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特開2018-187594現地発生土の処理方法および固化体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-187594(P2018-187594A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】現地発生土の処理方法および固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20181102BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20181102BHJP
   C04B 18/30 20060101ALI20181102BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20181102BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   C02F11/00 101Z
   B28B11/24ZAB
   C04B18/30
   C04B28/02
   C04B40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-94544(P2017-94544)
(22)【出願日】2017年5月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一教
【テーマコード(参考)】
4D059
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4D059AA09
4D059BG00
4D059BK24
4D059CC04
4D059DA42
4D059DA66
4D059DB18
4D059DB22
4D059DB29
4D059DB40
4G055AA01
4G055AA10
4G055BA03
4G112PA35
4G112RA07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高含水の現地発生土に対し搬出前の処理作業の利便性を向上可能な現地発生土の処理方法と、原料である粒状物を現地発生土に限らない固化体の製造方法の提供。
【解決手段】現地発生土などの粒状物に、セメント、卵白を少なくとも含む固化剤、および尿素を少なくとも含む架橋剤を加水・混練してからマイクロ波加熱を行うことで、固化の促進や耐水性の早期獲得を実現する現地発生の処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現地発生土を少なくとも含む粒状物、セメント、卵白を少なくとも含む固化剤、および、尿素を少なくとも含む架橋剤、を加水・混練してなる混練物に、マイクロ波加熱を行って混練物を固化することを特徴とする、
現地発生土の処理方法。
【請求項2】
粒状物、セメント、卵白を少なくとも含む固化剤、および、尿素を少なくとも含む架橋剤、を加水・混練してなる混練物に、マイクロ波加熱を行って混練物を固化することを特徴とする、
固化体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現地発生土の処理方法および固化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事現場で発生した土(現地発生土)のうち、含水比が比較的高い土を移動・搬出する場合、通常はセメントを混合(10kg/m〜50kg/m程度)して処理した後に土を搬出する。
セメントの混合後、混合物は直ちに固化するものではないため、数時間から数日間は保管スペースで養生させてから、移動・搬出を行わなければならない。
例えば、含水比50%の発生土100mを固化処理して搬出する場合、5×5mの保管場所に約3mの高さで混合、混合した土を保管し、数日後に搬出用のダンプトラックに積み込んでいる。
さらに、高含水比で流動性の高い発生土に対しては、専用の撥水剤や脱水装置により含水比を低減させる作業を行う場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、現地発生土、特に高含水比のものは、搬出前に時間や手間を要する点が課題であった。
【0004】
よって、本発明は、現地発生土の搬出前の処理作業の利便性を向上する手段を用いた現地発生土の処理方法の提供を目的の1つとする。
また、本発明は、原料である粒状物に現地発生土を用いた態様に限らない、固化体の製造方法の提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、現地発生土の処理方法であって、現地発生土を少なくとも含む粒状物、セメント、卵白を少なくとも含む固化剤、および、尿素を少なくとも含む架橋剤、を加水・混練してなる混練物に、マイクロ波加熱を行って混練物を固化することを特徴とする。
また、本願の第2発明は、固化体の製造方法であって、粒状物、セメント、卵白を少なくとも含む固化剤、および、尿素を少なくとも含む架橋剤、を加水・混練してなる混練物に、マイクロ波加熱を行って混練物を固化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)固化までの時間を短縮化することができる。
マイクロ波加熱を実施することで、固化時間を早めることができ、保管スペースでの養生期間の短縮に繋がる。よって、高含水で流動性の高い現地発生土の保管(ストック)が困難な現場や、脱水処理設備の設置が困難な現場での使用に適する。
(2)運搬作業が容易である。
現地発生土を早期に固化することにより、移動や運搬作業の利便性に優れる。
(3)耐水養生作業を要しない。
セメントの早期な強度発現によって耐水性を早期に獲得した固化体を得ることができるため、風雨を伴う暴露環境下にあっても、耐水養生作業が必要無い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】各配合条件による試料の硬度を示すグラフ。
図2】各試料を容器内に静置させた状態を示す写真。
図3】各試料の浸水状態を示す写真。
図4】回収直後の各試料の状態を示す写真。
図5】浸水試験後の各試料の硬度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0009】
<1>全体構成
本発明に係る現地発生土の処理方法は、以下の工程を少なくとも含む。
(A)現地発生土を少なくとも含む粒状物と、セメントと、卵白を少なくとも含む固化剤と、尿素を少なくとも含む架橋剤と、を加水・混練してなる工程、
