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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-16741(P2018-16741A)
(43)【公開日】2018年2月1日
(54)【発明の名称】有機顔料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/10 20060101AFI20180105BHJP
   C09B 67/12 20060101ALI20180105BHJP
【FI】
   C09B67/10
   C09B67/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-149045(P2016-149045)
(22)【出願日】2016年7月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
【住所又は居所】東京都板橋区坂下3丁目35番58号
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】安井 健悟
【住所又は居所】千葉県佐倉市坂戸631番地 DIC株式会社 総合研究所内
(72)【発明者】
【氏名】関根 均
【住所又は居所】千葉県佐倉市坂戸631番地 DIC株式会社 総合研究所内
(72)【発明者】
【氏名】國吉 浩平
【住所又は居所】千葉県佐倉市坂戸631番地 DIC株式会社 総合研究所内
(72)【発明者】
【氏名】神田 英輝
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(72)【発明者】
【氏名】後藤 元信
【住所又は居所】愛知県名古屋市千種区不老町1番 国立大学法人名古屋大学内
(57)【要約】
【課題】粗製有機顔料を用いて有機顔料を製造する方法において、製造プロセスの簡略化、消費エネルギーの低減、及び、着色剤として用いた際に良好な特性を有する有機顔料の製造方法の提供。
【解決手段】粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させることを特徴とする、有機顔料の製造方法。粗製有機顔料は、粗製フタロシアニン顔料、粗製ジオキサジン顔料、及び粗製キナクリドン顔料からなる群から選ぶことができる。前記粗製有機顔料と、前記液化ジメチルエーテルとを接触させた後に、さらにジメチルエーテルを気化させることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させることを特徴とする、有機顔料の製造方法。
【請求項2】
前記粗製有機顔料が、粗製フタロシアニン顔料、粗製ジオキサジン顔料、及び粗製キナクリドン顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の粗製有機顔料である、請求項1記載の有機顔料の製造方法。
【請求項3】
前記粗製有機顔料と、前記液化ジメチルエーテルとを接触させた後に、さらにジメチルエーテルを気化させる、請求項1又は2に記載の有機顔料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機顔料の製造方法に関する。より具体的には、液化ジメチルエーテルを用いて粗製有機顔料を顔料化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料は、歴史的に多くの化学構造を有するものが知られており、例えば、アゾ、フタロシアニン、ジオキサジン、キナクリドン、イソインドリノン、インダンスロン、ジケトピロロピロール等の構造を有するものが知られている。
【0003】
この様な有機顔料は、一般的に、原料から化学合成を行って、上記した様な化学構造を有する粗製有機顔料を経て、当該粗製有機顔料に対して仕上げ処理を行うことで製造されている。粗製有機顔料は、有機顔料クルードと呼ばれることもある。
【0004】
粗製有機顔料は、それ自体では、インキ、塗料及び成形品の様な媒体(被着色物)に分散させた際に充分な着色力が得られないために、着色剤としての機能を充分発現させるための仕上げ処理が多用される。この仕上げ処理により、粗製有機顔料は着色剤として機能する有機顔料となる。
【0005】
具体的には、上記した様な粗製有機顔料はそれ自体が、粗大であり過ぎたり、微小であり過ぎたりするため、凝集せず或いは媒体中で弱い力にて解凝集して容易に分散できるようにして、着色剤として機能するよう、結晶型、粒子径、形状及び粒度分布を適切に調整する仕上げ処理が行われる。この様な仕上げ処理は、顔料化とも呼ばれる。
【0006】
銅フタロシアニン顔料の製造方法を例にとった顔料化としては、例えば、機械的に摩砕助剤下で長時間粉砕して小さな粒子径にしたり、大量の液媒体中で必要に応じて常圧または減圧下で長時間加熱して大きな粒子径にする等の方法が古くから知られているが、顔料化に当たり合成樹脂を併用するものとして、特許文献1〜2がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−43704号公報
【特許文献2】特開平10−101955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
合成樹脂の併用如何を問わず、上記した様な従来の顔料化を伴う有機顔料製造においては、顔料化工程自体が非常に複雑化しているという問題があった。
