【解決手段】吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシと、回転ブラシを回転させる駆動モータと、床面上の空気を塵埃と共に吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を排気口から外部に排出するための送風部とを備え、前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、塵埃が除去された空気の一部によって駆動モータを冷却するように構成された自走式掃除機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の自走式掃除機は、ユーザーが取っ手を握って掃除機本体を支えながら自走ユニットを走行させて床面上を掃除する掃除機であるが、最近ではユーザーの手を全く介さず自ら判断して床面上を自走しながら掃除する自走式掃除機、すなわち、充電式の掃除ロボットが市販されている。
【0007】
掃除ロボットは、一般に、底面に吸込口を有する自走可能な円盤形筐体と、吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシと、回転ブラシを回転させる駆動モータと、吸込口から空気と共に吸い込まれた床面上の塵埃を捕集する集塵部と、集塵部を負圧にする電動送風機とを備えており、回転ブラシが高速回転することにより床面上の塵埃を吸込口に掻き込みながら吸引するように構成されている。そのため、回転ブラシの駆動モータが発熱し易く、熱によって駆動モータが故障する、あるいは駆動モータの寿命が短くなるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献1には、自走式掃除機の回転ブラシを高速で回転させる駆動モータが吸込部内に設けられていること、および回転ブラシの駆動モータが発熱して故障が生じたり寿命が短くなるという問題は示されていない。また、特許文献1の自走式掃除機では、冷却風路を筐体内に設けており、装置が大型化するという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、筐体を大型化して内部に新たな冷却風路を設けることなく回転ブラシの駆動モータを冷却することができる自走式掃除機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして、本発明によれば、吸込口と排気口とを有する自走可能な筐体と、
吸込口に回転可能に設けられた回転ブラシと、
回転ブラシを回転させる駆動モータと、
床面上の空気を塵埃と共に吸込口から筐体内に吸引しかつ塵埃が除去された空気を排気口から外部に排出するための送風部とを備え、
前記駆動モータ及び前記送風部は、前記筐体の内部に配置され、
塵埃が除去された空気の一部によって駆動モータを冷却するように構成され自走式掃除機が提供される。
なお、本発明において「自走式掃除機」とは、底面に吸込口を有すると共に内部に集塵部を有する筐体、筐体を走行させる駆動輪、駆動輪の回転、停止および回転方向等を制御する制御部などを備え、ユーザーの手を離れて自立的に掃除動作する掃除機を意味し、後述の図面を用いた実施形態によって一例が示される。
【0011】
本発明の自走式掃除機は、次のように構成されてもよい。
(1)送風部は、ハウジングと、ハウジング内に収納される電動送風機とを備え、
ハウジングは、塵埃が除去された空気を吸い込む開口部と、筐体の排気口に連通する排気路と、排気路の途中に設けられ筐体内に開口する通風口とを有し、
回転ブラシの駆動モータはハウジングの通風口に対向する近傍位置に配置されており、通風口から駆動モータに向かって塵埃が除去された空気の一部が流出するように構成されてもよい。
【0012】
(2)ハウジングは、筐体が前進する方向を前方とした前後左右上下方向に面する壁面を有し、後面の中央位置に開口部が配置され、後面における開口部の左側と右側のうち少なくとも一方に通風口が配置されていてもよい。
【0013】
(3)ハウジングは、その上面の左右両側に筐体の排気口と連通する第1排気路および第2排気路を有してもよい。
【0014】
(4)第1排気路と第2排気路のうちいずれか一方に、イオン発生装置が配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自走式掃除機(掃除ロボット)によれば、塵埃が除去された空気の一部によって回転ブラシの駆動モータを冷却するように構成されているため、熱による駆動モータの故障を防止できると共に、駆動モータの耐久期間(寿命)を延ばすことができる。
