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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-202423(P2018-202423A)
(43)【公開日】2018年12月27日
(54)【発明の名称】気相式加熱方法及び気相式加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/015 20060101AFI20181130BHJP
【FI】
   B23K1/015 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-106693(P2017-106693)
(22)【出願日】2017年5月30日
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】永井 耕一
(72)【発明者】
【氏名】村上 友康
(72)【発明者】
【氏名】日野 直文
(57)【要約】
【課題】 被加熱物の周辺の熱転移液の蒸気濃度を所望の濃度に増減して調節することができ、かつ均等に保持することで被加熱物の加熱の際に場所及び時間による加熱能力の差が生じない気相式加熱方法及び気相式加熱装置を提供する。
【解決手段】 加熱炉1では、蒸気を含む加熱気体で被加熱物7を加熱し、蒸気が、被加熱物に接触し冷却されて液化し、蒸気の気化潜熱を相変化により被加熱物に与えたのち、被加熱物の表面から加熱炉の下部に向かって滴下して蒸気槽4に回収し、被加熱物を加熱したのちの加熱気体を、加熱炉内から循環経路2に排出し、循環経路において、排出した加熱気体に蒸気を蒸気槽から供給し、蒸気を含む加熱気体を再び加熱炉に供給する。このような回収及び供給により、熱転移液の蒸気を加熱炉において所定の量に保持し、熱転移液の蒸気の分布を均一にして、加熱炉内に設置されている被加熱物を所定の昇温速度で加熱する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱転移液を加熱して蒸気槽で形成された蒸気を加熱炉に供給し、供給された前記蒸気の気化潜熱を利用して被加熱物の加熱を行う気相式加熱方法であって、
前記加熱炉では、前記蒸気を含む加熱気体で前記被加熱物を加熱し、前記蒸気が、前記被加熱物に接触し冷却されて液化し、前記蒸気の気化潜熱を相変化により前記被加熱物に与えたのち、前記被加熱物の表面から前記加熱炉の下部に向かって滴下して前記蒸気槽に回収し、
前記被加熱物を加熱したのちの前記加熱気体を、前記加熱炉内から循環経路に排出し、前記循環経路において、前記排出した加熱気体に前記蒸気を前記蒸気槽から供給し、前記蒸気を含む前記加熱気体を再び前記加熱炉に供給し、
前記回収及び前記供給により、前記熱転移液の前記蒸気を前記加熱炉において所定の量に保持し、前記熱転移液の前記蒸気の分布を均一にして、前記加熱炉内に設置されている前記被加熱物を所定の昇温速度で加熱する、気相式加熱方法。
【請求項2】
前記循環経路と前記蒸気槽との間の開口部を開閉することで、前記熱転移液の前記蒸気の量を調節する、請求項1に記載の気相式加熱方法。
【請求項3】
前記蒸気槽の前記熱転移液の加熱温度に基づいて前記熱転移液の前記蒸気の量を調節する、請求項1又は2に記載の気相式加熱方法。
【請求項4】
前記蒸気槽の前記熱転移液の、前記蒸気が発生する表面積の大きさに基づいて前記熱転移液の前記蒸気の量を調節する請求項1又は2に記載の気相式加熱方法。
【請求項5】
前記加熱炉内において、前記熱転移液の前記蒸気を含んだ加熱気体を、前記加熱炉内に設置されている前記被加熱物に接触させて前記熱転移液の前記蒸気の気化潜熱を与えた際に液化した前記熱転移液を、前記加熱炉内に配置された再加熱装置で再度加熱して、蒸気とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の気相式加熱方法。
【請求項6】
熱転移液を加熱して内部に蒸気を所定の量形成する蒸気供給装置と、
被加熱物を内部に保持し、前記蒸気供給装置で形成された蒸気を含む加熱気体を前記被加熱物に接触させて前記蒸気の気化潜熱を利用して前記被加熱物の加熱を行う加熱炉と、
前記加熱炉内から前記被加熱物を加熱したのちの前記加熱気体を排出し、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気と混合したのち、前記蒸気を含む前記加熱気体を再び前記加熱炉に供給する循環経路と、
前記循環経路の、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気が前記加熱気体と混合される位置よりも上流側に配置され、前記加熱炉内の前記加熱気体を加熱する加熱装置と、
前記循環経路の、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気が前記加熱気体と混合される位置よりも下流側に配置されて、前記加熱気体と前記蒸気を前記加熱炉に向けて送る送風装置と、
前記加熱炉内で前記熱転移液を回収する回収装置と、
前記蒸気供給装置と前記回収装置とをそれぞれ制御し、前記循環経路に対する前記熱転移液の前記蒸気の前記供給又は前記回収の量を制御して前記加熱炉内の前記蒸気を所定の量に調節する制御部と、
