特開2018-169394(P2018-169394A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-169394劣化推定装置、劣化推定方法およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-169394(P2018-169394A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】劣化推定装置、劣化推定方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20181005BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20181005BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20181005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   H01M10/42 P
   H01M10/48 P
   H02J7/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-60829(P2018-60829)
(22)【出願日】2018年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2017-65536(P2017-65536)
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】鵜久森 南
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA29
2G216BA35
2G216CB05
2G216CB34
2G216CB51
2G216CC02
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503EA05
5G503EA09
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS03
5H030AS08
5H030AS11
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】蓄電素子の劣化を精度よく推定することが可能な劣化推定装置、劣化推定方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】劣化推定装置101は、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定する推定部22を備える。蓄電素子の劣化推定方法は、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定するステップを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定する推定部を備える、劣化推定装置。
【請求項2】
前記推定部は、所定の充放電サイクル数における前記蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定する、請求項1に記載の劣化推定装置。
【請求項3】
前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加するように構成されている、請求項2に記載の劣化推定装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記通電劣化値を、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値との和により推定する、請求項2または3に記載の劣化推定装置。
【請求項5】
前記蓄電素子におけるSOCの時系列データを取得する取得部をさらに備え、
前記推定部は、前記通電劣化値を、前記SOCの時系列データに基づいて推定する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の劣化推定装置。
【請求項6】
蓄電素子の劣化推定方法であって、
蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定するステップを備える、劣化推定方法。
【請求項7】
コンピュータに、
蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定するステップを実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の劣化を推定する劣化推定装置、劣化推定方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを蓄積し、必要な時に動力源としてエネルギーを供給できる蓄電素子が利用されている。蓄電素子は、携帯機器、電源装置、自動車や鉄道を含む輸送機器、航空・宇宙・建設用を含む産業用機器等に適用されている。必要な時に必要なだけ蓄積しておいたエネルギーを利用できるよう、蓄電素子の蓄電容量を常時把握することは重要である。蓄電素子は時間、および使用頻度に応じて主に化学的に劣化することが知られている。そのため、活用できるエネルギーが時間、および使用頻度に応じて減少する。必要な時に必要なだけエネルギーを利用するために、蓄電素子の劣化状態を把握することは重要である。これまでに、蓄電素子の劣化を推定するための技術が開発されている。
【0003】
特開2011−220900号公報には、電池劣化推定方法が開示されている。二次電池の容量劣化のレベルを推定する電池劣化推定方法は、前記二次電池の容量劣化に影響する複数の使用条件のそれぞれに対応して、その二次電池に流れる電流量、または経過時間を所定の期間に亘って積算する第1の手順を有する。電池劣化推定方法は、単一の使用条件のときの前記二次電池の劣化速度に対する前記複数の使用条件における前記二次電池の劣化速度の比を示す劣化係数を、対応する複数の使用条件のそれぞれについて算出する第2の手順を有する。電池劣化推定方法は、前記第1の手順で前記複数の使用条件ごとに積算された電流積算値または経過時間を、前記第2の手順で対応する複数の使用条件ごとに算出された前記劣化係数によって補正し、前記単一の使用条件における電流積算値または経過時間に換算する第3の手順を有する。電池劣化推定方法は、前記第3の手順で換算された電流積算値または経過時間と前記単一の使用条件における劣化速度とに基づいて、前記二次電池の容量劣化のレベルを推定する第4の手順を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−220900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法では、蓄電素子の劣化の推定精度が十分でない場合がある。
従来の方法では、蓄電素子の様々な使用条件(充放電パターン、充放電レート、環境温度など)を予測し、それぞれの予測使用条件で試験を行ったり計算を行ったりすることで、蓄電素子の劣化に関するデータを予めデータテーブルに記憶している。蓄電素子の使用を開始した後、実際の使用条件をリアルタイムで測定し、その実際の使用条件に近い予測使用条件に関連付けられたデータをデータテーブルから読み出して、蓄電素子の劣化の推定を行っている。従来の方法において劣化の推定精度を向上するには、出来る限り多くの予測使用条件についてデータを記憶しておく必要がある。このような膨大なデータを用意することは煩雑である。
