特開2018-30856(P2018-30856A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2018-30856末梢神経のIgG刺激性再ミエリン化法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-30856(P2018-30856A)
(43)【公開日】2018年3月1日
(54)【発明の名称】末梢神経のIgG刺激性再ミエリン化法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20180202BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20180202BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20180202BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20180202BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20180202BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180202BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180202BHJP
   A61K 35/30 20150101ALI20180202BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20180202BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20180202BHJP
   C12N 5/079 20100101ALI20180202BHJP
【FI】
   A61K39/395 D
   A61K38/07
   A61K38/22
   A61K38/21
   A61K31/573
   A61K45/00
   A61P43/00 121
   A61K35/30
   A61P25/02
   A61P25/02 101
   A61P25/02 103
   C07K16/28
   C12N5/079
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】52
(21)【出願番号】特願2017-175330(P2017-175330)
(22)【出願日】2017年9月13日
(62)【分割の表示】特願2014-560045(P2014-560045)の分割
【原出願日】2013年2月28日
(31)【優先権主張番号】61/605,117
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】515351758
【氏名又は名称】バクスアルタ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】315010787
【氏名又は名称】バクスアルタ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】クエリー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ツェコヴァ ネヴェナ
(72)【発明者】
【氏名】ハルタング ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン コリーナ
(72)【発明者】
【氏名】レイペルト バージット マリア
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ ハンス−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】アーリッヒ ハルトムット
(72)【発明者】
【氏名】バンク セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065BB40
4B065BD39
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA16
4C084DA21
4C084DA39
4C084DB21
4C084NA14
4C084ZA20
4C084ZC75
4C085AA13
4C085BB36
4C085CC22
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG04
4C085GG08
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA59
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA20
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB45
4C087BB63
4C087MA52
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA20
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫媒介性または感染媒介性でない脱髄性末梢神経障害を治療する方法の提供。
【解決手段】治療的に有効な量のポリクローナルIgGを前記神経障害と診断された哺乳類に投与することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性末梢神経障害を治療する方法であって、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを前記神経障害と診断された哺乳類に投与することを含むが、但し、前記神経障害は、免疫媒介性または感染媒介性神経障害でなく、またギラン・バレー症候群、慢性脱髄性多発神経障害、及び多巣性運動神経障害を除くことを条件とする、前記方法。
【請求項2】
前記哺乳類がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、皮下、経口、動脈内、または静脈内に投与する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脱髄性末梢神経障害が、外傷誘発性神経障害、毒素誘発性神経障害、遺伝性神経障害、および代謝性疾患によって誘発される神経障害から選択される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記末梢神経障害が外傷誘発性神経障害である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記末梢神経障害が毒素誘発性神経障害である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記末梢神経障害が遺伝性神経障害である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記末梢神経障害が代謝性疾患によって誘発される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記末梢神経障害が糖尿病性神経障害である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記脱髄性末梢神経障害が運動神経障害である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記脱髄性末梢神経障害が感覚神経障害である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記脱髄性末梢神経障害が感覚運動神経障害である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記脱髄性末梢神経障害が自律神経障害である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ポリクローナルIgGを毎週1回投与する、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ポリクローナルIgGを隔週で投与する、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ポリクローナルIgGを毎月1回投与する、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
治療的に有効な量のポリクローナルIgGを、末梢神経外傷を有する哺乳類に投与することを含む、末梢神経外傷を治療する方法。
【請求項25】
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、経口、動脈内、皮下、または静脈内に投与する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項24〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、請求項24〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳類がヒトである、請求項24〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
毒素誘発性末梢神経障害を治療する方法であって、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを、前記神経障害と診断された哺乳類に投与することを含み、前記神経障害は感染媒介性でない、前記方法。
【請求項35】
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、経口、動脈内、皮下、または静脈内に投与する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項34〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、請求項34〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳類がヒトである、請求項34〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進するのに十分な量のポリクローナルIgGにシュワン細胞を接触させることを含む、シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進する方法。
【請求項45】
未成熟なシュワン細胞のミエリン形成段階への分化を促進する方法であって、前記シュワン細胞分化を誘発するのに十分な量のポリクローナルIgGに前記シュワン細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項46】
MBP遺伝子を上方調節するのに十分な量のポリクローナルIgGにシュワン細胞を接触させることを含む、シュワン細胞によるミエリンの産生を促進する方法。
【請求項47】
軸索を含む哺乳類神経組織を培養する方法であって、培養液中の前記組織を、有効量のシュワン細胞および有効量のポリクローナルIgGと接触させ、それによって、シュワン細胞のポリクローナルIgGとの接触がMBP遺伝子の上方調節を誘発することを含む、前記方法。
【請求項48】
神経細胞を末梢神経傷害の部位に移植することと、
前記神経細胞を、シュワン細胞とポリクローナルIgGとを含む組成物に接触させることと
を含む、哺乳類における末梢神経傷害を治療する方法。
【請求項49】
前記哺乳類がヒトである、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年2月29日に出願された米国仮特許出願第61/605,117号に対する優先権を主張し、その開示はあらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
末梢神経障害は、中枢神経系(CNS)、即ち、脳および脊髄と他の全ての身体部位との間で信号を伝達する神経節およびニューロンのネットワーク、末梢神経系(PNS)に損傷を与える障害の顕在化である。PNSのニューロンは、例えば、ミエリン形成、加速された神経伝導、神経発達および再生、栄養補助、神経細胞外マトリックスの産生、ならびに神経筋シナプス活動の調整に関して、シュワン細胞に依存する。これらのシュワン細胞は、運動および感覚ニューロンの軸索の周囲にタンパク質と脂質に富むミエリン鞘とを巻き付けることによって、電気絶縁を提供する。ミエリンの決定的な役割を考えると、末梢軸索の脱髄は、ギラン・バレー症候群(GBS)、慢性脱髄性多発神経障害(CIDP)、および多巣性運動神経障害(MMN)、ならびに、毒素、薬剤、または例えば、糖尿病等の全身性疾患によって誘発される他の末梢神経病変等の急性および慢性末梢神経障害の顕著な特徴であることは、驚くべきことではない。
【0003】
末梢神経障害は、信号伝達を歪曲させ、神経障害の起源および影響を受ける神経の種類または数によって変化する症状を引き起こす可能性がある。例えば、症状は、障害が、影響される領域からCNSへ感覚情報を伝達する感覚神経線維に影響するか、もしくはCNSから筋肉へインパルスを伝達し、運動活動を連携させる運動神経線維に影響するか、またはその双方であるかに依存することがある。末梢神経障害は、1つの神経への損傷に関する単神経障害、または複数の神経の損傷に関する多発神経障害、症状が突然現れ、急速に進行し、ゆっくりと解消する急性、または、症状が僅かに現れ、ゆっくりと進行する慢性に分類することができる。100を超える異なる種類の末梢神経障害が現在特定されている。末梢神経障害の臨床診断は、対象の病歴、理学的検査、筋電図検査(EMG)および神経伝導検査(NCS)の使用、自律神経系検査、ならびに神経生検等に基づいて行うことができる。
【0004】
末梢神経障害のための現在の治療は、可能な場合、基礎疾病に関し、抗炎症剤、疼痛管理、機械的補助、および/または外科的介入等の対症療法と併用されることが多い。身体もまた、PNSの傷害または損傷に応答するそれ自身の再生能力を有する。PNSへの傷害後、遠位神経株のワーラー変性が生じ、続いてミエリンのシュワン細胞分解、細胞外ミエリンの食作用、および更なるミエリンクリアランスのためのマクロファージの動員が生じる。シュワン細胞は更に、その脱分化、増殖、軸索再生の促進、再分化、およびミエリン産生の能力によって、病理学的状況に適応することができる。Bhatheja et al.(2006)Int.J.Biochem.Cell Biol.38(12):1995−9を参照。修復の過程で、シュワン細胞は、急速に増殖し、軸索にそれに沿って成長するための経路を提供することによって、軸索の再生を刺激し導き、神経再生を標的し、ブングナー帯として知られる軸索の再生管を形成する。Burstyn−Cohen et al.(1998)J.Neurosci 18(21):8875−8885を参照。PNSにおける機能的神経再生は、(ミエリンクリアランスおよび軸索再生に関する再生メカニズムを欠くCNSと対照的に)概して観察することができるが、それは制限されているか、または慢性的に低下していることが多い。したがって、PNSに関する新規の修復促進アプローチが必要とされる。
【0005】
CNSに関する最近の研究は、中枢神経系のミエリン形成グリア細胞である、オリゴデンドロサイトへのIgMの直接的効果の証拠を得ている。例えば、オリゴデンドロサイトに対するオリゴデンドロサイト反応性IgMκ抗体の標的化は、CNS再ミエリン化を促進することが分かった(Asakura et al.,1998)。他の研究は、プールされたヒトIgM分子を用いた脱髄疾患の非免疫性毒素誘発性モデルの治療が、CNSにおける著しく強化されたオリゴデンドロサイト分化をもたらすということを示した(Bieber et al.,2000、Bieber et al.,2002、Warrington et al.,2007)。CNS内のオリゴデンドロサイト、それらの前駆細胞、およびミエリンにおけるIgMに対するFc受容体の発見は、可能なリガンド−受容体相互作用の更なる手がかりを提供する(Nakahara et al.,2003)。
【0006】
これらのオリゴデンドロサイト−IgM研究から得られた知識は、CNS修復に関しては意義があるが、PNS(オリゴデンドロサイトを含有しない)の再生能力を利用することはできない。より関連のある研究では、ヒトIVIGの投与が、PNS特異性脱髄性ギラン・バレー症候群(GBS)を模倣したEAN(自己免疫性神経炎)ラットモデルにおいて疾患の期間を低減させることが見出された(Lin et al.,2007)。効果は、IVIGの免疫調節的役割、ならびに可能性のある抗炎症および二次バイスタンダー軸索損失低減能に起因すると仮定された。体液性免疫系の別の研究では、B細胞ノックアウトJHDマウスは、PNS傷害後のマクロファージ流入、ミエリンクリアランス、および軸索再生における著しい遅延を示した。急速なミエリン片クリアランスは、未処理WTマウスからの抗体または抗PNSミエリン抗体の受動伝達を通じて復元され、したがってマクロファージ進入および食作用活性の促進における内因性抗体の役割を裏付けた(Vargas et al.,2010)。静注免疫グロブリン(IVIG)の投与による臨床試験は、これらの自己免疫性または免疫媒介性神経障害のそれぞれの治療がIVIGの免疫調節的役割を通じて達成されたという仮定と共に、GBS、慢性脱髄性多発神経障害(CIDP)、および多巣性運動神経障害(MMN)に対する正の効果を示している。
【0007】
シュワン細胞に及ぼすポリクローナルIgGの効果は、存在したとしても、これまで知られていなかった。したがって、シュワン細胞の再生機能が、脱髄性末梢神経障害において治療目的のためにどのように利用することができるのかという疑問が残る。シュワン細胞の成熟、分化、およびミエリン産生を誘発する外因性ポリクローナルIgGの能力に関する本発見は、全ての脱髄性末梢神経障害の治療に対する新規のアプローチを提供するメカニズムの重要な説明である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の一態様では、哺乳類における脱髄性末梢神経障害を治療する方法であって、神経障害が免疫媒介性または感染媒介性でなく、該神経障害と診断された哺乳類に治療的に有効な量のポリクローナルIgGを投与することによる、方法が提供される。本発明の幾つかの実施形態では、治療される脱髄性末梢神経障害は、ギラン・バレー症候群、慢性脱髄性多発神経障害、または多巣性運動神経障害ではない。本発明の他の実施形態では、脱髄性末梢神経障害は、非特発性神経障害である。本発明によって治療可能な脱髄性末梢神経障害は、外傷誘発性神経障害、毒素誘発性神経障害、遺伝性神経障害、および代謝性疾患、例えば、糖尿病性神経障害等によって誘発される神経障害から選択されてもよい。
【0009】
本発明の別の態様では、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを末梢神経外傷を有する哺乳類に投与することによって、末梢神経外傷を治療する方法が提供される。
【0010】
本発明のまた別の態様では、毒素誘発性末梢神経障害を治療する方法であって、神経障害が感染媒介性でなく、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを、該神経障害と診断された哺乳類に投与することによる、方法が提供される。
【0011】
本明細書に説明される脱髄性末梢神経障害の治療に関して、本発明のポリクローナルIgGは、局所的または全身に投与されてもよい。ポリクローナルIgGの局所投与は、筋肉内または皮内に生じることができる。ポリクローナルIgGの全身投与は、鼻腔内、皮下、経口、動脈内、または静脈内に生じることができる。本発明の幾つかの実施形態では、抗炎症剤が、ポリクローナルIgGと共に哺乳類に共投与される。抗炎症剤は、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬から選択されてもよい。
【0012】
本発明のポリクローナルIgGは、患者の体重1kg当たり約0.05〜5gまたは患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で、毎週1回、隔週、または毎月1回投与されてもよい。
