に対向して形成されている。
【0034】
内側係合凸部45aは、パンチ等の治具を内筒部41bに押し付けて内筒部41bを内周側から外周側に窪ませる(塑性変形させる)ことにより、内筒部41bの外周面を径方向外方に突出させて形成されており、略凸円錐形状に形成されている。また、外側係合凸部45bは、パンチ等の治具を外筒部42bに押し付けて外筒部42bを外周側から内周側に窪ませる(塑性変形させる)ことにより、外筒部42bの内周面を径方向内方に突出させて形成されており、略凸円錐形状に形成されている。
【0035】
同様に、内側係合凹部55aは、パンチ等の治具を第2内側円環部51に押し付けて第2内側円環部51を内周側から外周側に窪ませる(塑性変形させる)ことにより形成されている。また、外側係合凹部55bは、パンチ等の治具を第2外側円環部52に押し付けて第2内側円環部51を外周側から内周側に窪ませる(塑性変形させる)ことにより形成されている。
【0036】
外側保持器4と内側保持器5とは、内側係合凸部45aを内側係合凹部55aに係合し、外側係合凸部45bを外側係合凹部55bに係合することで、互いに係合され固定されている。本実施の形態では、内側係合凸部45aと外側係合凸部45bの対、及び、内側係合凹部55aと外側係合凹部55bの対を周方向に複数有しているため、外側保持器4と内側保持器5とが相対的に回転してしまうことも抑制可能になる。内側係合凸部45aと内側係合凹部55aとの係りしろ、及び外側係合凸部45bと外側係合凹部55bとの係りしろは、スラストころ軸受1の用途等を考慮し、外側保持器4と内側保持器5の分離を十分に抑制できる程度に適宜設定すればよい。
【0037】
外側保持器4と内側保持器5とを強固に固定するために、少なくとも3対以上の内側係合凸部45aと外側係合凸部45bの対、及び、内側係合凹部55aと外側係合凹部55bの対が、保持器3の周方向に等間隔に形成されていることが望ましい。本実施の形態では、ころ2と同数の内側係合凸部45aと外側係合凸部45bの対、及び、内側係合凹部55aと外側係合凹部55bの対が、周方向に等間隔に形成されている。
【0038】
また、第2内側円環部51及び第2外側円環部52は、ころ2側に突出する複数のころ側突起56を有している。本実施の形態では、ころ側突起56は、内側係合凹部55aを形成するにあたって第2内側円環部51を窪ませた際に生じた径方向外方への突出部分、及び、外側係合凹部55bを形成するにあたって第2外側円環部52を窪ませた際に生じた径方向内方への突出部分からなる。ころ側突起56は、略凸円錐形状に形成されている。
【0039】
つまり、本実施の形態では、係合凹部55a,55bところ側突起56とが、保持器3の周方向における同じ位置に形成されている。これにより、ころ側突起56ところ2との干渉により第2内側円環部51や第2外側円環部52がころ2側に変形しにくくなり、外側保持器4と内側保持器5とが分離しにくくなる。
【0040】
また、ころ側突起56は、ころ2の端面におけるころ2の回転中心部(ころ2の回転中心の近傍)に臨むように形成されている。つまり、本実施の形態では、概略して、ころ2の回転軸を延長した直線上に、ころ側突起56、係合凹部55a,55b、及び係合凸部45a,45bが設けられている。本実施の形態では、ころ2の端面(ころ2の回転軸方向における端面)が外方に凸となる円弧状に形成されており、ころ側突起56のみがころ2の端面に接触するようになっている。
【0041】
ころ2の回転軸の近傍では、ころ2の外周近傍と比較して周速(回転速度)が小さくなる。そのため、ころ2の端面におけるころ2の回転中心部に臨むようにころ側突起56を形成することで、ころ2が回転する際の回転抵抗を小さくすることが可能になる。なお、ころ2と保持器3間のクリアランスの影響により、ころ2ところ側突起56との位置関係は若干変動する。
【0042】
(保持器3の組立手順)
図5(a)〜(d)は、保持器3の組立手順を説明する説明図である。
【0043】
