特開2018-177875(P2018-177875A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-177875(P2018-177875A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】油圧作動油組成物及び油圧装置
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20181019BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20181019BHJP
   C10M 129/76 20060101ALI20181019BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20181019BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20181019BHJP
【FI】
   C10M169/04
   C10M129/10
   C10M129/76
   C10N30:10
   C10N40:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-75407(P2017-75407)
(22)【出願日】2017年4月5日
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】置塩 直史
(72)【発明者】
【氏名】八木下 和宏
(72)【発明者】
【氏名】小谷田 早季
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA03C
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB31A
4H104BB35C
4H104BB41A
4H104BC03C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104LA05
4H104PA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長寿命化が可能な油圧作動油組成物を提供すること。
【解決手段】潤滑油基油と、式(1)で表される第1の酸化防止剤と、式(2)で表される第2の酸化防止剤と、を含有する、油圧作動油組成物。


[Rは酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基、好ましくは、直岐/分岐のアルキル脂肪酸のアルキルエステル]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、
下記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、
【化1】

下記式(2)で表される第2の酸化防止剤と、
【化2】

[式(2)中、Rは酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基を示す。]
を含有する、油圧作動油組成物。
【請求項2】
前記Rが下記式(3)で表される基である、請求項1に記載の油圧作動油組成物。
【化3】

[式(3)中、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基を示す。]
【請求項3】
油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、
前記油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、
前記圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、
前記制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、
を備える油圧装置であって、
前記油圧作動油組成物が、
潤滑油基油と、
下記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、
【化4】

下記式(2)で表される第2の酸化防止剤と、
【化5】

[式(2)中、Rは酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基を示す。]
を含有する、油圧装置。
【請求項4】
前記Rが下記式(3)で表される基である、請求項3に記載の油圧装置。
【化6】

[式(3)中、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基を示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作動油組成物及び油圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧装置は、エンジン等のエネルギーを油(油圧作動油)の圧力として伝達する装置であり、製鉄機械、建設機械等の産業機械に利用されている。油圧装置は、例えば、油圧ポンプ、制御弁、油圧シリンダ等で構成されている。これらの構成要素には摺動部が存在するため、油圧作動油は、摺動部の潤滑剤として役割も担っている。そのため、油圧作動油には、潤滑性、熱・酸化防止性等の潤滑剤としての特性が要求される。また、油圧作動油は徐々に酸化劣化するため、定期的な交換が必要となる。その交換回数を少なくするために、油圧作動油には、潤滑剤としての特性の他、長寿命化が求められる。
【0003】
油圧作動油は、一般的に、潤滑油基油と、上記のような要求特性に応じて選択される添加剤とを含有する。例えば、特許文献1には、スラッジの発生を抑制しつつも酸化安定性を向上させることを目的として、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(A)と、ベンゾトリアゾール系化合物及びソルビタン化合物から選択される少なくとも1種の化合物(B)とを含む潤滑油組成物が開示されている。しかしながら、従来の潤滑油組成物においても、長寿命化についてはさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−176027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、長寿命化が可能な油圧作動油組成物の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、特定の構造を有する酸化防止剤を2種以上組み合わせることによって、酸化防止剤の消耗速度が遅くなり、結果として、酸化防止剤を長期間残存させることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、下記[1]、[2]に示す油圧作動油組成物、下記[3]、[4]に示す油圧装置、下記[5]に示す組成物の使用(応用)、及び下記[6]に示す組成物の製造のための使用(応用)を提供する。
【0008】
[1]潤滑油基油と、
下記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、
【化1】

下記式(2)で表される第2の酸化防止剤と、
【化2】

[式(2)中、Rは酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基を示す。]
を含有する、油圧作動油組成物。
[2]Rが下記式(3)で表される基である、[1]に記載の油圧作動油組成物。
【化3】

[式(3)中、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基を示す。]
[3]油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部と、油圧作動油組成物を圧送する圧送部と、圧送された油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部と、制御された油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部と、を備える油圧装置であって、
油圧作動油組成物が、
潤滑油基油と、
下記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、
【化4】

