特開2018-163008(P2018-163008A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-163008(P2018-163008A)
(43)【公開日】2018年10月18日
(54)【発明の名称】ひずみ計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20180921BHJP
【FI】
   G01B7/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-59591(P2017-59591)
(22)【出願日】2017年3月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】大櫃 和成
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀高
(72)【発明者】
【氏名】今田 栄
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA30
2F063CB20
2F063CC10
2F063DA05
2F063DD03
2F063HA01
2F063LA23
2F063PA01
(57)【要約】
【課題】高温環境下における電極の酸化により、静電容量式ひずみ計の静電容量が変化しても、より正確なひずみ量を計測できるひずみ計測システムを提供すること。
【解決手段】500℃以上の高温下に晒される部位を挟むように設置される第1台座10A及び第2台座10Bと、一方の電極が第1台座10Aに他方の電極が第2台座10Bに設置される第1の静電容量式ひずみ計20と、双方の電極が第2台座10Bに設置されると共に、電極間の間隔が変化しないように設置される第2の静電容量式ひずみ計30とを備えるひずみ計測システム1であって、計測装置50は、第2の静電容量式ひずみ計30の計測値を用いて算出したひずみ量に基づいて、第1の静電容量式ひずみ計20の計測値を用いて算出したひずみ量を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
500℃以上の高温下に晒される部位のひずみを計測するためのひずみ計測システムであって、
前記部位を挟むように設置される第1台座及び第2台座と、
一方の電極が第1台座に、他方の電極が第2台座に設置される第1の静電容量式ひずみ計と、
双方の電極が第2台座に設置されると共に、電極間の間隔が変化しないように設置される第2の静電容量式ひずみ計と、
前記第1の静電容量式ひずみ計と、前記第2の静電容量式ひずみ計の静電容量値を計測し、前記静電容量値に基づいてひずみ量を算出する計測装置とを備えるひずみ計測システムであって、
前記計測装置は、前記第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量に基づいて、前記第1の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量を補正する、ひずみ計測システム。
【請求項2】
前記計測装置は、前記第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極に発生する酸化被膜量に基づく、みかけのひずみ量を算出する、請求項1に記載のひずみ計測システム。
【請求項3】
前記酸化被膜量は、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極の酸化膨出量と前記電極の酸化浸食量とを含む、請求項2に記載のひずみ計測システム。
【請求項4】
前記第1の静電容量式ひずみ計のうち、前記第2台座に設置される電極と、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極のうち一方の電極とが一体化している、請求項1〜3のいずれか1項に記載のひずみ計測システム。
【請求項5】
