【解決手段】位置検出装置10の起動時に、演算処理部30は、第1〜第3回転角度検出器24〜28がそれぞれ検出した第1〜第3回転角度に応じた第1〜第3アナログ信号に基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置を演算する。一方、回転軸14の回転中、現在位置カウンタ54は、起動時における回転軸14の絶対位置に応じたトータルパルス数TPを基準として、第1回転角度検出器24が検出した第1回転角度に応じた正転パルス又は逆転パルスのパルス数を計数することにより、現在の回転軸14の絶対位置を検出する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3の位置検出装置では、複数個の従動歯車のシャフトに磁石を取り付け、相対した位置に複数組の回転角度検出器を取り付けるため、位置検出装置における回転軸の径方向のサイズが大きくなるという欠点がある。
【0006】
また、特許文献4及び5の位置検出装置において、回転軸に取り付けられるコード記録媒体は、走査可能な特殊なコードが蒸着等によって担持された絶対位置ディスクである。そのため、高い精度が要求され、位置検出装置が高価になる。
【0007】
さらに、特許文献6の位置検出装置では、絶対位置をリアルタイムで出力可能とするため、高速の演算処理装置が必要となる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、小型及び低コストであると共に、低速の演算処理装置を用いて絶対位置の演算処理が可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、回転体の回転軸に減速機が接続され、前記回転軸の回転角度と前記減速機の出力軸の回転角度とに基づいて、前記回転軸の絶対位置を検出する位置検出装置に関するものである。
【0010】
そして、上記の目的を達成するため、本発明に係る位置検出装置は、第1〜第3回転角度検出器、演算処理部及び現在位置検出部を有する。
【0011】
前記第1回転角度検出器は、前記回転軸に略同軸に取り付けられた歯車のピッチ間の第1回転角度を検出する。前記第2回転角度検出器は、前記回転軸の1回転内の第2回転角度を検出する。前記第3回転角度検出器は、前記回転軸の多回転に応じた前記出力軸の1回転内の第3回転角度を検出する。
【0012】
前記演算処理部は、前記位置検出装置の起動時に前記第1〜第3回転角度検出器がそれぞれ検出した前記第1〜第3回転角度に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を演算する。前記現在位置検出部は、前記回転体の駆動による前記回転軸の回転中、前記第1回転角度検出器が検出した前記第1回転角度と、前記起動時における前記回転軸の絶対位置とに基づいて、現在の前記回転軸の絶対位置を検出する。
【0013】
この構成によれば、前記回転軸の軸方向に沿って前記歯車、前記減速機及び前記出力軸を設け、前記回転軸及び前記出力軸の周囲に前記第1〜第3回転角度検出器を配置すれば、前記位置検出装置における前記回転軸の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0014】
また、前記第1回転角度検出器は、前記回転軸に取り付けられた前記歯車のピッチ間の前記第1回転角度を検出するため、特許文献4及び5のような特殊コードを担持したコード記録媒体が不要となる。従って、前記位置検出装置の低コスト化を図ることができる。
【0015】
さらに、前記演算処理部は、前記起動時にのみ、前記第1〜第3回転角度に基づいて、該起動時における停止状態の前記回転軸の絶対位置を演算する。この結果、前記現在位置検出部は、前記回転軸の回転中、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を基準として、前記第1回転角度検出器が検出した前記第1回転角度から、現在の前記回転軸の絶対位置を擬似的に求めることができる。
【0016】
