(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-115726(P2018-115726A)
(43)【公開日】2018年7月26日
(54)【発明の名称】往復動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20180629BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20180629BHJP
【FI】
F16H25/24 A
F16H25/20 E
F16H25/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-7650(P2017-7650)
(22)【出願日】2017年1月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】右島 伸敏
(72)【発明者】
【氏名】市原 史基
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB24
3J062AC07
3J062BA12
3J062CD03
3J062CD23
3J062CD47
3J062CD54
(57)【要約】
【課題】装置全体の大型化を抑制しつつ往復移動量の増大化を図ること。
【解決手段】長尺円柱状を成し、中心軸Lを中心として一方向に螺旋状に延在する第1溝部51a1と他方向に螺旋状に延在する第2溝部51a2とが互いに連続する態様で側部に形成されたナピアねじ50と、ナピアねじ50の第1溝部51a1又は第2溝部51a2に進入する係合片33aを有する係合部材30とを備えた往復動装置において、モータ15による駆動力が係合部材30に付与されることで該係合部材30がナピアねじ50の中心軸Lの回りに一方向に回転することにより、ナピアねじ50が中心軸Lの方向に沿って往復動するものである。このナピアねじ50は、一端部における中心軸Lが通過する部分に他の部材との連結孔53aが設けられた連結片53を備えることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺円柱状を成し、中心軸を中心として一方向に螺旋状に延在する第1溝部と他方向に螺旋状に延在する第2溝部とが互いに連続する態様で側部に形成されたネジ部材と、
前記ネジ部材の第1溝部又は第2溝部に進入する係合片を有する係合部材と
を備えた往復動装置において、
駆動源による駆動力が前記係合部材に付与されることで該係合部材が前記ネジ部材の中心軸回りに一方向に回転することにより、前記ネジ部材が前記中心軸方向に沿って往復動することを特徴とする往復動装置。
【請求項2】
前記ネジ部材は、一端部より前記中心軸方向に沿って突出する態様で形成され、かつ前記中心軸が通過する部分に他の部材との連結孔が設けられた連結片を備えたことを特徴とする請求項1に記載の往復動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、往復動装置として、ナピアねじと従動部材とを備えたものが知られている。ナピアねじは、長尺円柱状の形態を成しており、装置本体に収納されている。このナピアねじは、中心軸を中心として一方向に螺旋状に延在する第1溝部と、他方向に螺旋状に延在する第2溝部とが互いに連続する態様で側部に形成されることにより構成されている。
【0003】
従動部材は、ナピアねじの溝部(第1溝部又は第2溝部)に進入した従動片を有している。この従動部材は、動力の伝達対象となる対象部材に取り付けられるものである。
【0004】
上記構成を有する往復動装置においては、ナピアねじが、連結ギアを介して連結されるモータの駆動力が付与されることで中心軸回りに一方向に回転することにより、従動部材がナピアねじの延在方向に沿って前後に移動する。より詳細には、ナピアねじの回転により、従動片が第1溝部に進入する従動部材が前方に向けて移動する。その後、従動片が第1溝部の前端部に到達すると、第2溝部に進入し、ナピアねじの回転により従動部材が後方に向けて移動する。このようにしてナピアねじの一方向の回転により、従動部材がナピアねじの延在方向に沿って前後に移動することで、対象部材を往復動させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4126868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1に提案されている往復動装置では、装置本体に収納されたナピアねじを中心軸回りに一方向に回転させることにより、従動部材をナピアねじの延在方向に沿って前後に往復動させているので、次のような問題があった。
【0007】
すなわち、前後の往復移動量を増加させる場合、ナピアねじの軸方向の長さを増大させる必要があり、結果的にナピアねじを収納する装置本体を大型化させることとなり、装置全体の大型化が避けられないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて、装置全体の大型化を抑制しつつ往復移動量の増大化を図ることができる往復動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る往復動装置は、長尺円柱状を成し、中心軸を中心として一方向に螺旋状に延在する第1溝部と他方向に螺旋状に延在する第2溝部とが互いに連続する態様で側部に形成されたネジ部材と、前記ネジ部材の第1溝部又は第2溝部に進入する係合片を有する係合部材とを備えた往復動装置において、駆動源による駆動力が前記係合部材に付与されることで該係合部材が前記ネジ部材の中心軸回りに一方向に回転することにより、前記ネジ部材が前記中心軸方向に沿って往復動することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上記往復動装置において、前記ネジ部材は、一端部より前記中心軸方向に沿って突出する態様で形成され、かつ前記中心軸が通過する部分に他の部材との連結孔が設けられた連結片を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動源による駆動力が係合部材に付与されることで該係合部材がネジ部材の中心軸回りに一方向に回転することにより、ネジ部材が中心軸方向に沿って往復動するので、ネジ部材に連結される他の部材の往復移動量を増大させるにはネジ部材の延在長さを増大させればよい。