前記第1台座と前記第2台座とが、発電設備のボイラ及び/又は配管の溶接部を挟むように設置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のひずみ計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみ計測システムに関する。とりわけ、発電設備のような高温環境下におけるひずみを計測するためのひずみ計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管溶接部のひずみ測定において溶接部を跨ぐ配管表面にひずみ計を取り付けて、溶接部のひずみを計測する方法が知られている。とりわけ、高温環境下で発生するひずみを計測する方法として、特許文献1は、電極面を高温環境下においても変化しない空気を媒体として近接させることで、この電極間の静電容量からひずみ量を算定する計測方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4926543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量の変位からひずみ量を算出するにあたっては、予め電極に酸化物が形成されていないひずみ計による計測結果に基づき、「ひずみ量と静電容量値の特性曲線」を求め、この特性曲線を用いて、測定した静電容量値からひずみ量を算出することとなる。
【0005】
しかし、高温環境下においては、ひずみ計の電極面の金属と空気雰囲気中の酸素原子との結合により、電極面に酸化物が形成される。この酸化物は誘電体として振る舞うことから、酸化物形成前の電極間の静電容量と、酸化物形成後の電極間の静電容量とでは、値が異なることとなる。
【0006】
とりわけ、発電設備のような高温環境下においては、ひずみ計が計測する年間のひずみ量に対して、ひずみ計の電極に生成される酸化被膜の厚さが、10%前後に及ぶことがある。
【0007】
このため、予め電極に酸化物が形成されていないひずみ計による計測結果に基づく特性曲線とは、特性曲線の形状が変わってくる。従って、電極面に酸化物が形成されたひずみ計による計測結果を、電極面に酸化物が形成されていないひずみ計による計測結果に基づく特性曲線に当てはめても、正しいひずみ量は予測できない。
【0008】
本発明は、高温環境下における電極の酸化により、静電容量式ひずみ計の静電容量が変化しても、より正確なひずみ量を計測できるひずみ計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0010】
(1) 500℃以上の高温下に晒される部位のひずみを計測するためのひずみ計測システムであって、前記部位を挟むように設置される第1台座及び第2台座と、一方の電極が第1台座に、他方の電極が第2台座に設置される第1の静電容量式ひずみ計と、双方の電極が第2台座に設置されると共に、電極間の間隔が変化しないように設置される第2の静電容量式ひずみ計と、前記第1の静電容量式ひずみ計と、前記第2の静電容量式ひずみ計の静電容量値を計測し、前記静電容量値に基づいてひずみ量を算出する計測装置とを備えるひずみ計測システムであって、前記計測装置は、前記第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量に基づいて、前記第1の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量を補正する、ひずみ計測システム。
【0011】
(1)によれば、電極間の間隔が変化しない第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出した、みかけのひずみ量を用いて、実際のひずみを計測する第1の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量を補正するため、双方の静電容量式ひずみ計を設置した環境に由来する誤差の影響を低減することができる。
【0012】
(2) 前記計測装置は、前記第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極に発生する酸化被膜量に基づく、みかけのひずみ量を算出することが好ましい。
【0013】
(2)によれば、ひずみ計測に用いたひずみ計のひずみ量計測値から、ひずみ計の電極の酸化のみによるみかけ上のひずみ量計測値を差し引くことにより、ひずみ自体のみによるひずみ量計測値を算出することができる。
【0014】
(3) 前記酸化被膜量は、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極の酸化膨出量と前記電極の酸化浸食量とを含むことが好ましい。
【0015】
(3)によれば、実際のひずみの計測に用いたひずみ計のひずみ量計測値から、ひずみ計の電極の酸化と浸食双方の影響を除外したひずみ量計測値を算出することができる。
【0016】
(4) 前記第1の静電容量式ひずみ計のうち、前記第2台座に設置される電極と、前記第2の静電容量式ひずみ計の電極のうち一方の電極とが一体化していることが好ましい。