下記式(2)で表される第2の酸化防止剤と、
【化5】

[式(2)中、Rは酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基を示す。]
を含有する、油圧装置。
[4]Rが下記式(3)で表される基である、[3]に記載の油圧装置。
【化6】

[式(3)中、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基を示す。]
[5]組成物の、油圧作動油としての使用であって、組成物が、潤滑油基油と、上記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、上記一般式(2)で表される第2の酸化防止剤と、を含有する、使用。
[6]組成物の、油圧作動油の製造のための使用であって、組成物が、潤滑油基油と、上記式(1)で表される第1の酸化防止剤と、上記一般式(2)で表される第2の酸化防止剤と、を含有する、使用。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長寿命化が可能な油圧作動油組成物が提供される。また、本発明によれば、このような油圧作動油組成物を用いた油圧作動装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る油圧装置を示す図である。
図2】実施例1の酸化防止剤の残存率の経時変化のグラフである。
図3】比較例1、2の酸化防止剤の残存率の経時変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る油圧装置を示す図である。図1に示すように、一実施形態に係る油圧装置1は、油圧作動油組成物が貯蔵された油貯蔵部2と、油圧作動油組成物を圧送する圧送部3と、油圧作動油組成物をろ過により清浄するろ過部4と、油圧作動油組成物の油圧、方向又は流量を制御する制御部5と、油圧作動油組成物の油圧を機械的な動力に変換する変換部6とで構成される油圧回路を備える。
【0013】
油貯蔵部2は、例えば、第1のオイルタンク2Aと、第2のオイルタンク2Bと、第3のオイルタンク2Cとで構成されている。これらのオイルタンクは、互いに同一のオイルタンクであってもよく別個のオイルタンクであってもよい。
【0014】
圧送部3は、例えば電動機7によって駆動されており、第1のオイルタンク2Aから油圧作動油組成物を汲み上げて油圧を発生させる。圧送部3は、油圧ポンプであってよい。油圧ポンプは、例えば、歯車ポンプ、ねじポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプ等である。圧送部3により生じる油圧は、例えば5〜50MPaである。
【0015】
ろ過部4は、例えば、第1のフィルタ4Aと第2のフィルタ4Bとで構成されている。第1のフィルタ4Aは、第1のオイルタンク2Aと圧送部3との間に設けられており、第1のオイルタンク2Aから汲み上げられた油圧作動油組成物中の錆等の異物をろ過して除去する。
【0016】
制御部5は、圧送部3により圧送された油圧作動油組成物の油圧、流動の方向又は流量を制御する。制御部5は、例えば、油圧を制御する圧力制御弁8と、流動の方向を制御する方向制御弁9と、流量を制御する流量制御弁10とを備えている。
【0017】
圧力制御弁8は、例えば、圧送部3により生じる油圧を調整したり、圧力計11で測定される圧力が一定以上になった場合に、油圧作動油組成物の一部を第2のオイルタンク2Bに逃がしたりする。圧力制御弁8は、リリーフ弁、減圧弁、アンローダ弁、シーケンス弁、カウンタバランス弁等であってよい。
【0018】
方向制御弁9は、例えば、電磁切換弁12と逆止め弁13とで構成されている。電磁切換弁12は、それぞれ変換部6への流路を形成する第1の流路14及び第2の流路15と、第3のオイルタンク2Cとに接続されている。第1の流路14には、例えば、流量制御弁10と逆止め弁13とが設けられている。第2の流路15は、例えば、変換部6と直通している。第3のオイルタンク2Cは、例えば、第2のフィルタ4Bを介して電磁切換弁12と接続されている。
【0019】
電磁切換弁12は、圧送部3から圧送された油圧作動油組成物の変換部6への流路を、第1の流路14及び第2の流路15のいずれかに切替え可能となっている。例えば、電磁切換弁12から第1の流路14に送られた油圧作動油組成物は、変換部6を経由して、第2の流路15から電磁切換弁12に戻り、第2のフィルタ4Bで錆等の異物がろ過された後、第3のオイルタンク2Cに送られる。方向制御弁9は、電磁切換弁12に代えて、手動式、機械式等の切換弁で構成されていてもよい。逆止め弁13は、第1の流路14に設けられており、油圧作動油組成物を一方向だけに流すことにより、逆流を防いでいる。
【0020】
流量制御弁10は、例えば絞り弁、流量調整弁等であってよい。これらの弁には、デセラレーション弁が内蔵されていてもよい。変換部6は、例えば、流量制御弁10で制御された流量に応じて油圧を動力に変換する。変換部6は、油圧を油圧シリンダ、油圧モータ等であってよい。流量制御弁10が油圧作動油組成物の流量を制御することにより、油圧シリンダ、油圧モータ等(変換部6)の動く速さが調整可能となっている。油圧シリンダは、単動型、複動型、特殊型等であってよい。油圧モータは、歯車モータ、ベーンモータ、プランジャーモータ等であってよい。
【0021】
次に、油圧装置に用いられる油圧作動油組成物について説明する。油圧作動油組成物は、潤滑油基油と、式(1)で表される第1の酸化防止剤と、一般式(2)で表される第2の酸化防止剤と、を含有する。
【0022】
<潤滑油基油>
潤滑油基油は、例えば、鉱油、合成油、又は両者の混合物である。鉱油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は2つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油、ノルマルパラフィン、イソパラフィンなどが挙げられる。これらの鉱油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0023】