しかも、ネジ部材を従来のように装置本体に収納しておく必要はないので、装置全体の大型化を図る必要はない。従って、装置全体の大型化を抑制しつつ往復移動量の増大化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である往復動装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した往復動装置を構成する駆動機構の内部構造を示す斜視図であり、前方側のケースを省略している。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態である往復動装置を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した往復動装置の要部の斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態である往復動装置を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示した往復動装置の要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る往復動装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態である往復動装置を示す斜視図である。ここで例示する往復動装置は、例えば商品を販売する自動販売機等に適用されるもので、駆動機構1とナピアねじ(ネジ部材)50とを備えて構成されている。
【0015】
駆動機構1は、機構本体10、出力部材20及び係合部材30を備えて構成されている。機構本体10は、前後一対となるケース11,12が互いに接合されることにより構成された筐体であり、
図2に示すように、内部に収納空間13を有している。この機構本体10には、図には明示されていないが、前後方向に沿って貫通する本体貫通孔が形成されている。
【0016】
出力部材20は、例えばプラスチック等の樹脂により構成されるものである。この出力部材20は、
図3に示すように、出力本体部21と出力伝達部22とを有している。出力本体部21は、中心軸が前後方向となる円筒状部材である。
【0017】
出力伝達部22は、出力本体部21の前端部分において、外方に放射状に突出する態様で設けられており、外径が該出力本体部21よりも大きい円環状部材である。この出力伝達部22の側周面には、複数の歯により構成される出力ギア部22aが形成されている。
【0018】
このような出力部材20は、出力本体部21がその中心軸が上記本体貫通孔の中心軸に一致する態様で該本体貫通孔を挿通し、かつ出力伝達部22が収納空間13に設置される態様で機構本体10に設けられている。
【0019】
かかる出力部材20は、出力伝達部22の出力ギア部22aが、ギアユニット14を構成する連係ギア14aに噛合することにより、該ギアユニット14を介して、収納空間13に設置された駆動源であるモータ15の出力軸15aに連係している。
【0020】
そして、出力部材20は、モータ15からの駆動力が付与されることで、上記中心軸回りに前方から見て反時計回りに回転するものである。
【0021】
係合部材30は、例えばプラスチック等の樹脂により構成されるものである。この係合部材30は、
図3に示すように、係合本体部31及び係合規制部32を備えて構成されている。
【0022】
係合本体部31は、中心軸が前後方向となる円筒状部材である。この係合本体部31の外径は、上記出力本体部21の中空部21aの内径よりも僅かに小さいものである。かかる係合本体部31には、
図3に示すように、切欠31aが形成されており、かかり切欠31aを後方に向けて延在する係止フック部31bが形成されている。また、係合本体部31の前端外周部の一部には、複数の係合凸部31cが形成されている。
【0023】
係合規制部32は、係合本体部31の前面開口を閉塞する態様で該係合本体部31に一体的に設けられている。この係合規制部32は、上記本体貫通孔の内径よりも大きい円板状部材である。この係合規制部32の中心部分には、中心が係合本体部31の中心軸に一致する円形状開口32aが形成されている。この円形状開口32aは、内径が係合本体部31の中空部31dの内径に一致している。
【0024】
そのような係合部材30は、出力部材20に対して、係合本体部31が出力本体部21の中空部21aに前方から進入し、係合凸部31cが出力本体部21の前端側内部に形成された係合凹部21bに嵌合するとともに、係止フック部31bの先端部が出力本体部21の後縁部の一部に係止することで、出力部材20に取り付けられている。尚、係合部材30は、係合本体部31の中心軸が出力本体部21の中心軸に一致する態様で、出力部材20に取り付けられている。これにより、係合部材30は、出力部材20と一体的に上記中心軸回りに回転するものである。
【0025】