【0017】
(4)によれば、本発明の実施形態に係るひずみ計測システムの構成を単純化することができる。
【0018】
(5) 前記第1台座と前記第2台座とが、発電設備のボイラ及び/又は配管の溶接部を挟むように設置されることが好ましい。
【0019】
(5)によれば、発電設備のような高温環境下における部位のひずみを、より正確に計測することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高温環境下における電極の酸化により、静電容量式ひずみ計の静電容量が変化しても、より正確なひずみ量を計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るひずみ計測システムの全体構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るひずみ計測システムの配線図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る静電容量式ひずみ計の電極に発生する酸化被膜を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る静電容量式ひずみ計の電極に発生する酸化被膜と電極の浸食を示す図である。
図5】本発明の第3実施形態に係るひずみ計測システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について、図1図3を参照しながら詳述する。
図1は、第1実施形態に係るひずみ計測システム1の全体構成を示す図である。ひずみ計測システム1は、第1台座10A、第2台座10B、主電極20、補助電極30、切替器40、計測装置50、同軸ケーブル60を備える。更に、主電極20は第1電極20Aと第2電極20Bとを備え、補助電極30は第3電極30Aと第4電極30Bとを備える。ここでは、必要に応じて、第1電極20Aと第2電極20Bとを「主電極20」と総称し、第3電極30Aと第4電極30Bとを「補助電極30」と総称することもある。
【0023】
第1台座10A及び第2台座10Bは、例えば配管のような部材70に備わる溶接部80を挟むように、部材70上に設置される。第1台座10A及び第2台座10Bは、後述の主電極20及び補助電極30を安定的に設置するための土台である。また、第1台座10A及び第2台座10Bは、熱膨張や腐食しにくい材料、例えば、窒素入りオーステナイトステンレス鋼の一種であるSUS316Nや、鉄とニッケルの合金であるインバー(登録商標)を用いて製造される。なお、部材70は、配管に限定されない。例えば、発電設備を構成するボイラの壁面であってもよい。
【0024】
主電極20は、上記のように、第1電極20Aと第2電極20Bとを備える。第1電極20Aは第1台座10A上に、第2電極20Bは第2台座10B上に、T字型の電極の長辺が向き合うように設置される。主電極20は、主として、溶接部80におけるひずみ量を計測するための電極である。また、主電極20の静電容量をCmainとする。
【0025】
補助電極30は、上記のように、第3電極30Aと第4電極30Bとを備える。第3電極30Aと第4電極30Bとは、互いの距離が固定されると共に、第2台座10B上に、T字型の電極の長辺が向き合うように設置される。補助電極30は、本実施形態においては、主として、高温環境下において電極に生成される酸化被膜に由来する見かけのひずみ量を計測するための電極である。また、補助電極30の静電容量をCsubとする。
【0026】
なお、第1実施形態においては、主電極20の第2電極20Bと補助電極30の第3電極30Aとは一体化している。具体的には、T字型の第2電極20Bの短辺と、T字型の第3電極30Aの短辺とが、各々の中心軸が一致するように一体化している。
【0027】
また、本実施形態においては、主電極20と補助電極30とは、白金を用いて製造されていることが好ましく、この場合、上記の酸化被膜は酸化白金(PtO)からなる。しかし、本発明はこれには限定されない。また、酸化白金が生成される高温環境として、ここでは、主電極20と補助電極30の雰囲気温度が500℃以上である環境を想定しているが、本発明はこれには限定されない。
【0028】