【0013】
本発明の更なる態様では、シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進する方法であって、シュワン細胞を、シュワン細胞による該末梢神経細胞のミエリン形成を促進するのに十分な量のポリクローナルIgGと接触させることによる、方法が提供される。
【0014】
本発明の別の態様では、未成熟なシュワン細胞のミエリン形成段階への分化を促進する方法であって、該シュワン細胞を、シュワン細胞分化を誘発するのに十分な量のポリクローナルIgGと接触させることによる、方法が提供される。
【0015】
また別の態様では、シュワン細胞によるミエリン産生を促進する方法であって、該シュワン細胞を、MBP遺伝子を上方調節するのに十分な量のポリクローナルIgGと接触させることを含む、方法が提供される。
【0016】
本発明の更なる態様では、軸索を含む哺乳類神経組織を培養する方法であって、培養液中の組織を、有効量のシュワン細胞および有効量のポリクローナルIgGと接触させ、それによってシュワン細胞のポリクローナルIgGとの接触がMBP遺伝子の上方調節を誘発することによる、方法が提供される。
【0017】
本発明のまた別の態様では、哺乳類における末梢神経傷害を治療する方法であって、神経細胞を末梢神経傷害の部位に移植することと、および神経細胞をシュワン細胞とポリクローナルIgGとを含む組成物に接触させることによる、方法が提供される。
【0018】
本明細書で説明される方法では、ポリクローナルIgGは、例えば、筋肉内、皮内、皮下、口腔、経口、鼻腔内、または動脈内もしくは静脈内等の1つ以上の投与経路で、かかる療法を必要とする個体に与えることができる。個体は、ヒトまたは飼育動物であってもよい。幾つかの実施形態では、ポリクローナルIgGは、プールヒト血清に由来する。
【0019】
幾つかの実施形態では、ポリクローナルIgGは、抗炎症剤と共にかかる療法を必要とする哺乳類に共投与される。抗炎症剤は、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬から選択されてもよい。
【0020】
本発明のまた別の態様では、非特発性脱髄性末梢神経障害を治療するための、薬学的に許容される担体と有効量のポリクローナルIgGとを含む薬学的組成物が提供される。
[本発明1001]
脱髄性末梢神経障害を治療する方法であって、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを前記神経障害と診断された哺乳類に投与することを含むが、但し、前記神経障害は、免疫媒介性または感染媒介性神経障害でなく、またギラン・バレー症候群、慢性脱髄性多発神経障害、及び多巣性運動神経障害を除くことを条件とする、前記方法。
[本発明1002]
前記哺乳類がヒトである、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、本発明1001〜1002のいずれかの方法。
[本発明1004]
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、本発明1001〜1002のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、皮下、経口、動脈内、または静脈内に投与する、本発明1005の方法。
[本発明1007]
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、本発明1001〜1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記脱髄性末梢神経障害が、外傷誘発性神経障害、毒素誘発性神経障害、遺伝性神経障害、および代謝性疾患によって誘発される神経障害から選択される、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記末梢神経障害が外傷誘発性神経障害である、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記末梢神経障害が毒素誘発性神経障害である、本発明1009の方法。
[本発明1012]
前記末梢神経障害が遺伝性神経障害である、本発明1009の方法。
[本発明1013]
前記末梢神経障害が代謝性疾患によって誘発される、本発明1009の方法。
[本発明1014]
前記末梢神経障害が糖尿病性神経障害である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記脱髄性末梢神経障害が運動神経障害である、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記脱髄性末梢神経障害が感覚神経障害である、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1017]
前記脱髄性末梢神経障害が感覚運動神経障害である、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記脱髄性末梢神経障害が自律神経障害である、本発明1001〜1008のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記ポリクローナルIgGを毎週1回投与する、本発明1001〜1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記ポリクローナルIgGを隔週で投与する、本発明1001〜1018のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記ポリクローナルIgGを毎月1回投与する、本発明1001〜1018のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1001〜1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1022の方法。
[本発明1024]
治療的に有効な量のポリクローナルIgGを、末梢神経外傷を有する哺乳類に投与することを含む、末梢神経外傷を治療する方法。
[本発明1025]
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、本発明1023の方法。
[本発明1027]
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、本発明1024の方法。
[本発明1028]
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、経口、動脈内、皮下、または静脈内に投与する、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1024〜1028のいずれかの方法。
[本発明1030]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1029の方法。
[本発明1031]
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、本発明1024〜1030のいずれかの方法。
[本発明1032]
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記哺乳類がヒトである、本発明1024〜1032のいずれかの方法。
[本発明1034]
毒素誘発性末梢神経障害を治療する方法であって、治療的に有効な量のポリクローナルIgGを、前記神経障害と診断された哺乳類に投与することを含み、前記神経障害は感染媒介性でない、前記方法。
[本発明1035]
前記ポリクローナルIgGを局所的に投与する、本発明1034の方法。
[本発明1036]
前記ポリクローナルIgGを筋肉内または皮内に投与する、本発明1035の方法。
[本発明1037]
前記ポリクローナルIgGを全身に投与する、本発明1034の方法。
[本発明1038]
前記ポリクローナルIgGを、鼻腔内、経口、動脈内、皮下、または静脈内に投与する、本発明1037の方法。
[本発明1039]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.05〜5gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1034〜1038のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記ポリクローナルIgGを患者の体重1kg当たり約0.5〜2gの用量で前記哺乳類に投与する、本発明1039の方法。
[本発明1041]
抗炎症剤を前記ポリクローナルIgGと共に前記哺乳類に共投与する、本発明1034〜1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
前記抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、本発明1041の方法。
[本発明1043]
前記哺乳類がヒトである、本発明1034〜1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進するのに十分な量のポリクローナルIgGにシュワン細胞を接触させることを含む、シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進する方法。
[本発明1045]
未成熟なシュワン細胞のミエリン形成段階への分化を促進する方法であって、前記シュワン細胞分化を誘発するのに十分な量のポリクローナルIgGに前記シュワン細胞を接触させることを含む、前記方法。
[本発明1046]
MBP遺伝子を上方調節するのに十分な量のポリクローナルIgGにシュワン細胞を接触させることを含む、シュワン細胞によるミエリンの産生を促進する方法。
[本発明1047]
軸索を含む哺乳類神経組織を培養する方法であって、培養液中の前記組織を、有効量のシュワン細胞および有効量のポリクローナルIgGと接触させ、それによって、シュワン細胞のポリクローナルIgGとの接触がMBP遺伝子の上方調節を誘発することを含む、前記方法。
[本発明1048]
神経細胞を末梢神経傷害の部位に移植することと、
前記神経細胞を、シュワン細胞とポリクローナルIgGとを含む組成物に接触させることと
を含む、哺乳類における末梢神経傷害を治療する方法。
[本発明1049]
前記哺乳類がヒトである、本発明1048の方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明を、添付の図面に例証されるその特定の例示的実施形態を参照することによってより具体的に説明する。これらの図面は、本明細書の一部をなす。しかしながら、添付の図面は、本発明の例示的実施形態を例証し、したがってその範囲を制限するものとみなされないことに留意されたい。
図1】非透析(図1A)および透析(図1B)IVIG/緩衝液製剤に曝露された、2日後のBrdU組み込み分析によって測定した未成熟なシュワン細胞の相対増殖率を示す。これらの相対増殖率は、細胞増殖中に細胞DNA内に組み込まれた5−ブロモ−2'−デオキシウリジン(BrdU)に対して陽性である細胞の数に基づいて生成された。
図2】非透析(図2A)および透析(図2B)IVIG/緩衝液製剤に曝露された、2日後のKi−67分析を用いて測定した未成熟なシュワン細胞の相対増殖率を示す。これらの相対増殖率は、細胞増殖中にKi−67発現に対して陽性である細胞の数に基づいて生成された。
図3】透析IVIG/緩衝液製剤に曝露された未成熟なシュワン細胞における、1日目および3日目時点でのP0(図3A)およびMBP(図3B)遺伝子発現のレベルを示す。
図4】透析IVIG/緩衝液製剤に曝露されたp57kip2抑制シュワン細胞における、7日目時点でのP0(図4A)およびMBP(図4B)遺伝子発現のレベルを示す(9日間抑制)。
図5】対照トランスフェクトシュワン細胞(p57kip2抑制無し)と比較した、p57kip2抑制シュワン細胞におけるCD64Fc受容体の発現レベルを示す。どちらのシュワン細胞の群も、IVIG/緩衝液製剤に曝露されなかった。
図6】20mg透析IVIG/緩衝液製剤による刺激後のp57kip2抑制シュワン細胞(図6B)および対照トランスフェクト細胞(図6A)の蛍光像を示す。細胞プロセスの場所および長さは、蛍光像上に重ねられた矢印で示される。
図7】透析IVIG/緩衝液製剤による3日間の刺激後の、p57kip2抑制シュワン細胞および対照トランスフェクト細胞に関する細胞成長の長さのグラフ(5日間抑制)(図7A)を示し、20mgのIVIGで刺激されたp57kip2抑制シュワン細胞(図7B)、緩衝液で刺激されたp57kip2抑制シュワン細胞(図7C)、20mgのIVIGで処理された対照トランスフェクト細胞(図7D)、および緩衝液で処理された対照トランスフェクト細胞(図7E)のそれぞれの蛍光像を伴う。
図8】透析IVIG/緩衝液製剤による7日間の刺激後の、p57kip2抑制シュワン細胞および対照トランスフェクト細胞の細胞成長の長さのグラフ(9日間抑制)(図8A)を示し、20mgのIVIGで刺激されたp57kip2抑制シュワン細胞(図8B)、緩衝液で刺激されたp57kip2抑制シュワン細胞(図8C)、20mgのIVIGで処理された対照トランスフェクト細胞(図8D)、および緩衝液で処理された対照トランスフェクト細胞(図8E)のそれぞれの蛍光像を伴う。
図9】PNSニューロン(ラット後根神経節)とミエリン形成シュワン細胞とのコカルチュエを確立するためのプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な説明
シュワン細胞のホメオスタシス、成熟、分化、およびミエリン産生を促進するポリクローナルIgGの能力の発見は、天然のシュワン細胞の再生能力を促進することによって、例えば、毒素誘発性神経障害、糖尿病性神経障害、外傷誘発性神経障害等の様々な起源の脱髄性末梢神経障害の治療に適用することができる。脱髄性末梢神経障害のための既存の治療計画または対症療法の補助または代用品としての、ポリクローナルIgGの投与が企図される。更に、本発明は、末梢神経再ミエリン化を達成するための実験室環境にて使用することができる。本明細書に説明される発見に基づき、ポリクローナルIgGは、神経移植、細胞培養、例えば、シュワン細胞分化の誘発、前駆細胞運命の決定、ミエリン遺伝子調節またはタンパク質発現に適用することができ、また末梢神経を脅かす、または末梢神経に関わる外科的技術のための前治療または術後治療計画として適用することができる。
【0023】
I.定義
用語「非特発性」は、その根本的な原因が既知である障害を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「末梢神経障害」は、神経節ならびに脳および脊髄の神経を除く、末梢神経系に影響する障害を指す。「末梢神経障害」は、運動、感覚、感覚運動、または自律神経系機能不全のうちの1つまたはそれらの組み合わせとして現れることができる。末梢神経障害によって表される様々な形態は、多数の異なる原因に起因することができる。例えば、末梢神経障害は、遺伝子学的に獲得される可能性があり、全身性疾患からもたらされる可能性があり、または毒物によって誘発される可能性がある。例としては、糖尿病性末梢神経障害、遠位感覚運動神経障害、または胃腸管の低減された運動性もしくは膀胱の弛緩等の自律神経障害が挙げられるが、これらに限定されない。全身性疾患に関連付けられる末梢神経障害の例としては、ポリオ後症候群またはAIDS関連神経障害が挙げられ、遺伝性末梢神経障害の例としては、シャルコー・マリー・トゥース病、無βリポタンパク血症、タンジャー病、異染性白質ジストロフィー、ファブリー病、およびデジェリン・ソッタス症候群が挙げられ、また毒物によって引き起こされる末梢神経障害の例としては、例えば、ビンクリスチン、シスプラチン、メトトレキサート、または3’−アジド−3’−デオキシチミジン等の化学療法剤による治療によって引き起こされるものが挙げられる。
【0025】
末梢神経障害の1つの種類は、「脱髄性末梢神経障害」である。本明細書で使用するとき、「脱髄性末梢神経障害」は、神経線維を包囲し神経から絶縁する脂質に富む鞘、ミエリンの破壊または除去に関連付けられる広範な末梢神経障害を説明する。脱髄性末梢神経障害病の非限定的な例としては、糖尿病性末梢神経障害、遠位感覚運動神経障害、または胃腸管の低減された運動性もしくは膀胱の弛緩等の自律神経障害が挙げられる。脱髄性末梢神経障害の更なる例および説明は、発明を実施するための形態の第II章に見出すことができる。
【0026】
本明細書で使用するとき、「免疫媒介性」障害は、身体の免疫系の異常な活動からもたらされる疾病を指す。「免疫媒介性」障害のサブセットとしては、限定されないが、免疫系が身体を攻撃する自己免疫疾患、免疫複合体障害、移植後拒絶に関わる障害、炎症性疾患、およびアレルギーが挙げられる。
【0027】
「感染媒介性」末梢神経障害は、ウイルス、細菌、または真菌感染の結果として持続する末梢神経系の機能不全を指す。
【0028】
「外傷誘発性末梢神経障害」または「外傷性末梢神経障害」は、身体的ショック、傷害、または「身体的外傷」によって引き起こされる末梢神経系の機能不全を指す。例えば、戦闘、車両事故、転倒、および運動関連活動による身体的外傷は、神経を部分的または完全に分断、圧壊、圧縮、または伸張させる可能性があり、神経節または脊髄から部分的または完全に引き離して脱髄をもたらすほど強力なこともある。外傷誘発性末梢神経障害はまた、例えば、電気ショック、低体温症等の結果として持続することもある。
【0029】
「毒素」または「化学物質誘発性」末梢神経障害は、毒素(例えば、化学物質)によって引き起こされる末梢神経系の機能不全を指す。末梢神経障害を生じさせる毒素は、概して薬剤および薬物、工業化学物質、ならびに環境毒素の3つの群に分けられる。末梢神経障害を引き起こす可能性のある毒素の非限定的な例は、後述の発明を実施するための形態の第II章に説明される。
【0030】
本明細書で使用するとき、「抗炎症剤」は、血管および/または隣接する組織の炎症を低減する任意の薬剤を含む。抗炎症剤の非限定的な例は、ステロイド(例えば、グルココルチコイドおよびコルチコステロイド)、免疫選択的抗炎症誘導体(ImSAIDs)、冷却剤、ハーブ系サプリメント(例えば、デビルズクロー、ヒソップ、ショウガ、ターメリック、アルニカ、およびヤナギ樹皮(アリシリリック酸を含有する))、ならびに抗炎症効果を有する食物(例えば、ザクロ、緑茶、野菜、ω−3脂肪酸を含有する食物、木の実、種子、およびエキストラバージンオリーブ油)である。特に、プロスタグランジン2(PGE2)は、炎症誘発化合物であり、PGE1およびPGE3は、抗炎症化合物である。したがって、PGE2を減少させる、またはPGE1およびPGE3を増加させる薬剤も、抗炎症剤として作用することができる。抗炎症剤の追加の非限定的な例は、後述の第VI章「併用療法」に見出すことができる。
【0031】
本明細書で使用するとき、「未成熟なシュワン細胞」は、シュワン細胞系統における特定の段階を指す。シュワン細胞系統に沿った第1のステップは、シュワン細胞前駆体、多くの軸索と関連付けられ、また神経成長因子受容体(NGF−R)、成長関連タンパク質43(GAP−32)、ならびに神経細胞接着分子N−CAMおよびL1を発現する増殖細胞を付与する。それに続く「運命決定された(committed)」シュワン細胞は、未成熟なシュワン細胞として既知であり、それは徐々により少ない軸索と関連付けられるようになり、先に述べたマーカーに加えて、S−100タンパク質を発現する(この段階以降、全てのシュワン細胞はS−100を発現する)。運命決定されたシュワン細胞は、幾つかの軸索と関連付けられたままであり、先のマーカーに加えてガラクトセレブロシド(GalC)を発現する、非ミエリン形成シュワン細胞か、ミエリン形成シュワン細胞かのいずれかに発達する。ミエリン形成シュワン細胞は、抑制されたcAMP誘発性Pouドメイン転写因子(SCIP)の一過性発現によって特徴付けられる増殖性「予備ミエリン形成(premyelinating)」段階、その後の「ミエリン形成前(promyelinating)」GalC陽性段階を通じて発育し、発育中に単一の軸索と関連付けられるようになる。成熟ミエリン形成シュワン細胞への最終的な分化は、GalCおよびミエリンタンパク質の発現の上方調節、ならびにインビボのミエリンの合成および同化を伴う、NGF−R、GAP−43、N−CAM、およびL1発現の下方調節に関わる。
【0032】
