特開2018-170151(P2018-170151A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-170151(P2018-170151A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20181005BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20181005BHJP
【FI】
   H01M2/02 B
   H01M10/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-66344(P2017-66344)
(22)【出願日】2017年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100117972
【弁理士】
【氏名又は名称】河崎 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100190713
【弁理士】
【氏名又は名称】津村 祐子
(72)【発明者】
【氏名】辻中 彬人
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011KK01
5H028AA07
5H028CC08
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】鉛蓄電池の電槽内において、簡便な方法で電解液を対流させる。
【解決手段】鉛蓄電池は、正極および負極を含む極板群と、電解液と、開口部を有し、前記極板群および前記電解液を収容する電槽と、前記電槽の前記開口部を封口する蓋と、を備える。前記電槽は、底部と、前記底部から立ち上がる側壁と、を備える。前記側壁の前記底部からの高さをHとするとき、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hよりも上方の上部における平均的な断熱性は、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hまでの下部における平均的な断熱性よりも高い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を含む極板群と、
電解液と、
開口部を有し、前記極板群および前記電解液を収容する電槽と、
前記電槽の前記開口部を封口する蓋と、を備え、
前記電槽は、底部と、前記底部から立ち上がる側壁と、を備え、
前記側壁の前記底部からの高さをHとするとき、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hよりも上方の上部における平均的な断熱性は、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hまでの下部における平均的な断熱性よりも高い、鉛蓄電池。
【請求項2】
前記側壁の上部の平均的な厚みが、前記側壁の下部の平均的な厚みよりも大きい、請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記側壁が、第1熱伝導率を有する第1材料と、前記第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有する第2材料とを含み、
前記側壁の上部に前記第1材料が前記第2材料よりも多く分布し、
前記側壁の下部に前記第2材料が前記第1材料よりも多く分布する、請求項1または2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】
前記側壁が中空部を有し、
前記中空部が、前記側壁の上部に、前記側壁の下部よりも多く分布する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
【請求項5】
前記側壁の上部を前記電槽の外側から覆うカバーを備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
【請求項6】
車両のエンジンルーム内に配置される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
【請求項7】
前記側壁が、高さ方向と交差する複数の膜の積層体を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、車載用、産業用の他、様々な用途で使用されている。鉛蓄電池は、負極板と正極板とこれらの間に介在するセパレータとを備える極板群と、電解液とを含む。極板群は、電解液とともに電槽内に収容される。