主電極20の第1電極20Aと計測装置50とは、切替器40を経由して、同軸ケーブル60Aにより互いに接続される。一体化した主電極20の第2電極20B及び補助電極30の第3電極30Aと、計測装置50とは、切替器40を経由して、同軸ケーブル60Bにより互いに接続される。補助電極30の第4電極30Bと計測装置50とは、切替器40を経由して、同軸ケーブル60Cにより互いに接続される。この同軸ケーブル60A〜60Cの配線の態様については、図2を用いて後述する。なお、同軸ケーブル60A〜60C、延いては後述の同軸ケーブル60A〜60Iを、ここでは「同軸ケーブル60」と総称することがある。
【0029】
切替器40は、計測装置50が、静電容量値を計測し、延いてはひずみ量を算出する対象を、主電極20と補助電極30との間で切り替える機器である。
【0030】
計測装置50は、LCRメータと自動平衡ブリッジとを備え、主電極20及び補助電極30の静電容量値を計測し、延いては各々のひずみ量を算出する。計測装置50は、更に、後述の方法により、補助電極30の測定値を用いて算出された見かけのひずみ量を用いて、主電極20の測定値を用いて算出されたひずみ量を補正する。具体的には、計測装置50は、補助電極30の静電容量値を計測し、この静電容量値を用いて電極に生成された酸化被膜に由来する見かけのひずみ量を算出する。また、計測装置50は、主電極20の静電容量値を計測し、この静電容量値を用いて、主電極20のひずみ量を算出する。更に、計測装置50は、主電極20のひずみ量から見かけのひずみ量を差し引いて、高温環境下での電極の酸化の影響を取り除くことにより、溶接部80における真のひずみ量を算出する。
【0031】
図2は、第1実施形態に係るひずみ計測システムの配線の態様を示す。
上記のように、主電極20の第1電極20Aには、同軸ケーブル60Aが、一体化された主電極20の第2電極20Bと補助電極30の第3電極30Aには、同軸ケーブル60Bが、補助電極30の第4電極30Bには、同軸ケーブル60Cが接続される。
【0032】
切替器40の内部において、同軸ケーブル60Aは、切り替えスイッチ45Aを経て、分岐点P1で、同軸ケーブル60Dと同軸ケーブル60Eとに分岐する。また、同軸ケーブル60Aのシールドと、同軸ケーブル60Dのシールドとは、導線47Aにより互いに接続されている。
【0033】
同様に、切替器40の内部において、同軸ケーブル60Bは、分岐点P2で、同軸ケーブル60Fと同軸ケーブル60Gとに分岐する。
【0034】
また、切替器40の内部において、同軸ケーブル60Cは、切り替えスイッチ45Bを経て、接続点P3で、同軸ケーブル60Gに接続する。接続点P3は、分岐点P2にも連絡しているため、同軸ケーブル60Cは、接続点P3及び分岐点P2を経由することにより、同軸ケーブル60Fにも接続する。
【0035】
計測装置50のLCRメータは、同軸ケーブル60Dを用いて、High側の電流値(Hc)を計測する。また、計測装置50のLCRメータは、同軸ケーブル60Eを用いて、High側の電圧値(Hp)を計測する。また、計測装置50のLCRメータは、同軸ケーブル60Fを用いて、Low側の電圧値(Lp)を計測する。また、計測装置50のLCRメータは、同軸ケーブル60Gを用いて、Low側の電流値(Lc)を計測する。これらの計測値を用いて、計測装置50のLCRメータは、主電極20の静電容量値及び補助電極30の静電容量値を計測する。
【0036】
計測装置50のLCRメータが、静電容量値を計測する対象を、主電極20と補助電極30とで切り替える際は、切替器40の切り替えスイッチ45A及び45Bを用いる。具体的には、計測装置50のLCRメータが、主電極20の静電容量値を計測する際は、図2に記載のように、切り替えスイッチ45Aを閉じ、切り替えスイッチ45Bを開く。一方で、計測装置50のLCRメータが、補助電極30の静電容量値を計測する際は、図2の矢印Sで示されるように、切り替えスイッチ45Aを開く。
【0037】
続いて、図3を参照しながら、計測装置50による、上記のみかけのひずみ量の算出方法について詳述する。
図3は、補助電極30の第3電極30A及び第4電極30Bに酸化被膜が発生する前と発生した後の、各寸法を示す。図3の(A)に示すように、第3電極30A及び第4電極30Bの電極板の面積をSSub、電極板間の距離をdとする。また、図3の(B)に示すように、高温環境下において第3電極30A及び第4電極30Bの各々が酸化し、第3電極30A及び第4電極30Bが膨出するように酸化被膜が発生した結果、電極板間の距離がdとなり、各々の酸化被膜の厚さがdとなったとする。
【0038】
真空の誘電率をε、空気の比誘電率をεとすると、図3の(A)に示す酸化被膜発生前における補助電極30の静電容量値Csub0は、以下の式(1)で表わされる。
