特開2018-192724(P2018-192724A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱ケミカル株式会社の特許一覧
特開2018-192724グラビアオフセット印刷用凹版及びグラビアオフセット印刷方法
<>
  • 特開2018192724-グラビアオフセット印刷用凹版及びグラビアオフセット印刷方法 図000005
  • 特開2018192724-グラビアオフセット印刷用凹版及びグラビアオフセット印刷方法 図000006
  • 特開2018192724-グラビアオフセット印刷用凹版及びグラビアオフセット印刷方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-192724(P2018-192724A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】グラビアオフセット印刷用凹版及びグラビアオフセット印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/06 20060101AFI20181109BHJP
   B41M 1/10 20060101ALI20181109BHJP
【FI】
   B41N1/06
   B41M1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-99347(P2017-99347)
(22)【出願日】2017年5月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内1−1−1
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
【住所又は居所】山形県山形市小白川町1丁目4−12
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100171022
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 玉乃
(72)【発明者】
【氏名】杉原 理規
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内1丁目1番1号 三菱ケミカル株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幸男
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内1丁目1番1号 三菱ケミカル株式会社内
(72)【発明者】
【氏名】時任 静士
【住所又は居所】山形県米沢市城南四丁目3−16 国立大学法人山形大学工学部内
(72)【発明者】
【氏名】泉 小波
【住所又は居所】山形県米沢市城南四丁目3−16 国立大学法人山形大学工学部内
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113BA03
2H113BB22
2H114AA03
2H114AA10
2H114DA04
2H114DA14
2H114EA04
2H114GA04
(57)【要約】
【課題】グラビアオフセット方式を用いた塗膜形成において、均一なベタ膜を付与することを可能とするオフセット印刷に使用する凹版、及びグラビアオフセット印刷方法を提供すること。
【解決手段】オフセット印刷でコート剤を塗布して、塗膜を形成するための凹版であって、該凹版は、コート剤を充填するパターン領域と、該パターン領域の外周を構成する外周領域を有し、前記パターン領域は、凹部及び凸部を有し、該凸部の頂部は、前記外周領域の水準面よりも低く、かつ、該凸部の頂部と該外周領域の水準面との高さの差Hは、100μm未満であることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版並びに該グラビアオフセット印刷用凹版を用いるグラビアオフセット印刷方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷でコート剤を塗布して、塗膜を形成するための凹版であって、該凹版は、コート剤を充填するパターン領域と、該パターン領域の外周を構成する外周領域を有し、前記パターン領域は、凹部及び凸部を有し、該凸部の頂部は、前記外周領域の水準面よりも低く、かつ、該凸部の頂部と該外周領域の水準面との高さの差Hは、100μm未満であることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項2】
前記凹部の底面の面積は、パターン領域の投影面積の50%以上99.9%以下である請求項1に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項3】
前記凸部の頂部と前記外周領域の水準面との高さの差Hが5〜95μmである請求項1又は2に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項4】
前記凸部を平面視した形状は、クロス形状、ストライプ形状、ハニカム形状又はドット形状のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項5】
