特開2018-196198(P2018-196198A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-196198(P2018-196198A)
(43)【公開日】2018年12月6日
(54)【発明の名称】電動機用ドライブ装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/20 20160101AFI20181109BHJP
【FI】
   H02P29/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-96414(P2017-96414)
(22)【出願日】2017年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】宇治川 弘人
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA03
5H501BB11
5H501DD01
5H501GG03
5H501GG08
5H501HB18
5H501JJ03
5H501JJ04
5H501JJ23
5H501JJ24
5H501JJ25
5H501LL01
(57)【要約】
【課題】さまざまな応答特性に対して、二自由度制御機能でも速度協調制御を可能にする電動機用ドライブ装置を提供する。
【解決手段】実施形態は、速度指令値と負荷を模擬した数式モデルが出力する第1速度測定値との偏差にもとづいて第1操作量を生成する第1制御器と、前記第1速度測定値を補償して前記第1制御器供給する第1補償器と、前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの選択された一方と前記負荷が出力する第2速度測定値との偏差にもとづいて、第2操作量を生成する第2制御器と、前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの一方を選択して出力する第1切替回路と、前記第2速操作量に、選択的に前記第1操作量を加算する第2切替回路と、前記補償された第1速度測定値を選択的に第1速度測定値に加算する第3切替回路と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一自由度制御と二自由度制御とを切替可能とする電動機用ドライブ装置であって、
速度指令値と電動機を含む負荷を模擬した数式モデルが出力する速度である第1速度測定値との偏差にもとづいて前記数式モデルのための第1操作量を生成する第1制御器と、
前記第1速度測定値を補償して前記第1制御器に供給する第1補償器と、
前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの選択された一方と前記負荷が出力する速度である第2速度測定値との偏差にもとづいて、前記負荷のための第2操作量を生成する第2制御器と、
前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの一方を選択して出力する第1切替回路と、
前記第2速操作量に、選択的に前記第1操作量を加算する第2切替回路と、
前記補償された第1速度測定値を選択的に第1速度測定値に加算する第3切替回路と、
を備え、
一自由度制御の場合には、
前記第1切替回路は、前記第1速度測定値の前記第2制御器への供給を遮断し、前記速度指令値を前記第2制御器に供給し、
前記第2切替回路は、前記第2操作量に前記第1操作量を加算し、
二自由度制御の場合には、
前記第1切替回路は、前記速度指令値の前記第2制御器への供給を遮断し、前記第1速度測定値を前記第2制御器に供給し、
前記第2切替回路は、前記第2操作量に対する前記第1操作量の加算を遮断する電動機用ドライブ装置。
【請求項2】
前記第1補償器は、前記第1速度測定値のオーバーシュートを補償する演算器を含む請求項1記載の電動機用ドライブ装置。
【請求項3】
前記演算器は、比例微分演算器を含む請求項2記載の電動機用ドライブ装置。
【請求項4】
前記第2速度測定値を補償して前記第2制御器の入力に供給する第2補償器と、
前記補償された第2速度測定値を選択的に前記第2制御器の入力に加算する第4切替回路と、
をさらに備えた請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動機用ドライブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動機用ドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼等の圧延プラントでは、圧延機は、上下に配置された円柱状の鉄のロールを、電動機によって互いに逆方向に回転させ、ロールの間隙に鉄等を噛み込ませることによって、所望の厚みに加工する。
