特開2018-191603(P2018-191603A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-191603遺伝性腎疾患アルポート症候群治療薬に係る評価系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-191603(P2018-191603A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】遺伝性腎疾患アルポート症候群治療薬に係る評価系
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/66 20060101AFI20181109BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20181109BHJP
   C07K 14/78 20060101ALN20181109BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20181109BHJP
【FI】
   C12Q1/66ZNA
   C12N15/00 A
   C07K14/78
   C07K19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-99497(P2017-99497)
(22)【出願日】2017年5月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(1) 平成29年3月6日 ウェブサイト「http://www.myschedule.jp/jps90/search/detail_program/id:460」を通じて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(2) 平成29年3月16日 第90回日本薬理学会年会にて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(3) 平成29年3月6日 ウェブサイト「http://www.myschedule.jp/jps90/search/detail_program/id:143」を通じて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(4) 平成29年3月17日 第90回日本薬理学会年会にて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(5) 平成29年3月30日 ウェブサイト「https://endai.umin.ac.jp/cgi−open−bin/hanyou/lookup/detail.cgi?cond=%27A00018−00058−20644%27&&&parm=a00018−00058」を通じて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(6) 平成29年4月25日 日本腎臓学会誌にて発表 発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書(7) 平成29年5月19日 ウェブサイト「http://kapp.expcp.jp/jsn60/event/1135」を通じて発表
(71)【出願人】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
【住所又は居所】熊本県熊本市中央区黒髪二丁目39番1号
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100128750
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 しのぶ
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 広文
【住所又は居所】熊本県熊本市中央区大江本町5番1号 国立大学法人熊本大学薬学部内
(72)【発明者】
【氏名】首藤 剛
【住所又は居所】熊本県熊本市中央区大江本町5番1号 国立大学法人熊本大学薬学部内
(72)【発明者】
【氏名】メリー・アン・スイコ
【住所又は居所】熊本県熊本市中央区大江本町5番1号 国立大学法人熊本大学薬学部内
(72)【発明者】
【氏名】大町 紘平
【住所又は居所】熊本県熊本市中央区大江本町5番1号 国立大学法人熊本大学薬学部内
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR24
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS22
4B063QS32
4B063QX02
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045CA50
4H045EA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法、およびこれらの方法に使用するためのキットの提供。
【解決手段】IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法であって、(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;を共発現する細胞を培養し、発光基質を加えてインキュベートし、発光強度に応じてIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法であって、
(1)以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)発光強度に応じてIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する;
ことを含む、前記方法。
【請求項2】
(a)〜(c)の融合タンパク質を共発現する細胞が、
(a’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
(b’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;および
(c’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
で細胞をトランスフェクションすることにより得られたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)〜(c)の融合タンパク質が、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖のC末端側にスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖のC末端側にペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖のC末端側にスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
(a)〜(c)の融合タンパク質が、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖のC末端側にペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ペプチドタグが、FLAGタグ(配列番号12)または3×FLAGタグ(配列番号13)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)候補化合物の存在下または不在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度と候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度を比較し;
