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特開2018-177718ベンゾオキサジン化合物及びベンゾオキサジン樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-177718(P2018-177718A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジン化合物及びベンゾオキサジン樹脂
(51)【国際特許分類】
   C07D 265/16 20060101AFI20181019BHJP
   C08G 14/073 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
   C07D265/16CSP
   C08G14/073
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-81295(P2017-81295)
(22)【出願日】2017年4月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ナラカス コラナヂイル シニ
(72)【発明者】
【氏名】南 昌樹
【テーマコード(参考)】
4C056
4J033
【Fターム(参考)】
4C056AA02
4C056AB01
4C056AC02
4C056AD03
4C056AE02
4C056AF01
4C056DA01
4C056DB02
4C056DC03
4J033FA01
4J033FA04
4J033FA11
4J033HA01
4J033HA05
4J033HA09
4J033HA11
4J033HB03
4J033HB06
4J033HB08
4J033HB09
(57)【要約】
【課題】硬化反応温度が低く、ガラス転移温度が高く、かつ熱分解し難いため高い重量保持率を示す高耐熱性硬化物を得ることができる、新規なベンゾオキサジン化合物を提供する。また、当該ベンゾオキサジン化合物の硬化物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物を提供する。また、式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物の硬化物を提供する。
【化1】

[式(1)中、Rは有機基である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物。
【化1】
[式(1)中、Rは有機基である。]
【請求項2】
前記Rが芳香族炭化水素基である、請求項1に記載のベンゾオキサジン化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のベンゾオキサジン化合物を含む熱硬化性樹脂原料の硬化物である、ベンゾオキサジン樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾオキサジン化合物、及び該ベンゾオキサジン化合物の硬化物であるベンゾオキサジン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾオキサジン化合物とは、ベンゼン骨格とオキサジン骨格とを有するベンゾオキサジン環を含む化合物を指し、その硬化物(重合物)であるベンゾオキサジン樹脂は、耐熱性、機械的強度等の物性に優れ、多方面の分野において各種用途用の高性能材料として使用されている。
特許文献1は、特定構造の新規なベンゾオキサジン化合物及びその製造方法を開示し、該ベンゾオキサジン化合物は高い熱伝導率を有すること、並びに該ベンゾオキサジン化合物により高い熱伝導率を有するベンゾオキサジン樹脂硬化物を製造することが可能であることを記載している。
特許文献2は、特定のベンゾオキサジン環構造を主鎖中に有するポリベンゾオキサジン樹脂の反応性末端の一部又は全部を封止した熱硬化性樹脂を開示し、該熱硬化性樹脂は溶媒に溶解した際の保存安定性に優れることを記載している。
【0003】
非特許文献1は、新規なベンゾオキサジン化合物として、2量体〜4量体ベンゾオキサジンを開示し、これらの重合体のガラス転移点等の物性測定結果を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−60407号公報
