【解決手段】モードスクランブラ13は、長手方向における第1位置において第1平面P11に沿ってデリバリファイバ12が曲げられた第1曲げ部B1と、長手方向における第1位置とは異なる第2位置において第1平面P11とは非平行な第2平面P12に沿ってデリバリファイバ12が曲げられた第2曲げ部B2と、を備える。
前記第1曲げ部における前記光ファイバの曲げ径、及び前記第2曲げ部における前記光ファイバの曲げ径の少なくとも一方を変える可変機構を備える請求項1又は請求項2記載の光学部品。
前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の少なくとも一方は、前記光ファイバが、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方において前記第1平面及び前記第2平面の少なくとも一方に沿って巻回されたものである、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光学部品。
前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の少なくとも一方は、前記光ファイバが、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方において前記第1平面及び前記第2平面の少なくとも一方に沿って波状に曲げられたものである、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光学部品。
前記第1曲げ部は、前記光ファイバが、前記第1位置において前記第1平面内に含まれて前記長手方向に交差する方向に押圧又は引っ張られることで曲げられたものであり、
前記第2曲げ部は、前記光ファイバが、前記第2位置において前記第2平面内に含まれて前記長手方向に交差する方向に押圧又は引っ張られることで曲げられたものである、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光学部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のモードスクランブル技術は、基本的にマルチモードファイバに曲げを加えることで、マルチモードファイバ内を伝播する光にモードスクランブルを行わせるものである。尚、モードスクランブルの効果量は、マルチモードファイバの曲げ径に依存しており、マルチモードファイバに急峻な曲げを加えてマルチモードファイバの曲げ径を小さくするほど高いスクランブル効果が得られる。
【0007】
ここで、一般的に、光ファイバに曲げを加えると、光ファイバの曲げ部においてベンディングロス(曲げによる放射損失)が生ずることが知られている。このベンディングロスは、光ファイバの曲げ径が小さくなるほど大きくなる。通信用途に用いられる光ファイバのように、内部を伝搬する光のパワーがさほど大きくない場合には、上記のベンディングロスは大きな問題とならないことが多い。
【0008】
しかしながら、ファイバレーザで用いられる光ファイバのように、内部を伝搬する光のパワーが数[kW]を超えるような場合には、ベンディングロスが大きな問題となる。例えば、出力パワーが8[kW]のファイバレーザにおいて、ベンディングロスが1%であるとすると、光ファイバの曲げ部からは80[W]の光が放射されることになり、光ファイバの曲げ部の周囲に設けられた部材が破壊される虞が考えられる。
【0009】
また、高いスクランブル効果を得るために、マルチモードファイバに急峻な曲げを加えると、その曲げ部には局所的に大きな応力が加わることになる。すると、この応力が原因で、光ファイバの寿命(耐用年数)が短くなる虞が考えられるという問題がある。このような問題(ベンディングロスの問題、及び寿命の問題)を最小限に抑えるためには、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現する必要がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することが可能な光学部品及びレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の光学部品は、少なくとも光ファイバ(12)を有する光学部品(13)であって、前記光ファイバが、長手方向における第1位置において第1平面(P11)に沿って曲げられた第1曲げ部(B1)と、前記長手方向における前記第1位置とは異なる第2位置において前記第1平面とは非平行な第2平面(P12)に沿って曲げられた第2曲げ部(B2)と、を備える。
