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特開2018-170219電池用正極、電池用正極の製造方法及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-170219(P2018-170219A)
(43)【公開日】2018年11月1日
(54)【発明の名称】電池用正極、電池用正極の製造方法及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20181005BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20181005BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20181005BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/13
   H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2017-68396(P2017-68396)
(22)【出願日】2017年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】桑原 一夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】上松 信也
(72)【発明者】
【氏名】佐俣 光彦
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA23
5H050EA28
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制できる電池用正極、前記電池用正極の製造方法、及び、前記電池用正極を用いた電池の提供。
【解決手段】正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体を含み、該共重合体が、式(1)の構成単位(a)、式(2)の構成単位(b)及び式(3)の構成単位(c)を含有し、該共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15〜45質量%である電池用正極。

(R〜R、R〜R及びR〜R12は夫々独立して、H、メチル基又はエチル基;RはC8〜30の1価の炭化水素基;RはC2〜4の直鎖状/分岐状のアルキレン基;pは1〜50の整数)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体を含み、
上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、
上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極。
【化1】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【請求項2】
上記共重合体の構成単位(a)と構成単位(b)との質量比(構成単位(a)/構成単位(b))が、0.5以上5以下である請求項1の電池用正極。
【請求項3】
上記共重合体の重量平均分子量が、15,000以上100,000以下である請求項1又は請求項2の電池用正極。
【請求項4】
上記共重合体の含有量が、上記導電剤100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下である請求項1、請求項2又は請求項3の電池用正極。
【請求項5】
正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストを用いることを備え、
上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、
上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極の製造方法。
【化2】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項の電池用正極を備える電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用正極、電池用正極の製造方法及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質電池用の正極は、通常、正極活物質と導電剤と結着剤とが分散媒中に分散された正極ペーストを用いて製造される。具体的には、この正極ペーストをアルミニウム箔等の導電性基材に塗工し、乾燥炉内を通過させて分散媒を揮発除去することにより、正極が得られる。
【0003】
この正極の生産性を高めるために、上記の塗工工程におけるライン速度を高めることが検討されている。しかし、ライン速度を高めた場合、乾燥炉内の滞留時間が短くなるため、乾燥不足が生じる。短時間の乾燥を可能とする方法の一つとして、正極ペーストにおける固形分濃度を高くすること、すなわち分散媒の含有量を減らす方法がある。しかしこの場合、正極ペーストの粘度が増加するため、塗工の際にかすれが生じるなど、塗工性が低下するという不都合がある。
【0004】
そこで、正極ペーストの粘度の上昇を抑制するために、特定の構造を有する共重合体が含有された正極ペーストが提案されている(特許文献1参照)。この正極ペーストによれば、共重合体を含有させることで導電剤等の分散性が高まり、この結果粘度を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/151062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記共重合体を含有する正極ペーストにより得られた正極を用いた電池は、充放電の繰り返しに伴う抵抗増加率が大きいという不都合を有する。この原因は、正極ペースト中に含有させた共重合体の電解液に対する溶解性が高いことにあると、発明者らは知見した。すなわち、正極から共重合体が電解液中に溶出した共重合体が、正極と負極との間に存在するセパレータの目詰まりを生じさせることにより、抵抗が増加するものと推測される。一方、共重合体の分子量を大きくすることで、電解液への共重合体の溶解性は低くなると考えられる。しかし、単に共重合体の分子量を大きくすると、ペーストの粘度が低下しづらくなることから好ましくない。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制することができる電池用正極、及びこのような電池用正極の製造方法、並びに充放電の繰り返しに伴う抵抗増加が抑制された電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体を含み、上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極である。
【化1】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストを用いることを備え、上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極の製造方法である。
【化2】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、当該電池用正極を備える電池である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制することができる電池用正極、及びこのような電池用正極の製造方法、並びに充放電の繰り返しに伴う抵抗増加が抑制された電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池を示す外観斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る電池を複数個集合して構成した蓄電装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る電池用正極は、正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体を含み、上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極である。