このような駆動機構1においては、モータ15が駆動する場合に、係合部材30が出力部材20とともに、係合本体部31の中心軸(本体貫通孔の中心軸及び出力本体部21の中心軸)回りに前方から見て反時計回りに回転するものである。
【0026】
ナピアねじ50は、例えばプラスチック等の樹脂により構成されるものである。このナピアねじ50は、ネジ本体部51、規制片52及び連結片53を備えて構成されている。
【0027】
ネジ本体部51は、ナピアねじ50の主要構成要素である。このネジ本体部51は、前後方向が長手方向となる長尺円柱状部材であり、外径が上記係合本体部31の中空部31dの内径よりも僅かに小さいものである。このようなネジ本体部51の側部にはネジ溝51aが形成されている。
【0028】
ネジ溝51aは、ナピアねじ50の中心軸Lを中心として一方向に螺旋状に延在する第1溝部51a1と他方向に螺旋状に延在する第2溝部51a2とが互いに連続する態様で形成されて構成されている。
【0029】
規制片52は、ネジ本体部51の後端部に設けられた板状部材である。この規制片52は、ナピアねじ50の中心軸Lに直交する方向の幅の大きさが係合本体部31の中空部31dの内径よりも大きいものである。
【0030】
連結片53は、ネジ本体部51の前端部に設けられている。この連結片53は、ナピアねじ50の中心軸Lに直交する方向の幅がネジ本体部51の外径以下の大きさである。そして、連結片53には、ナピアねじ50の中心軸Lが通過する部分に2つの連結孔53aが設けられている。これら連結孔53aは、他の部材との連結に用いられる孔である。
【0031】
そのようなナピアねじ50は、該ナピアねじ50の中心軸Lが係合本体部31の中心軸に一致する態様で、係合本体部31の中空部31dに後方から進入しており、連結片53(連結孔53a)を通じて他の部材に連結される。
【0032】
尚、図には明示しないが、ナピアねじ50は、中心軸L回りに回転可能となる態様で支持部材に支持されてもよい。また以下においては、本体貫通孔の中心軸、出力本体部21の中心軸、係合本体部31の中心軸、ナピアねじ50の中心軸Lが一致することから、これらの中心軸をナピアねじ50の中心軸Lとして説明する。
【0033】
ところで、上記係合部材30は、上記構成の他、係合作用部33を有している。係合作用部33は、
図3に示すように、係合本体部31の側部に形成された支持孔31eに、外方から圧入されることにより設けられている。この係合作用部33には、舟形の係合片33aが設けられている。かかる係合片33aは、
図4及び
図5に示すように、ナピアねじ50のネジ溝51aに進入している。
【0034】
以上のような構成を有する往復動装置では、
図1及び
図4に示した状態において、モータ15が駆動することで係合部材30が出力部材20とともにナピアねじ50の中心軸L回りに前方から見て反時計回りに回転すると、係合片33aがネジ溝51aの第1溝部51a1を相対的に移動する。これにより、ナピアねじ50は、
図6及び
図7の実線矢印で示すように、後方に向けて移動する。
【0035】
そして、係合部材30の回転により、
図8及び
図9に示すように係合片33aが第1溝部51a1の前端部に到達すると、この係合片33aは第2溝部51a2を相対的に移動する。これにより、ナピアねじ50は、
図8及び
図9の一点鎖線矢印で示すように、前方に向けて移動する。かかる係合部材30の回転が継続されることで、係合片33aが第2溝部51a2を相対的に移動する結果、ナピアねじ50は、
図6及び
図7の一点鎖線矢印で示すように、前方に向けて移動し、再び
図1に示す状態に戻る。
【0036】
このように往復動装置においては、モータ15による駆動力が係合部材30に付与されることで該係合部材30がナピアねじ50の中心軸L回りに一方向に回転することにより、ナピアねじ50が中心軸L方向に沿って前後に往復動する。
【0037】
以上説明したように、本発明の実施の形態である往復動装置によれば、モータ15による駆動力が係合部材30に付与されることで該係合部材30がナピアねじ50の中心軸L回りに一方向に回転することにより、ナピアねじ50が中心軸Lの方向に沿って前後に往復動するので、ナピアねじ50に連結される他の部材の往復移動量を増大させるにはナピアねじ50の延在長さを増大させればよい。しかも、ナピアねじ50を従来のように装置本体に収納しておく必要はないので、装置全体の大型化を図る必要はない。従って、装置全体の大型化を抑制しつつ往復移動量の増大化を図ることができる。
【0038】
上記往復動装置によれば、他の部材との連結に用いられる連結孔53aがナピアねじ50の中心軸Lが通過する部分に設けられているので、ナピアねじ50の移動する軸心上で駆動力を付与することができ、往復動による力を効率よく伝達させることができる。
【0039】
以上本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
すなわち、上述した実施の形態では、駆動機構1を構成する機構本体10は本体貫通孔を有していたが、本発明においては、駆動源による駆動力が係合部材に付与されることで該係合部材がネジ部材の中心軸L回りに一方向に回転することができれば、駆動機構の構成は特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1 駆動機構
10 機構本体
15 モータ
15a 出力軸
20 出力部材
21 出力本体部
21a 中空部
22 出力伝達部
22a 出力ギア部
30 係合部材
31 係合本体部
31d 中空部
32 係合規制部
33 係合作用部
33a 係合片
50 ナピアねじ
51 ネジ本体部
51a ネジ溝
51a1 第1溝部
51a2 第2溝部
52 規制片
53 連結片
53a 連結孔
L 中心軸