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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-167169(P2018-167169A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】脱硝触媒の再利用方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/00 20060101AFI20181005BHJP
【FI】
   B01J38/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-65886(P2017-65886)
(22)【出願日】2017年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】吉河 敏和
(72)【発明者】
【氏名】引野 健治
(72)【発明者】
【氏名】盛田 啓一郎
(57)【要約】
【課題】使用済み脱硝触媒をより有効に活用することにより、使用済み脱硝触媒の廃棄量を減らすことが可能な、脱硝触媒の再利用方法を提供すること。
【解決手段】脱硝装置60を備えた燃焼設備における使用済み脱硝触媒の再利用方法であって、第1脱硝率が必要な第1燃焼設備で使用した脱硝触媒を性能確認する工程と、前記脱硝触媒の脱硝率が、前記第1脱硝率未満であり、第2燃焼設備で必要とされる第2脱硝率以上である場合には、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備で使用する工程と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硝装置を備えた燃焼設備における使用済み脱硝触媒の再利用方法であって、
第1脱硝率が必要な第1燃焼設備で使用した脱硝触媒を性能確認する工程と、
前記脱硝触媒の脱硝率が、前記第1脱硝率未満であり、第2燃焼設備で必要とされる第2脱硝率以上である場合には、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備で使用する工程と、
を有する脱硝触媒の再利用方法。
【請求項2】
前記脱硝触媒の脱硝率が、前記第2脱硝率を下回っている場合には、前記脱硝触媒を再生した後、前記第1燃焼設備又は前記第2燃焼設備で使用する工程を更に有する、請求項1に記載の脱硝触媒の再利用方法。
【請求項3】
前記脱硝触媒を再生する際には、前記脱硝触媒の研磨を実施する、請求項2に記載の脱硝触媒の再利用方法。
【請求項4】
前記脱硝触媒は、壁厚が0.5mm以上の脱硝触媒である、請求項3に記載の脱硝触媒の再利用方法。
【請求項5】
前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備で使用する前に、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備の仕様に合わせる工程を更に有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱硝触媒の再利用方法。
【請求項6】
前記第2燃焼設備の仕様に合わせる工程は、前記脱硝触媒を切断する工程を含む、請求項5に記載の脱硝触媒の再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱硝装置を備えた燃焼設備における脱硝触媒の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所では、石炭燃焼に伴い窒素酸化物が発生するが、大気汚染防止法等の規制により、その排出は一定水準以下に抑えて排出することとなっている。そこで発電所には、窒素酸化物を還元分解するために排煙脱硝装置が設置されている。この排煙脱硝装置には、脱硝触媒が充てんされており、アンモニア(ガス)を共存させることで、高温下で還元反応を発現している。この脱硝触媒は、使用を続けていくと、シンタリング等の熱的劣化、触媒成分の被毒による化学的劣化、及び煤塵が触媒表面を覆ってしまう物理的劣化等により、性能が低下するため、性能回復が必要となり、その手法として、新品の触媒への取替えや触媒再生が行われている。触媒の再生方法としては、例えば、特許文献1に開示されるような、脱硝触媒の触媒表面が露出する各空間内に研磨材を投入してから、この脱硝触媒を二次元的又は三次元的に振とうする再生方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−161373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