【0014】
【化3】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【0015】
当該電池用正極に含有される上記共重合体は、側鎖にアミド基を有する上記構成単位(c)を所定割合で有するため、同程度の分子量で比較した場合に電解液への溶解性が低い。従って、当該電池用正極によれば、電解液への共重合体の溶出が少なく、その結果、充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制することができる。また、通常、当該電池用正極は、上記正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体と分散媒とを含む電池用正極ペースト(以下、単に「ペースト」等ともいう。)を用いて形成される。この際、上記共重合体は上記構成単位(a)及び構成単位(b)を有するため、このペーストは、固形分濃度を高くした場合の粘度の上昇を抑制することができ、良好な塗布性等を有する。これは、疎水基を有する上記構成単位(a)がペースト中の導電剤の粒子表面に強固に吸着し、ポリオキシアルキレン基を有する上記構成単位(b)が粒子間に強い立体的斥力をもたらすことにより、ペースト中における粒子の凝集抑制効果を生み出し、ペーストの粘度を低下させているものと推測される。このように上記共重合体は、分子量を大きくすることなく電解液に対する溶解性を低くすることができるため、ペーストの粘度低減と、形成される正極からの電解液への溶出抑制とを両立させることができる。従って、当該電池用正極は、充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制することができる。
【0016】
上記共重合体の構成単位(a)と構成単位(b)との質量比(構成単位(a)/構成単位(b))が、0.5以上5以下であることが好ましい。構成単位(a)と構成単位(b)との質量比を上記範囲とすることで、当該電池用正極を形成するためのペーストの粘度低減効果をより高め、生産性を高めることができる。
【0017】
上記共重合体の重量平均分子量が、15,000以上100,000以下であることが好ましい。これにより、共重合体の電解液への溶出抑制効果とペーストの粘度低減効果とをバランスよく高めることができる。その結果、当該電池用正極の抵抗増加抑制効果と生産性向上効果とをバランスよく高めることができる。
【0018】
上記共重合体の含有量が、上記導電剤100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。共重合体の含有量を上記範囲とすることで、上記共重合体の電解液への溶出量を抑えつつ、ペーストの良好な粘度低減効果を発揮することができる。すなわち、当該電池用正極の抵抗増加抑制効果と生産性向上効果とをバランスよく高めることができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係る電池用正極の製造方法は、正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストを用いることを備え、上記共重合体が、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有し、上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量が、15質量%以上45質量%以下である電池用正極の製造方法である。
【化4】
(式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。)
【0020】
当該製造方法によれば、充放電の繰り返しに伴う電池の抵抗増加を抑制することができる電池用正極を得ることができる。また、当該製造方法によれば、粘度の上昇が抑制された良好な塗布性を有するペーストを用いるため、生産性を高めることもできる。
【0021】
本発明の一実施形態に係る電池は、当該電池用正極を備える電池である。
【0022】
当該電池は、共重合体の溶出が抑制された当該電池用正極を備えるため、充放電の繰り返しに伴う抵抗増加が抑制されている。また、当該電池の正極は、粘度の上昇が抑制された良好な塗布性を有するペーストを用いて形成することができるため、生産性も高い。
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る電池用正極、電池用正極の製造方法及び電池について詳説する。
【0024】
<電池用正極>
本発明の一実施形態に係る電池用正極は、導電性の基材と、この基材に直接又は中間層を介して積層された正極合材層とを有する。
【0025】
[基材]
上記基材は、導電性を有する。基材の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ及びコストのバランスからアルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。また、正極基材の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極基材としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS−H−4000(2014年)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0026】
[正極合材層]
上記正極合材層は、正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体を含む。上記正極合材層は、さらにその他の成分(上記共重合体以外の他の機能性材料、フィラー等)を含んでいてもよい。この正極合材層は、後述するように、正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストによって好適に製造することができる。
【0027】
[正極活物質]
上記正極活物質は、リチウム等のイオンを吸蔵及び放出することのできる物質である。正極活物質としては、例えばLiMO(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(層状のα―NaFeO型結晶構造を有するLiCoO,LiNiO,LiMnO,LiNiαCo(1−α),LiNiαMnβCo(1−α−β),Li1+wNiαMnβCo(1−α−β−w)等、スピネル型結晶構造を有するLiMn,LiNiαMn(2−α)等)、LiMe(AO(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Aは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO,LiMnPO,LiNiPO,LiCoPO,Li(PO,LiMnSiO,LiCoPOF等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは、他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質としては、これら化合物の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
上記正極活物質は、Li1+xNiCoMn(Dは、Li、Co、Mn、Ni及びO以外の元素である。x≧0、a>0、b≧0、c≧0、0≦d≦0.2、x+a+b+d=1)で表される化合物を用いることができる。
【0029】