【0039】
【数1】
【0040】
その後、図3(B)に示すように酸化被膜が発生した後の、補助電極30の静電容量値をCsub0’、補助電極30中の空気部分による静電容量値をCsub1、酸化被膜部分による静電容量値をCsub2とすると、補助電極30によって構成されるコンデンサは、空気部分によって構成されるコンデンサと、酸化被膜部分によって構成されるコンデンサとが直列に接続されたものとみなされるため、Csub0’は、以下の式(2)で表わされる。
【0041】
【数2】
【0042】
ここで、式(1)と同様に、補助電極30中の空気部分による静電容量値Csub1は、以下の式(3)で表わされる。
【0043】
【数3】
【0044】
また、補助電極30中の酸化被膜部分による静電容量値Csub2は、酸化被膜の比誘電率をε’とすると、以下の式(4)で表わされる。
【0045】
【数4】
【0046】
式(3)と式(4)を式(2)に代入すると、以下の式(2−1)となる。
【0047】
【数5】
【0048】
ここで、空気の誘電率ε=1.00059を1に近似すると、式(2−1)は、以下の式(2−2)となる。
【0049】
【数6】
【0050】
式(2−2)の右辺の分母と分子に2dを乗じると、式(2−2)は、以下の式(2−3)となる。
【0051】
【数7】
【0052】
式(2−3)の右辺の分母と分子をε’で除すると、式(2−3)は、以下の式(2−4)となる。
【0053】
【数8】
【0054】
ここで、図3より、d=d+2dであるから、式(2−4)にd=d−2dを代入すると、以下の式(2−5)となる。
【0055】
【数9】
【0056】
式(2−5)の右辺の分母中の2dを含む項を単一項にまとめると、以下の式(2−6)となる。
【0057】
【数10】
【0058】
ここで、δ=2d・(1−1/ε’)とすると、式(2−6)は、以下の式(2−7)となる。
【0059】
【数11】
【0060】
式(2−7)の右辺の分母より、δは電極面の酸化による電極間隔の減縮分に相当することが分かる。また、δ=2d・(1−1/ε’)であるから、δは、電極の面積及び電極間隔の初期値に依存しない。
【0061】
式(2−7)より、δは、d、ε、SSub、Csub0’を用いて、以下の式(2−8)により表わされる。
【0062】
【数12】
【0063】
式(1)を用いて式(2−8)を書き換えた後、ε=1.0を代入すると、以下の式(5)となる。
【0064】
【数13】
【0065】
この式(5)に対し、真空の誘電率ε、補助電極30の電極板の面積SSub、補助電極30に酸化被膜が発生する前の静電容量値Csub0、酸化被膜が発生した後の静電容量値Csub0’を代入することにより、見かけのひずみ量δが算出される。
【0066】
計測装置50は、主電極20を用いて計測されるひずみ量に、この見かけのひずみ量δを加算することにより、高温環境下による電極の酸化の影響が除去された、溶接部80自身のひずみ量を算出することが可能となる。
【0067】
具体的には、酸化被膜発生前における主電極20の静電容量値CMain0は、真空の誘電率をε、空気の比誘電率をε、電極板の面積をSMain、電極板間の距離をdと、以下の式(6)で表わされる。
【0068】
【数14】
【0069】
また、酸化被膜が発生した後の主電極20の静電容量値CMain0’は、溶接部80における真のひずみ量をΔdとすると、以下の式(7)で表わされる。
【0070】
【数15】
【0071】
式(7)を、Δdを左辺とする式に変換すると、以下の式(8)となる。
【0072】
【数16】
【0073】
この式(8)のδに、式(5)を用いて算出されたδの値を代入することにより、溶接部80における芯のひずみ量を算出することが出来る。
【0074】
〔第1実施形態の効果〕
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、電極間の間隔が変化しない第2の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出した、みかけのひずみ量を用いて、実際のひずみを計測する第1の静電容量式ひずみ計の計測値を用いて算出したひずみ量を補正するため、双方の静電容量式ひずみ計を設置した環境に由来する誤差の影響を低減することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、ひずみ計測に用いたひずみ計のひずみ量計測値から、ひずみ計の電極の酸化のみによるみかけ上のひずみ量計測値を差し引くことにより、ひずみ自体のみによるひずみ量計測値を算出することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、主電極20の第2電極20Bと、補助電極30の第3電極30Aとが一体化されているため、ひずみ計測システム1の構成を単純化することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、第1台座10Aと第2台座10Bとが、発電設備のボイラ及び/又は配管の溶接部80を挟むように設置されている。