(4)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度が、候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度よりも亢進した場合、当該候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物として同定する;
ことを含む、前記方法。
【請求項7】
IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法であって、
(1)系列希釈された候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の濃度に応じた発光強度に基づいて、IV型コラーゲンの三量体形成能の促進に関する当該候補化合物の濃度依存性を評価する;
ことを含む、前記方法。
【請求項8】
IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法であって、
(1)複数の候補化合物それぞれについて、当該候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)各候補化合物の存在下での発光強度を測定し、より高い発光強度を示した候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果が高い化合物として評価する;
ことを含む、前記方法。
【請求項9】
IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはアルポート症候群治療薬を評価するためのキットであって、
(a’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
(b’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;および
(c’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
を含む、前記キット。
【請求項10】
IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはアルポート症候群治療薬を評価するためのキットであって、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞、を含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法、IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法およびこれらの方法に使用するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
アルポート症候群はIV型コラーゲン(α3,α4,α5(IV))変異による腎糸球体基底膜以上により進行性の腎炎を発症する遺伝性疾患である。過去の臨床的研究では、基底膜上にIV型コラーゲン発現が少しでも認められる患者が軽症であることが(非特許文献1)、基礎研究においては、モデルマウスに対して遺伝的に欠損したα3(IV)を生後に再発現させることにより病態が改善することが(非特許文献2)報告されており、原因となるα3,α4,α5(IV)タンパク質そのものを標的とした治療への可能性が期待されている。
【0003】
また、本発明者らは野生型と変異型α5(IV)の細胞内安定性には差異はなく、変異体であっても比較的細胞内において安定であることを明らかにしている。これらの結果から、α3,α4,α5(IV)を標的とした治療には、タンパク質の分解抑制等による安定性の促進ではなく、喪失した三量体の形成の促進・回復が重要であることが示唆された。
【0004】
一方、IV型コラーゲンにおけるα3鎖、α4鎖、およびα5鎖の三量体形成を定量的に評価する方法はこれまでに知られてこなかった。また、複合体検出のために免疫沈降法を用いる検出は既に試みられている。しかし、再現性・定量性が低く、三量体形成を促進する化合物スクリーニングに用いることは困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hashimura, Y., et al., Kidney Int., 2014, 85(5): 1208-1213
【非特許文献2】Lin, X., et al., J. Am. Soc. Nephrol., 2014, 25(4): 687-692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法、IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法、およびこれらの方法に使用するためのキットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上に鑑み、本件の発明者らは、IV型コラーゲンの三量体形成に焦点を当て、研究を開始した。鋭意検討の結果、IV型コラーゲンの三量体形成を評価するルシフェラーゼに基づくインビトロのアッセイ系を構築した。当該知見に基づいて、本発明は完成された。
【0008】
すなわち、一態様において、本発明は以下の通りであってよい。
【0009】
[1]IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法であって、
(1)以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)発光強度に応じてIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する;
ことを含む、前記方法。
【0010】
[2](a)〜(c)の融合タンパク質を共発現する細胞が、
(a’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
(b’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;および
(c’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
で細胞をトランスフェクションすることにより得られたものである、上記[1]に記載の方法。
【0011】
[3](a)〜(c)の融合タンパク質が、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖のC末端側にスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖のC末端側にペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖のC末端側にスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
である、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0012】
[4](a)〜(c)の融合タンパク質が、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖のC末端側にペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
である、上記[1]または[2]に記載の方法。
【0013】
[5]ペプチドタグが、FLAGタグ(配列番号12)または3×FLAGタグ(配列番号13)である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の方法。
【0014】
[6]IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)候補化合物の存在下または不在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度と候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度を比較し;