また、従来の有機顔料製造では、加熱エネルギーや、攪拌機、混練機等の動作エネルギー等の多くのエネルギーを長時間に亘って必要とするといった顔料化工程が不可欠であり、生産性に劣るという根本的な問題がある。
生産性を高めるために、一度に大量の有機顔料を得ようとすれば、顔料化工程を行う処理容器や設備を大きくしなければならないばかりでなく、大容積であっても減圧に耐えうる高い強度を有する処理容器を用いるようにしなければならない。また、この処理容器や設備を大きくすればするほど、容器上下での顔料品質のバラツキが大きくなる上、顔料化に要する水溶性無機塩、有機溶剤や水の使用量も膨大なものとなるため、その廃液処理に手間がかかる。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、粗製有機顔料を用いて有機顔料を製造する方法において、製造プロセスの簡略化、消費エネルギーの低減、及び、高い生産性を達成した上で、着色剤として用いた際に良好な特性を有し得る有機顔料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、常温常圧下で気体であるジメチルエーテルを液体として用いて、この液化ジメチルエーテルと、粗製有機顔料とを接触させることにより、従来必要とされていた製造プロセスを経ることなく、粗製有機顔料からより簡素な工程で、より低エネルギーで生産性高く、着色剤として良好な有機顔料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させることを特徴とする、有機顔料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の有機顔料の製造方法によれば、粗製有機顔料からより簡素な工程でより低エネルギーで生産性高く、着色剤として良好な有機顔料を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ジメチルエーテルの飽和蒸気圧曲線であり、ある温度において、この圧力以上でジメチルエーテルは凝縮して液化ジメチルエーテルとして利用できる。
図2】実施例1における、液化ジメチルエーテル接触前の粗製ジメチルキナクリドン顔料の透過型電子顕微鏡写真図(A)と、液化ジメチルエーテル接触後のジメチルキナクリドン顔料の透過型電子顕微鏡写真図(B)とを示す図である。
図3】実施例2における、液化ジメチルエーテル接触前の粗製ジオキサンバイオレット顔料の透過型電子顕微鏡写真図(A)と、液化ジメチルエーテル接触後のジオキサンバイオレット顔料の透過型電子顕微鏡写真図(B)とを示す図である。
図4】実施例3における、液化ジメチルエーテル接触前の粗製銅フタロシアニン顔料の透過型電子顕微鏡写真図(A)と、液化ジメチルエーテル接触後の銅フタロシアニン顔料の透過型電子顕微鏡写真図(B)とを示す図である。
図5】実施例4における、液化ジメチルエーテル接触前の粗製ジケトピロロピロール顔料の透過型電子顕微鏡写真図(A)と、液化ジメチルエーテル接触後のジケトピロロピロール顔料の透過型電子顕微鏡写真図(B)とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の有機顔料の製造方法は、粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させるものである。
【0014】
本発明の製造方法では、液化ジメチルエーテルを用いる。
ジメチルエーテルは、常圧下における沸点が−25.1℃、液化状態での比重(20℃/4℃)が0.66である化合物であって、常温常圧下では気体として存在する。一方、25℃において、約0.6MPaという低圧で液化する特性を有する。有機化合物としての分子量や分子占有半径もかなり小さい。これらの特異性を活かし、本発明ではジメチルエーテルが液体として存在し得る条件下において、粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させることで顔料化を行い、有機顔料を製造する。
【0015】
ジメチルエーテルは、毒性がほぼ無い、過酸化物をほぼ産生しない、加圧による液化及び減圧による気化が容易、更にそれ自体の製造が容易等といった点、通常の有機溶剤に無い際立った特性を有する。本発明者等は、これらの特性に着目し、粗製有機顔料を顔料化する際にジメチルエーテルを用いることを想起した。加えて、ジメチルエーテルを液体の状態で用いること、並びに、当該液化ジメチルエーテルと、粗製有機顔料とを接触させるのみで良好に顔料化が行われ、着色剤としての特性を良好に有する有機顔料が得られることを初めて見出した。
【0016】
次にジメチルエーテルの液化について説明する。
座標上、温度をX軸にとり、温度を変化させて、ジメチルエーテルが液化される圧力をY軸にプロットすると、下記式1で表されるジメチルエーテルの液化曲線が得られる(この式1は、図1で表される。)。図1において、液化曲線を挟んで座標上方がジメチルエーテルが液体である領域である。
【0017】
【数1】
【0018】
出典 Wu J, Zhou Y, Lemmon EW. An equation of state for the thermodynamic properties of dimethyl ether. J. Phys. Chem. Ref. Data, 2011;40:023104.