これにより、発電設備のような高温環境下における部位のひずみを、より正確に計測することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について、図4を参照しながら詳述する。
第2実施形態に係るひずみ計測システム1Aの全体構成は、第1実施形態に係るひずみ計測システム1の全体構成と基本的には同一であるため、図面と各構成要素の機能の記載は省略する。
【0079】
第1実施形態に係るひずみ計測システム1においては、計測装置50は、補助電極30の電極に発生する酸化被膜が、酸化膨出のみに由来することを前提に、見かけのひずみ量を算出していた。一方、第2実施形態に係るひずみ計測システム1Aにおいては、これとは異なり、計測装置50は、補助電極30の電極に発生する酸化被膜が、酸化膨出と酸化浸食双方に由来することを前提に、見かけのひずみ量を算出する。
【0080】
図4は、補助電極30の第3電極30A及び第4電極30Bに酸化被膜が発生する前と発生した後の、各寸法を示す。図4の(A)に示すように、第3電極30A及び第4電極30Bの電極板の面積をSSub、電極板間の距離をdとする。また、図4の(B)に示すように、高温環境下において第3電極30A及び第4電極30Bの各々が酸化し、第3電極30A及び第4電極30Bの各々に、酸化膨出と酸化浸食の双方に由来する酸化被膜が発生した結果、電極板間の距離がdとなり、酸化膨出に由来する酸化被膜の各々の厚さがdに、酸化浸食に由来する酸化被膜の各々の厚さがdになったとする。
【0081】
真空の誘電率をε、空気の比誘電率をεとすると、図4の(A)に示す酸化被膜発生前における補助電極30の静電容量値Csub0は、以下の式(1A)で表わされる。
【0082】
【数17】
【0083】
その後、図4の(B)に示すように酸化被膜が発生した後の、補助電極30の静電容量値をCsub0”、補助電極30中の空気部分による静電容量値をCsub1、酸化被膜部分による静電容量値をCsub2’とすると、補助電極30によって構成されるコンデンサは、空気部分によって構成されるコンデンサと、酸化被膜部分によって構成されるコンデンサとが直列に接続されたものとみなされるため、Csub0”は、以下の式(2)で表わされる。
【0084】
【数18】
【0085】
ここで、式(1A)と同様に、補助電極30中の空気部分による静電容量値Csub1は、以下の式(3A)で表わされる。
【0086】
【数19】
【0087】
また、補助電極30中の酸化被膜部分による静電容量値Csub2’は、酸化被膜の比誘電率をε’とすると、以下の式(4A)で表わされる。
【0088】
【数20】
【0089】
式(3A)と式(4A)を式(2A)に代入すると、以下の式(2−1A)となる。
【0090】
【数21】
【0091】
ここで、空気の誘電率ε=1.00059を1に近似すると、式(2−1A)は、以下の式(2−2A)となる。
【0092】
【数22】
【0093】
式(2−2A)の分母と分子に2d(d+d)を乗じると、式(2−2A)は、以下の式(2−3A)となる。
【0094】
【数23】
【0095】
式(2−3A)の分母と分子をε’で除すると、式(2−3A)は、以下の式(2−4A)となる。
【0096】
【数24】
【0097】
ここで、図4より、d=d+2dであるから、式(2−4A)にd=d−2dを代入すると、以下の式(2−5A)となる。
【0098】
【数25】
【0099】
式(2−5A)の右辺の分母中の2dを含む項を単一項にまとめると、以下の式(2−6A)となる。
【0100】
【数26】
【0101】
ここで、δ=2d・(1−1/ε’)、δ’=2d/ε’とすると、式(2−6A)は、以下の式(2−7A)となる。
【0102】
【数27】
【0103】
式(2−7A)の右辺の分母より、δは電極面の酸化膨出による電極間隔の減縮分に相当し、δ’は電極面の酸化浸食による電極間隔の拡大分に相当することが分かる。また、δ=2d・(1−1/ε’)、δ’=2d/ε’であるから、δ及びδ’は、電極の面積及び電極間隔の初期値に依存しない。