本明細書で使用するとき、用語「IgG」は、IgG免疫グロブリンの組成物を指す。免疫グロブリンのIgGクラスは、名称が示唆する通り、γ(ガンマ)重鎖の存在によって特徴付けられる。例示的な全体的なIgG免疫グロブリン構造は、四量体を含む。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの相同対で構成され、各対は、1つの「軽」(約25kDa)鎖と1つの「重」(約50〜70kDa)鎖とを有する。各鎖のN末端は、約100〜110以上の、主に抗原認識に関与するアミノ酸の可変領域を画定する。用語、可変軽鎖(V)および可変重鎖(V)はそれぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。
【0033】
「免疫グロブリン」または「抗体」は、特定の抗原と免疫学的に反応性であるポリペプチドである。本明細書で使用するとき、用語「免疫グロブリン」は、様々なアイソタイプ、ならびに例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv、およびrIgG等の抗原結合能を有する断片の無傷分子を包含する。例えば、Pierce Catalog and Handbook,1994−1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.)、Kuby,J.,Immunology,3.sup.rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York(1998)を参照。この用語はまた、組み換え単一鎖Fv断片(scFv)も包含する。この用語は更に、二価または二重特異性分子、二量体抗体、三量体抗体、および四量体抗体を包含する。二価および二重特異性分子は、例えば、Kostelny et al.(1992)J.Immunol.148:1547、Pack and Pluckthun(1992)Biochemistry 31:1579、Hollinger et al.,1993、上記参照、Gruber et al.(1994)J.Immunol.:5368,Zhu et al.(1997)Protein Sci 6:781、Hu et al.(1996)Cancer Res.56:3055、Adams et al.(1993)Cancer Res.53:4026、およびMcCartney, et al.(1995)Protein Eng.8:301に説明される。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「ポリクローナルIgG」は、複数のB細胞に由来し、異なる特異性およびエピトープ親和性を有する、IgG免疫グロブリンの異種集合物を指す。ポリクローナル抗体を調製する方法は、当業者に既知である(例えば、Harlow&Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual.(Cold Spring Harbor Press))。本発明のポリクローナルIgGは、病原性障害に関して予めスクリーニングされた異なる哺乳類個体からプールされた血漿から抽出することができる。幾つかの実施形態では、本発明のポリクローナルIgGは、100を超える個体、200を超える個体、300を超える個体、400を超える個体、500を超える個体、600を超える個体、700を超える個体、800を超える個体、900を超える個体、1000を超える個体、1100を超える個体、1200を超える個体、1300を超える個体、1400を超える個体、1500を超える個体、1600を超える個体、1700を超える個体、1800を超える個体、1900を超える個体、または2000を超える個体を代表する。
【0035】
抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」、または「と特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という語句は、タンパク質またはペプチドについて述べるとき、タンパク質および他の生物製剤の異種集団においてタンパク質の存在を決定する、結合反応を指す。したがって、所定の免疫測定条件下において、指定の抗体は、少なくともバックグラウンドの2倍、またより典型的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えて、特定のタンパク質配列に結合する。タンパク質に特異的に結合するリガンド(例えば、抗体)は概して、少なくとも10−1または10−1、場合により10−1または10−1、他の例では10−1または10−1、好ましくは10−1〜10−1、またより好ましくは約1010−1〜1011−1以上の結合定数を有する。様々な免疫測定フォーマットを、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択するために使用することができる。例えば、固体相ELISA免疫測定は、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用される。特定の免疫反応性を決定するために使用することができる免疫測定フォーマットおよび条件の説明に関しては、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照されたい。
【0036】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然起源アミノ酸の化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然起源アミノ酸ポリマー、および非天然起源アミノ酸ポリマーにも適用される。
【0037】
用語「アミノ酸」は、天然起源アミノ酸および合成アミノ酸、ならびに天然起源アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然起源アミノ酸は、遺伝コードによってコード化されるアミノ酸、ならびに例えば、ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタミン酸、およびO−ホスホセリン等の後に修飾されたそれらのアミノ酸である。アミノ酸類似体は、天然起源アミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物、即ち、水素、カルボキシル基、アミノ基、および例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム等のR基に結合する炭素を指す。かかる類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然起源アミノ酸と同じ基本的化学構造を維持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を有するが、天然起源アミノ酸と類似の様式で機能する化学化合物を指す。
【0038】
アミノ酸は、本明細書において、一般的に知られる3文字表記か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字表記かのいずれかによって言及されてよい。同様に、ヌクレオチドも、一般的に許容される1文字コードによって言及されてもよい。
【0039】
本明細書で使用するとき、「ミエリン塩基性タンパク質」(MBP)は、ミエリン鞘の総タンパク質含量の約30%を含むミエリンの主要なタンパク質成分である遺伝子、およびそれによってコード化されるタンパク質を指す。MBPは、MSにおける主要な標的自己抗原であることが示されており、MBPと反応性であるT細胞は、その発病に重要な役割を果たす(例えば、Schwartz,R S,”Autoimmunity and Autoimmune Diseases”in Paul,Fundamental Immunology,3rd Ed.Raven Press,New York,1993,pp.1033 1097、Brown and McFarlin 1981.Lab Invest 45,pp.278 284、Lehmann et al.1992.Nature 358,pp.155 157、Martin et al.1992.Ann Rev Immunol 10,pp.153 187、Sprent 1994.Cell 76,pp.315 322、Su and Sriram.1991.J of Neuroimmunol 34,pp.181 190、およびWeimbs and Stoffel.1992.Biochemistry 31,pp.12289 12296を参照)。
【0040】
用語「軸索」は、身体内での信号伝達に関与する神経細胞の細長い線維を指す。
【0041】
用語「個体」、「対象」、および「患者」は、本明細書において互換的に使用され、哺乳類を指し、マウス、サル、ヒト、家畜動物、狩猟動物、および愛玩動物を含むがこれらに限定されない。好ましい実施形態では、個体はヒトである。
【0042】
用語「用量」および「投与量」は、本明細書において互換的に使用される。用量は、各投与において個体に与えられる活性成分の量を指す。用量は、投与の頻度、個体の寸法および耐容性、疾病の重篤度、副作用の危険性、および投与経路を含む、多数の要因に応じて変わるであろう。当業者は、用量は、上述の要因に応じて、または治療の進行に基づいて修正することができることを認識するであろう。用語「剤形」は、薬学的な、また投与経路に依存する特定のフォーマットを指す。例えば、剤形は、注射用の食塩水等の液体であることができる。
【0043】
「治療的に有効な」量もしくは用量、または「十分な/有効な」量もしくは用量は、それが投与されるものに対して効果を生み出す用量である。正確な用量は、治療の目的に依存し、また既知の技術を用いて当業者によって明らかにされるであろう(例えば、Lieberman,Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1−3,1992)、Lloyd,The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999)、Pickar,Dosage Calculations(1999)、およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,2003,Gennaro,Ed.,Lippincott,Williams&Wilkinsを参照)。
【0044】
用語「治療」または「療法」は概して、所望の生理的効果を獲得することを意味する。効果は、疾患もしくは疾病またはそれらの症状を完全にまたは部分的に予防するという観点から予防的であってもよく、ならびに/あるいは傷害、疾患、もしくは疾病の部分的または完全な治癒、および/または傷害、疾患、もしくは疾病に起因する副作用の寛解という観点から治療的であってもよく、疾患もしくは疾病の発達を阻止すること、または疾患もしくは疾病の退行を引き起こすことを含む。治療はまた、起こり得る傷害の効果を緩和するための予防的使用を含むことができる。例えば、一態様では、本発明は、末梢神経系に関わる外科手術の前の、損傷を緩和するための予備投与を含む。治療はまた、発症の遅延、症状の寛解、患者生存の改善、生存時間または生存率の増加等を指すことができる。治療の効果は、治療を受けていない個体または個体のプールと比較することができる。
【0045】
本明細書で「対照」は、実験群との比較のための基準、通常は既知の基準を指す。当業者は、所与の状況において、どの対照が有益であるか、また対称値との比較に基づいてデータを分析することができるかを理解するであろう。対照はまた、データの有意性を決定するためにも有益である。例えば、所与のパラメータに関する値が対照において大きく変動する場合、試験標本における変動は、有意であるとは見なされないであろう。
【0046】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されず、したがって、言うまでもなく、変化することを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定的であることを意図しないことも理解されたい。
【0047】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1まで、その範囲の上限値および下限値の間の各介在値、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値および下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、表示範囲内の任意の具体的に除外された限界値に従って本発明内にも包含される。表示範囲がその限界値のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0048】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に説明されるものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において使用することもできるが、代表的な例証的方法および材料がここに説明されている。
【0049】
本明細書に引用されるすべての出版物および特許は、各個別の出版物または特許が、明確かつ個別に参照により援用されることが示されているかのように、参照により本明細書に援用され、それに関して出版物が引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に援用される。いかなる出版物の引用も、出願日前のその開示のためのものであり、本発明が先行発明によりかかる出版物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる場合があり、個別に確認する必要がある場合がある。
【0050】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数指示対象を含むことが留意される。特許請求の範囲が任意の所望の要素を除外するように作成されてもよいことが、さらに留意される。したがって、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連した「単に」、「のみ」等の排他的な専門用語の使用のため、または「否定的な」制限の使用のための先行記述となるよう意図される。
【0051】
本開示を読めば当業者に明らかであるように、本明細書に説明および例証される個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他の幾つかの実施形態の特徴から容易に分離されてもよい、または他の幾つかの実施形態の特徴と組み合わされてもよい、別個の構成要素および特徴を有する。列挙される任意の方法は、列挙される事象の順番で、または論理的に可能な任意の他の順番で実施されることができる。
【0052】
II.脱髄性末梢神経障害
本発明は、ポリクローナルIgGが、シュワン細胞成熟、分化、およびミエリン産生の刺激を通じてシュワン細胞の再生能力を利用することができるという発見に基づく。このように、本発明は、脱髄性末梢神経障害の統一的メカニズムを標的として、かかる障害のための幅広い治療を提供する。例えば、本発明は、身体的外傷、毒物、および糖尿病によって引き起こされる脱髄性末梢神経障害を標的とする。
【0053】
本明細書に説明されるポリクローナルIgG組成物によって治療可能な脱髄性障害としては、例えば、遺伝子学的に獲得される末梢神経障害、全身性疾患から生じる末梢神経障害、または毒素もしくは外傷によって誘発される末梢神経障害が挙げられる。
【0054】
遺伝性脱髄性神経障害(遺伝性神経障害としても既知である)は、最も一般的な遺伝性神経疾患のうちの1つである。遺伝性脱髄性神経障害は、4つの主要な下位範疇に分けられる:1)運動感覚神経障害、2)感覚神経障害、3)運動神経障害、および4)感覚性自律神経障害。具体的には、脱髄性遺伝性神経障害は、著しく減少された神経伝導および速度、ならびに末梢神経の慢性の部分的脱髄を伴う、進行性の神経障害であることが多い。Gabreels−Festen et al.,"Hereditary demyelinating motor and sensory neuropathy,"Brain Pathol.3(2):135−146(1993)。遺伝性デイエリネイティング神経障害の一般的分類の例としては、糖尿病性末梢神経障害、遠位感覚運動神経障害、または胃腸管の低減された運動性もしくは膀胱の弛緩等の自律神経障害が挙げられるがこれらに限定されない。遺伝性末梢神経障害の例としては、シャルコー・マリー・トゥース病、無βリポタンパク血症、タンジャー病、異染性白質ジストロフィー、ファブリー病、およびデジェリン・ソッタス症候群が挙げられる。
【0055】
全身性脱髄性末梢神経障害は、全身性の病気の副作用として生じる。全身性疾患に関連付けられる末梢神経障害の非限定的な例としては、ポリオ後症候群およびAIDS関連神経障害が挙げられる。更に、以下の非限定的な全身性疾患は、末梢神経障害症状を有することがある:癌、栄養失調、アルコール依存症、糖尿病、AIDS、ライム病、リウマチ性関節炎、慢性腎不全、自己免疫障害、甲状腺機能低下症、およびウイルス感染(例えば、肝炎)。
【0056】
毒素誘発性脱髄性末梢神経障害は、薬学的剤、生物剤等の神経毒への曝露、および化学物質への曝露によって引き起こされる。末梢神経障害を引き起こす毒素の例としては、化学療法剤(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、シスプラチン、メトトレキサート、または3’−アジド−3’−デオキシチミジン)、鉛、水銀、タリウム、有機溶剤、農薬、二硫化炭素、ヒ素、アクリルアミド、ジフテリア毒素、アルコール、抗HIV薬(例えば、ディダノシンおよびザルシタビン)、抗結核薬(例えば、イソニアジドおよびエタムブトル)、抗菌薬(例えば、ダプソン、メトロニダゾール、クロロキン、およびクロアムフェニコール)、精神病薬(例えば、リチウム)、放射線、ならびにアミオダロン、アウロチオグルコース、フェニトイン、サリドマイド、コルヒチン、シメチジン、ジスルフィラム、ヒドララジン、および高レベルのビタミンB6等の薬物が挙げられるが、これらに限定されない。末梢神経障害を引き起こす可能性のある更なる毒物は、下記に列挙される。
【0057】
外傷誘発性脱髄性末梢神経障害は、上述の通り、身体的ショック、傷害、または身体的外傷によって引き起こされる。
【0058】
したがって、末梢神経障害の原因は、例えば、糖尿病の合併症から、外傷、薬剤および薬物、工業化学物質、ならびに環境毒素を含むがこれらに限定されない毒素、自己免疫応答、栄養不足、血管障害および代謝障害まで多岐にわたる。例えば、脱髄性末梢神経障害は、骨硬化性骨髄腫、モノクローナルタンパク質関連末梢神経障害、遺伝性運動感覚末梢神経障害1型および3型、ならびに圧迫性麻痺に対する遺伝的な罹患性の結果として生じることがある。
【0059】
同様に、脱髄性末梢神経障害の症状は、例えば、影響を受ける神経の種類によっても変動する。例えば、脱髄性障害を罹患するヒト患者は、限定されるものではないが、視力低下、しびれ、四肢の筋力低下、震えもしくは痙性、高熱不耐性、発語障害、失禁、眩暈、または固有受容の低下(例えば、平衡、連係、四肢位置の感覚)等の脱髄性障害の1つ以上の症状を有する可能性がある。脱髄性障害の家族歴(例えば、脱髄性障害に関する遺伝的素因)を有する、または上述の脱髄性障害の軽度または不定期の症状を示すヒト(例えば、ヒト患者)は、本方法の目的のために、脱髄性障害を発症する危険性があるとみなすことができる。
【0060】
特に、脱髄性末梢神経障害によって引き起こされる感覚神経損傷は、感覚神経は、より幅広くより高度に特殊化された範囲の機能を有するため、より複雑な範囲の症状を引き起こす可能性がある。ミエリン内に包まれるより大径の感覚線維(螺旋状に巻かれ、多くの神経を絶縁する脂質に富む膜ひだ)は、振動、軽い触覚、および位置感覚を記録する。大径感覚線維への損傷は、振動および触覚を感じる能力を低下させ、特に手足における全体的なしびれの感覚をもたらす。多くの患者は、小さな物体の形状を触覚のみで認識することができず、または異なる形状間の識別ができない。この感覚線維への損傷は、(運動神経損傷と同様に)反射の損失によることがある。位置感覚の損失は、個体が、歩行、ボタン締め等の複雑な動作を連携させること、または目を閉じているときの平衡を維持することを不可能にさせることが多い。神経障害性の疼痛は、制御が困難であり、精神衛生や全体的な生活の質に深刻に影響する可能性がある。