(4)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度が、候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度よりも亢進した場合、当該候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物として同定する;
ことを含む、前記方法。
【0015】
[7]IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法であって、
(1)系列希釈された候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の濃度に応じた発光強度に基づいて、IV型コラーゲンの三量体形成能の促進に関する当該候補化合物の濃度依存性を評価する;
ことを含む、前記方法。
【0016】
[8]IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法であって、
(1)複数の候補化合物それぞれについて、当該候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)各候補化合物の存在下での発光強度を測定し、より高い発光強度を示した候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果が高い化合物として評価する;
ことを含む、前記方法。
【0017】
[9]IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはアルポート症候群治療薬を評価するためのキットであって、
(a’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
(b’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;および
(c’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
を含む、前記キット。
【0018】
[10]IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはアルポート症候群治療薬を評価するためのキットであって、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞、を含む、前記キット。
【発明の効果】
【0019】
本発明のIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法は、定量性があり、再現性の高い方法である。さらには、ハイスループットスクリーニングへの応用も可能であるため、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングするために利用することができる。また、本発明の方法は、IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価するために用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、スプリット型ルシフェラーゼによるタンパク質−タンパク質間相互作用解析によるIV型コラーゲン三量体検出の模式図である。
図2図2は、実施例1のアッセイ系に用いた融合タンパク質の模式図、および当該アッセイ系において野生型IV型コラーゲンの三量体形成を検出した結果を示すグラフである。グラフ中、α3はα3鎖単独発現細胞の培養上清、α5はα5鎖単独発現細胞の培養上清、α35はα3鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清、α345はα3鎖、α4鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清の結果である。
図3図3は、野生型IV型コラーゲンα4鎖の発現量を変化させたときのIV型コラーゲンの三量体形成量を評価した結果を示すグラフである。グラフ中α35はα3鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清、α345はα3鎖、α4鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清の結果である。α4の上に示された三角のバーは、α4鎖の発現量を模式的に示したものである。
図4図4は、ドメイン欠損α5鎖融合タンパク質の模式図、および、ドメイン欠損α5鎖を用いた場合のIV型コラーゲンの三量体形成量を評価した結果を示すグラフである。
図5図5は、α3鎖、α4鎖およびα5鎖をそれぞれ単独で発現する細胞、またはそれら3種の細胞を共培養した場合の、培養上清におけるIV型コラーゲンの三量体形成を評価したグラフである。グラフ中、α3はα3鎖単独発現細胞の培養上清、α4はα4鎖単独発現細胞の培養上清、α5はα5鎖単独発現細胞の培養上清、α3α4α5はα3鎖単独発現細胞、α4鎖単独発現細胞およびα5鎖単独発現細胞の共培養物の培養上清、α345はα3鎖、α4鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清の結果である。
図6図6は、各種α5鎖変異体を用いた場合の三量体形成パターンを示すグラフである。
図7図7は、α3鎖およびα5鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼを融合させた融合タンパク質を用いた場合の評価系の模式図、およびその結果を示すグラフである。グラフ中、α3はα3鎖単独発現細胞の培養上清、α5はα5鎖単独発現細胞の培養上清、α35はα3鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清、α345はα3鎖、α4鎖およびα5鎖を共発現させた細胞の培養上清の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。
【0022】
IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法
本発明は、IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法であって、
(1)以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)発光強度に応じてIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する;
ことを含む前記方法、に関する。
【0023】
野生型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖(以下、本明細書においてα3鎖と記載することがある)は、配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、配列番号1の塩基配列によりコードされる。野生型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖(以下、本明細書においてα4鎖と記載することがある)は、配列番号4のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、配列番号3の塩基配列によりコードされる。野生型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖(以下、本明細書においてα5鎖と記載することがある)は、配列番号6のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、配列番号5の塩基配列によりコードされる。
【0024】