【0003】
液式の鉛蓄電池において充放電を繰り返すと、電解液の濃度が、電槽の上部では薄く、下部では濃くなる成層化が起こる。
【0004】
特許文献1では、電解液の対流を発生させて成層化を抑制する観点から、電槽内に極板群を収容する収容空間の凹部(上部)と下部とを連通する連通流路を設けることが提案されている。特許文献2では、電槽内を区分けする仕切り壁と区分けされた空間を互いに連通させる連通経路を設けることで、電解液を流動、撹拌させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−176659号公報
【特許文献2】特開2007−242333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成層化が進行すると、充放電反応にばらつきが生じて、電池寿命が短くなる。また、電解液を対流させて成層化を抑制するには、特許文献1や特許文献2のように、電槽の構造が複雑になる傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、正極および負極を含む極板群と、
電解液と、
開口部を有し、前記極板群および前記電解液を収容する電槽と、
前記電槽の前記開口部を封口する蓋と、を備え、
前記電槽は、底部と、前記底部から立ち上がる側壁と、を備え、
前記側壁の前記底部からの高さをHとするとき、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hよりも上方の上部における平均的な断熱性は、前記側壁の前記底部からの高さが0.5Hまでの下部における平均的な断熱性よりも高い、鉛蓄電池に関する。
【発明の効果】
【0008】
鉛蓄電池の電槽内において、簡便な方法で電解液を対流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の電槽の断面模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る鉛蓄電池の電槽の側壁の状態を示す断面模式図である。
図3】本発明のさらに他の実施形態に係る鉛蓄電池の電槽の側壁の状態を示す断面模式図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る鉛蓄電池の電槽の側壁の状態を示す断面模式図である。
図5】本発明の一側面に係る鉛蓄電池のフタを外した状態を模式的に示す斜視図である。
図6A図5の鉛蓄電池の正面図である。
図6B図6Aの鉛蓄電池のVIB−VIB線による矢示断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、正極および負極を含む極板群と、電解液と、開口部を有し、極板群および電解液を収容する電槽と、電槽の開口部を封口する蓋と、を備える。電槽は、底部と、底部から立ち上がる側壁と、を備える。側壁の底部からの高さをHとするとき、側壁の底部からの高さが0.5Hよりも上方の上部の平均的な断熱性は、側壁の底部からの高さが0.5Hまでの下部の平均的な断熱性よりも高い。
【0011】
電槽の側壁の上部における断熱性を、側壁の下部における断熱性よりも高くすることで、電槽に熱が加わったときに、電槽の上部の電解液の温度よりも下部の電解液の温度を高めることができる。温度が高まった下部の電解液は電槽内を上昇し、温度が低いままの上部の電解液は下降する。これにより、電槽における断熱性を上部と下部とで変更するという簡便な方法により、電槽内で電解液を対流させることができる。電解液の対流により成層化が抑制されるため、電池寿命を向上できる。
【0012】
電槽の上部の平均的な断熱性とは、電槽の側壁の上部において、鉛直方向に沿って複数箇所(例えば、3〜10箇所)について求められた断熱性の指標値の平均を意味する。電槽の下部の平均的な断熱性とは、電槽の側壁の下部について断熱性の指標値を求める以外は、上部の場合と同じである。断熱性の指標値とは、断熱性(または熱伝導性)の指標となるものであれば特に制限されない。例えば、側壁(または側壁を切り出したプレート)を一方の主面側から加熱したときの他方の主面における温度や温度変化を断熱性の指標値としてもよい。後述のように側壁をカバーで覆う場合には、カバーの外側から加熱したときの電槽の内側の表面における温度や温度変化を断熱性の指標値とすることができる。
【0013】