【0003】
このような圧延工程の中で、圧延機は複数配置されたスタンドを含み、1つの材料を連続的に加工する場合がある。
【0004】
連続圧延工程では、隣り合うスタンド間でロールの速度の協調をとる必要がある。
【0005】
プログラマブルロジックコントローラから速度基準を複数の電動機用ドライブ装置に分配して電動機を速度制御することによって、隣り合うロール間で速度の協調をとることが行われている。
【0006】
速度指令値に対する応答および外乱に対する応答をそれぞれ個別に設定することができる二自由度制御機能を有する電動機用ドライブ装置がある。二自由度制御機能を有する電動機用ドライブ装置は、外乱応答を高く保ちながら、速度指令値に対する応答を、隣り合うスタンドのロールを駆動する電動機用ドライブ装置に合せることができる。このような電動機用ドライブ装置は、各スタンドのロールの速度の協調をとることができることが知られている。
【0007】
複数のスタンドを有する圧延工程では、二自由度制御機能の電動機用ドライブ装置が、一自由度制御機能の電動機用ドライブ装置と混在して用いられることによって、揃速性を実現できる場合がある。そのような場合には、それぞれの電動機用ドライブ装置の応答性能に応じた設定が必要となることがある。
【0008】
応答性能に応じた設定を行うために、オーバーシュート補償が用いられる。いずれかの電動機用ドライブ装置において二自由度制御機能を用いた場合に、オーバーシュート補償を行うべきときがある。二自由度制御機能を用いた場合に、適切にオーバーシュート補償を行えないときには、速度協調制御を行うことができず、揃速性を維持することが困難になる。
【0009】
揃速性を維持しつつ、速度協調制御を行うためには、すべての電動機用ドライブ装置の応答性能を下げなければならず、圧延工程全体の制御性能が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5512428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の二自由度制御機能付きの電動機用ドライブ装置は、速度制御のための制御ループにオーバーシュート補償機能を有さないため、他の電動機用ドライブ装置と協調をとることができない場合がある。
【0012】
本発明に係る実施形態は、さまざまな応答特性に対して、二自由度制御機能でも速度協調制御を可能にする電動機用ドライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
実施形態に係る電動機用ドライブ装置は、一自由度制御と二自由度制御とを切替可能とする電動機用ドライブ装置である。この電動機用ドライブ装置は、速度指令値と電動機を含む負荷を模擬した数式モデルが出力する速度である第1速度測定値との偏差にもとづいて前記数式モデルのための第1操作量を生成する第1制御器と、前記第1速度測定値を補償して前記第1制御器供給する第1補償器と、前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの選択された一方と前記負荷が出力する速度である第2速度測定値との偏差にもとづいて、前記負荷のための第2操作量を生成する第2制御器と、前記第1速度測定値または前記速度指令値のうちの一方を選択して出力する第1切替回路と、前記第2速操作量に、選択的に前記第1操作量を加算する第2切替回路と、前記補償された第1速度測定値を選択的に第1速度測定値に加算する第3切替回路と、を備える。一自由度制御の場合には、前記第1切替回路は、前記第1速度測定値の前記第2制御器への供給を遮断し、前記速度指令値を前記第2制御器に供給し、前記第2切替回路は、前記第2操作量に前記第1操作量を加算する。二自由度制御の場合には、前記第1切替回路は、前記速度指令値の前記第2制御器への供給を遮断し、前記第1速度測定値を前記第2制御器に供給し、前記第2切替回路は、前記第2操作量に対する前記第1操作量の加算を遮断する。
【発明の効果】
【0014】
本実施形態では、電動機用ドライブ装置は、第1切替回路と第2切替回路とを備えているので、一自由度制御と二自由度制御とを、適切に切替設定することができる。そして、電動機用ドライブ装置は、第3切替回路により応答性能に応じて第1補償器を制御ループに挿入したり遮断したりすることができる。そのため、揃速性を維持しつつ、さまざまな応答特性に応じた制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】プロセスラインを例示する模式図である。
図2】実施形態の電動機用ドライブ装置を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0017】