変異型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖は、それぞれ、野生型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖のアミノ酸配列に対して1又は複数の点変異を有するα3鎖、α4鎖およびα5鎖である。野生型のアミノ酸配列に対する点変異は、アルポート症候群の患者において見出された変異、アルポート症候群が疑われる患者において見出された変異、または本願出願後にアルポート症候群と関連すると同定されたまたは関連が疑われる変異から選択してよい。例えば、原因遺伝子がα5鎖をコードする遺伝子(COL4A5)であるX染色体連鎖型のアルポート症候群は、アルポート症候群の約80%を占めるが、アルポート症候群と関連するα5鎖の変異として、G129E、G153D、G227S、G325R、G426R、G475S、G521D、G573D、G594D、G594S、G624D、G650D、L664N、G675S、G796D、G796R、G869R、G911E、S916G、G953V、G1030S、G1107R、G1143D、G1170S、G1220D、G1241C、G1241V、G1244D、G1448R、P1517T、C1567R、R1569Q、M1607I、L1649R、R1683Q等が知られている。α5鎖のG869R変異は、アルポート症候群の患者において最も頻繁に見出される変異であり、好ましい。ここで、点変異は、「XnX」で表記され、nは野生型配列におけるアミノ酸の位置であり、α5鎖については配列番号6のアミノ酸番号に一致する。Xは野生型の配列のアミノ酸を示し、Xは変異後の配列のアミノ酸を示す。XおよびXはいずれも、当業者に周知のアミノ酸の一文字表記で表される。
【0025】
本明細書において、「1又は複数の点変異を有する」とは、α3鎖、α4鎖またはα5鎖のそれぞれについて、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜5個、または1〜3個の点変異を有することを意味する。
【0026】
スプリット型ルシフェラーゼとは、適切な部位で2つに分断したルシフェラーゼのDNA配列によりコードされるルシフェラーゼのタンパク質断片の一対である。これら2つの分断されたタンパク質断片が近接することでルシフェラーゼの活性が回復し、発光基質の発光が回復する現象が知られている。この現象を利用して、会合や多量体形成の観察を行う分子のそれぞれにスプリット型ルシフェラーゼを一対となるように融合させて、ルシフェラーゼによる発光を指標とした結合アッセイを行うことができる。本発明の方法に使用可能なスプリット型ルシフェラーゼに特に制限はないが、例えば、配列番号8のアミノ酸配列を有し配列番号7の塩基配列によりコードされるSmBiT、および配列番号10のアミノ酸配列を有し配列番号9の塩基配列によりコードされるLgBiTの組合せを好適に使用することができる。SmBiTまたはLgBiTのいずれを、α3鎖またはα5鎖に融合させるかは、特に制限はない。好ましくは、α3鎖にSmBiTを融合しα5鎖にLgBiTを融合してもよい。
【0027】
スプリット型ルシフェラーゼの一対は、α3鎖またはα5鎖のC末端側またはN末端側のいずれに融合してもよい。スプリット型ルシフェラーゼの一対を、α3鎖またはα5鎖のN末端側に融合させる場合、α3鎖またはα5鎖のシグナル配列の後の領域にスプリット型ルシフェラーゼの一対が挿入されるように融合タンパク質を調製してもよい。この場合、シグナル配列は、α3鎖またはα5鎖のものを用いてもよいし、分泌タンパク質由来のシグナル配列として知られている他の配列に置換してもよい。シグナル配列として利用可能な他の配列の例としては、Igκリーダー配列(配列番号11によりコードされる配列)、IL−6のシグナル配列等が挙げられる。
【0028】
α4鎖は、ペプチドタグとの融合タンパク質として調製される。ペプチドタグは、当該技術分野において他タンパク質回収や検出を容易にする目的で使用されるタグであれば、特に限定されない。タグの分子量が大きくなると、スプリット型ルシフェラーゼの近接を阻害することが考えられる。この観点から、ペプチドタグの分子量は、15kDa以下、10kDa以下、5kDa以下、3kDa以下であってもよい。例えば、FLAGタグ(配列番号12)または3xFLAGタグ(配列番号13)をペプチドタグとして好適に使用できる。また、ペプチドタグは、α4鎖のC末端側に融合していることが好ましい。
【0029】
本発明の方法において、(a)、(b)、および、(c)の融合タンパク質を共発現する細胞は、(a’)野生型または変異型のα3鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター、(b’)野生型または変異型のα4鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター、および、(c’)野生型または変異型のα5鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター、で細胞をトランスフェクションすることにより得てもよい。
【0030】
(a’)、(b’)および(c’)の発現ベクターは、細胞内に導入された場合に、それぞれ(a)、(b)および(c)の融合タンパク質の発現を可能にするベクターであれば、特に制限はない。発現ベクターの種類は、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質の融合タンパク質を発現させる細胞の種類に応じて当業者が選択することができる。(a)、(b)および(c)の融合タンパク質をコードする遺伝子の、ベクターへのサブクローニングは、当業者に公知の手法により行うことができる。
【0031】
細胞の種類は、特に限定されないが、好ましくはヒト由来の細胞、特に好ましくはヒト腎臓細胞、であってよい。例えば、HEK293T細胞を好適に使用できる。
【0032】
トランスフェクション方法は、発現ベクターの導入により、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質の一過性発現を可能にするものであれば特に限定されず、当業者に公知の手法により行うことができる。
【0033】
上記の方法の工程(1)は、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質を共発現する細胞を培養する工程である。培地および培養条件は、細胞の種類に応じて当業者が適宜選択することができる。利用可能な培地として、例えば、DMEM、MEM、RPMI-1640等が挙げられる。ヒト由来の細胞を用いる場合、血清含有培地を用いることが好ましい。培養条件は、細胞の増殖が可能な条件であれば特に限定されないが、例えば5%CO、37℃であってもよい。培養時間は、24〜72時間であることができるが、最後の24時間はフェノールレッドフリーの培地で培養することが好ましい。
【0034】
工程(1)の培養により、細胞内で(a)、(b)および(c)の融合タンパク質が発現し、これらの融合タンパク質が三量体形成してIV型コラーゲンを形成すると、細胞外に分泌される。
【0035】
上記の方法の工程(2)は、工程(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベーションを行う工程である。細胞内で形成された三量体のIV型コラーゲンは細胞外に分泌されるため、好ましくは工程(1)の培養物は培養上清である。発光基質は、ルシフェラーゼによる反応により発光を呈するものであれば特に限定されない。インキュベーションは、ルシフェラーゼによる反応が進行する温度であれば特に限定されず、30℃〜40℃、好ましくは37℃で行ってもよい。インキュベーション時間は、三量体の量とルシフェラーゼによる反応により生じる発光強度が比例的に相関する範囲内で行われる限り特に制限はないが、例えば10分間以内、15分間以内、20分間以内であってもよい。
【0036】
上記の方法の工程(3)は、工程(2)のインキュベーションにより生じた発光強度に応じてIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する工程である。発光強度の測定は、ルシフェラーゼ活性の測定として当業者に公知の手法により行うことができる。発光強度が強いほど、用いたα3鎖、α4鎖およびα5鎖の三量体形成能が高いと評価できる。例えば、α3鎖、α4鎖またはα5鎖のいずれかについて変異型を用いた場合、野生型のα3鎖、α4鎖またはα5鎖を用いた場合の発光強度と比較することにより、野生型と比較した三量体形成能を評価することができる。