前記加熱炉内で前記被加熱物の周囲に配置されて前記被加熱物に略均等に前記加熱炉内の前記加熱気体を吹き付ける噴出部材と、
前記加熱炉の下部に配置されて、前記被加熱物の下方に前記被加熱物の表面で液化して滴下する前記熱転移液を再度加熱して蒸気とする再加熱装置とを備える気相式加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転移液の蒸気の気化潜熱を利用して被加熱物を加熱する気相式加熱方法及び気相式加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な工業製品もしくは家電の組み立て製造工程、又はそれらの製品の構成部品となる各種電子部品、各種の電池、もしくは、電子部品が実装された基板などのデバイス製造工程において、各種熱処理装置で処理される被加熱物の形状が複雑化している。例えば、前記電子部品が実装された基板においても、平面基板だけでなく、立体的な基板の水平面以外の部分に、はんだペーストを塗布して電子部品を配置しただけの保持力が弱い状態で、はんだペーストを溶融して接合するための加熱処理が行われている。また、立体となることで、被加熱物の熱容量そのものも、増加する傾向にある。ここで、各種熱処理装置とは、例えば乾燥炉、キュア炉、もしくは電子部品の実装工程などではんだ付けに使用されるリフロー炉などである。
【0003】
これらの被加熱物の加熱工程では、不均一な加熱能力による被加熱物の各箇所における温度上昇のばらつきがある場合は、加熱工程の所望の所要時間を得るために、全ての部分が所望の温度に昇温した状態から、さらに所望の時間を保持する必要があり、昇温の遅い部分を所望の時間保持するためには、昇温の早い部分は必要以上の熱にさらされることになり、その場合、特に熱影響の大きい場合は、品質への影響が懸念される。また、熱風の衝突による熱伝達を利用した加熱工程の場合、被加熱物の熱容量が大きい場合は、所望の昇温速度を得るために、熱風の被加熱物への衝突速度を速めることで、熱伝達率を高くすることが出来る。しかしながら、例えば、前記立体的な基板の水平面以外の部分に、はんだペーストを塗布して電子部品を配置しただけの保持力が弱い状態で加熱処理をする必要がある場合、はんだの溶融、その後の冷却によるはんだの凝固が完了する以前に、熱風を高速で衝突させることで、部品が基板から剥離してしまう可能性が大きくなる。そこで、熱容量の大きい基板についても熱風の衝突による部品の剥離などを回避し、高い熱伝達率を利用して被加熱物を効率良く加熱する方法として、熱転移液の蒸気が有する気化潜熱を利用して加熱する方法で、かつ、被加熱物の昇温速度を任意に設定する方法として、例えば特許文献1の方式が知られている。
【0004】
図10は特許文献1の従来の気相式はんだ付け装置の説明図である。特許文献1で開示されている構成は以下の構成である。従来の気相式はんだ付け装置は、容器101と、ヒータ103と、凝縮器104と、搬入機構107と、制御機構108とを備えている。
【0005】
容器101は上部に開口を有している。熱転移液102は容器101の下部の液部101bに貯溜されている。ヒータ103は、前記容器101の下部の液部101b内に設けられて前記熱転移液102を加熱するヒータである。凝縮器104は、前記熱転移液102上面と所定の間隔を有して設けられている。前記熱転移液102の飽和蒸気105は、前記熱転移液102上面と前記凝縮器104との間に形成されている。搬入機構107は、被処理物106を前記開口から搬入し前記飽和蒸気105に挿入されている、制御機構108は、前記被処理物106が70℃を越えて、100℃から150℃の間の温度に昇温する範囲で、前記被処理物106の挿入速度を15mm/sec未満に制御する。ここで、従来の気相式はんだ付け装置は、蒸気槽101aの底部に熱転移液102の液部101bが形成され、この液部101bに収容された熱転移液102をヒータ103によって加熱することで蒸発し、液部101bの上部にその温度での飽和蒸気105が形成される。この飽和蒸気105に、被処理物106、例えば基板上にはんだペーストを介して電子部品を搭載した電子回路基板等、を浸漬して飽和蒸気105の蒸気に接触させることで、温度の下がった飽和蒸気105が熱転移液102に液化し、この際に飽和蒸気105の持つ気化潜熱を電子回路基板106に与えて加熱する。この加熱により電子回路基板106の温度がはんだ付け温度に到達することではんだが溶融し、冷却後にはんだ付けが完了する。この際、飽和蒸気105内に一度に被処理物106を投入すると、気化潜熱による熱伝達率は非常に高いため、被処理物106の熱容量によっては昇温速度が速すぎる場合が多い。そのため、特許文献1の構成においては、所望の昇温速度を実現するために、電子回路基板106の温度を測定しながら、所望の昇温速度となるように飽和蒸気105への投入速度を調節しながら投入し、最終的には飽和蒸気105に被処理物106全体が浸漬する状態にすることで、熱転移液102の沸点に至るまで被処理物106は加熱されることになる。
【0006】
