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特開2018-188373テトラカルボン酸二無水物、ポリイミド前駆体樹脂及びその溶液、並びに、ポリイミド及びその溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-188373(P2018-188373A)
(43)【公開日】2018年11月29日
(54)【発明の名称】テトラカルボン酸二無水物、ポリイミド前駆体樹脂及びその溶液、並びに、ポリイミド及びその溶液
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/10 20060101AFI20181102BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20181102BHJP
【FI】
   C07D493/10 ACSP
   C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】57
(21)【出願番号】特願2017-89810(P2017-89810)
(22)【出願日】2017年4月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 伸一
(72)【発明者】
【氏名】京武 亜紗子
【テーマコード(参考)】
4C071
4J043
【Fターム(参考)】
4C071AA04
4C071AA08
4C071BB01
4C071BB08
4C071CC12
4C071EE05
4C071FF15
4C071HH08
4C071KK01
4C071LL03
4J043PA04
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA43
4J043SB01
4J043TA11
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA632
4J043UA652
4J043UA682
4J043UA692
4J043UB401
4J043UB402
4J043XA03
4J043XA19
4J043XB19
4J043YA06
4J043ZB01
4J043ZB03
4J043ZB11
4J043ZB60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なテトラカルボン酸二無水物の提供。
【解決手段】式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、式(1)中の2つのノルボルナン環の立体配置に基づく立体異性体の総量に対して、特定の立体異性体(A)及び特定の立体異性体(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量に対して、前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物。

[R〜Rは夫独立にH、F又はC1〜10のアルキル基;nは0〜12の整数]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[式(1)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、
前記一般式(1)中の2つのノルボルナン環の立体配置に基づく立体異性体の総量に対して、下記一般式(2):
【化2】
[式(2)中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される立体異性体(A)及び下記一般式(3):
【化3】
[式(3)中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される立体異性体(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量に対して、前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であることを特徴とするテトラカルボン酸二無水物。
【請求項2】
下記一般式(4):
【化4】
[式(4)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示し、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(A’)及び下記一般式(5):
【化5】
[式(5)中のR、R、R、R、n及びXはそれぞれ前記一般式(4)中のR、R、R、R、n及びXと同義である。]
で表される繰り返し単位(B’)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするポリイミド前駆体樹脂。
【請求項3】
下記一般式(6):
【化6】
[式(6)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(A)及び下記一般式(7):
【化7】
[式(7)中のR、R、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(6)中のR、R、R、R及びnと同義である。]
で表される繰り返し単位(B)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするポリイミド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリイミドと有機溶媒とを含有することを特徴とするポリイミド溶液。
【請求項5】
請求項2に記載のポリイミド前駆体樹脂と有機溶媒とを含有することを特徴とするポリイミド前駆体樹脂溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物、ポリイミド前駆体樹脂及びその溶液、並びに、ポリイミド及びその溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より高度な耐熱性を有しかつ軽くて柔軟な素材としてポリイミドが着目されている。このようなポリイミドの分野においては、近年では、耐熱性とともにガラス代替用途等に使用可能な十分な光透過性を有し、かつ、溶媒への溶解性を有するポリイミドが求められており、様々なポリイミドが開発されてきた。例えば、国際公開第2011/099518号(特許文献1)においては、特定の一般式で記載される繰り返し単位を有するポリイミドが開示されている。このようなポリイミドは十分な耐熱性、光透過性及び溶解性を有するものであった。そして、上記特許文献1に記載のポリイミドよりも更に高度な耐熱性を有するポリイミドとして、国際公開第2014/034760号(特許文献2)においては、特定の一般式で記載される繰り返し単位を有するポリイミドも開示されている。このように、特許文献1及び2に記載のポリイミドは十分な耐熱性及び光透過性とともに、溶媒に対する溶解性を有するものではあるが、ポリイミドの分野においては、加工性の更なる向上といった観点から、耐熱性や透明性を特許文献1や2に記載のポリイミドと同等程度に維持しつつ、より溶解性が高いポリイミドの出現が求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2011/099518号
【特許文献2】国際公開第2014/034760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なテトラカルボン酸二無水物を提供することを目的とする。また、本発明は、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとすることが可能なポリイミド及びそのポリイミドを含有するポリイミド溶液を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリイミド前駆体樹脂、及び、そのポリイミド前駆体樹脂を含有するポリイミド前駆体樹脂溶液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物(ノルボルナン環の立体配置が異なる6種の立体異性体を含み得る)を、その立体異性体(ノルボルナン環の立体配置に基づく立体異性体)の総量に対して下記立体異性体(A)及び(B)の合計量の割合が50モル%以上となるようにし、かつ、その立体異性体の総量に対して下記立体異性体(A)の含有割合を30モル%以上となるようにすることにより、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明のテトラカルボン酸二無水物は、下記一般式(1):
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、
前記一般式(1)中の2つのノルボルナン環の立体配置に基づく立体異性体の総量に対して、下記一般式(2):
【0009】
【化2】
【0010】
[式(2)中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される立体異性体(A)及び下記一般式(3):
【0011】
【化3】
【0012】
[式(3)中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される立体異性体(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量に対して、前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂は、下記一般式(4):
【0014】
【化4】
【0015】
[式(4)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示し、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される繰り返し単位(A’)及び下記一般式(5):
【0016】
【化5】
【0017】
[式(5)中のR、R、R、R、n及びXはそれぞれ前記一般式(4)中のR、R、R、R、n及びXと同義である。]
で表される繰り返し単位(B’)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のポリイミドは、下記一般式(6):
【0019】
【化6】
【0020】
[式(6)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示す。]
で表される繰り返し単位(A)及び下記一般式(7):
【0021】
【化7】
【0022】
[式(7)中のR、R、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(6)中のR、R、R、R及びnと同義である。]
で表される繰り返し単位(B)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0023】
さらに、本発明のポリイミド溶液は、上記本発明のポリイミドと有機溶媒とを含有することを特徴とするものである。また、本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液は、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂と有機溶媒とを含有することを特徴とするものである。このようなポリイミド溶液やポリイミド前駆体樹脂溶液(例えばポリアミド酸溶液)などの樹脂溶液(ワニス)によれば、各種形態のポリイミドを効率よく製造することが可能である。なお、このようなポリイミド溶液やポリイミド前駆体樹脂溶液は、それらを混合した混合液の形態の樹脂溶液として、ポリイミドの調製に好適に利用することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なテトラカルボン酸二無水物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとすることが可能なポリイミド及びそのポリイミドを含有するポリイミド溶液を提供することが可能となる。さらに、本発明によれば、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリイミド前駆体樹脂、及び、そのポリイミド前駆体樹脂を含有するポリイミド前駆体樹脂溶液を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1で得られたテトラカルボン酸テトラメチルエステル(中間体)のIRスペクトルを示すグラフである。
図2】実施例1で得られたテトラカルボン酸テトラメチルエステル(中間体)のH−NMR(CDCl)スペクトルを示すグラフである。
図3】実施例1で得られたテトラカルボン酸テトラメチルエステル(中間体)のHPLC測定により求められたクロマトグラムである。
図4】実施例1で得られたテトラカルボン酸二無水物のIRスペクトルを示すグラフである。
図5】実施例1で得られたテトラカルボン酸二無水物のH−NMR(CDCl)スペクトルを示すグラフである。
図6】実施例1で得られたテトラカルボン酸二無水物のHPLC測定により求められたクロマトグラムである。
図7】実施例1で得られたテトラカルボン酸二無水物のガスクロマトグラフィー測定(GC分析)により求められたクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0027】
[テトラカルボン酸二無水物]
本発明のテトラカルボン酸二無水物は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、前記一般式(1)中の2つのノルボルナン環の立体配置に基づく立体異性体の総量に対して、上記一般式(2)で表される立体異性体(A)及び上記一般式(3)で表される立体異性体(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量に対して、前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0028】
このような一般式(1)中のR、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種であり、nは0〜12の整数である。なお、上記一般式(2)及び(3)中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。
【0029】
このような式中のR、R、Rとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1〜10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えるとガラス転移温度が低下し十分に高度な耐熱性が達成できなくなる。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜4であることが更に好ましく、1〜3であることが特に好ましい。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0030】
このような式中のR、R、Rとしては、ポリイミドを製造した際に、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR、R、Rは精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
【0031】
また、このような式中のnは0〜12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、精製が困難になる。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の上限値は、より精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(1)中のnの数値範囲の下限値は、原料化合物の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(1)中のnとしては、2〜3の整数であることが特に好ましい。
【0032】
また、このような一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、該一般式(1)中の2つのノルボルナン環の立体配置に基づく6種の立体異性体を含有し得る。ここにいう6種の立体異性体は、上記一般式(2)で表される立体異性体(A)(トランス−エキソ−エンド異性体(trans-exo-endo異性体));上記一般式(3)で表される立体異性体(B)(シス−エキソ−エンド異性体(cis-exo-endo異性体));及び下記一般式(I)〜(IV):
【0033】
【化8】
【0034】
[各式中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される4種の異性体(トランス−エキソ−エキソ異性体(trans-exo-exo異性体:上記一般式(I)で表される立体異性体(C))、トランス−エンド−エンド異性体(trans-endo-endo異性体:上記一般式(II)で表される立体異性体(D))、シス−エキソ−エキソ異性体(cis-exo-exo異性体:上記一般式(III)で表される立体異性体(E))、シス−エンド−エンド異性体(cis-endo-endo異性体:上記一般式(IV)で表される立体異性体(F)));である。
【0035】
本発明のテトラカルボン酸二無水物としては、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記一般式(2)で表される立体異性体(A)及び下記一般式(3)で表される立体異性体(B)の合計量の割合(モル基準の割合)が50モル%以上である必要がある。このような立体異性体(A)及び(B)の合計量の割合が前記下限未満では、そのテトラカルボン酸二無水物をポリイミドの原料(モノマー)として利用した場合に、得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような立体異性体(A)及び(B)の合計量の割合としては、50〜100モル%であることがより好ましく、60〜98モル%であることが更に好ましく、70〜95モル%であることが特に好ましく、80〜90モル%であることが最も好ましい。立体異性体(A)及び(B)の合計量の割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0036】
本発明のテトラカルボン酸二無水物においては、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記一般式(2)で表される立体異性体(A)の含有割合(トランス−エキソ−エンド異性体のモル基準の含有割合)が30モル%以上である必要がある。このような立体異性体(A)の含有割合が前記下限未満では、そのテトラカルボン酸二無水物をポリイミドの原料(モノマー)として利用した場合に、得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような立体異性体(A)の含有割合としては、30〜99モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることが更に好ましく、50〜85モル%であることが特に好ましく、60〜80モル%であることが最も好ましい。立体異性体(A)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0037】
本発明のテトラカルボン酸二無水物においては、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記一般式(3)で表される立体異性体(B)の含有割合(シス−エキソ−エンド異性体のモル基準の含有割合)が1〜70モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましく、10〜50モル%であることが特に好ましく、10〜40モル%であることが最も好ましい。前記立体異性体(B)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0038】
また、本発明のテトラカルボン酸二無水物においては、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記一般式(II)で表される立体異性体(D)及び上記一般式(IV)で表される立体異性体(F)の合計量の割合(モル基準の割合)が50モル%以下であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましく、0〜30モル%であることが更に好ましく、0〜20モル%であることが特に好ましい。このような立体異性体(D)及び(F)の合計量の割合が前記上限を超えると得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する傾向にある。
【0039】
さらに、本発明のテトラカルボン酸二無水物においては、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記一般式(I)で表される立体異性体(C)及び上記一般式(III)で表される立体異性体(E)の合計量の割合(モル基準の割合)が10モル%以下であることが好ましく、0〜5モル%であることがより好ましく、0〜3モル%であることが更に好ましく、0〜1.5モル%であることが特に好ましく、0〜1モル%であることが最も好ましい。このような立体異性体(C)及び(E)の合計量の割合が前記上限を超えると耐熱性が低下する傾向にある。
【0040】