電槽の上部と下部とで断熱性を相違させる態様としては、電槽の側壁自体の断熱性を上部と下部とで相違させる態様などが挙げられる。側壁の上部の平均的な厚みを、側壁の下部の平均的な厚みよりも大きくしてもよい。また、側壁が、第1熱伝導率を有する第1材料と、第1熱伝導率よりも高い第2熱伝導率を有する第2材料とを含んでおり、側壁の上部に第1材料を第2材料よりも多く分布させ、側壁の下部に第2材料を第1材料よりも多く分布させるようにしてもよい。中空部を有する側壁において、側壁の上部に、側壁の下部よりも多くの中空部を分布させてもよい。いずれの場合にも、電槽の上部と下部とで電解液の温度差が生じやすくなり、電槽内において電解液を対流させることができる。
【0014】
電槽の上部と下部とで断熱性を相違させる態様には、電槽の側壁の上部を電槽の外側からカバーなどで覆う態様も含まれる。この場合、電槽の上部に比べて、下部の電解液の温度を選択的に高めることができ、対流が起こり易くなる。
【0015】
なお、鉛蓄電池を自動車等の車両に設置する場合、エンジンルームに配置されることがある。エンジンルーム内に配置された鉛蓄電池は、エンジンから発生する熱により高温に晒される。このような熱で、電槽の下部の電解液を選択的に加温することで、上記のような電解液の対流をさらに簡便に行なうことができる。従って、本発明に係る鉛蓄電池は、特に車両のエンジンルームに配置するのに適している。しかし、このような場合に限らず、ヒーターなどを利用して、鉛蓄電池の電槽に熱を付与してもよい。
【0016】
側壁は、高さ方向と交差する複数の膜の積層体を有してもよい。このような側壁を有する電槽は、3Dプリンタや多重インクジェットなどにより形成できる。3Dプリンタや多重インクジェットなどでは、側壁の上部と下部とで平均的な断熱性が異なる電槽の製造が容易である。
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池について、主要な構成要件ごとに説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
(電槽)
本発明では、電槽の側壁の上部の平均的な断熱性を、下部の平均的な断熱性よりも高くできればよく、その具体的な手段は特に限定されない。例えば、側壁の上部の平均的な厚みを下部の平均的な厚みよりも大きくしたり、側壁の下部に熱伝導率が高い材料が多く含まれるようにしたり、中空部を側壁の上部に分布させたり、外側から側壁の上部をカバーで覆ったりすることにより、上部の平均的な断熱性を下部よりも高めることができる。
【0018】
電槽の側壁において、断熱性が高い領域は、電槽の側壁の上部全体に形成されていてもよく、電槽の上部から電槽の下部(例えば、電槽の下部の上端部)にかけて形成されていてもよい。断熱性が高い領域は、電槽の側壁の上部の領域の一部に形成されていてもよい。少なくとも電槽の側壁の上部において電解液に対向する領域に側壁の断熱性が高い領域を形成することが好ましい。
【0019】
電槽の材質としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)、エチレンプロピレン共重合体(EPP)などが挙げられる。
【0020】
電槽は、射出成形などの金型等を用いる公知の成形方法などで形成してもよく、3Dプリンタや多重インクジェットなどにより形成してもよい。3Dプリンタや多重インクジェットなどでは、電槽の材料で形成された複数の膜が、通常、高さ方向に積層されて電槽が形成される。このような電槽の側壁は、高さ方向と交差する複数の膜の積層体を有している。3Dプリンタや多重インクジェットなどでは、側壁の上部と下部とで厚みが異なる電槽や、側壁に中空部を有する電槽、上部と下部とで材質が異なる電槽なども製造が容易である。
【0021】
以下に具体的な実施形態についてより詳細に説明する。
(第1実施形態:側壁の厚みを上部と下部とで相違させる場合)
側壁の平均的な厚みを、下部よりも上部で大きくする。側壁の平均的な厚みが大きい領域では、側壁の断面(電槽の高さ方向に平行な断面)形状は、特に制限されず、テーパ形状であってもよく、矩形であってもよい。図1に、本発明の一実施形態に係る鉛蓄電池の電槽の断面模式図を示す。図2は、他の実施形態に係る電槽の側壁の状態を示す断面模式図である。これらの図では、極板群および蓋は省略している。
【0022】