また、本発明の光学部品は、前記第1平面と前記第2平面とが直交する。
また、本発明の光学部品は、前記第1曲げ部における前記光ファイバの曲げ径、及び前記第2曲げ部における前記光ファイバの曲げ径の少なくとも一方を変える可変機構(J)を備える。
また、本発明の光学部品において、前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の少なくとも一方は、前記光ファイバが、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方において前記第1平面及び前記第2平面の少なくとも一方に沿って巻回されたものである。
或いは、本発明の光学部品において、前記第1曲げ部及び前記第2曲げ部の少なくとも一方は、前記光ファイバが、前記第1位置及び前記第2位置の少なくとも一方において前記第1平面及び前記第2平面の少なくとも一方に沿って波状に曲げられたものである。
或いは、本発明の光学部品において、前記第1曲げ部は、前記光ファイバが、前記第1位置において前記第1平面内に含まれて前記長手方向に交差する方向に押圧又は引っ張られることで曲げられたものであり、前記第2曲げ部は、前記光ファイバが、前記第2位置において前記第2平面内に含まれて前記長手方向に交差する方向に押圧又は引っ張られることで曲げられたものである。
本発明のレーザ装置は、レーザ光源(11)と、前記レーザ光源から出力されるレーザ光を外部に射出する射出端(X)と、前記射出端よりも前記レーザ光源側に設けられる光学部品(13)と、を備える。
また、本発明のレーザ装置は、前記光学部品と前記レーザ光源との間に設けられ、前記光ファイバを伝播するクラッド光を除去するクラッド光除去部(14)を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、長手方向における第1位置において第1平面に沿って光ファイバが曲げられた第1曲げ部と、長手方向における第1位置とは異なる第2位置において第1平面とは非平行な第2平面に沿って光ファイバ曲げられた第2曲げ部とを設けており、光ファイバに対して異なる軸(異なる種類)の応力を印加できることから、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することが可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光学部品及びレーザ装置について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法の縮尺を適宜変えて図示することがある。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態によるレーザ装置の要部構成を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態のレーザ装置1は、レーザ光源11、デリバリファイバ12(光ファイバ)、及びモードスクランブラ13(光学部品)を備えており、レーザ光源11から出力されるレーザ光Lをデリバリファイバ12の端部(以下、射出端Xという)から外部に射出する。尚、レーザ装置1が、例えばレーザ加工に用いられるものである場合には、レーザ光Lはデリバリファイバ12の射出端Xに取り付けられたヘッド(図示省略)から被加工面に向けて射出される。
【0016】
レーザ光源11は、例えば複数の励起光源、Yb(イッテルビウム)等の希土類元素がコアに添加された光増幅ファイバ、及び複数の励起光源から出力される励起光を光増幅ファイバに入射させるポンプコンバイナ等を備えるファイバレーザである。このレーザ光源11は、複数の励起光源から出力される励起光によって光増幅ファイバのコアに添加された希土類元素を励起し、例えば波長が1030〜1090[nm]程度のレーザ光Lを出力する。尚、レーザ光源11に設けられる励起光源の種類及び数、光増幅ファイバに添加される希土類元素の種類は、レーザ光Lの波長及びパワーに応じて適宜選択される。
【0017】
デリバリファイバ12は、レーザ光源11から出力されるレーザ光を伝送する伝送媒体として機能する光ファイバであり、一端がレーザ光源11に接続されるとともに、他端が上記の射出端Xとされている。このデリバリファイバ12は、用途に応じて、例えばシングルクラッドファイバ、ダブルクラッドファイバ、トリプルクラッドファイバ、その他の任意の光ファイバを用いることができる。尚、上記のダブルクラッドファイバは、円柱状のコアと、コアの外周面を覆う円筒状のインナークラッドと、インナークラッドの外側面を覆う円筒状のアウタークラッドとを備える光ファイバである。尚、デリバリファイバ12は、多角柱状のコアを備えるものであっても良い。