好ましい鉱油としては、以下の基油を挙げることができる。
(1)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留による留出油
(2)パラフィン基系原油及び/又は混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO)
(3)潤滑油脱ろう工程により得られるワックス及び/又はGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス
(4)上記(1)〜(3)の中から選ばれる1種又は2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(5)上記(1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油
(6)上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の脱れき油(DAO)
(7)上記(6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC)
(8)上記(1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油等を原料油とし、この原料油及び/又はこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0024】
ここで、通常の精製方法としては、基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、以下の精製方法が挙げられる。
(a)水素化分解、水素化仕上げ等の水素化精製
(b)フルフラール溶剤抽出等の溶剤精製
(c)溶剤脱ろう、接触脱ろう等の脱ろう
(d)酸性白土、活性白土等による白土精製
(e)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄等の薬品(酸又はアルカリ)精製
これらの精製方法は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び任意の順序で採用することができる。
【0025】
合成油としては、例えば、エステル、エーテル及び炭化水素油が挙げられる。これらの合成油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0026】
エステルは、例えば、脂肪酸(一塩基酸)とアルコールとのエステル、又は多塩基酸とアルコールとのエステルであってよい。
【0027】
脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよく不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、例えば炭素数2〜24の脂肪酸であってよい。脂肪酸は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。多塩基酸としては、二塩基酸、三塩基酸等が挙げられる。多塩基酸は、不飽和結合を有していても有していなくてもよい。多塩基酸の炭素数は、例えば2〜16であってよい。二塩基酸は、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。
【0028】
アルコールは、1価アルコールであってもよく多価アルコールであってもよい。1価アルコールの炭素数は、例えば1〜24、1〜12、又は1〜8であってよい。1価アルコールは、直鎖状であってもよく分岐状であってもよい。多価アルコール(ポリオール)が有する水酸基の個数は、例えば2〜10、又は2〜6であってよい。
【0029】
エーテルとしては、例えば、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
炭化水素油としては、例えば、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。
【0031】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは10mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、さらに好ましくは30mm/s以上である。潤滑油基油の40℃における動粘度は、好ましくは150mm/s以下、より好ましくは100mm/s以下、さらに好ましくは50mm/s以下である。潤滑油基油の粘度指数は、80以上、又は100以上であってよい。本発明における動粘度及び粘度指数はそれぞれ、JIS K2283に準拠して測定された動粘度及び粘度指数を意味する。
【0032】
本発明における芳香族含有量とは、Analytical Chemistry第44巻第6号(1972)第915−919頁“Separationof High-Boiling Petroleum Distillates Using Gradient Elution ThroughDual-Packed(Silica Gel-Alumina Gel) Adsorption Columns”に記載されたシリカ−アルミナゲルクロマト分析法に準拠して測定して得られた値を意味する。
【0033】
潤滑油基油の硫黄分の含有量は、10000質量ppm以下、100質量ppm以下、又は1質量ppm以下であってよい。本発明における硫黄分の含有量は、ASTM D4951 “Standard Test Method for Determination of Additive Elements inLubricating Oils by Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometry”により測定して得られた値を意味する。