【0104】
式(2−7A)より、(δ−δ’)は、d、ε、SSub、Csub0”を用いて、以下の式(2−8A)により表わされる。
【0105】
【数28】
【0106】
式(1A)を用いて式(2−8A)を書き換えた後、ε=1.0を代入すると、以下の式(5A)となる。
【0107】
【数29】
【0108】
この式(5A)に対し、真空の誘電率ε、補助電極30の電極板の面積SSub、補助電極30に酸化被膜が発生する前の静電容量値Csub0、酸化被膜が発生した後の静電容量値Csub0”を代入することにより、見かけのひずみ量(δ−δ’)が算出される。計測装置50は、主電極20を用いて計測されるひずみ量に、この見かけのひずみ量(δ−δ’)を加算することにより、高温環境下による電極の酸化の影響が除去された、溶接部80自身の真のひずみ量を算出することが可能となる。
【0109】
具体的には、酸化被膜発生前における主電極20の静電容量値CMain0は、真空の誘電率をε、空気の比誘電率をε、電極板の面積をSMain、電極板間の距離をdとすると、以下の式(6A)で表わされる。
【0110】
【数30】
【0111】
また、酸化被膜が発生した後の主電極20の静電容量値CMain0’は、溶接部80における真のひずみ量をΔdとすると、以下の式(7A)で表わされる。
【0112】
【数31】
【0113】
式(7A)を、Δdを左辺とする式に変換すると、以下の式(8A)となる。
【0114】
【数32】
【0115】
この式(8A)の(δ−δ’)に、式(5A)を用いて算出された(δ−δ’)の値を代入することにより、溶接部80における芯のひずみ量を算出することが出来る。
【0116】
〔第2実施形態の効果〕
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が奏される。これに加えて、実際のひずみの計測に用いたひずみ計のひずみ量計測値から、ひずみ計の電極の酸化と浸食双方の影響を除外したひずみ量計測値を算出することができる。
【0117】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について、図5を参照しながら詳述する。
図5は、第3実施形態に係るひずみ計測システム1Bの全体構成を示す図である。なお、第1実施形態に係るひずみ計測システム1と同一の構成要素については、同一の符号を用いて示し、その機能の説明を省略する。
【0118】
第3実施形態に係るひずみ計測システム1Bは、第1実施形態に係るひずみ計測システム1及び第2実施形態に係るひずみ計測システム1Aと異なり、主電極20の第2電極20Bと、補助電極30の第3電極30Aとが一体化しておらず、個別独立に存在する。これに伴い、各電極と切替器40とを接続する同軸ケーブル60として、主電極20の第1電極20Aと切替器40と接続する同軸ケーブル60A、補助電極30の第4電極30Bと切替器40とを接続する同軸ケーブル60Cに加えて、主電極20の第2電極20Bと切替器40とを接続する同軸ケーブル60Hと、補助電極30の第3電極30Aと切替器40とを接続する同軸ケーブル60Iとが存在する。
【0119】
計測装置50は、同軸ケーブル60Aと同軸ケーブル60Hとを用いて、主電極20の静電容量値を計測し、この静電容量値に基づくひずみ量を算出する。また、計測装置50は、同軸ケーブル60Cと同軸ケーブル60Iとを用いて、補助電極30の静電容量値を計測し、この静電容量値に基づくひずみ量を算出する。
【0120】
なお、計測装置50による、酸化被膜に由来する見かけのひずみ量の算出方法は、第1実施形態及び第2実施形態における計測装置50による算出方法と同一であるため、その説明を省略する。
【0121】
〔第3実施形態の効果〕
本実施形態によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果が奏される。また、主電極20の静電容量値と補助電極30の静電容量値を個別に計測することが可能であるため、切替器40の構成を単純化することができる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0123】
1 1A 1B ひずみ計測システム
10 台座
20 主電極
30 補助電極
40 切替器
50 計測装置
60 同軸ケーブル
70 部材
80 溶接部
図1
図2
図3
図4
図5