【0016】
また、前記構成(1)によれば、送風部のハウジング内部の排気路の途中に筐体内に開口する通風口を設けることによって、排気路を冷却風路として利用して通風口から駆動モータに向かって塵埃が除去された空気の一部が流出させることができるため、筐体内に新たな冷却風路を設ける必要がない。この結果、送風部の構造が複雑化しコストアップする
ことがなく、かつ筐体を大型化することもない。
【0017】
また、前記構成(2)によれば、送風部のハウジングの左面側と右面側の少なくとも一方の近傍位置に通風口が配置されるため好都合となる。つまり、回転ブラシを回転させるために、駆動モータは回転ブラシの左右両端の一方の近傍位置に配置されるのが好ましいため、駆動モータは筐体内の左右一方側に配置されることになり、前記構成(2)によれば駆動モータの位置の近傍に通風口が配置されるため好都合となる。
【0018】
また、前記構成(3)によれば、送風部のハウジングの第1排気路および第2排気路と連通するように筐体の左側から右側に亘って長い排気口を形成することができ、これによって左右方向に長い排気口から塵埃が除去された空気を外部に排出することができるため、排気抵抗を低減することができ、この結果、送風部により吸込口から塵埃を吸引する吸引力を高めることができる。
【0019】
また、前記構成(4)によれば、第1排気路と第2排気路のうち、通風口と連通していない一方から排気口を介してイオンを含む空気を外部に放出することができる。すなわち、イオンを含む空気を、無駄に筐体内に放出せずに、室内の消臭および除菌のために有効利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施形態1に係る自走式掃除機の斜視図であり、
図2は
図1に示される自走式掃除機のA−A矢視断面図であり、
図3は
図1に示される自走式掃除機の底面図であり、
図4は筐体の蓋部が開放され集塵部が取り出された状態を示す
図2対応図であり、
図5は
図1に示される自走式掃除機の筐体の天板および制御基板等を取り外した状態を示す斜視図であり、
図6は
図1に示される自走式掃除機の電気的な構成を示すブロック図である。以下、「自走式掃除機」を「掃除ロボット」と言う場合がある。
【0022】
本発明に係る掃除ロボット(自走式掃除機)1は、設置された場所の床面を自走しながら、床面上の塵埃を含む空気を吸い込み、塵埃を除去した空気を排気することにより床面上を掃除する掃除ロボットである。
掃除ロボット1は、円盤形の筐体2を備え、この筐体2の内部および外部に、回転ブラ
シ9、サイドブラシ10、集塵ボックス30、電動送風機22を有する送風部、一対の駆動輪29、後輪26および前輪27、各種センサを含む制御部等の構成要素が設けられている。
この掃除ロボット1において、前輪27が配置されている部分が前方部、後輪26が配置されている部分が後方部、集塵ボックス30が配置されている部分が中間部である。
【0023】
筐体2は、前方部における中間部との境界付近の位置に形成された吸込口6を有する平面視円形の底板2aと、筐体2に対して集塵ボックス30を出し入れする際に開閉する蓋部3を中間部に有している天板2bと、底板2aおよび天板2bの外周部に沿って設けられた平面視円環形の側板2cとを備えている。また、底板2aには前輪27、一対の駆動輪29および後輪26の下部を筐体2内から外部へ突出させる複数の孔部が形成され、天板2bにおける前方部と中間部との境界付近には排気口7が形成されている。なお、側板2cは、前後に二分割されており、側板前部はバンパーとして機能する。
【0024】
また、
図4に示されるように、筐体2の内部において、前方部に電動送風機22を有するモータユニット(送風部)20、イオン発生装置25(
図5参照)等を収納する前方収納室R1を有し、中間部に集塵ボックス30を収納する中間収納室R2を有し、後方部に制御部の制御基板15、バッテリー14、充電端子4等を収納する後方収納室R3を有し、前方部と中間部との境界付近に吸引路11および排気路12を有している。吸引路11は吸込口6と中間収納室R2とを連通し、排気路12は中間収納室R2と前方収納室R1とを連通している。なお、これらの各収納室R1、R2、R3、吸引路11および排気路12は、筐体2の内部に設けられてこれらの空間を構成する仕切り壁39によって仕切られている。
【0025】