また、熱転移液の飽和蒸気105の濃度を均一化するための方法として、特許文献2の方式が知られている。図11は特許文献2の説明図である。特許文献2で開示されている構成は、以下のような構成である。物品がその一部に配置されてなる基体111を、これらの物品及び基体111を溶着する溶着剤の溶融温度以上の沸点を有する不活性液体112の蒸気113内に配置している。そして、蒸気113の気化潜熱を利用して溶着剤を加熱溶融し、物品と基体111とを溶着するようにした気相式溶着装置において、前記蒸気113内に、該蒸気113を破壊しない程度の緩やかな対流を起こさせる撹拌装置114を設けている。特許文献2の構成によると、不活性液体112の液面に垂直な方向に高さのある被加熱物としての物品と基体111とに対しても蒸気113を略均等に接触させることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−112871号公報
【特許文献2】特開平2−80168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1の構成では、一般的な電子回路基板のように前記液面に対して水平方向に略平面の構成の場合であれば、被加熱物の温度ばらつきは限定的なものになるが、前記液面に対して垂直方向に高さのある被加熱物の場合は、この高さ方向で蒸気の蒸気濃度の差及び温度の差による影響で加熱能力に差ができ、被加熱物の各箇所、特に前記液面の垂直方向において昇温に差が発生し、温度ばらつきができてしまうという課題を有している。
【0009】
また、前記特許文献2の構成では、攪拌装置によって熱転移液の蒸気濃度の蒸気内での均一化を図るために、蒸気内の高さ方向の蒸気濃度を一定とする効果は見込めるが、蒸気濃度が一定であり増減できないため、蒸気内に投入された被加熱物の昇温速度を所望の昇温速度に調整することが出来ないという課題を有している。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被加熱物の周辺の熱転移液の蒸気濃度を所望の濃度に増減して調節しかつ均等に保持することができて、被加熱物の加熱の際に場所及び時間による加熱能力の差が生じない気相式加熱方法及び気相式加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる気相式加熱方法は、
熱転移液を加熱して蒸気槽で形成された蒸気を加熱炉に供給し、供給された前記蒸気の気化潜熱を利用して被加熱物の加熱を行う気相式加熱方法であって、
前記加熱炉では、前記蒸気を含む加熱気体で前記被加熱物を加熱し、前記蒸気が、前記被加熱物に接触し冷却されて液化し、前記蒸気の気化潜熱を相変化により前記被加熱物に与えたのち、前記被加熱物の表面から前記加熱炉の下部に向かって滴下して前記蒸気槽に回収し、
前記被加熱物を加熱したのちの前記加熱気体を、前記加熱炉内から循環経路に排出し、前記循環経路において、前記排出した加熱気体に前記蒸気を前記蒸気槽から供給し、前記蒸気を含む前記加熱気体を再び前記加熱炉に供給し、
前記回収及び前記供給により、前記熱転移液の前記蒸気を前記加熱炉において所定の量に保持し、前記熱転移液の前記蒸気の分布を均一にして、前記加熱炉内に設置されている前記被加熱物を所定の昇温速度で加熱する。
【0012】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様にかかる気相式加熱装置は、
熱転移液を加熱して内部に蒸気を所定の量形成する蒸気供給装置と、
被加熱物を内部に保持し、前記蒸気供給装置で形成された蒸気を含む加熱気体を前記被加熱物に接触させて前記蒸気の気化潜熱を利用して前記被加熱物の加熱を行う加熱炉と、
前記加熱炉内から前記被加熱物を加熱したのちの前記加熱気体を排出し、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気と混合したのち、前記蒸気を含む前記加熱気体を再び前記加熱炉に供給する循環経路と、
前記循環経路の、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気が前記加熱気体と混合される位置よりも上流側に配置され、前記加熱炉内の前記加熱気体を加熱する加熱装置と、
前記循環経路の、前記蒸気供給装置で形成された前記蒸気が前記加熱気体と混合される位置よりも下流側に配置されて、前記加熱気体と前記蒸気を前記加熱炉に向けて送る送風装置と、
前記加熱炉内で前記熱転移液を回収する回収装置と、
前記蒸気供給装置と前記回収装置とをそれぞれ制御し、前記循環経路に対する前記熱転移液の前記蒸気の前記供給又は前記回収の量を制御して前記加熱炉内の前記蒸気を所定の量に調節する制御部と、
前記加熱炉内で前記被加熱物の周囲に配置されて前記被加熱物に略均等に前記加熱炉内の前記加熱気体を吹き付ける噴出部材と、
前記加熱炉の下部に配置されて、前記被加熱物の下方に前記被加熱物の表面で液化して滴下する前記熱転移液を再度加熱して蒸気とする再加熱装置とを備える。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の前記態様にかかる気相式加熱方法及び気相式加熱装置によれば、蒸気槽又は蒸気供給装置からの蒸気の供給と、加熱炉からの熱転移液の回収とにより、熱転移液の蒸気を加熱炉において所定の量に保持し、熱転移液の蒸気の分布を均一にして、加熱炉内に設置されている被加熱物を所定の昇温速度で加熱することができる。この結果、前記供給と前記回収とを調節すれば、被加熱物への熱伝達を行う熱転移液の蒸気の濃度を増減して調節しかつ均等にすることができ、昇温速度を加減することが可能となり、被加熱物の加熱の際に場所及び時間による加熱能力の差が生じず、立体的な被加熱物においても均等な熱伝達による均一加熱を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における気相式加熱方法を実施する気相式加熱装置の説明図