多くの予測使用条件についてデータを用意しても、実際の使用条件が予測使用条件から乖離することがある。このような乖離が生じると、劣化の推定精度が低下する。さらに、多くの予測使用条件についてのデータを、実際の使用条件に応じて適切に選択して劣化推定・予測を行うことは、十分には実現されていない。このような状況から、蓄電素子の劣化を精度よく推定するための技術が求められている。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、蓄電素子の劣化を精度よく推定することが可能な劣化推定装置、劣化推定方法およびコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蓄電素子の容量劣化の主要因は、正極と負極の容量バランスのずれ(蓄電素子の正極と負極における、可逆的に電荷イオンが電極から出入りできる容量の相違)である。従来、時間の経過に伴って、蓄電素子の容量が劣化することは知られていた。本発明者は、通電によって容量バランスのずれが増大することを見出した。この新しい知見に基づき正極と負極の容量バランスのずれを推定することにより、蓄電素子の劣化推定を行う。
【0008】
この発明の一局面に係る劣化推定装置は、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定する推定部を備える。
【0009】
本明細書において、「充放電サイクル数に基づいて推定する」とは、充放電サイクル数そのもの、充放電サイクル数と相関を有する数値(たとえば通電時間)、または充放電サイクル数の代替的な表現(たとえば百分率、平方根)に基づいて、蓄電素子の容量劣化を推定する場合を含む。
【0010】
上記の充放電サイクル数に基づく蓄電素子の容量劣化の推定は、数式モデルを用いて行ってもよい。代替的に、上記の充放電サイクル数に基づく蓄電素子の容量劣化の推定は、蓄電素子の様々な予測使用条件で試験を行ったり計算を行ったりすることで、蓄電素子の容量劣化に関するデータをあらかじめデータテーブルに記憶しておき、実際の使用条件に応じて適切にデータを選択することで、上記の充放電サイクル数に基づく蓄電素子の容量劣化の推定を行ってもよい。
【0011】
通電により(充放電サイクルに伴い)、例えば正極および負極のうちの一方が完全に充電されないようになり、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量が減少する、即ち後述する、正極と負極との「容量バランスのずれ」が増大するという新しい知見を採用する。これにより、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができる。
【0012】
前記推定部は、所定の充放電サイクル数における前記蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定してもよい。
【0013】
上述のように、本発明者は、通電によって容量バランスのずれが増大することを見出した。従来は、蓄電素子に通電した場合でも通電しない場合でも容量バランスのずれは時間の経過に伴って同じだけ生じると考えられていた。新しい知見に基づき、所定の充放電サイクル数における前記蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電による劣化を示す通電劣化値と、蓄電素子の通電によらない劣化を示す非通電劣化値との和により推定すると、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができる。
【0014】
前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加するように構成してもよい。
【0015】
充放電サイクル数に基づく蓄電素子の容量劣化の推定を、数式モデルまたはデータテーブルを用いて行う際に、前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差が充放電サイクル数の増加に伴って増加するように数式モデルまたはデータテーブルを構成することで、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができる。
【0016】
前記推定部は、前記通電劣化値を、前記蓄電素子の負極で成長するSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値との和により推定してもよい。
【0017】
本発明者は、蓄電素子の通電による劣化を推定するために、蓄電素子の負極におけるSEI被膜の破壊と再生成が考慮された数式モデルを考案した。この数式モデルは、従来の数式モデルと比較して、電極における物理現象をより正しく表していると考えられる。前記推定部は、前記通電劣化値を、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値との和により推定することで、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができる。
【0018】
劣化推定装置は、前記蓄電素子におけるSOCの時系列データを取得する取得部をさらに備え、前記推定部は、前記通電劣化値を、前記SOCの時系列データに基づいて推定してもよい。
【0019】
前記推定部は、前記通電劣化値を、前記SOCの時系列データに基づいて推定することで、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができる。
【0020】
本発明の一局面に係る劣化推定装置は、監視装置であるバッテリーマネジメントユニット(BMU)やセルモニタリングユニット(CMU)に実装されてもよい。劣化推定装置は、そうした監視装置が組み込まれた蓄電装置の一部であってもよい。劣化推定装置は、蓄電素子や蓄電装置とは別個に構成されて、劣化推定対象の蓄電素子を含む蓄電装置に、劣化推定時に接続されてもよい。劣化推定装置は、蓄電素子や蓄電装置を遠隔監視してもよい。
【0021】
本発明の局面に係る劣化推定方法は、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定するステップを備える。
【0022】
本発明の他の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を充放電サイクル数に基づいて推定するステップを実行させる。
【0023】
本発明の劣化推定方法は、この方法を実現するためのコンピュータプログラム記録した記録媒体等、種々の態様で実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明の局面によれば、蓄電素子の劣化を精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】監視装置の構成を示す図である。
図2】劣化推定装置の構成を示す図である。
図3】劣化推定装置が推定する電池の劣化を説明するための図である。
図4】新品の電池におけるSOC−P曲線を説明するための図である。
図5】電池におけるキャリアの移動を模式的に表した図である。
図6】電池における容量バランスのずれを説明するための図である。
図7】電池における容量バランスのずれを説明するための図である。
図8】SOCの変動幅に対する電池の通電による劣化量の変化の一例を示す図である。
図9】中心SOCに対する電池の通電による劣化量の変化の一例を示す図である。
図10】劣化推定装置における推定部が用いる配列の一例を示す図である。
図11】劣化推定装置が電池の劣化の推定を行う際の動作手順を示すフローチャートである。
図12】劣化推定装置が時系列データに基づいて通電劣化値の算出を行う際の動作手順を示すフローチャートである。
図13】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図14】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図15】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図16】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図17】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図18】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図19】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図20】劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。