上記式中のDの元素としては、アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、銅等の金属元素や、ハロゲン、炭素等の非金属元素を挙げることができる。Dで表される元素は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。xの上限は、例えば0.5であってよく、0.2であってもよく、0.1であってもよい。aの上限は、例えば0.8であってよく、0.6であってもよく、0.55が好ましいこともあり、0.4が好ましいこともある。aの下限は、例えば0.1であってよい。bの上限は、例えば0.6であってよく、0.4であってもよい。bの下限は、例えば0.1であってよい。cの上限は、例えば0.6であってよく、0.4であってもよい。cの下限は、例えば0.1であってよい。dの上限は、0.1が好ましいことがあり、0.05がより好ましいこともある。
【0030】
上記正極合材層における上記正極活物質の含有量の下限としては、例えば50質量%とすることができ、60質量%とすることもでき、80質量%とすることもでき、90質量%が好ましい。一方、この含有量の上限としては、例えば99質量%とすることができ、98質量%とすることもできる。
【0031】
[導電剤]
上記導電剤は、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックス等が挙げられ、アセチレンブラックが好ましい。
【0032】
また、比表面積が大きい導電剤を用いた場合、正極の充放電性能(出力等)を向上させることができるので好ましいが、その様な導電剤を用いた場合、ペースト粘度が高くなりやすい傾向にある。しかし、上記共重合体は比表面積が大きな導電剤を用いた時ほどペースト粘度低減効果がより大きくなるので好ましい。具体的には、導電剤の比表面積の下限は1m/gが好ましく、10m/gがより好ましく、30m/gが特に好ましい。一方、この上限は200m/gが好ましく、100m/gがより好ましく、80m/gが特に好ましい。また、上記比表面積は、BET法により求められるBET比表面積を指す。
【0033】
上記正極合材層における上記導電剤の含有量の下限としては、例えば1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。導電剤の含有量を上記下限以上とすることで、良好な導電性を発揮することができる。一方、この含有量の上限としては、例えば20質量%とすることができるが、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましいことがある。導電剤の含有量を上記上限以下とすることで、正極合材層の基材等との密着性を高めることなどができる。
【0034】
[結着剤]
上記結着剤(バインダ)は、正極活物質、導電剤等を固定させる成分である。結着剤としては、フッ化ビニリデン樹脂(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
【0035】
また、結着剤としては、正極ペースト中での共重合体との相性の良さから、フッ化ビニリデン樹脂を用いることが特に好ましい。
【0036】
ここで、上記共重合体は正極ペーストの結着剤としては不向きであるため、ここでいう結着剤に上記共重合体は含まれない。
【0037】
上記正極合材層における上記結着剤の含有量の下限としては、例えば1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、2.5質量%がさらに好ましい。結着剤の含有量を上記下限以上とすることで、正極合材層の基材等との密着性を高めることなどができる。一方、この含有量の上限としては、例えば20質量%であり、10質量%が好ましく、6質量%がより好ましい。
【0038】
[共重合体]
上記共重合体は、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)及び下記式(3)で表される構成単位(c)を含有する。上記共重合体は、さらにその他の構成単位(d)を含有していてもよい。上記共重合体は、ペースト中の導電剤の分散性を高め、ペーストの粘度を低減させることができる。
【0039】
【化5】
【0040】
式(1)〜(3)中、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基又はエチル基である。Rは、炭素数8〜30の1価の炭化水素基である。Rは、炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。pは、1〜50の数である。
【0041】
(構成単位(a))
上記共重合体は、疎水基であるRを有する構成単位(a)を含有することにより、ペースト中の導電剤の粒子表面に良好に吸着することができる。
【0042】
上記R及びRとしては、水素原子が好ましい。上記Rとしては、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R〜Rをこれらの原子又は基とすることで、導電剤等への吸着性、ペーストの粘度低減効果、共重合の際の導入容易性等を高めることができる。
【0043】
上記Rの炭素数8〜30の1価の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の脂肪族炭化水素基や、芳香族炭化水素基を挙げることができる。これらの中でも、脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基及びアルケニル基が好ましい。また、Rの炭素数の下限としては、10が好ましく、12がより好ましく、13がさらに好ましく、18が特に好ましい。一方、この炭素数の上限は、26が好ましく、22がより好ましく、20がさらに好ましい。Rをこれらに限定することで、導電剤等への吸着性、ペーストの粘度低減効果等を高めることができる。具体的なRで表される基としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等を挙げることができる。
【0044】
上記構成単位(a)を与えるモノマーとしては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、導電剤等への吸着性やペーストの粘度低減効果の観点から、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート及びベヘニル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのモノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0045】
上記共重合体中の上記構成単位(a)の含有量の下限としては、10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、80質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましい。構成単位(a)の含有量を上記範囲とすることで、導電剤への吸着性、ペーストの粘度低減効果等を高めることができる。
【0046】
(構成単位(b))
上記共重合体は、ポリオキシアルキレン基を有する構成単位(b)を含有することにより、この共重合体が吸着した粒子間に強い立体的斥力をもたらすことができる。これにより、ペースト中における粒子の凝集抑制効果が生じ、ペーストの粘度上昇を抑えることができる。
【0047】
上記R及びRとしては、水素原子が好ましい。上記Rとしては、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。上記Rとしては、メチル基及びエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R〜R及びRをこれらの原子又は基とすることで、ペーストの粘度低減効果、共重合の際の導入容易性等を高めることができる。
【0048】
上記Rの炭素数2〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基としては、エチレン基及びプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。Rをこれらの基とすることで、正極ペーストの粘度低減効果、共重合の際の導入容易性等を高めることができる。Rにおいては、複数種のアルキレン基が含まれていてもよい。
【0049】