【0019】
尚、液化ジメチルエーテルと粗製有機顔料とを接触させる際の、好適な温度や圧力については、後に詳記する。
【0020】
本発明の製造方法において原料として用いられる「粗製有機顔料」とは、それ自体が着色剤として機能しない、粗大または微細な有機顔料である。これらは、顔料粒子同士が強く凝集して凝集塊を形成することにより、0.8μmを超える比較的大きな粒子径を有する二次粒子を含むものであったり、0.001μm未満の粒子径の極微細な粒子である。X線回折において回折ピークが観察できる結晶であったりアモルファスであったりする。本発明における粗製有機顔料とは、平均一次粒子径0.001μm未満又は同0.3μmを超えるものをいう。
【0021】
なお、本発明において平均一次粒子径とは、透過型電子顕微鏡を用いて視野内の粗製有機顔料や有機顔料の粒子を撮影し、二次元画像上の顔料一次粒子の50個につき、その最大径(長径)を各々求め、それを平均した値である。また一定視野における個数から粒子径の分布を統計的に求めることもできる。
【0022】
本発明で用いる粗製有機顔料としては、特に限定されるものではないが、例えば、粗製アゾ顔料、粗製ベンツイミダゾロン顔料、粗製トリアリールメタン顔料、粗製フタロシアニン顔料、粗製ジオキサジン顔料、粗製キナクリドン顔料、粗製イソインドリノン顔料、粗製インダンスロン顔料、粗製ペリレン顔料、粗製ペリノン顔料、粗製ジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。フタロシアニンとしては、中心金属を有する粗製金属フタロシアニン顔料、メタルフリーの粗製フタロシアニン顔料が存在するが、いずれを用いてもよい。金属フタロシアニンの中心金属としては、例えば、銅、亜鉛、ニッケル、すず、鉄、チタン、アルミニウム及びコバルト等が挙げられる。尚、粗製フタロシアニン顔料としては、フタロシアニン環の16個の置換可能な水素原子が一つもハロゲン置換されていない粗製金属フタロシアニン顔料も、フタロシアニン環の16個の置換可能な水素原子が一つ以上ハロゲン置換されたハロゲン置換粗製金属フタロシアニン顔料も、いずれも用いることができる。
【0023】
粗製有機顔料としては、液化ジメチルエーテルとの接触により、より簡便に生産性高く顔料化が行える点で、なかでも、粗製アゾ顔料、粗製ベンツイミダゾロン顔料、粗製トリアリールメタン顔料の様な、水系での反応により化学構造を形成する粗製有機顔料よりも、粗製フタロシアニン顔料、粗製ジオキサジン顔料、及び粗製キナクリドン顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種の粗製有機顔料を用いることが好ましい。これらの粗製有機顔料は、有機溶剤系での反応により化学構造を形成する粗製有機顔料であることから、水系での反応により化学構造を形成する粗製有機顔料よりも、液化ジメチルエーテルとの親和性により優れるため、より確実により収率高く顔料化を行うことが出来、目的とする品質の有機顔料がより容易に得られる。
【0024】
上記粗製有機顔料は、予め、洗浄、精製、濾過、磨砕等を施されたものであってもよい。例えば、洗浄、精製、濾過等を行うことにより、合成時に用いられた有機溶剤(反応溶媒)や、合成反応時の副反応物、未反応の原料化合物等の含有量を低減することができる。粗製有機顔料としては、上記した様な操作を行ったものを用いることが好ましい。
【0025】
粗製有機顔料は、その製造方法や必要に応じて付加される精製工程により、乾燥した粉体であっても良いし、液媒体で湿潤したウエットケーキであっても良い。粗製有機顔料が、水で湿潤したウエットケーキである場合には、その含水量が用いたジメチルエーテルよりも充分に多ければ、ジメチルエーテルの水溶解性が奏功し、粗製有機顔料からの有機顔料の製造のみならず、当該ウエットケーキからの脱水も同時並行的に行えるため、ウエットケーキから有機顔料を単離するための作業負担を緩和軽減できたり、或いは当該作業を行わずに済ませることも出来る。何故なら、ジメチルエーテルは水への溶解度が比較的高いため、ウエットケーキが水分を含有するものであった場合、ジメチルエーテルがウエットケーキに含有される水に溶解しつつ粗製有機顔料中の微細間隙や細孔に到達できるためである。そして、液化ジメチルエーテルが粗製有機顔料に到達し所定時間亘り接触を続けられることで、より容易に顔料化が行われる。これにより、粗製有機顔料中の顔料一次粒子が結晶成長及び進展し、結晶同士の間に応力が生じる結果として、凝集状態が維持できなくなり凝集が解れ、着色剤として機能し得る有機顔料とすることが出来る。勿論、粗製有機顔料としては、上記した様な粗製有機顔料以外では、乾燥後に更に磨砕を行った粗製有機顔料を用いることも出来る。
【0026】