保持器3を組み立てる際には、まず、図5(a)に示すように、鋼板を打ち抜き屈曲する等して外側保持器4と内側保持器5を形成する。その後、図5(b)に示すように、パンチや専用の治具等を用いて、係合凸部45a,45b、係合凹部55a,55b、及びころ側突起56を形成する。係合凸部45a,45b、係合凹部55a,55b、及びころ側突起56を形成する工程の詳細については、後述する。係合凸部45a,45b、係合凹部55a,55b、及びころ側突起56を形成した後、熱処理を行う。
【0044】
その後、図5(c)に示すように、内側保持器5の各第2保持穴54にころ2を配置し、図5(d)に示すように、外側保持器4内に内側保持器5を挿入して、外側保持器4と内側保持器5とを一体化させる。外側保持器4内に内側保持器5を挿入すると、内側係合凸部45aが内側係合凹部55aに係合されると共に、外側係合凸部45bが外側係合凹部55bに係合され、外側保持器4内に内側保持器5とが一体化される。以上により、保持器3の組立が完了する。
【0045】
(係合凸部45、係合凹部55、及びころ側突起56を形成する工程)
係合凸部45を形成する際には、図6(a)に示すような内側治具61を用いることができる。なお、ここでは、外側保持器4に係合凸部45を形成する手順を説明するが、内側保持器5に係合凹部55及びころ側突起56を形成する手順も同様である。
【0046】
内側治具61は、短円筒状に形成されており、その内周面に内側係合凸部45aを形成するための複数の内側凹溝62が形成され、その外周面に外側係合凸部45bを形成するための複数の外側凹溝63が形成されている。内側治具61の内径は、外側保持器4の内筒部41bの外径と略等しく、内側治具61の外径は外筒部42bの内径と略等しい。内側治具61の軸方向端面には、内側治具61の周方向の位置(角度、位相)を制御するためのマーカ64が形成されている。
【0047】
内側治具61を用いて係合凸部45を形成する際には、まず、図6(b)に示すように、鋼板を打ち抜き屈曲する等して形成された外側保持器4内に内側治具61を嵌め込み、内側治具61の内側凹溝62及び外側凹溝63と径方向に対向する位置にパンチ65を配置する。その後、図6(c)に示すように、パンチ65により内筒部41bを外周側に、外筒部42bを内周側に押し込む。これにより、凹溝62,63の内面に沿った係合凸部45a,45bが形成される。同様の手順を繰り返すことにより全ての係合凸部45a,45bを形成した後、図6(d)に示すように、内側治具61を外側保持器4から抜き取る。
【0048】
なお、内側治具61を外側保持器4から抜き取り易くするために、図7に示す内側治具61aのように、内側凹溝62及び外側凹溝63を軸方向の一方に開口する切欠き状に形成してもよい。図7では、内側凹溝62と外側凹溝63とが径方向に連通している場合を示しているが、内側凹溝62と外側凹溝63とは径方向に連通していなくてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では内側治具61を環状に形成したが、図8(a)に示す内側治具61bのように、円弧状に形成してもよい。この場合、内側治具61bの径方向の厚さを、内筒部41bの外周面と外筒部42bの内周面間の距離よりも小さくしておくことで、内側治具61bを外側保持器4から容易に抜き取ることが可能になる。
【0050】
内側治具61bを用いて内側係合凸部45aを形成する際には、まず、図8(b)に示すように、外側保持器4内に内側治具61bを挿入し、外側保持器4と内側治具61bとの位置関係を固定する。その後、図8(c)に示すように、パンチ65により内筒部41bを外周側に押し込む。これにより、内側凹溝62に沿った内側係合凸部45aが形成される。その後、図8(d)に示すように、内側治具61bを径方向外方に移動させ、図8(e)に示すように、内側治具61bを外側保持器4から抜き取る。外側係合凸部45bを形成する際も同様である。
【0051】