図21】種々のSOCの変動の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0027】
[構成および基本動作]
図1は、監視装置の構成を示す図である。監視装置151は、電流センサ51と、電圧センサ52と、温度センサ53と、履歴作成部54と、カウンタ55と、記憶部56と、通信部57と、劣化推定装置101とを備える。
【0028】
監視装置151に含まれる構成要素のうちの一部が他の構成要素と離れて配置されてもよい。たとえば、劣化推定装置101が遠隔地に配置されて、通信部57と通信してもよい。また、遠隔地に配置されてネットワークに接続されたサーバが、劣化推定装置101として機能してもよい。
【0029】
監視装置151は、監視対象の蓄電素子(本実施形態ではリチウムイオン2次電池)の劣化を監視する。監視装置151は、1つの電池セルを監視対象としてもよいし、直列または並列に接続された複数の電池セル(組電池)を監視対象としてもよい。監視装置151は、組電池とともに蓄電装置(電池パック)を構成してもよい。
【0030】
監視対象の蓄電素子は、リチウムイオン2次電池等の非水電解質2次電池に限定はされず、後述する仮説、アルゴリズムおよび数式モデルが適合する他の電気化学セルであってもよい。以下、監視対象の蓄電素子を、単に電池とも称する。
【0031】
監視装置151におけるカウンタ55は、水晶振動子を用いた発振回路等により生成されるクロックパルスをカウントし、カウントした値を保持する。このカウント値は、現在時刻を示してもよい。
【0032】
電流センサ51は、電池に充電される電流、および電池から放電される電流を計測し、計測結果を示すアナログ信号Aiを履歴作成部54へ出力する。
【0033】
電圧センサ52は、電池における正極および負極間の電圧を計測し、計測結果を示すアナログ信号Avを履歴作成部54へ出力する。
【0034】
温度センサ53は、電池の所定部位における温度Tを計測し、計測結果を示すアナログ信号Atを履歴作成部54へ出力する。
【0035】
履歴作成部54は、たとえば、所定のサンプリング時刻ごとに電流センサ51、電圧センサ52および温度センサ53からそれぞれ受けるアナログ信号Ai、AvおよびAtを、デジタル信号Di、DvおよびDtへ変換する。
【0036】
履歴作成部54は、サンプリング時刻におけるカウンタ55のカウント値、ならびにデジタル信号Di、DvおよびDtを記憶部56に保存する。記憶部56には、サンプリング時刻、電流値、電圧値および温度Tがサンプリング時刻ごとに蓄積される。記憶部56には充放電サイクル数が記憶され、充放電を繰り返す都度、充放電サイクル数は更新される。
【0037】
通信部57は、たとえば、車両におけるメイン制御装置(メインECU(Electronic Control Unit))、パーソナルコンピュータ、サーバ、スマートフォンおよび電池整備用の端末等の他の装置と通信してもよい。
【0038】
通信部57は、たとえば、電池の劣化状態の推定命令を他の装置から受信すると、受信した推定命令を劣化推定装置101へ出力する。なお、監視装置151に各センサが含まれていない構成であっても良い。
【0039】
図2は、劣化推定装置の構成を示す図である。
【0040】
図2を参照して、劣化推定装置101は、制御部20と、記憶部23と、インタフェース部24とを備える。インタフェース部24は、例えば、LANインタフェース及びUSBインタフェース等により構成され、有線又は無線により例えば監視装置151等の他の装置との通信を行う。
劣化推定装置101から通信部57に向かう信号線または端子が、推定結果等を出力する出力部として機能してもよい。通信部57が、出力部として機能してもよい。
劣化推定装置101に、異なるインプットデータを入力すると、出力部から異なるアウトプットが得られる。異なるSOC変動幅(および/または中心SOC)を劣化推定装置101に入力した場合に、出力部が異なるアウトプット(たとえば電圧値、デューティー比)を出力してもよい。
出力部には、出力結果を表示する表示部(または報知部)が接続されてもよい。出力部からアウトプットを、通信部57を経由して、表示部(または報知部)に表示させてもよい。
【0041】
記憶部23には、後述する劣化推定処理を実行するための劣化推定プログラム231が格納されている。劣化推定プログラム231は、例えば、CD−ROMやDVD−ROM、USBメモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体60に格納された状態で提供され、劣化推定装置101にインストールすることにより記憶部23に格納される。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから劣化推定プログラム231を取得し、記憶部23に記憶させることにしてもよい。
記憶部23は劣化推定処理時に必要なデータ等も記憶する。
【0042】
制御部20は、例えばCPUやROM、RAM等により構成され、記憶部23から読み出した劣化推定プログラム231等のコンピュータプログラムを実行することにより、劣化推定装置101の動作を制御する。制御部20は、劣化推定プログラム231を読み出して実行することにより、劣化推定処理を実行する処理部として機能する。
具体的には、制御部20は、取得部21と、推定部22とを含む。
【0043】
劣化推定装置101における取得部21は、電池におけるSOC(State Of Charge)の時系列データを取得する。
より詳細には、取得部21は、通信部57から推定命令を受けると、受けた推定命令に従って、各サンプリング時刻、ならびに当該各サンプリング時刻における電流値、電圧値および温度Tを監視装置151における記憶部56からインタフェース部24を介して取得する。
このように取得部21は、電池の使用開始後に測定したデータを記憶部56から取得する。
取得部21は、代替的に、データファイルからデータを取得してもよい。
【0044】
取得部21は、サンプリング時刻、SOCおよび温度についてのデータを格納するための記憶領域を確保する。
取得部21は、たとえば、Snum個のサンプリング時刻についてのデータを格納するための、ts[1]〜ts[Snum]の要素を有する配列Atsを確保する。
【0045】
また、取得部21は、サンプリング時刻ts[1]〜ts[Snum]におけるSOCについてのデータを格納するための、sc[1]〜sc[Snum]の要素を有する配列Asocを確保する。
【0046】
また、取得部21は、サンプリング時刻ts[1]〜ts[Snum]における温度Tについてのデータを格納するための、tmp[1]〜tmp[Snum]の要素を有する配列Atmpを確保する。
【0047】
取得部21は、たとえば、各サンプリング時刻における電流値を集計することにより電池に通電された電気量を算出し、算出した電気量をSOCの変化量に変換する。そして、取得部21は、変換結果に基づいて各サンプリング時刻におけるSOCを算出する。取得部21は、たとえば開放電圧の計測値を用いてSOCの補正を行ってもよい。
【0048】
取得部21は、配列AtsのインデックスN(ここで、Nは1〜Snumの整数である。)が時系列順になるように、配列Atsの各要素に対応のサンプリング時刻を格納する。
【0049】
取得部21は、サンプリング時刻ts[1]〜ts[Snum]におけるSOCをsc[1]〜sc[Snum]にそれぞれ格納する。同様に、取得部21は、サンプリング時刻ts[1]〜ts[Snum]における温度Tをtmp[1]〜tmp[Snum]にそれぞれ格納する。
取得部21は、配列Ats、AsocおよびAtmpを推定部22へ出力する。
【0050】
図3は、劣化推定装置が推定する電池の劣化を説明するための図である。図3では、縦軸は、新品時の電池容量を基準とした場合における電池の容量を百分率で示し、横軸は、充放電の総回数である全サイクル数を基準とした場合におけるサイクル数を百分率で示す。また、横軸は、新品状態からの経過時間とみなすことも可能である。