【0034】
<潤滑油用添加剤>
(酸化防止剤)
油圧作動油組成物は、第1の酸化防止剤と、第2の酸化防止剤と、を含有する。第1及び第2の酸化防止剤を組み合わせることによって、酸化防止剤を長期間残存させることが可能となる。このような現象が起こる理由は定かではないが、本発明者らは、酸化防止剤のそれぞれの連鎖停止速度及び自己酸化速度の違いが酸化防止剤を長期間残存させることに影響を与えていると考えている。
【0035】
第1の酸化防止剤は、式(1)で表される化合物、すなわち、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(DBPC)である。
【0036】
【化7】
【0037】
第1の酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。第1の酸化防止剤の含有量が0.1質量%以上であると、第2の酸化防止剤の消耗速度をより抑制できる傾向にある。また、第1の酸化防止剤の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.7質量%以下である。第1の酸化防止剤の含有量が2.0質量%以下であると、スラッジの発生量をより抑制できる傾向にある。
【0038】
第2の酸化防止剤は、式(2)で表される化合物である。
【0039】
【化8】
【0040】
式(2)中、Rは、酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基を示す。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜25、より好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15、特に好ましくは1〜10、最も好ましくは1〜5である。
【0041】
Rとしてのアルキル基は、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が挙げられる。
【0042】
酸素原子を含む基によって置換されていてもよいアルキル基とは、上記アルキル基、及び任意の水素原子が酸素原子を含む基で置換されたアルキル基を意味する。酸素原子を含む基で置換されたアルキル基においては、1又は2以上の水素原子が酸素原子を含む基で置換されていてもよい。
【0043】
ここで、酸素原子を含む基は、構成元素として酸素を含む置換基を意味する。酸素原子を含む基としては、例えば、ヒドロキシ基(−OH)、アルコキシ基(−OR)、アシル基(−CO−R)、アルコキシカルボニル基(−CO−OR)等が挙げられる。なお、R、R、Rはアルキル基を示し、Rで例示したアルキル基と同様のものを用いることができる。これらのうち、酸素原子を含む基は、アルコキシカルボニル基であることが好ましい。
【0044】
Rは、下記式(3)で表される基であってもよい。
【0045】
【化9】
【0046】
式(3)中、Rはアルキレン基を示し、Rはアルキル基を示す。
【0047】
としてのアルキレン基は、例えば、直鎖状又は分岐状のアルキレン基であってもよい。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基が挙げられる。Rとしてのアルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4、さらに好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。
【0048】
としてのアルキル基は、Rで例示したアルキル基と同様のものを用いることができる。Rとしてのアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜25、より好ましくは3〜18、さらに好ましくは5〜15、特に好ましくは6〜10、最も好ましくは7〜9である。
【0049】
第2の酸化防止剤は、式(2)で表される化合物であれば、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて、混合物として使用してもよい。
【0050】
第2の酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、さらに好ましくは0.8質量%以上である。第2の酸化防止剤の含有量が0.3質量%以上であると、酸化防止剤の性能がより発現し易い傾向にある。また、第2の酸化防止剤の含有量は、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下である。第2の酸化防止剤の含有量が2.0質量%以下であると、スラッジの発生量をより抑制できる傾向にある。
【0051】
第1の酸化防止剤及び第2の酸化防止剤の含有量の合計は、特に制限されないが、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.9質量%以上、さらに好ましくは1.3質量%以上である。含有量の合計が0.4質量%以上であると、酸化防止剤の性能がより発現し易い傾向にある。また、含有量の合計は、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以下である。含有量の合計が4.0質量%以下であると、スラッジの発生量をより抑制できる傾向にある。
【0052】
(リン系摩耗防止剤)
油圧作動油組成物は、必要に応じて、リン系摩耗防止剤を含有していてもよい。
【0053】