前記凹版の材質は、金属、金属酸化物又は樹脂のいずれかである請求項1〜4のいずれか1項に記載のグラビアオフセット印刷用凹版。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のグラビアオフセット印刷用凹版を使用するグラビアオフセット印刷方法であって、コート剤を該凹版からブランケットロールに受理させる受理工程と、該ブランケットロールが受理されたコート剤をコーティング基材に転写する転写工程を有するグラビアオフセット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラビアオフセット印刷用凹版に関し、特に膜厚ムラを抑制することができるグラビアオフセット印刷用凹版に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にグラビアオフセット印刷は、使用する版の形状によって凸版印刷方式、平版印刷方式、凹版印刷方式、スクリーン版印刷方式等の各種印刷方式に分けられる。このうち凹版印刷方式は他の印刷方式に比べて、精密な印刷が可能であり、約20μmの極めて細い幅の画像(線)から1mm程度の太い幅の画像(線)まで印刷することが可能である。
【0003】
グラビアオフセット印刷は、表面に凹状溝からなる所要パターンのセルが形成された凹版を用いる。該凹版の表面にディスペンサー等によってインキを滴下し、スキージによって凹版のセル内にインキを均一に充填する。次いで、凹版の表面上で転写用ロールを転がすことにより、凹版のセル内のインキを転写用ロールの表面に一旦転写する。次に、インキが転写された転写用ロールを被印刷基板上で転がすことにより、ロール表面のインキを被印刷基板に転写させ、印刷を行う方法である。
【0004】
グラビアオフセット印刷の従来技術として、例えば、特許文献1には、印刷開始点部付近や印刷終点部付近における線画像の画像細りや画像太りを軽減し、一定幅でムラの無い線画像を形成することができる凹版オフセット印刷用凹版の技術として、終端の近傍領域の幅が所定幅よりも大きく又は小さく形成されたセルの構造とする凹版の技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、線幅等に関係なく、断面形状が山なりのインキ層を形成することが可能な印刷用凹版の技術として、凹版の凹部の底面の形状が、端の部分で浅くかつ中央部が深い形状に形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−309194号公報
【特許文献2】特開平10−35129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されている技術では、細線形状の模様の印刷において、印刷部の断面形状を一定に保つことができるものの、印刷が可能となる範囲は細線に留まり、ベタ塗を目的とした印刷では、塗膜面に凹版パターンに起因する形状が残存し、均一な塗膜面を付与することは難しいのが現状であった。
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、グラビアオフセット印刷方式を用いた塗膜の形成において、均一なベタ膜を付与することを可能とするオフセット印刷に使用する凹版、及びグラビアオフセット印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討したところ、オフセット印刷でコート剤を塗布し、塗膜を形成するための凹版において、凹版の形状として、コート剤を充填するパターン領域と、該パターン領域の外周を構成する外周領域を有し、該パターン領域は、凹部及び凸部を有し、凸部の頂部は、外周領域の水準面よりも高さを低くすることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)オフセット印刷でコート剤を塗布して、塗膜を形成するための凹版であって、該凹版は、コート剤を充填するパターン領域と、該パターン領域の外周を構成する外周領域を有し、前記パターン領域は、凹部及び凸部を有し、該凸部の頂部は、前記外周領域の水準面よりも低く、かつ、該凸部の頂部と該外周領域の水準面との高さの差Hは、100μm未満であることを特徴とするグラビアオフセット印刷用凹版、
(2)前記凹部の底面の面積は、パターン領域の投影面積の50%以上99.9%以下である上記(1)に記載のグラビアオフセット印刷用凹版、
(3)前記凸部の頂部と前記外周領域の水準面との高さの差Hが5〜95μmである上記(1)又は(2)に記載の凹版のグラビアオフセット印刷用凹版、
(4)前記凸部を平面視した形状は、クロス形状、ストライプ形状、ハニカム形状又はドット形状のいずれかである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のグラビアオフセット印刷用凹版、
(5)前記凹版の材質は、金属、金属酸化物又は樹脂のいずれかである上記(1)〜(4)のいずれかに記載のグラビアオフセット印刷用凹版、及び