【0037】
IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法
本発明は、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)候補化合物の存在下または不在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度と候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度を比較し;
(4)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度が、候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度よりも亢進した場合、当該候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物として同定する;
ことを含む前記方法、に関する。
【0038】
上記スクリーニング方法において、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質の少なくとも1つは、変異型のα3鎖、α4鎖またはα5鎖を含む。
【0039】
以下の構成についての説明は、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の項目において上述したとおりである。
・野生型または変異型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖
・スプリット型ルシフェラーゼ、
・ペプチドタグ
・(a)、(b)、および、(c)の融合タンパク質を共発現する細胞、当該細胞を調製する際に用いる発現ベクター、および当該細胞の調製方法(トランスフェクション方法)
上記のスクリーニング方法の工程(1)は、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質を共発現する細胞を、候補化合物の存在下または不在下で培養する工程である。培地および培養条件は、候補化合物を添加することを除いて、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の項目において上述したとおりである。
【0040】
候補化合物は、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進するか否かを検討する対象となる化合物である。候補化合物の濃度は特に限定されないが、培地中に1μM〜100mM、5μM〜50mM、7μM〜30mM、10μM〜15mM、の範囲で存在していてもよい。
【0041】
上記のスクリーニング方法の工程(2)は、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の工程(2)について上述したとおりである。
【0042】
上記のスクリーニング方法の工程(3)および(4)は、(3)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度と候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度を比較し、(4)候補化合物の存在下で培養した培養物の発光強度が、候補化合物の不在下で培養した培養物の発光強度よりも亢進した場合、当該候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物として同定する工程である。本発明の方法では、発光強度が高いほど、用いたα3鎖、α4鎖およびα5鎖の三量体形成能の促進効果が高いと評価できる。よって、候補化合物の存在下で発光強度が亢進した場合、当該候補化合物は、用いたα3鎖、α4鎖およびα5鎖の三量体形成能を向上させる効果を有する化合物、すなわちIV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物として同定することができる。
【0043】
また、本発明のスクリーニング方法は、野生型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖を含む融合タンパク質を候補化合物の非存在下で発現させた場合の発光強度と比較することにより、当該候補化合物によりIV型コラーゲンの三量体形成能が促進された結果、どの程度野生型のIV型コラーゲンの三量体形成能に近づけることができるのかについても評価することが可能である。
【0044】
IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法
本発明はIV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法(以下、本発明の評価方法と記載することがある)に関する。
【0045】
本発明の評価方法に関する第一の態様は、
(1)系列希釈された候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)候補化合物の濃度に応じた発光強度に基づいて、IV型コラーゲンの三量体形成能の促進に関する当該候補化合物の濃度依存性を評価する;
ことを含む、前記方法であってよい。
【0046】
本発明の評価方法に関する第二の態様は、
(1)複数の候補化合物それぞれについて、当該候補化合物の存在下で、以下(a)〜(c)の融合タンパク質:
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞を培養し;
(2)(1)の培養物に発光基質を加えてインキュベートし;そして
(3)各候補化合物の存在下での発光強度を測定し、より高い発光強度を示した候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果が高い化合物として評価する;
ことを含む、前記方法であってよい。
【0047】
上記本発明の評価方法方法において、(a)、(b)および(c)の融合タンパク質の少なくとも1つは、変異型のα3鎖、α4鎖またはα5鎖を含む。
【0048】
本発明の評価方法に関して以下の構成についての説明は、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の項目において上述したとおりである。
・野生型または変異型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖
・スプリット型ルシフェラーゼ、
・ペプチドタグ
・(a)、(b)、および、(c)の融合タンパク質を共発現する細胞、当該細胞を調製する際に用いる発現ベクター、および当該細胞の調製方法(トランスフェクション方法)
本発明の評価方法において、候補化合物はIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果を評価する対象となる化合物である。例えば、本発明のスクリーニング方法により同定された化合物であってもよく、アルポート症候群の治療に用いられる化合物であってもよい。候補化合物の濃度は特に限定されないが、『IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法』の項目において上述した濃度範囲で存在していてもよい。
【0049】
本発明の評価方法において、工程(2)は、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の工程(2)について上述したとおりである。
【0050】
上記評価方法の第一の態様では、工程(1)において治療薬を存在させる濃度を変化させることにより、当該候補化合物によるIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果について濃度依存性を評価することができる。具体的には、工程(3)は、候補化合物の濃度に応じた発光強度に基づいて、IV型コラーゲンの三量体形成能の促進に関する当該候補化合物の濃度依存性を評価する工程である。本発明の方法では、発光強度が高いほど、用いたα3鎖、α4鎖およびα5鎖の三量体形成能の促進効果が高いと評価できる。候補化合物の濃度と発光強度の相関を評価することで、IV型コラーゲンの三量体形成能の促進に必要な候補化合物の濃度範囲を評価し、特定することができる。