国内では、例えば、約90%の脱硝率が必要な発電所と、約80%の脱硝率が必要な発電所とのように、脱硝触媒に必要とされる触媒性能には、発電所間で差がある。
更に、比較的高い脱硝率が必要とされる発電所では、脱硝率が大きく低下していない場合でも取り替えが必要な触媒があると共に、脱硝触媒は一般に単価が高いため、取り替えには高コストをもたらす。
一方で、比較的低い脱硝率しか必要とされない発電所においても、排ガス量に対してぎりぎりの触媒量しか脱硝触媒が充てんされていないため、脱硝率が大きく低下していない場合でも、取り換えが必要な触媒が存在する。
【0005】
そこで、本発明は、使用済み脱硝触媒をより有効に活用することにより、使用済み脱硝触媒の廃棄量を減らすことが可能な、脱硝触媒の再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、次に記載する構成を備えている。
【0007】
(1)脱硝装置を備えた燃焼設備における使用済み脱硝触媒の再利用方法であって、
第1脱硝率が必要な第1燃焼設備で使用した脱硝触媒を性能確認する工程と、
前記脱硝触媒の脱硝率が、前記第1脱硝率未満であり、第2燃焼設備で必要とされる第2脱硝率以上である場合には、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備で使用する工程と、
を有する脱硝触媒の再利用方法。
【0008】
(1)によれば、必要とされる脱硝率が異なる燃焼設備間で、使用済みの脱硝触媒を融通しあうことにより、脱硝触媒をより有効に活用することが可能となる。
【0009】
(2)上記の脱硝触媒の再利用方法は、前記脱硝触媒の脱硝率が、前記第2脱硝率を下回っている場合には、前記脱硝触媒を再生した後、前記第1燃焼設備又は前記第2燃焼設備で使用する工程を更に有することが好ましい。
【0010】
(2)によれば、使用による劣化の程度が大きな脱硝触媒も含めて、燃焼設備間で脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。
【0011】
(3)上記の脱硝触媒の再利用方法において、前記脱硝触媒を再生する際には、前記脱硝触媒の研磨を実施することが好ましい。
【0012】
(3)によれば、低コストで脱硝触媒の性能を十分に回復させることが可能となる。
【0013】
(4)上記の脱硝触媒の再利用方法において、前記脱硝触媒は、壁厚が0.5mm以上の脱硝触媒であることが好ましい。
【0014】
(4)によれば、脱硝触媒の壁厚が0.5mm以上あることにより、脱硝触媒の性能回復を、コストの低い研磨再生で行えることとなり、燃焼設備の総運用コストを下げることができる。
【0015】
(5)上記の脱硝触媒の再利用方法は、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備で使用する前に、前記脱硝触媒を前記第2燃焼設備の仕様に合わせる工程を更に有することが好ましい。
【0016】
(5)によれば、実際に使用する脱硝触媒の仕様が互いに異なる燃焼設備間でも、使用済み脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。
【0017】
(6)上記の脱硝触媒の再利用方法において、前記第2燃焼設備の仕様に合わせる工程は、前記触媒を切断する工程を含むことが好ましい。
【0018】
(6)によれば、実際に使用する脱硝触媒の長さが互いに異なる燃焼設備間でも、使用済み脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。とりわけ、脱硝触媒を研磨する場合、脱硝触媒の研磨に必要なコストは、脱硝触媒の長さに左右されないため、脱硝触媒を研磨してから切断することにより、燃焼設備の運用コストを下げることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、必要とされる脱硝率が異なる燃焼設備間で使用済み脱硝触媒を融通しあうことにより、より有効に使用済み脱硝触媒を活用し、廃棄する脱硝触媒の量を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る脱硝触媒の再利用方法を実施する火力発電システムの全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る脱硝触媒の再利用方法を実施する火力発電システムに備わる脱硝装置の例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る脱硝触媒の再利用方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る脱硝触媒の再利用方法の運用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る脱硝触媒の再利用方法を実行する燃焼設備の例である、火力発電システム1の全体構成図である。
