特開2018-178487(P2018-178487A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-178487(P2018-178487A)
(43)【公開日】2018年11月15日
(54)【発明の名称】建物の基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/12 20060101AFI20181019BHJP
   E04G 23/06 20060101ALI20181019BHJP
【FI】
   E02D27/12 Z
   E04G23/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-78063(P2017-78063)
(22)【出願日】2017年4月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(72)【発明者】
【氏名】米丸 啓介
【テーマコード(参考)】
2D046
2E176
【Fターム(参考)】
2D046CA03
2E176AA00
2E176BB27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】古い建物の既設の杭を新たな建物に好適に有効利用してなる建物の建て替えにおける基礎構造を提供する。
【解決手段】建物T1の建て替えの際に建物本体(上部構造)を解体撤去して残った既設の杭1を新設の建物T2の杭基礎として有効利用してなる建物の基礎構造Aであって、古い建物T1の既設の杭1と新たに構築する建物T2の基礎との間に、一定以上の荷重を既設の杭1に伝えないように荷重伝達を規制する荷重調整部材2を介装して構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に残存した既設杭を活用してなる建物の基礎構造であって、
前記既設の杭と新たに構築する建物の基礎との間に、一定以上の荷重を前記既設の杭に伝えないように荷重伝達を規制する荷重調整部材を介装して構成されていることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項2】
請求項1記載の建物の基礎構造において、
前記既設の杭と新たに構築する建物の基礎との間に、複数の前記荷重調整部材を積層して配設するとともに、前記既設の杭と前記荷重調整部材との間、上下に隣り合う前記荷重調整部材同士の間、前記荷重調整部材と前記新たに構築する建物の基礎との間にそれぞれ、前記荷重調整部材よりも降伏圧縮強度が高い補強材を介装して構成されていることを特徴とする建物の基礎構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物の基礎構造において、
前記荷重調整部材がアルミニウム製のハニカム構造体であることを特徴とする建物の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の杭を活用してなる建物/構造物の基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物(構造物)を建て替える際には、古い建物の杭がそのままでは廃棄物となり、廃棄物処理法を照査すると、これらを放置することが禁止されている。このため、杭基礎を備えた建物を解体撤去して建て替える際には、建物本体だけでなく杭基礎も撤去することが必要になる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−246656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、杭抜工事には多大な費用がかかる。このため、古い杭を新しい建物の基礎構造として安全に活用する手法が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、既設の杭を好適に有効利用してなる建物の基礎構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0007】
本発明の建物の基礎構造は、地盤に残存した既設杭を活用してなる建物の基礎構造であって、前記既設の杭と新たに構築する建物の基礎との間に、一定以上の荷重を前記既設の杭に伝えないように荷重伝達を規制する荷重調整部材を介装して構成されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の建物の基礎構造においては、前記既設の杭と新たに構築する建物の基礎との間に、複数の前記荷重調整部材を積層して配設するとともに、前記既設の杭と前記荷重調整部材との間、上下に隣り合う前記荷重調整部材同士の間、前記荷重調整部材と前記新たに構築する建物の基礎との間にそれぞれ、前記荷重調整部材よりも降伏圧縮強度が高い補強材を介装して構成されていることが望ましい。
【0009】
さらに、本発明の建物の基礎構造においては、前記荷重調整部材がアルミニウム製のハニカム構造体であることがより望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建物の基礎構造においては、古い杭を新しい建物で構造的に安全に活用することが可能になる。よって、荷重調整部材を用い既設の杭を活用することで建替え工事でのコストダウン、施工性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造の荷重調整部材を示す図であり、(a)が載荷前の状態、(b)が潰れた状態を示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造の荷重調整部材(アルミハニカム材)の荷重と圧縮変形量の関係を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造の荷重調整部材(アルミハニカム材)の荷重と圧縮変形量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1から図5を参照し、本発明の一実施形態に係る建物の基礎構造について説明する。