すなわち、前記位置検出装置は、前記起動時にのみアブソリュート方式のロータリーエンコーダとして機能し、その後は、インクリメンタル方式のロータリーエンコーダとして機能する。つまり、前記起動時には、停止状態の前記回転軸の絶対位置を検出し、その後の前記回転軸の回転中は、前記起動時の絶対位置に対する前記回転軸の移動量に相当する前記第1回転角度を検出し、前記起動時の絶対位置に対する前記第1回転角度の位置を、現在の前記回転軸の絶対位置として求めればよい。この結果、特許文献6のようにリアルタイムでの絶対位置の演算は不要となり、低速且つ低価格の演算処理装置(CPU)が使用可能となる。
【0017】
また、従来のインクリメンタル方式のロータリーエンコーダでは、電源のオン時及びオフ時には、磁極検出動作と原点復帰動作とを行う必要があった。これに対して、本発明では、前記起動時に停止状態の前記回転軸の絶対位置を検出するので、上記の各動作が不要となる。この結果、前記位置検出装置を電動アクチュエータ等に搭載すれば、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0018】
このように、本発明によれば、前記位置検出装置の小型化及び低コスト化を実現できると共に、低速の演算処理装置を用いて前記絶対位置の演算処理を行うことが可能となる。
【0019】
ここで、前記第1〜第3回転角度検出器は、下記のように構成されていることが好ましい。
【0020】
先ず、前記第1回転角度検出器は、前記回転軸に略同軸に取り付けられた磁性体からなる平歯車と、該平歯車の歯先間を1サイクルとした場合、位相を互いに90°ずらして前記平歯車に対向配置された2個の第1磁気検出素子と、第1バイアス磁石とを備える。この場合、前記各第1磁気検出素子は、前記第1回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた第1アナログ信号をそれぞれ出力する。
【0021】
従って、前記第1バイアス磁石により前記各第1磁気検出素子を含む領域に発生した磁界が前記平歯車の回転によって変化した場合、前記各第1磁気検出素子は、前記磁界の変化を前記各第1アナログ信号としてそれぞれ出力する。前記各第1アナログ信号は、前記第1回転角度に応じた信号であるため、前記演算処理部は、前記各第1アナログ信号等に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置が、前記歯車の何番目の歯の位置に対応するのかを精度良く求めることができる。また、市販の前記平歯車を使用することが可能であるため、特許文献4及び5と比較して、前記位置検出装置のさらなる低コスト化を実現することができる。
【0022】
次に、前記第2回転角度検出器は、前記回転軸に略同軸に取り付けられたリング状の第2バイアス磁石と、前記回転軸の1回転を1サイクルとした場合、位相を互いに90°ずらして前記第2バイアス磁石に対向配置された2個の第2磁気検出素子とを備える。この場合、前記各第2磁気検出素子は、前記第2回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた第2アナログ信号をそれぞれ出力する。
【0023】
従って、前記第2バイアス磁石の回転により前記各第2磁気検出素子を含む領域に発生した磁界が変化した場合、前記各第2磁気検出素子は、前記磁界の変化を前記各第2アナログ信号としてそれぞれ出力する。前記各第2アナログ信号は、前記第2回転角度に応じた信号であるため、前記演算処理部は、前記各第2アナログ信号等に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置が、前記回転軸の1回転内のどの角度に対応するのかを容易に求めることができる。
【0024】
また、前記第3回転角度検出器は、前記出力軸に略同軸に取り付けられたリング状の第3バイアス磁石と、前記出力軸の1回転を1サイクルとした場合、位相を互いに90°ずらして前記第3バイアス磁石に対向配置された2個の第3磁気検出素子とを備える。これにより、前記各第3磁気検出素子は、前記第3回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた第3アナログ信号をそれぞれ出力する。
【0025】
従って、前記第3バイアス磁石の回転により前記各第3磁気検出素子を含む領域に発生した磁界が変化した場合、前記各第3磁気検出素子は、前記磁界の変化を前記各第3アナログ信号としてそれぞれ出力する。この場合、前記減速機は、前記回転体の回転速度を所定の減速比で減速して前記出力軸を回転させているので、前記演算処理部は、前記各第3アナログ信号等に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置が、前記回転軸の多回転内のどの角度に対応するのかを容易に求めることができる。