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のグラビアオフセット印刷用凹版を使用するグラビアオフセット印刷方法であって、コート剤を該凹版からブランケットロールに受理させる受理工程と、該ブランケットロールが受理されたコート剤をコーティング基材に転写する転写工程を有するグラビアオフセット印刷方法、を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のグラビアオフセット印刷用凹版及び該凹版を用いたグラビアオフセット印刷方法によれば、グラビアオフセット印刷方式においても、均一なベタ膜を付与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のグラビアオフセット印刷用凹版を示す模式図である。
図2】本発明のグラビアオフセット印刷用凹版のパターンの一例であるドット形状の凸部を示す図である。
図3】本発明のグラビアオフセット印刷用凹版のパターンの一例であるクロス形状の凸部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のグラビアオフセット印刷用凹版(以下、単に「凹版」という。)は、図1に示すように、コート剤を充填するパターン領域11と、該パターン領域の外周を構成する外周領域12を有し、前記パターン領域は、凹部13及び凸部14を有し、該凸部の頂部14aは、前記外周領域の水準面12aよりも低く、かつ、該凸部の頂部と該水準面との高さの差Hは、100μm未満であることが重要である。
凸部の頂部を外周領域の水準面よりも低く、かつ、該凸部の頂部と該水準面との高さの差Hを100μm未満とすることで、グラビアオフセット印刷によるベタ膜の形成において、凹版のパターンに起因する外観の不良が抑制されたベタ膜を形成することができる。
また、前記高さの差Hは、好ましくは5〜95μmであり、より好ましくは10〜90μmであり、さらに好ましくは15〜85μmである。
【0014】
また、本発明の凹版のパターン領域11は、凹部の底面13aの面積(凹部が複数ある場合は凹部全体の底面の面積)が、パターン領域の投影面積に対して50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。また、凹部の底面の面積は、パターン領域の投影面積に対して99.9%以下であることが好ましく、99.8%以下であることがより好ましく、99.7%以下であることがさらに好ましい。
凹部の底部の面積を上記の範囲とすることで、ブランケットロールが受理した後のコート剤の塗膜面のレベリング性が良好となる。また、凹版に充填した後のコート剤をドクタリングする際に、パターンが過度に少ないことに伴うドクターブレードの撓みに起因する外観不良を抑制することができる。
【0015】
また、本発明における凸部14の形状は特に限定されることはなく、例えば、凸部の短辺面から見る断面形状が、長方形、台形又は三角形である場合などが挙げられる。なかでも、凹版に充填されたコート剤のブランケットロールに対する受理性が良好であるという点から三角形であることが好ましい(図1、凹版断面図参照)。
【0016】
また、本発明における凸部14は、1つのパターン領域11中に複数あってもよい。該凸部が複数ある場合には、凸部間の間隔B(以下、「パターン間隔B」という)は、使用するコート剤により適宜設定することができるが、例えば、100〜3000μmであることが好ましく、500〜2500μmであることがより好ましく、800〜2000μmであることがさらに好ましい。
凸部のパターン間隔Bを上記の範囲とすることで、ブランケットロールに受理された後のコート剤の塗膜面のレベリング性が良好となる。また、凹版に充填した後のコート剤をドクタリングする際に、パターンが過度に少ないことに伴うドクターブレードの撓みに起因する外観不良を抑制することができる。なお、パターン間隔Bは、隣り合う凸部の最短距離である(図2及び図3参照)。
【0017】
また、本発明の凹版におけるパターン領域内の凸部を平面視した形状は、特に限定されるものではないが、均一な塗膜面を付与するという観点から、特定の形状が繰り返されるパターンが好ましい。例えば、クロス形状(図3参照)、ストライプ形状、ハニカム形状又はドット形状(図2参照)が好ましい。
【0018】
また、本発明に使用できる凹版の材質は、特に限定されるものではないが、レーザーによるミクロンオーダーの微細加工が可能である材質であることが好ましい。このような材質としては、例えば、金属、金属酸化物又は樹脂等が挙げられる。なかでも作業性、耐薬品性、耐衝撃性の観点から金属材料であることが好ましい。具体的には、ステンレス、鉄、アルミニウム、銅、チタン等を使用することができる。
【0019】
本発明に使用する凹版の作製方法は、特に限定されることはなく、一般的に金属や樹脂を加工する方法を用いることができる、例えば、被切削体となる基材にパルスレーザーを用いて所定のパターンを切削することにより凹版を製作することができる。
ここで、パルスレーザーとは、パルス幅がフェムト秒領域からピコ秒領域にあるレーザーのことであり、瞬間的に高いピークパワーを持つ。そのため、多光子吸収が発生し、材料の電子を励起させ直接原子の結合を分解することができる。すなわち、材料を瞬時に蒸発させることができるため、溶融物の発生を低減させることができ、多様な材料に対して熱の影響の少ない精密加工が可能となる。
【0020】