一対の駆動輪29は、平面視円形の筐体2の中心を通る中心線Cと直角に交わる一対の回転軸に固定されており、一対の駆動輪29が同一方向に回転すると筐体2が進退し、各駆動輪29が逆方向に回転すると筐体2が中心線Cの回りに回転する。
一対の回転軸は、図示しない一対のモータからそれぞれ個別に回転力が得られるように連結されており、各モータは筐体の底板2aに直接またはサスペンション機構を介して固定されている。
【0026】
前輪27はローラからなり、進路上に現れた段差に接地し、筐体2が段差を容易に乗り越えられるよう、駆動輪29が接地する床面Fから少し浮き上がるよう筐体2の底板2aの一部に回転可能に設けられている。
後輪26は自在車輪からなり、駆動輪29が接地する床面Fと接地するよう筐体2の底板2aの一部に回転可能に設けられている。
このように、筐体2に対して前後方向中間に一対の駆動輪29を配置し、前輪27を床面Fから浮かせ、掃除ロボット1の重量を一対の駆動輪29と後輪26によって支持できるよう、筐体2に対して前後方向に重量が配分されている。これにより、進路前方の塵埃を前輪27によって遮ることなく吸込口6に導くことができる。
【0027】
吸込口6は、床面Fに対面するよう筐体2の底面(底板2aの下面)に形成された凹部8の開放面である。この凹部8内には、筐体2の底面と平行な第1軸心廻りに回転する回転ブラシ9が設けられており、凹部8の左右両側には筐体2の底面と垂直な第2回転軸心廻りに回転するサイドブラシ10が設けられている。回転ブラシ9は、回転軸であるローラの外周面に螺旋状にブラシを植設することにより形成されている。サイドブラシ10は、回転軸の下端にブラシ束を放射状に設けることにより形成されている。回転ブラシ9の回転軸および一対のサイドブラシ10の回転軸は、筐体2の底板2aの一部に枢着されると共に、その付近に設けられた駆動モータM(
図5参照)とプーリおよびベルト等を含む動力伝達機構を介して連結されている。
【0028】
図3に示されるように、筐体2の底面と前輪27との間には床面Fを検知する床面検知センサ13が配置され、左右の駆動輪29の側部前方には同様の床面検知センサ19が配置されている。床面検知センサ13によって下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が両駆動輪29が停止するよう制御する。また、床面検知センサ13が故障した場合、床面検知センサ19が下り階段を検知して両駆動輪29を停止することができるため、掃除ロボット1の下り階段への落下が防止されている。また、床面検知センサ19が、下り階段を検知すると、その検知信号が制御部に送信され、制御部が駆動輪29に下り階段を回避して走行するように制御してもよい。
【0029】
制御基板15には、掃除ロボット1における駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22等の各要素を制御する制御回路が設けられている。
筐体2の側板2cの後端には、バッテリー14の充電を行う充電端子4が設けられている。室内を自走しながら掃除する掃除ロボット1は、室内に設置されている充電台40に帰還する。これにより、充電台40に設けられた端子部41に充電端子4が接触し、バッテリー14の充電が行われる。商用電源(コンセント)に接続される充電台40は、通常、室内の側壁Sに沿って設置される。
バッテリー14は、充電端子4を介して充電台40から充電され、制御基板15、駆動輪29、回転ブラシ9、サイドブラシ10、電動送風機22、各種センサ等の各要素に電力を供給する。
【0030】
集塵ボックス30は、通常、筐体2内における両駆動輪29の回転軸の軸心よりも上方の中間収納室R2内に収納されており、集塵ボックス30内に捕集された塵埃を廃棄する際は、
図4に示されるように、筐体2の蓋部3を開いて集塵ボックス30を出し入れすることができる。
集塵ボックス30は、開口部を有する集塵容器31と、集塵容器31の開口部を覆うフィルタ部33と、フィルタ部33と集塵容器31の開口部とを覆うカバー部32とを備えている。カバー部32およびフィルタ部33は、集塵容器31の前側の開口端縁に回動可能に軸支されている。
集塵容器31の側壁前部には、集塵ボックス30が筐体2の中間収納室R2内に収納された状態において、筐体2の吸引路11と連通する流入路34と、筐体2の排気路12と連通する排出路35とが設けられている。
【0031】
掃除ロボット1全体の動作制御を行う制御部は、