上記pは、アルキレンオキサイド(−R−O−)の平均付加モル数であり、整数に限定されるものではない。pの上限としては、40が好ましく、25がより好ましく、10がさらに好ましく、7がよりさらに好ましい場合もあり、4がより好ましい場合もある。pを上記上限以下とすることで、電解液への溶解性をより低減することができる。
【0050】
上記構成単位(b)を与えるモノマーとしては、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの中でも、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートが好ましい。これらのモノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0051】
上記共重合体中の上記構成単位(b)の含有量の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。一方、この含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。構成単位(b)の含有量を上記範囲とすることで、ペーストの粘度低減効果や電解液への溶出抑制効果をより高めることができる。
【0052】
(構成単位(c))
上記共重合体は、アミド基を有する構成単位(c)を有することにより、当該電池用正極における上記共重合体の電解液への溶出抑制効果を発揮することができる。
【0053】
上記R10及びR11としては、水素原子が好ましい。上記R12としては、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R10〜R12をこれらの原子又は基とすることで、電解液への溶出抑制効果や、共重合の際の導入容易性等を高めることができる。
【0054】
上記構成単位(c)を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、2−ブテン酸アミド等を挙げることができ、(メタ)アクリルアミドが好ましい。これらのモノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0055】
上記共重合体中の上記構成単位(c)の含有量の下限は、15質量%であり、17.5質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、26質量%がさらに好ましい場合もある。構成単位(c)の含有量を上記下限以上とすることで、電解液への溶出抑制効果を高めることができる。一方、この含有量の上限は、45質量%であり、40質量%が好ましく、37.5質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。構成単位(c)の含有量を上記上限以下とすることで、ペーストの粘度低減効果をより高めることなどができる。
【0056】
(構成単位(d))
その他の構成単位(d)を与えるモノマーとしては、上記構成単位(a)、構成単位(b)及び構成単位(c)を与えるモノマーと共重合可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0057】
構成単位(d)を与えるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸等の酸モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、N―イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;スチレン、p−メチルスチレン等のスチレン類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;2−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルピロリドン等のビニルピロリドン類等を挙げることができる。これらのモノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0058】
上記共重合体中の上記構成単位(d)の含有量の上限としては、60質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、5質量%がよりさらに好ましく、1質量%であってもよい。構成単位(d)の含有量を上記上限以下とすることで、電解液への溶出抑制効果や、ペーストの粘度低減効果をより高めることができる。
【0059】
上記共重合体においては、構成単位(d)の中でも、2以上の重合性基を有するモノマー(架橋性モノマー)に由来する構成単位を実質的に有さないことが好ましい。ここで、ペーストの粘度低減効果の観点から、ペーストにおいて、上記共重合体が分散媒に溶解していることが好ましい。また、一部が溶解している状態で使用することもできる。上記共重合体が架橋性モノマーに由来する構成単位を含む場合、共重合体の分散媒への溶解性が低下し、ペーストの粘度低減効果が低下する傾向にある。上記共重合体中の架橋性モノマーに由来する構成単位の含有量の上限は、5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、0.1質量%がさらに好ましい。架橋性モノマーに由来する構成単位の含有量を上記上限以下とすることで、ペーストの粘度低減効果を高めることができる。
【0060】
(構成単位比)
上記共重合体において、構成単位(a)と構成単位(b)との質量比(構成単位(a)/構成単位(b))の下限としては、0.5が好ましく、0.75がより好ましく、1がさらに好ましい。一方、この質量比の上限としては、5が好ましく、4がより好ましく、3がさらに好ましい。構成単位(a)と構成単位(b)との質量比を上記範囲とすることで、ペーストの粘度低減効果等をより高めることができる。
【0061】
上記共重合体において、構成単位(b)と構成単位(c)との質量比(構成単位(b)/構成単位(c))の下限としては、0.2が好ましく、0.4がより好ましく、0.6がさらに好ましい。一方、この質量比の上限としては、5が好ましく、4がより好ましく、3がさらに好ましく、1がさらに好ましい場合もある。構成単位(b)と構成単位(c)との質量比を上記範囲とすることで、同程度の分子量で比較した場合の電解液への溶出抑制効果や、ペーストの粘度低減効果をより高めることができる。
【0062】
上記共重合体において、構成単位(a)と構成単位(c)との質量比(構成単位(a)/構成単位(c))の下限としては、0.2が好ましく、0.5がより好ましく、0.8がさらに好ましい。一方、この質量比の上限としては、5が好ましく、4がより好ましく、3がさらに好ましい。構成単位(a)と構成単位(c)との質量比を上記範囲とすることで、電解液への溶出抑制効果や、ペーストの粘度低減効果をより高めることができる。
【0063】
(分子量)
上記共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量の下限としては、5,000が好ましく、7,500がより好ましく、10,000がさらに好ましく、15,000がよりさらに好ましく、18,000が特に好ましい。重量平均分子量を上記下限以上とすることで、電解液への溶解性をより低減することができ、また、ペーストにおける粘度低減効果をより十分に発揮することができる。一方、この重量平均分子量の上限としては、500,000が好ましく、250,000がより好ましく、100,000がさらに好ましく、70,000が特に好ましい。重量平均分子量を上記上限以下とすることで、ペーストの粘度低減効果をより高めることができ、合成も容易となる。
【0064】
上記正極合材層における上記共重合体の含有量の下限としては、上記導電剤100質量部に対して、0.1質量部であってもよいが、0.5質量部が好ましく、1質量部がより好ましく、1.5質量部がさらに好ましい。共重合体の含有量を上記下限以上とすることで、導電剤の分散性がより高まり、ペーストの粘度低減効果をより高めることができる。一方、この含有量の上限としては、40質量部であってもよいが、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、5質量部がよりさらに好ましく、3質量部が特に好ましい。共重合体の含有量を上記上限以下とすることで、電池出力を良好な状態で維持することができ、また、電解液への溶出量を抑制することができる。