【特許文献2】特開2012−36318号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sini N. K., Takeshi Endo, "Toward Elucidating the Role of Number of Oxazine Rings and Intermediates in the Benzoxazine Backbone on Their Thermal Characteristics", Macromolecules, 2016, 49 (22), p.8466-8478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、硬化反応温度が低く、ガラス転移温度が高く、かつ熱分解し難いため高い重量保持率を示す高耐熱性硬化物を得ることができる、新規なベンゾオキサジン化合物を提供することにある。また、当該ベンゾオキサジン化合物の硬化物であるベンゾオキサジン樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、低温硬化性を有し、耐熱性及び耐熱分解性等に優れる、特定の環構造及び有機基等を有するベンゾオキサジン化合物を開発し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、下記式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物が提供される。
【化1】
[式(1)中、Rは有機基である。]
【0009】
また、別の観点の本発明によれば、式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物を含む熱硬化性樹脂原料の硬化物である、ベンゾオキサジン樹脂が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物は、ベンゾオキサジン環が2個結合した2量体構造からなる、ベンゾオキサジン環を2個有する新規な化合物である。R基が結合した方のベンゾオキサジン環中の酸素原子と、R基が結合していない方のベンゾオキサジン環の窒素原子が、式(1)に示す位置関係の構造である。当該位置関係は、下記式(1’)に示すように、R基が結合した方のベンゾオキサジン環中の酸素原子を1’とした場合、当該ベンゾオキサジン環の7’の位置の炭素に、R基が結合していない方のベンゾオキサジン環の窒素原子が結合している位置関係である。
【化2】
【0011】
式(1’)に示す1’の酸素原子と3の窒素原子が、式(1’)の位置関係にあることにより、本発明のベンゾオキサジン化合物は、硬化反応において低温硬化性を発現し、硬化後の耐熱性が良好で、熱分解し難く、ガラス転移温度が高いという特徴を有している。従って、本発明のベンゾオキサジン化合物を原料として使用して熱硬化させたベンゾオキサジン樹脂は、高耐熱性であり、高温機械強度が非常に高いという優れた特徴を備える。従って、接着剤、封止材、塗料、複合材向けマトリックス樹脂等の分野の高強度、高耐熱材料として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の2量体ベンゾオキサジンの1HNMRスペクトル図である。
図2】実施例1の2量体ベンゾオキサジンの13CNMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物は、ベンゾオキサジン環が2個結合した2量体構造を有し、上記式(1’)において7’の炭素に、R基が結合していない方のベンゾオキサジン環の窒素原子が結合している。本願において、ベンゾオキサジン環が2個結合した2量体構造のベンゾオキサジン化合物を2量体ベンゾオキサジンと称する場合もある。
【化3】
【0014】
式(1)中、Rは有機基である。有機基としては、ヘテロ原子を有する官能基、又は炭化水素基等を例示できる。ヘテロ原子としては、酸素、窒素、硫黄、フッ素、塩素、臭素等を例示でき、これらのヘテロ原子を含む官能基としては、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、ハロゲン化アルキル基等を挙げることができる。
炭化水素基としては、脂肪族非環式炭化水素基、脂肪族環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基の具体例としては、炭素数1〜6の脂肪族非環式炭化水素基、炭素数5〜12の脂肪族環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、デカヒドロナフタレン基、ノルボルナン基を例示でき、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を例示できる。
これらの基は、対応する1級アミン化合物を使用し、後述する製造方法によって、R基としてベンゾオキサジン環に導入することができる。