図2A】本発明の実施の形態における気相式加熱装置において蒸気濃度の高い状態を表す説明図
図2B図2Aの構成における温度プロファイルの説明図
図3A】本発明の実施の形態における気相式加熱装置において蒸気濃度の低い状態を表す説明図
図3B図3Aの構成における温度プロファイルの説明図
図4A】本発明の実施の形態の第1変形例における気相式加熱装置の蒸気槽の蒸気濃度調節の説明図
図4B】本発明の実施の形態の第2変形例における気相式加熱装置の蒸気槽の蒸気濃度調節の説明図
図4C】本発明の実施の形態の第3変形例における気相式加熱装置の蒸気槽の蒸気濃度調節の説明図
図5】本発明の実施の形態の第4変形例における気相式加熱装置の説明図
図6A図5の気相式加熱装置の昇温ゾーンの断面図
図6B図5の気相式加熱装置の保温ゾーンの断面図
図7】本発明の実施の形態の前記第4変形例における気相式加熱装置の温度プロファイルの説明図
図8】本発明の実施の形態の第5変形例における気相式加熱装置の説明図
図9図8の気相式加熱装置の構成における温度プロファイルの説明図
図10】従来の気相式加熱装置を示す説明図
図11】従来の気相式加熱装置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態における気相式加熱方法の説明図である。気相式加熱方法を実施可能な気相式加熱装置は、被加熱物7を加熱処理する加熱炉1と、加熱炉1に連通して加熱炉1内の加熱気体が循環する循環ダクト2と、循環ダクト2の中間に配置されて循環ダクト2内で加熱気体を強制的に循環させる循環ファン3と、循環ダクト2の中間に連結されて循環ダクト2に熱転移液6の蒸気を供給する蒸気槽4とを備えている。循環ダクト2は循環経路の一例として機能する。蒸気槽4は蒸気供給装置の一例として機能する。加熱気体の一例としては、大気すなわち空気であり、詳しくは、熱転移液の蒸気を含む空気である。熱転移液の一例としては、電気絶縁性のフッ素系不活性液体である。
【0017】
加熱炉1には、例えば、被加熱物7を収納した多数の開口8a付きの筐体8が大略中央付近に配置されており、加熱気体は、加熱炉1の下部の右端部から供給されて、筐体8内の被加熱物7を加熱したのち、加熱炉1内の筐体8の上端開口部8bから排出されるように構成されている。筐体8の詳細については、後述する。
【0018】
加熱炉1の下流側(例えば図1では加熱炉1の上端部)には、加熱気体を循環させるための循環ダクト2の一端(例えば上端)が連結されている。加熱炉1の上流側(例えば図1では加熱炉1の下部の右端部)には、循環ダクト2の他端(例えば下端)が連結されている。よって、循環ファン3によって循環ダクト2の一端から他端に向けて加熱気体を強制的に流すことにより、加熱炉1内の上流側から下流側に向けて加熱炉1内の加熱気体に気流を発生させている。
【0019】
また、循環ダクト2の中間でかつ循環ファン3の上流側には加熱ヒータ5が設置されている。加熱ヒータ5は、循環ダクト2内を流れかつ被加熱物7への熱伝達によって温度の低下した加熱炉1内の加熱気体に対して熱エネルギーを供給して加熱気体を所望の温度まで昇温させる。すなわち、加熱ヒータ5は、ヒータ制御部5aで加熱制御を行うことができ、加熱ヒータ5での加熱気体に対する加熱温度を気体加熱用設定温度としてヒータ制御部5aで設定し、ヒータ制御部5aの制御の下に、気体加熱用設定温度まで加熱気体を加熱することにより、加熱炉1での被加熱物7を所望の温度まで加熱可能としている。
【0020】
さらには、熱転移液6の蒸気槽4では、蒸気を発生させている。蒸気槽4は、循環ダクト2の中間にダクト連結部11で連結している。よって、熱転移液6の蒸気槽4において発生する蒸気の一部もしくは全部を、ダクト連結部11を介して蒸気槽4から循環ダクト2内に供給して、循環ダクト2内を流れる加熱気体と混合している。ここで、蒸気槽4には、熱転移液6を加熱及び気化させるために、熱転移液6の中に液体用加熱ヒータ10が設置されている。液体用加熱ヒータ10は、ヒータ制御部10aで加熱制御を行うことができ、液体用加熱ヒータ10での熱転移液6に対する加熱温度を蒸気供給用設定温度としてヒータ制御部10aで設定し、ヒータ制御部10aの制御の下に、蒸気供給用設定温度まで熱転移液6を加熱して気化して蒸気を発生させることにより、蒸気槽4から循環ダクト2に供給可能な蒸気の量又は濃度を調節可能としている。
【0021】
循環ダクト2内を流れる加熱気体と蒸気槽4からの蒸気とが混ぜられるとき、循環ダクト2内で加熱ヒータ5で加熱された加熱気体は、加熱炉1内に供給された熱転移液6の蒸気の液化を防ぐために、熱転移液6の沸点以上の温度に調節されている。循環ダクト2内に蒸気槽4から供給された蒸気を含んだ加熱気体は、循環ファン3によって攪拌され、均一な蒸気濃度として被加熱物7が設置されている加熱炉1内に循環ダクト2内から送風される。
【0022】