リン系摩耗防止剤は、構成元素としてリンを含む摩耗防止剤である。リン系摩耗防止剤は、特に制限されずに、通常の潤滑油に使用される添加剤を使用することができる。具体的には、亜リン酸エステル類(ホスファイト)、リン酸エステル類(ホスフェート)、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体等;ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、チオ亜リン酸エステル類、ジチオ亜リン酸エステル類、トリチオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類(チオホスフェート)、ジチオリン酸エステル類(ジチオホスフェート)、トリチオリン酸エステル類(トリチオホスフェート)、これらのアミン塩、これらの金属塩、これらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、リン系摩耗防止剤は、中性(トリエステル)又は酸性(モノエステル又はジエステル)のリン酸エステル類であることが好ましく、中性リン酸エステル類であることがより好ましい。中性リン酸エステル類としては、例えば、トリクレジルホスフェート等が挙げられる。
【0054】
リン系摩耗防止剤の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.001〜5質量%であってもよい。中性リン酸エステル類を用いる場合、その含有量は、組成物全量を基準として、0.3〜2質量%であることが好ましい。酸性リン酸エステル類を用いる場合、その含有量は、組成物全量を基準として、0.01〜0.1質量%であることが好ましい。
【0055】
(金属不活性化剤)
油圧作動油組成物は、必要に応じて、金属不活性化剤を含有していてもよい。
【0056】
金属不活性化剤は、特に制限されずに、通常の潤滑油に使用される添加剤を使用することができる。金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。これらのうち、金属不活性化剤は、ベンゾトリアゾール系化合物であることが好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−(4又は5)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン等が挙げられる。
【0057】
金属不活性化剤の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.001〜2質量%であってもよい。ベンゾトリアゾール系化合物又はイミダゾール系化合物を用いる場合、その含有量は、組成物全量を基準として、0.01〜0.1質量%であることが好ましい。チアジアゾール系化合物を用いる場合、その含有量は、組成物全量を基準として、0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
【0058】
(その他の添加剤)
油圧作動油組成物は、その目的に応じて、一般的に使用されている任意の潤滑油用添加剤をさらに含有することができる。このような添加剤としては、例えば、粘度調整剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩擦調整剤、リン系摩耗防止剤以外の摩耗防止剤(極圧剤)、第1の酸化防止剤及び第2の酸化防止剤以外の酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、流動点降下剤、抗乳化剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0059】
粘度調整剤は、具体的には非分散型又は分散型エステル基含有粘度調整剤であり、例えば、非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤、非分散型又は分散型オレフィン−(メタ)アクリレート共重合体系粘度調整剤、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体系粘度調整剤及びこれらの混合物等が挙げられ、これらの中でも非分散型又は分散型ポリ(メタ)アクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。特に非分散型又は分散型ポリメタクリレート系粘度調整剤であることが好ましい。
【0060】
粘度調整剤としては、その他に、非分散型若しくは分散型エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物、ポリイソブチレン又はその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。
【0061】
金属系清浄剤としては、例えば、スルホネート系清浄剤、サリチレート系清浄剤、フェネート系清浄剤等が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との正塩、塩基性塩、過塩基性塩のいずれをも配合することができる。使用に際しては、これらの中から任意に選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。
【0062】
無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤が使用でき、例えば、炭素数40以上400以下の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するモノ又はビスコハク酸イミド、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、炭素数40以上400以下のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するポリアミン、これらのホウ素化合物、カルボン酸、リン酸等による変成品などが挙げられる。使用に際してはこれらの中から任意に選ばれる1種又は2種以上を配合することができる。
【0063】