【0061】
ミエリン鞘を伴わないより細径の感覚線維は、疼痛および温度感覚を伝達する。これらの線維への損傷は、疼痛または温度変化を感じる能力と干渉することがある。個体は、自身が切断によって傷ついたこと、または創傷が感染しつつあることを感知できないことがある。心臓発作の兆候また他の急性疾病を警告する疼痛を検出できないものもいる。(疼痛感覚の損失は、糖尿病を罹患する個体にとって特に深刻な問題であり、この集団内における高比率の下肢切断の要因である。)皮膚における疼痛受容体はまた、過敏になることもあり、その結果、通常は痛みのない刺激から激痛を感じる(異痛症)。
【0062】
自律神経損傷の症状は、多様であり、どの臓器または腺が影響を受けているのかに依存する。自律神経機能不全は、致命的になる可能性があり、また呼吸不全になる、または心臓が不規則に鼓動し始める場合、緊急の医療的ケアを要することもある。自律神経損傷の一般的症状としては、高熱不耐性につながることがある、正常な発汗の不能;感染または失禁を引き起こすことがある、膀胱制御の損失;および血管を拡張または収縮させて、安全な血圧レベルを維持するような筋肉の制御不能が挙げられる。血圧の制御の損失は、眩暈、浮遊感を引き起こすことがあり、または個体が着座位置から起立位置に急に移動したときに失神さえ引き起こすことがある(立ちくらみまたは起立性低血圧として知られる疾病)。
【0063】
胃腸の症状はしばしば、自律神経障害に付随する。腸管筋収縮を制御する神経は、正常に機能しないことが多く、下痢、便秘、または失禁につながる。個体はまた、特定の自律神経が影響を受ける場合に、摂食または嚥下に困難を覚えることもある。
【0064】
本発明のポリクローナルIgG組成物はまた、糖尿病、即ち、I型、II型の合併症として発症する脱髄性末梢神経障害を治療するために使用されてもよい。末梢神経障害は、糖尿病の主要な合併症の1つである。神経伝導速度における減少と、虚血によって引き起こされる伝導失敗への増加された耐性との双方は、糖尿病の患者および疾患動物モデルにおいて検出される最も早期の変化に含まれる。超構造研究は、軸索とシュワン細胞(SC)との双方、ならびに微小血管系における変化(例えば、軸索直径の減少および部分的脱髄)は、その全ては独立して発症するように見えることを実証している。ヒト糖尿病性神経障害において観察される末梢神経内の線維の進行的損失は、少なくとも部分的に、神経変性遅延および神経再生不全に起因する可能性があると結論付けている研究もある。代謝異常および微小血管異常、ならびに神経栄養因子の欠乏は、糖尿病性神経障害の発病に関与すると考えられている。糖尿病における血管変化は、主に虚血および神経内膜の低酸素症からなる。これらの血管異常の根底にあるメカニズムとしては、その結果生じる神経血流の神経制御における機能障害と、神経内のプロスタサイクリンおよび酸化窒素の低減された産生とを伴う、神経脈管の交感神経終端における変性変化が挙げられる。
【0065】
糖尿病性神経障害の2つの別個の臨床的顕在化は、痛みを伴う対称形の多発神経障害を置換する患者によって表されるもの、および無感覚、無痛の足を有する患者によって表されるものである。無痛の神経障害は、一般的障害であり、幾つかの研究によると、神経変性の度合いを反映している可能性がある。一方、痛みを伴う症候群は、より少ない形態学的異常と関連付けられる。痛みを伴う症候群は、変性とは逆に神経再生を反映している可能性があることも提案されているが、神経再生は糖尿病において不全であることを示唆している報告もある。糖尿病性げっ歯類の末梢感覚神経における幾つかの機能的指標の分析も、増加よりもむしろ、抑制された機能を示唆している。例えば、実験的な糖尿病は、痛覚鈍麻に転じる時間を伴う早期熱痛覚過敏、機械痛覚過敏、熱および触覚異痛症、増加されたC線維活動、ならびにオピオイドに対する低減された感受性を含む、幾つかの侵害刺激応答を誘発する。この文脈において、機械痛覚過敏は、C線維の持続した閾上機械的刺激後の増加された発火から生じることもある。
【0066】
酸化防止剤、血管拡張剤、および神経栄養因子を伴う療法は、糖尿病性神経において幾つかの機能異常および代謝異常を回復させることがあるが、それらは、異常な疼痛知覚の部分的寛解をもたらすのみであり、他の経路が効果を現すことを示唆している。本発明は、糖尿病性神経障害の治療に対するシュワン細胞の治癒能力を促進することができる。
【0067】
本発明のポリクローナルIgG組成物はまた、外傷から生じる脱髄性末梢神経障害を治療するために使用されてもよい。「外傷誘発性」神経障害は、外部の身体的傷害に由来する神経系への損傷を指す。例えば、戦争行為、自動車事故、転倒、および運動関連活動による傷害または突発的外傷は、神経を部分的または完全に分断、圧壊、圧縮、または伸張させる可能性があり、脊髄から部分的または完全に引き離して脱髄をもたらすほど強力なこともある。あまり劇的でない外傷も、深刻な神経損傷を引き起こすことがある。
【0068】
本発明のポリクローナルIgG組成物はまた、毒物によって引き起こされる末梢神経障害を治療するために使用されてもよい。末梢神経障害を生じさせる毒素は、概して薬剤および薬物、工業化学物質、ならびに環境毒素の3つの群に分けられる。本明細書で使用するとき、用語「毒物」は、その化学作用を通じて末梢神経系の1つ以上の構成要素の正常な機能を不全にする任意の物質として定義される。この定義は、空中の、食物もしくは薬剤の汚染物として摂取される物質、または治療計画の一部として意図的に取り込まれる物質を含む。
【0069】
末梢神経障害を引き起こす場合がある毒物のリストとしては、3’−アジド−3’−デオキシチミジン、アセタゾールアミド、アクリルアミド、アドリアマイシン、アルコール、塩化アリル、アルミトリン、アミトリプチリン、アミオダロン、アンホテリシン、ヒ素、アウロチオグルコース、カルバメート、二硫化炭素、一酸化炭素、カルボプラチン、クロラムフェニコール、クロロキン、コレスチラミン、シメチジン、シスプラチン、シス−プラチナム、クリオキノール、コレスチポール、コルヒチン、コリスチン、サイクロセリン、シタラビン、ダプソン、ジクロロフェノキシ酢酸、ディダノシン;ジデオキシシチジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシチミジン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジスルフィラム、ドセタキセル、ドキソルビシン、エタンブトール、エチオナミド、酸化エチレン、FK506(タクロリムス)、グルテチミド、金、ヘキサカーボン、ヘキサン、ホルモン避妊薬、ヘキサメチロールメラミン、ヒドララジン、ヒドロキシクロロキン、イミプラミン、インドメタシン、無機鉛、無機水銀、イソニアジド、リチウム、メチル水銀、メトホルミン、メトトレキサート、臭化メチル、メチルヒドラジン、メトロニダゾール、ミソニダゾール、メチルN−ブチルケトン、ニトロフラントイン、窒素マスタード、一酸化二窒素、有機リン酸塩、オスポロット、パクリタキセル、ペニシリン、ペルヘキシリン、マレイン酸ペルヘキシリン、フェニトイン、白金、ポリ塩化ビフェニル、プリミドン、プロカインアミド、プロカルバジン、ピリドキシン、シンバスタチン、シアン酸ナトリウム、ストレプトマイシン、スルホンアミド、スラミン、タモキシフェン、サリドマイド、タリウム、トルエン、トリアムテレン、トリメチルチン、リン酸トリオルソクレシル、L−トリプトファン、バコル、ビンカアルカロイド、ビンクリスチン、ビンデシン、高用量ビタミンA、高用量ビタミンD、ザルシタミン、ジメルジン;工業用剤、特に溶剤;重金属;および接着剤または他の毒性化合物の吸入が挙げられるがこれらに限定されない。
【0070】
本発明のポリクローナルIgG組成物はまた、癌療法のためのケモトキシン(chemotoxin)の投与の結果生じる脱髄性末梢神経障害を治療するために使用されてもよい。とりわけ、末梢神経障害を引き起こすことが既知であるケモトキシンは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスプラチン、パクリタキセル、プロカルバジン、ジデオキシイノシン、シタラビン、αインターフェロン、および5−フルオロウラシルである(Macdonald,Neurologic Clinics 9:955−967(1991)を参照)。
【0071】
III.脱髄性末梢神経障害の診断およびモニタリング
脱髄性末梢神経障害の診断は、当該技術分野において既知の1つ以上の方法を用いて医師または臨床医によって行われることができる。神経学的検査は、典型的に必要とされ、患者病歴(患者の症状、労働環境、社会的慣習、任意の毒素への曝露、アルコール依存症の病歴、HIVまたは他の感染症の危険性、および神経疾患の家族歴を含む)を採取すること、神経障害の原因を特定し得る試験を実施すること、ならびに神経損傷の範囲、部位、および種類を決定するための試験を実施することに関する。
【0072】
一般的な理学的検査および関連する試験は、神経損傷を引き起こしている全身性疾患の存在を明らかにすることができる。血液検査は、糖尿病、ビタミン欠乏、肝臓または腎臓の機能不全、他の代謝障害、および異常な免疫系活動の兆しを検出することができる。脳および脊髄を取り囲む脳脊髄液の検査は、神経障害に関連付けられる異常な抗体を明らかにすることができる。より専門的な試験は、他の血管もしくは心臓血管疾患、結合組織障害、または悪性腫瘍を明らかにすることができる。筋力の試験、および痙攣または攣縮の証拠は、運動線維の関与を示唆している。振動、軽い触覚、身体位置、温度、および疼痛を記録する患者の能力の評価は、感覚神経損傷を明らかにし、細径感覚神経線維かまたは大径感覚神経線維かのどちらが影響を受けているかを示すこともある。
【0073】
神経学的検査、理学的検査、病歴、および任意の先行するスクリーニングまたは試験の結果に基づき、神経障害の性質および範囲を決定するのに役立つように、追加の試験が指示されてもよい。末梢神経障害の診断に役立つ例示的な科学技術としては、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴映像法、筋電図検査、神経伝導速度、神経生検、または皮膚生検が挙げられる。末梢神経障害の診断に有用な装置としては、限定されないが、米国特許第7,854,703号が挙げられる。
【0074】
コンピュータ断層撮影法、またはCTスキャンは、臓器、骨、および組織の高速で鮮明な2次元画像を作製するために使用される非侵襲的な無痛プロセスである。X線は、様々な角度で身体を通過し、コンピュータ化されたスキャナによって検出される。データは処理され、身体または臓器の内部構造の断面画像、または「スライス」として表示される。神経学的CTスキャンは、骨および血管不整、特定の脳腫瘍および嚢胞、椎間板ヘルニア、脳炎、脊髄狭窄(脊柱管の狭窄)、ならびに他の障害を検出することができる。
【0075】
磁気共鳴映像法(MRI)は、筋肉の質および寸法を検査し、筋肉組織の任意の脂肪置換を検出し、神経線維が持続的な圧縮損傷を有しているかを決定することができる。MRI設備は、身体の周りに強力な磁場を生成する。次に、電波が身体を通過して、身体内で異なる角度にて検出することができる共鳴信号をトリガする。コンピュータは、この共鳴を、スキャンされた領域の3次元画像か、または2次元の「スライス」かのいずれかに処理する。
【0076】
筋電図検査(EMG)は、微細な針を筋肉内へ挿入して、筋肉が急速しているときと収縮しているときとに存在する電気的活動の量を比較することに関わる。EMG試験は、筋肉障害と神経障害とを区別するのに役立つことができる。
【0077】
神経伝導速度(NCV)試験は、より大径の神経線維における損傷の度合いを正確に測定することができ、症状がミエリン鞘または軸索の変性によって引き起こされているかどうかを明らかにすることができる。この試験中、プローブは神経線維を電気的に刺激し、神経線維はそれ自身の電気インパルスを生成することによって応答する。神経路に更に沿って定置された電極は、軸索に沿ったインパルス伝達の速さを測定する。遅い伝達速度およびインパルス遮断は、ミエリン鞘の損傷を示唆する傾向があり、それに対しインパルスの強度における低減は、軸索の変性の兆しである。
【0078】
神経生検は、神経組織の標本を、ほとんどの場合には下腿から、取り出して検査することに関する。この試験は、神経損傷の度合いに関する有益な情報を提供することができるが、実施が困難な侵襲的手順であり、それ自身が神経障害性の副作用を引き起こすこともある。
【0079】
皮膚生検は、医者が薄い皮膚標本を取り出し、神経線維終端を検査する試験である。NCVと異なり、これはより細径の線維に存在する損傷を明らかにすることができ、従来の神経生検と対照的に、皮膚生検は侵襲が少なく、より少ない副作用を有し、実施がより容易である。
【0080】
脱髄または再ミエリン化に関して個体をモニタリングする方法は、当該技術分野において既知である。本明細書に定義される通り、再ミエリン化に関して対象(例えば、ヒト患者)をモニタリングすることは、対象を、例えば、再ミエリン化を示唆する1つ以上のパラメータにおける改善等の変化に関して評価することを意味し、例えば、脱髄性障害の1つ以上の症状における改善をモニタリングすることができる。かかる症状としては、本明細書に説明される脱髄性障害の症状のうちのいずれかが挙げられる。再ミエリン化はまた、対象におけるミエリンの状態の直接的決定を含む方法によってモニタリングすることもでき、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)を用いて白質質量を測定することができ、または磁気共鳴分光法(MRS)脳スキャンを用いてミエリン線維の厚さを測定することができる。
【0081】
幾つかの実施形態では、評価は、ポリクローナルIgGの投与後、好ましくは、最初の投与後の少なくとも1時間後、例えば、少なくとも2、4、6、8、12、24、もしくは48時間後、または少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、もしくは20日後もしくはそれより後、または少なくとも1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週後もしくはそれより後、またはそれらの任意の組み合わせで実施される。対象は、以下の期間のうちの1つ以上で評価されることができる:治療開始の前、治療中、または1つ以上の治療の成分が投与された後。評価は、更なる治療に対する必要性を評価すること、例えば、投与量、投与の頻度、または治療の間隔を変更すべきがどうかを評価することを含むことができる。それはまた、選択された治療様式を追加または中断すること、例えば、本明細書に説明される脱髄性障害の治療のうちのいずれかを追加または中断することを含むこともできる。例えば、ポリクローナルIgGの継続的投与は、必要に応じて、1つ以上の追加の治療剤と共に行われてもよい。好ましい実施形態では、予め選択された評価の結果が獲得されると、追加のステップが取られ、例えば、対象に別の治療が施され、または別の評価もしくは試験が実施される。再ミエリン化のレベルは、患者ケアにおける決定、例えば、一連の治療の選択もしくは修正、または治療に関して償還する第三者の決断を行うために使用することができる。
【0082】
幾つかの実施形態では、再ミエリン化に関して対象(例えば、ヒト患者)をモニタリングすることは、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)スキャン、放射断層撮影法(PET)スキャン、拡散強調画像法(DW−IまたはDW−MRI)、拡散テンソル画像法、脊髄造影、磁化移動を用いて、炎症性病変(例えば、硬化)の寸法または数における低減に関してモニタリングすることを含むこともできる。幾つかの実施形態では、再ミエリン化に関して対象をモニタリングすることは、例えば、(i)ミエリンの小さな断片等の異常なタンパク質、(ii)上昇したレベルもしくは特異的種類のリンパ球、および/または(iii)異常なレベルの免疫グロブリン(IgG)分子の検出を含むことができる。一実施形態では、再ミエリン化に関して対象をモニタリングすることは、対象の神経心理学(例えば、記憶、計算、注意、判断、および推論等の様々な能力の状態)における変化の評定を含むことができる。幾つかの実施形態では、再ミエリン化に関する対象(例えば、ヒト患者)のモニタリングは、ミエリン塩基性タンパク質様物質(MBP様物質)のレベルにおける減少に関して患者の尿を試験することに関わることができ、この物質は、疾患の進行中に軸索の損傷が発生するのに伴い上昇する。幾つかの実施形態では、脱髄性障害が対象の眼または視覚に影響を与える場合、再ミエリン化に関して対象をモニタリングすることは、例えば、色覚異常における改善に関する試験に関わることができる。
【0083】
本明細書には、対象を評価して、例えば、対象が、例えば、ポリクローナルIgGの投与等の対象における再ミエリン化を増加させる療法等の脱髄性障害のための治療に応答しているか、またはしていないかを決定する方法が提供される。この方法は、対象内のミエリンのレベルまたは状態に関する基準値(例えば、予備投与値)提供することと、所望により、対象に再ミエリン化を増加させる薬物(例えば、ポリクローナルIgG)を投与することと、を含む。薬物が投与される実施形態では、方法はまた、対象内のミエリンのレベルまたは状態に関する投与後値(例えば、再ミエリン化療法を施した後のミエリンのレベルまたは状態)を提供することと、投与後値を基準値と比較して、それによって対象を評価すること、例えば、対象が療法に応答しているか、または応答していないかを決定することと、も含む。投与後値(即ち、再ミエリン化療法後の対象内のミエリンの状態またはレベルに対応する値)は、例えば、本明細書に説明される評定方法のうちのいずれかによって決定することができる。基準値(即ち、再ミエリン化療法を伴う治療前の対象内のミエリンの状態またはレベル)も、例えば、本明細書に説明される評定方法のうちのいずれかによって決定することができる。
【0084】
幾つかの実施形態では、対象が応答しているという決定は、より短い治療期間(例えば、療法に応答していない対象に推奨される治療より短い、または脱髄性障害に関する既存の療法に伴って現在使用されているものより短い期間)を対象に投与することができる/すべきである/することになる/するということを指示し、また所望により、その指示は記録される。
【0085】
幾つかの実施形態では、対象が応答しているという決定は、より短い治療期間(例えば、脱髄性障害に関する既存の療法、例えば、本明細書に説明される脱髄性障害に関する治療のうちのいずれかに伴って現在使用されているものより短い期間)が対象にとって禁忌であることを指示し、また所望により、その指示は記録される。
【0086】
幾つかの実施形態では、投与後値と基準値との比較を提供することは、再ミエリン化療法(例えば、ポリクローナルIgG)の投与の開始後、第1の時点において、対象内のミエリンの投与後レベルの決定を提供すること(例えば、第1の時点は、6、7、8、9、10、11、12、13、14日以上、(例えば、3、4、5、6、8週以上(例えば、3、4、6、12ヵ月以上)));第1の時点より前の第2の時点において、対象内のミエリンの状態またはレベルの基準値の決定を提供すること(例えば、第2の時点は、再ミエリン化療法(例えば、ポリクローナルIgG)の投与の開始より前、または約1、2、3、4、もしくは5日以内である);および対象のミエリンの投与後レベルと基準値との比較を提供することであって、投与後レベルと基準値との間の対象内のミエリンの増加したレベル(例えば、レベルが約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、約5%、約2%、または約1%以下だけ異なる)は、対象が応答していることを示す、ことを含む。
【0087】
幾つかの実施形態では、患者が療法に応答しているかどうかの決定は、対象を、再ミエリン化を示唆する1つ以上のパラメータにおける変化、改善に関して評価することによってなされ、例えば、脱髄性障害の1つ以上の症状における改善をモニタリングすることができる。かかる症状としては、本明細書に説明される脱髄性障害の症状のうちのいずれかが挙げられる。再ミエリン化はまた、対象内のミエリンの状態の直接的決定を含む方法によって、モニタリングすることもでき、例えば、磁気共鳴映像法(MRI)を用いて白質質量を測定することができ、磁気共鳴分光法(MRS)脳スキャンを用いてミエリン線維の厚さを測定することができ、または本明細書に説明される任意の他の直接的測定でもよい。