循環ファン3による加熱炉1内に対する加熱気体の送風は、被加熱物7への加熱気体の衝突速度が所望の速度となるように調節される。加熱炉1では、熱転移液6の蒸気を含んだ加熱気体が被加熱物7に衝突することで、加熱気体そのものの持つ熱エネルギーも被加熱物7に熱伝達されるが、加熱気体に含まれる蒸気が被加熱物7に接触することによって冷却されて液化することで、蒸気の液化への相変化による凝縮潜熱を被加熱物7に与える。このため、被加熱物7に対して加熱気体の衝突だけの場合と比較して、非常に高い熱伝達率によって被加熱物7の温度を高効率に昇温することができる。
【0023】
ここで、加熱炉1は、被加熱物7に熱転移液6の蒸気を含んだ加熱気体を均一に接触させることができるように、加熱炉1内において多数の微小な開口8aを各面に有する筐体8で、被加熱物7を囲うことで、各微小な開口8aから略均等な風速で被加熱物7に対して熱転移液6の蒸気を含む加熱気体を吹き付ける。筐体8は、その内部に被加熱物7を収納できかつ被加熱物7との間に隙間が確保できるように、被加熱物7よりも大きい、直方体、又は、円柱体など任意の立体形状に構成されている。筐体8の上端には、上端開口部8bを有して、循環ダクト2の一端に連結されている。筐体8は、加熱炉1内で被加熱物7の周囲に配置されて被加熱物7に略均等に加熱炉1内の加熱気体を吹き付ける噴出部材の一例として機能する。
【0024】
加熱炉1の筐体8内では蒸気が被加熱物7に接触して、蒸気が持っていた気化潜熱を被加熱物7に与えた熱転移液6の蒸気は、被加熱物7の表面で相変化により液化し、被加熱物7の表面から筐体8の開口8aを通過して加熱炉1の下部に向かって滴下する。なお、筐体8の底面においても略均等な風速で被加熱物7に加熱気体を吹き付けるが、それと同時に、前記液化した熱転移液6の滴下によって、前記筐体8の微小な開口8aが塞がれないようにする必要がある一方、被加熱物7に熱転移液6の蒸気を含んだ加熱気体を均一に接触させるため、各開口8aは直径3〜5mm程度であると好適である。
【0025】
この際、滴下する熱転移液6の一部は、沸点以上に設定された加熱炉1内の加熱気体のエネルギーで再度気化するが、加熱炉1の底面に滴下した熱転移液6については、再度加熱して気化させ、加熱炉1内加熱気体中に蒸気として供給するために、底面ヒータ9を設置する。底面ヒータ9は再加熱装置の一例として機能する。底面ヒータ9の加熱制御は、後述する制御部40で可能であるが、別にヒータ制御部を設けて加熱制御するようにしてもよい。
【0026】
これにより、加熱炉1及び循環ダクト2によって形成される加熱気体の循環する空間内に蒸気槽4より供給された熱転移液6の蒸気は、加熱炉1内で安定的に存在し、加熱ヒータ5による加熱気体の温度と、加熱気体に含まれかつ液体用加熱ヒータ10の加熱により蒸気槽4で発生される熱転移液6の蒸気の濃度とが、それぞれ、設定温度と設定濃度とに大略保持される。このように構成することで、加熱炉1における加熱能力が、被加熱物7に対応した所望の能力に維持される。
【0027】
この際、一部の蒸気については、加熱炉1の壁面に接触して液化しかつ底面ヒータ9に導かれずに再度気化することができない可能性がある。さらには、被加熱物7の凹部に液化した熱転移液6が溜まったまま又は被加熱物7の壁面に付着したまま、被加熱物7の搬出時に被加熱物7とともに加熱炉外に持ち出されてしまう可能性がある。このため、前記したように加熱炉1内から失われた量(言い換えれば、例えば回収装置41により回収された熱転移液6の量)の熱転移液6は、適宜、蒸気槽4から加熱炉1内に追加及び補充される。
【0028】
一例として、この熱転移液の追加及び補充は、加熱炉1内を循環している加熱気体に含まれる熱転移液の濃度変化を検出することにより行われる。加熱気体に含まれる熱転移液の量が、何らかの理由で変化した場合、蒸気の濃度が変化する。そこで、この蒸気の濃度の変化を検出して、熱転移液の濃度変化を検出する。蒸気の濃度を検出する蒸気濃度検出装置90としては、具体的には、吸収率の高い波長の赤外線を用いて透過率の差を検出する装置か、又は、一部の加熱気体を常時サンプリングして露点を検出する装置などが考えられる。そのような蒸気濃度検出装置90で検出した結果に応じて、所定の蒸気量を循環経路に供給し又は循環経路から排出することにより、前記回収装置41により回収された熱転移液6の量の追加及び補充を行うことができる。蒸気濃度検出装置90は、一例として、図1では、循環ダクト2の加熱ヒータ5の上流側に配置しているが、これに限られるものではなく、循環ダクト2内の任意の位置、例えば加熱炉の上端開口部8b付近又は加熱ヒータ5の下流側などに配置してもよい。蒸気濃度検出装置90で検出された情報は、制御部40に入力されて、他の装置の制御に使用される。
【0029】
また、回収装置41は、再度気化されずに自重で排出されて回収された、液化した熱転移液を、蒸気槽4に供給するポンプ41aを少なくとも備えている。このポンプ41aにより、加熱炉1の底面に滴下した熱転移液6を加熱炉1から強制的に排出するようにしてもよい。回収装置41で回収する熱転移液の量は、例えば、回収した熱転移液の量を流量計41bなどで直接測定して求めることができる。又は、回収した熱転移液を回収タンク部(図示せず)に保持し、その回収タンク部での液面の位置を液面計(図示せず)で計測して、回収した熱転移液の量を検出することもできる。