本発明では、上述の凹版を使用し、コート剤を凹版からブランケットロールが受理する工程と、該ブランケットロールに受理されたコート剤をコーティング基材に転写する工程を有するグラビアオフセット印刷方法をも提供するものである。
この方法を用いることで、グラビアオフセット印刷によるベタ膜の形成において、コート剤の転写性を確保しつつ、塗膜の薄膜化や塗膜面のレベリング性の付与等といった塗膜面の調整が容易にできる。
【0021】
本発明に使用できるブランケットロールは、特に限定されるものではないが、凹凸面や曲面等の3次元表面形状を有する樹脂成形体等の基材表面にコーティングを可能とする観点から、その材質はゴム又は樹脂であることが好ましい。特に、弾性を有することから、ゴムが好ましい。具体的には、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、及びこれらのうちの2種以上からなる混合物等が挙げられる。これらの中でも、耐溶剤性が高い、濡れ張力が低く溶媒の選択肢の幅が広がる等の観点から、シリコーンゴムが好適に用いられる。
【0022】
本発明に使用されるコート剤は用途に応じて適宜選定されるものであり、特に制限はなく、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの樹脂を含有する樹脂組成物を用いることができる。これらの中でも、コート剤が熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物であることが好ましく、光硬化性樹脂組成物であることがより好ましい。
【0023】
光硬化性樹脂組成物に用いられる光硬化性樹脂としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アルキレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリレート、フルオレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートやポリウレタン(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーも用いることができる。これらの光硬化性樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
光硬化性樹脂組成物には、通常、光硬化性樹脂を硬化するための光重合開始剤が添加される。光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンジルジメチルケタール類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類、アセトフェノン類、ヒドロキシケトン類、アミノアルキルフェノン類、アシルホスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシアルキルフェノン類等が好ましい。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の添加量は、光硬化性樹脂100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。
【0025】
コート剤は、凹版への充填を容易にするために、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては特に限定はなく、脂肪族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒などの有機溶媒、水系溶媒などを使用することができる。乾燥速度の点からは、ケトン系溶媒などの有機溶媒が好ましい。
コート剤に使用する溶媒の含有量は、コート剤全質量に対して5質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上とすることがより好ましく、15質量%以上とすることがさらに好ましい。
また、溶媒の含有量は、95質量%以下とすることが好ましく、80質量%以下とすることがより好ましく、65質量%以下とすることがさらに好ましく、45質量%以下とすることが特に好ましい。
コート剤全質量に対して溶媒の含有量を上記の範囲とすることで、凹版からブランケットロール上に受理されたコート剤の塗膜面をレベリングするのに十分な粘度となり好ましい。
その他、必要に応じて、コート剤に紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填材、着色剤等を含有させることもできる。
【0026】
またコート剤は、前述のブランケットロール表面ではじかれることなく、全面に転写されるように、ブランケットロールに対して濡れ性を有することが好ましい。ここで、「濡れ性を有する」とは、JIS K6768:1999における濡れ性の測定において、ブランケットロール表面に対して濡れが2秒以上保持されるものをいう。
【0027】
本発明の印刷方法では、例えば前述の凹版上にコート剤を滴下した後、スキージを用いて凹版のパターン領域に該コート剤を充填させる。次いで、凹版のパターン領域に充填されたコート剤を該凹版からブランケットロールが受理する(受理工程)。ブランケットロールが受理したコート剤は次いでコーティング基材に転写され(転写工程)、グラビアオフセット印刷が行われる。