図1は、プロセスラインを例示する模式図である。
図1では、プロセスラインのうち圧延工程の一部が模式的に示されている。図1に示すように、圧延ライン10は、加熱炉12と、粗圧延機14と、仕上圧延機16と、巻取機18と、スケール除去装置20と、を含んでいる。この例では、圧延ライン10は、熱間圧延を行う。なお、本発明では、熱間圧延に限らず、冷間圧延に適用することもできる。
【0018】
加熱炉12は、上流工程で製造された被圧延材2aを熱間圧延に必要な温度に加熱する。加熱炉12は、たとえば、被圧延材2aを1200℃前後の温度に加熱する。
【0019】
粗圧延機14は、被圧延材2aを所定の板厚および板幅に圧延することにより、被圧延材2aから中間材(粗バー)2bを形成する。粗圧延機14には、たとえば、可逆式の圧延機が用いられる。この例では、被圧延材2aや中間材2bの搬送方向に並ぶ2台の粗圧延機14が圧延ライン10に設けられている。粗圧延機14の台数は、2台に限ることなく、1台でもよいし、3台以上でもよい。
【0020】
仕上圧延機16は、中間材2bをさらに圧延することにより、中間材2bから熱延鋼板2cを形成する。仕上圧延機16には、たとえば、複数の仕上スタンドF1〜F7を搬送方向に並べたタンデム式圧延機が用いられる。この例では、7台の仕上スタンドF1〜F7が設けられている。仕上スタンドの数は、7台に限ることなく、適切に設定された任意の台数とすることができる。
【0021】
巻取機18は、仕上圧延機16によって形成された熱延鋼板2cをコイル状に巻き取る。巻取機18は、圧延コイルを形成する。
【0022】
スケール除去装置20は、ノズル部22,24と、ポンプ26と、配管28と、を含む。ノズル部22,24およびポンプ26は、配管28によって流体的に接続されている。配管28には、水等の流体が流通しており、この流体は、ポンプ26によって駆動され、ノズル部22,24の各ノズルから噴出される。流体は、搬送される被圧延材2a、中間材2b等の鋼板の表面に噴出され、その表面に形成されるスケールを除去する。
【0023】
圧延ラインには、上述のほかに図示しないが、圧延材を搬送方向に搬送するフィードローラやテーブルローラ等がパスラインに沿って設けられている。
【0024】
圧延機のミルや、テーブルローラ等の駆動は、それぞれのドライブ装置を介して行われる。ドライブ装置は、電動機やアクチュエータを速度制御、位置制御等を行いながら駆動する。
【0025】
電動機用ドライブ装置30は、たとえば仕上圧延機16のそれぞれのスタンドのローラを駆動する電動機の速度制御を行う。したがって、電動機用ドライブ装置30は、スタンドのローラごとに設けられている。仕上圧延機16では、上述のとおり、複数台がタンデム配置されており、各スタンドの電動機およびローラ(負荷)は、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)から供給される速度指令値にしたがって制御されている。
【0026】
PLCが供給する速度指令値は、PLCのプログラムによって設定されており、プログラムの設定により、異なる速度が設定され得る。
【0027】
図2は、本実施形態に係る電動機用ドライブ装置を例示するブロック図である。
図2に示すように、電動機用ドライブ装置30は、第1制御器31と、数式モデル32と、第2制御器33と、第1補償器35と、第1切替回路37と、第2切替回路39と、第3切替回路40と、を備える。好ましくは、電動機用ドライブ装置30は、第2補償器36と、第4切替回路41と、をさらに備える。
【0028】
第1制御器31は、加減算器42を介して、速度指令値V*と外乱のない場合の速度測定値V1との偏差ΔV0を入力し、生成された操作量T0を数式モデル32に供給する。操作量T0は、たとえばトルク指令値である。第1制御器31は、たとえばPI制御器やPID制御器である。第1制御器31は、PLCから供給される速度指令値V*を入力して、外乱のない負荷の数式モデル32に対してフィードバック制御を行う。
【0029】
数式モデル32は、実負荷に応じてあらかじめ設定されている。数式モデル32には、たとえば1次遅れ系や2次遅れ系のモデルが用いられる。
【0030】
第1速度測定値V1のフィードバックは、加算器43を介して加減算器42の減算入力に供給される。
【0031】
第1補償器35は、数式モデル32の出力と加算器43との間に設けられている。第1補償器35の出力と加算器43との間には、第3切替回路40が設けられている。
【0032】
第1補償器35は、たとえば比例微分器(PD演算器)であり、第1速度測定値V1のオーバーシュートを補償する。第1補償器35は、第3切替回路40によって、動作および非動作を切り替えることができる。第3切替回路40を閉じた場合に、第1補償器35によるオーバーシュート補償を行う。オーバーシュート補償が不要な場合には、第3切替回路40は開放された設定とする。