図1に示すように、電槽110は、電槽110の高さをHとするとき、電槽110の側壁の底部110Bからの高さが0.5Hよりも上方の上部110Uと、底部110Bから高さ0.5Hまでの下部110Dとを備えている。図示例では、電槽110の側壁の上部110Uの高さ方向の断面において、電槽110の外壁は鉛直方向に対して平行であり、内壁が上方に内側に向かって広がることで、上部110Uの断面はテーパ形状となっている。上部110Uの平均的な厚みは、下部110Dの平均的な厚みよりも大きくなっており、これにより、下部110Dに比べて上部110Uの平均的な断熱性が高くなる。
【0023】
図2には、電槽の側壁の高さ方向の断面の上部の平均的な厚みが下部の平均的な厚みよりも大きくなる場合の例を示す。図2(a)では、電槽210の側壁の高さ方向の断面において、側壁の上部210Uの内壁は鉛直方向に対して平行であり、外壁が上方に向かって外側に広がることで、上部210Uの断面はテーパ形状となっている。これらの実施形態では、上部の平均的な厚みが下部の平均的な厚みよりも大きければよく、テーパ形状に広がり始める始点の位置は特に制限されない。上部と下部とで断熱性の相違が生じ易い観点からは、テーパ形状の始点は、電槽の底部から0.5Hの高さ位置やその近傍であることが好ましい。
【0024】
図2(b)および(c)では、電槽の側壁の上部の厚みが下部の厚みよりも大きく、厚みが大きな部分と小さな部分との間には、段差が形成されている例を示す。図2(b)では、上部310Uの外壁が電槽310の外側に張り出すように上部310Uの側壁の厚みが大きくなっている。図2(c)では、上部410Uの内壁が電槽410の内側に張り出すように上部410Uの側壁の厚みが大きくなっている。これらの実施形態では、段差の位置は特に制限されないが、上部と下部とで断熱性の相違が生じ易い観点からは、電槽の底部から0.5Hの高さ位置やその近傍であることが好ましい。図2(b)および図2(c)では、段差の上側と下側とにおいてそれぞれ側壁の厚みが同じである場合(段差の上側と下側とで断面の形状が矩形である場合)を示したが、このような場合に限らず、段差の上側および/または下側をテーパ形状としてもよい。
【0025】
(第2実施形態:側壁の上部をカバーで覆う場合)
本実施形態では、電槽の側壁の上部を、外側からカバーで覆う。これにより、電槽の上部では、下部に比べて、電槽内の電解液に外側からの熱が伝わり難くなり、下部の電解液の温度が選択的に高まって対流が起こり易くなる。
【0026】
図3は、カバーを用いる場合の鉛蓄電池の電槽の断面模式図である。電槽10の底部10Bから0.5Hの高さより上方の上部の側壁は、カバー13に覆われている。電槽10の側壁の厚みは、底部10Bから0.5Hの高さより上方の上部と下部とでほぼ同じである。
【0027】
カバーは、側壁の上部の一部を覆うように電槽に装着してもよい。電槽の上部の電解液に外からの熱ができるだけ伝わらないように、側壁の上部の大部分(例えば、側壁の上部の外壁の面積の8割以上の領域)をカバーで覆うことが好ましく、上部全体をカバーで覆うことがさらに好ましい。
【0028】
カバーは、電解液に接触しないため、電槽に比べて使用できる材質の選択肢が増えるとともに、カバーを用いると、電槽自体の形状は従来のものを採用することもできるため、汎用性が高い。
【0029】
カバーの材質は、特に制限されないが、例えば、樹脂が使用される。カバーは、発泡樹脂などの樹脂多孔質体で構成してもよい。カバーの材質は、電槽の材質と同じであってもよいが、電槽に比べて熱伝導率が低い材料で形成すれば、高い断熱効果が得られ易い。
【0030】
(第3実施形態:側壁の上部に中空部を分布させる場合)
本実施形態では、電槽の側壁が中空部を有する。中空部を、側壁の下部よりも上部に多く分布させることで、下部に比べて上部の熱の伝わり方を遅くして、電解液の対流を促進させることができる。
【0031】
電槽の側壁の上部における中空部の合計容積は、側壁の下部における中空部の合計容積よりも大きければよいが、側壁の下部にはできるだけ中空部が形成されていないことが好ましい。また、側壁が複数の中空部を含む場合、側壁の上部に分布する中空部の平均容積を、下部に分布する中空部の平均容積よりも大きくしてもよい。側壁の上部と下部とで断熱性の差異を大きくする観点からは、上部に容積が大きな中空部を形成し、下部に中空部を形成しないことが好ましい。中空部の位置や容積などは、電解液を効率よく対流させる観点から調節すればよい。
【0032】
電槽の側壁の上部に中空部を形成する場合の断面模式図を図4に示す。電槽510の側壁には、底部510Bから高さ0.5Hよりも上側の上部510Uに中空部514が形成されている。なお、側壁の下部510Dには、中空部は形成されていない。中空部514が上部510Uに存在することで、下部510Dに比べて上部510Uにおける側壁の断熱性が高まり、電槽510の下部の電解液に選択的に熱が加わり易くなるため、電解液の対流を促進することができる。中空部は、特に、側壁の上部の電解液と対向する部分に配置されていることが好ましい。