【0088】
別の実施形態では、患者が療法に応答しているかどうかの決定は、患者内に存在する炎症性病変(即ち、硬化)の寸法もしくは数における低減に関して患者をモニタリングすること;患者の神経内膜流体を、例えば、(i)上昇したレベルもしくは特異的種類のリンパ球、および/もしくは(ii)異常なレベルの免疫グロブリン(IgG)分子の存在もしくは量における低減に関してモニタリングすること;神経心理学(例えば、記憶、計算、注意、判断、および推論等の様々な能力の状態)における正の変化に関して患者をモニタリングすること;ならびに/またはミエリン塩基性タンパク質様物質(MBP様物質)のレベルにおける減少に関して患者の尿をモニタリングすることを含むがこれらに限定されない、本明細書に説明される任意の他の評定または徴候によって評価することもできる。
【0089】
幾つかの実施形態では、再ミエリン化療法(例えば、対象内の再ミエリン化を誘発する療法、例えば、ポリクローナルIgG等の療法)後、脱髄性障害の1つ以上の症状または他の上述の徴候における、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%)の改善は、患者を療法に応答していると分類するのに十分である。
【0090】
IV.ポリクローナルIgGの調製
本発明による免疫グロブリン調製物は、任意の好適な開始材料から調製することができる。例えば、免疫グロブリン調製物は、ドナー血清またはモノクローナルもしくは組み換え免疫グロブリンから調製することができる。典型的な例では、血液は、健康なドナーから収集される。通常、血液は、免疫グロブリン調製物が投与されるであろう対象と同じ種の動物から収集される(典型的には、「同種」免疫グロブリンと称される)。免疫グロブリンは、例えば、コーン分画法、超遠心分離、電気泳動調製、イオン交換クロマトグラフィー、親和クロマトグラフィー、免疫親和クロマトグラフィー、ポリエチレングリコール分画法、アルコール分画法、ナノ濾過、限外濾過/透析濾過等の1つ以上の好適な手順によって、血液から単離され、精製される。(例えば、その開示が参照により本明細書に援用される、Cohn et al.,J.Am.Chem.Soc.68:459−75(1946)、Oncley et al.,J.Am.Chem.Soc.71:541−50(1949)、Barundern et al.,Vox Sang.7:157−74(1962)、Koblet et al.,Vox Sang.13:93−102(1967)、Teschner et al.Vox Sang(92):42−55(2007)、Hoppe et al.Munch Med Wochenschr(34):1749−1752(1967),Falksveden(スウェーデン国特許第348942号)、Tanaka et al.,Braz J Med Biol Res(33)37−30(2000)、Lebing et al.,Vox Sang(84):193−201(2003)、米国特許第5,122,373号および同第5,177,194号、PCT/US2010/036470号、ならびにPCT/US2011/038247号を参照。)
【0091】
血漿由来製品中に存在する様々なウイルス汚染物を不活性化するために、清澄PptG濾液を溶剤洗剤(S/D)処理に供してもよい。血漿由来画分の洗剤処理のための方法は、当該技術分野において周知である(参考のため、Pelletier JP et al.,Best Pract Res Clin Haematol.2006;19(1):205−42を参照。)概して、任意の標準的なS/D処理が、本明細書に提供される方法と併せて使用されてよい。
【0092】
IgGを更に精製および濃縮するために、カチオン交換および/またはアニオン交換クロマトグラフィーを採用することができる。イオン交換クロマトグラフィーを用いてIgGを精製および能力するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,886,154号は、画分II+III沈殿物を、低pH(約3.8〜4.5の間)にて抽出した後、カプリル酸を用いてIgGを沈殿させ、最後に2つのアニオン交換クロマトグラフィーステップを実施する方法が説明される。米国特許第6,069,236号は、アルコール沈殿に頼らないクロマトグラフIgG精製スキームを説明する。PCT公開第WO2005/073252号は、画分II+III沈殿物の抽出、カプリル酸処理、PEG処理、および単一のアニオン交換クロマトグラフィーステップに関わるIgG精製方法を説明する。米国特許第7,186,410号は、画分I+II+IIIまたは画分II沈殿物の抽出、その後のアルカリ性pHで実施される単一のアニオン交換ステップに関わるIgG精製方法を説明する。米国特許第7,553,938号は、画分I+II+IIIまたは画分II+III沈殿物の抽出、カプリル酸塩処理、および1つかまたは2つのアニオン交換クロマトグラフィーステップに関わる方法を説明する。米国特許第6,093,324号は、約6.0〜約6.6の間のpHで行われるマクロ多孔質アニオン交換樹脂の使用を含む精製方法を説明する。米国特許第6,835,379号は、アルコール分画法の不在化でのカチオン交換クロマトグラフィーによる精製方法を説明する。上記の出版物の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に援用される。
【0093】
本明細書に提供されるIgG組成物のウイルス負荷を低減するために、組成物を好適なナノ濾過装置を用いてナノ濾過してもよい。特定の実施形態では、ナノ濾過装置は、約15nm〜約200nmの間の平均孔径を有するであろう。この使用に好適なナノフィルタの例としては、限定されないが、DVD、DV50、DV20(Pall)、Viresolve NFP、Viresolve NFR(Millipore)、Planova15N、20N、35N、および75N(Planova)が挙げられる。特定の実施形態では、ナノフィルタは、約15nm〜約72nmの間、または約19nm〜約35nmの間、または約15nm、19nm、35nm、または72nmの平均孔径を有してもよい。好ましい実施形態では、ナノフィルタは、Asahi PLANOVA35Nフィルタまたはその等価物等の約35nmの平均孔径を有するであろう。具体的実施形態では、アニオン交換ステップから回収されたIgG組成物は、30nm〜40nmの間、好ましくは35±2nmの孔径を有するナノフィルタを用いてナノ濾過される。別の好ましい実施形態では、ナノフィルタは、Asahi PLANOVA 20Nフィルタ(19±2nm)またはその等価物等の約19または20nmの平均孔径を有するであろう。具体的実施形態では、アニオン交換ステップから回収されたIgG組成物は、15nm〜25nmの間、好ましくは19±2nmの孔径を有するナノフィルタを用いてナノ濾過される。
【0094】
特定の実施形態では、免疫グロブリンは、当業者に周知のアルコール分画法ならびに/またはイオン交換および親和クロマトグラフィー方法によって製造されたγグロブリン含有製品から調製される。精製されたコーン画分IIが一般に使用される。開始コーン画分IIペーストは典型的には、約95パーセントIgGであり、4つのIgGサブタイプからなる。異なるサブタイプが、それらが獲得されるプールヒト血漿中に見出される比率とほぼ同じ比率で画分II中に存在する。画分IIは、投与可能な製品への製剤化前に更に精製される。例えば、画分IIペーストは、冷たい精製水性アルコール溶液中に溶解され、沈殿および濾過を介して不純物が除去されることができる。最終濾過の後、免疫グロブリン懸濁液は、アルコールを除去するために(例えば、100,000ダルトン以下の公称分画分子量を有する限外濾過膜を用いて)透析または透析濾過されることができる。溶液は、所望のタンパク質濃度を獲得するために濃色または希釈されることができ、当業者に周知の技術によって更に精製されることができる。
【0095】
予備ステップを使用して、特定の免疫グロブリンのアイソタイプまたはサブタイプを富化することができる。例えば、タンパク質A、タンパク質G、またはタンパク質Hセファロースクロマトグラフィーを使用して、免疫グロブリンの混合物をIgG、または特定のIgGサブタイプに関して富化することができる。(概して、Harlow and Lane,Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)、Harlow and Lane,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1988)、米国特許第5,180,810号を参照。)
【0096】
ポリクローナル免疫グロブリンの商業的供給源を使用することもできる。かかる供給源としては、Kiovig(登録商標)10%IVIG(Baxter Healthcare);Gammagard Liquid(登録商標)10%IVIG(Baxter Healthcare);Gammagard S/D(登録商標)(Baxter Healthcare);5%溶液中の1mg/mL未満のIgAを有するGammagard S/D(登録商標)(Baxter Healthcare);Gamunex(登録商標)−C、10%(Grifols USA);Flebogamma(登録商標)、5%および10%DIF(Grifols USA);Privigen(登録商標)10%溶液(CSL Behring);Carimune(登録商標)NFまたはSandoglobulin(登録商標)(CSL Behring);ならびにHizentra(登録商標)20%Liquid(CSL Behring);Octagam(登録商標)、5%および10%IVIG(Octapharma AG);Gammanorm(登録商標)16.5%SCIG(Octapharma AG)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法における使用のための免疫グロブリン調製物の商業的供給源は決定的ではない。
【0097】
代替的なアプローチは、抗原結合能を有する抗体の断片、例えば、Fab’、F(ab’)、Fab、Fv、およびrIgGを使用することである。例えば、Pierce Catalog and Handbook,1994−1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.)、Kuby,J.,Immunology,3.sup.rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York(1998)を参照。本発明のポリクローナルIgG組成物は、1つの免疫グロブリンアイソタイプの断片、即ち、IgGを含んでもよく、または異なるアイソタイプ(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、および/またはIgM)の免疫グロブリン断片の混合物を含有することができる。Fc調製物はまた、IgG免疫グロブリンアイソタイプからの断片を主に(少なくとも60%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)含有することもでき、少量の他のサブタイプを含有することもできる。例えば、Fc調製物は、少なくとも少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%のIgG断片を含有することができる。それに加えて、ポリクローナルIgG調製物は、単一のIgGサブタイプ、または2つ以上のIgGサブタイプの混合物を含むことができる。好適なIgGサブタイプとしては、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が挙げられる。特定の実施形態では、ポリクローナルIgG調製物は、IgG1断片を含む。
【0098】
免疫グロブリンは、調製中の任意の好適なときに開裂されて、Fab、F(ab’)、および/またはF(ab’)断片を規定通りに産出することができる。開裂のための好適な酵素は、例えば、パパイン、ペプシン、またはプラスミンである。(例えば、Harlow and Lane,Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)、Plan and Makula,Vox Sanguinis 28:157−75(1975)を参照。)開裂後、Fc部分は、例えば、親和クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過等によって、Fab、F(ab’)、および/またはF(ab’)断片から分離されることができる。特定の例では、免疫グロブリンは、パパインによって消化されて、Fc断片をFab断片から分離する。消化混合物は次に、カチオン交換クロマトグラフィーに供されて、Fc断片をFab断片から分離する。
【0099】
免疫グロブリン断片はまた、ハイブリドーマから、またはモノクローナル抗体を発現する他の培養系から調製することもできる。(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256:495−97(1975)、Hagiwara and Yuasa,Hum.Antibodies Hybridomas 4:15−19(1993)、Kozbor et al.,Immunology Today 4:72(1983)、Cole et al.,in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96(1985)を参照。)ヒトモノクローナル抗体は、例えば、ヒトハイブリドーマから獲得することができ(例えば、Cote et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−30(1983)を参照)、またはヒトB細胞をEBVウイルスによってインビトロで形質転換することによって獲得することができる(例えば、Cole et al.,上記を参照)。ハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体は、本明細書に説明される通り、または当業者に既知の通り、Fab、F(ab’)、および/またはF(ab’)断片から分離された精製されたFc断片であることができる。
【0100】
IgG断片はまた、組み換え技術によって、例えば、真核細胞培養系から産生することもできる。例えば、単一鎖Fv断片(scFv)は、Fv断片をコード化するDNA配列を含有するベクターでトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞によって、組み換え技術によって産生することができる。かかる組み換え哺乳類細胞を生成するためのプロセスは、例えば、Sambrook and Russell,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press(New York)2001)およびAusubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.(John Wiley&Sons,Inc.(New York)1999)に説明され、また当業者に既知である。組み換え免疫グロブリン断片はまた、例えば、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞等の他の哺乳類細胞株内で産生することもできる。組み換え細胞を培養して組み換えタンパク質を産生する方法は、当業者に既知である。
【0101】
様々な他の発現系を、組み換え免疫グロブリンIgG断片を発現するために利用することができる。これらとしては、所望のIgG断片をコード化する発現カセットでトランスフェクトまたは形質転換された昆虫細胞系、および酵母または細菌等の微生物が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、微生物は、所望により、哺乳類またはヒトのIgG断片の糖鎖付加パターンを再産生するように組み換えられることができる。
【0102】
特定の実施形態では、更なる予備ステップが、免疫グロブリン調製物を本発明による方法における使用に関して安全にするために使用することができる。かかるステップとしては、例えば、溶剤/洗剤による処理、低温殺菌、および殺菌を挙げることができる。追加の予備ステップは、ポリクローナルIgG調製物の安全性を確実にするために使用されてもよい。かかる予備ステップとしては、例えば、酵素加水分解、還元およびアルキル化を介した化学修飾、スルホン化、B−プロピオラクトンによる処理、低pH処理等を挙げることができる。好適な方法の説明はまた、例えば、米国特許第4,608,254号、同第4,687,664号、同第4,640,834号、同第4,814,277号、同第5,864,016号、同第5,639,730号、および同第5,770,199号、Romer et al.,Vox Sang.42:62−73(1982)、Romer et al.,Vox Sang.42:74−80(1990)、ならびにRutter,J.Neurosurg.Psychiat.57(Suppl.):2−5(1994)に見出すことができる(それらの開示は参照により本明細書に援用される)。
【0103】
V.薬学的組成物および投与量
本明細書に記載する通り、ポリクローナルIgGの投与が脱髄性末梢神経障害のための有効な治療計画である個体は、好ましくはヒトであるが、任意の哺乳類であってもよい。したがって、当業者によって容易に理解され得るように、本発明の方法および薬学的組成物は、ネコ科またはイヌ科対象等の飼育動物、ウシ、ウマ、ヤギ、およびブタ対象等を含むがこれらに限定されない家畜動物、野生動物(野生か動物園にいるかを問わない)、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ等の研究用動物、即ち、獣医学的用途用のものを含むがこれらに限定されない、任意の哺乳類への投与に特に好適である。
【0104】
本発明のポリクローナルIgGを含む薬学的組成物が、当該技術分野において既知である様々な方法によって投与することができることが企図される。投与の経路および/または様式は、所望の結果に応じて変化するが、典型的には、静脈内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、動脈内、または皮下であろう。薬学的組成物は、(例えば、注射または点滴による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または表皮投与に好適な許容可能な担体を含むことができる。
【0105】
本発明のポリクローナルIgGは、予防的および/または治療的処置のための局所または全身投与に有用である。例示的な投与の様式としては、限定されないが、経皮、皮下、動脈内、静脈内、鼻腔内、筋肉内、直腸、口腔、および経口投与が挙げられる。薬学的組成物は、投与の方法に応じて様々な単位剤形で投与することができる。例えば、単位剤形としては、粉末、錠剤、ピル、カプセル、座薬、アンプル、およびトローチ剤が挙げられる。活性成分は、有効量を構成する、即ち、好適な有効な投与量が単一または複数の単位用量に採用される剤形と一致するだけで十分である。正確な個々の投与量、および1日の投与量は、言うまでもないが、医師または獣医師の指示下で標準的医療原則に従って決定されるであろう。本発明の薬学的ポリクローナルIgGイムノグロビン組成物は、経口投与される場合、好ましくは消化から保護される。これは典型的には、抗体を組成物と複合して、それらを酸加水分解および酵素加水分解に対して耐性にすることによってか、または抗体を、ビヒクル等の適切な耐性担体、具体的には、リポソーム内にパッケージ化することかのいずれかによって達成される(Langer,Science 249:1527−1533(1990)、Treat et al.,in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer,Lopez−Berestein and Fidler(eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989)、Lopez−Berestein、前記、pp.317−327、概して前記を参照)。タンパク質を消化から保護する手段は、当該技術分野において周知である。