(B)前記(A)による混練物をマイクロ波加熱する工程、
以下、各材料の詳細と、試験例について説明する。
【0010】
<2>粒状物
粒状物とは、土、砂、砂利、または石、若しくはそれらの混合物を想定する材料である。
本実施例では、粒状物を、少なくとも現場土壌から採取した現地発生土を含んだ態様としている。
【0011】
<3>固化剤
固化剤は、前記粒状物に対して固化作用を有する食品由来又は天然由来の成分を有効成分であり、少なくとも卵白(オボアルブミン)を含む。
その他にも、固化剤には、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、キトサン等を含めることができる。これらの成分は食品由来であるので、自然環境への負荷が小さく、分解性(崩壊性)を有する。
【0012】
<4>架橋剤
固化剤を用いて粒状物を固化させる場合、固化剤中の生分解固化成分のみでも固化体を形成することが可能であるが、さらに固化剤に生分解性の架橋剤を加えることで、生分解固化成分同士が架橋されてより高強度の固化体を得ることができる。
生分解性の架橋剤を混合することで卵白等の生分解性固化成分の分子間でアミノ酸同士が架橋され、同じ生分解性固化成分の濃度であっても、より高強度の固化体を得ることができる。なお、固化体を生分解性とするためには、架橋剤も生分解性である必要がある。
本実施例では、無毒性の生分解性の架橋剤として、尿素を含むよう構成している。
【0013】
尿素のほか、無毒性の生分解性の架橋剤としては、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、PEG誘導体、アルドース、ケトース(フルクトース)(特開2005−239706号を参照)等を用いることができる。
このうち、無機塩(2価、3価または多価のカチオン塩)を用いる場合、固化体を埋設等する土壌中に不足している塩類を選択して用いても良い。これ以外のものは、高価であったり、毒性を有したりするために適しない。
【0014】
<5>その他の混合剤
その他、固化体の密度を変化させるために食品由来の起泡材を使用してもよい。また、混練時に速度が上がってメレンゲ状態になった場合には、消泡材を使用して密度の調整を行ってもよい。
【0015】
<6>試験例1
固化体を構成する各材料(水で今練した土(珪砂、赤球土)、卵白、尿素、セメント)の混練物をマイクロ波で加熱して得た固化体の固化状況の目視確認および硬度測定を実施した。
【0016】
<6.1>試験条件
(1)配合条件
土、卵白、尿素およびセメントを下記の表1の配合で混練して、トータルで250mlとなるように混練物を形成した。
【0017】
【表1】
土の種類は、珪砂は砂質土、赤球土は粘性土を模擬しており、それぞれ500mlとした。
セメント混合量は、建設現場で一般的に使用する混合量を参考に、今回は50、40、30、20、10kg/mとした。
【0018】
(2)加熱条件
前記した混練物を、50mlのプラスチック容器に流し込み、電子レンジで加熱(500W、30秒)し、容器から脱型して硬度を測定し、測定値の平均値を測定結果とした。
硬度測定には、DIK−5561クラスト硬度計を採用し、固化体の表面に貫入したときの貫入量(単位:mm)を記録した。よって、貫入量の値が大きいものほど、硬度が高いことを示している。
【0019】
<6.2>試験結果
各配合条件による固化体の硬度を示すグラフを図1に示す。
Case1では、セメント混合量が少なくなるほど硬度が低下した。
Case2では、セメント混合量と硬度の相関を読み取ることはできなかったが、セメントを混合するだけでは固化しないことが確認できる。
Case3では、Case1と同様にセメントの混合量が少なくなると硬度が低下する傾向が見られた。
【0020】
これらの結果から、セメントを混合した発生土は、卵白および尿素とともに混合してマイクロ波で加熱することで、短時間での固化が可能であることが確認できた。
【0021】
<7>試験例2
次に、本発明に係る方法によって得られた固化体の耐水評価を行った。
具体的には前記した試験例1で作成した固化体を室内環境下で1週間気中養生したものを浸水させ、固化体の崩壊状況を目視確認および硬度測定することで、固化体の耐水性の向上程度を評価した。
なお、セメントを混合しない試料も比較対象として選定した。
【0022】
<7.1>試験手順
図2は、各試料を容器内に静置させた状態を示す写真である。
まず、Case1(珪砂)、Case2(赤球土)、Case3(珪砂+赤球土)のセメント混合量が50kg/mおよび10kg/mの試料を容器内に静置させた。同様に、セメントを混合していない試料も容器内への静置を行った。
【0023】
そして、容器内に500mlの水を加えて浸水させ、各試料を定期的に写真撮影した。図3は、各試料の浸水状況を示す写真である。
その後、セメントを混合していない試料の崩壊を確認した段階で、各試料を回収して硬度を測定した。
【0024】
<7.2>試験結果
浸水後2日目(48時間後)に、セメント混合無しの試料が一部崩壊していることを目視確認したため、各試料を回収して硬度を測定した。
図4は、回収直後の各試料の状態を示す写真であり、図5は、回収した各試料の硬度を示すグラフである。
図4に示すように、セメントを混合した供試体は,混合しないものより硬度が高く形状を維持していることが確認できた。
また、図5に示すように、珪砂だけよりも、粘土を用いた供試体のほうが、硬度が40mmオーバーとなり、高い値を示す結果となった。
【0025】
<8>まとめ
このように、土にセメントを混合して固化体を作製する方法よりも、セメント、卵白、尿素を混合した土をマイクロ波で過熱し固化体を作製した場合、短期間で固化体を作製でき、セメント混合時に必要であった養生スペースを不要とすることができる。
【実施例2】
【0026】
前記した実施例1では、固化体の製造に用いる粒状物に現地発生土を想定していたが、本発明は当該想定に限定解釈されるものではない。
よって、本発明では、粒状物を、土、砂、砂利、または石、若しくはそれらの混合物であればよく、別途手配したもの等を用いてもよい。
よって、本実施例に係る方法は、現地発生土の処理作業だけではなく、あらゆる用途への流用が可能である。
【0027】
例えば、土に卵白や尿素を混練・固化して土木資材として用いる従来の固化成型体では、含水すると強度が低下する恐れがあったため、耐水性材料で包装したり、屋内で保管したりといった対応が必要であった。
しかし、本発明に係る固化体の製造方法を採用すれば、固化体の製造に用いたセメントの早期な強度発現によって耐水性を早期に得ることができるため、風雨を伴う暴露環境下にあっても、耐水養生作業を行う必要がない。
図1
図2
図3
図4
図5