【0033】
(第4実施形態:材料の熱伝導率を変化させる場合)
電槽の側壁の上部の熱伝導性を低くする観点から、熱伝導性の低い材料(第1材料)を、側壁の上部に含有させてもよい。側壁の下部は、第1材料を含まないか、含む場合には、上部よりも含有量を少なくすることが好ましい。
【0034】
側壁の下部の熱伝導性を高める観点から、側壁の下部に熱伝導率が高い材料(第2材料)を含有させてもよい。側壁の上部は、第2材料を含まないか、含む場合には、下部よりも含有量を少なくすることが好ましい。
【0035】
側壁が第1材料と、第1材料の熱伝導率(第1熱伝導率)よりも低い熱伝導率(第2熱伝導率)を有する第2材料とを含む場合には、側壁の上部に第1材料を第2材料よりも多く分布させ、下部に第2材料を第1材料よりも多く分布させることが好ましい。
【0036】
第1材料や第2材料は、電槽を形作るベースとなる材料(ベース材料)として用いてもよく、一方をベース材料として用い、他方を添加剤として用いてもよい。第1材料としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、高密度PP、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミドMDX6など)、ポリアセタール、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)などの樹脂、ガラス粉、アルミナなどの金属酸化物粉末、金属粉(金や銅などの粉末など)、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。第2材料としては、PP、ABS、PVC、AS、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)などの樹脂、ガラスバルーン、ガラスビーズなどの内部に空孔を有する材料などが挙げられる。第1材料または第2材料はそれぞれ一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。樹脂以外の粉末や繊維は、通常、樹脂と組み合わせて使用される。
【0037】
側壁の上部または下部における第1材料および第2材料のそれぞれの含有量は、電解液の対流を促進できるように各材料の種類などに応じて決定される。
【0038】
第1実施形態〜第4実施形態のうちのいくつかの実施形態を組み合わせてもよい。例えば、上部の側壁の平均的な厚みを、下部より大きくした上で、側壁の上部に中空部を形成したり、上部をカバーで覆ってもよい。また、上部に第2材料を多く分布させた状態で、上部をカバーで覆ってもよい。
【0039】
電槽以外の構成要素としては、公知のものが使用できる。以下に、電槽以外の構成要素についてより具体的に説明する。
(正極板)
鉛蓄電池の正極板には、ペースト式とクラッド式がある。
ペースト式正極板は、正極集電体と、正極電極材料とを具備する。正極電極材料は、正極集電体に保持されている。正極電極材料は、正極板から正極集電体を除いたものである。正極集電体は、鉛または鉛合金の鋳造や、鉛または鉛合金シートの加工により形成することができる。加工方法としては、例えば、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。
【0040】
クラッド式正極板は、複数の多孔質のチューブと、各チューブ内に挿入される芯金と、芯金が挿入されたチューブ内に充填される正極電極材料と、複数のチューブを連結する連座とを具備する。
【0041】
正極集電体に用いる鉛合金としては、耐食性および機械的強度の点で、Pb−Sb系合金、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金などが好ましい。正極集電体に用いる鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。芯金には、Pb−Sb系合金を用いることが好ましい。
正極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する正極活物質(二酸化鉛もしくは硫酸鉛)を含む。正極電極材料は、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