【0051】
上記評価方法の第二の態様では、複数の候補化合物について並行して評価することにより、候補化合物間でのIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果を比較することができる。具体的には、工程(3)は、各候補化合物の存在下での発光強度を測定し、より高い発光強度を示した候補化合物をIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果が高い化合物として評価する工程である。各候補化合物について発光強度を比較することにより、各候補化合物についてIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果を相対的に評価することができる。
【0052】
上記評価方法の第二の態様においてはまた、複数の候補化合物のそれぞれについてさらに系列希釈された試料を用いてもよい。この場合、複数の候補化合物について、候補化合物間でのIV型コラーゲンの三量体形成能の促進効果を濃度依存性とともに比較することができる。
【0053】
本発明の評価方法に関して、さらに野生型のα3鎖、α4鎖およびα5鎖を含む融合タンパク質を候補化合物の非存在下で発現させた場合の発光強度と比較してもよい。この比較により、候補化合物が存在することで、検討した変異型IV型コラーゲンについて、どの程度野生型のIV型コラーゲンの三量体形成能に近づけることができるのかについて評価することが可能である。
【0054】
本発明のスクリーニング方法および評価方法により、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進することが確認された化合物は、アルポート症候群の治療薬として有用な化合物であり得る。
【0055】
キット
本発明は、IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはIV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価するためのキットであって、
(a’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
(b’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;および
(c’)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を含む発現ベクター;
を含む、前記キットに関する。
【0056】
本発明はまた、IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする、またはIV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価するためのキットであって、
(a)野生型または変異型のIV型コラーゲンα3(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの一方を含む融合タンパク質;
(b)野生型または変異型のIV型コラーゲンα4(IV)鎖とペプチドタグを含む融合タンパク質;および
(c)野生型または変異型のIV型コラーゲンα5(IV)鎖とスプリット型ルシフェラーゼの他方を含む融合タンパク質;
を共発現する細胞、を含む、前記キットに関する。
【0057】
(a’)、(b’)および(c’)の発現ベクター、および(a)、(b)および(c)の融合タンパク質を共発現する細胞については、『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』の項目において上述したとおりである。
【0058】
本発明のキットは、上記の構成品のすべてを1つのキットに含むものであってもよく、また、本発明の方法(IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法、IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法、またはIV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法)に利用する目的のためのキットであれば、上記の構成品の一部を含まないものであってもよい。上記の構成品の一部を含まないキットである場合、実施者が必要な成分を、当該キットに追加して、本願発明の方法を実施することができる。
【0059】
本発明のキットは、さらに、培地および/または発光基質を含む追加の構成品を含んでいてもよい。追加の構成品は、1つのキットとして本発明のキットに含まれていてもよく、または本発明のキットとともに使用することを前提とした別のキットとして提供されてもよい。
【0060】
本発明のキットはまた、本発明の方法を実施するための指示が記載された説明書を含むものであってもよい。当該説明書には、上記『IV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法』、『IV型コラーゲンの三量体形成能を促進する化合物をスクリーニングする方法』、『IV型コラーゲン三量体形成能を促進する化合物の効果を評価する方法』の項目において記載した事項が説明として記載されていてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
実施例1:IV型コラーゲン形成試験
実験材料および実験方法
(1)細胞種
本研究では、HEK293T細胞(Human Embryonic Kidney 293)を使用した。HEK293T細胞は理化学研究所細胞バンクから購入した。
【0063】
(2)細胞培養方法
培養に用いた器具類はすべてオートクレーブ、あるいは乾熱滅菌による滅菌処理を施し、溶液類の調整には注射用水(大塚蒸留水)あるいはElix純水装置システム(MILLIPORE)によって調整した純水を用いた。また、すべての操作はクリーンベンチ内で無菌的に行った。
【0064】
(3)培養液
基礎培養液:HEK293T細胞の培養にはDMEM(Wako)を基礎培養液として用いた。
【0065】
細胞増殖用培養液:基礎培養液に10%ウシ胎仔血清、および、抗生物質(ペニシリンG(100ユニット/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL))を添加したものを細胞増殖用培養液として用いた。
【0066】
(4)培養
細胞は、細胞増殖用培養液で、5%CO、37℃下にて静置培養した。
【0067】
(5)DNAプラスミドの作成(C末端側でスプリット型ルシフェラーゼを融合したα3鎖およびα5鎖)
野生型IV型コラーゲンα3(IV)鎖をコードする核酸(COL4A3/配列番号1)および 野生型IV型コラーゲンα5(IV)鎖をコードする核酸(COL4A5/配列番号5)のそれぞれをnanoBiT plasmid (Promega)へ、野生型 IV型コラーゲンα4(IV)鎖をコードする核酸(COL4A4/配列番号3)はpEB Multi Hyg(Wako)へそれぞれサブクローニングした。ここで、サブクローニング後の発現ベクターは、それぞれ、IV型コラーゲンα3(IV)鎖(本明細書においてα3鎖と記載することがある)のC末端にスプリット型ルシフェラーゼの一方を有する融合タンパク質、IV型コラーゲンα5(IV)鎖(本明細書においてα5鎖と記載することがある)のC末端にスプリット型ルシフェラーゼの他方を有する融合タンパク質、IV型コラーゲンα4(IV)鎖(本明細書においてα4鎖と記載することがある)のC末端にFLAGタグを有する融合タンパク質、をコードする核酸を含むようにサブクローニングされた。
【0068】
各遺伝子とそれを導入したプラスミドの組合せについて以下の表1に示す.