図3を参照して、容量変化Cvu3は、電池の充放電が行われた場合における容量のサイクル数に対する変化(真のサイクル劣化:true cycle capacity fading)であり、通電試験により得られた結果である。容量変化Cvn3は、電池の通電が行われなかった場合における容量の時間変化(経時劣化:calendar capacity fading)であり、事前に行った放置試験に基づいて得られた結果である。
【0051】
このように、電池の通電が行われた場合、電池を放置した場合と比べて劣化の度合いが大きくなる。容量変化Cvu3の示す容量と容量変化Cvn3の示す容量との差分を、電池の通電による劣化とみなすことが可能である。言い換えると、電池の劣化は、電池の通電によらない劣化に電池の通電による劣化を加えたものである。
【0052】
[容量バランスのずれ]
図4は、新品の電池におけるSOC−P曲線(SOC−V曲線)を説明するための図である。図4では、縦軸は、電位を示し、横軸は、SOCを示す。
図4には、新品の電池における、正極単体の電位のSOCに対する変化Cvp4、および負極単体の電位のSOCに対する変化Cvn4が示される。正極単体の電位および負極単体の電位の差が電池における電極間の電圧(電池電圧)である。変化Cvc4は、電極間の電圧のSOCに対する変化である。
【0053】
図5は、リチウムイオン2次電池におけるキャリアの移動を模式的に表した図である。リチウム金属酸化物により形成される正極Pp、および炭素により形成される負極Npは、電解液ELに浸される。正極Ppには、リチウムイオンを収容可能な複数のサイトSpが存在する。負極Npには、リチウムイオンを収容可能な複数のサイトSnが存在する。
【0054】
図示している状態と異なるが、新品電池の放電状態では、すべてのリチウムイオンが正極PpにおけるサイトSpに収容されている。電池が充電されると、正極Ppに収容されたリチウムイオンの一部は、電解液を経由して負極Npへ移動してサイトSnに収容される。
【0055】
図5に示すように、劣化した電池では、SEI(Solid Electrolyte Interface)被膜Lsが負極の表面に形成されることが知られている。SEI被膜Lsは、リチウムイオンを捕獲する性質を有する。
SEI被膜Lsにリチウムイオンが捕獲された場合、放電状態において、リチウムイオンが収容されないサイトSpが発生する。また、充電状態において、サイトSnに収容されるリチウムイオンの個数が、新品電池の場合と比べて減少する。
【0056】
図6は、電池における容量バランスのずれを説明するための図である。図6の見方は、図4と同様である。
図6には、劣化した電池における、正極単体の電位のSOCに対する変化Cvp6、負極単体の電位のSOCに対する変化Cvn6、および電極間の電圧のSOCに対する変化Cvc6が示される。
【0057】
SEI被膜Lsにリチウムイオンが捕獲された場合(図5参照)、負極単体の電位のSOCに対する変化が、負極Npが完全充電されない方向にずれる。具体的には、図4に示す変化Cvn4がずれることにより、図6に示す変化Cvn6となる。
このようなずれが発生すると、正極Ppおよび負極Pnの容量が劣化しない場合においても、電池から可逆的に取り出せる電気量が減少する。従って、電池容量が減少する。
この現象、および当該現象によって低下した電池容量を、本明細書では「容量バランスのずれ」と定義する。
一般的に、正極Ppおよび負極Pnにおける副反応速度が異なることにより、上記現象が発生する。上述のように負極Pnに炭素を用いる場合、負極Pnにおいて形成されるSEI被膜Lsにより上記現象が発生するとされている。
【0058】
[新しい知見1]
図7は、電池における容量バランスのずれを説明するための図である。図7では、縦軸は、劣化量を示し、横軸は、サイクル数の平方根を示す。横軸は、新品状態からの経過時間の平方根とみなすことも可能である。
【0059】
図7を参照して、Cvu7は、電池の充放電が行われた場合における容量バランスのずれの実測値の、サイクル数の平方根に対する変化である。Cvn7は、電池の充放電が行われなかった場合における容量バランスのずれの変化である。つまり前者が通電時における容量バランスのずれの推移であり、後者が非通電時における、経時的に起こる容量バランスのずれの推移である。後者は次のようにして求めることができる。まず、SOCと温度の異なる複数の電池について放置試験を行うことで、各SOCおよび温度における経時劣化量(後述の非通電劣化値Qcnd)を求める。また、後述の式(2)または式(3)を用いて各SOCおよび温度における係数を求める。次に、サイクル試験における各SOCとそのSOCに滞在する時間(たとえば、微小時間)の平方根と、事前に求めた対応する係数から、サイクル試験中の微小時間における経時劣化量を所定時間間隔で求める。それらの経時劣化量を累積することで、サイクル試験における経時劣化量を算出する。
【0060】
リチウムイオン2次電池では、負極においてSEI被膜が成長することが知られている。このSEI被膜の成長に従ってSEI被膜に捕獲されるリチウムイオンの量が増えることにより、容量バランスのずれが大きくなる。
言い換えると、SEI被膜の成長に従って、負極において挿入および離脱するリチウムイオンの量と、正極において挿入および離脱するリチウムイオンの量とのバランスがずれる。
【0061】
電池の通電が行われない場合においてもSEI被膜が成長し、劣化量変化Cvn7のように電池が劣化することは、従来から知られていた。つまり、電池の通電が行われない場合においても、経時的な容量バランスのずれによって、電池が劣化することは知られていた。
本発明者が行った実験によると、図7のCvu7に示すように、サイクル数が増えるにつれて、電池の通電が行われない場合と比べて、電池の通電が行われた場合における容量バランスのずれが増大した。このことから本発明者は、通電によって容量バランスのずれがさらに増大することを見出した。このことは、従来知られていた理論や法則からは予測できない、新しい知見である。サイクル数が増えるにつれて、容量バランスのずれが増大していることから、通電により負極活物質上におけSEI被膜の生成量が増大していることが推察される。SEI被膜は負極活物質上における分解反応が起こることで生じ、膜厚さが厚くなると成長が鈍化するため、非通電時においては、SEI被膜の生成量、つまり容量バランスのずれは次第に飽和すると報告されている。以上より、通電により負極活物質が膨張収縮することで、SEI被膜が破壊されたり、活物質から剥離したりすることにより、SEI被膜の成長が鈍化することなく再生成し続ける為、非通電時よりも過剰量のSEI被膜が生成していると考えることが出来る。
【0062】
[新しい知見2]
図8は、SOCの変動幅に対する電池の通電による劣化量の変化の一例を示す図である。図8では、縦軸は、所定の電気量を通電した場合における劣化量と3%のSOC変動幅における劣化量との差分を示し、横軸は、SOCの変動幅を示す。
図8には、中心SOCが60%になるように所定回数充放電を繰り返した後の、通電による劣化量が、SOCの変動幅に対してプロットされている。
【0063】
図8に示すように、本発明者は、中心SOCが同じであってもSOCの変動幅が異なる場合、通電による劣化量が変化することを見出した。通電による劣化が、SOCの変動の大きさに応じて大きくなることを見出した。
この現象のメカニズムはまだ十分には解明されていない。本発明者は、SOCの変動の大きさが大きいほど、負極の膨張(充電時)と収縮(放電時)が顕著になることで負極の表面に形成されたSEI被膜が部分的に破壊され、その結果として電池の通電による劣化量が大きくなると考察している。
【0064】
[新しい知見3]
図9は、中心SOCに対する電池の通電による劣化量の変化の一例を示す図である。図9では、縦軸は、所定の電気量を通電した場合における劣化量と10%の中心SOCにおける劣化量との差分を示し、横軸は、SOCの変動の中心である中心SOCを示す。ここで、中心SOCは、SOCの時系列データにおけるSOCの変動の中心の一例である。
【0065】
図9には、SOCの変動幅が20%になるように所定回数充放電を繰り返した後の通電による劣化量が、中心SOCに対してプロットされている。