【0042】
未化成のペースト式正極板は、正極集電体に、正極ペーストを充填し、熟成、乾燥することにより得られる。その後、未化成の正極板を化成する。正極ペーストは、鉛粉、添加剤、水、硫酸を練合することで調製される。
クラッド式正極板は、芯金が挿入されたチューブに鉛粉または、スラリー状の鉛粉を充填し、複数のチューブを連座で結合することにより形成される。
【0043】
(負極板)
鉛蓄電池の負極板は、負極集電体と、負極電極材料とで構成されている。負極電極材料は、負極板から負極集電体を除いたものである。負極集電体は、鉛(Pb)または鉛合金の鋳造により形成してもよく、鉛または鉛合金シートを加工して形成してもよい。加工方法としては、エキスパンド加工や打ち抜き(パンチング)加工が挙げられる。
【0044】
集電体に用いる鉛合金としては、Pb−Sb系合金、Pb−Ca系合金、Pb−Ca−Sn系合金などが好ましい。これらの鉛もしくは鉛合金は、更に、添加元素として、Ba、Ag、Al、Bi、As、Se、Cuなどからなる群より選択された少なくとも1種を含んでもよい。
【0045】
負極電極材料は、酸化還元反応により容量を発現する負極活物質(鉛もしくは硫酸鉛)を含んでおり、防縮剤、カーボンブラックのような炭素質材料、硫酸バリウムなどを含んでもよく、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
【0046】
充電状態の負極活物質は、海綿状鉛であるが、未化成の負極板は、通常、鉛粉を用いて作製される。
【0047】
負極板は、負極集電体に、負極ペーストを充填し、熟成および乾燥することにより未化成の負極板を作製し、その後、未化成の負極板を化成することにより形成できる。負極ペーストは、鉛粉と有機防縮剤および必要に応じて各種添加剤に、水と硫酸を加えて混練することで作製する。熟成工程では、室温より高温かつ高湿度で、未化成の負極板を熟成させることが好ましい。
【0048】
化成は、鉛蓄電池の電槽内の硫酸を含む電解液中に、未化成の負極板を含む極板群を浸漬させた状態で、極板群を充電することにより行うことができる。ただし、化成は、鉛蓄電池または極板群の組み立て前に行ってもよい。化成により、海綿状鉛が生成する。
【0049】
(セパレータ)
負極板と正極板との間には、通常、セパレータが配置される。セパレータには、不織布、微多孔膜などが用いられる。不織布は、繊維を織らずに絡み合わせたマットであり、繊維を主体とする(例えば、60質量%以上が繊維で形成されている)。繊維としては、ガラス繊維、ポリマー繊維(ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維など)、パルプ繊維などを用いることができる。中でも、ガラス繊維が好ましい。不織布は、繊維以外の成分、例えば耐酸性の無機粉体、結着剤としてのポリマーなどを含んでもよい。
【0050】
一方、微多孔膜は、繊維成分以外を主体とする多孔性のシートであり、例えば、造孔剤(ポリマー粉末および/またはオイルなど)を含む組成物をシート状に押し出し成形した後、造孔剤を除去して細孔を形成することにより得られる。セパレータを構成する材料は、耐酸性を有するものが好ましく、ポリマー成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0051】
セパレータは、例えば、不織布のみで構成してもよく、微多孔膜のみで構成してもよい。また、セパレータは、必要に応じて、不織布と微多孔膜との積層物、異種または同種の素材を貼り合わせた物、または異種または同種の素材において凹凸をかみ合わせた物などであってもよい。
【0052】
(電解液)
電解液は、硫酸を含む水溶液であり、必要に応じてゲル化させてもよい。化成後で満充電状態の鉛蓄電池における電解液の20℃における比重は、例えば1.10〜1.35g/cm3であり、1.20〜1.35g/cm3であることが好ましい。
【0053】
図5は、本発明の実施形態に係る鉛蓄電池のフタを外した一例を模式的に示す斜視図である。図6Aは、図5の鉛蓄電池の正面図であり、図6Bは、図6AのVIB−VIB線による矢示断面図である。これらの図では、図3のように、電槽の側壁の上部をカバーで覆った例を示す。
【0054】
鉛蓄電池1は、極板群11と電解液12とを収容する電槽10を具備する。電槽10の高さをHとするとき、電槽10の底部から0.5Hよりも上側の上部の側壁は、カバー13で覆われている。極板群11は、それぞれ複数枚の負極板2および正極板3を、セパレータ4を介して積層することにより構成されている。ここでは、負極板2が、袋状のセパレータ4で包まれている状態を示すが、セパレータの形態は特に限定されない。