なお、前記テトラカルボン酸二無水物中の各異性体の含有割合としては、以下のようにして求められる値(ガスクロマトグラフィー測定(GC測定およびGC−MS測定)により求められる値)を採用することができる。すなわち、先ず、測定試料として分析対象となるテトラカルボン酸二無水物を0.1質量%の割合で含有するジメチルアセトアミド溶液(DMAc溶液)を少なくとも1μL準備し、測定装置としてガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製の商品名「7890A」)を用い、移動相の気体(キャリーガス)としてヘリウムを用い、固定相(カラム)としてRESTEX Rtx−5 Amine(30m)を用いて、MS検出器としてAgilent社製の商品名「5975C VL MSD」を用い、インジェクターとしてAgilent社製G4513Aを用い、測定試料である前記DMAc溶液の1μLを前記インジェクターで注入し、前記キャリーガスであるヘリウムの流量を10mL/分(constant)とし、温度条件は50℃(初期温度)で1分間保持した後に昇温速度を10℃/分として50℃〜300℃まで昇温し、300℃で25分間保持する条件として、GC測定およびGC−MS測定することにより、前記測定試料のクロマトグラム(分離像)を求めた後、該クロマトグラム中の各ピークの面積をそれぞれ求めて、面積の合計(総面積)に占める各ピークの面積の比率に基づいて、各ピークに由来する異性体の含有割合を算出して、前述の異性体の含有割合をそれぞれ求めることができる。このようにして、クロマトグラム中の各ピークの面積比を、そのピークに由来する異性体の含有割合として求めることができる(面積百分率法)。なお、前記クロマトグラムにおいて、各異性体に基づくピークの面積比は上記測定装置により直接求めることができる。
【0041】
なお、このようにして求められるクロマトグラムに関して、前記テトラカルボン酸二無水物がノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物である場合、その6種の立体異性体のピークは、基本的に、保持時間31分〜34分程度の間に現れ、保持時間31.4分付近(31.3分〜31.6分)のピークはトランス−エキソ−エキソ異性体及びシス−エキソ−エキソ異性体に由来するピークであり、保持時間31.8分付近(31.7分〜31.9分)のピークはシス−エキソ−エンド異性体(前記立体異性体(B))に由来するピークであり、保持時間32.4分付近(32.1分〜32.6分)のピークはトランス−エキソ−エンド異性体(前記立体異性体(A))に由来するピークであり、保持時間33.0分付近(32.7〜33.3分)のピークはトランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体に由来するピークである。なお、カラムのロットなどにより若干のずれはあるものの、概ね上記保持時間の位置にピークが出現する。
【0042】
このような本発明のテトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドを製造するためのモノマーとして好適に利用することが可能である(特に、後述の本発明のポリイミドを製造するためのモノマー(テトラカルボン酸二無水物)として好適である)。また、本発明のテトラカルボン酸二無水物をポリイミドを製造するためのモノマーとして用いる場合には、他のテトラカルボン酸二無水物と混合して利用してもよい。このような他のテトラカルボン酸二無水物としては、ポリイミドの製造に利用することが可能な公知のテトラカルボン酸二無水物(例えば、国際公開第2014/034760号の段落[0171]に列挙されている化合物(脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物や芳香族テトラカルボン酸二無水物)等)を適宜利用することができる。
【0043】
このような本発明のテトラカルボン酸二無水物を製造するための好適な方法は特に制限されないが、例えば、以下に記載の方法(第一のエステル化合物の形成工程、第二のエステル化合物の製造工程、及び、テトラカルボン酸二無水物の製造工程を含む方法:以下、便宜上、単に「製造方法(A)」と称する)を採用することができる。すなわち、このような製造方法(A)においては、先ず、下記一般式(10):
【0044】
【化9】
【0045】
[式(10)中、R、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である。]
で表される原料化合物を準備し、これをエステル化して、下記一般式(11):
【0046】
【化10】
【0047】
[Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]
で表される第一のエステル化合物を形成する(第一のエステル化合物の形成工程)。なお、このようにして得られる第一のエステル化合物は、下記一般式(i)〜(vi):
【0048】
【化11】
【0049】
で表される6種の立体異性体[トランス−エキソ−エンド異性体(trans-exo-endo異性体:上記式(i));シス−エキソ−エンド異性体(cis-exo-endo異性体:上記式(ii));トランス−エキソ−エキソ異性体(trans-exo-exo異性体:上記式(iii));トランス−エンド−エンド異性体(trans-endo-endo異性体:上記式(iv));シス−エキソ−エキソ異性体(cis-exo-exo異性体:上記式(v));シス−エンド−エンド異性体(cis-endo-endo異性体:上記式(vi))]を含有し得る。次に、形成された第一のエステル化合物中に含まれる各立体異性体の溶媒に対する溶解性の差を利用して、トランス−エキソ−エンド異性体(trans-exo-endo)及びシス−エキソ−エンド異性体(cis-exo-endo)の合計量の割合が50モル%以上となりかつトランス−エキソ−エンド異性体(trans-exo-endo)の含有量が30モル%となるように前記第一のエステル化合物から異性体を抽出することにより、シス−エキソ−エンド異性体(cis-exo-endo異性体)の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体(trans-exo-endo異性体)の含有量が30モル%以上である第二のエステル化合物を得る(第二のエステル化合物の製造工程)。次いで、前記第二のエステル化合物を酸二無水物化することにより上記本発明のテトラカルボン酸二無水物を得る(テトラカルボン酸二無水物の製造工程)。以下、このような製造方法(A)について説明する。
【0050】
このような製造方法(A)においては、前述のように、先ず、第一のエステル化合物の形成工程において、原料化合物を準備し、これをエステル化して、第一のエステル化合物を形成する。
【0051】
このような原料化合物は、上記一般式(10)で表される化合物であり、式中のR、R、R及びnはそれぞれ前記一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である(その好適なものも同様である)。このような原料化合物は、例えば、特開2015−137235号公報、国際公開第2011/099517号等に記載のものと同様のものを好適に利用できる。また、このような原料化合物の製造方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、特開2015−137235号公報や国際公開第2011/099517号等に記載の方法)を適宜利用できる。
【0052】
また、このような原料化合物をエステル化する方法も特に制限されず、前記原料化合物の二重結合を形成する炭素原子にエステル基を導入することが可能な方法(アルコキシカルボニル化することが可能な方法)を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2014/050810号に記載の方法、特開2015−137231号公報に記載の方法、特開2014−218460号公報に記載の方法、国際公開第2011/099517号に記載の方法等を適宜使用することができる。このように、エステル化の方法としては、公知の方法を適宜採用でき、例えば、前記原料化合物をアルコール及び一酸化炭素と反応させることにより、エステル化して、前記原料化合物の二重結合を形成する炭素原子をエステル基を導入する方法を採用してもよい。
【0053】
このようなエステル化に利用することが可能なアルコールは特に制限されないが、下記一般式(12):
OH (12)
[式(12)中、Rは、前記一般式(11)中のRと同義である。]
で表されるアルコールであることが好ましい。すなわち、このようなアルコールとしては、炭素数が1〜10(より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3)のアルキルアルコール(なお、アルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい)、炭素数が3〜10(より好ましくは3〜8、更に好ましくは5〜6)のシクロアルキルアルコール、炭素数が2〜10(より好ましくは2〜5、更に好ましくは2〜3)のアルケニルアルコール、炭素数が6〜20(より好ましくは6〜10、更に好ましくは6〜8)のアリールアルコール、炭素数が7〜20(より好ましくは7〜10、更に好ましくは7〜9)のアラルキルアルコールを用いることが好ましい。このようなアルコールの中でも、得られる化合物の精製がより容易となるという観点から、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。また、このようなアルコールは1種を単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
このようなアルコールを利用して、前記原料化合物と前記アルコール(ROH)と一酸化炭素(CO)とを反応せしめることで、前記原料化合物中の二重結合を形成する炭素原子に、それぞれ下記一般式(13):
−COOR (13)
[式(13)中、Rは前記一般式(11)中のRと同義である。]
で表されるエステル基(かかるエステル基は導入される位置ごとにRが同一であっても異なっていてもよい。)を導入することができ、これにより前記一般式(11)で表される第一のエステル化合物を形成することが可能となる。このような反応の際の条件(触媒、酸化剤、溶媒などの利用の有無やその種類、反応温度等の各種条件)は特に制限されず、公知のエステル化の方法において採用されている条件(例えば、国際公開第2014/050810号、特開2015−137231号、特開2014−218460号、国際公開第2011/099517号等に記載されている条件)を適宜採用できる(例えば、パラジウム触媒及び酸化剤の存在下で反応させてもよい)。
【0055】
さらに、前記一般式(11)中のRとしては、精製がより容易となるという観点から、それぞれ独立にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、前記一般式(11)中のRは同一のものであっても異なっていてもよいが、合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。
【0056】
また、製造方法(A)においては、前記原料化合物と前記アルコール(ROH)と一酸化炭素(CO)との反応生成物として前記第一のエステル化合物(なお、第一のエステル化合物は前述の一般式(i)〜(vi)で表される6種の立体異性体を含有し得る)を得た後、第二のエステル化合物の製造工程において、第一のエステル化合物中に含まれる各立体異性体の溶媒に対する溶解性の差を利用して、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上となりかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%となるように前記第一のエステル化合物から異性体を抽出することにより、シス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上である第二のエステル化合物を得る。
【0057】
なお、本発明者らは、前記第一のエステル化合物の前述の6種の立体異性体は、それぞれ溶媒に対する溶解性が異なり、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体が比較的溶媒に対する溶解性が高いことを見出しており、かかる特性を利用した以下のような工程により、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上である第二のエステル化合物を得ることが可能となることを見出している。すなわち、前記原料化合物と前記アルコール(ROH)と一酸化炭素(CO)とを反応させて、反応生成物として前記第一のエステル化合物を得た後、先ず、その反応生成物を溶媒中に添加し、反応生成物が溶解可能となるような温度条件下において(場合により撹拌することにより)、前記反応生成物を溶媒中に溶解して溶解液を得る。次いで、得られた溶解液を冷却し(加熱している場合においては放冷でもよい)、液中に結晶を析出させる。このような結晶の析出により、溶液側には比較的溶媒に対する溶解性が高いトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体がより高濃度で残存してトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の濃度がより高いエステル化合物が溶解されたままの状態となるのに対して、結晶側にはトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体以外の他の異性体(元々、少量しか含まれていないトランス−エキソ−エキソ異性体、シス−エキソ−エキソ異性体を除く)が析出し易く、その結晶はトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体以外の他の異性体の濃度が比較的高いものとなるため、これをろ過して、結晶側ではなく、ろ液側を回収することで、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合がより高い化合物(異性体の混合物)を抽出することが可能となる。このようにして、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上となりかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%となるように、前記第一のエステル化合物から異性体を抽出することが可能となる。このように、前記反応生成物を溶媒に溶解せしめた後、冷却(場合により放冷)して結晶を析出させ、ろ過によりろ液を回収する操作を行うことで(場合により、かかる操作を複数回行うことにより)、シス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上である第二のエステル化合物を得ることができる。
【0058】
このように、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上となりかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%となるように、前記第一のエステル化合物から異性体を抽出する際に利用することが可能な溶媒としては、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体に対する溶解性が高いものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、o−キシレン、m-キシレン、p−キシレン、ベンゼン等の芳香族系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノ酢酸エステル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラハイドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、グライム、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、DMSO、DMF、DMAc、NMP、DMI、TMU、乳酸エチル、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒や、それらの混合溶媒等が挙げられる。また、このような溶媒の中でも、異性体分離(抽出性や晶析分離)の観点からは、トルエン、キシレン、ベンゼン、エタノール、酢酸エチル、ジイソプロピルエーテル、アセトニトリル、乳酸エチル、酢酸が好ましく、トルエン、エタノール、酢酸エチル、酢酸がより好ましく、トルエン、酢酸エチル、酢酸が更に好ましい。
【0059】
また、前記反応生成物を溶媒中に溶解する際に採用する温度条件としては、溶媒の種類によっても異なるものであり、一概には言えないが、0〜150℃であることが好ましく、30〜120℃であることがより好ましい。このような温度条件が前記下限未満では前記第一のエステル化合物が溶解しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると変質や着色が進行する傾向にある。なお、前記反応生成物を溶媒中に溶解する際には、より効率よく溶解させるといった観点から、前記反応生成物を溶媒中に添加して撹拌することが好ましい。
【0060】
また、前記第一のエステル化合物から異性体を抽出する際に、ろ過により、結晶とろ液をろ別した後、ろ液を回収する。なお、このような異性体の抽出工程においては、ろ別された結晶に対して前記溶媒をかけることで、かけ洗いを行い、かけ洗い液を回収して、前記ろ液と混合して、回収してもよい。このようなかけ洗いにより、結晶に付着して残っている溶液を回収できるとともに、結晶表面にトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体が析出したとしても、それらをかけ洗い液で抽出することが可能となるため、溶媒に対する溶解性がより高いトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体を効率よく回収することが可能となる。なお、このようにしてろ液を回収した後、溶媒を蒸発せしめることで、固形分として、第二のエステル化合物を得ることができる。なお、このようにして得られる固形分において、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上であるという条件を満たさないエステル化合物が得られた場合には、前記条件を満たすように、上記操作(溶媒に溶解し、結晶を析出せしめて、ろ液を回収する操作)を繰り返し実施することにより、第二のエステル化合物を所望の異性体濃度を有するものとしてもよい。
【0061】
また、製造方法(A)においては、第二のエステル化合物を得た後、テトラカルボン酸二無水物の製造工程において、前記第二のエステル化合物を酸二無水物化することにより上記本発明のテトラカルボン酸二無水物を得る。なお、酸二無水物化工程においては基本的にノルボルナン環の立体配置は変化しないことから、これにより、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量の割合が50モル%以上でありかつトランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上であるという条件を満たすテトラカルボン酸二無水物を得ることが可能である。
【0062】
このような第二のエステル化合物の酸二無水物化の方法は特に制限されず、テトラエステル化合物を酸二無水物化して、テトラカルボン酸二無水物を得ることが可能な公知の方法を適宜採用でき、例えば、第二のエステル化合物を炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱する方法等を適宜採用することができる。このようなテトラエステル化合物を酸二無水物化する方法としては、例えば、国際公開第2014/050788号に記載の方法、国際公開第2015/178261号に記載の方法、国際公開第2011/099518号に記載の方法、特開2015−218160号に記載の方法等で採用している方法及び条件を適宜採用することができる(利用するカルボン酸、触媒等を含め各種条件等も、上記公知の方法において採用している方法を適宜利用することができる)。
【0063】
また、このようにして第二のエステル化合物を酸二無水物化することで、上記条件を満たすテトラカルボン酸二無水物を形成した後、さらに、前記溶媒(第一のエステル化合物から異性体を抽出する際に利用することが可能な溶媒として説明したもの)を利用して、該テトラカルボン酸二無水物を洗浄してもよい。なお、このような洗浄工程において採用する条件によっては、テトラカルボン酸二無水物中の異性体の比率を更に変動させることも可能となる。例えば、溶媒の種類によっても異なるものではあるが、洗浄液として15℃以上程度の溶媒を利用して洗浄した場合、その洗浄液中に異性体が溶解し易く、洗浄とともに一部の異性体が除去される傾向にあり、これによってテトラカルボン酸二無水物中の異性体の比率が変動することとなる。なお、洗浄液に溶解し易い異性体の種類は、洗浄液(溶媒)の種類や温度条件等によっても変わってくるため一概には言えないが、酸二無水物のシス−エキソ−エンド異性体が比較的溶解し易い傾向にある。また、例えば、溶媒の種類によっても異なるものではあるが、洗浄液としてより低温(例えば−5℃以下程度)の溶媒を利用して洗浄する場合、溶媒への異性体の溶解をより効率よく抑制しながら(異性体比率をより十分に維持しながら)洗浄工程を実施することが可能である。このように、上記条件を満たすテトラカルボン酸二無水物を得た後、更に、目的とする設計に応じて、溶媒の種類や温度条件などを適宜変更して洗浄することによって、所望の異性体比率を有するテトラカルボン酸二無水物に設計変更することも可能である。