【0106】
本発明の薬学的組成物は、例えば、静脈内投与または体腔または臓器の内腔内への投与等の非経口投与に特に有用である。投与用の組成物は、一般的には、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体を有するポリクローナルIgGの組成物を含むであろう。例えば、緩衝食塩水等の様々な水性担体を使用することができる。
【0107】
錠剤、糖衣錠、カプセル、およびピルに形成されるように適合される活性化合物を含有する薬学的組成物(例えば、顆粒)において使用することができる希釈剤としては、以下が挙げられる:(a)充填剤および増量剤、例えば、デンプン、砂糖、マンニトール、およびケイ酸等、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロースおよび他のセルロース誘導体、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポリビニルピロリドン等、(c)保湿剤、例えば、グリセロール等、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、および重層等、(e)溶解を遅らせるための薬剤、例えば、パラフィン等、(f)吸収加速剤、例えば、第四級アンモニウム化合物等、(g)表面活性剤、例えば、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール等、(g)吸着性担体、例えば、カオリンおよびベントナイト等、(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに固体ポリエチレングリコール等。座薬に形成されるように適合される薬学的組成物において使用される希釈剤は、例えばポリエチレングリコール等の通常の水溶性希釈剤、および脂肪(例えば、ココア油および高エステル、[例えば、C16−脂肪酸を有するC14−アルコール])、またはこれらの希釈剤の混合物であることができる。
【0108】
本発明の薬学的組成物は、無菌であり、概して望ましくない問題を有さない。親の投与に関して、溶液および懸濁液は無菌であるべきであり、例えば、アンプル内に含有される水またはラッカセイ油等であり、適切な場合、血液等張性である。これらの組成物は、従来の周知の殺菌技術によって殺菌されてもよい。組成物は、生理的条件に近付けるために必要とされる際、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム等のpH調整および緩衝剤、毒性調整剤等の薬学的に許容される補助物質を含んでもよい。これらの製剤中のポリクローナルIgGの濃度は、幅広く変化することができ、選択される特定の投与の様式および患者の必要にしたがって、流体体積、粘度、患者の体重等に主に基づいて選択されるであろう。
【0109】
例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、組成物の適切な流動性を維持することができる。場合により、例えば、スクロース等の糖、マンニトールまたはソルビトール等の多価アルコール、および塩化ナトリウム等の等張剤を組成物中に含むことが好ましい。ニコチンアミド、L−プロリン、L−グリシン、またはL−イソロイシン等の安定剤も、採用されてよい。注射可能組成物の長期吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン等の吸収を遅延させる物質を組成物中に含むことによってもたらすことができる。
【0110】
懸濁液である薬学的組成物は、通常の希釈剤、例えば、水、エチルアルコール、プロピレングリコール等の液体希釈剤、表面活性剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル)、微晶質セルロース、アルミニウムメサヒドロオキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、またはそれらの混合物を含有することができる。
【0111】
薬学的組成物はまた、着色剤および防腐剤、ならびに香料および着香添加物(例えば、ペパーミント油およびユーカリ油)、ならびに甘味剤(例えば、サッカリンおよびアスパルテーム)を含有することもできる。
【0112】
薬学的組成物は概して、総組成物の0.5〜90重量%の活性成分を含有するであろう。
【0113】
モノクローナル抗体に加えて、薬学的組成物および薬物は、他の薬学的に活性な化合物、例えば、ステロイド、抗炎症剤等を含有することもできる。
【0114】
本発明の薬物中の任意の希釈剤は、薬学的組成物に関連して上述したもののうちのいずれかであってもよい。かかる薬物は、単独の希釈剤として200未満の分子量の溶剤を含んでもよい。
【0115】
本発明の薬学的組成物は、当該技術分野において周知である日常的に実施される方法に従って調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000、およびSustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照。薬学的組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、治療的に有効な用量または効果のある用量の免疫グロブリン調製物が、本発明の薬学的組成物において採用される。薬学的組成物は、当業者に既知の従来の方法によって剤形へ製剤化することができる。投薬計画は、最適な所望の応答(例えば、治療的応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、複数の分割された用量が、経時的に投与されてもよく、または用量は、治療状況の要件によって指示されるように均等に低減もしくは増加されてもよい。投与の容易性および投与量の均一性のために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することは、有利であることができる。本明細書で使用される単位剤形は、治療される患者のために、単位の投与量として好適である物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体に関連して所望の治療効果を生み出すように算出された、既定量の活性化合物を含有する。
【0116】
実際の投与量レベルは、実際の投薬量レベルは、患者に有害であることなく、特定の患者に対する所望の治療的応答を達成するために有効である活性成分の量を得るために、変化することができる。医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるものより少ないレベルで薬学的組成物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができる。概して、有効な用量は、多数の異なる要因に応じて変化し、治療される特定の疾患または疾病、その重篤度、患者の生理状態、投与される他の薬物、および治療が予防的であるかまたは治療的であるかが挙げられる。
【0117】
ポリクローナルIgG組成物は、複数の機会に投与することができる。単一の投与量間の間隔は、毎日、毎週1回、隔週、3週毎、4週毎、毎月1回、または毎年1回であってもよい。間隔はまた、患者における治療の進行を測定することによって指示される通り不規則であってもよい。投与量および頻度は、患者における抗体の半減期に応じて変化してもよい。
【0118】
別法として、ポリクローナルIgGは、制御放出システムで送達することができる。例えば、ポリクローナル免疫グロブリンは、静脈内点滴、埋め込み型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、または他の投与様式を用いて投与されてもよい。 一実施形態では、ポンプが使用されてもよい(Langer、上記、Sefton,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201(1987)、Buchwald et al.,Surgery 88:507(1980)、Saudek et al.,N.Engl.J.Med.321:574(1989)を参照。)別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Fla.(1974)、Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984)、Ranger and Peppas,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61(1983)を参照、同様に、Levy et al.,Science 228:190(1985)、During et al.,Ann.Neurol.25:351(1989)、Howard et al.,J.Neurosurg.71:105(1989)も参照。)また別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的、即ち、末梢神経系内の傷害部位の近位に定置することができ、したがって僅かな全身性用量のみを必要とする(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release,上記,vol.2,pp.115−138(1984)を参照)。他の制御放出システムは、Langer(Science 249:1527−1533(1990))によるレビューにおいて論じられる。
【0119】
ポリクローナルIgG免疫グロブリン調製物の場合、静注免疫グロブリン(IVIG)が一般的に使用される。IVIG製剤は、注射による投与用に設計される。ポリクローナルIgG調製物は非常に高い免疫グロブリン濃度を達成しており(例えば、幾つかの実施形態では10重量/体積%、他の実施形態では15重量/体積%、また他の実施形態では20重量/体積%、およびまた更なる実施形態では最大25重量/体積%)、治療的に有効な用量に関して体積を著しく低減させるため、本発明の組成物は、患者への皮下および/または筋肉内投与、ならびに静脈内投与に特に有利である。
【0120】
用語「有効量」は、対象における、(例えば、末梢神経外傷を治療するため、毒素誘発性末梢神経障害を治療するため等の)治療されている医学的状態の改善または修復をもたらすポリクローナルIgG調製物の量を指す。対象に投与されるべき有効量は、年齢、体重、疾患重篤度、投与経路(例えば、静脈内対皮下)、および療法への応答において異なる個体を考慮して、医師によって決定されることができる。
【0121】
投薬スケジュールは、循環半減期および使用される製剤に応じて変化してもよい。組成物は、治療的に有効な量で投与用製剤に適合する方法で投与される。投与が必要とされる活性成分の正確な量は、施術者の判断に依存し、各個体に固有である。
【0122】
好適な用量のポリクローナルIgGは、対象に毎週1回、隔週、3週毎、4週毎、または毎月1回患者に投与されてもよく、用量は、患者の体重1キログラム当たり約0.050〜5g、患者の体重1キログラム当たり約0.095〜4.7g、患者の体重1キログラム当たり約0.140〜4.4g、患者の体重1キログラム当たり約0.185〜4.1g、患者の体重1キログラム当たり約0.230〜3.8g、患者の体重1キログラム当たり約0.275〜3.5g、患者の体重1キログラム当たり約0.320〜3.2g、患者の体重1キログラム当たり約0.365〜2.9g、患者の体重1キログラム当たり約0.410〜2.6g、患者の体重1キログラム当たり約0.455〜2.3g、患者の体重1キログラム当たり約0.500〜2.0gの範囲にわたる。
【0123】
代替的実施形態では、本発明のポリクローナルIgG組成物は、毎週1回、隔週、3週毎、4週毎、または毎月1回、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.9g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.8g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.7g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.6g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.5g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.4g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.3g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.2g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.1g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜4.0g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.9g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.8g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.7g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.6g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.5g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.4g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.3g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.2g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.1g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜3.0g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.9g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.8g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.7g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.6g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.5g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.4g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.3g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.2g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.1g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜2.0g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.9g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.8g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.7g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.6g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.5g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.4g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.3g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.2g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.1g、患者の体重1キログラム当たり約0.05〜1.0gの用量で患者に投与される。IgG調製物によって治療される疾患に精通している臨床医は、当該技術分野において既知の基準に従って、患者にとって適切な用量を決定することができる。
【0124】
他の実施形態では、IVIG製品は、毎回、患者の体重1キログラム当たり約0.2g〜患者の体重1キログラム当たり約4g以内の範囲で対象に投与されることができ、投与の頻度は、週に2回、週に1回、月に2回、月に1回、または隔月に1回の範囲にわたってもよい。他の例示的なIVIGの用量範囲は、患者の体重1キログラム当たり約0.1〜約1、または約0.2〜約0.8gの間であり、典型的には月に2回または月に1回の頻度で投与される。例えば、IVIGは、月に2回のスケジュールに従って、患者の体重1kg当たり0.2、0.4、0.6、または0.8gの用量で患者に投与される。他の場合では、IVIGは、月に1回のスケジュールに従って、患者の体重1kg当たり0.2、0.4、0.6、または0.8gの用量で投与される。
【0125】
脱髄性末梢神経障害に対するIVIG治療の期間は、変化することができ、僅か3〜6ヵ月であってもよく、または18ヵ月、2年、5年、または10年もの長さであってもよい。幾つかの場合では、IVIG治療は、患者の寿命の残存期間続いてもよい。IVIG治療の有効性は、投与の全過程中、特定の時間周期の後、例えば、18ヵ月の治療プランの間、3ヵ月毎または6ヵ月毎に評定されてもよい。他の場合では、有効性は、より長い治療過程の間、9または12ヵ月毎に評定されてもよい。投与スケジュール(用量および頻度)は、任意の後続の投与に応じて調整されてもよい。
【0126】
静脈内投与に関して、ポリクローナルIgGは、0.5mL/kg/時間(0.8mg/kg/分)の例示的初期点滴速度で30分間投与され、一方、例示的維持点滴速度は、耐容性が認められる場合、最大5mL/kg/時間(8mg/kg/分)まで30分毎に速度を増加させることになる。点滴時間は、用量、点滴の速度、および忍容性に応じて変化してもよい。
【0127】
患者の体重40kg以上の個体への皮下投与に関して、例示的初期点滴速度は、20mL/時間/部位で30mL/部位であり、一方、例示的維持点滴速度は、20〜30mL/時間/部位で30mL/部位である。患者の体重40kg未満の個体への皮下投与に関して、例示的初期点滴速度は、15mL/時間/部位で20〜30mL/部位であり、一方、例示的維持点滴速度は、15〜20mL/時間/部位で20mL/部位である。点滴時間は、用量、点滴の速度、および忍容性に応じて変化してもよい。
【0128】
本発明に従って、一連の治療を完了するのに必要とされる時間は、医師によって決定されることができ、僅か1日から1ヵ月超の範囲にわたってもよい。特定の実施形態では、一連の治療は、1〜6ヵ月であることができる。
【0129】
非経口投与用組成物を調製するための方法は、当業者に既知であり、または明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,15th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1980)等の出版物により詳細に説明される。
【0130】
VI.併用療法
【0131】