図6に示されるように、CPU15aおよびその他の図示しない電子部品で構成された制御回路を有する制御基板15と、走行マップ18aを記憶する記憶部18、電動送風機22を駆動するためのモータドライバ22a、駆動輪29の走行モータ51を駆動するためのモータドライバ51a、筐体2内の排気口7付近に回動可能に設けられたルーバー17およびそれを駆動するための制御ユニット17a、臭いセンサ52およびその制御ユニット52a、湿度センサ53およびその制御ユニット53a、人感センサ54およびその制御ユニット54a、接触センサ55およびその制御ユニット55a等を備えて構成される。
【0032】
CPU15aは中央演算処理装置であり、記憶部18に予め記憶されたプログラムデータに基いて、モータドライバ22a、51aおよび制御ユニット17aに個別に制御信号を送信し、電動送風機22、走行モータ51およびルーバー17を駆動制御して、一連の掃除運転およびイオン放出運転を行う。
また、CPU15aは、ユーザーによる掃除ロボット1の動作に係る条件設定を操作パネル(図示省略)から受け付けて記憶部18に記憶させる。この記憶部18は、掃除ロボット1の設置場所周辺の走行マップ18aを記憶することができる。走行マップ18aは、掃除ロボット1の走行経路や走行速度などといった走行に係る情報であり、予めユーザ
ーによって記憶部18に記憶させるか、あるいは掃除ロボット1自体が掃除運転中に自動的に記録することができる。
【0033】
臭いセンサ52は、筐体2の外部周辺の臭いを検知する。臭いセンサ52としては、例えば、半導体式や接触燃焼式の臭いセンサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の臭いを検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で臭いセンサ52が配置される。CPU15aは制御ユニット52aを介して臭いセンサ52と接続されており、臭いセンサ52からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の臭い情報を得る。
【0034】
湿度センサ53は、筐体2の外部周辺の湿度を検知する。湿度センサ53としては、例えば、高分子感湿材料を用いた静電容量式や電気抵抗式の湿度センサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の相対湿度を検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で湿度センサ53が配置される。CPU15aは制御ユニット53aを介して湿度センサ53と接続されており、湿度センサ53からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の湿度情報を得る。
【0035】
なお、走行マップ18aには、掃除ロボット1が設置される設置場所における所定閾値以上の臭気が漂う箇所および所定閾値以上に湿気が高い箇所が特定箇所として予め記憶されていてもよい。このようにすれば、CPU15aがこの特定箇所を筐体2の周辺環境に基づいて定めた箇所であると判断することができる。つまり、走行マップ18aが、臭いセンサ52および湿度センサ53と同様に、筐体2の周辺環境を検知する環境検知装置としての役割を果たすことになる。
【0036】
人感センサ54としては、例えば、赤外線、超音波、可視光等によって人の存在を検知する人感センサを用いることができる。掃除ロボット1の外部周辺の人の存在を検知するために、例えば、筐体2の側板2cまたは天板2bから外部へ露出した状態で人感センサ54が配置される。CPU15aは制御ユニット54aを介して人感センサ54と接続されており、人感センサ54からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の人の存在情報を得る。
【0037】
接触センサ55は、掃除ロボット1が走行時に障害物と接触したことを検知するために、例えば、筐体2の側板2cの前部に配置される。CPU15aは制御ユニット55aを介して接触センサ55と接続されており、接触センサ55からの出力信号に基づいて筐体2の外部周辺の障害物の存在情報を得る。
【0038】
このように構成された掃除ロボット1において、掃除運転の指令により、電動送風機22、イオン発生装置25、駆動輪29、回転ブラシ9およびサイドブラシ10が駆動する。これにより、回転ブラシ9、サイドブラシ10、駆動輪29および後輪26が床面Fに接地した状態で、筐体2は所定の範囲を自走しながら吸込口6から床面Fの塵埃を含む空気を吸い込む。このとき、回転ブラシ9の回転によって床面F上の塵埃は掻き上げられて吸込口6に導かれる。また、サイドブラシ10の回転によって吸込口6の側方の塵埃が吸込口6に導かれる。