【0065】
上記正極合材層における上記共重合体の含有量の下限としては、例えば0.01質量%である。共重合体の含有量を上記下限以上とすることで、ペーストの十分な粘度低減効果を発揮することなどができる。一方、この含有量の上限としては、例えば3質量%であってよいが、2質量%が好ましく、1.5質量%がより好ましいこともある。共重合体の含有量を上記上限以下とすることで、電解液への溶出量をいっそう低減することや、正極合材層の基材等との密着性を高めることなどができる。
【0066】
当該電池用正極は、上記共重合体以外の共重合体をさらに含有していてもよい。但し、上記共重合体と上記共重合体以外の共重合体(結着剤として用いられる共重合体は除く)との合計に対する上記共重合体の含有量の下限は、40質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。
【0067】
(共重合体の合成方法)
上記共重合体の合成方法は特に限定されず、通常の(メタ)アクリル酸エステル類の重合に使用される方法が用いられる。上記共重合体は、例えばフリーラジカル重合法、リビングラジカル重合法、アニオン重合法、リビングアニオン重合法等により合成することができる。例えば、フリーラジカル重合法を用いる場合は、構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び必要に応じて構成単位(d)を与える各モノマーを溶液重合法で重合させることにより行うことができる。なお、合成の容易性、及び溶媒への溶解性の観点から、溶液重合で合成することが好ましい。
【0068】
溶液重合に用いる場合の溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族系炭化水素(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等)、その他、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒を使用することができる。溶媒量は、モノマー全量に対する質量比で、0.5〜10倍量が好ましい。
【0069】
上記共重合体の合成に使用する重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド類等が挙げられる。重合開始剤量の下限としては、モノマー成分全量に対し、0.01モル%が好ましく、0.1モル%がより好ましく、0.2モル%がさらに好ましい。一方、この上限としては、5モル%が好ましく、3モル%がより好ましく、2モル%がさらに好ましい。重合反応は、窒素気流下、60℃以上180℃以下の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5時間以上20時間以下が好ましい。
【0070】
また、分子量を調整するための、公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、例えばイソプロピルアルコールや、メルカプトエタノール等のメルカプト化合物があげられる。
【0071】
上記共重合体において、構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び必要に応じて含有される構成単位(d)の配列は、ランダム、ブロック、グラジエント、グラフト等のいずれでもよい。
【0072】
<電池用正極の製造方法>
当該電池用正極は、上記正極活物質、上記導電剤、上記結着剤、上記共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストを用いることにより、好適に製造することができる。すなわち、本発明の一実施形態に係る電池用正極の製造方法は、正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体及び分散媒を含む電池用正極ペーストを用いることを備える。具体的には、上記電池用正極ペーストを基材に塗工し、これを乾燥することにより作製することができる。上記正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体の詳細は上述したとおりである。
【0073】
上記分散媒は、正極活物質、導電剤、結着剤及び共重合体等を均一的に分散させる成分である。なお、上記ペーストにおいて、上記共重合体は、粘度低減効果をより高めるために、上記分散媒に溶解していることが好ましい。
【0074】
上記分散媒としては、共重合体を溶解可能なものを用いることができる。N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒を初めとした非水系分散媒や、水等を用いることができる。上記分散媒は、共重合体の溶解性や電池内に余分な水分を持ち込まないようにする観点から、非水系分散媒であることが好ましく、非プロトン性極性溶媒がより好ましい。共重合体の溶解性の高さからNMPが特に好ましい。非水系分散媒とは、水以外の分散媒をいい、実質的に水を含有しない分散媒である。
【0075】
上記ペーストの固形分濃度(分散媒以外の成分の含有量)としては、例えば40質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0076】
上記ペーストは、正極活物質、導電剤、結着剤、共重合体、分散媒等を混合及び撹拌することで調製することができる。この混合や撹拌には、プラネタリミキサー、ビーズミル、ジェットミル等の公知の撹拌装置を用いることができる。各成分の撹拌装置への投入の際には、攪拌羽根を回転させながら投入してもよい。これにより、攪拌装置の機械的負荷を抑えること、攪拌容器内の成分の嵩を抑えること、各成分の予備的な混合を行うことなどができる。また、全量を一度に投入せずに、複数回に分けて投入してもよい。これにより、攪拌装置の機械的な負荷を抑えることができる。
【0077】
当該電池用正極は、上述のように、上記ペーストの基材への塗工、及び乾燥により得ることができる。正極の密度を上げるために、プレス機により圧密化を行うこともできる。ペーストの塗工には、ダイヘッド、コンマリバースロール、ダイレクトロール、グラビアロール等を用いることができる。塗工後の乾燥は、加温、エアフロー、赤外線照射等を単独あるいは組み合わせて行うことができる。また、正極のプレスは、ロールプレス機等により、行うことができる。
【0078】
このようにして得られた正極においては、電解液への共重合体の溶解・溶出が抑制され、その結果、電池の充放電の繰り返しに伴う抵抗増加を抑制することができる。
【0079】
<電池>
本発明の一実施形態に係る電池は、正極、負極及び非水電解質(電解液)を有する非水電解質二次電池である。上記正極及び負極は、通常、セパレータを介して積層又は巻回された電極体を形成する。この電極体はケースに収納され、このケース内に上記非水電解質が充填される。上記非水電解質は、正極と負極との間に介在する。また、上記ケースとしては、二次電池のケースとして通常用いられる公知の金属製のケース、樹脂ケース等を用いることができる。
【0080】
[正極]
上記正極は、上述した本発明の一実施形態に係る電池用正極が用いられる。
【0081】
[負極]
上記負極は、負極基材、及びこの負極基材に直接又は中間層を介して配される負極合材層を有する。
【0082】
上記負極基材の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属又はそれらの合金が用いられ、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極基材としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0083】