【0055】
複数の負極板2のそれぞれの上部には、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。複数の正極板3のそれぞれの上部にも、上方に突出する集電用の耳部(図示せず)が設けられている。そして、負極板2の耳部同士は負極用ストラップ5aにより連結され一体化されている。同様に、正極板3の耳部同士も正極用ストラップ5bにより連結されて一体化されている。負極用ストラップ5aの上部には負極柱6aの下端部が固定され、正極用ストラップ5bの上部には正極柱6bの下端部が固定されている。
【0056】
[試験例]
以下、本発明を試験例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の試験例に限定されるものではない。
【0057】
試験例1
電槽の側壁を模した厚みの異なる樹脂製のプレートを作製し、一方の表面側を加熱したときの他方の表面における温度変化を測定した。
具体的には、表1に示す厚みを有し、表1に示す樹脂で形成したプレートを、ホットプレートの上に載置し、ホットプレートによりホットプレート側の表面(一方の表面)を加熱して、他方の表面側の温度の経時変化を調べた。温度は、プレートの他方の表面において、プレートの一辺に平行な任意の直線上の3箇所について測定し、平均値を算出した。このときの気温は、22℃であり、加熱時の一方の表面の温度は、72℃であった。なお、使用した樹脂の熱伝導率は、PVCが0.15〜0.21W/m・Kであり、ABSが0.17〜0.21W/m・Kであった。結果を表1に示す。
【0058】
試験例2
次に、上部と下部とで液体の温度が異なる場合に、対流が起こるか否かを調べた。
具体的には、ビーカーに、液体として約300mLの水または硫酸(20℃における比重1.30)を入れ、ビーカーの下部をヒーターで加温しながら、液体の下部と上部における温度をモニターした。上部と下部とで温度を測定する位置間の距離は10cmとした。対流の有無を目視で観察した。なお、測定時の気温は22℃であった。結果を表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1に示すように、PVCを用いた場合には、加熱から1分後の他方の表面の平均温度は、プレートの厚みが2mmの場合に比べて、プレートの厚みが5mmの場合には約20℃低くなり、厚みが10mmの場合には約30℃も低くなった。15分経過した後でも、他方の表面の平均温度は、プレートの厚みが2mmの場合に比べて、プレートの厚みが5mmの場合には、約8℃低くなり、厚みが10mmの場合には、約18℃も低くなった。同様の傾向がABSを用いた場合にも見られる。
表2に示すように、表2に示す温度範囲内においては、下部の液体の温度と上部の液体の温度との差が3℃程度であっても、対流が確認された。対流の程度は、上部と下部とで液体の温度差が大きいほど、顕著になり、成層化抑制に有利である。
【0062】
一般に、自動車のエンジンを始動させた段階で、エンジンルームの温度は、外気温より約10℃高くなり、60〜70km/hの速度で30分ほど走行すると、平衡点に達し、約70℃になる(外気温より約45℃高くなる)。そのため、車両のエンジンルーム内に本発明に係る鉛蓄電池を設置すると、エンジンルーム内にこもる熱を電解液の対流に利用することができ、成層化抑制に有利である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、液式鉛蓄電池に適用可能であり、自動車などの車両用もしくはバイク用などの蓄電装置、始動用、補機用の電源としても利用できる。また、鉛蓄電池は、据置用などの産業用蓄電装置などの電源として用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:鉛蓄電池
2:負極板
3:正極板
4:セパレータ
5a:負極用ストラップ
5b:正極用ストラップ
6a:負極柱
6b:正極柱
10:電槽
10B:電槽の底部
11:極板群
12:電解液
13:カバー
110、210、310、410、510:電槽
110B、510B:底部
110U、210U、310U、410U、510U:側壁の上部
110D、210D、310D、410D、510D:側壁の下部
514:中空部
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B