【0018】
モードスクランブラ13は、デリバリファイバ12を伝播するレーザ光Lのビームプロファイルの調整を行うものであり、デリバリファイバ12の途中に設けられる。このモードスクランブラ13は、デリバリファイバ12をその一部として有する光学部品であり、デリバリファイバ12の長手方向における異なる位置において、互いに非平行な平面に沿ってデリバリファイバ12を曲げた複数の曲げ部を備えるものである。
【0019】
図2は、本発明の第1実施形態におけるモードスクランブラの構成を示す斜視図である。
図2に示す通り、モードスクランブラ13は、曲げ部B1(第1曲げ部)と、曲げ部B2(第2曲げ部)とを備える。曲げ部B1は、デリバリファイバ12の長手方向のある位置(第1位置)において、第1平面P11(例えば、水平面)に沿ってデリバリファイバ12が波状(例えば、正弦波状)に曲げられた部位である。曲げ部B2は、デリバリファイバ12の長手方向における曲げ部B1とは異なる位置(第2位置)において、第2平面P12(例えば、垂直面)に沿ってデリバリファイバ12が波状(例えば、正弦波状)に曲げられた部位である。尚、これら曲げ部B1,B2の、デリバリファイバ12の長手方向における位置関係は、曲げ部B1が曲げ部B2よりも射出端X側に配置されていても、曲げ部B2が曲げ部B1よりも射出端X側に配置されていても良い。
【0020】
このように、本実施形態におけるモードスクランブラ13は、デリバリファイバ12の長手方向における異なる位置において、互いに角度θ(例えば、90°)をなす第1平面P11及び第2平面P12に沿ってデリバリファイバ12が波状(例えば、正弦波状)に曲げられた2つの曲げ部B1,B2を備える。このような2つの曲げ部B1,B2を備えるのは、デリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与することで、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現するためである。
【0021】
以下、光ファイバに曲げが加わることによってモードスクランブルが生ずる原理について説明する。光ファイバに曲げが加わると、以下の2つの変化が生ずる。
(1)光ファイバの屈折率の局所変化
(2)光ファイバ内における伝播経路の変化
上記(1)の変化は、光ファイバ内に、光ファイバの径方向における屈折率のプロファイルの変化が生ずることを意味する。このような屈折率のプロファイルの変化が生ずると、光ファイバ内を伝播する光の伝播モードが変化することから高次モードが発生する。上記(2)の変化が生ずると、単純な経路変化に起因する伝播モードの変化が生ずることから高次モードが発生する。このような高次モードが発生すると、光ファイバ内を伝播する基本モードから高次モードへのエネルギーの変遷が生じ、これにより光ファイバの径方向におけるエネルギーの均等化が行われる。
【0022】
ここで、基本モードの光が光ファイバ内を反射しながら伝播するときには、光ファイバの長手方向に沿う特定の面(例えば、水平面)内を伝播する訳ではなく、光ファイバの長手方向に沿う任意の面内をほぼ万遍なく(全方位的に)伝搬する。このため、上記の曲げ部B1,B2の何れか一方のみを設け、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向のみに応力を付与した場合には、上記(1),(2)の変化による影響が、その1軸が含まれる特定の面内を伝播する光にしか及ばないため、効果的なモードスクランブルが実現されていないと考えられる。これに対し、本実施形態では、上記の曲げ部B1,B2を設け、デリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与しているため、効果的なモードスクランブルを実現することができる。
【0023】
図3は、本発明の第1実施形態において生ずる光ファイバの屈折率の局所変化の一例を示す図である。具体的に、
図3(a)は、モードスクランブラ13の曲げ部B1によって生ずるデリバリファイバ12の屈折率の局所変化の一例を示す図であり、
図3(b)は、モードスクランブラ13の曲げ部B2によって生ずるデリバリファイバ12の屈折率の局所変化の一例を示す図である。尚、