【0015】
次に、式(1)で示されるベンゾオキサジン化合物(以後、単に、式(1)の化合物と称する場合もある)の製造方法について説明する。
式(1)の化合物は、含窒素フェノール誘導体1と、1級アミン類と、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体とを同時に反応させる、ベンゾオキサジン環形成反応を有する、下記の合成プロセスによって製造できる。
含窒素フェノール誘導体1としては、下記化合物(b)である、2-((3-hydroxyphenyl)amino methyl)phenolを例示することができる。ホルムアルデヒドはホルマリンの形態で使用してもよく、ホルムアルデヒド誘導体としては、トリオキサン、パラホルムアルデヒドなどの多量体や重合体等を例示できる。
【0016】
式(1)の化合物の製造方法として、以下に示す方法を好ましい例として挙げることができる。すなわち、以下に説明する(X)〜(Z)の工程による製造方法である。
工程(X);式(2)に示す、サリチルアルデヒド(2−ヒドロキシベンズアルデヒド)とm−アミノフェノール(3−アミノフェノール)との反応により、化合物(a)[2-(((3-hydroxyphenyl)imino)methyl)phenol]を合成する工程。
【化4】
【0017】
工程(Y);化合物(a)の式(3)に示す還元反応により、化合物(b)[2-(((3-hydroxyphenyl)amino)methyl)phenol(含窒素フェノール誘導体1)]を合成する工程。
【化5】
【0018】
工程(Z);化合物(b)と、1級アミンと、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体との式(4)に示す反応により下記式(1)の化合物を合成する工程。以後の各式中において、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体は(CH2O)と表す。
【化6】
[式(1)中、Rは有機基である。]
【0019】
工程(X)において、サリチルアルデヒドとm−アミノフェノールとの理論反応モル比は1:1であるが、実際の合成反応においては、サリチルアルデヒド1モルに対して、m−アミノフェノール0.5〜3.0モルが好ましく、1.0〜1.5モルがさらに好ましい。高収率で化合物(a)を合成できるからである。
反応溶媒としては、アルコール類、炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン溶剤類等を例示でき、反応物及び生成物の溶解性の観点により、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましい。
反応温度としては、室温以上、還流温度以下が好ましく、30℃以上、100℃以下がさらに好ましい。反応率が良好だからである。また、反応時間は1〜15時間程度でよい。
【0020】
式(2)の反応により得られる化合物(a)を含む反応生成物は、不純物を含み得るので、該反応生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー精製、溶剤洗浄等によって精製することができる。高収率で得られる場合、精製することなく次工程を行うことができる。精製用溶媒としては、アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン溶剤類等を例示できる。
【0021】
工程(Y)においては、通常用いられるイミンの還元方法(接触水素還元、金属水素化物による還元等)を適用することができる。金属水素化物を用いる場合、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)等を用いることができる。水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合、化合物(a)と水素化ホウ素ナトリウムとの式(3)に示す理論反応モル比は2:1であるが、実際の合成反応においては、化合物(a)1モルに対して、水素化ホウ素ナトリウム0.5〜4.0モルが好ましい。高収率で化合物(b)を合成できるからである。接触水素還元の場合、触媒として、ニッケル、パラジウム、白金等の金属を有する担持触媒またはそれらの化合物を用いることができる。水素圧は、常圧から10気圧が好ましい。
反応溶媒としては、いずれの還元反応においても、アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類等を例示でき、反応物及び生成物の溶解性の観点により、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコールが好ましい。