【0064】
このようにして、第二のエステル化合物を酸二無水物化することで、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、上記立体異性体(A)及び上記立体異性体(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して、前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であるテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
【0065】
以上、本発明のテトラカルボン酸二無水物について説明したが、次に、本発明のポリイミド前駆体樹脂について説明する。
【0066】
[ポリイミド前駆体樹脂]
本発明のポリイミド前駆体樹脂は、上記一般式(4)で表される繰り返し単位(A’)及び上記一般式(5)で表される繰り返し単位(B’)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0067】
このような一般式(4)及び(5)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示し、Xはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種を示す。
【0068】
このような一般式(4)及び(5)中のR、R、R及びnはそれぞれ前述の一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である(その好適なものも同様である)。
【0069】
このような一般式(4)及び(5)中のRとして選択され得るアリーレン基は、炭素数が6〜50のものであるが、このようなアリール基の炭素数は6〜40であることが好ましく、6〜30であることがより好ましく、12〜20であることが更に好ましい。このような炭素数が前記下限未満では得られるポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、得られたポリイミドの溶媒に対する溶解性が低下する傾向にある。
【0070】
このような一般式(4)及び(5)中のRとしては、耐熱性と溶解性のバランスの観点から、下記一般式(a)〜(d):
【0071】
【化12】
【0072】
[式(c)中、R11は、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、水酸基、及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(d)中、Qは、9,9−フルオレニリデン基;式:−O−、−S−、−CO−、−CONH−、−SO−、−C(CF−、−C(CH−、−CH−、−O−C−C(CH-C−O−、−O−C−C(CF-C−O−、−O−C−SO-C−O−、−C(CH−C−C(CH−、−O−C−C−O−、−CONH−C−NHCO−、−NHCO−C−CONH−、−C−及び、−O−C−O−で表される基;並びに、下記一般式(e):
【0073】
【化13】
【0074】
(式(e)中、Raはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びトリル基のうちのいずれか1種を示し、yは1〜18の整数を示す。)
で表される基;からなる群から選択される1種を示す。]
で表される基のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
【0075】
このような一般式(c)中のR11としては、耐熱性の観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。さらに、一般式(c)中のR11としては、溶解性の観点からは、メチル基、水酸基、又トリフルオロメチル基であることがより好ましい。また、上記一般式(d)中のQとして選択され得る上記一般式(e)で表される基において、Raはそれぞれ独立に炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びトリル基のうちのいずれか1種である。このようなアルキル基の炭素数が前記上限を超えるとポリイミドフィルムの耐熱性や透明性が低下する傾向にある。このようなRaとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、トリル基であることが好ましく、メチル基、エチル基であることがより好ましく、メチル基が更に好ましい。また、上記一般式(e)中のyは1〜15(より好ましくは3〜12、更に好ましくは5〜10)の整数を示す。このようなyの値が前記下限未満ではポリイミドフィルムの接着性やレーザ剥離性(基板上にフィルムを製造した場合においてレーザ剥離処理を施した場合のフィルムの剥離のしやすさ)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドフィルムの耐熱性や透明性が低下する傾向にある。
【0076】
また、上記一般式(d)中のQとしては、耐熱性と溶解性のバランスという観点から、9,9−フルオレニリデン基、又は、式:−CONH−、−O−C−O−、−O−、−C(CH−、−O−C−SO-C−O−、−CH−、−O−C−C−O−又は−O−C−C(CH-C−O−、で表される基が好ましく、式:−CONH−、−O−C−O−、−O−C−C−O−若しくは−O−で表される基が特に好ましく、式:−CONH−、−O−C−O−又は−O−で表される基が最も好ましい。さらに、上記一般式(d)中のQとしては、接着性やレーザ剥離性の観点からは、上記一般式(e)で表される基であることが好ましく、線膨張係数と耐熱性の観点からは、式:−CONH−で表される基が好ましい。
【0077】
また、このようなRとしては、溶媒に対する溶解性がより高度なものとなることから、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンからなる群から選択される芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)であることが好ましく、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、及び、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選択される芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)であることがより好ましく、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、及び、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンからなる群から選択される芳香族ジアミンから2つのアミノ基を除いた2価の基(アリーレン基)であることが更に好ましい。
【0078】
このような一般式(4)及び(5)中のXはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基及び炭素数3〜9のアルキルシリル基よりなる群から選択される1種である。
【0079】
このようなXは、その置換基の種類、及び、置換基の導入率を、その製造条件を適宜変更することで変化させることができる。このようなXは、いずれも水素原子である場合(いわゆるポリアミド酸の繰り返し単位となる場合)には、ポリイミドの製造が容易である傾向がある。また、前記Xが、炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。また、前記Xが炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基である場合、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。また、前記Xが炭素数3〜9のアルキルシリル基である場合、ポリイミド前駆体樹脂の溶解性がより優れたものとなる傾向にある。また、前記Xが炭素数3〜9のアルキルシリル基である場合、トリメチルシリル基又はt−ブチルジメチルシリル基であることがより好ましい。
【0080】
このような式中のXが水素原子以外の基(アルキル基及び/又はアルキルシリル基)である場合、その基の導入率は特に限定されないが、Xのうちの少なくとも一部をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とする場合(樹脂前駆体中に含まれる繰り返し単位(A’)及び/又は繰り返し単位(B’)中のXのうちの少なくとも一部をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とする場合)、それぞれ、Xの総量(総個数)の25%以上(より好ましくは50%以上、更に好ましくは75%以上)をアルキル基及び/又はアルキルシリル基とすることが好ましい(なお、この場合、アルキル基及び/又はアルキルシリル基以外のXは水素原子となる)。樹脂前駆体中に含まれる繰り返し単位のXの総量(総個数)の25%以上をアルキル基及び/又はアルキルシリル基にすることで、ポリイミド前駆体樹脂の保存安定性がより優れたものとなる傾向にある。このようなポリイミド前駆体樹脂としては、ポリイミドの製造がより容易になることから、Xがいずれも水素原子であること、すなわち、ポリアミド酸であることが好ましい。
【0081】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂においては、前記繰り返し単位(A’)及び前記繰り返し単位(B’)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上である必要がある。このような繰り返し単位(A’)及び(B’)の合計量の割合が前記下限未満では、かかるポリイミド前駆体樹脂に由来して得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような繰り返し単位(A’)及び(B’)の合計量の割合としては、50〜100モル%であることがより好ましく、60〜98モル%であることが更に好ましく、70〜95モル%であることが特に好ましく、80〜90モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位(A’)及び(B’)の合計量の割合が前記範囲内にある場合には、最終的に得られるポリイミドの溶媒への溶解性が良好となる傾向にある。
【0082】
本発明のポリイミド前駆体樹脂においては、前記一般式(4)で表される繰り返し単位(A’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上である必要がある。このような繰り返し単位(A’)の含有割合が前記下限未満では、かかるポリイミド前駆体樹脂に由来して得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような繰り返し単位(A’)の含有割合としては、全繰り返し単位の総量に対して、30〜99モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることが更に好ましく、50〜85モル%であることが特に好ましく、60〜80モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位(A’)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0083】
本発明のポリイミド前駆体樹脂においては、上記一般式(5)で表される繰り返し単位(B’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して1〜70モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましく、10〜50モル%であることが特に好ましく、10〜40モル%であることが最も好ましい。前記繰り返し単位(B’)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0084】
なお、このような繰り返し単位(A’)は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(A)(上記一般式(2)で表される化合物:トランス−エキソ−エンド異性体)と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは上記一般式(4)及び(5)中のRと同義である)とに由来するものである。このように、繰り返し単位(A’)の立体構造はテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(A)の立体構造に由来した構造であり、かかる繰り返し単位(A’)はトランス−エキソ−エンドの立体構造を有する繰り返し単位である。また、前記繰り返し単位(B’)は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(B)(上記一般式(3)で表される化合物:シス−エキソ−エンド異性体)と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは上記一般式(4)及び(5)中のRと同義である)とに由来するものであり、シス−エキソ−エンドの立体構造を有する繰り返し単位である。さらに、前述の立体異性体(A)及び(B)以外の上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体と、式:HN−R−NHとに由来するポリイミド前駆体樹脂の繰り返し単位は以下のようになる。すなわち、前述のトランス−エキソ−エキソ異性体(上記式(I)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は、下記一般式(I’)で表されるトランス−エキソ−エキソの立体構造を有する繰り返し単位(C’)となり、前述のトランス−エンド−エンド異性体(上記式(II)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は下記一般式(II’)で表されるトランス−エンド−エンドの立体構造を有する繰り返し単位(D’)となり、前述のシス−エキソ−エキソ異性体(上記式(III)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は下記一般式(III’)で表されるシス−エキソ−エキソの立体構造を有する繰り返し単位(E’)なり、シス−エンド−エンド異性体(上記式(IV)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は、下記一般式(IV’)で表されるシス−エンド−エンドの立体構造を有する繰り返し単位(F’)となる。なお、下記一般式(I’)〜(IV’)中のR、R、R、R及びnはそれぞれ上記一般式(4)及び(5)中のR、R、R、R及びnと同義である(その好適なものも同様である)。
【0085】
【化14】
【0086】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂においては、本発明の効果を損なわない範囲において、繰り返し単位(A’)及び(B’)以外の他の繰り返し単位を含有していてもよく、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物を利用して容易に調製することが可能であることから、そのような他の繰り返し単位としては、前記繰り返し単位(C’)〜(F’)であることが好ましい。
【0087】
このような繰り返し単位(D’)及び/又は(F’)を含有する場合、前記繰り返し単位(D’)及び(F’)の合計量の割合(モル基準の割合)としては、全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましく、0〜30モル%であることが更に好ましく、0〜20モル%であることが特に好ましい。このような繰り返し単位(D’)及び(F’)の合計量の割合が前記上限を超えると最終的に得られるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する傾向にある。
【0088】
さらに、前記繰り返し単位(C’)及び/又は(E’)を含有する場合、前記繰り返し単位(C’)及び(E’)の合計量の割合(モル基準の割合)としては、全繰り返し単位に対して10モル%以下であることが好ましく、0〜5モル%であることがより好ましく、0〜3モル%であることが更に好ましく、0〜1.5モル%であることが特に好ましく、0〜1モル%であることが最も好ましい。このような繰り返し単位(C’)及び(E’)の合計量の割合が前記上限を超えると最終的に得られるポリイミドの物性が低下する傾向にある。
【0089】
また、このようなポリイミド前駆体樹脂(より好ましくはポリアミド酸)においては、前記他の繰り返し単位として、繰り返し単位(A’)〜(F’)以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このようなポリイミド前駆体樹脂においては、本発明の効果をより十分に発現させるといった観点からは、繰り返し単位(A’)〜(F’)の総量が、全繰り返し単位に対して、70〜100モル%であることが好ましく、80〜100モル%であることがより好ましく、90〜100モル%であることが更に好ましく、95〜100モル%であることが特に好ましく、98〜100モル%であることが最も好ましい。なお、溶媒への溶解性がより高度なものとなるといった観点からは、ポリイミド前駆体樹脂が繰り返し単位(A’)〜(F’)を100モル%含むものであることが好ましい。
【0090】
また、このような繰り返し単位(A’)〜(F’)以外の他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリイミド前駆体樹脂(より好ましくはポリアミド酸の繰り返し単位)として利用できる公知の繰り返し単位が挙げられる。このような繰り返し単位(A’)〜(F’)以外の他の繰り返し単位としては、例えば、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物(例えば、国際公開第2014/034760号の段落[0171]に記載の化合物等)に由来する繰り返し単位等を利用してもよい。
【0091】
また、本発明のポリイミド前駆体樹脂としては、調製がより容易であることから、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは上記一般式(4)及び(5)中のRと同義である)との反応物(重合物)であることが好ましい。
【0092】
また、このようなポリイミド前駆体樹脂として好適なポリアミド酸としては、固有粘度[η]が0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N−ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用いる。
【0093】
また、このようなポリイミド前駆体樹脂(より好ましくはポリアミド酸)は、本発明のポリイミドを製造する際に好適に利用することが可能なものである。また、このようなポリイミド前駆体樹脂(より好ましくはポリアミド酸)は、本発明のポリイミドを製造する際の反応中間体(前駆体)として得ることが可能である。
【0094】
以上、本発明のポリイミド前駆体樹脂(より好ましくはポリアミド酸)について説明したが、次に、本発明のポリイミドについて説明する。
【0095】
[ポリイミド]
本発明のポリイミドは、上記一般式(6)で表される繰り返し単位(A)及び上記一般式(7)で表される繰り返し単位(B)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であることを特徴とするものである。
【0096】
このような一般式(6)及び(7)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、Rは炭素数6〜50のアリーレン基を示す。このような一般式(6)及び(7)中のR、R、R及びnはそれぞれ前述の一般式(1)中のR、R、R及びnと同義である(その好適なものも同様である)。また、このような一般式(6)及び(7)中のRはそれぞれ前述の一般式(4)及び(5)中のRと同義である(その好適なものも同様である)。
【0097】
また、本発明のポリイミドにおいては、前記繰り返し単位(A)及び前記繰り返し単位(B)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上である必要がある。このような繰り返し単位(A)及び(B)の合計量の割合が前記下限未満では、かかるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような繰り返し単位(A)及び(B)の合計量の割合としては、50〜100モル%であることがより好ましく、60〜98モル%であることが更に好ましく、70〜95モル%であることが特に好ましく、80〜90モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位(A)及び(B)の合計量の割合が前記範囲内にある場合には、かかるポリイミドの溶媒への溶解性が良好となる傾向にある。
【0098】
本発明のポリイミドにおいては、上記一般式(2)で表される繰り返し単位(A)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上である必要がある。このような繰り返し単位(A)の含有割合が前記下限未満では、かかるポリイミドの溶媒への溶解性が低下する。また、このような繰り返し単位(A)の含有割合としては、30〜99モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることが更に好ましく、50〜85モル%であることが特に好ましく、60〜80モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位(A)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0099】