図3中のX軸は、デリバリファイバ12の長手方向に直交する軸のうちの第1平面P11に含まれる軸を示しており、Y軸は、デリバリファイバ12の長手方向に直交する軸のうちの第2平面P12に含まれる軸を示している。
【0024】
図3(a)に示す通り、モードスクランブラ13の曲げ部B1によって、デリバリファイバ12にはX軸方向における屈折率の局所変化が生ずる。尚、モードスクランブラ13の曲げ部B1によっては、Y軸方向における屈折率の局所変化は生じない。これに対し、
図3(b)に示す通り、モードスクランブラ13の曲げ部B2によって、デリバリファイバ12にはY軸方向における屈折率の局所変化が生ずる。尚、モードスクランブラ13の曲げ部B2によっては、X軸方向における屈折率の局所変化は生じない。このように、モードスクランブラ13の曲げ部B1,B2によってデリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与すると、その2軸方向における屈折率の局所変化等を生じさせることができることから、効果的なモードスクランブルを実現することができる。
【0025】
図4は、本発明の第1実施形態におけるモードスクランブラの効果を説明するための図である。ここで、
図4に示すグラフは、
図5に示す治具の隙間距離GPを横軸にとり、レーザ光Lのビーム品質を示すパラメータM
2の差(ΔM
2)を縦軸にとってある。尚、ここでは、上記のデリバリファイバ12として、コア径が100[μm]であり、ガラス径(最外クラッド径)が360[μm]であり、ジャケット径(クラッドを覆う被覆の径)が650[μm]であるものを用いている。
【0026】
図5は、本発明の第1実施形態においてモードスクランブラの曲げ部の作成に用いた治具を示す図である。
図5に示す治具J(可変機構)は、一辺が波状(正弦波状)に形成された板状の第1治具J1及び第2治具J2からなる。この治具Jは、第1治具J1の波状に形成された辺と、第2治具J2の波状に形成された辺とを向かい合わせ、波状に形成された辺の山部と谷部とを互いに対向させて使用される。
【0027】
このような第1治具J1と第2治具J2との間にデリバリファイバ12を挟み込むことで、曲げ部B1,B2を形成することができる。例えば、第1治具J1と第2治具J2とによってデリバリファイバ12を第1平面P11内で挟み込めば曲げ部B1が実現され、第2平面P12内で挟み込めば曲げ部B2が実現される。第1治具J1と第2治具J2との隙間距離GP(第1治具J1に形成された波状の辺における山部と、第1治具J1に形成された波状の辺における山部との距離)を変えることで、曲げ部B1,B2の曲げ径を変えることができる。尚、第1治具J1及び第2治具J2の各々に形成された波状の辺における山部と谷部との間の距離PPは、例えば1[mm]である。
【0028】
上記のパラメータM
2は、光ファイバを伝播する基本モードに対し、その他の高次モードがどの程度含まれているのかを示すパラメータである。パラメータM
2は、値が大きくなる程、光ファイバを伝播する全モードのエネルギーにおける高次モードのエネルギーの占有率が高くなる。従って、パラメータM
2の値を参照することで、モードスクランブルの効果を見積もることができる。
図5に示すΔM
2は、基本モードが光ファイバ内を伝播している際のパラメータM
2と、基本モード及び高次モードを含む全ての光が光ファイバ内を伝播している際のパラメータM
2との差である。
【0029】
図4を参照すると、
図5に示す第1治具J1と第2治具J2との隙間距離GPが光ファイバのジャケット径(650[μm])程度以上の場合にはΔM
2がほぼ零であり、第1治具J1と第2治具J2との隙間距離GPが小さくなるにつれてΔM
2が徐々に大きくなる傾向があることが分かる。この傾向は、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向のみに応力を付与した場合(1軸応力付与の場合)、及びデリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与した場合(2軸応力付与の場合)の何れの場合においても同様である。
【0030】
但し、隙間距離GPが同じ場合には、ΔM
2は、1軸応力付与の場合よりも2軸応力付与の場合の方が大であることが分かる。また、隙間距離GPの変化に対するΔM
2の変化も、1軸応力付与の場合よりも2軸応力付与の場合の方が大きいことが分かる。以上から、1軸応力付与の場合よりも2軸応力付与の場合の方が、効果的なモードスクランブルを実現できていることが分かる。
【0031】