【0022】
図1に示すように、火力発電システム1は、燃焼装置としてのボイラ10と、微粉炭機20と、排気路L1と、空気予熱器30と、熱回収器としてのガスヒータ40と、集塵装置50と、脱硝装置60と、誘引通風機70と、脱硫装置80と、加熱器としてのガスヒータ90と、煙突100と、を備える。
【0023】
ボイラ10は、燃料としての微粉炭を空気と共に燃焼させる。ボイラ10において、微粉炭が燃焼することにより排ガスが発生する。なお、微粉炭が燃焼することによって、クリンカアッシュ及びフライアッシュ等の石炭灰が生成する。ボイラ10において生成するクリンカアッシュは、ボイラ10の下方に配置されるクリンカホッパ11に排出されてから、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。
【0024】
ボイラ10は、全体として略逆U字状に形成される。ボイラ10において生成する排ガスは、ボイラ10の形状に沿って逆U字状に移動する。ボイラ10の排ガスの出口付近における排ガスの温度は、例えば300〜400℃である。
【0025】
微粉炭機20は、図示しない石炭バンカから供給される石炭を、微細な粒度に粉砕して微粉炭を形成する。微粉炭機20は、微粉炭と空気とを混合することにより、微粉炭を予熱及び乾燥させる。微粉炭機20において形成された微粉炭は、エアーが吹きつけられることにより、ボイラ10に供給される。
【0026】
排気路L1は、上流側がボイラ10に接続される。排気路L1は、ボイラ10において発生する排ガスが流通する流路である。
【0027】
空気予熱器30は、排気路L1に配置される。空気予熱器30は、排ガスと図示しない押込式通風機から送り込まれる燃焼用の空気との間で熱交換を行い、排ガスから熱回収する。燃焼用の空気は、空気予熱器30において加熱されてからボイラ10に供給される。
【0028】
ガスヒータ40は、排気路L1における空気予熱器30の下流側に配置される。ガスヒータ40には、空気予熱器30において熱回収された排ガスが供給される。ガスヒータ40は、排ガスから更に熱回収する。
【0029】
集塵装置50は、排気路L1におけるガスヒータ40の下流側に配置される。集塵装置50には、ガスヒータ40において熱回収された排ガスが供給される。集塵装置50は、電極に電圧を印加することによって排ガス中の石炭灰(フライアッシュ)等の煤塵を収集する装置である。集塵装置50において捕集されるフライアッシュは、図示しない石炭灰回収サイロに搬送される。集塵装置50における排ガスの温度は、例えば80〜120℃である。
【0030】
脱硝装置60は、排気路L1における集塵装置50の下流側に配置される。脱硝装置60には、集塵装置50において煤塵が収集された後の排ガスが供給される。脱硝装置60は、脱硝触媒によって排ガスから窒素酸化物を除去する。脱硝装置60において用いられる脱硝触媒については、後段で詳述する。脱硝装置60における排ガスの温度は、例えば130〜200℃である。
【0031】
脱硝装置60では、選択接触還元法によって排ガスから窒素酸化物を除去する。選択接触還元法によれば、還元剤及び脱硝触媒によって窒素酸化物から窒素及び水を生成することで、排ガスから効率的に窒素酸化物を除去することができる。選択接触還元法において用いられる還元剤は、アンモニア及び尿素の少なくとも一方を含む。還元剤としてアンモニアを用いる場合、アンモニアガス、液体アンモニア及びアンモニア水溶液のいずれの状態のアンモニアを用いてもよい。
【0032】
より具体的には、脱硝装置60は、導入された排ガスに対してアンモニアガスを注入してから、その混合ガスを、脱硝触媒を固定したハニカム成形体や脱硝触媒を担持させたアルミナ繊維等の繊維に接触させる構成とすることができる。なお、脱硝装置60の構成例については後述する。
【0033】
誘引通風機70は、排気路L1における脱硝装置60の下流側に配置される。誘引通風機70は、脱硝装置60において窒素酸化物を除去した排ガスを、一次側から取り込んで二次側に送り出す。
【0034】