本発明のポリイミドにおいては、前記一般式(7)で表される繰り返し単位(B)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して1〜70モル%であることがより好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましく、10〜50モル%であることが特に好ましく、10〜40モル%であることが最も好ましい。前記繰り返し単位(B)の含有割合が前記範囲内にある場合には、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとなる傾向にある。
【0100】
なお、このような繰り返し単位(A)は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(A)(上記一般式(2)で表される化合物:トランス−エキソ−エンド異性体)と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは前述の一般式(4)及び(5)中のRと同義である)とに由来するものである。このように、繰り返し単位(A)の立体構造はテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(A)の立体構造に由来した構造であり、かかる繰り返し単位(A)はトランス−エキソ−エンドの立体構造を有する繰り返し単位である。また、前記繰り返し単位(B)は、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体(B)(上記一般式(3)で表される化合物:シス−エキソ−エンド異性体)と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは前述の一般式(4)及び(5)中のRと同義である)とに由来するものであり、シス−エキソ−エンドの立体構造を有する繰り返し単位である。さらに、前述の立体異性体(A)及び(B)以外の上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の立体異性体と、式:HN−R−NHとに由来するポリイミドの繰り返し単位は以下のようになる。すなわち、前述のトランス−エキソ−エキソ異性体(上記式(I)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は、下記一般式(I-1)で表されるトランス−エキソ−エキソの立体構造を有する繰り返し単位(C)となり、前述のトランス−エンド−エンド異性体(上記式(II-1)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は下記一般式(II)で表されるトランス−エンド−エンドの立体構造を有する繰り返し単位(D)となり、前述のシス−エキソ−エキソ異性体(上記式(III)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は下記一般式(III-1)で表されるシス−エキソ−エキソの立体構造を有する繰り返し単位(E)となり、シス−エンド−エンド異性体(上記式(IV)で表される化合物)に由来する繰り返し単位は、下記一般式(IV-1)で表されるシス−エンド−エンドの立体構造を有する繰り返し単位(F)となる。なお、下記一般式(I-1)〜(IV-1)中のR、R、R、R及びnはそれぞれ上記一般式(6)及び(7)中のR、R、R、R及びnと同義である(その好適なものも同様である)。
【0101】
【化15】
【0102】
また、本発明のポリイミドにおいては、本発明の効果を損なわない範囲において、繰り返し単位(A)及び(B)以外の他の繰り返し単位を含有していてもよい。また、本発明のポリイミドは、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物を利用することにより、効率よく調製することが可能となることから、そのような繰り返し単位(A)及び(B)以外の他の繰り返し単位としては、前記繰り返し単位(C)〜(F)であることが好ましい。
【0103】
このような繰り返し単位(D)及び/又は(F)を含有する場合、繰り返し単位(D)及び(F)の合計量の割合(モル基準の割合)としては、全繰り返し単位に対して50モル%以下であることが好ましく、0〜40モル%であることがより好ましく、0〜30モル%であることが更に好ましく、0〜20モル%であることが特に好ましい。このような繰り返し単位(D)及び(F)の合計量の割合が前記上限を超えると、ポリイミドの溶媒への溶解性が低下する傾向にある。
【0104】
さらに、前記繰り返し単位(C)及び/又は(E)を含有する場合、前記繰り返し単位(C)及び(E)の合計量の割合(モル基準の割合)としては、全繰り返し単位に対して10モル%以下であることが好ましく、0〜5モル%であることがより好ましく、0〜3モル%であることが更に好ましく、0〜1.5モル%であることが特に好ましく、0〜1モル%であることが最も好ましい。このような繰り返し単位(C)及び(E)の合計量の割合が前記上限を超えると、ポリイミドの物性が低下する傾向にある。
【0105】
また、このようなポリイミドにおいては、前記他の繰り返し単位として、繰り返し単位(A)〜(F)以外の他の繰り返し単位を含んでいてもよい。このような繰り返し単位(A)〜(F)以外の他の繰り返し単位としては、特に制限されず、ポリイミドの繰り返し単位として利用できる公知の繰り返し単位が挙げられる。このような繰り返し単位(A)〜(F)以外の他の繰り返し単位としては、例えば、前記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物(例えば、国際公開第2014/034760号の段落[0171]に記載の化合物等)に由来する繰り返し単位等を利用してもよい。
【0106】
また、本発明のポリイミドとしては、調製がより容易であることから、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン(式中のRは上記一般式(4)及び(5)中のRと同義である)との反応物(重合物)であることが好ましい。
【0107】
また、本発明のポリイミドとしては、5%重量減少温度が400℃以上のものが好ましく、450〜550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。このような5%重量減少温度は、例えば、TG/DTA7200熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素ガス雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で走査温度を30℃から550℃まで加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
【0108】
また、このようなポリイミドとしては、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上のものが好ましく、300〜500℃のものがより好ましい。このようなガラス転移温度(Tg)が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このようなガラス転移温度(Tg)は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を使用して引張モードにより測定することができる。すなわち、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を使用し、縦20mm、横5mmの大きさのポリイミドフィルム(フィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。)を形成して測定試料とし、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して測定を行ってTMA曲線を求め、ガラス転移に起因するTMA曲線の変曲点に対し、その前後の曲線を外挿することにより求めることができる。
【0109】
さらに、このようなポリイミドとしては、軟化温度が300℃以上のものが好ましく、350〜550℃のものがより好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では十分な耐熱性が達成困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとそのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような軟化温度は、熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を使用してペネトレーションモードにより測定することができる。また、測定に際しては、試料のサイズ(縦、横、厚み等)は測定値に影響するものではないため、用いる熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)の治具に装着可能なサイズに試料のサイズを適宜調整すればよい。
【0110】
また、このようなポリイミドとしては、熱分解温度(Td)が450℃以上のものが好ましく、480〜600℃のものがより好ましい。このような熱分解温度(Td)が前記下限未満では十分な耐熱性を達成することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような熱分解温度(Td)は、TG/DTA7200熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/min.の条件で熱分解前後の分解曲線にひいた接線の交点となる温度を測定することにより求めることができる。
【0111】
また、本発明のポリイミドにおいては、鉛筆硬度において、6B〜6Hの硬度を有することが好ましく、HB〜4Hの硬度を有することがより好ましい。このような硬度が前記下限未満では十分に高度な水準の硬度を得ることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有する無色透明なポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような鉛筆硬度の値は、1999年発行のJIS K5600−5−4に規定されている方法に準拠して測定することにより求めることができる。
【0112】
さらに、このようなポリイミドの数平均分子量(Mn)としては、ポリスチレン換算で1000〜1000000であることが好ましく、10000〜500000であることがより好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では、そのポリイミドを利用してフィルムを形成した場合に得られるフィルムが脆くなるとともに、ポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、粘性が増大し、ポリイミドを溶媒に溶解させるのに長時間を要して加工が困難となるとともに、そのポリイミドを利用してフィルムを形成した場合にフレキシブルなフィルムが得られず、皺が寄ったフィルムになる傾向にある。
【0113】
また、このようなポリイミドの重量平均分子量(Mw)としては、ポリスチレン換算で1000〜5000000であることが好ましい。また、このような重量平均分子量(Mw)の数値範囲の下限値としては、5000であることがより好ましく、10000であることが更に好ましく、20000であることが特に好ましい。また、重量平均分子量(Mw)の数値範囲の上限値としては、5000000であることがより好ましく、500000であることが更に好ましく、100000であることが特に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では、そのポリイミドを利用してフィルムを形成した場合に得られるフィルムが脆くなるとともに、ポリイミドの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリイミドを溶媒に溶解させるのに長時間を要して加工が困難となるとともに、そのポリイミドを利用してフィルムを形成した場合にフレキシブルなフィルムが得られず、皺が寄ったフィルムになる傾向にある。
【0114】
さらに、このようなポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。このような分子量分布が前記下限未満では製造することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると均一なフィルムを得にくい傾向にある。なお、このようなポリイミドの分子量(Mw又はMn)や分子量の分布(Mw/Mn)は、測定装置としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置(デガッサ:JASCO社製DG−2080−54、送液ポンプ:JASCO社製PU−2080、インターフェイス:JASCO社製LC−NetII/ADC、カラム:Shodex社製GPCカラムKF−806M(×2本)、カラムオーブン:JASCO社製860−CO、RI検出器:JASCO社製RI−2031、カラム温度40℃、クロロホルム溶媒(流速1mL/min.)を用いて測定したデータをポリスチレンで換算して求めることができる。
【0115】
また、このようなポリイミドは、固有粘度[η]が0.05〜3.0dL/gであることが好ましく、0.1〜2.0dL/gであることがより好ましい。このような固有粘度[η]が0.05dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、3.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N−ジメチルアセトアミド中にポリイミドを濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解させて、測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC−252」)を用いる。
【0116】
また、このようなポリイミドは、線膨張係数(CTE)が0〜100ppm/Kであることが好ましく、10〜70ppm/Kであることがより好ましい。このような線膨張係数が前記上限を超えると、線膨張係数の範囲が5〜20ppm/Kである金属や無機物と組合せて複合化した場合に熱履歴で剥がれが生じやすくなる傾向にある。また、前記線膨張係数が、前記下限未満では溶解性の低下やフィルム特性が低下する傾向にある。
【0117】
このようなポリイミドの線膨張係数の測定方法としては、以下に記載の方法を採用する。すなわち、先ず、縦20mm、横5mmの大きさのポリイミドフィルム(かかるフィルムの厚みは測定値に影響するものではないため特に制限されるものではないが、5〜80μmとすることが好ましい。)を形成して測定試料とし、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」又は「TMA8311」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、室温から200℃まで昇温(1回目の昇温)し、30℃以下まで放冷した後に、その温度から400℃まで昇温(2回目の昇温)し、その昇温時の前記試料の縦方向の長さの変化を測定する。次いで、このような2回目の昇温時の測定(放冷時の温度から400℃まで昇温する際の測定)で得られたTMA曲線を用いて、100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求め、得られる値をポリイミドの線膨張係数として測定する。このように、本発明のポリイミドの線膨張係数としては、前記TMA曲線に基づいて100℃〜200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求めることにより得られる値を採用する。
【0118】
また、このようなポリイミドとしては、フィルムを形成した場合に透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは82%以上、特に好ましくは83%以上)であるものがより好ましい。このような全光線透過率は、ポリイミドの繰り返し単位の種類等を適宜選択することにより容易に達成することができる。また、このようなポリイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、ヘイズ(濁度)が5〜0(更に好ましくは4〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このようなヘイズの値が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。さらに、このようなポリイミドとしては、より高度な無色透明性を得るといった観点から、黄色度(YI)が10〜0(更に好ましくは5〜0、特に好ましくは3〜0)であるものがより好ましい。このような黄色度が前記上限を超えると、より高度な水準の無色透明性を達成することが困難となる傾向にある。このような全光線透過率、ヘイズ(濁度)及び黄色度(YI)は、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」又は日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」を用いて、厚みが13μm程度(13μm±2μmの範囲:かかる範囲であれば基本的に測定値に変動はない。なお、測定試料の厚みは13μmとすることがより好ましい)のポリイミドからなるフィルムを測定用の試料として用いて測定した値を採用することができる(なお、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」で全光線透過率とヘイズとを測定し、日本電色工業株式会社製の商品名「分光色彩計SD6000」で黄色度を測定する)。また、測定試料の縦、横の大きさは、前記測定装置の測定部位に配置できるサイズであればよく、縦、横の大きさは適宜変更してもよい。なお、このような全光線透過率は、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、ヘイズ(濁度)は、JIS K7136(2000年発行)に準拠した測定を行うことにより求め、黄色度(YI)はASTM E313−05(2005年発行)に準拠した測定を行うことにより求める。
【0119】
このようなポリイミドは、波長590nmで測定される厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が、厚み10μmに換算して、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、50nm以下であることが特に好ましい。すなわち、前記リタデーション(Rth)の値は−200nm〜200nm(より好ましくは−150nm〜150nm、更に好ましくは−100〜100nm、特に好ましくは−50〜50nm)であることが好ましい。このような厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値が前記上限を超えると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストが低下するとともに視野角が低下してしまう傾向にある。なお、前記リタデーション(Rth)の絶対値が前記範囲内となると、ディスプレイ機器に使用した際に、コントラストの低下を抑制する効果及び視野角を改善する効果がより高度なものとなる傾向にある。このように、ディスプレイ機器に使用した場合に、コントラストの低下をより高度に抑制でき、且つ、視野角をより改善することが可能となるといった観点で、厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値はより低い値となることが好ましい。
【0120】
このような「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「AxoScan」を用い、後述のようにして測定したポリイミドフィルムの屈折率(589nm)の値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長590nmの光を用いて、ポリイミドフィルムの厚み方向のリタデーションを測定し、求められた厚み方向のリタデーションの測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚み10μmあたりのリタデーション値に換算した値(換算値)を求め、その換算値から絶対値を算出することにより求めることができる。このように、「厚み方向のリタデーション(Rth)の絶対値」は、前記換算値の絶対値(|換算値|)を算出することで求めることができる。なお、測定試料のポリイミドフィルムのサイズは、測定器のステージの測光部(直径:約1cm)よりも大きければ良いため、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚み5〜20μmの大きさとすることが好ましい。
【0121】