また、
図5から、2軸応力付与の場合には、1軸応力付与の場合よりも小さな隙間距離GPで同程度のΔM
2が得られていることが分かる。つまり、2軸応力付与の場合には、1軸応力付与の場合よりも小さな曲げ径で同程度のモードスクランブルの効果量が得られることが分かる。このように、2軸応力付与の場合には、1軸応力付与の場合よりも小さな曲げ径で同程度のモードスクランブルの効果量が得られることから、ベンディングロスを緩和することができるとともに、光ファイバの長寿命化を図ることができる。
【0032】
以上の通り、本実施形態では、第1平面P11に沿ってデリバリファイバ12が波状に曲げられた曲げ部B1と、第2平面P12に沿ってデリバリファイバ12が波状に曲げられた曲げ部B2とを備えるモードスクランブラ13を設け、デリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与するようにしている。これにより、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向にのみ応力を付与した場合に比べて、モードスクランブルの効果量を高めることができる。その結果として、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することができるとともに、デリバリファイバ12の長寿命化を図ることができる。
【0033】
尚、上述した実施形態では、第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θが、例えば90°であるとして説明した。しかしながら、第1平面P11と第2平面P12とは非平行であれば良く、つまり第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θが、0°<θ≦90°の範囲であればよい。第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θは、10°<θ≦90°の範囲が好ましく、20°<θ≦90°の範囲がより好ましく、30°<θ≦90°の範囲がより好ましく、40°<θ≦90°の範囲がより好ましく、50°<θ≦90°の範囲がより好ましく、60°<θ≦90°の範囲がより好ましく、70°<θ≦90°の範囲がより好ましく、80°<θ≦90°の範囲がより好ましい。
【0034】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態におけるモードスクランブラの構成を示す斜視図である。尚、本実施形態のレーザ装置の全体構成は、
図1に示すレーザ装置1と同様の構成であり、レーザ光源11、デリバリファイバ12、及びモードスクランブラ13(光学部品)を備える。つまり、本実施形態のレーザ装置は、
図1に示すレーザ装置1が備えるモードスクランブラ13(
図2参照)に代えて、
図6に示すモードスクランブラ13を備える構成である。
【0035】
図6に示す通り、本実施形態におけるモードスクランブラ13は、3つの曲げ部B1,B2,B3を備える。曲げ部B1は、デリバリファイバ12の長手方向のある位置において、第1平面P11(例えば、水平面)に沿ってデリバリファイバ12が巻回された部位である。曲げ部B2は、デリバリファイバ12の長手方向における曲げ部B1とは異なる位置において、第2平面P12(例えば、垂直面)に沿ってデリバリファイバ12が巻回された部位である。曲げ部B3は、デリバリファイバ12の長手方向における曲げ部B1,B2とは異なる位置(例えば、曲げ部B1と曲げ部B2との間)において、第3平面P13(例えば、水平面及び垂直面に対して45°をなす平面)に沿ってデリバリファイバ12が巻回された部位である。尚、これら曲げ部B1,B2,B3の、デリバリファイバ12の長手方向における位置関係は任意である。
【0036】
このように、本実施形態におけるモードスクランブラ13は、デリバリファイバ12の長手方向における異なる位置に設定された第1平面P11、第2平面P12、及び第3平面に沿ってデリバリファイバ12が巻回された3つの曲げ部B1,B2,B3を備える。尚、第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θ1は例えば90°であり、第1平面P11と第3平面P13とのなす角度θ2は例えば45°である。
【0037】