【0030】
また、回収した熱転移液の量に応じて蒸気を供給するためには、例えば、以下のようにすればよい。まず、回収した熱転移液の量と蒸気の供給量との関係テーブルまたは関係式を関係情報として予め求めて内部記憶部に記憶し、この関係情報に基づいて、回収した熱転移液の量に応じて蒸気の供給量を回収装置の演算部41eで算出し、算出した供給量に応じた熱量を演算部41eで算出し、算出した熱量をヒータ10から熱転移液6に制御部40で付与する。
【0031】
被加熱物7に対応して加熱炉1における加熱能力を増減して調節するためには、液体用加熱ヒータ10の加熱温度を増減させて、加熱気体に含まれる蒸気槽4からの熱転移液6の蒸気量を増減させることで可能となる。
【0032】
例えば、加熱能力を高める際には、液体用加熱ヒータ10の加熱温度を上昇させ、蒸気槽4から循環ダクト2に供給する熱転移液6の蒸気量を増加させて、加熱炉1内の加熱気体中の熱転移液6の蒸気濃度を、それまでの設定濃度よりも高い所望の蒸気濃度まで高めることで、蒸気から被加熱物7に与える気化潜熱を増加させることが出来る。
【0033】
逆に、加熱炉1における加熱能力を低下させるためには、液体用加熱ヒータ10の加熱温度を低下させ、被加熱物7に接触して蒸気から被加熱物7に気化潜熱を与えて相変化により液化して加熱炉1の底面に滴下する熱転移液6を再度気化させることなく、つまり、底面ヒータ9による気化を止めることで、滴下した熱転移液6を加熱炉1の底面の排出部1dから回収経路42上の回収装置41で回収し、回収経路42を介して蒸気槽4に戻すことで、加熱気体中に含まれる熱転移液6の蒸気量を、それまでの設定蒸気量未満の所望の蒸気量まで削減することができる。
【0034】
これによって、加熱炉1における加熱能力を低下させることが可能となる。この際、さらに熱転移液6の気化を抑制するために、加熱気体の加熱ヒータ5の能力も低下させて、加熱気体の温度を熱転移液6の沸点以下に制御することで、さらに被加熱物7に対する加熱能力を低下させることが可能となる。
【0035】
必要に応じて、この実施形態では、図1に示すように、制御部40が備えられている。制御部40により、加熱ヒータ5の設定温度、液体用加熱ヒータ10による蒸気の発生量(濃度)、循環ファン3のモータ3Mの回転速度、底面ヒータ9などをそれぞれ独立して制御可能としている。なお、図を簡略化するため、制御部40などは、図1など一部の図にのみ図示して、他の図では省略している。
【0036】
前記実施形態の構成の気相式加熱装置を使用する気相式加熱方法では、熱転移液6を加熱して蒸気槽4で形成された蒸気を循環ダクト2を介して加熱炉1に供給し、供給された蒸気の気化潜熱を利用して被加熱物7の加熱を行うとき、一例として、以下のような動作が行われている。
【0037】
加熱炉1では、蒸気を含む加熱気体で被加熱物7を加熱し、蒸気が、被加熱物7に接触し冷却されて液化し、蒸気の気化潜熱を相変化により被加熱物7に与えたのち、被加熱物7の表面から加熱炉1の下部に向かって滴下して蒸気槽4に回収される。
【0038】
また、被加熱物7を加熱したのちの加熱気体を、加熱炉1内から循環ダクト2に排出する。循環ダクト2においては、排出した加熱気体に、蒸気を蒸気槽4から供給し、蒸気を含む加熱気体を再び加熱炉1に供給する。
【0039】
このような回収及び供給を制御部40で制御することにより、熱転移液6の蒸気を、加熱炉1、又は、加熱炉1及び循環ダクト2において所定の量に保持し、熱転移液6の蒸気の分布を均一にして、加熱炉1内に設置されている被加熱物7を所定の昇温速度で加熱することができる。
【0040】
ここで、図2A及び図3Aは本発明の実施形態における、蒸気槽4からの熱転移液6の蒸気の供給量による加熱炉1内の熱転移液6の蒸気濃度の影響を説明する図である。図2Aは、加熱気体中の熱転移液6の蒸気濃度が高い状態を示している。図3Aは、加熱気体中の熱転移液6の蒸気濃度が低い状態を示している。図2A図3Aとの状態には、中間的な移行状態が存在する。図2Aの状態と図3Aの状態とでは、加熱能力が互いに異なるために昇温能力が互いに異なり、それぞれの場合の被加熱物7の昇温速度は、図2B及び図3Bのように互いに異なる。しかしながら、どちらの場合も、気化潜熱による昇温では、原理的に熱転移液6の沸点以上には加熱されない。そのために、加熱気体の設定温度を沸点よりも少し高めに設定しておくことで、被加熱物7全体が熱転移液6の沸点温度になるまでは、それ以上に加熱されることは無く、被加熱物7全体が熱転移液6の沸点温度に到達した後は、加熱気体温度による昇温に移行するが、熱風の衝突による熱伝達率は、気化潜熱による熱伝達率に比較して非常に小さい。このため、必要以上に過熱される可能性はほとんど無い。図2Aの場合は昇温速度が速く、図3Bの場合は昇温速度が遅いため、それぞれ、図2B及び図3Bのような温度プロファイルの昇温となる。
【0041】
(変形例)
図4A図4B、及び図4Cは、それぞれ、本発明の実施形態の第1、第2、第3変形例における、熱転移液6の蒸気槽4から循環ダクト2へのそれぞれ互いに異なる蒸気供給方法についての説明図である。
【0042】