【0033】
第2制御器33は、加減算器44の出力に接続されている。加減算器44には、第1切替回路37によって2つの入力信号、すなわち第1速度測定値V1または速度指令値V*のいずれか一方が入力される。第1切替回路37は、2つのスイッチ37a,37bを含む。加減算器44には、スイッチ37aを介して、第1速度測定値V1を入力することができる。加減算器44には、スイッチ37bを介して、速度指令値V*を入力することができる。スイッチ37a,37bは、排他的に動作する。つまり、スイッチ37aが閉じている場合には、スイッチ37bは開いており、スイッチ37aが開いている場合には、スイッチ37bは閉じている。
【0034】
加減算器44の減算入力には、実際の負荷34の速度の測定値を表す速度信号である第2速度測定値V2が供給される。
【0035】
第2制御器33と負荷34との間には、加算器45が設けられている。加算器45には、第2制御器33から出力される操作量T1および第2切替回路39を介して、操作量T0が入力される。
【0036】
第1切替回路37のスイッチ37aが閉じている場合に、第2切替回路39は、閉じて加算器45に操作量T0を供給する。なお、この場合には、第1切替回路37のスイッチ37bは開いている。
【0037】
第1切替回路37のスイッチ37aおよび第2切替回路39が開いており、かつ、第1切替回路37のスイッチ37bが閉じている場合に、第2制御器33は、速度指令値V*にもとづく一自由度制御を行う。
【0038】
第1切替回路37のスイッチ37aおよび第2切替回路39が閉じており、かつ、第1切替回路37のスイッチ37bが開いている場合に、第1制御器31および第2制御器33は、協働して二自由度制御を行う。
【0039】
第2補償器36は、負荷34の出力と加算器46との間に設けられている。第2補償器36の出力と加算器46との間には、第4切替回路41が設けられている。
【0040】
第2補償器35は、たとえば比例微分器(PD演算器)であり、第2速度測定値V2のオーバーシュートを補償する。第2補償器36は、第4切替回路41によって、動作および非動作を切り替えることができる。第4切替回路41を閉じた場合に、第2補償器36によるオーバーシュート補償を行う。
【0041】
電動機用ドライブ装置30は、たとえばCPU(Central Processing Unit)等のプログラムをロードして、プログラムの各ステップを実行することによって動作する装置によって実現されてもよい。上述した電動機用ドライブ装置30の各構成要素は、論理回路によるハードウェアで実現されてもよいし、各構成要素の一部または全部をプログラムによって実行することによって実現してもよい。なお、電動機用ドライブ装置30がCPU等を含む場合には、CPUにロードされるプログラムは、図示しない記憶装置に格納される。
【0042】
本実施形態の電動機用ドライブ装置30の動作について説明する。
本実施形態の電動機用ドライブ装置30では、第1切替回路37および第2切替回路39を切り替えることによって、一自由度制御で動作するモード(以下、一自由度制御モードともいう。)または二自由度制御で動作するモード(以下、二自由度制御モードともいう。)のうちの一方を選択して設定することができる。
【0043】
電動機用ドライブ装置30は、第1切替回路37のスイッチ37aおよび第2切替回路39を開いて、第1切替回路39を閉じた場合に、第2制御器33を速度制御器とする一自由度制御モードで動作する。
【0044】
電動機用ドライブ装置30は、第1切替回路37のスイッチ37aおよび第2切替回路39を閉じて、第1切替回路39を開いた場合に、第1制御器31を速度制御器とし、第2制御器33を外乱に対する制御器とする二自由度制御モードで動作する。
【0045】
一自由度制御モードか二自由度制御モードかについては、電動機用ドライブ装置30をプラントに設置する際にあらかじめ設定される。また、いずれの自由度の制御モードにおいても第3切替回路40および第4切替回路41によって、第1補償器35および第2補償器36の適用の有無を選択することができる。これらのオーバーシュート補償のための設定についても、電動機用ドライブ装置30をプラントに設置する際に、より適切な応答となるようにあらかじめ設定される。
【0046】
二自由度制御モードが選択される場合について説明する。電動機用ドライブ装置30は、図1で説明したような複数のスタンドを有する圧延機の速度協調制御に用いられる。まず、プラント設置時の設定において、それぞれの圧延機の電動機用ドライブ装置30は、一自由度制御モードに設定される。その上で、すべての圧延機の応答性能を向上させたい場合がある。その場合において、電動機用ドライブ装置30のゲインを同じ値に設定したときに、複数の圧延機の中に振動的になり制御不安定となるものが出現することがある。
