【実施例1】
【0009】
<1>全体構成
本発明に係る現地発生土の処理方法は、以下の工程を少なくとも含む。
(A)現地発生土を少なくとも含む粒状物と、セメントと、卵白を少なくとも含む固化剤と、尿素を少なくとも含む架橋剤と、を加水・混練してなる工程、
(B)前記(A)による混練物をマイクロ波加熱する工程、
以下、各材料の詳細と、試験例について説明する。
【0010】
<2>粒状物
粒状物とは、土、砂、砂利、または石、若しくはそれらの混合物を想定する材料である。
本実施例では、粒状物を、少なくとも現場土壌から採取した現地発生土を含んだ態様としている。
【0011】
<3>固化剤
固化剤は、前記粒状物に対して固化作用を有する食品由来又は天然由来の成分を有効成分であり、少なくとも卵白(オボアルブミン)を含む。
その他にも、固化剤には、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、キトサン等を含めることができる。これらの成分は食品由来であるので、自然環境への負荷が小さく、分解性(崩壊性)を有する。
【0012】
<4>架橋剤
固化剤を用いて粒状物を固化させる場合、固化剤中の生分解固化成分のみでも固化体を形成することが可能であるが、さらに固化剤に生分解性の架橋剤を加えることで、生分解固化成分同士が架橋されてより高強度の固化体を得ることができる。
生分解性の架橋剤を混合することで卵白等の生分解性固化成分の分子間でアミノ酸同士が架橋され、同じ生分解性固化成分の濃度であっても、より高強度の固化体を得ることができる。なお、固化体を生分解性とするためには、架橋剤も生分解性である必要がある。
本実施例では、無毒性の生分解性の架橋剤として、尿素を含むよう構成している。
【0013】
尿素のほか、無毒性の生分解性の架橋剤としては、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、PEG誘導体、アルドース、ケトース(フルクトース)(特開2005−239706号を参照)等を用いることができる。
このうち、無機塩(2価、3価または多価のカチオン塩)を用いる場合、固化体を埋設等する土壌中に不足している塩類を選択して用いても良い。これ以外のものは、高価であったり、毒性を有したりするために適しない。
【0014】
<5>その他の混合剤
その他、固化体の密度を変化させるために食品由来の起泡材を使用してもよい。また、混練時に速度が上がってメレンゲ状態になった場合には、消泡材を使用して密度の調整を行ってもよい。
【0015】
<6>試験例1
固化体を構成する各材料(水で今練した土(珪砂、赤球土)、卵白、尿素、セメント)の混練物をマイクロ波で加熱して得た固化体の固化状況の目視確認および硬度測定を実施した。
【0016】
<6.1>試験条件
(1)配合条件
土、卵白、尿素およびセメントを下記の表1の配合で混練して、トータルで250mlとなるように混練物を形成した。
【0017】
【表1】
土の種類は、珪砂は砂質土、赤球土は粘性土を模擬しており、それぞれ500mlとした。
セメント混合量は、建設現場で一般的に使用する混合量を参考に、今回は50、40、30、20、10kg/m
3とした。
【0018】
(2)加熱条件
前記した混練物を、50mlのプラスチック容器に流し込み、電子レンジで加熱(500W、30秒)し、容器から脱型して硬度を測定し、測定値の平均値を測定結果とした。
硬度測定には、DIK−5561クラスト硬度計を採用し、固化体の表面に貫入したときの貫入量(単位:mm)を記録した。よって、貫入量の値が大きいものほど、硬度が高いことを示している。
【0019】
<6.2>試験結果
各配合条件による固化体の硬度を示すグラフを
図1に示す。
Case1では、セメント混合量が少なくなるほど硬度が低下した。
Case2では、セメント混合量と硬度の相関を読み取ることはできなかったが、セメントを混合するだけでは固化しないことが確認できる。
Case3では、Case1と同様にセメントの混合量が少なくなると硬度が低下する傾向が見られた。
【0020】
これらの結果から、セメントを混合した発生土は、卵白および尿素とともに混合してマイクロ波で加熱することで、短時間での固化が可能であることが確認できた。
【0021】
<7>試験例2
次に、本発明に係る方法によって得られた固化体の耐水評価を行った。
具体的には前記した試験例1で作成した固化体を室内環境下で1週間気中養生したものを浸水させ、固化体の崩壊状況を目視確認および硬度測定することで、固化体の耐水性の向上程度を評価した。
なお、セメントを混合しない試料も比較対象として選定した。
【0022】
<7.1>試験手順
図2は、各試料を容器内に静置させた状態を示す写真である。
まず、Case1(珪砂)、Case2(赤球土)、Case3(珪砂+赤球土)のセメント混合量が50kg/m
3および10kg/m
3の試料を容器内に静置させた。同様に、セメントを混合していない試料も容器内への静置を行った。
【0023】
そして、容器内に500mlの水を加えて浸水させ、各試料を定期的に写真撮影した。
図3は、各試料の浸水状況を示す写真である。
その後、セメントを混合していない試料の崩壊を確認した段階で、各試料を回収して硬度を測定した。
【0024】
<7.2>試験結果
浸水後2日目(48時間後)に、セメント混合無しの試料が一部崩壊していることを目視確認したため、各試料を回収して硬度を測定した。
図4は、回収直後の各試料の状態を示す写真であり、
図5は、回収した各試料の硬度を示すグラフである。
図4に示すように、セメントを混合した供試体は,混合しないものより硬度が高く形状を維持していることが確認できた。
また、
図5に示すように、珪砂だけよりも、粘土を用いた供試体のほうが、硬度が40mmオーバーとなり、高い値を示す結果となった。
【0025】
<8>まとめ
このように、土にセメントを混合して固化体を作製する方法よりも、セメント、卵白、尿素を混合した土をマイクロ波で過熱し固化体を作製した場合、短期間で固化体を作製でき、セメント混合時に必要であった養生スペースを不要とすることができる。