第1変形例における図4Aでは、熱転移液6の中に液体用加熱ヒータ10を投入して熱転移液6を加熱し、又は、蒸気槽4の外部から、図示しない他の加熱手段による熱伝達等により、熱転移液6を加熱して、熱転移液6を気化させて蒸気を発生させる。この熱転移液6の発生した蒸気を加熱炉1に供給するための開口部の一例としてのダクト連結部11に、シャッター15等の開閉部を一例として設け、制御部40による、この開閉部15の開閉制御によって、蒸気槽4から循環ダクト2に対する蒸気の供給量を制御することができる。
【0043】
なお、図4Aにおいて、蒸気槽4の隣には、熱転移液6の供給及び排出可能なポンプ15Bを中間に有する底部連通路4gで連結されかつ熱転移液6を保持した供給槽16が配置されている。ポンプ15Bの駆動により、蒸気槽4に対して供給槽16から熱転移液6を補充可能としている。
【0044】
第2変形例における図4Bでは、熱転移液6の温度を変化させることで、蒸気槽4の蒸気の飽和蒸気圧を変化させ、すなわち、蒸気槽4の蒸気の蒸気量を変化させることで、蒸気槽4から循環ダクト2への熱転移液6の蒸気の供給量を変更する手段の一例である。図4Bの左の図は、温度低下により蒸気量が小さくなる状態を示し、図4Bの右の図は、温度上昇により蒸気量が大きくなる状態を示している。具体的には、液体用加熱ヒータ10の制御だけで熱転移液6を温度変化させるのではなく、温度変化の応答性をより良くするために、熱転移液6を温度低下させて蒸気量を小さくする必要がある場合は、液体用加熱ヒータ10の周辺に、蒸気槽4の熱転移液6よりも相対的に温度の低い熱転移液6を供給槽16から蒸気槽4に供給して、蒸気槽4の熱転移液6の量を増加させ、液体用加熱ヒータ10の温度調節と合わせて温度を低下させる。逆に、熱転移液6の温度を上昇させて蒸気量を大きくする場合は、液体用加熱ヒータ10の周辺の熱転移液6を蒸気槽4から供給槽16に排出し、蒸気槽4の熱転移液6の量を減少させることで、液体用加熱ヒータ10の熱量による温度変化の応答性を良くする。
【0045】
これにより、熱転移液6の温度を応答性良く変化させることができ、すなわち、飽和蒸気圧と蒸気量とを応答性良く制御することが出来る。
【0046】
なお、図1における循環ダクト2及び循環ファン3の配置の場合、蒸気槽4が連結されるダクト連結部11は、循環ファン3の吸引によって負圧となっているため、蒸気槽4で発生した熱転移液6の蒸気は、この負圧により循環ファン3側に吸引されて、蒸気槽4から循環ダクト2内に供給されることになる。
【0047】
第3変形例における図4Cでは、熱転移液6の温度は同じ状態のままで、ダクト連結部11に連結している蒸気槽4側の熱転移液6が保持される側面の壁面形状が、上に向かって拡大するテーパ状の傾斜面4hになっている。図4Cの左の図は、蒸気槽4の熱転移液の液面が傾斜面4hの最も底側に位置している状態を示し、図4Bの右の図は、蒸気槽4の熱転移液の液面が傾斜面4hの上側に位置している状態を示している。このように熱転移液6の量を増減して液面の位置を昇降させることで、蒸気が発生する熱転移液6の表面積を大小に変化させて、単位時間当たりの蒸気発生量を制御することができる。この際、熱転移液6が気化することで熱転移液6は減少し、そのままでは液面も下がってしまい、結果的に液面の表面積が減少してしまう。このため、供給槽16から蒸気槽4に、蒸気槽4で減少した分の熱転移液6を適宜連続的に供給することで、蒸気槽4の液面高さを所望の高さに保っている。なお、この際、供給槽16内の熱転移液6の温度は、加熱ヒータ10と同様な加熱ヒータ10Cにより、蒸気槽4の熱転移液6の温度と同一に制御しておく。
【0048】
図5は、本発明の実施形態の第4変形例における気相式加熱装置の説明図である。この気相式加熱装置は、被加熱物7の待機ゾーン12と、待機ゾーン12に一側部が隣接する昇温ゾーン13と、昇温ゾーン13の他側部に隣接する保温ゾーン14とで構成される。図6A図5の昇温ゾーン13の断面図である。図6B図5の保温ゾーン14の断面図を示す。待機ゾーン12と昇温ゾーン13と保温ゾーン14とにわたって、コンベヤベルトのような搬送装置49が配置されて、3つのゾーン12,13,14間で被加熱物7を搬送可能となっている。昇温ゾーン13は、図6Aに示すように、図1の気相式加熱装置で構成されている。保温ゾーン14は、図6Bに示すように、図1の気相式加熱装置において、加熱炉1の代わりの保温室1Cに対して、加熱ヒータ5と循環ファン3とが配置された循環ダクト2が下端と上端に連結された構成となっている。
【0049】
このような図5の構成は、図7に示す温度プロファイルのような、2段階以上の多段階の昇温を必要とする温度プロファイルを再現するための構成となっている。
【0050】
待機ゾーン12から昇温ゾーン13に被加熱物7を供給し、昇温ゾーン13で所望の昇温速度で被加熱物7を加熱する。
【0051】
次いで、昇温ゾーン13で被加熱物7が所望の温度に到達した後に、昇温ゾーン13から保温ゾーン14に被加熱物7を移送して、保温ゾーン14で一定温度で被加熱物7を保持する。
【0052】
その後、保温ゾーン14で被加熱物7が所望の時間経過後に、保温ゾーン14から、再度、昇温ゾーン13に被加熱物7を移送して、昇温ゾーン13で被加熱物7を所望の昇温速度で加熱する。
【0053】
2段階の昇温が必要な温度プロファイルの場合は、この後に、昇温ゾーン13から待機ゾーン12に被加熱物7を搬出して、一連の熱処理完了となる。