金属水素化物を用いる場合、反応温度としては、0℃以上、還流温度以下が好ましく、20℃以上、50℃以下がさらに好ましい。反応率が良好だからである。また、反応時間は5分間〜1時間程度でよい。
接触水素還元を用いる場合、反応温度としては、−78℃以上、還流温度以下が好ましく、−20℃以上、50℃以下がさらに好ましい。反応率が良好だからである。また、反応時間は30分間〜48時間程度でよい。
【0022】
式(3)の反応により得られる化合物(b)を含む反応生成物は、不純物を含み得るので、該反応生成物を再結晶、カラムクロマトグラフィー精製、溶剤洗浄等によって精製し、高純度の化合物(b)とすることが好ましい。次工程である工程(Z)において化合物(1)を高収率で得られるからである。精製用溶媒としては、アルコール類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン溶剤類等を例示できる。
【0023】
工程(Z)において、化合物(b)と1級アミンとの式(4)に示す理論反応モル比は1:1であるが、実際の合成反応においては、化合物(b)1モルに対して、1級アミン0.3〜3.0モルが好ましく、0.6〜1.5モルがさらに好ましい。高収率で化合物(1)を合成できるからである。また、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体については、化合物(b)1モルに対してCH2Oとして3モルが理論量であるが、実際の合成反応においては、化合物(b)1モルに対して、CH2Oとして2.5〜4.0モルとなるように、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド誘導体を使用することが好ましい。高収率で化合物(1)を合成できるからである。
反応溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン溶剤類等を例示でき、反応物及び生成物の溶解性の観点により、含ハロゲン溶剤類が好ましい。含ハロゲン溶剤類としては、特にクロロホルムが好ましい。
また、反応触媒(反応促進剤)として塩基を使用してもよい。塩基としては弱塩基が好ましく、例えば、トリエチルアミン等の3級アミンなどが挙げられる。
反応温度としては、室温以上、還流温度以下が好ましく、30℃以上、70℃以下がさらに好ましい。反応率が良好だからである。また、反応時間は1〜48時間程度でよい。
【0024】
1級アミンは、上記R基を有するアミンであり、脂肪族アミン、芳香族アミンを例示でき、具体的化合物例としては、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、アミノメチルシクロヘキサン、エチルアミン、ブチルアミン、及びヘキシルアミン等が挙げられる。
【0025】
1級アミンとしてアニリンを用いた、工程(Z)の2量体ベンゾオキサジン(1a)の合成反応を下記式(4a)に示す。
【化7】
【0026】
式(4a)に示す2量体ベンゾオキサジン(1a)の合成に当たって、反応溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、エステル類、含ハロゲン溶剤類等を例示でき、反応物及び生成物の溶解性の観点により、含ハロゲン溶剤類が好ましい。含ハロゲン溶剤類としては、特にクロロホルムが好ましい。
反応温度としては、室温以上、還流温度以下が好ましく、30℃以上、70℃以下がさらに好ましい。反応率が良好だからである。また、反応時間は1〜48時間程度でよい。
【0027】
つづいて、以上の様にして得られる、2量体ベンゾオキサジン(1a)で例示される式(1)の化合物の構造を同定する方法について説明する。
式(1)の化合物の構造の同定は、元素分析、赤外分光法(IR)、プロトンNMR(1HNMR)、及び13CNMRで行う。元素分析により、各元素の測定値と計算値がほぼ一致すること、IR測定により、特定の特徴的吸収ピークを有するスペクトルを示すこと、両NMR測定によるNMRピークの化学シフト、カップリング及び面積比から、各水素原子、炭素原子が合理的に帰属できること、によって同定し、式(1)の構造であることを確認する。具体的同定方法については、後述の実施例の例示化合物によって説明する。
【0028】
元素分析は、例えば、Yanaco CHN Corder MT-5(Yanaco Group Co., Ltd.製)を使用し、炭素、窒素、及び水素の含有率を分析することができる。
【0029】