このような3つの曲げ部B1,B2,B3を備えるのは、デリバリファイバ12に対して異なる種類の応力(第1平面P11内における応力、第2平面P12内における応力、第3平面P13内における応力)を付与することで損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現するためである。尚、本実施形態では、モードスクランブラ13が、3つの曲げ部B1,B2,B3を備える例について説明するが、モードスクランブラ13が備える曲げ部の数は2以上であればよい。
【0038】
ここで、一般的に、光ファイバを巻回する場合において、巻回軸が同じであり、且つ巻き径が同じである場合には、光ファイバは、光ファイバの太さの分だけ巻回軸の方向にずれながら巻回される(いわば、コイル状に巻回される)ことになる。このため、光ファイバを同じ巻き径で同一平面内に複数回に亘って巻回することは困難である。「平面に沿って光ファイバを巻回する」とは、このような巻回軸の方向にずれながら光ファイバが巻回されている態様も含む意味である。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、第1平面P11に沿ってデリバリファイバ12が巻回された曲げ部B1、第2平面P12に沿ってデリバリファイバ12が巻回された曲げ部B2、及び第3平面P13に沿ってデリバリファイバ12が巻回された曲げ部B3を備えるモードスクランブラ13を設け、デリバリファイバ12に対して異なる種類の応力を付与するようにしている。これにより、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向にのみ応力を付与した場合に比べて、モードスクランブルの効果量を高めることができる。その結果として、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することができるとともに、デリバリファイバ12の長寿命化を図ることができる。
【0040】
尚、上述した実施形態では、第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θ1が90°であり、第1平面P11と第3平面P13とのなす角度θ2が45°である例について説明した。しかしながら、第1平面P11、第2平面P12、及び第3平面P13は非平行であれば良く、例えば第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θは、0°<θ≦90°の範囲であればよい。また、第1平面P11と第3平面P13とのなす角度θ2は、第1平面P11と第2平面P12とのなす角度θ1に応じて、適宜設定すれば良い。
【0041】
〔第3実施形態〕
図7は、本発明の第3実施形態におけるモードスクランブラの構成を示す図である。尚、
図7(a)はデリバリファイバ12の長手方向に見た場合のモードスクランブラの断面矢視図であり、
図7(b)はモードスクランブラの平面視断面図であり、
図7(c)はモードスクランブラの側面図である。尚、
図7において、デリバリファイバ12については、コアの図示を省略しており、クラッドCL及び被覆CVのみを図示している。
【0042】
本実施形態のレーザ装置の全体構成は、
図1に示すレーザ装置1と同様の構成であり、レーザ光源11、デリバリファイバ12、及びモードスクランブラ13(光学部品)を備える。つまり、本実施形態のレーザ装置は、
図1に示すレーザ装置1が備えるモードスクランブラ13(
図2参照)に代えて、
図7に示すモードスクランブラ13を備える構成である。
【0043】
図7に示す通り、本実施形態におけるモードスクランブラ13は、1つの固定部材21と、2つの可動部材22,23とを備える。固定部材21は、互いに直交する2つの平面部21a,21bを有する断面形状がL字形状の部材(所謂、L字アングル)である。この固定部材21は、互いに直交する2つの平面部21a,21bによって、デリバリファイバ12の側面を直交する2方向から支持する。固定部材21の平面部21aには切欠部H1が形成されており、固定部材21の平面部21bには切欠部H2が形成されている。但し、切欠部H1,H2は、デリバリファイバ12の長手方向における異なる位置に形成されている。尚、切欠部H1,H2は、孔又は貫通溝であっても良い。
【0044】
可動部材22は、固定部材21の平面部21aに形成された切欠部H1に介挿されており、可動部材23は、固定部材21の平面部21bに形成された切欠部H2に介挿されている。これら可動部材22,23は、樹脂Rによってデリバリファイバ12の側面に接着されている。可動部材22,23は、互いに直交する方向に移動可能に構成されている。具体的に、可動部材22は図中の方向D1に移動可能に構成されており、可動部材23は図中の方向D2に移動可能に構成されている。