ここで、充放電動作について一例を挙げて説明する。中心SOCが10%であり、かつSOCの変動幅が20%になるように充放電を繰り返すことは、SOCが0%〜20%の間を往復するように充放電を繰り返すことである。
【0066】
図9に示すように、本発明者は、SOCの変動幅が同じであっても、中心SOCが異なると、通電による劣化量が変化することを見出した。通電による劣化の進行度合いが、中心SOCに応じて異なることを見出した。中心SOCが低い時(たとえば中心SOCが10%の時)は、中心SOCが50%付近の時と比較して、SOC変動幅が同じであるにも関わらず、劣化量が小さい。中心SOCが高い時(たとえば中心SOCが70%の時)も、中心SOCが50%付近の時と比較して、SOC変動幅が同じであるにも関わらず、劣化量が小さい。
【0067】
[新しい数式モデルに関する着想]
上述の新しい知見1〜3に基づき、本発明者は、蓄電素子の通電による劣化を推定するための新しい数式モデルに関する以下の着想を得た。
(A)数式モデルに、負極におけるSEI被膜の破壊と再生成を取り入れる。SEI被膜が形成されるに従いSEI被膜の成長速度が低下するという知見とともに、SEI被膜が破壊された箇所ではSEI被膜の成長速度が元に戻るという独自のアイディアを数式モデルで表現する。
(B)SOCの変動の大きさが大きいほど、蓄電素子の通電による劣化量が大きくなるようにする。
(C)係数に、SOC依存性を持たせる(中心SOC、および/または、SOC変動幅に応じて係数値を異ならせる)。
(D)数式モデルにおいて、蓄電素子の負極から破壊して、剥離したSEI被膜による、前記蓄電素子の通電による劣化も考慮する。
この数式モデルは、電気エネルギーの出し入れの担い手であるイオンが電極表面の被膜(SEI被膜)を通じて出入りすると考えたものである。より詳細には、被膜内に存在するイオンを考慮し、さらに、充放電に伴い電極表面から剥離した被膜に含まれるイオンをも考慮した劣化推定モデルである。
【0068】
[非通電劣化値Qcndの算出処理]
再び図2を参照して、推定部22は、取得部21によって取得されたSOCの時系列データにおけるSOCの変動の大きさに基づいて、電池の劣化を推定する。
推定部22は、たとえば、通電劣化値Qcurと非通電劣化値Qcndとの和に基づいて電池の劣化を推定する。具体的には、推定部22は、以下の式(1)に示すように、通電劣化値Qcurと非通電劣化値Qcndとの和を電池の劣化を示す劣化値Qdegとして算出する。
【数1】
【0069】
推定部22は、算出した劣化値Qdegを示す推定結果情報を、推定命令の応答として通信部57経由で他の装置へ送信してもよい。
推定部22は、通電劣化値Qcurと非通電劣化値Qcndとの和である劣化値Qdegを電池の劣化として推定する構成としたが、これに限定するものではない。推定部22は、上記和に基づく値、劣化値Qdegの所定の基準に対する百分率値、または劣化値Qdegに応じた劣化レベル等を電池の劣化として推定する構成であってもよい。さらにQcurは少なくともQrgnとQdstで構成されている。詳細には、負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値Qrgn、および負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値Qdstを含む。QrgnはSOC変動によりSEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化値であり、QdstはSOC変動により剥離した被膜による劣化値である。
【0070】
非通電劣化値Qcndは、時間の経過とともに増加する。たとえば、非通電劣化値Qcndの微小時間dtあたりの増分dQcndは、以下の式(2)により算出される。
【数2】
【0071】
ここで、係数kcは、SOCおよび温度Tの関数である。式(2)を変形することにより、式(3)が得られる。
【数3】
【0072】
ここで、tは経過時間を示し、kcr=√(2×kc)である。従って、非通電劣化値Qcndは、ルート則に従って増加する。ルート則に従って増加するとは、時間の経過に伴って非通電劣化値Qcndの単位時間当たりの増分が漸減することを意味する。推定部22は、式(2)および式(3)の少なくともいずれか一方を用いて非通電劣化値Qcndを算出する。
【0073】
[通電劣化値Qcurの算出処理]
推定部22は、たとえば、SOCの変動の大きさに基づく電極における被膜の状態の変化に基づいて、電池の通電による劣化を推定する。
本実施形態では、推定部22は、電池の電極から剥離した被膜に起因する剥離劣化値も考慮して、電池の通電による劣化を推定する。
より詳細には、推定部22は、電池における電極の被膜に起因する膜劣化値、および剥離劣化値の和を通電劣化値Qcurとして算出する。
【0074】
推定部22は、式(1)に示すように、リチウムイオン2次電池における負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値Qrgn、および負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値Qdstの和を通電劣化値Qcurとして算出する。
【0075】
記憶部23は、SOCと電池の通電による劣化の進行度合いを示す劣化係数である係数kr(後述の式(4)参照)との対応関係を保持する。記憶部23は、SOCおよび温度Tと係数krとの対応関係を示す対応テーブルTblrを保持してもよい。
【0076】
たとえば、温度TごとかつSOCごとの通電による劣化量の時間変化が事前の試験により計測される。
係数krは、当該試験の計測結果に基づいて算出される。詳細には、係数krは、後述する分割劣化値を計算する配列の要素とともに、計測結果と照らし合わせて、最適化計算で求めることが望ましい。
【0077】
また、記憶部23は、SOCと電池の通電によらない劣化の進行度合いを示す劣化係数(上述の係数kc)との対応関係を保持する。記憶部23は、SOCおよび温度Tと係数kcとの対応関係を示す対応テーブルTblcを保持してもよい。
【0078】
SOCおよび温度Tと係数kcとの対応関係は、たとえば、係数krの算出と同様の試験を行うことにより導出される。
【0079】
推定部22は、たとえば、膜劣化値Qrgnを時間の経過とともに増加させる。推定部22は、たとえば、膜劣化値Qrgnの増加が当該膜劣化値Qrgnの大きさに応じて小さくなり、かつ当該増加が、SOCに対応する係数krに応じて大きくなるように当該膜劣化値Qrgnを算出する。
【0080】
具体的には、膜劣化値Qrgnの微小時間dtあたりの増分dQrgnは、以下の式(4)により算出される。
【数4】
【0081】
式(4)を変形することにより、以下の式(5)が得られる。
【数5】
【0082】
ここで、krr=√(2×kr)である。従って、膜劣化値Qrgnは、ルート則に従って増加する。ルート則に従って増加するとは、時間の経過に伴って膜劣化値Qrgnの単位時間当たりの増分が漸減することを意味する。推定部22は、式(4)および式(5)の少なくともいずれか一方を用いて膜劣化値Qrgnを算出する。
【0083】
図10は、劣化推定装置における推定部が用いる配列の一例を示す図である。図10において縦軸は、中心SOCと、SOC変動幅との両方を示す、仮想的な軸である。図10の左側はSEI被膜の剥離が発生する前の状態を表し、図10の右側はSEI被膜の剥離が発生した後の状態を表す。図10は、後述のようにあるSOC(qd[j+2]とqd[j+3]との間のSOC値)を中心に12%より大きく14%以下のSOCの変動が発生した状況を示す。推定部22は、たとえば、膜劣化値Qrgnを複数の分割劣化値の和によって算出する。
【0084】
具体的には、推定部22は、各分割劣化値を格納するための記憶領域を確保する。
推定部22は、Dnum個の分割劣化値を格納するための、qd[1]〜qd[Dnum]の要素を有する配列Aqdを確保する。
ここで、配列Aqdの要素数Dnumは、たとえば、100%を間隔INTで除した値である。間隔INTは、任意に設定可能な値であり、この例では間隔INTが2である。したがって、この例では、Dnumは50である。