上記負極合材層は、負極活物質を含むいわゆる負極合材から形成される。また、負極合材層を形成する負極合材は、必要に応じて導電剤、結着剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、結着剤等の任意成分は、正極合材層と同様のものを用いることができる。
【0084】
上記負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばSi、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;ポリリン酸化合物;黒鉛(グラファイト)、非晶質炭素(易黒鉛化性炭素または難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。
【0085】
さらに、負極合材層は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を含有してもよい。
【0086】
[セパレータ]
上記セパレータは、正極と負極とを隔離し、かつ非水電解質を保持する役割を担う。セパレータの材質としては、例えば織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が用いられる。これらの中でも多孔質樹脂フィルムが好ましい。多孔質樹脂フィルムの主成分としては、強度の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。また、これらの樹脂とアラミドやポリイミド等の樹脂とを複合した多孔質樹脂フィルムを用いてもよい。
【0087】
[非水電解質]
上記非水電解質は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解する電解質塩とを含む非水電解液が、通常用いられる。上記非水電解質には、その他の添加剤が含有されていてもよい。
【0088】
上記非水溶媒としては、一般的な非水電解質二次電池の非水溶媒として通常用いられる公知の非水溶媒を用いることができる。非水溶媒とは、水以外の溶媒をいい、実質的に水を含有しない溶媒である。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネートなどを挙げることができる。
【0089】
上記電解質塩としては、一般的な非水電解質二次電池の電解質塩として通常用いられる公知の電解質塩を用いることができる。上記電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等を挙げることができるが、リチウム塩が好ましい。
【0090】
上記リチウム塩としては、LiPF、LiPO、LiBF、LiClO、LiN(SOF)等の無機リチウム塩、LiSOCF、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO等のフッ化炭化水素基を有するリチウム塩などを挙げることができる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましい。
【0091】
上記非水電解質としては、非水電解液に代えて、固体電解質を用いることもできる。また、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。上記固体電解質としては、無機固体電解質やポリマー固体電解質などを挙げることができる。上記非水電解質は、ゲル状のものであってもよい。
【0092】
当該電池は、共重合体の溶出が抑制された当該電池用正極を備えるため、充放電の繰り返しに伴う抵抗増加が抑制されている。
また、共重合体の組成や分子量、正極合材層中の含有量を操作することで、より一層の粘度の上昇が抑制された良好な塗布性を有するペーストを用いて形成することができる。このようなペーストは、当該電池の正極の生産性を高めることができるため好ましい。具体的には、ペースト固形分濃度を高くすることが可能となることから、ペースト中の分散剤の含有量を減らすことで、ペーストの乾燥時間を短縮することが可能となり、塗工工程におけるライン速度を高めることができる。また、ペースト送液時間の短縮や撹拌などの機械的負荷軽減などによるコストが期待できる。
【0093】
<その他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。上記実施の形態においては、電池が非水電解質二次電池である形態を中心に説明したが、その他の電池であってもよい。その他の電池としては、例えば一次電池や、水を溶媒として含有する電解液を用いた電池等が挙げられる。また、当該電池用正極における正極合材は、明確な層を形成していなくてもよい。例えば、メッシュ状の基材に正極合材が担持された正極などであってよい。
【0094】
図1に、本発明の一実施形態に係る矩形状の電池1(非水電解質二次電池)の概略図を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。図1に示す電池1は、電極体2が電池容器3に収納されている。電極体2は、正極活物質を備える正極と、負極活物質を備える負極とが、セパレータを介して捲回されることにより形成されている。正極は、正極リード4’を介して正極端子4と電気的に接続され、負極は、負極リード5’を介して負極端子5と電気的に接続されている。また、電池容器3内に、非水電解質が注入されている。なお、正極等の各要素の具体的構成等は、上述したとおりである。
【0095】
本発明に係る電池の構成については特に限定されるものではなく、円筒型電池、角型電池(矩形状の電池)、扁平型電池等が一例として挙げられる。本発明は、上記の電池を複数備える蓄電装置としても実現することができる。蓄電装置の一実施形態を図2に示す。図2において、蓄電装置30は、複数の蓄電ユニット20を備えている。それぞれの蓄電ユニット20は、複数の電池1を備えている。上記蓄電装置30は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源として搭載することができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0097】
実施例に用いた原料の略号は以下のとおりである。
・SMA:メタクリル酸ステアリル(新中村化学工業社製、品番:NK−エステルS)
・PEG(2)MA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製、品番:NKエステルM−20G、エチレンオキサイドの平均付加モル数p=2)
・PEG(9)MA:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製、品番:NK−エステルM−90G、エチレンオキサイドの平均付加モル数p=9)
・MAAm:メタクリルアミド(和光純薬工業社製)
・MAA:メタクリル酸(和光純薬工業社製)
・DMAAm:ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業社製)
・NMP:N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬工業社製)
・V−65B:2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製)
【0098】
[合成例1]共重合体Hの合成
初期仕込み用モノマー溶液として、4.8gのSMA、2.8gのPEG(2)MA、22.4gのMAAm及び86.7gのNMPからなる溶液、並びに初期仕込み開始剤溶液として0.8gのV−65B及び3.3gのNMPからなる混合溶液を作製した。次に、滴下用モノマー溶液1として、106.1gのSMA、61.9gのPEG(2)MA、及び24.7gのNMPからなる混合溶液、滴下用モノマー溶液2として、67.6gのMAAm、及び135.3gのNMPからなる混合溶液、滴下用モノマー溶液3として、21.7gのSMA、12.7gのPEG(2)MA、及び20.0gのNMPからなる混合溶液、滴下用開始剤溶液1として6.7gのV−65B及び26.7gのNMPからなる混合溶液、並びに滴下用開始剤溶液2として0.8gのV−65B及び3.3gのNMPからなる混合溶液を作製した。