【0069】
【表1】
(6)遺伝子導入法
本実験において各遺伝子を導入するにあたりTransiT-LT1(Mirus)を用い,リポフェクション法を行った。以下にその方法を示す。
【0070】
まず、100μLの無血清培地(Opti-MEM)に適量のTransIT-LT1を加えた。TransIT-LT1はDNA全量:TransIT-LT1溶液の比が1μg:3μLになるように使用した。その後、目的遺伝子(0.5〜2.0μg)を加え、混和後15分反応させた。その後、 サブコンフルエントまで培養した細胞に混合液を滴下し、5%CO、37℃で24〜48時間培養した。
【0071】
(7)IV型コラーゲン三量体形成試験
HEK293T細胞にIV型コラーゲンのα3-SmBiT(pFC36K SmBiT ベクター)、α4-FLAG(pEB multi Hygベクター)、およびα5-LgBiT(pFC34K LgBiTベクター)を上記(6)のリポフェクション法にて一過性に発現させた。遺伝子導入から24時間後,細胞を96ウェルプレート(White flat bottom, Thermo)へ3×10細胞/ウェルで再播種した。再播種12時間後、フェノールレッドフリーの培地(DMEM、10% FBS、200mM 2P-AsA(アスコルビン酸2リン酸))へ交換した。最終培地交換24時間後、培養上清を新たなウェルへ移し、細胞の入ったウェルには新たな培地(DMEM、10% FBS、200mM 2P-AsA)を加えた。各ウェルに、発光試薬である NanoGlo Live Cell Assay System(Promega)を加え、10分間暗所で静置後、発光試薬に添付された説明に従い、発光測定を行った。発光測定は、GloMax Navigator(Promega)にて行った。
【0072】
また、比較のために、H293T細胞にα3-SmBiT(pFC36K SmBiT ベクター)のみ、α5-LgBiT(pFC35K LgBiTベクター)のみ、または、α3-SmBiT(pFC36K SmBiT ベクター)およびα5-LgBiT(pFC34K LgBiTベクター)、をリポフェクション法にて一過性に発現させたものを準備し、同様に培養し、発光測定した。
【0073】
結果
IV型コラーゲンのα3-SmBiT、α4-FLAG、およびα5-LgBiTを発現させた細胞からの培養上清において、ルシフェラーゼ反応による発光が特異的に検出された(図2)。一方、α3-SmBiTのみ、α5-LgBiTのみ、または、α3-SmBiTおよびα5-LgBiTを発現させた細胞からの培養上清については、発光はほとんど検出されなかった。すなわち、細胞内でIV型コラーゲン三量体が形成された結果、細胞外へと分泌されたIV型コラーゲン三量体を検出することができた。この結果は、この評価系によりIV型コラーゲンの三量体形成能の評価が可能であることを示すものである。
【0074】
また、α4-FLAG(pEB multi Hygベクター)について、トランスフェクションするプラスミドの量を変化させることで、IV型コラーゲンα4鎖の発現量を変化させたところ、細胞培養上清において、α4鎖量依存的にIV型コラーゲン三量体が増加することが観察された(図3)。
【0075】
実施例2:ドメイン欠損α5鎖の影響
野生型α5鎖をコードする核酸に代えて、野生型α5鎖のNC1ドメインをコードする核酸(配列番号5の塩基4399〜5073)、または野生型α5鎖のCOLドメインをコードする核酸(配列番号5の塩基124〜4398)を用いて、実施例1と同様に三量体形成能を評価することにより、ドメイン欠損α5鎖の影響を検討した。
【0076】
野生型IVコラーゲンα5鎖は、N末端側より、シグナル配列、COLドメイン、およびNC1ドメインとで構成される。したがって、上記の核酸を用いることでドメイン欠損型のα5鎖を有する融合タンパク質が生成する。NC1ドメインのC末端にスプリット型ルシフェラーゼを有する融合タンパク質をΔCOLとし、COLドメインのC末端にスプリット型ルシフェラーゼを有する融合タンパク質をΔNC1とした。
【0077】
結果を図4に示す。野生型IV型コラーゲンα5鎖を含む融合タンパク質をα3鎖およびα4鎖とともに発現させた場合は、培養上清(分泌物)において三量体が確認されたのに対し、ドメイン欠損型のα5鎖をα3鎖およびα4鎖とともに発現させた場合は三量体が確認されなかった。したがって、α5鎖についてのドメイン欠損は、三量体形成能が低下させることが示された。
【0078】
実施例3:単独発現細胞の共培養では三量体は検出されない
実施例1では、HEK293T細胞にIV型コラーゲンのα3-SmBiT、α4-FLAG、およびα5-LgBiTを一つの細胞内で共発現させ、分泌されたIV型コラーゲンの三量体を検出した。
【0079】
本実施例では、比較のために、α3-SmBiT単独発現細胞、α4-FLAG単独発現細胞、およびα5-LgBiT単独発現細胞を調製し、それら3つの細胞を共培養したものについて、IV型コラーゲン三量体の形成を評価した。α3-SmBiT単独発現細胞、α4-FLAG単独発現細胞、およびα5-LgBiT単独発現細胞の調製は、HEK293T細胞にIV型コラーゲンのα3-SmBiT(pFC36K SmBiT ベクター)、α4-FLAG(pEB multi Hygベクター)、またはα5-LgBiT(pFC34K LgBiTベクター)を、実施例1の(6)のリポフェクション法にて一過性に発現させることにより行った。IV型コラーゲン三量体形成試験は、実施例1と同様に行った。
【0080】