本発明を実施するに当たっては、液化ジメチルエーテルのみを用いることが好ましいが、必要ならば、その他の有機溶剤を併用することも出来る。この様な有機溶剤としては、例えば、アルコール類、ケトン類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、ハロゲン化炭化水素、含窒素化合物などを挙げることが出来る。ジメチルエーテルと均一に混合し得る有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、テトラヒドロフラン、エタノールアミン、アニリン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、酢酸セロソルブ、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール系溶剤、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類、軽油、動植物油等を使用できる。これらの液化ジメチルエーテルと併用する有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。上記したその他の有機溶剤としては、ジメチルエーテルと均一混合し得る有機溶剤を用いることが好ましい。
【0027】
本発明においては、液化ジメチルエーテルを用いることを特徴としているが、ここで併用される有機溶剤としては、ジメチルエーテルよりも粗製有機顔料の結晶成長や目的とする結晶型や結晶構造の形成能力に優れ、かつ、留去しやすさから出来るだけ低沸点の有機溶剤も挙げることが出来る。併用する有機溶剤は、ジメチルエーテルとの沸点の差を利用し、分離回収や再利用をすることが出来る。中でもジメチルエーテルとの分離が容易かつ出来るだけ低沸点であることが、より好ましい。
【0028】
本発明の有機顔料の製造方法では、粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させるのみにて、着色剤として非常に優れた特性を有する有機顔料が得られる。
具体的には、例えば、(1)加圧条件下でジメチルエーテルを液化させ、当該液化ジメチルエーテルと粗製有機顔料とを接触させる方法、或いは、(2)ジメチルエーテルの沸点以下(−25℃以下程度)の低温条件下でジメチルエーテルを液化させ、当該液化ジメチルエーテルと粗製有機顔料とを接触させる方法等が挙げられる。なかでも、ジメチルエーテルは比較的低圧を加えることで液化し得るため、工業的観点から、上記(1)のように加圧条件下で粗製有機顔料との接触を行うことが好ましい。
【0029】
本発明の有機顔料の製造方法である顔料化において、液化ジメチルエーテルと粗製有機顔料とを接触させる際の温度や圧力の条件は、ジメチルエーテルが液体の状態であれば、特に制限されるものではないが、上記した液化ジメチルエーテルの液化曲線によれば、例えば、温度10〜85℃かつ圧力0.3〜2.7MPaの範囲から選択することが、加熱不要ないしは比較的軽微な加熱でかつ耐圧性がそれほど高くない処理容器で有機顔料を製造できる点でより好ましく、なかでも温度10〜40℃かつ圧力0.3〜0.9MPaの範囲から選択することが、上記メリットに加えて、省エネルギーや温度圧力制御などの簡便性にも優れる点で特に好ましい。
【0030】
粗製有機顔料と、液化ジメチルエーテルとを接触させる方法は、粗製有機顔料に対して液化ジメチルエーテルが良好に接触できれば特に限定されない。例えば、粗製有機顔料のウエットケーキを充填したカラム等の密閉容器に、液化ジメチルエーテルを通液させる方法;液化ジメチルエーテル内に、粗製有機顔料のウエットケーキを浸漬させる方法;液化ジメチルエーテル内で、粗製有機顔料のウエットケーキを混合、振とうしたり撹拌する方法、等が挙げられる。なかでも、顔料化後の粗製有機顔料の回収及び液化ジメチルエーテルの再利用が容易となることから、粗製有機顔料のウエットケーキを充填した円筒状細管(カラム)に、液化ジメチルエーテルを通液させる方法が好ましい。
この様な通液方法を採用することにより、ジメチルエーテルの液化を維持するために混合、撹拌等の処理装置全体を加圧下とする又は低温とする必要性がなく、より耐圧性の低い汎用設備をそのまま活用でき、設備簡略化が可能となる。
【0031】
粗製有機顔料に接触させる液化ジメチルエーテルの使用量は、粗製有機顔料を有機顔料に変換することが出来る範囲であれば特に限定されるものではないが、粗製有機顔料の少なくとも凝集粒子表面にもれなく接触できる量、例えば、粗製有機顔料の凝集粒子を被覆できる量のジメチルエーテルを用いることが好ましい。
ジメチルエーテルの使用量は、粗製有機顔料の不揮発分の質量換算1部当たり、例えば1〜1000部、中でもより耐圧性が低く、大きさが小さく設置面積が小さい設備で接触を行わせることが出来、上記した様な適切な結晶制御を発現させた上でジメチルエーテルの回収も容易となる点で、2〜100部が好ましく、より少量の使用量で有機顔料への変換が行え、変換に要したジメチルエーテルの廃棄物処理負担を最小限にできると共に、リサイクル時に回収する手間をより軽微にかつ設備もより簡素に出来る点で、特に5〜60部とすることが出来る。尚、粗製有機顔料として、水等の液体を含むウエットケーキを用いる場合は、当該液体でジメチルエーテルが希釈されることを考慮して、乾燥した粗製有機顔料を用いる場合に比べて、ジメチルエーテルを増量した上で用いることが好ましい。
【0032】