また、厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する「ポリイミドフィルムの屈折率(589nm)」の値は、リタデーションの測定対象となるフィルムを形成するポリイミドと同じ種類のポリイミドからなる未延伸のフィルムを形成した後、かかる未延伸のフィルムを測定試料として用いて(なお、測定対象となるフィルムが未延伸のフィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として用いることができる。)、測定装置として屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR−1T SOLID」)を用い、589nmの光源を用いて、23℃の温度条件で、測定試料の589nmの光に対する平均屈折率を測定して求めることができる。このように、未延伸のフィルムを利用して「ポリイミドフィルムの屈折率(589nm)」の値を測定し、得られた測定値(測定試料の589nmの光に対する平均屈折率の値)を上述の厚み方向のリタデーション(Rth)の測定に利用する。ここにおいて、測定試料のポリイミドフィルムのサイズは、前記屈折率測定装置に利用できる大きさであればよく、特に制限されず、1cm角(縦横1cm)で厚み5〜20μmの大きさとしてもよい。
【0122】
このようなポリイミドの形状は特に制限されず、例えば、フィルム形状や粉状としたり、更には、押出成形によりペレット形状等としてもよい。このように、本発明のポリイミドは、フィルム形状にしたり、押出成形によりペレット形状としたり、公知の方法で各種の形状に適宜成形することもできる。
【0123】
また、このようなポリイミドは、フレキシブル配線基板用フィルム、耐熱絶縁テープ、電線エナメル、半導体の保護コーティング剤、液晶配向膜、有機EL用透明導電性フィルム、フレキシブル基板フィルム、フレキシブル透明導電性フィルム、有機薄膜型太陽電池用透明導電性フィルム、色素増感型太陽電池用透明導電性フィルム、フレキシブルガスバリアフィルム、タッチパネル用フィルム、フラットパネルディテクタ用TFT基板フィルム、複写機用シームレスポリイミドベルト(いわゆる転写ベルト)、透明電極基板(有機EL用透明電極基板、太陽電池用透明電極基板、電子ペーパーの透明電極基板等)、層間絶縁膜、センサー基板、イメージセンサーの基板、発光ダイオード(LED)の反射板(LED照明の反射板:LED反射板)、LED照明用のカバー、LED反射板照明用カバー、カバーレイフィルム、高延性複合体基板、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、カラーフィルタ基材等を製造するための材料として特に有用である。また、このようなポリイミドは、上述のような用途以外にも、その形状を粉状体としたり、各種成形体とすること等により、例えば、自動車用部品、航空宇宙用部品、軸受部品、シール材、ベアリング部品、ギアホイールおよびバルブ部品などに、適宜利用することも可能である。
【0124】
以上、本発明のポリイミドについて説明したが、次に、上記本発明のポリイミド及びポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法として好適に利用することが可能な方法についてそれぞれ説明する。
【0125】
〈本発明のポリイミドを製造するための方法〉
本発明のポリイミドを製造するための方法としては、特に制限されるものではないが、重合溶媒の存在下、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミン[式中のRは炭素数6〜50のアリーレン基であり、前述の一般式(4)及び(5)中のRと同義である(その好適なものも同様である)]とを反応させることにより、上記本発明のポリイミドを得る方法(以下、便宜上、単に「ポリイミドの製造方法(I)」と称する)を好適に採用することができる。このように、本発明のポリイミドは、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と上記芳香族ジアミンとの反応物として得ることができる。このようなポリイミドの製造方法(I)において、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させてポリイミドを得るための具体的な工程は特に制限されない。
【0126】
また、このようなポリイミドの製造方法(I)としては、例えば、重合溶媒の存在下、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、上記式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミンとを反応させることにより、上記一般式(4)及び(5)中のXがいずれも水素原子である上記本発明のポリイミド前駆体樹脂(上記本発明のポリイミド前駆体樹脂として好適なポリアミド酸)を得る工程(Ia)と、
前記ポリイミド前駆体樹脂(ポリアミド酸)をイミド化して、上記本発明のポリイミドを得る工程(Ib)と、
を含む方法としてもよい。以下、本発明のポリイミドの製造方法に好適に利用することが可能な工程(Ia)及び(Ib)について説明する。
【0127】
(工程(Ia):ポリアミド酸を得る工程)
工程(Ia)は、重合溶媒の存在下、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、上記式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミンとを反応させて、上記ポリアミド酸(上記一般式(4)及び(5)中のXがいずれも水素原子である上記本発明のポリイミド前駆体樹脂)を得る工程である。
【0128】
このようなポリアミド酸を得る工程においては、モノマー成分として、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と、上記式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミンとを利用する。このような本発明のテトラカルボン酸二無水物が、上記一般式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物であり、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して上記立体異性体(A)及び(B)の合計量の割合が50モル%以上であり、かつ、前記立体異性体の総量(そのテトラカルボン酸二無水物に含有されている全ての立体異性体の合計量)に対して前記立体異性体(A)の含有割合が30モル%以上であるという条件を満たすものであるため、その立体構造に由来して、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂として好適なポリアミド酸(上記一般式(4)及び(5)中のXがいずれも水素原子である上記本発明のポリイミド前駆体樹脂)を調製することができる。
【0129】
また、前記式:HN−R−NHで表される芳香族ジアミンに関して、Rは炭素数6〜50のアリーレン基であり、前述の一般式(4)及び(5)中のRと同義である(その好適なものも同様である)。このような芳香族ジアミンとしては、例えば、国際公開第2017/030019号の段落[0211]に記載の芳香族ジアミン、国際公開第2014/034760号の段落[0157]に記載の芳香族ジアミン等を適宜利用できる。また、このような芳香族ジアミンとしては市販のものを適宜用いてもよい。このような芳香族ジアミンは目的とするポリイミドの設計に併せて、1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
また、前記重合溶媒としては、前記テトラカルボン酸二無水物と上記芳香族ジアミンの双方を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましい。このような有機溶媒としては、ポリイミドやポリアミド酸の製造時に利用することが可能な公知の重合溶媒(有機溶媒:例えば国際公開2017−030019号の段落[0213]に記載の有機溶媒等)を適宜利用できる。このような重合溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミンに対する溶解性の観点から、非プロトン系極性溶媒を用いることがより好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドを含有する溶媒(N,N−ジメチルアセトアミドのみからなるものであっても、他の溶媒と組み合わせたものであってもよい)がより好ましく、中でも、N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトンを組み合わせたものが特に好ましい。このように、前記重合溶媒として、N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトンを組み合わせて利用した場合には、重合反応をより効率よく進行させることが可能となり(より反応が進行し易い状態となり)、これにより、より短時間で高重合度のポリアミド酸ワニスを得ることが可能となる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0131】
また、工程(Ia)においては、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる際に、反応速度向上と高重合度のポリアミド酸を得るという観点から、前記有機溶媒中に塩基化合物を更に添加してもよい。このような塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、テトラブチルアミン、テトラヘキシルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセン−7、ピリジン、イソキノリン、α−ピコリン等が挙げられる。また、このような塩基化合物の使用量は、前記テトラカルボン酸二無水物1当量に対して0.001〜10当量とすることが好ましく、0.01〜0.1当量とすることがより好ましい。
【0132】
また、工程(Ia)において、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとの使用割合、重合溶媒(有機溶媒)の使用量、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる際の反応温度や反応時間などは、公知のポリアミド酸の製造方法において採用されている条件を適宜採用することができる。例えば、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンの使用割合としては、前記芳香族ジアミン中のアミノ基1当量に対して反応に用いられるテトラカルボン酸二無水物中の全ての酸無水物基の量が0.2〜2当量(より好ましくは0.3〜1.2当量)となるようにすることが好ましい。また、工程(Ia)における前記重合溶媒(有機溶媒)の使用量としては、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンの総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜50質量%(より好ましくは10〜30質量%)になるような量であることが好ましい。また、反応させる際の反応温度は、これらの化合物を反応させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されず、場合に応じて、−40〜450℃とすることが好ましく、−20〜400℃とすることがより好ましく、−20〜200℃とすることが更に好ましく、0〜100℃とすることが特に好ましい。
【0133】
このように、テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させるための方法としては、例えば、大気圧中、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、前記芳香族ジアミンを溶媒に溶解させた後、前記反応温度において、前記テトラカルボン酸二無水物を添加し、その後、10〜48時間反応させる方法;大気圧中、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、反応容器中に前記芳香族ジアミン及び前記テトラカルボン酸二無水物を添加した後に、溶媒を添加し、溶媒中に各成分を溶解させた後、前記反応温度において、10〜48時間反応させる方法;等を採用してもよい。
【0134】
このようにして、工程(Ia)を施すことにより、繰り返し単位(A’)及び(B’)の一般式中のXがいずれも水素原子であり、前記繰り返し単位(A’)及び(B’)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A’)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上であるポリアミド酸を得ることができる。なお、このようにして得られるポリアミド酸は、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂において、その好適なものとして説明したポリアミド酸と同様のものである。
【0135】
なお、最終的に得られるポリイミドに、前記繰り返し単位(A)及び(B)と共に他の繰り返し単位を含有させる場合には、例えば、工程(Ia)において、上記本発明のテトラカルボン酸二無水物とともに、他のテトラカルボン酸二無水物を用い、これらを前記芳香族ジアミンと反応させてもよく、あるいは、前記芳香族ジアミンとともに他のジアミンを用いて、これらを上記本発明のテトラカルボン酸二無水物と反応させてもよく、更には、このような他のテトラカルボン酸二無水物及び他のジアミンを両方とも適宜利用してポリイミドを製造してもよい。このような他のテトラカルボン酸二無水物や他の芳香族ジアミンとしては、それぞれ、ポリイミドの製造に用いられる公知のものを適宜用いることができる。
【0136】
(工程(Ib):ポリイミドを得る工程)
工程(Ib)は、前記ポリアミド酸をイミド化して、上記本発明のポリイミドを得る工程である。
【0137】
このようなポリアミド酸のイミド化の方法は、ポリアミド酸をイミド化し得る方法であればよく特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。このようなポリアミド酸のイミド化の方法としては、例えば、前記ポリアミド酸をいわゆるイミド化剤を用いてイミド化する方法(Ib−1)、前記ポリアミド酸を加熱処理を施すことによりイミド化する方法(Ib−2)等を採用できる。
【0138】
このようなイミド化剤を用いてイミド化する方法(Ib−1)としては、特に制限されず、ポリアミド酸をイミド化剤を利用してイミド化することが可能な公知の方法(温度条件、圧力条件、雰囲気条件、イミド化剤の種類、イミド化剤の使用量、反応時間等の各種条件を含む)を適宜使用することができ、例えば、国際公開第2015−163314号、国際公開第2014/034760号、等に記載の方法を適宜採用できる。また、方法(Ib−1)においては、イミド化剤と併せて公知の方法において利用される添加剤(例えば、反応促進剤(酸補足剤等)、共沸脱水剤等)等も適宜利用することができ、これらの利用方法や種類等も公知の条件(例えば、国際公開第2015−163314号、国際公開第2014/034760号、等に記載の条件)と同様にすればよい(例えば、触媒量の反応促進剤(DMAPなど)と共沸脱水剤(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)を添加して、ポリアミド酸がイミドになる際に生じる水を共沸脱水により除去し、化学イミド化してもよい)。なお、このようなイミド化剤としては、反応性、入手性、実用性の観点から、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸が好ましく、無水酢酸、無水プロピオン酸がより好ましく、無水酢酸が更に好ましい。また、反応促進剤を併せて利用する場合、反応促進剤としては、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。
【0139】
また、加熱処理を施すことによりイミド化する方法(Ib−2)としては、特に制限されず、ポリアミド酸を加熱処理してイミド化することが可能な公知の方法(温度条件、雰囲気条件、イミド化剤の種類、イミド化剤の使用量等にの各種条件を含む)を適宜使用することができ、例えば、国際公開第2015−163314号、国際公開第2014/034760号、等に記載の方法を適宜採用できる。また、加熱処理を施すことによりイミド化する方法(Ib−2)としては、反応を効率よく進行させるといった観点から、前記ポリアミド酸に対して60〜450℃(より好ましくは80〜400℃)の温度条件の加熱処理を施すことによりイミド化する方法が好ましい。また、前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合の反応時間(加熱時間)は0.5〜5時間とすることが好ましい。
【0140】
また、前記加熱処理を施してイミド化する場合においては、高分子量化やイミド化を促進させるために、いわゆる反応促進剤を利用してもよい。このような反応促進剤としては、公知の反応促進剤(三級アミン等)を適宜利用してもよい。また、このような反応促進剤としては、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記反応促進剤の使用量としてはポリアミド酸中の繰り返し単位1モルに対して0.01〜4.0モルとすることが好ましく、0.05〜2.0モルであることがより好ましく、0.05〜1.0モルとすることが更に好ましい。
【0141】
また、このような工程(Ia)及び工程(Ib)を含む方法を利用する場合であって、イミド化に際して加熱処理を施すことによりイミド化する方法(Ib−2)を採用する場合には、前記工程(Ia)を実施した後に、上記ポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(前記ポリアミド酸を含有する反応液)をそのまま用い、前記反応液に対して溶媒を蒸発除去する処理(溶媒除去処理)を施して溶媒を除去した後、前記加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用してもよい。このような溶媒を蒸発除去する処理により、モールドを利用した場合にはそのモールドに基づく形態としたり、基材上に塗布した場合にはフィルム状などの形態にして単離し、その後、加熱処理を施して、所望の形態のポリイミドを得ること等が可能となる。このように、フィルム状のポリイミドを製造する場合、得られた反応液をそのまま基材(例えばガラス板)上に塗布し、前記溶媒を蒸発除去する処理及び加熱処理を施すことで簡便な方法でフィルム状のポリイミドを製造することが可能となる。
【0142】
このような溶媒を蒸発除去する処理(溶媒除去処理)の方法における温度条件としては、気泡やボイドの発生を十分に抑制しながら効率よく溶媒を除去するといった観点から、0〜180℃であることが好ましく、30〜150℃であることがより好ましい。なお、このような反応液の塗布方法としては特に制限されず、公知の方法(キャスト法など)を適宜採用することができる。また、前記反応液から上記ポリアミド酸を単離して利用する場合、その単離方法としては特に制限されず、ポリアミド酸を単離することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、再沈殿物として単離する方法などを採用してもよい。
【0143】
また、前記加熱処理を施してイミド化する方法(Ib−2)を採用する場合には、工程(Ia)と工程(Ib)とを一連の工程として同時に施してもよい。このように、工程(Ia)と工程(Ib)とを一連の工程として同時に施す方法としては、例えば、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる段階から加熱処理を施すことにより、ポリアミド酸(中間体)の形成とそれに続くポリイミドの形成(イミド化)とを同時に進行せしめて、工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す方法を採用することができる。
【0144】
また、このように、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる際から加熱処理を施して、工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合、重合溶媒の存在下、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを反応させる段階から反応促進剤を用い、前記重合溶媒と前記反応促進剤の存在下、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンとを加熱して反応させることによりポリイミドを形成することが好ましい。このようにして工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合、加熱によって、工程(Ia)におけるポリアミド酸の生成と工程(Ib)におけるポリアミド酸のイミド化とが連続的に引き起こされて、溶媒中においてポリイミドが調製されることとなるが、その際に、前記反応促進剤を利用することで、ポリアミド酸の生成とイミド化の反応速度が非常に早くなり、分子量をより効率よく大きくする(伸ばすこと)が可能となる。また、前記反応促進剤を用いて加熱することにより工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合には、加熱により、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの反応が進行するとともに、反応により生成される水を蒸発させて除去することも可能となるため、いわゆる縮合剤(脱水縮合剤)を利用することなく、反応を効率よく進行させることも可能となる。