【0085】
推定部22は、たとえば、複数の分割劣化値の各々を時間の経過とともに増加させる。推定部22は、たとえば、分割劣化値qd[j]の成長速度が当該分割劣化値qd[j]の成長に応じて小さくなるように(分割劣化値の成長速度が漸減するように)当該分割劣化値qd[j]を算出する。ここで、インデックスjは1〜Dnumの整数である。
【0086】
具体的には、推定部22は、式(4)に基づく以下の式(6)を用いて、サンプリング時刻ts[N−1]〜ts[N]における分割劣化値qd[j]の増分Δ(Sj[N])を算出する。
【数6】
【0087】
ここで、Δtは、サンプリング時刻ts[N−1]〜ts[N]の間隔である。係数kr(sc[N],tmp[N])は、サンプリング時刻ts[N]におけるsc[N]および温度tmp[N]に対応する係数であり、対応テーブルTblrに基づいて算出可能である。式(6)は、これまでの劣化履歴(劣化経路)を初期からN-1まで集約(積分
)し、その集約を踏まえ、新たに、N-1から次のサンプリングタイミングであるNまで
の時間(Δt)における増加分であるΔ(Sj[N])、分割劣化値qd[j]の増分(変化値)をルート則に従って求めているものである。また、式(6)の関数fは、以下の式(7)により表される。
【数7】
【0088】
また、サンプリング時刻ts[N−1]における分割劣化値qd[j]をqd[j][N−1]によって表すことにより、式(7)を以下の式(8)に変形することが可能である。
【数8】
【0089】
サンプリング時刻ts[N−1]における分割劣化値qd[j]が小さいほど、Δ(Sj[N])が小さくなる。言い換えると、サンプリング時刻ts[N−1]における分割劣化値qd[j]が大きいほど、Δ(Sj[N])が大きくなる。
【0090】
推定部22は、qd[j][N−1]にΔ(Sj[N])を加算することにより、サンプリング時刻ts[N]における分割劣化値qd[j]を算出する。
【0091】
図10の剥離発生前における配列Aqdに示すように、剥離発生までに推定部22によって算出された値が分割劣化値qd[1]〜qd[Dnum]の各々においてハッチングにより示される。
【0092】
推定部22では、以下の処理を行うことにより電池の劣化を推定する。推定部22は、たとえば、SOCの変動の大きさが所定条件C1を満たした場合、複数の分割劣化値のうちの変動の大きさに応じた個数の分割劣化値を剥離劣化値Qdstに加算するとともに、剥離劣化値Qdstの加算に用いた分割劣化値の各々を当該分割劣化値より小さい所定値に設定する。
【0093】
具体的には、所定条件C1は、たとえば、SOCの変動の大きさが間隔INTより大きくなることである。図10に示す例では、12%より大きくかつ14%以下のSOCの変動が発生し、SEI被膜の剥離が発生した状況が示される。この場合、SOCの変動の大きさが間隔INT言い換えると2より大きいので、所定条件C1が満たされる。
【0094】
推定部22は、所定条件C1が満たされると、剥離発生前における分割劣化値qd[j]〜qd[j+5]の各値の和を剥離劣化値Qdstに加算する。ここで、インデックスjは、たとえば、変動直前のSOCが(j−1)×INTより大きく、かつ当該SOCがj×INT以下となる値である。
【0095】
そして、推定部22は、剥離発生後における配列Aqdに示すように、分割劣化値qd[j]〜qd[j+5]の各値をゼロに設定する。
【0096】
推定部22は、分割劣化値qd[j]〜qd[j+5]の各値をゼロに設定する構成に限らず、分割劣化値qd[j]〜qd[j+5]の各値より小さい値であれば、ゼロ以外の所定値に設定する構成であってもよい。
【0097】
[動作の流れ]
監視装置151または監視装置151における劣化推定装置101は、制御部20を備え、制御部20は、以下に示すフローチャートの各ステップの一部または全部を含む劣化推定プログラム231を記憶部23から読み出して実行する。
【0098】
図11は、劣化推定装置が電池の劣化の推定を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0099】
図11を参照して、劣化推定装置101の制御部20が他の装置から推定命令を受信した状況を想定する。以下、例えばSOCが40%〜80%の間を往復するように充放電を繰り返す場合につき説明する。
【0100】
まず、劣化推定装置101は、充放電サイクル数を取得する(ステップS100)。
劣化推定装置101は、電池のSOCおよび温度Tの時系列データを取得する(ステップS102)。
【0101】
次に、劣化推定装置101は、SOCおよび温度Tの時系列データに基づいて、電池の非通電劣化値Qcndを算出する(ステップS104)。
【0102】
劣化推定装置101は、SOCおよび温度Tの時系列データに基づいて、電池の通電劣化値Qcurを算出する(ステップS106)。
【0103】
劣化推定装置101は、通電劣化値Qcurおよび非通電劣化値Qcndの和を電池の劣化を示す劣化値Qdegとして算出し、算出結果に基づいて電池の劣化(容量バランスのずれ)を推定する(ステップS108)。通電劣化値Qcurおよび非通電劣化値Qcndは、通電劣化値Qcurと非通電劣化値Qcndとの差が、充放電サイクル数の増加に伴って増加するように算出される。例えば、予めサイクル試験を行い、充放電サイクル数に対応して前記係数kcおよび係数krのうちの少なくとも一方を変えるようにする。
【0104】
上記ステップS100およびS102の順番、ステップS104およびS106の順番は、上記に限らず、順番を入れ替えてもよい。
【0105】
図12は、劣化推定装置が時系列データに基づいて通電劣化値の算出を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。図12は、図11のステップS106における動作の詳細を示している。この例では、図9に示す場合と異なり、サンプリング間隔におけるSOCの変動幅が、間隔INTより小さくなるようなサンプリング間隔を想定している。
【0106】
まず、劣化推定装置101は、インデックスNを1に初期化する(ステップS202)。
【0107】
次に、劣化推定装置101は、SOC_old、配列Aqdおよび剥離劣化値Qdstを初期化する。具体的には、劣化推定装置101は、SOC_oldをsc[1]に設定する。また、劣化推定装置101は、配列Aqdにおける各要素qd[1]〜qd[Dnum]、および剥離劣化値Qdstの値をゼロに初期化する(ステップS204)。
【0108】
劣化推定装置101は、インデックスNをインクリメントする(ステップS206)。
【0109】
劣化推定装置101は、sc[N]がSOC_oldおよび間隔INTの和より大きい場合(ステップS208でYES)、SOCの変動の大きさに対応するインデックスjtを決定する(ステップS210)。
【0110】
劣化推定装置101は、たとえば、SOC_oldが(jt−1)×INTより大きく、かつSOC_oldがjt×INT以下となるインデックスjtを決定する。
【0111】
劣化推定装置101は、剥離劣化値Qdstに分割劣化値qd[jt]を加算する(ステップS212)。
【0112】
劣化推定装置101は、分割劣化値qd[jt]をゼロに設定する(ステップS214)。
【0113】
劣化推定装置101は、SOC_oldの値をSOC_oldおよび間隔INTの和に更新する(ステップS216)。
【0114】
一方、劣化推定装置101は、sc[N]がSOC_oldおよび間隔INTの和以下である場合(ステップS208でNO)、sc[N]とSOC_oldから間隔INTを差し引いた値とを比較する(ステップS218)。
【0115】
劣化推定装置101は、sc[N]がSOC_oldから間隔INTを差し引いた値以下である場合(ステップS218でYES)、SOC_oldの値をSOC_oldから間隔INTを差し引いた値に更新する(ステップS220)。
【0116】
次に、劣化推定装置101は、SOC_oldを更新するか(ステップS216およびステップS220)、またはsc[N]がSOC_oldから間隔INTを差し引いた値より大きい場合(ステップS218でNO)、式(6)を用いて配列Aqdの各要素qd[1]〜qd[Dnum]の値を更新する(ステップS222)。