また、粗製有機顔料と液化ジメチルエーテルとの接触時間は、特に限定されるものではないが、例えば30秒〜5時間、中でも、粗製有機顔料が十分に結晶成長や結晶変換といった顔料化できる点で、10分〜3時間、特に有機顔料の生産性を著しく高められる点から、10分〜1時間であることが好ましい。勿論、必要量の液化ジメチルエーテルを分割使用して、粗製有機顔料に対して液化ジメチルエーテルを少しずつ用いて複数回に亘って接触させることもできるし、必要量より過剰の液化ジメチルエーテルを使用して、一定量の粗製有機顔料に対してより多量の液化ジメチルエーテルを接触させることで、上記時間を更に短縮することもできる。
【0033】
こうして粗製有機顔料と、前記液化ジメチルエーテルとを接触させることで、有機顔料と液化ジメチルエーテルとの混合物が得られるが、この混合物からさらにジメチルエーテルを気化させることで、乾燥した粉体の有機顔料のみが得られる。
本発明の顔料化方法では、粗製有機顔料として、ジメチルエーテルに溶解性を有する粗製有機顔料を用いた場合であっても、粗製有機顔料がジメチルエーテルに一部又は全部が溶解してしまう場合があるが、この様な粗製有機顔料のジメチルエーテル分散液又は溶液は、そのまま所定時間にわたり攪拌した後、ジメチルエーテルを除去することにより、粗製有機顔料を有機顔料とすることが出来る。尚、粗製有機顔料が、ジメチルエーテルに溶性であるか不溶性であるかを問わず、ジメチルエーテルによる顔料化が充分に行われたか否かは、例えば、ジメチルエーテルと粗製有機顔料との接触時間を振った上で、粗製有機顔料のジメチルエーテル分散液又は溶液の適当な時間間隔でサンプリングを行い、それらサンプルに関して、電子顕微鏡写真を撮影したり、着色剤としての特性評価を行う等の手段により、粒子径の様な物性や着色特性が飽和して(一定となって)変化しなくなる点を、顔料化の終点とすることで、確認ができる。この様にして、一度、接触時間と物性・特性との検量線を作成してしまえば、次回以降は、接触時間のみのモニタリングにて、顔料化の終点を定めることが出来る。
【0034】
さらに、より好ましい態様に関して詳述する。
まず、合成によって得られた粗製有機顔料を含むウエットケーキを、抽出カラム等の密閉容器(反応器)内に充填する。尚、以降の説明において、左記の通り、化学反応が起こす意図の有無とは無関係に、他の容器と区別するために、この密閉容器を便宜的に反応器と書く場合がある。
【0035】
次に、液化ジメチルエーテル供給器(以下、単に「供給器」ともいう。)において、ジメチルエーテルを液化する。供給器は、前記反応器と気密・液密に連通された状態で、反応器の前段に設けられることが好ましい。供給器では、供給器内の設定温度(加熱温度)に応じた加圧条件で、装置構成外部より供給される気体のジメチルエーテルに圧を加えることにより、ジメチルエーテルを液化させる。加圧方法は特に限定されるものではなく、公知慣用の加圧ポンプ等を用いることができる。
【0036】
次いで、加圧により液化されたジメチルエーテルを供給器から反応器へ、配管等を経由して送液し、反応器内において粗製有機顔料と液化ジメチルエーテルとを接触させる。供給器と反応器とは気密に連通されているため、同様の加温、加圧条件となる。そのため、供給器で液化されたジメチルエーテルは、反応器内における粗製有機顔料との接触の際にも、液体状態を維持できる。反応器の入口、出口にはフィルターが設けられていることが好ましい。
【0037】
最後に、反応器への液化ジメチルエーテルの送液が完了した時点で、反応器内の圧を減圧するか、或いは反応器を大気開放する。これにより、反応器内に残存していた液化ジメチルエーテルが気化するため、有機顔料中に液化ジメチルエーテルは残存しない。
加えて、液化ジメチルエーテルは水に対しても比較的高い溶解性を示すため、粗製有機顔料ウエットケーキ中に含まれていた水分は、液化ジメチルエーテルと混和されて、反応器出口から液化ジメチルエーテルと共に排出される。そのため、減圧後又は大気開放後の反応器内は、液体成分がほぼ存在しない状態となる。
すなわち、液化ジメチルエーテルと接触させることにより、別途の乾燥工程を設けることなく、乾燥粉体の有機顔料を得ることができる。
【0038】
また、粗製有機顔料と接触させた後の液化ジメチルエーテルは、不純物等の第三成分を含有しない新品1回の使い切りでも良いが、大気中への放出を低減する環境保全の観点及び繰り返し顔料化を行うに当たっての、一回当たりの顔料化のコストをより低減させる観点から再利用することが好ましい。
従来の有機顔料の製造方法においても、顔料化等に用いられた大量の有機溶媒は再利用されていた。しかしながら、再利用のためには、顔料化により有機溶剤中に混入した不純物を除く必要がある。この様な不純物としては、例えば、粗製有機顔料ウエットケーキに含まれていた水、粗製有機顔料合成時の残存合成溶剤、残存原料化合物、副反応物等が挙げられる。
そのため、従来の再利用の際には、常温で液体の有機溶剤に対して蒸留処理等を行っており、再利用によって新規に必要となる有機溶剤量は低減される一方、蒸留のプロセスやエネルギーが必要となっていた。
【0039】