【0145】
また、前記重合溶媒と前記反応促進剤の存在下、前記テトラカルボン酸二無水と前記芳香族ジアミンとを加熱して反応させることによりポリイミドを形成する場合(反応促進剤を用いて加熱することにより工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合)、その加熱時の温度条件としては、100〜250℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましく、150〜220℃であることが更に好ましい。このような温度条件が前記下限未満では反応温度が水の沸点以下であるため、水の留去が生じず、水の存在により反応の進行が阻害され、ポリイミドの分子量をより大きなものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶媒の熱分解などの副反応が生じ、加熱後に得られるポリイミドと有機溶媒との混合液(ワニス)中の不純物が多くなって、これを用いてフィルムを形成した場合に、得られるポリイミドの物性が低下する傾向にある。
【0146】
また、反応促進剤を用いて加熱することにより工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合、その工程に利用する反応促進剤としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、コリジン、ルチジン、2−ヒドロキシピリジン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの三級アミンが好ましく、中でも、反応性、入手性、実用性の観点から、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジンが好ましく、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジンがより好ましく、トリエチルアミン、N−メチルピペリジンが更に好ましい。このような反応促進剤は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。このように、反応促進剤を用いて加熱することにより工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施す場合、その反応促進剤の使用量は、前記テトラカルボン酸二無水物と前記芳香族ジアミンの総量(合計量)100質量部に対して0.01〜10質量部とすることが好ましく、0.05〜2質量部とすることがより好ましい。
【0147】
なお、前述のように反応促進剤を用いて加熱することにより工程(Ia)と工程(Ib)とを同時に施してポリイミドを形成する場合、例えば、加熱後に得られる反応液(前記ポリイミドを含む反応液)を各種基板の上に塗布して塗膜を形成し、その後、該塗膜から溶媒を除去し、加熱硬化せしめることによりフィルム状の形状としてポリイミドを得ることも可能である。このような加熱硬化工程における加熱条件としては、50〜450℃(より好ましくは50〜300℃)の温度条件で1〜5時間加熱する条件とすることが好ましい。このような加熱条件(温度及び時間の条件)が前記下限未満では十分に溶媒を乾燥させることができず、フィルムの耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると末端アミノ基の酸化などの副反応が進行して透明性が低下する場合が生じる傾向にある。
【0148】
このようにして、前記繰り返し単位(A)及び(B)の合計量の割合が全繰り返し単位の総量に対して50モル%以上であり、かつ、前記繰り返し単位(A)の含有割合が全繰り返し単位の総量に対して30モル%以上である上記本発明のポリイミドを得ることができる。
【0149】
〈ポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法〉
上記本発明のポリイミド前駆体樹脂は、繰り返し単位の式中のXの置換基の種類に応じて、1)ポリアミド酸(各繰り返し単位の一般式中のXがいずれも水素原子)、2)ポリアミド酸エステル(各繰り返し単位の一般式中のXの少なくとも一部がアルキル基)、3)ポリアミド酸シリルエステル(各繰り返し単位の一般式中のXの少なくとも一部がアルキルシリル基)、に分類することができる。そこで、本発明のポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法として好適に採用することが可能な方法については、ポリイミド前駆体樹脂の分類1)〜3)ごとに分けて説明する。なお、本発明のポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
【0150】
1)ポリアミド酸
以下、前記ポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法を簡単に説明する。このようなポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法としては、特に制限されないが、上記本発明のポリイミドの製造方法において説明した工程(Ia)を含む方法とすることが好ましい。すなわち、このようなポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法としては、重合溶媒の存在下、前記テトラカルボン酸二無水物と、前記芳香族ジアミンとを反応させて、上記ポリアミド酸を得る方法とすることが好ましい。なお、このような反応の条件等は上述の通りである。
【0151】
2)ポリアミド酸エステル
前記ポリアミド酸エステルを製造するために好適に利用することが可能な方法を以下において説明する。すなわち、先ず、前記テトラカルボン酸二無水物を任意のアルコールと反応させ、ジエステルジカルボン酸を得た後、塩素化試薬(例えば、チオニルクロライド、オキサリルクロライド等)と反応させ、ジエステルジカルボン酸クロライド(テトラカルボン酸の誘導体)を得る。このようにして得られたジエステルジカルボン酸クロライドを含有する単量体成分(上記本発明のテトラカルボン酸二無水物に由来する前記ジエステルジカルボン酸クロライドと、場合により上記本発明のテトラカルボン酸二無水物を含む成分)と、前記芳香族ジアミンとを−20〜120℃(より好ましくは−5〜80℃)の範囲で1〜72時間攪拌して反応させることで、各繰り返し単位の式中のXの少なくとも一部がアルキル基であるポリイミド前駆体樹脂が得られる。なお、撹拌時の温度を80℃以上として反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し易くなり、また、熱によりイミド化が進行する場合も生じ得ることから、ポリイミド前駆体樹脂を安定的に製造することが困難となる傾向にある。また、ジエステルジカルボン酸と前記芳香族ジアミンとを、リン系縮合剤やカルボジイミド縮合剤などを用いて脱水縮合することによっても、簡便に、前記ポリアミド酸エステルからなるポリイミド前駆体樹脂が得られる。このような方法で得られるポリアミド酸エステルからなるポリイミド前駆体樹脂は、安定なため、水やアルコールなどの溶剤を加えて再沈殿などの精製を行うこともできる。
【0152】
3)ポリアミド酸シリルエステル
以下、前記ポリアミド酸シリルエステルを製造するために好適に利用することが可能な方法を、いわゆる間接法と直接法とに分けて簡単に説明する。
【0153】
<間接法>
ポリアミド酸シリルエステルを製造するために好適に利用することが可能な方法としては、以下のような方法(間接法)を採用できる。すなわち、先ず、前記芳香族ジアミンとシリル化剤を反応させ、シリル化された前記芳香族ジアミンを得る。なお、必要に応じて、蒸留等によりシリル化された芳香族ジアミンの精製を行ってもよい。次に、脱水された溶剤中に、シリル化された芳香族ジアミン、又は、シリル化された芳香族ジアミンと芳香族ジアミン(シリル化されていないもの)との混合物を溶解させて溶液を得る。次いで、前記溶液を撹拌しながら、該溶液中に前記テトラカルボン酸二無水物を徐々に添加し、0〜120℃(好ましくは5〜80℃)の範囲で1〜72時間撹拌することで、各繰り返し単位の式中のXの少なくとも一部がアルキルシリル基であるポリアミド酸シリルエステルからなるポリイミド前駆体樹脂を得ることができる。なお、このような撹拌時の温度を80℃以上として反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し易くなり、また、熱によりイミド化が進行する場合も生じ得ることから、ポリイミド前駆体樹脂を安定的に製造することが困難となる傾向にある。
【0154】
なお、前記シリル化剤としては、塩素原子を含有しないシリル化剤を用いることが好ましい。このように塩素原子を含有しないシリル化剤を用いることにより、シリル化された芳香族ジアミンを精製する必要がなくなるため、より工程を簡略化することが可能となる。このような塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。また、前記シリル化剤としては、フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
【0155】
また、芳香族ジアミンのシリル化反応には、反応を促進するために、ピリジン、ピペリジン、トリエチルアミンなどのアミン系触媒を用いることができる。このようなアミン系触媒はポリイミド前駆体樹脂の重合触媒としてもそのまま使用することができる。
【0156】
<直接法>
先ず、上述の「1)ポリアミド酸」の欄において説明したポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法(前記工程(I)を施す方法)を実施し、反応後に得られた反応液をそのままポリアミド酸溶液として調製する。その後、得られたポリアミド酸溶液に対してシリル化剤を混合し、0〜120℃(好ましくは5〜80℃)の範囲で1〜72時間撹拌することで、前記ポリアミド酸シリルエステルからなるポリイミド前駆体樹脂を得ることができる(直接法)。なお、撹拌時の温度を80℃以上として反応させる場合、分子量が重合時の温度履歴に依存して変動し易くなり、また、熱によりイミド化が進行する場合も生じ得ることから、ポリイミド前駆体樹脂を安定的に製造することが困難となる傾向にある。このような直接法に用いることが可能なシリル化剤としても、シリル化されたポリアミド酸、もしくは、得られたポリイミドを精製する必要がないため、塩素原子を含有しないシリル化剤を用いることが好ましい。このような塩素原子を含まないシリル化剤としては、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが挙げられる。また、このようなシリル化剤としては、フッ素原子を含まず低コストであることから、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
【0157】
以上、説明した本発明のポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法はいずれも有機溶媒中で実施することが可能である。このようにして、有機溶媒中でのポリイミド前駆体樹脂を製造した場合には、本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液(ポリイミド前駆体樹脂のワニス)を容易に得ることができる。
【0158】
以上、本発明のポリイミド及びポリイミド前駆体樹脂を製造するために好適に利用することが可能な方法について説明したが、次に、本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液について説明する。
【0159】
[ポリイミド前駆体樹脂溶液]
本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液は、上記本発明のポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸)と有機溶媒とを含むものである。
【0160】
このようなポリイミド前駆体樹脂溶液(樹脂溶液:ワニス)に用いる有機溶媒としては、前述の重合溶媒と同様のものを好適に利用することができる。そのため、本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液(好ましくはポリアミド酸溶液)は、上述の本発明のポリイミド前駆体樹脂を製造するための方法(例えば、ポリイミド前駆体樹脂がポリアミド酸の場合には、ポリアミド酸を製造するために好適に利用することが可能な方法(前記工程(Ia)を施す方法))を実施して、反応後に得られた反応液をそのままポリイミド前駆体樹脂溶液(例えば、ポリイミド前駆体樹脂がポリアミド酸の場合にはポリアミド酸溶液)とすることで調製してもよい。
【0161】
このようなポリイミド前駆体樹脂溶液(好ましくはポリアミド酸溶液)における前記ポリイミド前駆体樹脂(好ましくはポリアミド酸)の含有量は特に制限されないが、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満ではポリイミドフィルムの製造が困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、同様にポリイミドフィルムの製造が困難になる傾向にある。なお、このようなポリイミド前駆体樹脂溶液(好ましくはポリアミド酸溶液)は、上記本発明のポリイミドの製造に好適に利用することができ、各種形状のポリイミドを製造するために好適に利用できる。例えば、このようなポリイミド前駆体樹脂溶液(好ましくはポリアミド酸溶液)を各種基板の上に塗布し、これをイミド化して硬化することで、容易にフィルム形状のポリイミドを製造することもできる。
【0162】
以上、本発明のポリイミド前駆体樹脂溶液について説明したが、次に、本発明のポリイミド溶液について説明する。
【0163】
[ポリイミド溶液]
本発明のポリイミド溶液は、上記本発明のポリイミドと有機溶媒とを含有するものである。
【0164】
このようなポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、前述の重合溶媒と同様のものを好適に利用することができる。また、本発明のポリイミド溶液は、上述の本発明のポリイミドの製造方法を実施して得られるポリイミドが製造時に用いた重合溶媒(有機溶媒)に十分に溶解するものである場合には、反応後に得られた反応液をそのままポリイミド溶液としてもよい(例えば、有機溶媒(重合溶媒)として、得られるポリイミドを十分に溶解可能なものを用いて、その溶媒中でポリイミドを形成することにより、反応後に得られた反応液をそのままポリイミド溶液とすることが可能である。)。
【0165】
このように、本発明のポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、前述の重合溶媒において説明したものと同様のものを好適に利用することができる。なお、本発明のポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、例えば、前記ポリイミド溶液を塗工液として利用した場合の溶媒の蒸散性や除去性の観点から、沸点が200℃以下のハロゲン系溶剤(例えば、ジクロロメタン(沸点40℃)、トリクロロメタン(沸点62℃)、四塩化炭素(沸点77℃)、ジクロロエタン(沸点84℃)、トリクロロエチレン(沸点87℃)、テトラクロロエチレン(沸点121℃)、テトラクロロエタン(沸点147℃)、クロロベンゼン(沸点131℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点180℃)等)を利用してもよい。
【0166】
また、このようなポリイミド溶液に用いる有機溶媒としては、溶解性、成膜性、生産性、工業的入手性、既存設備の有無、価格といった観点から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、シクロペンタノンが好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素がより好ましく、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、このような有機溶媒は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
【0167】
また、このようなポリイミド溶液は、各種の加工品を製造するための塗工液等として好適に利用することも可能である。例えば、フィルムを形成する場合、上記本発明のポリイミド溶液を塗工液として利用して、これを基材上に塗工して塗膜を得た後、溶媒を除去することで、ポリイミドフィルムを形成してもよい。このような塗工方法は特に制限されず、公知の方法(スピンコート法、バーコート法、ディップコート法など)を適宜利用することができる。
【0168】
このようなポリイミド溶液においては、前記ポリイミドの含有量(溶解量)は特に制限されないが、1〜75質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。このような含有量が前記下限未満では、製膜等に利用した場合に成膜後の膜厚が薄くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると一部が溶媒に不溶となる傾向にある。さらに、このようなポリイミド溶液には、使用目的等に応じて、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、核剤、樹脂添加剤(フィラー、タルク、ガラス繊維など)、難燃剤、加工性改良剤・滑材等の添加剤を更に添加してもよい。なお、これらの添加剤としては、特に制限されず、公知のものを適宜利用することができ、市販のものを利用してもよい。
【実施例】
【0169】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0170】
先ず、以下に示す実施例等において得られた化合物やポリイミドの特性の評価方法について説明する。
【0171】
<IR測定及びNMR測定>
各実施例や各比較例で採用するIR測定及びNMR測定には、測定装置として、それぞれ、IR測定機(日本分光株式会社製FT/IR−4100)、NMR測定機(VARIAN社製、商品名:UNITY INOVA−600)を用いた。
【0172】
<全光線透過率の測定>
ポリイミドの全光線透過率の値(単位:%)は、各実施例等で得られたポリイミド(フィルム形状のポリイミド)をそのまま測定用の試料として用い、測定装置として日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH−5000」を用い、JIS K7361−1(1997年発行)に準拠した測定を行うことにより求めた。
【0173】
<5%重量減少温度(Td5%)の測定>
ポリイミドの5%重量減少温度は、各実施例等で得られたポリイミドから、それぞれ2〜4mgの試料を準備し、これをアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置として熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「TG/DTA7200」)を使用して、窒素ガス雰囲気下、走査温度を30℃から550℃に設定し、昇温速度10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めた。
【0174】
<溶解性の評価>
各実施例等で得られたポリイミドからそれぞれフィルム状の試料100mgを準備し、該試料をそれぞれ、蓋付サンプル瓶(容量5ml)内に予め導入されたN−メチル−2−ピロリドン(NMP)900mgに対して添加した。このようにして前記試料をNMP中に添加した後、大気圧、室温(25℃)の条件下において、NMP内に試料が完全に溶解するまでの時間をそれぞれ測定して、溶解性を以下の基準A〜Fにより評価した。
〈評価基準〉
A :6時間以内に試料の全量が溶解した。
B :12時間以内に試料の全量が溶解した。
C :24時間以内に試料の全量が溶解した。
D :1週間以内に試料の全量が溶解した。
E :試料の全量が溶解するのに1週間以上を要した。
F :試料が膨潤し、必ずしも十分に溶解しなかった。
G :不溶であった。
【0175】
(実施例1)
〈原料化合物の調製工程〉
特開2015−137235号の実施例1に開示されている方法と同様の方法を採用して、下記式(A):
【0176】
【化16】
【0177】
で表される化合物(5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−5’’−ノルボルネン)を調製した。以下、上記式(A)で表される化合物を、便宜上、単に「原料化合物」と称する。
【0178】
〈テトラカルボン酸テトラメチルエステルの調製工程〉
1000mLのガラス製のオートクレーブ(耐圧ガラス工業製の商品名「ハイパーグラスターTEM−V型」)の容器に、メタノール(820mL)、CuCl(II)(81.6g、454mmol)、前記原料化合物(35.6g、148mmol)、及び、Pd(OAc)(NO)(166mg、Pd換算で0.74mmol)を添加して混合液を得た。なお、Pd(OAc)(NO)は2005年に発行されたDalton Trans(vol.11)の第1991頁に記載された方法を採用して製造した。
【0179】