還流管、攪拌機、温度計、窒素導入管、及び滴下漏斗を取り付けたセパラブルフラスコに初期仕込み用モノマーを投入し、撹拌及び65℃に加熱にしながら反応槽内を1時間以上窒素置換した。槽内温度が65℃に到達したことを確認し、撹拌しながら初期仕込み開始剤溶液を添加した。10分撹拌後、滴下用モノマー溶液1、滴下用モノマー溶液2、及び滴下用開始剤溶液1を160分かけて槽内に滴下した。その後、滴下用モノマー溶液3及び滴下用開始剤溶液2を20分かけて槽内に滴下した。滴下終了後、更に65℃で1時間撹拌した。撹拌を続けながら80℃まで昇温し、槽内温度が80℃に到達したことを確認し、更に2時間撹拌した。次いで、600gのNMPを追加し、均一溶液になるまで撹拌した。希釈後、40℃以下まで空冷し、共重合体Hを得た。
【0099】
[合成例2]共重合体Iの合成
初期仕込み用モノマー溶液として、4.8gのSMA、2.8gのPEG(2)MA、22.4gのMAAm及び89.3gのNMPからなる溶液、並びに初期仕込み開始剤溶液として0.2gのV−65B及び0.7gのNMPからなる混合溶液を作製した。次に、滴下用モノマー溶液1として、106.1gのSMA、及び61.9gのPEG(2)MA、8.2gのNMPからなる混合溶液、滴下用モノマー溶液2として、67.6gのMAAm、及び135.3gのNMPからなる混合溶液、滴下用モノマー溶液3として、21.7gのSMA、12.7gのPEG(2)MA、及び17.9gのNMPからなる混合溶液、滴下用開始剤溶液1として1.4gのV−65B及び43.2gのNMPからなる混合溶液、並びに滴下用開始剤溶液2として0.2gのV−65B及び5.4gのNMPからなる混合溶液を作製した。
還流管、攪拌機、温度計、窒素導入管、及び滴下漏斗を取り付けたセパラブルフラスコに初期仕込み用モノマーを投入し、撹拌及び65℃に加熱にしながら反応槽内を1時間以上窒素置換した。槽内温度が65℃に到達したことを確認し、撹拌しながら初期仕込み開始剤溶液を添加した。10分撹拌後、滴下用モノマー溶液1、滴下用モノマー溶液2、及び滴下用開始剤溶液1を160分かけて槽内に滴下した。その後、滴下用モノマー溶液3及び滴下用開始剤溶液2を20分かけて槽内に滴下した。滴下終了後、更に65℃で1時間撹拌した。その後、撹拌を続けながらNMPを150g加え、80℃まで昇温した。槽内温度が80℃に到達したことを確認し、更に2時間撹拌した。次いで、450gのNMPを追加し、均一溶液になるまで撹拌した。希釈後、40℃以下まで空冷し、共重合体Iを得た。
【0100】
[比較合成例1]共重合体Oの合成
初期仕込み用溶液として、90gのNMPからなる溶液を作製した。次に、滴下用モノマー溶液1として、132.6gのSMA、77.4gのPEG(2)MA、90gのMAAm、及び300gのNMPからなる混合溶液、滴下用開始剤溶液1として3gのV−65B及び60gのNMPからなる混合溶液を作製した。
還流管、攪拌機、温度計、窒素導入管、及び滴下漏斗を取り付けたセパラブルフラスコに初期仕込み用モノマーを投入し、撹拌及び65℃に加熱にしながら反応槽内を1時間以上窒素置換した。槽内温度が65℃に到達したことを確認し、滴下用モノマー溶液1及び滴下用開始剤溶液1を180分かけて槽内に滴下した。滴下終了後、更に65℃で1時間撹拌した。その後、80℃まで昇温し、槽内温度が80℃に到達したことを確認し、更に2時間撹拌した。40℃以下まで空冷し、共重合体Oを得た。
【0101】
[合成例3〜12、及び比較合成例2〜3]共重合体A〜G、J〜Nの合成
共重合体C〜Gは、初期モノマー溶液、初期開始剤溶液、滴下モノマー溶液1、滴下モノマー溶液2、滴下モノマー溶液3、滴下開始剤溶液1及び滴下開始剤溶液2を表1に記載の通りの組成としたこと、並びに希釈用溶媒量及び重合温度以外は、上記合成例1と同様の方法によりそれぞれ合成した。
共重合体A、B、J、K及びLは、初期モノマー溶液、初期開始剤溶液、滴下モノマー溶液1、滴下モノマー溶液2、滴下モノマー溶液3、滴下開始剤溶液1及び滴下開始剤溶液2を表1に記載の通りの組成としたこと、並びに希釈用溶媒量及び重合温度以外は、上記合成例2同様の方法によりそれぞれ合成した。
共重合体M及びNは、初期モノマー溶液、初期開始剤溶液、滴下モノマー溶液1、滴下モノマー溶液2、及び滴下開始剤溶液1を表1に記載の通りの組成としたこと、並びに重合温度以外は、上記比較合成例1同様の方法により合成した。
【0102】
[共重合体の重量平均分子量の測定]
得られた各共重合体の重量平均分子量をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定より算出した。詳細な条件は以下に示すとおりである。重量平均分子量はすべてポリスチレン換算分子量である。サンプルは0.3質量%N,N−ジメチルホルムアミド溶液を調製し、0.2μmPTFEフィルターを通したものを用いた。測定結果を表1に示す。
測定装置:HLC−8320GPC(東ソー社製)
カラム :α−M+α−M(東ソー社製)
検出器 :示差屈折率検出器(RI)
溶離液 :60mmol/L HPO、50mmol/L LiBrのDMF溶液
流速 :1mL/min
カラム温度:40℃
試料溶液注入量:10μL
【0103】
[アセチレンブラック(AB)ペーストの粘度の測定]
導電剤としてアセチレンブラック(AB)(デンカ社製デンカブラック粉状品)、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製#1100の12質量%NMP溶液)、及び非水系溶媒としてのNMPを用いてABペーストを作製した。導電剤及び結着剤の質量比率は50:50(固形分換算)とした。ABペーストはNMP量を調整することで固形分を15質量%とし、マルチブレンダーミルを用いた混練工程を経て作製した。
上記ABペースト20gに、ABに対して4質量%の各共重合体を添加し、自転・公転ミキサー(あわとり練太郎 AR−100)を用いて脱泡撹拌した(撹拌:2000rpm×4min、脱泡:2200rpm×1min)。粘度測定にはレオメータを使用した。測定は以下に示した条件にて実施した。得られたABペースト粘度を表1に示す。なお、共重合体を添加していないABペーストの粘度は42000mPa・sであった。
測定装置:Modular Compact Rheometer MCR 302(Anton Paar社製)
治具:25mmパラレルプレート
ギャップ幅:0.5mm
温度:20℃
せん断速度範囲:0.1−400s−1
測定点間隔:1s
【0104】
[溶解率の測定]
共重合体の電解液への溶解性を確認する目的で、電解液に使用される溶媒への溶解率を測定した。得られた共重合体溶液をシャーレに入れ、140℃、窒素気流下にて12時間以上減圧乾燥した。得られた共重合体1gにエチレンカーボネートとジエチレンカーボネートとの混合溶媒(体積比50/50)9gを添加し、10%懸濁液を調製した。得られた懸濁液を40℃、1時間静置した。その後、0.5μmのPTFEフィルターでろ過し、溶解していない共重合体を除去した。ろ過した溶液を140℃、減圧、窒素気流下で乾燥することで混合溶媒に溶解した共重合体の質量を測定した。以下の式より、混合溶媒への溶解率を求めた。得られた溶解率を表1に示す。
【0105】
【数1】
【0106】
[外観の評価]
27.5質量%の共重合体A/NMP溶液27.3g、及びNMP22.7gをサンプル瓶に加え、共重合体Aの15質量%NMP溶液を50g調製した。調製した溶液を60℃で1時間静置し、その後、外観を目視で評価した。共重合体B〜Oも同様の方法で評価した。評価結果を表1に示す。透明であるものは、共重合体が十分にNMPに溶解していることを示し、白濁が認められるものは、共重合体の少なくとも一部がNMPに溶解していないことを示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示されるように、共重合体A〜Lは、電解液に対する溶解性が低いことが分かる。従って、共重合体A〜Lを含む電池用正極ペーストから得られた正極からは、共重合体の電解液への溶出が少なくなることが分かる。また、表1に示されるように、共重合体A〜Lを含むABペーストは、十分に粘度が低いことや、共重合体A〜Lは、分散媒であるNMPへの十分な溶解性を有することが分かる。なお、分子量の大きい共重合体Jは、NMPへの溶解性が比較的低く、ペースト粘度が比較的高い。一方、分子量の小さい共重合体Gは、電解液へ僅かながら溶解することがわかる。また、共重合体I、J、Lは其々の一部がNMPへ溶解していないことがわかる。