しかしながら、本発明では常温常圧において気体のジメチルエーテルを用いる。そのため、もし粗製有機顔料やそれに基づいて得られた有機顔料に含まれていた不純物がこのジメチルエーテルに溶解された場合でも、有機顔料と分別後に、顔料化に用い回収された液化ジメチルエーテルを常圧に戻すのみで、不純物がほぼ含まれない気化ジメチルエーテルのみを容易に得ることができる。
具体的な設備構成としては例えば、反応器の後段に、反応器と気密・液密に連通された回収器を設ける。この回収器内に、使用済液化ジメチルエーテルを貯留する。反応器と回収器とをつなぐ配管には開閉可能なバルブを設けることが好ましい。一定量又は一定時間、粗製有機顔料と液化ジメチルエーテルとの接触が終了した時点で、反応器との間のバルブを閉めた上で、回収器内を減圧又は大気開放し、回収器に別途設けられた回収口(反応中はバルブ閉)から、気化ジメチルエーテルを回収することが好ましい。回収器の回収口と、供給器の気化ジメチルエーテル供給口とを、開閉可能なバルブを備えた配管により連結することにより、回収された気化ジメチルエーテルを反応系内に直接戻すことも可能となる。
【0040】
本発明の製造方法では、上記した様な顔料化により、粗製有機顔料の凝集塊が解れて、結晶成長や結晶変換が適切に行われる結果、着色剤として十分に機能し得る有機顔料が得られる。この様な有機顔料は、本製造方法で用いる原料の粗製有機顔料よりは小さいものであり、例えば0.001〜0.3μmの平均一次粒子径を有する。この様な粒子径の有機顔料は、着色剤として用いた際に望ましい各種特性(着色力、光沢等)を備え、過度の凝集をせず、かつ液体溶媒中にも良好に分散し得るものとなる。
【0041】
本発明の有機顔料の製造方法によって得られる有機顔料としては、上で例示した粗製有機顔料に対応するもの、例えば、アゾ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、トリアリールメタン顔料、フタロシアニン顔料、ジオキサジン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、インダンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料等が挙げられる。
より具体的には、C.I.ピグメントブルー15(例えば、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等)、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントグリーン36等の銅フタロシアニン顔料又はメタルフリーフタロシアニン顔料;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット37等のジオキサジン顔料;C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49等のキナクリドン顔料;C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントオレンジ61等のイソインドリノン顔料;C.I.ピグメントブルー60等のイソダンスロン顔料;C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73等のジケトピロロピロール顔料、等が挙げられる。
【0042】
こうして粗製有機顔料が液化ジメチルエーテルによって顔料化され有機顔料となった後の、有機顔料と液化ジメチルエーテルとの混合物はそのまま常圧に戻したり、或いは、好ましくは濾過の上、濾過された固形物を常圧に戻したり必要に応じて更に加熱を行うことで、ジメチルエーテルが気化される結果、乾燥した粉体の有機顔料を得ることが出来る。
【0043】
本発明の製造方法により得られる有機顔料は、着色用途として、平版インキ、グラビアインキ、フレキソインキ等の印刷インキ分野、ラッカー、焼き付け塗料、電着塗料等の塗料分野、ポリオレフィンや熱可塑性ポリエステル等の成形品着色分野、インクジェット記録用インク、カラーフィルター、電子写真用粉体トナー等のハイテク分野等の各種の用途にて好適に用いられる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。本実施例中、特別の記載がない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0045】
[実施例1]
環化反応終了後の粗製ジメチルキナクリドン顔料(C.I.ピグメントレッド122の原料)の含水ウエットケーキ(固形分31.7%)48gを、上下にフィルターを配置した円筒状の細管(カラム)である耐圧容器(反応器)内に充填した。この耐圧容器の前後に、開閉可能なバルブを設けて配管を行い、加圧ポンプを取り付けた液化ジメチルエーテル供給のための耐圧容器(供給器)と、ウエットケーキを通過した液化ジメチルエーテルを回収するための耐圧容器(回収器)とを取り付けて実験装置を組み立て、バルブを開放し液化ジメチルエーテル供給のための耐圧容器(供給器)から、ウエットケーキが充填された耐圧容器(反応器)の下方に、液化ジメチルエーテルを供給した。総量750gを1回当たりの通液量50〜85mlとなる様に分割して、10回に亘って液化ジメチルエーテルを通液させた。反応器の下方から上方に向けて液化ジメチルエーテルが粗製ジメチルキナクリドン顔料中を流れた。最初の通液から全ての液化ジメチルエーテルの通液までに粗製ジメチルキナクリドン顔料に接触した総時間は、2分であった。尚、上記液化ジメチルエーテルとしては、温度35℃にて0.8Mpaにて液化したジメチルエーテルを用い、各耐圧容器としては、超臨界二酸化炭素を扱う場合の様な高い耐圧性や強度を有しない容器を用いることができた。