【0013】
本実施形態は、図1に示すように、建物T1の建て替えの際に建物本体(上部構造)を解体撤去して残った既設の杭1を新設の建物T2の杭基礎として有効利用してなる建物の基礎構造Aに関するものである。
【0014】
はじめに、地中にある古い建物T1の杭1の健全性を直接確認することは困難であるが、古い建物T1を支持していた荷重までは支持可能で安全であると考えることができる。
【0015】
これに基づき、本実施形態の建物の基礎構造Aは、図1に示すように、新たな建物T2の基礎と古い建物T1の杭1の間に、一定以上の荷重を伝えない構造要素(以下、荷重調整部材2という)を介装して構成されている。このように、荷重調整部材2によって古い建物T1の杭1への一定以上の荷重伝達を規制することで既設の杭1を安全に活用できるように構成されている。
【0016】
また、本実施形態の建物の基礎構造Aにおいては、荷重調整部材2が接する新しい建物T2の基礎の部分に古い建物T1の杭1の支持反力に見合った補強(図2:補強材3)を施して構成されている。
【0017】
さらに、新しい建物T2(上部構造)が作られる過程や地盤の経時的な変化による建物基礎の沈下量を予測し、荷重調整部材2にはこれに安全率を乗じた有効な変形量をもたせるようにしている。
【0018】
なお、既設の杭1を有効利用することはコストダウンを図るための技術となるため、その採用条件は荷重調整部材2のコストとそれを受けるための基礎の補強によるコストアップが杭抜工事の費用を下回ることが重要である。また、古い建物T1の杭1を安全に使い続けられるかどうかについては、新たな建物T2の精度の高い沈下量の推定と、荷重調整部材2に設定する安全率がキーとなる。
【0019】
本発明に係る荷重調整部材2は、既設の杭1に一定以上の荷重を伝えないように構成されていれば、特にその構成を限定する必要はない。あえて荷重調整部材2の一例を挙げるとすれば、アルミニウム製のハニカム構造体が挙げられる(図3参照)。
【0020】
ここで、厚さ50mmのアルミハニカム材を要素とする荷重調整部材2を用い、この荷重調整部材2の有効性について検討を行った結果について説明する。
【0021】
また、古い建物T1の杭1は、直径1000mmの円形断面で許容支持荷重1963kN(2500kN/m)とし、新しい建物T2の基礎の予測沈下量は50mm、荷重調整部材2の安全率を2と仮定した。
【0022】
次に、図4は100mm角のアルミハニカム材(2)の面外の圧縮挙動を示している。
【0023】
この図から、18.9kN弱の荷重(1892kN/m)を受けたところで降伏し、その後、圧縮変位が約35mm(厚みの約70%)になるまで約7.5kN(約750kN/m)程度の荷重を保持しながら圧縮変形をし続けることが確認された。
【0024】
圧縮変位35mm以降は、潰れきってしまい(図3(b)参照)徐々に荷重が上昇する傾向にあるため、機能を考慮して厚みの70%を本実施形態におけるアルミハニカム材(2)の限界圧縮変形量とすることが好ましいと言える。
【0025】
限界圧縮変形量に対し新しい建物T2の基礎の予測される沈下量が2倍の安全率を有するために必要なパネル状のアルミハニカム材(2)の積層数nは、n×荷重調整部材の厚み×限界変形量≧新しい建物の基礎の予測される沈下量×安全率:n×50mm×70%≧50mm×2→n≧2.86と計算され、ここでは3層と求めることができる(図2参照)。
【0026】
アルミハニカム材(2)の圧縮性状は力を受ける面の状態に影響を受けると考えられる。
これに対し、本実施形態では、より安定した圧縮性状を得るために、アルミハニカム材(2)と基礎や杭1との境界面並びにアルミハニカム材(2)の層間に鉄板等の補強材3を挟み込むように介装した。これにより、それぞれの層のアルミハニカム材(2)の境界条件を同一にすることができる。
【0027】
図5は、このアルミハニカム材(2)の3層を古い建物T1の杭1の断面全体(0.785m)に配されるように設置したときの新しい建物T2の基礎から入力される力(図2参照)Pと基礎の沈下量との関係を示している。
【0028】
図1に示すように、新しい建物T2の重量は新設の杭4と古い既設の杭1が同時に支持することになる。
そして、図5に示す通り、新しい建物T2の上部構造の構築が進むにつれて重量が増し、あるいは力のかかった地盤の経時変化により基礎が沈下を始める。古い杭1には3層のアルミハニカム材(2)を介して力Pが伝えられるが、ごく初期段階でアルミハニカム材(2)が降伏する1486kN(古い杭1の許容支持荷重の76%)に達した後は伝達される荷重が小さくなり、約600kN(同29%)を保ちながら予測される沈下量である50mmに達する。これにより、この過程で古い杭1の許容荷重を超えるような荷重は入力されないことが確認された。
【0029】
したがって、本実施形態の建物の基礎構造Aにおいては、古い杭1を新しい建物T2で構造的に安全に活用することが可能になる。よって、荷重調整部材2を用い既設の杭1を活用することで建替え工事でのコストダウン、施工性の向上を図ることが可能になる。
【0030】
以上、本発明に係る建物の基礎構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 古い建物の杭(既設の杭)
2 荷重調整部材(アルミハニカム材)
3 補強材
4 新設の杭
A 建物の基礎構造
T1 古い建物
T2 新しい建物
図1
図2
図3
図4
図5