IRは、例えば、Thermo Scientific NICOLET iS10 FTIR(Thermo Fisher Scientific Inc.製)を使用して測定できる。
【0030】
1HNMR、13CNMRは、例えば、JNM ECS400(JEOL RESONANCE Inc.製)を使用して測定できる。
【0031】
本発明のベンゾオキサジン化合物である式(1)の化合物は、熱硬化(開環重合)させることによって耐熱性に優れる新規なベンゾオキサジン樹脂を製造することができる。熱硬化は、式(1)の化合物単独、又は式(1)の化合物以外の、公知のベンゾオキサジン化合物との混合物を熱硬化させてもよい。さらには、ベンゾオキサジン化合物以外の、熱硬化性樹脂用原料化合物も含めて熱硬化させてもよい。
【0032】
式(1)の化合物の熱硬化による硬化物(硬化樹脂)は、次のように製造することができる。すなわち、公知のベンゾオキサジン化合物と同様の硬化条件にて、開環重合を行い硬化することができる。例えば、式(1)の化合物を単独で、180〜300℃にて、30分間〜10時間加熱することで、硬化物を得ることができる。また、開始剤として、フェノール化合物、ルイス酸、スルホン酸類、カチオン発生剤等を用いることができ、150〜300℃にて、30分間〜10時間加熱することで硬化物を得ることができる。
本発明の式(1)の化合物は、公知のベンゾオキサジン化合物よりも低い温度で硬化反応させることができ、具体的には230℃未満の温度であっても、上記反応時間内に十分硬化反応が進行する。従って、式(1)の化合物の利点を活かすため、硬化温度は230℃未満とすることが好ましい。
【0033】
また、公知のベンゾオキサジン化合物と混合して硬化反応を行うことで、公知のベンゾオキサジン化合物由来の構成を有する硬化物を得ることもできる。さらに、他の熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂等)の原料と共硬化を行い、硬化物を得ることもできる。
【0034】
硬化反応例として、式(1a)の2量体ベンゾオキサジン単独での典型的な硬化反応を式(5)に示す。
【化8】
[式(5)中、n、m、は、重合度を表す整数であり、それぞれ同一であっても各々が異なっていてもよい。
【0035】
式(1)の化合物から得られる硬化物は耐熱性に優れており、特に、式(1)の化合物単独の硬化物は、DSC(示差走査熱量測定)でのガラス転移点が250℃以上、また、硬化時の重量保持率が90%以上であり、極めて耐熱性に優れている。
ここで、DSCは、例えば、DSC-6200(Seiko Instrument Inc.製)、を使用し、N2流量;20mL/分、昇温速度:10℃/分の条件で測定することができる。また、硬化時の重量保持率は、硬化前後の重量を測定し、以下の式によって算出する。
重量保持率(%)=(硬化後の重量/硬化前の重量)×100
なお、本願においては、重量保持率を算出する硬化物の硬化条件は、窒素雰囲気下、220℃で2時間硬化とした。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、製造方法は一例であり、本発明に係るベンゾオキサジン化合物は、下記製造方法により限定されるものではない。
各実施例の化合物の同定には次の装置を使用した。
・元素分析;Yanaco CHN Corder MT-5(Yanaco Group Co., Ltd.製)
・IR;Thermo Scientific NICOLET iS10 FTIR(Thermo Fisher Scientific Inc.製)
1HNMR、13CNMR;JNM ECS400(JEOL RESONANCE Inc.製)
・DSC;DSC-6200(Seiko Instrument Inc.製)
・TGA;TG-DTA 6200(Seiko Instrument Inc.製))
【0037】
(実施例1)
<式(1a)の2量体ベンゾオキサジン;[3(4H),7’-bi-2H-1,3-benzoxazin]-3’(4’H)-yl-benzene>
1.合成
1−1.化合物(a)[2-(((3-hydroxyphenyl)imino)methyl)phenol]の合成
式(2)に示す化合物(a)の合成反応を以下のようにして実施した。
サリチルアルデヒド 27.97g(229mmol)、m−アミノフェノール 25g(229mmol)をエタノール 250mLに溶解し、60℃で12時間反応させた。反応終了後、エタノールを留去させて白色の化合物(a)(収量46.4g)を得た。
【化9】
【0038】
1−2.化合物(b)[2-(((3-hydroxyphenyl)amino)methyl)phenol]の合成