さらに、本実施の形態では外側保持器4内に挿入する内側治具61を用いる場合を説明したが、図9(a)に示すように、外側保持器4の外側に配置される外側治具91を用いても良い。外側治具91は、円筒状の内壁92と、内壁92と同軸の円筒状の外壁93と、内壁92と外壁93の軸方向の一端部同士を連結する軸方向に垂直な板状かつ環状の連結部94と、を一体に有している。内壁92と外壁93には、内壁92と外壁93を径方向に貫通する複数の貫通孔95が形成されている。この貫通孔95は、パンチ65を通すためのものであり、係合凸部45a,45bを形成する位置を位置決めするためのものである。内壁92の外径は内筒部41bの内径と略等しく、外壁93の内径は外筒部42bの外径と略等しい。
【0052】
外側治具91を用いて係合凸部45を形成する際には、まず、図9(b)に示すように、外側治具91内に外側保持器を挿入する。その後、図9(c)に示すように、パンチ65を貫通孔95に通し、パンチ65により内筒部41bを外周側に、外筒部42bを内周側に押し込む。これにより、係合凸部45a,45bが形成される。同様の手順を繰り返すことにより全ての係合凸部45a,45bを形成した後、図9(d)に示すように、外側治具91から外側保持器4を抜き取る。係合凸部45は外側治具91と反対側に突出することになるため、外側治具91から外側保持器4を容易に抜き取ることが可能である。
【0053】
さらにまた、本実施の形態では、屈曲加工を行った後に係合凸部45を形成する場合を説明したが、平板の状態で係合凸部45を形成し、その後屈曲加工を行うことも可能である。
【0054】
例えば、図10(a)に示すように、鋼板100に打ち抜き加工を施した後、図10(b)に示すように、パンチ65により係合凸部45を形成する。その後、図10(c)に示すように、折り曲げ加工を施して外側保持器4を形成する。この方法では、複雑な形状の治具が不要となるため、低コストである。なお、例えばプレス加工時に係合凸部45を同時に形成してしまうことも可能である。
【0055】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るスラストころ軸受1では、第1内側円環部41及び第1外側円環部42は、ころ2側に突出する複数の係合凸部45を有し、第2内側円環部51及び第2外側円環部52は、係合凸部45が係合される複数の係合凹部55を有している。
【0056】
これにより、外側保持器4と内側保持器5が共に金属からなる場合であっても、加締め加工を行うことなく外側保持器4と内側保持器5と一体化させることが可能となるため、加締めによる保持器3の割れや微小クラックの発生を抑制することが可能になる。
【0057】
また、本実施の形態では、第2内側円環部51及び第2外側円環部52が、ころ2側に突出するころ2と同数の複数のころ側突起56を有し、ころ側突起56は、ころ2の端面におけるころ2の回転中心部に臨むように形成されている。これにより、比較的周速が小さいころ2の回転中心部がころ側突起56に当たることになり、ころ2の回転抵抗を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…スラストころ軸受、2…ころ、3…保持器、4…外側保持器、5…内側保持器、41…第1内側円環部、41a…垂直部、41b…内筒部、42…第1外側円環部、42a…垂直部、42b…外筒部、43…第1柱部、44…第1保持穴、45…係合凸部、45a…内側係合凸部、45b…外側係合凸部、51…第2内側円環部、52…第2外側円環部、53…第2柱部、54…第2保持穴、55…係合凹部、55a…内側係合凹部、55b…外側係合凹部、56…ころ側突起、61,61a,61b…内側治具、62…内側凹溝、63…外側凹溝、64…マーカ、65…パンチ、91…外側治具、92…内壁、93…外壁、94…連結部、95…貫通孔、100…鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10