幾つかの実施形態では、ポリクローナルIgGは、別の治療、例えば、脱髄性障害(例えば、本明細書に説明される脱髄性障害のうちのいずれか)のための別の治療に伴う併用療法として、対象に投与されることができる。例えば、併用療法としては、対象(例えば、ヒト患者)に、脱髄性障害を罹患する、または発症する危険性を有する対象に治療的利益を提供する1つ以上の追加的薬剤を投与することを挙げることができる。幾つかの実施形態では、ポリクローナルIgGおよび1つ以上の追加的薬剤は、同時に投与される。他の実施形態では、ポリクローナルIgGは時間的に第1番目に投与され、1つ以上の追加的薬剤は時間的に第2番目に投与される。幾つかの実施形態では、1つ以上の追加的薬剤は、時間的に第1番目に投与され、ポリクローナルIgGは時間的に第2番目に投与される。ポリクローナルIgGは、それまでにまたは現在投与されている療法を置き換える、または補強することができる。例えば、ポリクローナルIgGを用いた治療の後、1つ以上の追加的薬剤の投与は、停止または減少することができ、例えば、より低いレベルで投与されることができる。他の実施形態では、先行療法の投与は維持される。幾つかの実施形態では、先行療法は、ポリクローナルIgGのレベルが治療効果を提供するのに十分なレベルに達するまで維持されるであろう。2つの療法は、組み合わせて投与されることができる。
【0132】
幾つかの実施形態では、脱髄性障害のための第1の療法、例えば、インターフェロンβ1a(Avonex)、インターフェロンβ1b(Rebif)、酢酸グラチラマー(Copaxone)、ミトキサントロン(Novantrone)、アザチプリン(Imuran)、シクロホスファミド(CytoxanまたはNeosar)、シクロスポリン(Sandimmune)、メトトレキサート、クラドリビン(Leustatin)、メチルプレドニソン(Depo−MedrolまたはSolu−Medrol)、プレドニソン(Deltasone)、プレドニゾロン(Delta−Cortef)、デキサメタゾン(Medrol or Decadron)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、またはコルチコトロピン(Acthar)を受ける個体は、ポリクローナルIgGを投与されることもできる。幾つかの実施形態では、ヒトがポリクローナルIgGを投与される場合、第1の療法は中止される。他の実施形態では、ヒトは、第1の予備選択された結果に関して、例えば、脱髄性障害、例えば、本明細書に説明される脱髄性障害の症状のうちのいずれかの1つ以上の症状における改善(増加された再ミエリン化等)に関してモニタリングされる。幾つかの実施形態では、第1の予備選択された結果が観察されると、ポリクローナルIgGによる治療は減少または中止される。幾つかの実施形態では、ヒトは次に、ポリクローナルIgGによる治療が中止された後、第2の予備選択された結果、例えば、脱髄性障害の症状の悪化に関してモニタリングされる。第2の予備選択された結果が観察されると、ヒトへのポリクローナルIgGの投与が復活もしくは増加され、または第1の療法の投与が復活され、またはヒトは、ポリクローナルIgGもしくは増加された量のポリクローナルIgGと第1の治療計画との双方を投与される。
【0133】
他の実施形態では、脱髄性障害のための第1の療法を受ける患者は、次にポリクローナルIgGで治療され、引き続き同一または低減された量で第1の療法を受ける。別の実施形態では、第1の療法による治療は、ポリクローナルIgGによる治療と時間的に重複するが、第1の療法による治療は、その後中止される。
【0134】
本発明の幾つかの実施形態では、治療的に有効な量のポリクローナルIgGは、抗炎症と共にそれを必要とする患者に共投与される。抗炎症剤は、身体メカニズムに作用することによって炎症を低減する既知の種類の薬学的薬剤である(Stedman’s Medical Dictionary 26e.,Williams and Wilkins,1995)、Physicians Desk Reference 51ed, Medical Economics,(1997))。
【0135】
本発明の方法と共に有用である抗炎症剤としては、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)が挙げられる。NSAIDSは典型的には、身体のプロスタグランジンを合成する能力を阻害する。プロスタグランジンは、ホルモン様化学物質のファミリーであり、その幾つかは細胞傷害に応答して作成される。ヒトへの投与が認可されている特定のNSAIDSとしては、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナク、スリンダク、オキサプロジン、ジフルニサル、アスピリン、ピロキシカム、インドメトシン、エトドラク、イブプロフェン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ナブメトン、トルメチンナトリウム、およびケトロラクトロメタミンが挙げられる。
【0136】
本発明の方法と共に有用である他の抗炎症剤としては、例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸ナトリウム、オルサラジン、およびサルサレートなどのサリチレートが挙げられる。
【0137】
本発明の方法と共に有用な他の抗炎症剤としては、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤が挙げられる。COXは、アラキドネートのプロスタグランジンH2(PGH2)への変換を触媒し、COX阻害剤はこの反応を阻害する。COXはまた、プロスタグランジンHシンターゼ、またはPGHシンターゼとしても既知である。2つのCox遺伝子、Cox−1およびCox−2は、幾つかの種から単離されている。COX−2は、大部分の組織内で密接に調節され、通常は、例えば、炎症、リウマチ性関節炎および骨関節炎、腎臓疾患、ならびに骨粗鬆症等の異常な条件においてのみ誘発される。COX−1は、血小板および腎臓機能およびインターホメオスタシス(inter homeostasis)を維持するように恒常的に発現されると考えられる。本発明の方法において有用な典型的なCOX阻害剤としては、エトドラク、セレブレックス、メロキシカム、ピロキシカム、ニメスリド、ナブメトン、およびロフェコキシブが挙げられる。
【0138】
本発明の方法における投与のためにポリマーマトリックス内へ組み込むことができる好ましい抗炎症剤としては、イソニキシン、アントルメチングアシル、プログルメタシン、ピケトプロフェン、ジフェナミゾール、エピリゾール、アパゾン、フェプラゾン、モラゾン、フェニルブタゾン、ピペブゾン、プロピフェナゾン、ラミフェナゾン、チアゾリノブタゾン、アスピリン、ベノイレート、アセチルサリチル酸カルシウム、エテルサラート、サリチル酸イミダゾール、リシンアセチサリチレート、サリチル酸モルホリン、1−ナフチルサリチレート、フェニルアセチサリチレート、アンピロキシカム、ドロキシカム、S−アデノシルメチオニン、アミキセチン、ベンジダミン、ブコロメ、ジフェンピラミド、エモルファゾン、グアヤズレン、ナブネトン、ニメスリド、プロクワゾン、超酸化物不均化酵素、およびテニダップが挙げられる。
【0139】
本発明の方法における投与のためにポリマーへ追加することができる抗炎症剤としては、エトフェナメート、タルニフルメート・テロフェナメート、アセメタシン、アルクロフェナク、ブフェキサマク、シンメタシン、クロピラク、フェルビナク、ペンクロジン酸、フェンチアザク、イブフェナク、インドメタシン、イソフェゾラク、イソキセパク、ロナゾラク、メチアジン酸、モフェゾラク、オキサメタシン、ピラゾラク、スリンダク、チアラミド、トルメチン、トロペシン(Tropesin)、ゾメピラク、ブマジゾン、ブチブフェン、フェンブフェン、キセンブシン・クリダナク、ケトロラク、チノリジン、ベノキサプロフェン、ベルモプロフェン、ブクロキシ酸、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、チブプロフェン、チブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プロジン酸(Prodznic Acid)、スプロフェン、チアプロフェン酸、ザルトプロフェン、ベンズピペリロン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、スキシブゾン、アセタミノサロール、パルサルミド、サリチル酸フェニル、サルアセトアミド、サリチル硫酸、イソキシカン、ロモキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ε−アセタミドカプロン酸、ベンダザク、α−ビサボロール、パラニリン、ペリソキサール、およびジレウトンが挙げられる。
【0140】
本発明の方法における投与のためにポリマー骨格内へ組み込むことができる抗炎症剤としては、エンフェナム酸、アセクロフェナク、グルカメタシン、アルミノプロフェン、カイプロフェン、キシノプロフェン(Xinoprofen)、サルサレート、3−アミノ−4−ヒドロキシブチル酸、ジタゾール、フェプラジノール、およびオキサセプロルが挙げられる。
【0141】
本明細書に説明されるような式(I)のポリマーの骨格内へ組み込むのに好適なオルト官能性を有する抗炎症剤としては、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、アムフェナク、ブロムフェナク、ジクロフェナクナトリウム、エトドラク、ブロモサリゲニン、ジフルニサル、フェンドサル、ゲチチジック酸、サリチル酸グリコール、サリシリック酸、メサラミン、オルサラジン、サリチルアミドO−酢酸、スルファサラジンが挙げられる。
【0142】
本明細書において商品名によって称される任意の抗炎症剤に関して、商品名の製品か、または製品に由来する抗炎症活性を有する活性成分かのいずれかが使用されることができることを理解すべきである。それに加えて、ポリマー骨格内への組み込みに関して本明細書に示される好ましい薬剤は、同様にポリマーに好ましく追加されることができ、またはポリマーマトリックス内へ組み込まれることもできる。ポリマーに追加されることができる好ましい薬剤はまた、ポリマーマトリックス内へ好ましく組み込まれることもできる。
【実施例】
【0143】
実施例を、本発明を例証するために以下に提供する。これらの実施例は、本発明をいかなる特定の用途または動作理論にも束縛することを意味しない。
【0144】
実施例1:シュワン細胞に対するIVIG効果の調査
【0145】
ヒト血清由来ポリクローナル免疫グロブリンのシュワン細胞ホメオスタシス、分化、および成熟に対する直接的効果を、様々な分子および細胞変数を通じて実証される通り、3つのモデルを用いて調査した:1)初代ラットシュワン細胞培養モデル、2)p57kip2抑制シュワン細胞モデル、および3)PNSニューロンとミエリン形成シュワン細胞との共培養。
【0146】
1.1.RATシュワン細胞モデル1の調製このモデルでは、新生児ラットの坐骨神経から単離した未処理の初代シュワン細胞(SC)を培養した。この段階では、SCは、未成熟であり、分化プロセスを未だ開始していない。培養中、それらは、最も高い可能性としては内因性分化阻害剤の存在に起因して、その分化プログラムに沿って進行せず増殖性のままであるが、未成熟である(Heinen et al.,2008a)。
【0147】
1.2.P57KIP2抑制シュワン細胞モデル2の調製:本発明者は、p57kip2遺伝子をミエリン形成グリア細胞分化、成熟、およびミエリン形成の新規の内因性阻害剤として特定した。p57kip2遺伝子の長期のshRNA依存性抑制は、初代SC分化を軸索接触から離すことが実証された。これは、細胞周期離脱、変更されたSC形態、および誘発されたミエリン発現によって明らかになった(Kury et al.,2002、Heinen et al.,2008a、Heinen et al.,2008b)。この第2のモデルでは、p57kip2抑制SCを、対照トランスフェクト細胞、即ち、非分化細胞との比較のために使用した。この培養系は、軸索の不在下でSC分化および成熟を定量的にインビトロで観察するまたとない機会を提供する。
【0148】
1.3.PNSニューロンとミエリン形成シュワン細胞との共培養物の調製-モデル3:このモデルでは、ミエリン形成ニューロン/SC共培養物を生成した。培養調製物は、未成熟な感覚ニューロンとPNSのシュワン細胞前駆体との双方を含有する、胎児WistarラットまたはC57/BL6マウス後根神経節から作成した。この共培養は、インビボ状況を模倣し、最終的な巻き/ミエリン形成プロセスの研究、およびこの複雑な相互作用が免疫グロブリン投与によって影響され得るかどうかの研究の可能性を提供する。共培養条件および調製物の最適化は、発明者の実験室において使用される確立されたプロトコル、またはPaivalainen et al.,(2008)から出版されているプロトコルに幾つかの修正を加えたものに従って行った。IVIG刺激は、透析IGIV/緩衝液調製物を伴うミエリン形成プロセスの開始に平行して実施した。IGIV/緩衝液透析は、補足物を有さない細胞培地に対して実施した。全ての実験は、1つのIGIV濃度、20mg/mlで実施した。刺激の期間は、透析IGIV/緩衝液の添加後、3および6日後にミエリン形成動力学(節間形成)を分析することによって、決定した。
【0149】
1.4.細胞形態:細胞形態を、モデル1(培養中のラットSC)およびモデル2(p57kip2抑制SC)において、モデル1に関しては10mg/mlおよび20mg/mlのIVIGによる刺激を伴い最大9日間(用量依存性を観察するため)、モデル2に関しては最大7日間の刺激(9日間トランスフェクション)で調査した。実験は、非透析IGIVおよび透析IGIVの双方、ならびに緩衝液調製物を用いて実施した。IVIGおよび緩衝液透析を、補足物を有さない細胞培地に対して実施した。全てのモデル2実験は、1つの透析IGIV濃度(20mg/ml)で実施した。モデル2では、細胞成長および分化動力学も、透析IVIGによる刺激の3および7日後に細胞突起長さを測定することによって決定した。
【0150】
1.5.細胞死/増殖:細胞死/増殖を、非透析および透析IVIG/緩衝液調製物による2日間の刺激後にモデル1において調査した。IVIG/緩衝液透析を、補足物を有さない細胞培地に対して実施した。全ての実験は、1つのIVIG濃度(20mg/ml)で実施した。2細胞増殖を測定するために2つのアッセイを採用した:Ki−67抗原に対する免疫細胞化学的染色と、BrdUに対するイムノシトケミカル染色。Ki−67抗原は、増殖に関する細胞マーカーとして働く核タンパク質である。BrdU(ブロモデオキシウリジン)は、増殖する細胞の標識に使用されるチミジンのヌクレオチド類似体である。カスパーゼ−3に対する免疫細胞化学的染色を、アポトーシスマーカーとして採用した。カスパーゼ−3は、アポトーシスを起こした細胞内で活性化され、従って細胞死マーカーとして使用されるプロテアーゼである。細胞は、8時間および24時間の2つの異なるBrdUパルス期間後に固定した。
【0151】
1.6.遺伝子発現:遺伝子発現を、非透析および透析IVIG/緩衝液調製物の双方を用いて、モデル1に関しては最大9日間の刺激、またモデル2に関しては7日間の刺激(9日間トランスフェクション)に曝露した、モデル1(培養中のラットSC-第1.1章)およびモデル2(p57kip2抑制SC-第1.2章)において分析した。透析SYNAGIS調製物を、未処理SC(モデル1)におけるIgG1対照として使用した。IVIG/緩衝液/SYNAGIS透析を、補足物を有さない細胞培地に対して実施した。全ての実験は、1つのIVIG濃度、20mg/mlで実施した。ミエリン遺伝子(P、MBP)およびFc受容体(CD64、CD32、およびCD16)の転写を、即時RT−PCRを用いて測定した。
【0152】
実施例2:シュワン細胞は、IVIGを用いた定温放置に応答する
【0153】
2.1.形態:IVIG処理はシュワン細胞形態に影響を与えることが観察された。10mg/mlのIVIGの存在下で、またより広範囲に20mg/mlのIVIGの存在下で培養したSCは、より大きい体細胞および核を有することが分かった。これは、SC形状および細胞骨格もしくは接着特性、異なる細胞密度の結果への直接的な影響であるのか、または細胞表面上のIVIG結合部位(単数または複数)に接続した可能性のある別個の細胞表面変化を反映したものであるのかは現在不明である。
【0154】
著しく加速された細胞突起の成長が、モデル2(p57kip2抑制)を用いたIGIVによる刺激に際して測定された。この効果は、分化プロセスの早期段階でのみ観察され、シュワン細胞の分化動力学に対するIVIG効果を示唆している。説明すると、細胞突起の成長は、抑制されたp57kip2レベルに依存して見出された成熟パラメータである。一方、アクチンフィラメントアセンブリおよび構造に対する効果は、TRITC共役ファロイジン染色によって現される通り、IVIG刺激後に観察することができなかった。
【0155】
2.2.細胞死/増殖(モデル1):非透析IVIG(20mg/ml)調製物による刺激後、未処理SCの増殖率は、増殖マーカーBrdUおよびKi−67を用いたアッセイによって現される通り、著しく低減された。図1〜2を参照。増殖率に対するIVIG依存性効果は、IVIG透析に伴い減退したが、それ以降は統計的に有意に存続した。現在、カスパーゼ−3に対する負の染色に基づくIVIGによる処理後のアポトーシスの誘発の証拠はない。
【0156】
2.3.遺伝子発現:非透析および透析IVIG/緩衝液調製物による非トランスフェクトSC(モデル1)の刺激は、処理の初めの3日間以内にPの僅かな上方調節およびMBP遺伝子の強い上方調節を導いたが、より長い定温放置期間後は導かなかった。非透析および透析IVIG/緩衝液調製物によるp57kip2抑制細胞(モデル2)の刺激も、ミエリン遺伝子発現に関して同様の結果を導いた。双方のミエリン遺伝子の発現および上方調節は、対照トランスフェクト細胞よりもp57kip2抑制細胞において著しく強かった。Fc受容体の遺伝子調節の観察は、シュワン細胞がCD64およびCD32を発現すること、またp57kip2に関する長期の抑制はこれらの遺伝子の著しい上方調節を導くことを示した。未成熟なSCにおいて、検出可能なレベルのCD64Fc受容体発現が存在した。分化シュワン細胞において(内因性阻害剤p57kip2の抑制に際して)、CD64レベルは、IVIG刺激に伴い著しく増加された。
【0157】
重要なことに、モノクローナルIgG1対照(Synagis,Avastin and Herceptin)は、ミエリン遺伝子発現に対して著しい効果を示さなかった。非透析および透析IVIG/緩衝液調製物によるp57kip2抑制細胞(モデル2)の刺激は、同様の範囲までミエリン 遺伝子発現を誘発した。ここでも、MBP発現はIVIG刺激に際して強く誘発されたが、一方P0発現は処理によって軽度に誘発された。ミエリン遺伝子誘発は、7日間の刺激期間中に観察することができ、したがって早期段階に限定されなかったことに留意されたい。更に、p57kip2遺伝子の発現は、シュワン細胞分化の内因性阻害剤をコード化することが見出され、対照トランスフェクトされた(非分化)細胞において著しく低下された。
【0158】
全ての既知のFcγ受容体の遺伝子調節の観察は、シュワン細胞がCD64Fc受容体を発現することを示した。分化シュワン細胞(モデル2)において、CD64レベルは、対照トランスフェクト(非分化)細胞と比較して著しく増加された。IVIG刺激に応答したCD64受容体発現の調節は観察できなかった。非透析緩衝液対照の効果は、実施した全ての遺伝子発現実験において観察されたことに留意されたい。この効果は、しかしながら、透析後に減退した。更に、遺伝子発現分析はしたがって、透析IVIG調製物のみで実施した。
【0159】
2.4.発見の要約:調査の初めの18ヵ月では、初代SCが、分化プロセスの初期段階における加速された細胞突起の成長と共に、変化した細胞形態を伴ってIVIG定温放置に応答することが発見された。IVIGによる定温放置また、細胞生存に影響を与えることなくシュワン細胞増殖を低減させることが見出された。更に、2つの主要なミエリン遺伝子、PおよびMBPの発現は、IVIGによる刺激後、未成熟なSCおよび分化SCにおいて誘発された。データは、初代ラットシュワン細胞がCD64Fc受容体を発現すること、また分化シュワン細胞において(内因性阻害剤p57kip2の抑制に際して)、CD64レベルがIVIGへの曝露に伴い著しく増加されたことを示している。証拠はまた、分化SCにおけるFc受容体(特に、CD64)の上方調節に関する強い示唆を提供する。更に、シュワン細胞表面上でのヒトIVIGの特異的結合が示された。
【0160】