【0046】
液化ジメチルエーテルの通液の都度、供給器と反応器の間のバルブを閉じ、一方で反応器と回収器の間のバルブは開け、反応器内の液化ジメチルエーテルが回収のための耐圧容器に回収されたことを確認した。この様な操作を繰り返して行い、上記総量の通液が完了した後に、粗製ジメチルキナクリドン顔料が充填された耐圧容器(反応器)を含む装置内を常温常圧に戻し、左記耐圧容器からフィルターを外して、耐圧容器から、充填されている、ジメチルエーテルと接触させられたジメチルキナクリドンを取り出した。回収された液化ジメチルエーテルは、常温常圧に戻すことで気化し、気体のジメチルエーテルに変換できた。
このジメチルキナクリドンは、一部付着していたジメチルエーテルが気化し、乾燥された固体粉末を呈しており、C.I.ピグメントレッド122であることが、X線回折分析(XRD)での回折角及び質量分析(MS)での分子量から確認できた。
上記で得られた乾燥された固体粉末につき、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察を行った。その結果、原料として用いた粗製ジメチルキナクリドン顔料に比して凝集塊が解れ、結晶成長していることが確認できた。液化ジメチルエーテルとの接触前(粗製ジメチルキナクリドン顔料)のTEM写真図を図2(A)に、液化ジメチルエーテルとの接触後(ジメチルキナクリドン顔料)のTEM写真図を図2(B)にそれぞれ示した。このジメチルキナクリドン顔料の平均一次粒子径は、おおよそ170nmであった。
【0047】
尚、含水ウエットケーキの水分の45倍を超える液化ジメチルエーテルを用いた場合は、常圧にて取り出すだけで特段の乾燥工程を通すことなく顔料中に含まれる水分を、市販製品と同等まで低減できることが確認できた(加熱減量0.8%。)。また、この顔料は、BET比表面積も市販品と同等であり、かさ比重は、粉砕機を通した場合の市販品水準ほどではないが、十分に粉体とされる数値であった。
【0048】
上記で得られたC.I.ピグメントレッド122を用いて、ポリ塩化ビニルへの練肉着色試験、着色メラミンアルキッド塗料の調製、NCフレキソインキ試験、PPプラスチック射出成形品の調製を行い評価したところ、いずれも一定水準以上の性能が得られた。特にNCフレキソインキ試験においては、市販品顔料との対比でも、光沢及び透明性のいずれにおいても優位な結果が得られた。
【0049】
[実施例2]
合成反応終了後の乾燥した粗製ジオキサンバイオレット顔料(C.I.ピグメントバイオレット23の原料)を、更に乾式磨砕して、粗製ジオキサンバイオレット顔料の乾燥摩砕物を得た。この摩砕物5.0gと液化ジメチルエーテル総量33.1gを用いた以外は上記実施例1と同様にして両者を接触させ、ジオキサジンバイオレットを得て、それを取り出した。
このジオキサジンバイオレットは、一部付着していたジメチルエーテルが気化し、乾燥された固体粉末を呈しており、C.I.ピグメントバイオレット23であることが、XRD及びMSの測定結果から確認できた。
上記で得られた乾燥された固体粉末につき、TEMを用いて観察を行ったところ、凝集塊が解れ、結晶が成長していることが確認できた。液化ジメチルエーテル接触前(粗製ジオキサンバイオレット顔料)のTEM写真図を図3(A)に、液化ジメチルエーテル接触後(ジオキサンバイオレット顔料)のTEM写真図を図3(B)にそれぞれ示す。
【0050】
また、上記した原料たる乾燥摩砕物と、上記で得られたジオキサンバイオレット顔料の乾燥粉体に対して、XRD測定を行い、液化ジメチルエーテル接触前後の結晶子径を下表1に示す。
表1に示す結果からも、液化ジメチルエーテルの接触により結晶が成長していることが確認できた。このジオキサジンバイレット顔料の平均一次粒子径は、おおよそ25nmであった。
【0051】
【表1】
【0052】
上記で得られたC.I.ピグメントバイオレット23を用いて、ポリ塩化ビニルへの練肉着色試験、着色メラミンアルキッド塗料の調製、NCフレキソインキ試験、PPプラスチック射出成形品の調製を行い評価したところ、いずれも一定水準以上の性能が得られた。
【0053】
[実施例3]
合成反応終了後の乾燥した粗製β型銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3の原料)を、更に乾式磨砕して、粗製β型銅フタロシアニン顔料の乾燥摩砕物(α型62%とβ型38%の混合物)を得た。この乾燥摩砕物5.0gと液化ジメチルエーテル総量38.6gを用いた以外は上記実施例1と同様にして両者を接触させ、β型銅フタロシアニンを得て、それを取り出した。