式(3’)に示す化合物(b)の合成反応を以下のようにして実施した。
1−1.で合成した化合物(a) 46.4g、及びエタノール 350mLをフラスコに入れ、室温下に撹拌しながら、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4) 4.33gを、徐々に添加した後、15分間撹拌した。
反応終了後、反応溶液中に蒸留水 250mLを添加した後、1回当たり200mLのジクロロメタンで2回、反応生成物を抽出した。次に、この反応生成物含有ジクロロメタン溶液層を蒸留水で洗浄した後、有機層であるジクロロメタン溶液層を分取し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。無水硫酸ナトリウムをろ別後、ジクロロメタン溶液からロータリーエバポレーターにより、ジクロロメタン及びジクロロメタン溶液に混入しているエタノール(反応溶媒)を留去して黄白色紛体を得た。
該黄白色紛体を、1回当たり30mLのジクロロメタンで2回洗浄し、60℃で48時間乾燥させて白色紛体を得た(収量;37.5g、収率;76.0%)。
【化10】
【0039】
化合物(b)であることは、得られた白色固体の1HNMR及び13CNMRを測定し、各元素の帰属により確認した。帰属結果を式(6)及び表1に示す。なお、NMRはいずれもDMSO−d6に溶解して測定した。
【化11】
【0040】
【表1】
【0041】
1−3.式(1a)の2量体ベンゾオキサジンの合成
1−2.で合成した化合物(b) 0.50g(2.32mmol)、アニリン 0.216g、(2.32mmol)、パラホルムアルデヒド[(CH2O)n] 0.23g(7.67mmol)、トリエチルアミン 0.240g(2.32mmol)をクロロホルム 25mLに溶解し、24時間還流させた。反応終了後、反応溶液に無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥させた。無水硫酸ナトリウムをろ別し、溶媒を留去後、溶離液としてヘキサン/酢酸エチル(20/1:容積比)混合溶媒を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。混合溶媒を留去して黄白色粉体を得た。該黄白色粉体を、ヘキサン/酢酸エチル(10/1:容積比)にて再結晶させた後、乾燥して白色粉体を得た(収量;0.36g、収率;45.0%)。
【0042】
式(1a)の2量体ベンゾオキサジンの合成反応式を式(4a’)に示す。
【化12】
【0043】
以上の様にして合成した式(1a)の2量体ベンゾオキサジンである[3(4H) ,7’-bi-2H-1,3-benzoxazin]-3’(4’H)-yl-benzeneの、基準となる元素に番号を付した化学式を式(1a’)に示す。
【化13】
【0044】
2.式(1a)の2量体ベンゾオキサジンの同定:各種分析、測定
合成した化合物が、式(1a)の2量体ベンゾオキサジンであることは、得られた白色粉体の元素分析、IR測定(FT−IR)、並びに1HNMR及び13CNMR測定によって確認した。これらの分析及び測定は、上記の各装置を使用し、常法により測定した。さらに、上記DSC装置を用い、N2流量;20mL/分、昇温速度;10℃/分の条件で融点を測定した。後述の比較例の2量体ベンゾオキサジンの融点も同様に測定した。分析及び測定結果を以下に示す。
【0045】
[元素分析(C22H20N2O2として)]
・測定値:C;76.80、H;5.88、N;8.08
・計算値:C;76.72、H;5.85、N;8.13
[FT−IR](cm-1):928,940,951,1034;(C−O−C)、1114;(C−N−C),1217
[1HNMR]:δ 4.53,4.55(s, 4H, Ar-CH2-N)、5.28,5.30(s, 4H, O-CH2-N)、6.54(d, 1H, J=2.4Hz)、6.65(dd, 1H, J=8.2,2.3Hz)、6.78(d, 1H, J=8Hz)、6.84-6.92 (m, 3H)、6.97(d, 1H, J=7.2Hz)、7.06-7.11(m, 3H)、7.21-7.25(m, 2H)
[13CNMR]:δ 50.08,50.37(Ar-CH2-N)、79.46,79.60(O-CH2-N)、106.5,111.3,113.9,117.08,118.3,120.91,120.94,121.5,126.8,127.4,127.9,129.3,148.36,148.49,154.39,155.06(芳香族炭素)
[融点]:123℃
【0046】