【0117】
劣化推定装置101は、インデックスNと配列Atsの要素数Snumとを比較し、インデックスNと要素数Snumとが異なる場合(ステップS224でNO)、インデックスNをインクリメントする(ステップS226)。
【0118】
次に、劣化推定装置101は、sc[N]とSOC_oldおよび間隔INTの和とを比較する(ステップS208)。
【0119】
一方、劣化推定装置101は、インデックスNと要素数Snumとが一致する場合(ステップS224でYES)、通電劣化値Qcurの算出処理を行う(ステップS228)。具体的には、劣化推定装置101は、qd[1]〜qd[Dnum]の和である膜劣化値Qrgnと剥離劣化値Qdstとの和を通電劣化値Qcurとして算出する。
【0120】
上述のように、このフローチャートでは、サンプリング間隔におけるSOCの変動幅が間隔INTより小さくなるようなサンプリング間隔を想定しているが、当該変動幅が間隔INT以上である場合、上記ステップS210において、対応のインデックスを複数決定することにより通電劣化値Qcurを算出することが可能となる。
【0121】
[効果]
図13図20は、劣化推定装置による電池の劣化推定における誤差の一例を示す図である。図13図20では、縦軸は誤差を示し、横軸はサイクル数を示す。
【0122】
ここで、誤差は、たとえば、計算値と実測値との差の絶対値を当該実測値で除した値を百分率で表した値である。
【0123】
図13図20には、本発明の実施の形態に係る劣化推定装置による誤差変化Cvi、および比較例による誤差変化Cvrが示される。比較例による計算値は、たとえば、通電電気量である電池に流出入した電流の絶対値の積算値に基づいて算出される。
【0124】
図13図16には、SOCの変動幅を20%に固定する一方、中心SOCを変化させた場合における結果が示される。
【0125】
より詳細には、図13には、SOCの変動が0%〜20%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0126】
図14には、SOCの変動が20%〜40%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0127】
図15には、SOCの変動が40%〜60%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0128】
図16には、SOCの変動が60%〜80%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0129】
図13図16に示すように、比較例では、SOCの変動が40%〜60%、および60%〜80%の場合に誤差が抑制されているが、SOCの変動が0%〜20%、および20%〜40%の場合に、サイクル数の増大に応じて誤差が増大している。
【0130】
一方、本発明の実施の形態に係る劣化推定装置101では、いずれのSOCの変動の大きさにおいても、サイクル数の増大に関わらず、誤差が抑制されている。
【0131】
図17図20には、中心SOCを60%に固定する一方、SOCの変動幅を変化させた場合における結果が示される。
【0132】
より詳細には、図17には、中心SOCが60%であり、かつSOCの変動幅が1%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0133】
図18には、中心SOCが60%であり、かつSOCの変動幅が10%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0134】
図19には、中心SOCが60%であり、かつSOCの変動幅が40%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0135】
図20には、中心SOCが60%であり、かつSOCの変動幅が60%になるように充放電を繰り返した後の誤差変化Cvi,Cvrが、サイクル数に対してプロットされている。
【0136】
図17図20に示すように、比較例では、SOCの変動幅が10%および40%の場合に誤差が抑制されているが、SOCの変動幅が1%および60%の場合に誤差が大きい。
【0137】
一方、本発明の実施の形態に係る劣化推定装置101では、いずれのSOCの変動幅においても、誤差が同等あるいは抑制されている。
【0138】
時系列データにおけるSOCの変動の大きさを考慮しない従来の推定手法では、たとえば、SOC50%を中心として±10%の範囲でSOCが変動したときの劣化推定値と、SOC50%を中心として±30%の範囲でSOCが変動したときの劣化推定値とが同じになる(図21AおよびB参照)。従来の手法では、ユーザーによって千差万別である蓄電素子の使用パターン(充放電パターン)に適応することができず、劣化の推定精度を十分に向上できない。本実施形態の劣化推定方法によれば、時系列データにおけるSOCの変動の大きさに基づいて、推定部22により蓄電素子の劣化を推定するので、図17図20に示すように、劣化の推定精度を向上することができる。
【0139】
また、あるSOCを基準として、充電側(プラス側)および放電側(マイナス側)にSOCを変動させるときのSOC変動幅が同じであっても、中心SOCが異なると、蓄電素子の通電による劣化量も異なる(図21C参照)。劣化現象は化学変化であり、化学変化は主たる化学種の周辺環境に依存する。中心SOCが異なるとその環境が変わるため、蓄電素子の通電による劣化量も異なると考えられる。容量劣化の主要因である容量バランスのずれは、負極活物質上の被膜(蓄電素子がリチウムイオン電池である場合はSEI被膜)が成長することにより起こるとされている。中心SOCが異なる、つまり負極活物質の電位が異なることで、SEI被膜の成長に影響するものと推察される。本実施形態の劣化推定方法によれば、SOCの変動の中心に基づいて蓄電素子の劣化を推定するので、図13図16に示すように、SOCの変動の中心の相違に関わらず蓄電素子の劣化を精度よく推定できる。
【0140】
以上より、充放電サイクル数の増加に伴って、容量バランスのずれが増大するという新しい知見を採用することで、従来よりも、蓄電素子の劣化を精度良く推定することができることが確認された。
容量バランスのずれの増大による、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量の減少量(容量の劣化量)を推定することにより、蓄電素子の内部状態を把握できる。負極のSOC100%における電位も分かるので、蓄電素子がリチウムイオン二次電池である場合、負極における金属リチウムの析出のリスクも分かる。該リスクも含めた蓄電素子のSOH(State of Health)を監視できる。容量バランスのずれに基づいて、SOC−OCV曲線を求めることもできるので、蓄電素子をどのように制御するかを決定することもできる。
【0141】
本発明の実施の形態に係る劣化推定装置101は、監視装置151の内部に設けられる構成としたが、これに限定するものではない。劣化推定装置101は、監視装置151の外部に設けられてもよい。この場合、劣化推定装置101は、たとえば、USB(Universal Serial Bus)ケーブル等のバスを介して監視装置151からSOCの時系列データを取得する。
【0142】
劣化推定装置101は、SOCの時系列データを用いる構成としたが、これに限定するものではない。劣化推定装置101は、SOCの時系列データの代わりに、充電量といった絶対値の時系列データおよび充電レベルの時系列データ等を用いてもよい。SOCの時系列データは、電流積算法等によって求められるΔSOCであってもよいし、SOC初期値にΔSOCを加算/減算したデータであってもよい。
【0143】
劣化推定装置101では、推定部22は、電池の劣化推定として劣化値を算出する構成としたが、これに限定するものではない。推定部22は、電池の劣化を示すレベル、電池の寿命および電池の交換時期等を算出してもよい。
【0144】