脱硫装置80は、排気路L1における誘引通風機70の下流側に配置される。脱硫装置80には、誘引通風機70から送り出された排ガスが供給される。脱硫装置80は、排ガスから硫黄酸化物を除去する。詳しくは、脱硫装置80は、排ガスに石灰石と水との混合液(石灰石スラリー)を吹き付けることによって、排ガスに含まれる硫黄酸化物を混合液に吸収させて、排ガスから硫黄酸化物を除去する。脱硫装置80における排ガスの温度は、例えば50〜120℃である。
【0035】
ガスヒータ90は、排気路L1における脱硫装置80の下流側に配置される。ガスヒータ90には、脱硫装置80において硫黄酸化物が除去された排ガスが供給される。ガスヒータ90は、排ガスを加熱する。ガスヒータ40及びガスヒータ90は、排気路L1における、空気予熱器30と集塵装置50との間を流通する排ガスと、脱硝装置60と脱硫装置80との間を流通する排ガスと、の間で熱交換を行うガスガスヒータとして構成してもよい。
【0036】
煙突100は、排気路L1の下流側が接続される。煙突100には、ガスヒータ90において加熱された排ガスが導入される。煙突100に導入された排ガスは、ガスヒータ90によって加熱されていることから、煙突効果によって煙突100の上部から効果的に排出される。また、ガスヒータ90において排ガスが加熱されることで、煙突100の上方において水蒸気が凝縮して白煙が生じるのを防ぐことができる。煙突100の出口付近における排ガスの温度は、例えば110℃である。
【0037】
図2は、上記の脱硝装置60の構成例を示す。脱硝装置60は、図2に示すように、脱硝反応器61と、この脱硝反応器61の内部に配置される複数段の脱硝触媒層62とを備える。
【0038】
脱硝反応器61は、脱硝装置60における脱硝反応の場となる。
脱硝触媒層62は、図2に示すように、例として、脱硝触媒としての複数のハニカム触媒622を含んで構成される。より詳細には、脱硝触媒層62は、複数のケーシング621と、これら複数のケーシング621に収容される複数のハニカム触媒622と、シール部材623と、を備える。
【0039】
ケーシング621は、一端及び他端が開放された角筒状の金属部材により構成される。ケーシング621は、開放された一端及び他端が脱硝反応器61における排ガスの流路に向かい合うように、つまり、ケーシング621の内部を排ガスが流通するように配置される。また、複数のケーシング621は、脱硝反応器61における排ガスの流路を塞ぐように当接した状態で連結されて配置される。
【0040】
ハニカム触媒622は、長手方向に延びる複数の排ガス流通穴624が形成された長尺状(直方体状)に形成される。複数のハニカム触媒622は、排ガス流通穴624の延びる方向が排ガスの流路に沿うように配置される。本実施形態では、複数のハニカム触媒622は、ケーシング621に収容された状態で脱硝反応器61の内部に配置される。
【0041】
シール部材623は、短手方向に隣り合って配置されるハニカム触媒622の間に配置され、隣り合って配置されるハニカム触媒622の間の隙間に排ガスが流入することを防ぐ。本実施形態では、シール部材623は、導電性を有するシート状部材により構成され、ハニカム触媒622の長手方向の一端側及び他端側の所定の長さの部分(例えば、端部から150mm)に巻きつけられている。
【0042】
シール部材623としては、アルミナやシリカを主成分とした無機繊維及びバインダーに導電性繊維や導電性を有するフィラーを混合して構成したセラミックペーパを用いることができる。
【0043】
以上の脱硝触媒層62において、ハニカム触媒622としては、例えば、150mm×150mm×860mmの直方体形状で目開き6mm×6mmの排ガス流通穴が400個(20×20)形成されたものが用いられる。また、ケーシング621としては、このハニカム触媒622を72本(縦6本×横12本)収容可能なものが用いられる。そして、一層の脱硝触媒層62には、このケーシング621が120〜150個用いられる。即ち、一層の脱硝触媒層62には、9000本から10000本のハニカム触媒622が設置される。
【0044】
後述のように、使用済み脱硝触媒の脱硝率を計測した際、脱硝率が80%に満たなかった場合には、使用済み脱硝触媒の再生処理として、使用済み触媒を研磨する。これを見越して、ハニカム触媒622の壁厚は、研磨に耐え得るよう、0.5mm以上とすることが好ましい。更に好ましくは、ハニカム触媒622の壁厚は、1.0mm以上とする。あるいは、ハニカム触媒622のセル間の壁厚を、外側の壁厚と比べて、20%以上にすることが好ましい。更に好ましくは、セル間の壁厚を、外側の壁厚と比べて、40%以上とする。
【0045】
現在、発明者らは、研磨再生として、100μm程度の研磨を実施しているが、触媒の劣化状況(シリカ層の厚さ)によっては、50μmや10μm程度の研磨でも、触媒の性能が目標性能まで回復する可能性がある。