【0109】
[実施例1〜7、比較例1]
共重合体を含有する正極ペーストを用いた正極合材層の密着性を確認するために、以下の密着性試験を行った。密着性試験1は極板の加工性能(スリット工程等)、密着性試験2は極板の巻回性能を模擬したものである。
【0110】
[正極ペーストの作製]
上記合成例で合成した表2に示す共重合体、並びに正極活物質、導電剤、結着剤及び非水系分散媒を用いて各ペーストを作製した。正極活物質はLiNi1/3Mn1/3Co1/3、導電剤はアセチレンブラック(BET比表面積:68m/g)、結着剤はPVDF(クレハ社の「#1100」の12%NMP溶液)、非水系分散媒はNMPを用いた。また、正極活物質(活物質)、結着剤、導電剤及び共重合体の質量比率(固形分中の含有量)は表2に示す通りとした。正極ペーストは、上記非水系溶媒の量を調整することにより、固形分を調整し、マルチブレンダーミルを用いた混練工程を経て作製した。この実施例及び比較例において、正極ペーストの固形分とは、正極ペーストが含有する、正極活物質、結着剤、導電剤及び共重合体からなる材料、すなわち非水系分散媒以外の材料をいう。
【0111】
[正極板の作製]
得られた上記各正極ペーストを、ドクターブレードを用いて、基材としての厚さ20μmのアルミニウム箔の片面に塗工し、十分に乾燥することで正極ペーストからなる合材層(正極合材層)を有した実施例1〜7及び比較例1の各正極板(正極)を作製した。乾燥後の正極板の塗工質量は17mg/cmであった。
【0112】
[密着性試験1]
上記乾燥後の正極板の合材層塗工部分を、裁断機を使用して30mm×60mmの長さに切断し、切断部の合材層を観察した。切断部において、合材層の幅1mm以上の脱落・剥離が生じたものを密着性不良、そうでない正極板は問題なしと判断した。密着性の結果を、密着性不良となった正極板は「B」、問題なしの正極板は「A」として、表2に示す。
【0113】
[密着性試験2]
密着性試験1と同じ様に、上記乾燥後の正極板の合材層塗工部分を、裁断機を使用して30mm×60mmの長さに切断した。切断した正極板を長辺方向の中間地点を中心に2回折り曲げた。1回目は未塗工面同士が接触するように180°折り曲げた後、折り曲げる前の状態に戻した。2回目は塗工面同士が接触するように180°折り曲げた後、折り曲げる前の状態に戻した。1回目の折り曲げ終了時(折り曲げる前に戻した状態)と、2回目の折り曲げ終了時(折り曲げる前に戻した状態)に、合材層の脱落状態を確認した。折り曲げた部分(長辺方向の中間地点)における正極板の短辺方向において、合材層が脱落・剥離した幅を計測した。そして、以下の式により合材層脱落率を算出した。
合材層脱落率(%)={合材層が脱落した幅(mm)/30(mm)}×100
この合材層脱落率を表2に示す。
【0114】
【表2】
【0115】
[結果]
密着性試験1の結果から、正極ペーストに共重合体とは別に結着剤を使用しない比較例1の場合は、密着性不良が生じることが判った。この様に、共重合体を含有し、結着剤を用いない正極ペースト、及び共重合体を含有し、結着剤を用いない正極合材層を備える正極は、リチウム電池等の電池には適していないと言える。
【0116】
また、密着性試験2から、正極ペーストの固形分(正極合材層)中の共重合体の含有量が2質量%を超える実施例7では、正極板の折り曲げ時に合材層の脱落・剥離が起こりうることが判った。長尺な帯状形状を有する正極、第1のセパレータ、負極及び第2のセパレータが重ね合わされ、巻回軸を中心に扁平状に巻回される電極体では、巻回軸と直交する方向の両端の湾曲部の極板は、比較的鋭角に曲がっており、ケースへの挿入時等には一時的に折り曲げられるような形状になることもある。実施例7の様に、極板の折り曲げ時に合材層の脱落・剥離が起こるものは、巻回型電極体では合材層の脱落・剥離が生じる可能性がある。よって、正極ペースト(正極合材層)の固形分中の共重合体の含有量は2質量%以下が好ましい。
【0117】
[実施例8〜14、比較例2]
(正極ペーストの調製)
表3に示す共重合体及び正極活物質、並びに導電剤としてのアセチレンブラック(BET比表面積:68m/g)、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び非水系分散媒としてのNMPを用いて、正極ペーストを調製した。なお、正極活物質、導電剤及び結着剤の質量比率は、94:3:3(固形分換算)とした。共重合体の添加量は、表3に示す導電剤100質量部に対する質量部とした。
【0118】
(正極の作製)
得られた上記正極ペーストを、厚み15μmのアルミニウム箔(正極基材)の両面に、非塗布部(正極合材層非形成領域)を残して塗布し、乾燥することにより正極合材層を作製した。その後、ロールプレスを行い、正極を作製した。
【0119】
(負極の作製)
負極活物質である黒鉛及び難黒鉛化性炭素、結着剤であるスチレン−ブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC)、並びに分散媒である水を混合して負極合材ペースト(負極合材層形成用材料)を調製した。黒鉛と難黒鉛化性炭素の質量比率は80:20、黒鉛及び難黒鉛化性炭素の合計質量とSBRとCMCの質量比率は96:2:2とした。負極合材ペーストは、水の量の調整により固形分を調整し、マルチブレンダーミルを用いた混練工程を経て作製した。この負極ペーストを銅箔の両面に、非塗布部(負極合材層非形成領域)を残して塗布し、乾燥することにより負極合材層を作製した。その後、ロールプレスを行い、負極を作製した。
【0120】
セパレータとして長さ1300mm、幅34mm、厚さ25μmのポリエチレン微多孔膜を用い、非水電解質としてエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DMC):エチルメチルカーボネート(EMC)=25:35:40(体積比)の混合溶媒にLiPFを1mol/L溶解した溶液を用いた。
【0121】
作製した正極と、セパレータと、負極とを順に重ね合わせ、これをポリエチレン製の長方形状の巻芯の周囲に長円渦状に巻回して電極体とした。
【0122】
上記電極体を角形アルミニウム製の電池ケースに収納し、正極リードを正極から導出して電池蓋に、負極リードを負極から導出して負極端子に溶接してから、電解液を注液した。次に電池蓋と電池ケースをレーザー溶接し電池ケース内の気密性を保持させ、小型角形電池を得た。
【0123】
(ACR増加率の測定)
得られた各電池を、45℃の環境下、1時間率(1CmA)の充電電流で4.2Vまで定電流充電した後、引き続き4.2Vで合計3時間となるように定電圧充電した。その後、1CmAの放電電流で2.75Vまで放電した。この充放電を500サイクル行った。500サイクルの充放電の前後とで交流電池抵抗値(ACR)を測定し、その増加率を求めた。結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示されるように、上記式(3)で表される構成単位(c)を含有する共重合体A、B、H又はIを含む正極ペーストから作製した正極を用いた実施例8〜14においては、ACR増加率が低いことが分かる。一方、上記式(3)で表される構成単位(c)を含有しない共重合体Nを用いた比較例2は、ACR増加率が高い。これは、表1に示されるように、上記式(3)で表される構成単位(c)を含有しない共重合体Nの電解液に対する溶解性が高いことに起因するものと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等の電源として使用される電池及びその正極等に適用できる。
【符号の説明】
【0127】
1 電池
2 電極体
3 電池容器
4 正極端子
4’ 正極リード
5 負極端子
5’ 負極リード
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
図1
図2