劣化推定装置101では、推定部22は、SOCの変動の大きさ、取得時点のSOC、および取得時点の温度Tに基づいて、通電劣化値Qcurを算出する構成としたが、これに限定するものではない。推定部22は、SOCの変動の大きさに基づいて、電池の劣化を推定してもよい。推定部22は、たとえば、SOCの変動の大きさが小さく、かつ温度Tの変動が小さい場合には、係数krを固定値として用いてもよい。
【0145】
推定部22は、たとえば、SOCの変動の大きさに基づいて、電池の通電による劣化を推定する構成であってもよい。推定部22は、たとえば、係数krを固定値として用いて通電劣化値Qcurを算出する。
【0146】
推定部22は、たとえば、SOCの変動の大きさ、および時系列データにおけるSOCの変動の中心に基づいて、電池の劣化を推定する構成であってもよいし、また、SOCの変動の大きさ、および取得時点のSOCに基づいて、電池の劣化を推定する構成であってもよい。推定部22は、たとえば、温度Tの変動が小さい場合には、係数krおよび係数kcをSOCの関数として用いて、通電劣化値Qcurおよび非通電劣化値Qcndを算出することが可能である。
劣化推定装置101では、推定部22は、通電劣化値Qcurと非通電劣化値Qcndとの和に基づいて蓄電素子の劣化を推定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。推定部22は、非通電劣化値Qcndを用いずに、通電劣化値Qcurに基づいて蓄電素子の劣化を推定する構成であってもよい。たとえば、電池の新品状態からの経過時間が短い場合、推定部22は、通電劣化値Qcurに基づいて蓄電素子の劣化を精度よく推定することが可能である。
【0147】
劣化推定装置101では、推定部22は、剥離劣化値Qdstに基づいて通電劣化値Qcurを算出する構成としたが、これに限定するものではない。推定部22は、剥離劣化値Qdsを用いずに通電劣化値Qcurを算出してもよい。
【0148】
上記実施の形態においては、SOCが40%〜80%の間を往復するように充放電を繰り返す場合につき説明しているが、これに限定されるものではない。
【0149】
上記実施の形態は、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0150】
20 制御部
21 取得部
22 推定部
23 記憶部
231 劣化推定プログラム
51 電流センサ
52 電圧センサ
53 温度センサ
54 履歴作成部
55 カウンタ
56 記憶部
57 通信部
60 記録媒体
101 劣化推定装置
151 監視装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2018年8月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
この発明の一局面に係る劣化推定装置は、所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定する推定部を備え、前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加するように構成されている
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
この発明の他局面に係る劣化推定装置は、所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、前記通電劣化値、前記蓄電素子の負極で成長するSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定する推定部を備え、前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明の局面に係る劣化推定方法は、所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加させる
本発明の他の局面に係る劣化推定方法は、所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、前記通電劣化値は、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定し、前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定するステップを実行させ、前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加させる
本発明の他の局面に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、所定の充放電サイクル数における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、前記通電劣化値は、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定する処理を実行させ、前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定する推定部を備え
前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加するように構成されている、劣化推定装置。
【請求項2】
定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、
前記通電劣化値は、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定する推定部を備え、
前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、
前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である、劣化推定装置。
【請求項3】
前記蓄電素子におけるSOCの時系列データを取得する取得部をさらに備え、
前記推定部は、前記通電劣化値を、前記SOCの時系列データに基づいて推定する、請求項1又は2に記載の劣化推定装置。
【請求項4】
蓄電素子の劣化推定方法であって、
所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、
前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加させる、劣化推定方法。
【請求項5】
蓄電素子の劣化推定方法であって、
所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、
前記通電劣化値は、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定し、
前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、
前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である、劣化推定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
所定の充放電サイクル数における、蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、その時点における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定するステップを実行させ
前記通電劣化値と前記非通電劣化値との差は、充放電サイクル数の増加に伴って増加させる、コンピュータプログラム。
【請求項7】
コンピュータに、
蓄電素子から可逆的に取り出せる電気量である蓄電素子の容量の劣化を、所定の充放電サイクル数における蓄電素子の通電劣化値と非通電劣化値との和により推定し、
前記通電劣化値は、前記蓄電素子の負極で成長するSEI被膜に起因する膜劣化値と、前記負極から剥離したSEI被膜に起因する剥離劣化値とから推定する
処理を実行させ、
前記膜劣化値は、SEI被膜が剥離して新たに電極上に形成された被膜による劣化の推定値であり、
前記剥離劣化値は、SOC変動により剥離した被膜による劣化の推定値である、コンピュータプログラム。