これらの発見は、SCが免疫能力を示すかもしれないという仮説を支持している。細胞突起の加速された成長と組み合わされた、アポトーシスの兆しを伴わずミエリン遺伝子の誘発を伴う低減された増殖率は、IVIGによる未成熟なSCにおける分化プロセスの促進を示唆する。シュワン細胞が、応答可能であるだけでなく免疫グロブリンに特異的に結合すること、またIVIG刺激がシュワン細胞前駆体成熟を促進することができることを実証する、初めてのインビトロ結果が存在する。
【0161】
実施例3:遺伝子発現
【0162】
分化(p57kip2抑制細胞、モデル2)および非分化(対照抑制細胞、モデル2)シュワン細胞遺伝子発現に対するIVIG依存性効果の更なる検証のため、GeneChip Array分析(Miltenyi Biotec,Germanyによって実施された)に関する4つの独立した実験から16のRNA標本を収集した。標本の妥当性確認を、MBP、P、p57kip2、およびCD64遺伝子の発現レベルの決定によって実施した。
【0163】
統計的および機能的分析を実施した。IVIGによる処理に際して著しく上方調節または下方調節されると特定された遺伝子を、表1および2に提供する。更なる目的は、更なる遺伝子特定および獲得した結果の妥当性確認である。
【0164】
(表1)非分化シュワン細胞+/−IVIGの比較
【0165】
(表2)分化シュワン細胞+/−IVIGの比較
【0166】
観察されたミエリン遺伝子発現の誘発(特に、PおよびMBP)をタンパク質レベルで確認するため、透析IVIG/緩衝液による処理後のp57kip2抑制細胞と対照抑制細胞(モデル2)とを比較してWesternブロット分析を実施した。分化シュワン細胞のPタンパク質レベルおよびより少ない範囲のMBPがIVIG処理後に増加されたことを実証することができた。
【0167】
実施例4:免疫関連タンパク質
【0168】
シュワン細胞表面への直接的なIVIG結合を確認することが重要であった。抗ヒトFab特異性F(ab)'および抗ヒトFcγ特異性F(ab)'抗体を適用することにより、IVIG内のヒト免疫グロブリンは、シュワン細胞表面に特異的に結合することが示された。培養中の生きたシュワン細胞を、IVIGで刺激し、洗浄、固定した後、ヒトFab断片、ヒトFcγ断片に対して、または両エピトープに対して、二重染色法の組み合わせで別々に染色した。特異的表面結合は、細胞の核周辺領域内部に局部集中することができた。これらの結合研究は、IVIGおよびIgG1対照(Avastin and Herceptin)を使用して未処理シュワン細胞(モデル1)を用いて、またIVIGを使用して分化シュワン細胞(モデル2)を用いて実施した。CD64受容体タンパク質もシュワン細胞表面上に発現されるかという疑問に答えるために、2つの抗CD64抗体を用いた染色実験が開始された。
【0169】
CD64受容体タンパク質もシュワン細胞表面上で発現されたかを決定するために、2つの抗CD64抗体を用いた染色実験を実施した。1つの抗CD64抗体は、シュワン細胞上でラットCD64受容体に特異的に結合することが分かり、拡散した受容体染色は、非分化細胞の細胞表面上に分散された。それと比較して、分化細胞における受容体染色は、核周辺領域の上に体細胞に集中した。検出されたCD64信号は、IVIG結合信号と一致しなかった(免疫染色の比較)。
【0170】
実施例5:節間形成
【0171】
インビトロミエリン形成モデル(モデル3)の効率および再現性を改善するために、C57/BL6マウス胚に由来するDRG培養物を用いた多数の実験的改善ステップを実施し、確立した。この目的を達成するために、Paivalainen et al.(2008)に従うプロトコルが修正され、軸索/シュワン細胞相互作用に対するIVIG適用の効果を研究するために現在使用することができる。IVIG刺激(20mg/ml)を、透析IGIV/緩衝液調製物を用いたミエリン形成プロセスの開始に付随して実施した。
【0172】
ミエリニゼーションの開始後7日において分析に最適な時点を決定した後、統計的に有意な数のIVIG刺激実験(n=9)を実施した。ミエリン鞘の生成(節間形成)を調整する免疫グロブリン処理の能力を評価するために、処理したIVIGの節間の数(共培養物における核の全体数に対して正規化)を、対照共培養物における節間の数と比較した。僅かに増加された節間密度に対する傾向を観察することができたが、処理後のミエリンセグメント形成における統計的有意差は検出されなかった。
【0173】
実施例6:インビボ神経修復パラダイム
【0174】
6.1.要約
【0175】
初代ラットシュワン細胞培養物に基づくインビトロの発見をインビボのパラダイムに転換するために、慢性末梢神経病変を、いわゆる「神経再生期間」中にIVIGまたは対照緩衝液で処理した成体ラットにおいて誘発した。神経末端の縫合再連結を用いて坐骨神経を切断し、神経再生を3カ月間阻止した。この変性期間後、神経を結紮させて再生を起こさせ、IVIGまたは緩衝液を投与した(腹腔内注射)。神経を、動物が犠牲になるまで更に3カ月間再生させた。
【0176】
上述のシュワン細胞に関する外科的アプローチを使用して、IVIG刺激が傷付いた末梢神経の活動を修復することができるかを決定した。3カ月の再生(およびIVIG/緩衝液処理)期間中、多数の機能試験を生きたラット上で実施した。その後、動物を犠牲にし、坐骨神経を解剖し、固定し、シュワン細胞/ミエリンおよび軸索反応の説明を目的とする形態学的および免疫組織化学的な更なる分析のために埋め込んだ。予備結果を、機能分析から獲得した。これらの予備発見は、2つの群(IVIGで処理した動物対緩衝液で処理した動物)の間に差が存在することを示す。特に、IVIGで処理した動物は、緩衝液で処理した動物と比較して、より長くより広範な足跡面積(足と床との間の接触領域)を示した。これらの足跡面積はまた、処理期間中に徐々に増加され、これは増加された着陸圧(1歩進むために脚によって使用される力、または足が表面にかける圧力に対応する)を伴った。これらの全体的な第1の予備データは、IVIGで処理した動物は、歩行行動の加速された正常化、および脚使用における増加された強度を経験することを示唆している。
【0177】
6.2.方法
【0178】
シュワン細胞生存に対するIVIG依存性効果を調査した。具体的には、これまでに確立されている慢性末梢神経除神経モデル(Fu and Gordon;J Neurosci 1995)を用いて、除神経された神経端における増殖、ならびに再ミエリン化および軸索再生をインビボで研究した。このインビボモデルは、多くのヒト神経病変において観察される神経条件と類似した神経条件を特徴とする。このインビボモデルはまた、変性プロセスとしてのみの再生事象に焦点を当てる利益を提供する(即ち、免疫反応は一時的に除外される)。
【0179】
この目的のために、24匹の成体Lewisラットの坐骨神経を切断し、神経末端のサーチュリング再連結を用いて神経再生を阻止した。この設定は、慢性的に傷付いた、除神経された神経端をもたらす。再生を、神経切断後3カ月の期間、阻止した。この期間中、動物に対して機能試験は実施しなかった。
【0180】
変性の3カ月後、全24匹のラットを、近位神経端を遠位神経譚に縫合し、それによって神経再生を起こさせる遅延坐骨神経結紮(吻合)に供した。この慢性設定において、再生能力全体は、急性神経病変と比較して著しく低減されたことに留意されたい。この初めの3カ月の間に、軸索およびミエリンの変性プロセスが完了した。
【0181】
第1の実験セット(研究1)において、IVIG適用後の抗薬剤抗体(ADA)の生成およびヒトIgG血漿中レベルを、ELISA試験を用いて健康なラット(無病変神経)において研究した。次に、IVIGに対するADAを、病変を有する処理された動物において研究2における二次的読み出しとしてモニタリングした(下記参照)。
【0182】
第2の実験セット(研究2)において、慢性末梢神経病変を有するLewisラットを、体重1kg当たり1gのIVIGで処理し(高用量処理)、その後神経結紮させた(3カ月の再生期間)。IVIG適用を、腹腔内注射を用いて、再生段階の初めの月は週に1回、次に最後の2か月は2週に1回行った。神経病変を有する対照ラットは、IVIG製剤緩衝液注射を受けた。対照緩衝液で処理された動物群およびIVIGで処理された動物群は、それぞれ12匹の成体メスラットで構成された。IVIG処理期間中、ADAをモニタリングするため、およびヒトIgGの半減期を決定するために血液標本を尾静脈から収集した(研究1を参照)。血漿標本を、処理に先行して2週間毎に収集した。
【0183】
6.2.結果
【0184】
神経末端の再連結後の標的臓器の機能の回復度合いを試験するために、週毎の機能評価試験を実施した。感覚機能を、疼痛刺激の適用後、足指4および5の引き下げ応答を試験することによって評価した(鉗子によるつまみ試験)。筋力および筋肉線維の再生を、開脚試験を用いて分析した。これらの2つの機能試験、および動物の体重のモニタリング(健康および福祉パラメータ)を、毎週1回行った。動物を更に、足跡および歩行跡のモニタリング(即ち、「キャットウォーク分析(cat walk analysis)」)に毎週1回供して、坐骨神経の機能回復を評価した。
【0185】
この研究の終了時点で、21匹の動物が残された:緩衝液対照注射を受けた10匹の動物、およびIVIGで処理された11匹の動物。全てのラットを犠牲にし、再生末梢神経端、および対側の健康な対照神経を更なる分析のために収集した。この目的のために、動物を3つの群に分けた。
【0186】
群Iは、4匹の緩衝液で処理された動物および4匹のIVIGで処理された動物で構成される。これらの動物の(健康なおよび切断された)坐骨神経端は、電子顕微鏡分析(EM)のために処理されることになる。軸索密度の決定(したがって、再生効率の測定)から離れて、これはまた、再ミエリン化効率を決定するためのg比算出(軸索およびそのミエリン鞘の直径で除した軸索の直径)を含むであろう。この分析は、現在進行中である。これらの動物の機能評価データ(キャットウォークデータ、つまみ試験、および開脚行動)は決定され、予備結果が後述される。
【0187】
群IIは、3匹の緩衝液で処理された動物および4匹のIVIGで処理された動物で構成される。これらの動物の(健康なおよび切断された)坐骨神経端は、細胞再分化および再生の度合いを決定するための軸索、ミエリン、グリアのマーカーに対する免疫組織化学的染色(IHC)のために使用されることになる。神経は、現在処理されており、この研究も進行中である。これらの動物の機能評価データ(キャットウォークデータ、つまみ試験、および開脚行動)は決定され、予備結果は利用可能であり、後述される。
【0188】
群IIIは、3匹の緩衝液で処理された動物および3匹のIVIGで処理された動物で構成される。これらの動物の切断された坐骨神経端は、吻合を行わなかったため、解剖学的な再生の兆しを示さなかった。これらの動物の機能評価データは、全体の分析に含まれない。
【0189】
キャットウォークデータの予備評価は、2つの群(IVIGで処理した動物対緩衝液で処理した動物)の間に差が存在することを示唆している。IVIGで処理した動物は、緩衝液で処理した動物と比較して、より長くより広範な足跡面積(足と床との間の接触領域)を示した。これらの足跡面積はまた、処理期間中に徐々に増加され、これは増加された着陸圧(1歩進むために脚によって使用される力、または足が表面にかける圧力に対応する)を伴った。このデータ全体は、IVIGで処理された動物は、歩行行動の加速された正常化、および脚使用における増加された強度を経験することを示唆している。
【0190】
実施例7:IVIG作用の根底メカニズムを決定するための補足研究
【0191】
IVIG作用の根本的なメカニズム、およびIVIGが細胞成熟を促進するメカニズムをより良く理解するために、刺激されたシュワン細胞において詳細な分子/細胞調査が実施される予定である。
【0192】
上記に概説した通り(5.1を参照)、IVIG処理に曝露した非分化および分化シュワン細胞におけるGeneChip分析を実施し、分析した。新規に発見された上方調節および下方調節された遺伝子(表1および2)に基づいて、更なる妥当性確認実験が、選択された遺伝子において定量的即時RT−PCRを用いて実施されるであろう。必要に応じて、また妥当であれば、抗体を用いた追加の妥当性確認(Westernブロット、免疫染色、およびELISA)が実施されるであろう。これは、免疫能力に関連する遺伝子に関して特に興味深い。この発現分析は、どの細胞プロセスが最もIVIG感受性であるかを理解するために分析されるだけでなく、同様にIVIG依存性反応をモニタリングおよび定量化するために使用することができる追加のマーカー遺伝子を定義するためにも役立つ可能性があろうことに留意されたい。
【0193】
好適なインビトロミエリン形成アッセイ(モデル3)の確立後、統計的に有意な数のIVIG刺激実験が実施されるであろう。アクティブタイムウィンドウ、および免疫グロブリン処理がミエリン鞘の生成(節間形成)をどこまで調整することができるかが評価されるであろう。
【0194】
Cy3共役抗ヒトFab抗体を用いて、IVIGのシュワン細胞表面への特異的結合を実証することができる。これがCD64Fc受容体との相互作用に起因するのか、またはシュワン細胞特異性エピトープがFab媒介結合によって認識されるのかは、まだ示されていない。この目的のために、シュワン細胞(モデル1)は、パパイン消化型IVIGのFcおよびF(ab)2画分と接触されるか、またはパパインによってその場で消化されるシュワン細胞上でIVIGに結合される。更に、Cy3共役抗ヒトFab抗体と組み合わせたFITC共役抗ヒトFc抗体の適用は、パパイン感受性染色をもたらすことが予想される。2つの抗CD64抗体は、CD64が同様にシュワン細胞表面上で受容体タンパク質として発現されるかどうかを決定するために、非分化および分化(モデル2)シュワン細胞に適用されるであろう。IVIG結合がこのFc受容体を介して本当に媒介される場合、CD64信号はIVIG結合(免疫染色)と一致することが予測されるであろう。更にこの目的のために、CD64タンパク質レベルにおける増加を分化プロセスの結果として観察することができるかが検証されるであろう(Westernブロット)。
【0195】
Fc受容体関与に関する機能的な証明を提供するために、3−(1−メチル−1H−インドール−3−イル−メチレン)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−インドール−5−スルホンアミド、または脾臓チロシンキナーゼ(Syk)およびホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)と干渉するLy294002等の薬理的阻害剤が、未処理シュワン細胞(モデル1)のIVIG刺激の前にそれぞれ適用されるであろう。これは、これらのFc依存性信号構成要素は、MBP誘発(または、1において特定された適切なマーカー遺伝子)に関与するかどうかを示唆するであろう。更に、消化されたIVIGは、培養されたシュワン細胞(モデル1)を刺激して、Fcまたは/およびFab画分が、IVIG特異的遺伝子調節(MBP、および遺伝子発現分析において特定された他のマーカー遺伝子)に関与するかどうかを明らかにするために使用されるであろう。最後に、シュワン細胞(モデル1)におけるCD64発現のshRNA媒介抑制は、IVIG結合が、CD64依存性であるか、およびMBP発現(または、遺伝子発現分析において特定された他のマーカー遺伝子)のIVIG依存性誘発に関与するかどうかを確認するために使用することができる。
【0196】
標準的シュワン細胞培養(維持および分化)条件は、高いウシ胎仔血清濃度(体積の最大10%)を特徴とする。したがって、血清中に存在する免疫グロブリンは、IVIG依存性シュワン細胞反応を減退させていると考えられる。これを試験するために、血清濃度は、細胞生存および分化を確実にするために必要とされる下限値まで低減され、シュワン細胞はIVIGで刺激され、MBP発現レベル(モデル1および2)および形態学的パラメータ(モデル2)が測定されるであろう。
【0197】
本発明者の最近の調査は、シュワン細胞分化は、zesteホモログ2(EZH2;Heinen et al.,改訂中)のヒストンメチルトランスフェラーゼエンハンサーに決定的に依存していることを明らかにした。EZH2活性の抑制に際して、培養されたシュワン細胞は、神経病変において観察されるものに類似した脱分化反応を示す。更なる調査の一環として、かかる脱分化シュワン細胞は、シュワン細胞マーカーおよびミエリン遺伝子の発現を決定するためにIVIGで刺激されるであろう。後者は、対照レベルを下回って下方調節されることが示されている。免疫グロブリン処理が、分化/成熟反応を促進することができる(モデル2、即ち、阻害遺伝子p57kip2の抑制に際して見られる通り)だけでなく、また脱分化プロセス(ミエリン遺伝子発現レベルの正常化等)と干渉することもできるかどうかを調べることは興味深いであろう。
【0198】
前述の発明を、例証として、および理解の明確性を目的とする例として詳細に説明してきたが、本発明の教示を考慮すると、特定の変化および修正が精神または添付の特許請求の範囲から逸脱することなくなされてもよいことが、当業者にとって容易に明らかとなるであろう。
【0199】
参考文献
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2017年10月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的に有効な量のポリクローナルIgGを含む、毒素誘発性脱髄性末梢神経障害を有する哺乳類を治療するための薬学的組成物であって、前記薬学的組成物が局所的にまたは全身に投与され、かつ前記治療的に有効な量がシュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進する量である、前記薬学的組成物。
【請求項2】
哺乳類がヒトである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
抗炎症剤と併用される、請求項1〜2のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項4】
抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
ポリクローナルIgGを毎週1回投与するように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項6】
ポリクローナルIgGを隔週で投与するように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項7】
ポリクローナルIgGを毎月1回投与するように用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項8】
ポリクローナルIgGを患者の体重1 kg当たり約0.05〜5 gの用量で哺乳類に投与するように用いられることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項9】
ポリクローナルIgGを患者の体重1 kg当たり約0.5〜2 gの用量で哺乳類に投与するように用いられることを特徴とする、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
末梢神経傷害の部位に移植された神経細胞に接触させるように用いられることを特徴とする、有効量のシュワン細胞および有効量のポリクローナルIgGを含む、毒素誘発性脱髄性末梢神経傷害を有する哺乳類を治療するための薬学的組成物であって、局所的にまたは全身に投与され、シュワン細胞による末梢神経細胞のミエリン形成を促進する、前記薬学的組成物。
【請求項11】
哺乳類がヒトである、請求項10記載の薬学的組成物。
【請求項12】
ポリクローナルIgGを患者の体重1 kg当たり約0.05〜5 gの用量で哺乳類に投与するように用いられることを特徴とする、請求項10〜11のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項13】
ポリクローナルIgGを患者の体重1 kg当たり約0.5〜2 gの用量で哺乳類に投与するように用いられることを特徴とする、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
抗炎症剤と併用される、請求項10〜13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
抗炎症剤が、副腎皮質刺激ホルモン、コルチコステロイド、インターフェロン、酢酸グラチラマー、または非ステロイド系抗炎症薬である、請求項14に記載の薬学的組成物。