【0045】
可動部材22が方向D1に移動することで、デリバリファイバ12の被覆CVは方向D1に沿う方向に引っ張られ、引っ張られた被覆CVに沿ってクラッドCL(不図示のコアを含む)が曲げられる。これによりデリバリファイバ12には、方向D1に沿う方向の応力が付与される。また、可動部材23が方向D2に移動することで、デリバリファイバ12の被覆CVは方向D2に沿う方向に引っ張られ、引っ張られた被覆CVに沿ってクラッドCL(不図示のコアを含む)が曲げられる。これによりデリバリファイバ12には、方向D2に沿う方向の応力が付与される。つまり、可動部材22,23が方向D1,D2にそれぞれ移動することで、デリバリファイバ12には、第1実施形態と同様に、径方向における2軸の方向の応力が付与されることとなる。
【0046】
以上の通り、本実施形態では、固定部材21と可動部材22,23とを備えるモードスクランブラ13を設け、第1実施形態と同様に、デリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与するようにしている。これにより、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向にのみ応力を付与した場合に比べて、モードスクランブルの効果量を高めることができる。その結果として、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することができるとともに、デリバリファイバ12の長寿命化を図ることができる。
【0047】
尚、上述した実施形態では、可動部材22,23が、互いに直交する方向に移動可能に構成されている例について説明した。しかしながら、可動部材22,23が移動する方向D1,D2は非平行であれば良く、例えば可動部材22,23が移動する方向D1,D2のなす角度は、0°<θ≦90°の範囲であればよい。また、上述した実施形態では、モードスクランブラ13が、1つの固定部材21と、2つの可動部材22,23とを備える例について説明した。しかしながら、モードスクランブラ13は、可動部材22が介挿される固定部材21と、可動部材23が介挿される固定部材21とが別体とされた構成であっても良い。
【0048】
〔第4実施形態〕
図8は、本発明の第4実施形態におけるモードスクランブラの構成を示す図である。尚、
図8(a)〜(c)は、
図7(a)〜(c)と同様の図であり、
図8においても、デリバリファイバ12については、コアの図示を省略しており、クラッドCL及び被覆CVのみを図示している。また、本実施形態のレーザ装置の全体構成は、
図1に示すレーザ装置1と同様の構成であり、レーザ光源11、デリバリファイバ12、及びモードスクランブラ13(光学部品)を備える。つまり、本実施形態のレーザ装置は、
図1に示すレーザ装置1が備えるモードスクランブラ13(
図2参照)に代えて、
図8に示すモードスクランブラ13を備える構成である。
【0049】
図8に示す通り、本実施形態におけるモードスクランブラ13は、1つの固定部材31と、2つの可動部材32,33とを備える。固定部材31は、
図7に示す固定部材21と同様に、互いに直交する2つの平面部31a,31bを有する断面形状がL字形状の部材(所謂、L字アングル)である。但し、
図7に示す固定部材21とは異なり、切欠部H1,H2は形成されていない。
【0050】
可動部材32は、固定部材31の平面部31aに対向して配置され、平面部31aとともにデリバリファイバ12を挟むようにデリバリファイバ12の側面に取り付けられている。可動部材33は、固定部材31の平面部31bに対向して配置され、平面部31bとともにデリバリファイバ12を挟むようにデリバリファイバ12の側面に取り付けられている。但し、可動部材32,33は、デリバリファイバ12の長手方向における異なる位置に配置されている。これら可動部材32,33は、互いに直交する方向に移動可能に構成されている。具体的に、可動部材32は図中の方向D1に移動可能に構成されており、可動部材33は図中の方向D2に移動可能に構成されている。
【0051】