【0039】
吸込口6から筐体2内に吸い込まれた塵埃を含む空気は、
図2の矢印A1に示されるように、筐体2の吸引路11を通り、集塵ボックス30の流入路34を通って集塵容器31内に流入する。集塵容器31内に流入した気流は、フィルタ部33を通過してフィルタ部33とカバー部32との間の空間50に流入し、排出路35を通って筐体2の排気路12へ排出される。この際、集塵容器31内の気流に含まれる塵埃はフィルタ部33によって捕獲されるため、集塵容器31内に塵埃が堆積する。
【0040】
集塵ボックス30から筐体2の排気路12へ流入した気流は、
図2の矢印A2に示されるように前方収納室R1へ流入し、第1排気路24aおよび第2排気路24bを流通する(
図9参照)。後述するが、第2排気路24bを流通する気流にはイオン発生装置25が放出するイオンが含まれる。そして、筐体2の上面に設けた排気口7から、
図2の矢印A3に示されるように、後方の斜め上方にイオンを含む気流が排気される。これにより、床面F上の掃除が行われると共に、掃除ロボット1の排気に含まれるイオンによって室内の除菌および脱臭が行われる。このとき、排気口7から後方の斜め上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げが防止され、室内の清浄度を向上することができる。なお、イオン発生装置25から放出されるイオンは、負イオンと正イオンのどちらか一方、又はその両方でもよい。負イオンと正イオンの両方を放出する場合、特に優れた空気の浄化、殺菌あるいは消臭の効果がある。
また、後述するが、第2排気路24bを流通する気流の一部は、凹部8に導かれてもよい。このようにすれば、吸込口6から吸引路11に導かれる気流内にイオンが含まれるため、集塵ボックス30の集塵容器31内およびフィルタ部33の除菌および脱臭を行うことができる。
【0041】
また、掃除ロボット1は、左右の駆動輪29が同一方向に正回転して前進し、同一方向に逆回転して後退し、互いに逆方向に回転することにより中心線Cを中心に旋回する。例えば、掃除ロボット1は、掃除領域の周縁に到達した場合および進路上の障害物に衝突した場合、駆動輪29が停止し、左右の駆動輪29を互いに逆方向に回転して向きを変える。これにより、掃除ロボット1は、設置場所全体あるいは所望範囲全体に障害物を避けながら自走することができる。
【0042】
また、掃除ロボット1は、左右の駆動輪29と後輪26の3点で接地しており、前進時に急停止しても後輪26が床面Fから浮き上がらないようなバランスで重量配分されている。そのため、掃除ロボット1が前進中に下り階段の手前で急停止し、それによって掃除ロボット1が前のめりに傾いて下り階段へ落下するということが防止されている。なお、駆動輪29は、急停止してもスリップしないよう、溝を有するゴムタイヤをホイールに嵌め込んで形成されている。
また、集塵ボックス30が駆動輪29の回転軸の上方に配置されているため、集塵によって重量が増加しても掃除ロボット1の重量バランスが維持される。
【0043】
掃除ロボット1は、環境検知装置である臭いセンサ52、湿度センサ53、走行マップ18aおよび人感センサ54から得られる情報に基づいて独特の動作を実行することができる。例えば、掃除ロボット1は、環境検知装置が検知した周辺環境に基づいて定めた特定箇所に一定時間留まり、排気口7からイオンを含む気流を放出することができる。
掃除ロボット1は、掃除が終了すると充電台40に帰還する。これにより、充電端子4が端子部41に接してバッテリー14が充電される。
【0044】
また、掃除ロボット1は、充電台40に帰還した状態で電動送風機22およびイオン発生装置25を駆動することができる。これにより、排気口7から後方の斜め上方にイオンを含む気流が放出され、イオンを含む気流は側壁Sに沿って上昇し、室内の天井壁および対向する側壁に沿って流通する。この結果、イオンが室内全体に行き渡り、除菌効果や脱臭効果を向上させることができる。このように、掃除ロボット1は、イオン放出運転を単独で実行することも可能である。
【0045】
掃除ロボット1の上面には操作部が設けられており、操作部によって掃除運転およびイオン放出運転を実行させることができる。また、筐体2内に受信部を設けると共に、受信部に指令信号を発信する送信機を設けてリモコン操作できるようにしてもよい。また、ス
マートフォンと呼ばれる携帯電話からインターネット回線および室内に設けたルーターを介して指令信号を掃除ロボット1に送信して遠隔操作できるようにしてもよい。