【0028】
コーティング基材は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜決定される。例えば、透明又は半透明の無機材料や樹脂材料等からなる基材を使用することができ、作業性の観点からは、軽量で薄型の樹脂基材が好ましい。
具体的には、無機ガラス、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
これらは、1種単独でも、2種以上による複合基材であってもよい。
【0029】
また、コーティング基材は、表面が平面形状であるものに限られず、凹凸面や曲面等の3次元表面形状を有する基材であってもよい。本発明の印刷方法によれば、種々の表面形状を有する基材の表面に、外観が良好な塗膜を形成することができる。
【0030】
コート剤をコーティング基材に転写した後、コート剤中の溶媒を除去するために乾燥工程を行うことができる。乾燥は、通常、加熱により行われる。乾燥温度は、前記溶媒の種類にもよるが、50〜120℃であることが好ましく、より好ましくは60〜110℃である。
【0031】
コート剤が熱又は光硬化性樹脂組成物である場合は、乾燥後、さらに硬化工程を行うことができる。熱硬化性樹脂組成物の場合は加熱により、光硬化性樹脂組成物の場合は光照射により硬化が行われる。
光照射を行う場合の照射光としては、紫外線を用いることが好ましい。光照射条件は、光硬化性樹脂組成物の硬化が可能な条件であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、紫外線照射の場合、波長350〜400nmの紫外線を、積算光量300〜500mJ/cmの範囲で照射する。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<凹版>
製造例1〜6(凹版の作製)
材質としてステンレスを用い、パルスレーザーにて加工し、下記表1に示すパターン、凸部、及び凹部を有する凹版を作製した。
【0033】
製造例7(凹版の作製)
材質としてガラスを用い、エッチングにて、版深20μmの凹版を作製した。
【0034】
【表1】
【0035】
実施例1〜3及び比較例1〜4
製造例1〜7により製造した各凹版に下記のコート剤を滴下し、スキージを用いてパターン領域にコート剤を充填した。次に、ブランケットロール上にコート剤を受理させた後、ブランケットロールに受理されたコート剤を、コーティング基材上に転写させた。次いで70℃の温度で、60分間乾燥し、その後、以下の条件の紫外線照射により硬化させて、硬化塗膜を形成した。該塗膜表面について、下記方法にて評価した。評価結果を表2に示す。
紫外線照射の条件は、以下の通りである。
波長;350〜400nm
照射線量;500mJ/cm
【0036】
<評価方法>
塗膜表面について、外観を目視で観察した。評価基準は以下とした。
○:塗膜面が均一である。
△:塗膜面にややうねりがある。
×:塗膜面にパターン領域の形状(凸部を平面視した形状)起因の凹凸が発生している。
【0037】
<コート剤>
以下に記載する材料を混合し、コート剤を作製した。
・ポリウレタンメタクリレート(65〜75質量%)とアクリル酸エステル(25〜35質量%)の混合体「日本合成化学工業株式会社製、商品名:UV7610B」 59質量%
・光重合開始剤:α−ヒドロキシアルキルフェノン系化合物 1質量%
・溶媒:メチルエチルケトン 40質量%
<ブランケットロール>
・シリコーンゴム製ブランケットロール:直径100mm、幅130mm、ゴム硬度15°
<コーティング基材>
・ポリカーボネート製平板:縦90mm、幅80mm、厚さ2mm
【0038】
【表2】

【0039】
上記実施例及び比較例で得られた塗膜サンプルについて、塗膜面の外観不良の有無を観察したところ、実施例1〜3では、塗膜部分の外側及び内側の膜厚差を抑制することができ、外観不良は確認されなかった。一方、比較例1及び2では凹版パターンに起因する外観不良が確認された。
これらの結果から、グラビアオフセット方式を用いた塗膜の形成において、凹版のパターン領域に凹部と凸部を設け、該凸部の頂部の高さを外周領域の水準面よりも低くすることによって、コート剤の転写時におけるレベリング性が改善され、従来の凹版パターン由来の外観不良が改善できると思われる。
【0040】
また、比較例3では、該凸部の頂部の高さと、外周領域の水準面の高さの差Hが大きすぎることによって、コート剤が凹版からブランケットロールへ受理される際、または、ブランケットロールからコーティング基材へ転写される際、コート剤が完全に移行することなく、各々に残余する現象が見られ、外観不良となった。
比較例4は、従来の凹版を用いたものであり、コート剤が転写される際のブランケットのたわみに起因する外観不良が確認された。
よって、本発明の凹版及び該凹版を用いたグラビアオフセット印刷方法によれば均一な積層膜を備えた、曲面形状を有するコーティング成形体を好適に製造することができる。
【符号の説明】
【0041】
10.凹版
11.パターン領域
12.外周領域
12a.水準面
13.凹部
13a.凹部の底面
14.凸部
14a.凸部の頂部
H.凸部の頂部と外周領域の水準面の高さの差
B.パターン間隔
図1
図2
図3