次いで、前記容器の内部に存在する混合液に対してガラス管を介してガスをバブリングできるようにガラス管を配置した。その後、前記容器を密閉して内部の雰囲気ガスを窒素で置換した。その後、前記容器に真空ポンプを繋ぎ、容器内を減圧した(容器内の圧力:0.015MPa)。次に、前記混合液中にガラス管を介して一酸化炭素を前記原料化合物に対して0.015モル当量/分の割合(流量)でバブリングして供給しながら、温度を25〜30℃に維持するようにしつつ、容器内の圧力を0.13MPaに維持するようにして、前記混合液を5時間撹拌した後、さらに、温度:40℃の条件下、容器内の圧力を0.13MPaに維持するようにして3時間撹拌し、反応液を得た。次いで、前記容器の内部から一酸化炭素を含む雰囲気ガスを除き、前記反応液をエバポレーターで濃縮することにより前記反応液中からメタノールを除去(留去)して、反応生成物を得た(収量65.4g、収率92.6%、重合物0.90%:かかる収量及び収率は、前記反応生成物を少量サンプリングしたものから金属塩を除去処理した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Agilent社製、1200シリーズ)分析による測定により求めた値であり、重合物の割合はGPC分析による測定により求めた値である。)。
【0180】
その後、前記反応生成物を別の容器(容量2000mLの撹拌機能付きガラス容器)に移して、前記反応生成物に対して、トルエン(1200mL)を加えて80℃の温度条件で1時間激しく撹拌することにより、反応生成物をトルエンで抽出し、トルエン抽出液(反応生成物の濃度:8.4質量%)を得た。次いで、前記トルエン抽出液の温度を80℃に保ったまま、前記トルエン抽出液から、トルエンに溶解しないCuCl及びPd(OAc)(NO)を、桐山ロートを用いた減圧ろ過によって分離した。
【0181】
次に、このようにしてCuCl及びPd(OAc)(NO)を分離した後のトルエン抽出液(ろ液)を80℃の温度条件下において5質量%の塩酸(400ml)で2回洗浄した。次いで、このようにして塩酸で洗浄した前記トルエン抽出液を、80℃の温度条件下において、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(400ml)により1回洗浄した。次に、洗浄後に得られたトルエン抽出液をフィルターでろ過してトルエン抽出液(以下、場合により、かかるフィルターろ過後に得られたトルエン抽出液を「トルエン抽出液(A)」と称する。)を得た。なお、トルエン抽出液(A)中の反応生成物の濃度は7.9質量%であった。次いで、前記フィルターろ過後のトルエン抽出液(A)を、常圧(0.1MPa)でトルエンの沸点である110℃程度まで加熱することにより濃縮した。このような濃縮操作により総量で900mlのトルエンを留去し、反応生成物の濃度を20質量%に調整した濃縮液(前記トルエン抽出液の濃縮液)を得た。その後、前記濃縮液を室温(25℃)で12時間ほど放冷して、白色結晶を析出させた。
【0182】
次いで、白色結晶を析出させた前記濃縮液から、白色結晶をろ別し、ろ液を回収した。さらに、ろ別した白色結晶を50mLのトルエンで2回かけ洗いを行い、かけ洗い液を回収した。次に、前記ろ液と前記かけ洗い液とを混合した後、その混合液をエバポレーターで濃縮した。このような濃縮工程により、茶色の粘調液が得られた。次いで、得られた粘調液を真空下(圧力:0.5mmHg)、80℃の条件で一昼夜、減圧して溶媒を除去(乾燥)することにより、茶色い固形物(35.3g、収率50%)からなる生成物Aを得た。
【0183】
このようにして得られた生成物Aの構造確認のために、IR測定、NMR(H−NMR)測定を行った。このようにして得られた生成物AのIRスペクトルを図1に示し、H−NMR(CDCl)スペクトルを図2に示す。図1図2に示す結果からも明らかなように、得られた生成物Aは、下記式(B):
【0184】
【化17】
【0185】
で表される化合物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸テトラメチルエステル)であることが確認された。さらに、得られた生成物Aに対してGPC分析を行ったところ、不純物である重合物(前記原料化合物中のノルボルネン環が付加重合した重合物や、複数のノルボルネン環がケト基で結合した重合物の混合物等)の含有量は0.7質量%であった。
【0186】
また、得られた生成物Aに対してHPLC測定を行った(生成物AがGC測定では検出できなかったことから、分子量の大きさの点で低揮発性物質と判断し、GC測定ではなく、HPLC測定を行った)。このようなHPLC測定は、測定装置としてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「1200 Series」を用い、カラムはアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「Eclipse XDB−C18(5μm、直径4.6mm、長さ150mm)」を用い、溶媒はアセトニトリルと蒸留水との混合物(アセトニトリル/蒸留水=70ml/30ml)を用い、溶媒の流速を1ml/min.とし、ダイオードアレイ検出器(DAD)の検出波長を210nmに設定し、温度を35℃とし、生成物Aを溶媒1.5mlに対して1mg添加した試料を調製して行った。また、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量(含有比率)、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量をHPLCの面積比より検量線(標準試料:ジシクロペンタジエン)を用いて算出することにより確認した。HPLC測定の結果を図3に示す。
【0187】
図3に示すHPLC測定の結果からも明らかなように、生成物A(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸テトラメチルエステル)は複数種の異性体の混合物であることが確認された。なお、図3に示すクロマトグラムのチャート(HPLC)において、横軸の約3.1分の位置におけるピークはトルエンのピークであり、横軸の約1.2分のピークはソルベントショックである。このようなクロマトグラムの面積比から、生成物A(複数種の異性体の混合物)は、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量(含有比率)が全異性体の総量に対して50モル%以上となり、かつ、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量が全異性体の総量に対して30モル%以上となっているものであることが分かった。
【0188】
〈テトラカルボン酸二無水物の調製工程〉
先ず、容量が300mLの還流管付きのフラスコ中に、前記生成物A(上記式(B)で表される化合物、分子量476.52)48gを酢酸192g中に溶解させた溶液を添加し、その後、前記溶液中に均一系酸触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH、沸点:162℃)0.38gを添加することにより、反応用の溶液を得た。なお、このような反応用の溶液中において、生成物Aと触媒の官能基のモル比([生成物Aのモル量]:[触媒中の官能基(スルホン酸)のモル量)])は1:0.025であった。
【0189】
次に、前記フラスコ内の雰囲気ガスを窒素に置換した後、窒素気流下、大気圧の条件で前記反応用の溶液をマグネチックスターラを用いて撹拌しながら加熱した。このような加熱により前記フラスコ内の温度を118℃として、還流を0.5時間行った(還流工程)。このような還流工程後、118℃の加熱条件でリービッヒコンデンサーを用いて発生する蒸気を留去すると同時に、滴下漏斗を用いて酢酸をフラスコ内に加えて、フラスコ内の液量が一定になるようにする工程(以下、「工程(i)」と称する。)を施した。なお、このような工程(i)においては、蒸気の留去を開始した後、2時間経過した後から、フラスコ内の液中(反応溶液中)に灰白色の沈殿物が生成されていることが確認された。また、このような工程(i)においては、1時間ごとに、系外に留去した留出液を質量測定とガスクロマトグラフとにより分析して反応の進行の程度を確認した。なお、このような分析により、留出液中には酢酸、酢酸メチル、水が存在することが確認された。また、上述のような工程における留出液の除去速度を測定したところ、留出液の除去される速度(割合)は1時間あたり約35mLであった。そして、このような工程(i)において蒸気の留去を開始した後、8時間経過した後に酢酸メチルの留出が止まったことから、加熱を止めて、前記工程(i)を終了した。なお、留去開始から8時間経過後までの酢酸メチルの留出量(回収量であり飛散分除く)は、26.4g(88%)であった。また、酢酸メチルの留出が止まるまでの間(反応を終了させるまでの間)に留去された酢酸の量は170gであった。このようにして、工程(i)を施した後に、一昼夜室温で放置した後、ろ紙を用いた減圧ろ過を行って灰白色の固形分を得た。そして、得られた灰白色の固形分に対して、−10℃に冷やした酢酸エチル(30mL)で5回洗浄(かけ洗い)し、80℃で終夜(15時間)減圧乾燥する洗浄・乾燥工程を施すことにより、31.0gの灰白色粉末からなる生成物Bを得た。このようにして得られた生成物Bの構造確認のために、IR測定、NMR(H−NMR)測定及びHPLC測定を行った。なお、HPLC測定は、検量線の標準試料をナフタレンとした以外は、上記生成物Aに対して行った測定方法と同様の方法を採用した。
【0190】
このようにして得られた生成物BのIRスペクトルを図4に示し、H−NMR(CDCl)スペクトルを図5に示す。また、HPLC測定の結果を図6に示す。図4〜6に示す結果からも明らかなように、得られた生成物Bは、下記式(C):
【0191】
【化18】
【0192】
で表される化合物(ノルボルナン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−ノルボルナン−5,5’’,6,6’’−テトラカルボン酸二無水物:CpODA)であることが確認された。また、図6に示すHPLCの測定結果からも明らかなように、生成物Bは複数種の異性体の混合物であることが確認された(2.7分のシグナルは不明ピーク)。このように、生成物BはCpODAの異性体混合物であることが分かった。なお、このようにして得られた化合物(酸二無水物)に関して、使用した原料化合物の仕込み量から算出される生成物の理論量に対する収率を求めたところ、収率は80%であることが確認された。
【0193】
〈ガスクロマトグラフィーによる測定〉
このようにして得られた生成物B(灰白色粉末)の一部を採取して、ガスクロマトグラフィーによる測定(GC測定およびGC−MS測定)を行った。このような測定に際しては、測定試料として生成物Bを0.1質量%の割合で含むジメチルアセトアミド溶液(以下、単に「DMAc溶液」と称する)を準備し、測定装置としてガスクロマトグラフ質量分析装置(Agilent社製の商品名「7890A」)を用い、移動相の気体(キャリーガス)としてヘリウムを用い、固定相(カラム)としてRESTEX Rtx−5 Amine(30m)を用い、MS検出器としてAgilent社製の商品名「G4513A」を用い、インジェクターとしてAgilent社製G4513Aを用いて、前記インジェクターで前記測定試料のDMAc溶液を1μL注入し、前記キャリーガスであるヘリウムの流量を10mL/分(constant)とし、温度条件は50℃(初期温度)で1分間保持した後に昇温速度を10℃/分として50℃〜300℃まで昇温し、300℃で25分間保持する条件とし、GC測定およびGC−MS測定することにより、前記生成物Bのクロマトグラム(分離像)を求めた後、該クロマトグラム中の各ピークの面積をそれぞれ求めて、面積の合計(総面積)に占める各ピークの面積の比率に基づいて、各ピークに由来する異性体の含有割合を算出して、前述の異性体の含有割合をそれぞれ求めた。得られた結果として生成物Bのクロマトグラム(分離像)を図7に示す。
【0194】
なお、図7に示すクロマトグラムにおいて、得られた生成物B(灰白色粉末)からは4種のピークが確認され、それらのGC−MS測定で同位体イオンピーク(M+1)が385(酸二無水物:分子量384.38)であることから、生成物Bは同じ分子量の異性体を含むものであることが分かった。また、図7に示すガスクロマトグラムの各ピークの面積比から、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量は60.4モル%であり、シス−エキソ−エンド異性体の含有量は28.7モル%であり、シス−エキソ−エキソ異性体及びトランス−エキソ−エキソ異性体の合計量が0.9モル%であり、トランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体の合計量が10.0モル%であることが確認された(なお、かかる含有量の割合(モル%)はCpODAの立体異性体の総量に対する比率である)。このように、生成物Bは、上記式(C)で表される化合物であり、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量が89.1モル%であり、かつ、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量が60.4モル%である異性体の混合物であることが確認された。得られた結果を表1に示す。なお、上記式(C)で表される化合物の6種の立体異性体の構造を以下に示す。
【0195】
【化19】
【0196】
(実施例2)
テトラカルボン酸二無水物の調製工程で採用している洗浄・乾燥工程を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして生成物C(CpODA)を調製した。すなわち、テトラカルボン酸二無水物の調製工程において、得られた灰白色の固形分に対して施す洗浄・乾燥工程を、−10℃に冷やした酢酸エチル(30mL)で5回洗浄(かけ洗い)し、80℃で終夜(15時間)減圧乾燥する工程から、30mlの酢酸(20℃)で1度洗浄(かけ洗い)した後、30mlの酢酸エチル(20℃)で5回洗浄(かけ洗い)し、80℃で終夜(15時間)減圧乾燥する工程に変更した以外は、実施例1と同様にして、25.1gの灰白色粉末からなる生成物Cを得た(収率65%)。このようにして得られた生成物Cの構造確認のために、IR測定及びNMR(H−NMR)測定を行った結果、得られた生成物Cは、式(C)で表される化合物(CpODA)であることが確認された。
【0197】
また、得られた生成物Cに対して、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーによる測定を行ったところ、ガスクロマトグラムの各ピークの面積比から、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量は69.4モル%であり、シス−エキソ−エンド異性体の含有量は13.7モル%であり、シス−エキソ−エキソ異性体及びトランス−エキソ−エキソ異性体の合計量が0.2モル%であり、トランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体の合計量が16.7モル%であることが確認された。このように、生成物Cは、上記式(C)で表される化合物(CpODA)であり、トランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量が83.1モル%であり、かつ、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量が69.4モル%である異性体の混合物であることが確認された(なお、かかる含有量の割合(モル%)はCpODAの立体異性体の総量に対する比率である)。このような測定の結果と、実施例1で得られた結果とを対比すると、CpODAを調製した後の洗浄・乾燥工程の違いによっても、CpODAの異性体の比率を変更することが可能であることが分かった。
【0198】
(比較例1)
特開2015−137235号の実施例1に開示されている方法と同様の方法を採用して、上記式(A)で表される化合物からなる原料化合物を製造した。かかる原料化合物に対して、国際公開第2011/099518号の実施例1及び2に記載の工程と同様の工程を施して、上記式(C)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)である生成物Dを得た。すなわち、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−5’’−ノルボルネンとして前記原料化合物を利用する以外は、国際公開第2011/099518号の実施例1及び2に記載の工程と同様の工程を採用して生成物Dを得た。
【0199】
なお、得られた生成物Dに対して、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーによる測定を行ったところ、ガスクロマトグラムの各ピークの面積比から、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量は25.2モル%であり、シス−エキソ−エンド異性体の含有量は16.3モル%であり、シス−エキソ−エキソ異性体及びトランス−エキソ−エキソ異性体の合計量が0.7モル%であり、トランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体の合計量が57.8モル%であることが確認された(なお、かかる含有量の割合(モル%)はCpODAの立体異性体の総量に対する比率である。)。このように、生成物DはCpODAの異性体混合物であった。得られた結果を表1に示す。
【0200】
(比較例2)
特開2015−137235号の実施例1に開示されている方法と同様の方法を採用して、上記式(A)で表される化合物からなる原料化合物を製造した。かかる原料化合物に対して、国際公開第2014/034760号の合成例2及び実施例1に記載のモノマー合成工程に記載されている工程と同様の工程を施して、上記式(C)で表される化合物(テトラカルボン酸二無水物)である生成物Eを得た。すなわち、5−ノルボルネン−2−スピロ−α−シクロペンタノン−α’−スピロ−2’’−5’’−ノルボルネンとして前記原料化合物を用いた以外は国際公開第2014/034760号の合成例2及び実施例1に記載のモノマー合成工程に記載されている工程と同様の工程を採用して生成物Eを得た。
【0201】
なお、得られた生成物Eに対して、実施例1と同様にしてガスクロマトグラフィーによる測定を行ったところ、ガスクロマトグラムの各ピークの面積比から、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量は1.4モル%であり、シス−エキソ−エンド異性体の含有量は1.0モル%であり、シス−エキソ−エキソ異性体及びトランス−エキソ−エキソ異性体の合計量が0.3モル%であり、トランス−エンド−エンド異性体及びシス−エンド−エンド異性体の合計量が97.3モル%であることが確認された(なお、かかる含有量の割合(モル%)はCpODAの立体異性体の総量に対する比率である。)。このように、生成物EはCpODAの異性体混合物であった。得られた結果を表1に示す。
【0202】
【表1】
【0203】
(実施例3)
先ず、窒素雰囲気下において、攪拌機および還流冷却管(ジムロート)の付いた100mLの三口フラスコ内に、芳香族ジアミンとして2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン(m−tol:メタトリジン)を2.123g(10mmol)導入するとともに、テトラカルボン酸二無水物として生成物B(実施例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)導入することにより、前記三口フラスコ内に芳香族ジアミンと前記テトラカルボン酸二無水物とを導入した。
【0204】
次に、前記三口フラスコ内に、有機溶媒としてジメチルアセトアミド(N,N−ジメチルアセトアミド)を2.784g及びγ−ブチロラクトンを11.138g導入するとともに、反応促進剤であるトリエチルアミンを50mg(0.5mmol)導入することにより、前記芳香族ジアミン(m−tol)と、前記テトラカルボン酸二無水物(前記生成物B)と、前記有機溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド及びγ−ブチロラクトン)と、反応促進剤(トリエチルアミン)とを混合した混合液を得た。
【0205】
次いで、このようにして得られた混合液を、窒素雰囲気下、180℃の温度条件で3時間加熱しながら撹拌することにより、粘性のある均一な淡黄色の反応液(ポリイミド溶液)を得た。このようにして、前記芳香族ジアミン(m−tol)と前記テトラカルボン酸二無水物(前記生成物B)とに由来するポリイミドを加熱工程により調製し、反応液(ポリイミドの溶液)を得た。なお、このような加熱により、先ず、前記芳香族ジアミンと、前記テトラカルボン酸二無水物との反応が進行してポリアミド酸が形成され、続いて、そのイミド化が進行してポリイミドが形成されたことは明らかである。このようにして得られたポリイミド溶液を用いて、ポリイミドの固有粘度[η]を測定したところ、ポリイミドの固有粘度[η]は0.43dL/gであった。
【0206】
次に、前記反応液をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、前記塗膜から溶媒を蒸発させて除去した。このような溶媒除去処理後、前記塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に300℃の温度条件(焼成温度条件)で1時間加熱して、前記塗膜を硬化せしめ、前記ガラス基板上にポリイミドからなるフィルムを形成した。次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであった。
【0207】