【0046】
<回転ブラシの駆動モータの冷却構造>
筐体2の内部において、集塵ボックス30が収納される中間収納室R2は、仕切り壁39によって四方の周面および底面が覆われた隔離室であり、前壁を除く各壁面は閉塞されている。中間収納室R2の前壁には、凹部8に連通する吸引路11と、凹部8の上方に配置されて後述するモータユニット20に連通する排気路12が設けられている。
【0047】
図8は
図1に示される自走式掃除機における排気路用ダクトが取り付けられたモータユニットを示す斜視図であり、
図9は
図1に示される自走式掃除機のモータユニットを示す斜視図であり、
図10は
図1に示される自走式掃除機のモータユニットを示す平面図であり、
図11は
図1に示される自走式掃除機のモータユニットを示す正面図であり、
図12は
図1に示される自走式掃除機のモータユニットを示す右側面図である。
【0048】
送風部であるモータユニット20は、樹脂成形品であるハウジング21と、ハウジング21内に収納される電動送風機22とを備えている。
電動送風機22は、ターボファン(不図示)と、ターボファンを覆うモータケース22aとから構成されている。電動送風機22のモータケース22bは、その正面に吸気口(不図示)を有すると共に、周面における左右両側に排気口(不図示)を有している。なお、筐体2内にモータユニット20が組み付けられた状態において、モータユニット20の正面は筐体2の後方に面しているため、モータユニット20の正面は組付け状態において後面となっている。よって、
図9〜12を用いたモータユニット20の説明における「正面」とは、
図1〜5においてはモータユニット2の「後面」を意味する。
【0049】
ハウジング21は、その正面中央位置にモータケース22bの吸気口に対向する開口部23を有し、左右両側にモータケース22bの各排気口にそれぞれ連通する第1排気路24aおよび第2排気路24bを有し、さらに、正面の開口部23の横(この場合、左横)に通風口24cを有している。第1、第2排気路24a、24bは、筐体2の上面に設けられた排気口7(
図2参照)に連通している。すなわち、ハウジング21は、筐体2が前進する方向を前方とした前後左右上下方向に面する壁面を有し、後面の中央位置に開口部23が配置され、後面における開口部23の左側に通風口24cが配置され、上面の左右両側に第1、第2排気路24a、24bが配置されている。
【0050】
また、
図8に示されるように、ハウジング21の開口部23には排気路12を構成する排気路用ダクト12Aが取り付けられる。この排気路用ダクト12Aが取り付けられたモータユニット20において、通風口24cは排気路用ダクト12Aによって覆われていない。
図5と
図7に示されるように、回転ブラシ9を回転させる駆動モータMは、そのシャフトが水平軸心廻りに回転するよう排気路用ダクト12Aの横(この場合、左横)に配置されている。これにより、モータユニット20の通風口24cは駆動モータMと対向する。
【0051】
このように、電動送風機22を含む気流の流路が筐体2内の前方収納室R1に集約して配置されている。このため、制御基板15およびバッテリー14を後方収納室R3に集約して配置することができ、この結果、配線等が削減されて筐体2の小型化を図ることができる。また、気流の流路が制御基板15から離れるため、流路から漏れた気流に含まれる塵埃が制御基板15に付着することによって生じる故障を低減することができる。
【0052】
第2排気路24bには一対の電極28aを有したイオン発生装置28が配置されている。電極28aには交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加され、電極28aの
コロナ放電により生成されたイオンが第2排気路24bに放出される。
【0053】
また、第2排気路24bの下部には正面を開口した戻り口25が設けられている。戻り口25はハウジング21の正面に突出する突出部25aにより上方を覆われ、開口面を凹部8(
図2参照)の壁面に沿った曲面に形成される。これにより、戻り口25は凹部8の壁面に設けた孔部(不図示)を介して凹部8内に臨み、第2排気路24bを流通するイオンを含む気流の一部が吸気側に導かれる。
【0054】
上記構成の掃除ロボット1において、掃除運転が指示されると、電動送風機22、イオン発生装置28、駆動輪29、回転ブラシ9およびサイドブラシ10が駆動される。これにより、筐体2は回転ブラシ9、駆動輪29および後輪26が床面Fに接地して所定の範囲を自走し、吸込口6から床面Fの塵埃を含む気流が吸い込まれる。この時、回転ブラシ9の回転によって床面F上の塵埃が掻き上げられて凹部8内に導かれる。また、サイドブラシ10の回転によって吸込口6の側方の塵埃が吸込口6に導かれる。