一方、壁厚については、発明者らは、現状、実測0.8mmの触媒を研磨した実績がある。新品触媒の最小壁厚としては0.6mmのものがあるが、ごく表面層を研磨するレベル、すなわち10μm研磨であれば、今後、0.5mmの壁厚の新品触媒が製造されることとなっても、研磨可能であると考える。
以上のことから、上記のように、ハニカム触媒622の壁厚は0.5mm以上とすることが好ましく、1.0mm以上とすることが更に好ましい。また、ハニカム触媒622の外側の壁厚を2.4mmと仮定すると、セル間の壁厚は0.5/2.4=20%以上とすることが好ましく、1.0/2.4=40%以上とすることが更に好ましい。
【0046】
図3は、本発明に係る使用済み脱硝触媒の再利用方法のフローを示す。
ステップS1において、第1燃焼設備で使用した脱硝触媒の性能を確認する。具体的には、例えば、脱硝触媒層62の各層から1本ずつハニカム触媒622を抜き出し、各々の脱硝率を測定する。脱硝率の測定方法としては、例えば、触媒反応装置を用いてNH−SCR反応を行わせ、触媒層を通過したガスのうち、NO、NH、NO、NOの濃度を計測し、これらの濃度を用いて、脱硝率を算出することが可能である。
【0047】
ステップS2において、抜き出したハニカム触媒622の脱硝率が90%以上であった場合(S2:YES)には、処理はステップS3に移行する。抜き出したハニカム触媒622の脱硝率が90%に満たなかった場合(S2:NO)には、処理はステップS4に移行する。
【0048】
ステップS3において、脱硝率を測定したハニカム触媒を含む脱硝触媒層62について、第1燃焼設備での使用を継続する。その後、処理は、ステップS1に戻る(リターン)。
【0049】
ステップS4において、抜き出したハニカム触媒622の脱硝率が80%以上であった場合(S4:YES)には、処理はステップS5に移行する。抜き出したハニカム触媒622の脱硝率が80%に満たなかった場合(S4:NO)には、処理はステップS6に移行する。
【0050】
ステップS5において、脱硝率を測定したハニカム触媒を含む脱硝触媒層62が収容する全脱硝触媒の仕様を、第2燃焼設備で求められる仕様と照らし合わせ、必要に応じて、第2燃焼設備で求められる仕様に合わせ加工する。
【0051】
具体的には、まず、脱硝触媒の長さ、及び、セル数について、現在の値を計測し、第2燃焼設備で求められる仕様と照らし合わせる。これは、脱硝触媒の触媒長さ及びセル数が、移動先の第2燃焼設備の既設触媒の使用と異なると、圧力損失の影響が発生するためである。具体的には、脱硝触媒の長さの増加に概ね比例して、圧力損失は増加する。また、セル数の増加(セル内流速の増加)の概ね2乗に比例して、圧力損失は増加する。
【0052】
更に、脱硝触媒の単位ガス接触面積当たりの処理ガス流量値であるAV値、脱硝触媒層中のガス流速であるLVA値について、現在の値を計測・算出し、第2燃焼設備で求められる仕様と照らし合わせる。これは、ユニットにより処理ガス量が違うため、脱硝触媒の移動先である第2燃焼設備のガス条件で必要性能を満足するか、AV値、LVA値を確認するため、事前に試験を実施するものである。
ここで、脱硝触媒の表面積をA(m)、処理ガス量をG(mN/h)とすると、
AV(m/h)=G(mN/h)/A(m
となる。
また、脱硝触媒層の断面積(空間断面)をSc(m)、処理温度におけるガス量をQ(m/s)とすると、
LVA(m/s)=Q(m/s)/Sc(m
となる。
【0053】
脱硝触媒層62が収容する全脱硝触媒の仕様を、第2燃焼設備で求められる仕様と照らし合わせた後、第2燃焼設備で求められる仕様に合致しない脱硝触媒は、第2燃焼設備で求められる仕様に合わせて加工することが可能である。
例えば、脱硝触媒の長さ及びセル数を、第2燃焼設備で求められる仕様に合わせるよう、脱硝触媒を切断することが可能である。
あるいは、例えば、AV値及びLVA値に関し、第2燃焼設備で求められる仕様を満たさない脱硝触媒は、成分回収や粉砕し再利用するか、再利用せず、廃棄することも可能である。
【0054】
ステップS6において、脱硝率を測定したハニカム触媒を含む脱硝触媒層62が収容する全脱硝触媒を、脱硝触媒に必要とされる脱硝率が80%以上の、第2燃焼設備で使用する。その後、処理は、ステップS1に戻る(リターン)。
【0055】
ステップS7において、脱硝率を測定したハニカム触媒を含む脱硝触媒層62が収容する全脱硝触媒に対して再生処理を行う。再生処理としては、とりわけ、脱硝触媒を研磨することが好ましい。具体的には、例えば、特許第5844943号公報に記載の使用済み脱硝触媒の研磨方法を適用することが可能である。