式(1a)の2量体ベンゾオキサジンの1HNMRを図1に、13CNMRを図2に示す。1HNMRの7ppm付近のシグナル群は芳香族環の12個の水素によるものである。なお、NMRはいずれも重クロロホルムに溶解して測定した。
【0047】
3.ベンゾオキサジン樹脂A[式(1a)の2量体ベンゾオキサジンの硬化物]の合成
式(1a)の2量体ベンゾオキサジンを、窒素気流中、220℃で2時間加熱して開環重合(ROP)させ、ベンゾオキサジン樹脂Aを得た。硬化反応を下記式(5)に示す。
【化14】
【0048】
4.ベンゾオキサジン樹脂Aの物性
ベンゾオキサジン樹脂AのDSCでの、ガラス転移点は269℃、TGAでの10%重量減量温度(Td10)は359℃であった。DSC及びTGAは上記した装置を用い、次の測定条件で測定した。
・DSC;N2流量;20mL/分、昇温速度:10℃/分
・TGA;N2流量;50mL/分、昇温速度;10℃/分
また、硬化時の重量保持率は92.8%であり、硬化反応における発熱のピークトップ温度は、222℃であった。
【0049】
(比較例1)
非特許文献1に従い、反応時間を48時間とし、下記式の2量体ベンゾオキサジン(7)を合成した(収率52%)。2量体ベンゾオキサジン(7)の融点は122℃であった。
【化15】
【0050】
さらに、2量体ベンゾオキサジン(7)を、窒素気流中、250℃で2時間加熱して開環重合させ、ベンゾオキサジン樹脂Bを得た。
ベンゾオキサジン樹脂Bの物性を、実施例1のベンゾオキサジン樹脂Aと同様にして測定した。ベンゾオキサジン樹脂Bのガラス転移点は291℃、10%重量減量温度(Td10)は373℃であった。また、硬化時の重量保持率は75.0%であり、硬化反応における発熱のピークトップ温度は251℃であった。
【0051】
(比較例2)
実施例1のm−アミノフェノールをo−アミノフェノールに変更し、式(2)の反応に対応する反応の反応時間を12時間から96時間に変更した以外は、実施例1と同様にして下記式の2量体ベンゾオキサジン(8)を合成した(収率42%)。
【化16】
【0052】
合成した化合物が、式(8)の2量体ベンゾオキサジンであることは、実施例1の式(1a)の2量体ベンゾオキサジンと同様の分析及び測定によって確認した。分析及び測定結果を以下に示す。
[元素分析(C22H20N2O2として)]
・測定値:C;76.80; H, 5.88; N, 8.08
・計算値:C;76.72、H;5.85、N;8.13
[FT−IR](cm-1):918,931,938,1012;(C−O−C)、1158;(C−N−C),1217
[1HNMR]:δ4.52,4.62(s, 4H, Ar-CH2-N)、5.28,5.46(s, 4H, O-CH2-N)、6.71-6.76(m, 2H)、6.79(d, 1H, J=8Hz)、6.86(t, 1H, J=7.37Hz)、6.91-6.97(m, 2H)、7.00-7.03(m, 1H)、7.08-7.12(m, 3H)、7.27(t, 2H, J=8Hz)
[13CNMR]:δ50.36,50.45(Ar-CH2-N)、79.88,80.49(O-CH2-N)、116.8,118.2,119.3,120.7,120.9,121.1,121.60,121.69,121.9,126.8,127.8,129.4,137.3,147.2,148.3,154.1(芳香族炭素)
[融点]:143℃
【0053】
さらに、得られた2量体ベンゾオキサジン(8)を、窒素気流中、235℃で2時間加熱して開環重合させ、ベンゾオキサジン樹脂Cを得た。
ベンゾオキサジン樹脂Cの物性を、実施例1のベンゾオキサジン樹脂Aと同様にして測定した。ベンゾオキサジン樹脂Cのガラス転移点は265℃、10%重量減量温度(Td10)は372℃であった。また、硬化時の重量保持率は79.0%であり、硬化反応における発熱のピークトップ温度は239℃であった。
【0054】
実施例及び比較例から明確なように、二つのベンゾオキサジン環とR基(フェニル基)が式(1’)に示すような位置関係にある実施例1の2量体ベンゾオキサジンは、そのような位置関係に無い比較例1及び2の2量体ベンゾオキサジンと比較して低温硬化性に優れ、その結果、硬化時において高い重量保持率を示す。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のベンゾオキサジン化合物は、熱硬化性樹脂として使用可能である。特に、密着性・硬化時の低収縮性・高耐熱性等の物性が要求される分野で使用可能である。例えば、複合材料向けのマトリックス樹脂、電子分野における封止材、積層板等、塗料、接着剤等に用いることができる。
図1
図2