【0055】
吸込口6から吸い込まれた気流は、
図2中の矢印A1に示されるように、後方の吸引路11を通って集塵ボックス30に流入する。集塵ボックス30に流入した気流はフィルタ33により塵埃を捕集された後、集塵ボックス30から流出する。これにより、集塵容器31内に塵埃が集塵して堆積する。集塵ボックス30から流出した気流は、
図2中の矢印A2に示すように、前方の排気路12を通って開口部23からモータユニット20の電動送風機22に流入する。
【0056】
電動送風機22を通過した気流は、第1排気路24aおよび第2排気路24bを流通し、第2排気路24bを流通する気流にはイオンが含まれる。そして、
図2中の矢印A3に示されるように、筐体2の上面の排気口7から後方斜め上に向けてイオンを含む気流が排気される。これにより、室内の掃除が行われるとともに、自走する筐体2の排気に含まれるイオンが室内に行き渡って室内の除菌や脱臭が行われる。この時、排気口7から上方に向けて排気するので、床面Fの塵埃の巻き上げを防止して室内の清浄度を向上することができる。
【0057】
第2排気路24bを流通する気流の一部は、
図11中の矢印A4に示されるように、戻り口25を介して凹部8(
図2参照)に導かれる。このため、吸込口6から吸引路11に導かれる気流内にイオンが含まれる。これにより、集塵ボックス30の集塵容器31やフィルタ33の除菌および脱臭を行うことができる。
【0058】
また、第1排気路24aを流通する気流の一部は、通風口24cからハウジング21の外部へ流出した直後に駆動モータMに当たり、これにより駆動モータMが冷却される(
図5、
図7参照)。なお、駆動モータMを冷却した気流は、筐体2内の各部品の間をすり抜けて、筐体2内から前輪27、一対の駆動輪29および後輪26を外部へ突出させるために底板2aに形成された貫通孔や筐体2の隙間等から外部へ排出される。
【0059】
このように、回転ブラシの回転駆動時に生じる駆動モータの熱を、排気される気流の一部を冷却風として利用して除去できるため、駆動モータの熱による故障を防止できると共に、駆動モータの耐久期間(寿命)を延ばすことができる。このような駆動モータの冷却効果は、回転ブラシを高速回転させる場合に特に有効である。また、この冷却風により筐体2内に熱がこもることが防止されるため、他のモータや電子部品にも好影響を与えることができると共に、冷却風を生じさせるための専用のファンや通風路を設ける必要がないため、筐体の大型化とコストアップを回避することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、モータユニット20のハウジング21の正面左側に通風口24
cおよび回転ブラシ9の駆動モータMを配置し、モータユニット20の正面の右側に一対の電極28aを有したイオン発生装置28と戻り口25と突出部25aを配置した場合を例示したが、これらは左右逆の位置に配置されてもよい。また、通風口24cはハウジング21の正面における開口部23の左右両側に設けられてもよい。この場合、一方の通風口を駆動モータMの冷却に用い、他方の通風口から筐体2内に気流を積極的に流して筐体2内に熱気がこもらないようにすることができる。
【実施例】
【0061】
図1〜
図12で説明した本発明の掃除ロボット(実施例1)と、モータユニット20のハウジング21に通風口24c(
図7参照)が形成されていないこと以外は実施例1と同じ構成の掃除ロボット(比較例1)を、1.25m×1.25mのフローリングエリア内(室温22℃)で掃除動作させ、そのときの回転ブラシの駆動モータの表面温度変化を測定し、その結果を
図13に示した。なお、このときの回転ブラシの回転数は2000rpmであり、その他駆動モータに当たる風量等の条件は、実施例1と比較例1で同じとした。また、データロガー温度記録計を用いて時間経過における駆動モータの表面温度変化を測定した。
【0062】
図13に示されるように、実施例1の掃除ロボットでは、85分間掃除動作させても駆動モータの表面温度を50℃以下に抑えることができた。これに対し、比較例1の掃除ロボットでは、掃除動作開始後から5分後に駆動モータの表面温度が50℃に達し、25分経過時には80℃まで上昇した。これらの結果から、本発明における回転ブラシの駆動モータの冷却構造が有効であることが確認できた。