【0047】
制御不安定となる電動機用ドライブ装置30について、二自由度制御モードが設定される。二自由度制御モードの設定については、上述のとおり、第1切替回路37のスイッチ37aおよび第2切替回路39を閉じて、第1切替回路37のスイッチ37bを開く。
【0048】
二自由度制御モードに設定することによって、設定された電動機用ドライブ装置30は、速度制御を行う制御器および外乱に対する制御を行う制御器を有することになるので、実質的にゲインを引き上げることができる。したがって、制御不安定になるまで速度制御器のゲインを引き上げなくても揃速性を維持することができる。
【0049】
さらに、複数の圧延機の速度協調制御を行う場合には、負荷特性の相違等により、複数の圧延機の電動機用ドライブ装置が異なる応答性能を有する場合がある。速い応答性能を有する圧延機では、実際の速度応答がオーバーシュート気味に設定されている。遅い応答性能を有する圧延機では、オーバーシュートを生じないように設定されている。
【0050】
このような応答特性の異なる圧延機が混在する場合には、オーバーシュートを抑制する必要がある。発明者は、二自由度制御モードにおいて、圧延機のオーバーシュートを効果的に抑制できる手法を見出した。すなわち、外乱に対する制御器(第2制御器33)の制御ループにオーバーシュート補償を施すだけでなく、速度制御器(第1制御器31)の制御ループにもオーバーシュート補償を施した場合に、その圧延機のオーバーシュートを効果的に抑制することができる。この事実にもとづいて、オーバーシュートを抑制する場合には、第3切替回路40を閉じて、第1補償器35を動作させ、第4切替回路41を閉じて第2補償器36を動作させる。
【0051】
また、発明者は、二自由度制御モードの場合には、電動機や負荷等によって、外乱に対する制御器の制御ループおよび速度制御器の制御ループの両方に対してオーバーシュート補償を施すことによって、より効果的にオーバーシュートを抑制できる場合があることも見出した。この事実にもとづいて、二自由度制御モードに設定されている電動機用ドライブ装置のオーバーシュートを抑制する場合には、第3切替回路40および第4切替回路41を閉じて、第1補償器35および第2補償器36を接続する。補償する電動機用ドライブ装置30の応答に応じて、第3切替回路40または第4切替回路41のいずれか一方を閉じるようにしてもよい。
【0052】
一自由度制御モードに設定されている電動機用ドライブ装置のオーバーシュートを抑制する場合には、第4切替回路41を閉じることによって、第2補償器36を接続する。第2補償器36はPD補償器のため、電動機用ドライブ装置のオーバーシュートを抑制することができる。
【0053】
このようにして、本実施形態の電動機用ドライブ装置30は、複数の圧延機の速度協調制御を行いつつ、揃速性を維持することができる。
【0054】
本実施形態の電動機用ドライブ装置30の効果について説明する。
本実施形態の電動機用ドライブ装置30は、第1切替回路37と第2切替回路39とを備えているので、一自由度制御モードまたは二自由度制御モードのうちのいずれか一方を選択して、揃速性を維持することができる。
【0055】
本実施形態の電動機用ドライブ装置30は、速度制御用の第1制御器31および外乱に対する第2制御器33のためにオーバーシュート補償を行う第1補償器35および第2補償器36を備えている。そのため、一自由度制御モードおよび二自由度制御モードのいずれでもオーバーシュート補償を行うことができる。つまり、複数の電動機用ドライブ装置のそれぞれに対して、オーバーシュート補償を行うか否かを選択して設定することができる。
【0056】
以上より、本実施形態の電動機用ドライブ装置30は、複数の圧延機の揃速性を維持しつつ、個々の圧延機の応答特性を補償することができるので、圧延ライン全体の性能を向上させることが可能になる。
【0057】
以上説明した実施形態によれば、さまざまな応答特性に対して、二自由度制御機能でも速度協調制御を可能にする電動機用ドライブ装置を実現することができる。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 圧延ライン、12 加熱炉、14 粗圧延機、16 仕上圧延機、18 巻取機、20 スケール除去装置、30 電動機用ドライブ装置、31 第1制御器、32 数式モデル、33 第2制御器、34 負荷、35 第1補償器、36 第2補償器、37 第1切替回路、39 第2切替回路、40 第3切替回路、41 第4切替回路、42,44 加減算器、43,45,46 加算器
図1
図2