結果を図5に示す。α3-SmBiT、α4-FLAG、およびα5-LgBiTを一つの細胞内で共発現させた場合は、培養上清(分泌物)において三量体が確認されたのに対し、α3-SmBiT単独発現細胞、α4-FLAG単独発現細胞、およびα5-LgBiT単独発現細胞の共培養では三量体はほとんど検出されなかった。この結果は、細胞内で三量体形成しないIV型コラーゲンは細胞外に分泌されないというIV型コラーゲンの細胞内制御機構と一致するものである。
【0081】
実施例4:α5鎖変異体の三量体形成能の評価
野生型α5鎖をコードする核酸に変えて、各種点変異を導入した変異型α5鎖をコードする核酸を用いて、実施例1と同様の方法によりα3-SmBiT、α4-FLAG、および変異型α5-LgBiTを共発現する細胞を調製した。
【0082】
本実施例で検討したIVコラーゲンα5(VI)鎖についての点変異は、G129E、G153D、G227S、G325R、G426R、G475S、G521D、G573D、G594D、G594S、G624D、G650D、L664N、G675S、G796D、G796R、G869R、G911E、S916G、G953V、G1030S、G1107R、G1143D、G1170S、G1220D、G1241C、G1241V、G1244D、G1448R、P1517T、C1567R、R1569Q、M1607I、L1649R、R1683Qである。ここで、点変異は、「XnX」で表記する。nはα5(IV)鎖におけるアミノ酸の位置であり、配列番号6のアミノ酸番号に一致する。Xは野生型の配列のアミノ酸を示し、Xは変異後の配列のアミノ酸を示す。XおよびXはいずれも、当業者に周知のアミノ酸の一文字表記で表される。
【0083】
上記の中でも、G869Rは、アルポート症候群の患者において最も頻繁に見出される変異である。また、G1244Dは、アルポート症候群の遺伝子異常として報告されているが出現頻度は把握されていない。アルポート症候群の症状を発症している患者Aにおいて見出された変異である。
【0084】
結果を図6に示す。アルポート症候群の患者において最も頻繁に見出されるG869R変異を有するα5鎖を含む変異型α5-LgBiTを用いた場合に培養上清において検出された三量体の量は、野生型α5-LgBiTを用いた場合と比較して顕著に低下した。また、G1244D変異を有するα5鎖を含む変異型α5-LgBiTについても、培養上清において検出された三量体の量は、野生型α5-LgBiTを用いた場合と比較して顕著に低下した。G1244D変異については、患者Aの症状と矛盾しないものである。さらに、その他の変異についても、変異ごとに、野生型α5-LgBiTと同程度の三量体形成を示すもの、野生型α5-LgBiTよりも低い三量体形成を示すもの、を評価することができた。これらの結果は、この評価系により、IV型コラーゲン変異体の三量体形成能の評価を定量的に行うことが可能であることを示すものである。
【0085】
実施例5:N末端側でスプリット型ルシフェラーゼを融合したα3鎖およびα5鎖
実施例1においては、α3鎖およびα5鎖のC末端側にスプリット型ルシフェラーゼを融合させた融合タンパク質を発現させる評価系を構築した。
【0086】
本実施例においては、α3鎖およびα5鎖のN末端側にスプリット型ルシフェラーゼを融合させた融合タンパク質を発現させる評価系を構築した。
【0087】
α3鎖のN末端側にSmBiTを有する融合タンパク質(SmBiT-α3)をコードする核酸を含むDNAプラスミドは、シグナル配列欠損COL4A3(配列番号1の塩基127〜5013)をpFN36K SmBiTベクター(Promega)へサブクローニングして調製した。調製されたDNAプラスミドは、5’末端から順に、Igκリーダー配列(配列番号11)、SmBiTをコードする核酸(配列番号7)、シグナル配列欠損COL4A3(配列番号1の塩基127〜5013)を連結した核酸を含み、SmBiT-α3の発現ベクターである。
【0088】
α5鎖のN末端側にLgBiTを有する融合タンパク質(LgBiT-α5)をコードする核酸を含むDNAプラスミドは、シグナル配列欠損COL4A5(配列番号5の塩基124〜5073)をpFN33K LgBiTベクター(Promega)へサブクローニングして調製した。調製されたDNAプラスミドは、5’末端から順に、Igκリーダー配列(配列番号11)、LgBiTをコードする核酸(配列番号9)、シグナル配列欠損COL4A5(配列番号5の塩基124〜5073)を連結した核酸を含み、LgBiT-α5の発現ベクターである。
【0089】
α3鎖およびα5鎖についてのDNAプラスミドを上記のようにして調製したほかは、実施例1と同様に実験を行った。各遺伝子とそれを導入したプラスミドの組合せについて以下の表2に示す。
【0090】
【表2】
結果を図7に示す。本実施例の評価系についても、実施例1の評価系と同様に、IV型コラーゲンの三量体が検出された。この結果は、α3鎖およびα5鎖について、スプリット型ルシフェラーゼはN末端側、C末端側のいずれに融合させてもよいことを示している。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のIV型コラーゲンの三量体形成能を評価する方法は、96ウェルプレート等で評価することが可能であるので、ハイスループットスクリーニングにより、IV型コラーゲンの三量体形成促進・安定化化合物を探索可能である。IV型コラーゲンの三量体形成促進・安定化化合物は、アルポート症候群の治療薬として利用できる可能性があり、医薬開発における強力なツールとなり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]