このβ型銅フタロシアニンは、一部付着していたジメチルエーテルが気化し、乾燥された固体粉末を呈しており、C.I.ピグメントブルー15:3であることが、XRD及びMSの測定結果から確認できた。乾燥摩砕物がα型とβ型との混合物は、ジメチルエーテル接触後は、β型に結晶型が変換されていた。
上記で得られた乾燥された固体粉末につき、 実施例2等と同様にしてTEMを用いて観察したところ、結晶成長が確認できた。液化ジメチルエーテル接触前のTEM写真図を図4(A)に、液化ジメチルエーテル接触後のTEM写真図を図4(B)にそれぞれ示す。
このβ型銅フタロシニアニン顔料の平均一次粒子径は、おおよそ80nmであった。
【0054】
実施例3の顔料の色差,着色力,流動性の測定は以下の方法で行った。
【0055】
<平版印刷インキの製造>
(濃色インキ)
ロジン変性フェノール樹脂ワニス84部及び上記で得られたβ型銅フタロシアニン顔料16部をプレミックス後、ビューラー社製3本ロールを用いて3パスしてインキを作製した。
【0056】
(淡色インキ)
上記濃色インキ0.020部と白インキ4.000部をフーバーマーラーで混合した。混合条件:加重50lb,50回転×3回。
【0057】
<着色力,色相の評価方法>
上記で作製した淡色インキを上質紙にへらで展色し、その上色(肉色)をグレタグ(Gretag)社製の分光光度計を用いて測定した。
【0058】
<流動性>
70度に傾けたガラス板上に上記で作製した濃色インキを乗せ、1時間経過後の流れた距離により評価した。
【0059】
<比較例1>
上記実施例3で用いたのと同一の粗製β型銅フタロシアニン顔料の乾燥摩砕物100部、イソブタノール300部及び水600部を容量1リットルのフラスコに入れ、それを共沸温度で4時間加熱した後、溶剤を共沸により完全に除去・回収した。固形分を濾過し、熱風乾燥機にて90℃で12時間かけて乾燥させて、銅フタロシアニン顔料を得た。
このようにして得た銅フタロシアニン顔料の結晶型をXRDで分析した結果、β型であり、その平均一次粒子径は実施例3とほぼ同様であった。
【0060】
実施例3と比較例1の対比からわかる通り、スケールを同様にした場合には、粗製銅フタロシアニン顔料を銅フタロシアニン顔料に変換する従来の溶剤加熱顔料化に関する比較例1よりも、本発明の顔料化に関する実施例3の方が、加熱温度が低くかつ加熱時間も短縮化できるし、比較例1で必要となるイソブタノールの除去回収のための共沸下の加熱や固形分の濾過は、実施例3ではいずれも不要であるし、比較例1における含水銅フタロシアニン顔料の高温長時間の乾燥も実施例3では不要であり、同じ収量の銅フタロシアニン顔料を得るのに使うエネルギーや時間は、本発明の製造方法に相当する実施例3の方が、著しく少なくて済み、省エネルギーかつ生産性に優れていることがわかる。
さらに、本発明の製造方法によれば、確実な結晶成長や結晶変換或いは生産性向上に必要な、超臨界二酸化炭素を扱う様な、高度の加圧や減圧に対応できる高強度の反応容器も必要とせず、反応容器の単位容積当たりの収量をより高められ、比較的コンパクトな占有面積の装置が使用できる或いはより従来必要であった工程を削減したり、工程条件を大幅に緩和できる。
さらに、比較例1の顔料の色差,着色力,流動性の測定を、上記実施例3と同様に行ったところ、実施例3で得られた顔料は、比較例1で得られた顔料と同等以上のインキ着色力及び流動性を有していることがわかった。
【0061】
[実施例4]
環化反応終了後の乾燥した粗製ジケトピロロピロール顔料(C.I.ピグメントレッド254の原料)顔料の含水ウエットケーキ5.9g(固形分32.8%)と液化ジメチルエーテル総量39.0gを用いた以外は上記実施例1と同様にして両者を接触させ、ジケトピロロピロールを得て、それを取り出した。
このジケトピロロピロールは、一部付着していたジメチルエーテルが気化し、乾燥された固体粉末を呈しており、C.I.ピグメントレッド254であることが、MSの測定結果から確認できた。
上記で得られた乾燥された固体粉末につき、 実施例1等と同様にしてTEMを用いて観察したところ、結晶成長が確認できた。液化ジメチルエーテル接触前のTEM写真図を図5(A)に、液化ジメチルエーテル接触後のTEM写真図を図5(B)にそれぞれ示す。
このジケトピロロピロール顔料の平均一次粒子径は、おおよそ200nmであった。
【0062】
上記で得られたジケトピロロピロール顔料を用いて、着色メラミンアルキッド塗料の調製を行い評価したところ、一定水準以上の性能が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の有機顔料の製造方法によれば、製造プロセスの簡略化、消費エネルギーの低減、及び、有機溶剤や水の使用量削減が達成されるため、本発明の製造方法は、各種用途の有機顔料の製造分野において好適に利用可能である。
また、本発明の有機顔料の製造方法によって得られる有機顔料は、例えば着色用途として、平版インキ、グラビアインキ、フレキソインキ等の印刷インキ分野;ラッカー、焼き付け塗料等の塗料分野;ポリオレフィンや熱可塑性ポリエステル等の成形品着色分野;ジェットインキ、カラーフィルター、電子写真粉体トナー等のハイテク分野等の各種の用途に好適に使用できるものである。
図1
図2
図3
図4
図5