【0056】
ステップS8において、ステップS5と同様に、再生処理を行った脱硝触媒の仕様を、第2燃焼設備で求められる仕様と照らし合わせ、必要に応じて、仕様に合わせて加工する。
なお、後述のステップS9において、再生処理を行った脱硝触媒を、引き続き第1燃焼設備で使用する場合は、ステップS8を省略することも可能である。
【0057】
ステップS9において、再生処理、及び、場合によっては必要とされる仕様に合わせて加工した後の脱硝触媒を、第1燃焼設備又は第2燃焼設備で使用する。その後、処理は、ステップS1に戻る(リターン)。
【0058】
なお、上記の動作フロー中、ステップS2において、脱硝率が90%以上か否かについて判定し、ステップS4において、脱硝率が80%以上か否かについて判定したが、これはあくまで一例であって、これには限定されず、ステップS2において判定基準となる脱硝率が、ステップS4において判定基準となる脱硝率より高ければよい。また、上記の再利用方法において再利用の対象となる脱硝触媒は、ハニカム触媒に限定されず、任意の形状の脱硝触媒であってよい。
【0059】
図4は、本発明の実施例に係る脱硝触媒の再利用方法の運用例を示す。
図4に示される運用例においては、他社燃焼設備5で使用された使用済み脱硝触媒150は、脱硝触媒に必要とされる脱硝率が90%の自社燃焼設備10Aで再利用され、更に自社燃焼設備10Aで使用された使用済み脱硝触媒150は、脱硝触媒に必要とされる脱硝率が80%の自社燃焼設備10Cで再利用されるものとする。これと並行して、他社燃焼設備5で使用された使用済み脱硝触媒160は、脱硝触媒に必要とされる脱硝率が90%の自社燃焼設備10Bで再利用され、更に自社燃焼設備10Bで使用された使用済み脱硝触媒160は、脱硝触媒に必要とされる脱硝率が80%の自社燃焼設備10Cで再利用されるものとする。また、例として、自社燃焼設備10Aで使用される脱硝触媒の長さは860mm、自社燃焼設備10B及び10Cで使用される脱硝触媒の長さは430mmであるとする。
【0060】
まず、図4の矢印(a)のフローで示されるように、他社燃焼設備5で使用された脱硝触媒150は、安価で自社燃焼設備10Aに引き取られ、再生処理を施された後、自社燃焼設備10Aで利用される。なお、上記のように、この脱硝触媒150の長さは860mmであるとする。
【0061】
自社燃焼設備10Aで一定期間脱硝触媒150を利用した後、脱硝率を測定し、脱硝率が90%以上だった場合には、この脱硝触媒150は、自社燃焼設備10Aで引き続き利用される。脱硝触媒150の脱硝率が80%未満であった場合は、矢印(b)のフローで示されるように、自社燃焼設備10Aで研磨再生し、研磨再生後の脱硝触媒150の脱硝率が90%以上となった場合には、再度自社燃焼設備10Aで使用する。一方、研磨再生後の脱硝触媒150の脱硝率が90%に満たないものの、80%以上となった場合には、矢印(c)のフローで示されるように、長さが860mmの脱硝触媒150を、長さが430mmの脱硝触媒150A及び150Bに2分割し、自社燃焼設備10Cで再利用する。
【0062】
なお、図示はしないが、他社燃焼設備5から引き取った使用済み脱硝触媒150を、自社燃焼設備10Aで一定期間利用した後の脱硝率が、80%以上90%未満である場合には、再生処理をせずに、脱硝触媒150の長さを430mmに2分割して、自社燃焼設備10Cに転用する。
【0063】
また、図4の矢印(d)のフローで示されるように、他社燃焼設備5で使用された脱硝触媒160は、安価で自社燃焼設備10Bに引き取られ、再生処理を施された後、自社燃焼設備10Bで利用される。なお、上記のように、この脱硝触媒160の長さは430mmであるとする。
【0064】
自社燃焼設備10Bで一定期間脱硝触媒160を利用した後、脱硝率を測定し、脱硝率が90%以上だった場合には、この脱硝触媒160は、自社燃焼設備10Bで引き続き利用される。脱硝触媒160の脱硝率が80%以上90%未満であった場合には、矢印(g)のフローで示されるように、自社燃焼設備10Cに転用する。脱硝触媒160の脱硝率が80%未満であった場合には、矢印(e)のフローで示されるように、自社燃焼設備10Bで研磨再生し、研磨再生後の脱硝触媒160の脱硝率が90%以上となった場合には、再度自社燃焼設備10Bで使用する。
【0065】
また、上記の矢印(e)のフローにおいて研磨再生した後の脱硝触媒160の脱硝率が90%に満たないものの、80%以上となった場合には、矢印(g)のフローで示されるように、自社燃焼設備10Cに転用してもよい。
【0066】