摩擦調整剤としては、例えば、脂肪酸エステル系、脂肪族アミン系、脂肪酸アミド系等の無灰摩擦調整剤、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート等の金属系摩擦調整剤等が挙げられる。例えば、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、イミド化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等を好ましく用いることができる。
【0064】
リン系摩耗防止剤以外の摩耗防止剤(極圧剤)は、リン系摩耗防止剤と組み合わせて用いることができる。このような摩耗防止剤(極圧剤)としては、例えば、ジチオカーバメート、亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート、ジサルファイド類、ポリサルファイド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等が挙げられる。
【0065】
第1の酸化防止剤及び第2の酸化防止剤以外の酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には、例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等が、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0066】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0067】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0068】
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。
【0069】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0070】
消泡剤としては、例えば、25℃における動粘度が1000mm/s以上100000mm/s以下のシリコーンオイル、アルケニルコハク酸誘導体、ポリヒドロキシ脂肪族アルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、メチルサリチレートとo−ヒドロキシベンジルアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0071】
これらの添加剤を潤滑油組成物に含有させる場合には、それぞれの含有量は組成物全量を基準として、0.01〜20質量%であってもよい。
【0072】
油圧作動油組成物の40℃における動粘度は、油圧システムの耐久性の観点から、好ましくは10mm/s以上、より好ましくは20mm/s以上、さらに好ましくは30mm/s以上、特に好ましくは40mm/s以上である。油圧作動油組成物の40℃における動粘度は、摩擦低減の観点から、好ましくは150mm/s以下、より好ましくは100mm/s以下、さらに好ましくは75mm/s以下、特に好ましくは50mm/s以下である。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0074】
[油圧作動油組成物の調製]
(実施例1及び比較例1、2)
表1に示すように、実施例1及び比較例1、2の油圧作動油組成物をそれぞれ調製した。
【0075】
<潤滑油基油>
A−1:高度精製基油(40℃動粘度:35mm/s、粘度指数:120、全芳香族含有量:0.3質量%、硫黄分:0質量ppm)
【0076】
<潤滑油用添加剤>
(酸化防止剤)
B−1:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(第1の酸化防止剤)
B−2:IRGANOX(登録商標)L135(BASF社製、ベンゼンプロパン酸−3,5−ビス(1,1−ジメチル−エチル)−4−ヒドロキシ−C7〜C9側鎖アルキルエステル、上記式(2)中、Rが式(3)で表される基であり、Rがメチレン基であり、Rが炭素数7〜9のアルキル基である第2の酸化防止剤)
(リン系摩耗防止剤)
C−1:トリクレジルホスフェート
(金属不活性化剤)
D−1:N,N−ビス(2−エチルヘキシル)−(4又は5)−メチル−1H−ベンゾトリアゾール−1−メチルアミン(IRGAMET(登録商標)39、BASF社製)
【0077】
[高圧ピストンポンプ試験]
実施例1及び比較例1、2で得られた油圧作動油組成物を用いて、高圧ピストンポンプ試験を行った。高圧ピストンポンプ試験は、日本建設機械施工協会規格のJCMAS P045に準拠し、斜軸型ピストンポンプを搭載した油圧回路を用いて、試料油13L、ポンプ圧力35MPa、ポンプ回転数1500min−1、タンク油温80℃で3000時間の循環試験を行った。循環試験中、250時間おきに、試料油中の酸化防止剤の残存量をガスクロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーで分析した。表1にその結果を示す。
【0078】
【表1】
【0079】
図2は、実施例1の酸化防止剤の残存率の経時変化のグラフである。また、図3は、比較例1、2の酸化防止剤の残存率の経時変化のグラフである。図3に示すとおり、酸化防止剤B−1又はB−2を単独で用いた単独系では、それぞれ経時的に酸化防止剤が減少し、3000時間の高圧ポンプ試験後には、酸化防止剤は残存していなかった。これに対して、図2に示すとおり、酸化防止剤B−1及びB−2を併用して用いた併用系では、酸化防止剤B−2の消耗速度が遅くなり、3000時間の高圧ポンプ試験後においても、酸化防止剤B−1及びB−2の22.2%が残存していた。これらの結果から、本発明の油圧作動油組成物が、長寿命化を達成できることが確認された。
【符号の説明】
【0080】
1…油圧装置、2…油貯蔵部、3…圧送部、5…制御部、6…変換部。
図1
図2
図3