なお、このようにして得られたフィルムを形成する化合物の分子構造を同定するため、IR測定機(日本分光株式会社製、商品名:FT/IR−4100)を用いて、IRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1700cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表2に示す。
【0208】
(比較例3)
先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、十分に乾燥させた前記三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換して、前記三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、前記三口フラスコ内に、m−tolを2.1230g(10mmol)添加した後、更に、N,N−ジメチルアセトアミドを16.336g添加して、攪拌することにより、前記N,N−ジメチルアセトアミド中に芳香族ジアミン(m−tol)を溶解させて溶解液を得た。
【0209】
次に、前記溶解液を含有する三口フラスコ内に、窒素雰囲気下、テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)を1.9611g(10mmol)添加した後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間攪拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸を形成した。なお、かかる反応液(ポリアミド酸溶液)の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるジメチルアセトアミド溶液を調製し、反応中間体であるポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.45dL/gであった。
【0210】
次に、前記反応液をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、前記塗膜から溶媒(ジメチルアセトアミド)を蒸発させて除去した。このような溶媒除去処理後、前記塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に300℃の温度条件(焼成温度条件)で1時間加熱して、前記塗膜を硬化せしめ、前記ガラス基板上にポリイミドからなるフィルムを形成した。次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであった。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表2に示す。
【0211】
【表2】
【0212】
(実施例4)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を3.2024g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.32dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1707cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表3に示す。
【0213】
(実施例5)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を3.2024g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物として生成物C(実施例2で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.40dL/gであった。このようにして得られたポリイミドからなるフィルムに対してIR分析を行ったところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1707cm−1に観察されることから該フィルムは確かにポリイミドからなるフィルムであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物C)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して83.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して69.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表3に示す。
【0214】
(比較例4)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにTFMBを3.2024g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.37dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表3に示す。
【0215】
(比較例5)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにTFMBを3.2024g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.13dL/gであった。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表3に示す。
【0216】
【表3】
【0217】
(実施例6)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)を2.9234g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.43dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1703cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表4に示す。
【0218】
(比較例6)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにTPE−Rを2.9234g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.50dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表4に示す。
【0219】
(比較例7)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにTPE−Rを2.9234g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.25dL/gであった。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表4に示す。
【0220】
【表4】
【0221】
(実施例7)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(APB−N)を2.9234g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.27dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1704cm−1cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表5に示す。
【0222】
(比較例8)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(2.1230mmol)用いる代わりにAPB−Nを2.9234g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.34dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表5に示す。
【0223】
【表5】
【0224】
(実施例8)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)を2.0024g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.42dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1700cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表6に示す。
【0225】
(実施例9)
先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、十分に乾燥させた前記三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換して、前記三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、前記三口フラスコ内に、DDEを2.0024g(10mmol)添加した後、更に、N,N−ジメチルアセトアミドを23.385g添加して、攪拌することにより、前記N,N−ジメチルアセトアミド中に芳香族ジアミン(DDE)を溶解させて溶解液を得た。
【0226】
次に、前記溶解液を含有する三口フラスコ内に、窒素雰囲気下、テトラカルボン酸二無水物として生成物B(実施例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)添加した後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間攪拌して反応液を得た。このようにして反応液中にポリアミド酸を形成した。なお、かかる反応液(ポリアミド酸溶液)の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるジメチルアセトアミド溶液を調製し、反応中間体であるポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.59dL/gであった。なお、このようなポリアミド酸は、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、Xがいずれも水素原子である上記一般式(4)及び(5)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(4)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリアミド酸であることは明らかである。
【0227】
次に、前記反応液をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上にスピンコートすることにより、ガラス板上に塗膜を形成した。その後、前記塗膜の形成されたガラス基板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置して、前記塗膜から溶媒(ジメチルアセトアミド)を蒸発させて除去した。このような溶媒除去処理後、前記塗膜の形成されたガラス基板を3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブンに投入し、イナートオーブン内で、窒素雰囲気下、25℃の温度条件で0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に300℃の温度条件(焼成温度条件)で1時間加熱して、前記塗膜を硬化せしめ、前記ガラス基板上にポリイミドからなるフィルムを形成した。次に、このようにして得られたポリイミドコートガラスを、90℃の水中に0.5時間浸漬して、前記ガラス基板からポリイミドフィルムを剥離することによりポリイミドフィルムを回収し、ポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであった。
【0228】
このようにして得られたポリイミドからなるフィルムに対してIR分析を行ったところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1700cm−1に観察されることから該フィルムはポリイミドからなるフィルムであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表6に示す。
【0229】
(比較例9)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにDDEを2.0024g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.72dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表6に示す。
【0230】
【表6】
【0231】
(実施例10)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)を4.3249g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.47dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1704cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表7に示す。
【0232】
(比較例10)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにBAPSを4.3249g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.75dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表7に示す。
【0233】
【表7】
【0234】
(実施例11)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS−M)を4.3249g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.28dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1705cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表8に示す。
【0235】
(比較例11)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにBAPS−Mを4.3249g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.22dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表8に示す。
【0236】
【表8】
【0237】
(実施例12)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)を4.1052g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.46dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1705cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表9に示す。
【0238】
(比較例12)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにBAPPを4.1052g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物D(比較例1で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.71dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物D)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して41.5モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して25.2モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表9に示す。
【0239】
(比較例13)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりにBAPPを4.1052g(10mmol)用い、テトラカルボン酸二無水物としてCBDAを1.9611g(10mmol)用いる代わりに生成物E(比較例2で得られたCpODAの異性体混合物)を3.8438g(10mmol)用いた以外は比較例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。なお、このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、製造時に得られたポリアミド酸の固有粘度[η]は0.51dL/gであった。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物E)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して2.4モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して1.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表9に示す。
【0240】
【表9】
【0241】
(実施例13)
芳香族ジアミンとしてm−tolを2.1230g(10mmol)用いる代わりに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)を3.4845g(10mmol)用いた以外は実施例3と同様にしてポリイミドからなる無色透明フィルム(ポリイミドフィルム)を得た。このようにして得られたポリイミドフィルムの膜厚は13μmであり、ポリイミドの固有粘度[η]は0.31dL/gであった。なお、実施例3と同様にしてIRスペクトルを測定したところ、イミドカルボニルのC=O伸縮振動が1705cm−1に観察されたことから、得られたフィルムを構成する化合物はポリイミドであることが確認された。また、このようなポリイミドは、使用したテトラカルボン酸二無水物(生成物B)の種類から、上記一般式(6)及び(7)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して89.1モル%含有し、かつ、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を全繰り返し単位に対して60.4モル%含有するポリイミドであることは明らかである。このようにして得られたポリイミドの特性の評価結果を表10に示す。
【0242】
【表10】
【0243】
[ポリイミドの特性について]
表1〜9に示す結果からも明らかなように、芳香族ジアミンの種類が同じポリイミド同士を比較すると、本発明のテトラカルボン酸二無水物(実施例1〜2)を利用してポリイミドを形成した場合には、溶媒に対する溶解性がより高度なものとなることが分かった。また、表3〜9に示す結果から、本発明のポリイミドは、テトラカルボン酸として異性体比率の異なる比較例1で得られたCpODA(生成物D)又は比較例2で得られたCpODA(生成物E)を利用して得られたポリイミドと比較しても、溶解性がより高いものとなることが分かった。すなわち、表3〜9に示す結果からは、立体異性体の総量に対してトランス−エキソ−エンド異性体及びシス−エキソ−エンド異性体の合計量が50モル%以上であり、かつ、トランス−エキソ−エンド異性体の含有量が30モル%以上であるという条件を満たすCpODAからなる本発明のテトラカルボン酸二無水物(実施例1〜2)を用いた場合には、上記条件を満たさないCpODAからなるテトラカルボン酸二無水物(比較例1〜2)を利用した場合と比較して、得られるポリイミドの溶解性がより高度なものとなり、上記条件を満たすテトラカルボン酸二無水物を用いることで、最終的に得られるポリイミドの溶解性をより向上させることが可能となることが分かった。また、表1〜10に示す結果からも明らかなように、全光線透過率の値及びTd5%の値から、本発明のテトラカルボン酸二無水物(実施例1〜2)を利用してポリイミドを形成した場合には、得られるポリイミド(本発明のポリイミド)が十分に高度な水準の透明性と耐熱性とを有することも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0244】
以上説明したように、本発明によれば、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なテトラカルボン酸二無水物を提供することが可能となる。また、本発明によれば、十分に高い水準の耐熱性や透明性を有しつつ、より高い溶解性を有するものとすることが可能なポリイミド及びそのポリイミドを含有するポリイミド溶液を提供することが可能となる。さらに、本発明によれば、前記ポリイミドを製造するために好適に利用することが可能なポリイミド前駆体樹脂、及び、そのポリイミド前駆体樹脂を含有するポリイミド前駆体樹脂溶液を提供することが可能となる。このようなポリイミドは溶解性の点で優れるため、その加工性が高く、各種用途に好適に利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7