【0054】
図6Bの保温ゾーン14では、被加熱物7の保温条件での温度設定で保持すれば良いので、積極的な加熱をする必要が無く、よって、気化潜熱などの熱伝達率の高い加熱方式を用いる必要が無い。本実施形態の第4変形例の場合は、熱風循環の構成を取っており、循環する加熱気体の温度を一定に保ち、被加熱物7の温度が低下しないように、循環ファン3で保温室1C内に加熱気体の気流を発生させて被加熱物7に加熱気体を吹き付ける。このとき、加熱気体の温度を所定の温度とするための加熱ヒータ5を循環ダクト2に設置している。
【0055】
また、3段階以上のより多段階の加熱が必要な場合は、図8に前記実施の形態の第5変形例として示すように、昇温ゾーン13での被加熱物7の加熱後に、再度、保温ゾーン14に被加熱物7を移送するなどを繰り返すことにより、図9に示すように、多段階の昇温加熱が可能となる。ここでは、昇温ゾーン13での加熱を(n+1)回、保温ゾーン14への移送をn回行う場合について図示している。
【0056】
なお、図7は、一例として、一般的な温度プロファイルを実現するために、本発明の実施形態の第5変形例におけるリフローはんだ付けの場合の温度プロファイルを従来方法との比較で説明する図である。電子部品を実装した基板のはんだ付けに用いるリフロー炉の場合の一般的な温度プロファイルを実線で示す。従来の気相式加熱方式のリフロー炉の場合での赤外線加熱等により予熱を行い、その後に、はんだ付け温度まで昇温させるために熱転移液の蒸気に基板を投入し、昇温速度が一定で、多くの場合急激な昇温となってしまっている状態の比較を点線で示す。この一般的な温度プロファイルを実現するために、予熱のための昇温は所望の昇温速度になるように、熱転移液6の蒸気濃度を調整した状態で加熱を行い、予熱温度に到達した後に、保温ゾーン14に基板を移送して所定の時間だけ予熱温度を保持する。その後、本加熱のために、再度、昇温ゾーン13に基板を移送して、再度、昇温を始め、熱転移液6の沸点を基板の所望のピーク温度としておく。このようにすることで、基板の温度も熱転移液6の沸点まで上昇してそのまま保持される。その後、所望の時間だけピーク温度に保持して半田が十分溶融して濡れ広がった後に、待機ゾーン12に基板を搬出する。このようにすることで、所望の温度プロファイルを実現することができる。
【0057】
前記実施形態によれば、蒸気槽4からの蒸気の供給と、加熱炉1からの熱転移液6の回収とを行うことにより、熱転移液6の蒸気を加熱炉1において所定の量に保持し、熱転移液6の蒸気の分布を均一にして、加熱炉1内に設置されている被加熱物7を所定の昇温速度で加熱することができる。この結果、前記供給と前記回収とを調節すれば、被加熱物7への熱伝達を行う熱転移液6の蒸気の濃度を増減しかつ均等にすることができ、昇温速度を加減することが可能となり、被加熱物7の加熱の際に場所及び時間による加熱能力の差が生じず、立体的な被加熱物7においても均等な熱伝達による均一加熱を行うことが出来る。
【0058】
なお、被加熱物7の均一加熱を考慮すると、循環風量(風速)はできるだけ大きい方が有利であるが、部品形状又は実装方法などにより、部品が欠品となる衝突風速が異なる。このため、風速を一律に設定することは困難ではあるが、一例として、被加熱物7への衝突風速を最大1m/sec程度とすることができる。ヒータ温度設定は、熱転移液の沸点に依存し、さらには所定の飽和蒸気圧に制御する際には、その沸点の温度近傍に、その都度、温度調節するなど、場合によって頻繁に変化する。しかしながら、温度設定の振り幅としては、熱転移液の(沸点の約1/2程度)〜(沸点+10℃程度)の設定幅を想定することができる。
【0059】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の前記態様にかかる気相式加熱方法及び気相式加熱装置は、被加熱物への熱伝達を行う熱転移液の蒸気の濃度を増減して調節しかつ均等にすることができ、昇温速度を加減することが可能となり、被加熱物の加熱の際に場所及び時間による加熱能力の差が生じず、立体的な形状の被加熱物においても均一な熱伝達による加熱を行うことが可能となる。このため、本発明の前記態様は、立体的な被加熱物を均一に加熱する加熱方法及び装置として、工業製品又は家電製品の製造工程又は各種電子部品の製造工程における乾燥炉、キュア炉、又はリフロー炉などの各種熱処理を行う熱処理方法及び装置に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 加熱炉
1C 保温室
1d 排出部
2 循環ダクト
3 循環ファン
3M 循環ファンのモータ
4,4B,4C 蒸気槽
4g 底部連通路
4h 傾斜面
5 加熱ヒータ
5a ヒータ制御部
6 熱転移液
7 被加熱物
8 筐体
8a 開口
8b 上端開口部
9 底面ヒータ
10,10B 液体用加熱ヒータ
10a ヒータ制御部
11 ダクト連結部
12 待機ゾーン
13 昇温ゾーン
14 保温ゾーン
15 シャッター
15B ポンプ
16 供給槽
40 制御部
41 回収装置
41a ポンプ
41b 流量計
41e 演算部
42 回収経路
49 搬送装置
90 蒸気濃度検出装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11