可動部材32が方向D1に移動することで、デリバリファイバ12は方向D1に沿う方向に押圧されて曲げられる。具体的に、デリバリファイバ12は、被覆CVとクラッドCL(不図示のコアを含む)で構成されていることから、可動部材32が方向D1に移動すると、可動部材32と固定部材31の平面部31aとによって挟まれている部分の被覆CVが押し潰されることによって、クラッドCL(不図示のコアを含む)の曲げが実現される。このようにして、デリバリファイバ12(特に、クラッドCL(不図示のコアを含む))には、方向D1に沿う方向の応力が付与される。また、可動部材33が方向D2に移動することで、デリバリファイバ12は方向D2に沿う方向に押圧されて曲げられる。具体的には、可動部材33が方向D2に移動すると、可動部材33と固定部材31の平面部31bとによって挟まれている部分の被覆CVが押し潰されることによって、クラッドCL(不図示のコアを含む)の曲げが実現される。このようにして、デリバリファイバ12(特に、クラッドCL(不図示のコアを含む))には、方向D2に沿う方向の応力が付与される。つまり、可動部材32,33が方向D1,D2にそれぞれ移動することで、デリバリファイバ12には、第1実施形態と同様に、径方向における2軸の方向の応力が付与されることとなる。
【0052】
以上の通り、本実施形態では、固定部材31と可動部材32,33とを備えるモードスクランブラ13を設け、第1実施形態と同様に、デリバリファイバ12の径方向における2軸の方向に応力を付与するようにしている。これにより、デリバリファイバ12の径方向における1軸の方向にのみ応力を付与した場合に比べて、モードスクランブルの効果量を高めることができる。その結果として、損失を低減しつつ効果的なモードスクランブルを実現することができるとともに、デリバリファイバ12の長寿命化を図ることができる。
【0053】
尚、上述した実施形態では、可動部材32,33が、互いに直交する方向に移動可能に構成されている例について説明した。しかしながら、可動部材32,33が移動する方向D1,D2は非平行であれば良く、例えば可動部材32,33が移動する方向D1,D2のなす角度は、0°<θ≦90°の範囲であればよい。また、上述した実施形態では、モードスクランブラ13が、2つの可動部材32,33に対して1つの固定部材31が対応付けられた例について説明した。しかしながら、モードスクランブラ13は、可動部材32が対応付けられる固定部材31と、可動部材33が対応付けられる固定部材31とが別体とされた構成であっても良い。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した第1〜第4実施形態を適宜組み合わせても良い。実施形態を組み合わせる際には、実施形態の一部同士を組み合わせても良い。例えば、
図2に示す曲げ部B1と
図6に示す曲げ部B2とを備えるモードスクランブラを実現するといった具合である。但し、デリバリファイバに対して異なる軸(異なる種類)の応力を印加できることが条件となる。
【0055】
また、レーザ装置は、デリバリファイバに対して異なる軸(異なる種類)の応力を印加する複数の曲げ部を備えるモードスクランブラを1つ備える態様であっても良く、1つの曲げ部のみを備えるモードスクランブラを複数備える態様であっても良い。但し、後者の態様の場合には各モードスクランブラが備える曲げ部は、デリバリファイバに対して互いに異なる軸(異なる種類)の応力を印加するものである必要がある。
【0056】
また、レーザ装置は、
図9に示す通り、レーザ光源11とモードスクランブラ13との間に、デリバリファイバ12を伝播するクラッド光を除去するクラッド光除去部(CMS)14を備える構成であっても良い。
図9は、本発明の実施形態におけるレーザ装置の他の構成例を示すブロック図である。
図9に示すような構成にすると、射出端Xから外部に射出されたレーザ光Lの戻り光(射出端Xに入射してデリバリファイバ12をレーザ光源11側に向かって伝播する光)を効率的に除去することができる。つまり、射出端Xから外部に射出されたレーザ光Lの戻り光をモードスクランブラ13で高次モードに変換し、変換された高次モードをクラッド光除去部14で除去することで、戻り光を効率的に除去することができる。
【0057】
また、本発明の光学部品としてのモードスクランブラ13は、上述したレーザ装置1以外のレーザ装置にも適用可能である。例えば、ファイバレーザ装置に適用可能なのは勿論のこと、半導体レーザ(DDL:Direct Diode Laser)やディスクレーザのように、共振器が光ファイバ以外で構成され、共振器から射出されるレーザ光を光ファイバに集光するレーザ装置にも適用可能である。その他、レーザ装置の各構成要素の形状、寸法、配置、材料等に関する具体的な記載は、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。