自社燃焼設備10Cにおいては、自社燃焼設備10Aから引き取った使用済み脱硝触媒150A及び150B、及び、自社燃焼設備10Bから引き取った使用済み脱硝触媒160を、脱硝装置60で利用する。使用済み脱硝触媒150A、150B、160を一定期間使用した後、矢印(f)のフローで示されるように、自社燃焼設備10Cで研磨再生し、研磨再生後の脱硝触媒150A、150B、160の脱硝率が80%以上となった場合には、再度自社燃焼設備10Cで使用する。
【0067】
〔実施形態の効果〕
以上、説明したように構成された本実施形態によれば、第1燃焼設備で必要とされる脱硝率に満たない脱硝率しか有さない脱硝触媒を、第1燃焼設備より低い脱硝率しか必要とされない第2燃焼設備で使用することにより、使用済み脱硝触媒をより有効に活用し、使用済み脱硝触媒の廃棄量を減少させることが可能となる。
【0068】
また、第2燃焼設備で必要とされる脱硝率に満たない脱硝率しか有さない脱硝触媒を再生することにより、使用による劣化の程度が大きな脱硝触媒も含めて、燃焼設備間で使用済み脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。
【0069】
また、脱硝触媒の再生方法として、脱硝触媒の研磨を実施することにより、低コストで脱硝触媒の性能を十分に回復させることが可能となる。
【0070】
また、脱硝触媒として、壁厚が0.5mm以上の脱硝触媒を使用することにより、脱硝触媒の性能回復を、コストの低い研磨再生で行えることとなり、燃焼設備の総運用コストを下げることができる。
【0071】
また、使用済み脱硝触媒を第2燃焼設備に転用する前の段階で、使用済み脱硝触媒を第2燃焼設備の仕様に合わせて加工することにより、互いに仕様が異なる燃焼設備間でも、使用済み脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。
【0072】
また、使用済み脱硝触媒を第2燃焼設備の仕様に合わせて加工する際、第2燃焼設備で使用されている脱硝触媒の長さに合わせて切断することにより、実際に使用する脱硝触媒の長さが互いに異なる燃焼設備間でも、使用済み脱硝触媒を融通しあうことが可能となる。
【0073】
〔変形例〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0074】
例えば、図3に記載のフローチャート中、ステップS2において脱硝率が90%以上と判定された脱硝触媒は、ステップS3において、第1燃焼設備での使用を継続するとしたが、これには限定されない。例えば、脱硝率が90%以上であるにもかかわらず、次の燃焼設備のメンテナンス時には使用可能ではなくなることを見越して、第1燃焼設備での使用開始から一定期間が経過したことをもって、第2燃焼設備に転用してもよい。
【0075】
また、図3に記載のフローチャート中、ステップS4において脱硝率が80%以上と判定された脱硝触媒は、ステップS5において、第2燃焼設備で要求される仕様に合わせて加工するとしたが、これには限定されない。脱硝率が80%以上と判定された脱硝触媒の仕様が、そのまま、第2燃焼設備に既設の脱硝触媒の仕様と合致する場合には、ステップS5を省略し、ステップS6において、そのまま第2燃焼設備で使用することが可能である。
同様に、ステップS7で再生した脱硝触媒を、ステップS8において、第2燃焼設備で要求される仕様に合わせて加工するとしたが、これには限定されない。再生した脱硝触媒の仕様が、そのまま、第2燃焼設備に既設の脱硝触媒の仕様と合致する場合には、ステップS8を省略し、ステップS9において、そのまま第2燃焼設備で使用することが可能である。
【0076】
また、図3に記載のフローチャート中、ステップS7において、使用済み脱硝触媒の再生方法として、使用済み脱硝触媒を研磨する技術について述べたが、これには限定されない。例えば、使用済み脱硝触媒の表面に、新たな脱硝触媒をコーティングすることにより、使用済み脱硝触媒を再生してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態においては、燃焼設備の例として、火力発電システム間で使用済み脱硝触媒を融通しあう、脱硝触媒の再利用方法について記載したがこれには限定されない。例えば、船舶等の燃焼ボイラで用いられる脱硝触媒の再利用方法として実施することも可能である。
【符号の説明】
【0078】
1…火力発電システム
10…ボイラ
60…脱硝装置
61…脱硝反応器
62…脱硝触媒層
100…煙突
621…ケーシング
622…ハニカム触媒
623…シール部材
L1…排気路
図1
図2
図3
図4