【0026】
また、前記位置検出装置は、前記各第1磁気検出素子がそれぞれ出力した前記各第1アナログ信号を二相の第1パルス信号に変換するインタポレータをさらに有してもよい。この場合、前記演算処理部は、前記各第1〜第3磁気検出素子がそれぞれ出力した前記各第1〜第3アナログ信号に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を演算し、演算した前記絶対位置に応じた第2パルス信号を出力する。
【0027】
これにより、前記現在位置検出部は、前記インタポレータから出力された前記各第1パルス信号と、前記演算処理部から出力された前記第2パルス信号とに基づいて、現在の前記回転軸の絶対位置を容易に検出することが可能となる。また、前記回転軸の正転又は逆転に関わりなく、前記減速機のバックラッシュの影響を無視することができる。
【0028】
この場合、前記演算処理部は、前記第2パルス信号を前記起動時における前記回転軸の絶対位置に応じたパルス数のシリアル信号として前記現在位置検出部に送信すればよい。これにより、比較的低速の演算処理装置を前記演算処理部として使用し、前記シリアル信号をシリアル通信により前記現在位置検出部に送信することで、前記位置検出装置の一層の低コスト化を実現できる。
【0029】
また、前記位置検出装置は、前記各第1パルス信号を逓倍した逓倍パルス信号を生成して前記現在位置検出部に出力する逓倍回路をさらに有してもよい。この場合、前記現在位置検出部は、前記起動時に前記シリアル信号に応じたパルス数をプリセットし、前記回転軸の回転中、プリセットした前記パルス数から前記逓倍パルス信号に応じたパルス数を計数することにより、現在の前記回転軸の絶対位置を検出する現在位置カウンタであればよい。
【0030】
このように、前記現在位置カウンタは、プリセットした前記パルス数を基準として、前記逓倍パルス信号に応じたパルス数を計数するので、現在の前記回転軸の絶対位置を容易に且つ効率よく求めることができる。また、前記逓倍回路から前記現在位置カウンタに前記逓倍パルス信号が供給されることにより、前記現在位置カウンタにおける現在の前記回転軸の絶対位置の分解能が向上し、該絶対位置を精度よく求めることができる。
【0031】
この場合、前記逓倍回路は、前記各第1パルス信号を比較することにより前記回転軸の正転又は逆転を判別し、判別した正転又は逆転の前記逓倍パルス信号を生成すればよい。これにより、前記現在位置カウンタは、現在の前記回転軸の絶対位置を正確に求めることができる。
【0032】
また、前記位置検出装置は、前記現在位置カウンタに前記シリアル信号に応じたパルス数がプリセットされた場合、前記回転体を駆動させて前記回転軸を回転させる回転体駆動制御部をさらに有してもよい。これにより、プリセット後に前記回転体を動作させ、前記回転軸の回転中における該回転軸の絶対位置を確実に取得することができる。
【0033】
また、本発明に係る位置検出装置は、上述の構成(以下、基本構成ともいう。)に代えて、下記の構成に変更することも可能である。
【0034】
すなわち、上記の目的を達成するため、本発明に係る位置検出装置は、他の第1の構成として、第1回転角度検出器、第2回転角度検出器、演算処理部及び現在位置検出部を有する。
【0035】
前記第1回転角度検出器は、前記回転軸の1回転内の第1回転角度を検出する。前記第2回転角度検出器は、前記回転軸の多回転に応じた前記出力軸の1回転内の第2回転角度を検出する。前記演算処理部は、前記位置検出装置の起動時に、前記第1回転角度検出器及び前記第2回転角度検出器がそれぞれ検出した前記第1回転角度及び前記第2回転角度に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を演算する。前記現在位置検出部は、前記回転体の駆動による前記回転軸の回転中、前記第1回転角度検出器が検出した前記第1回転角度と、前記起動時における前記回転軸の絶対位置とに基づいて、現在の前記回転軸の絶対位置を検出する。
【0036】
この場合、前記第1回転角度検出器は、前記回転軸に略同軸に取り付けられた円柱状のバイアス磁石と、前記バイアス磁石に対向配置された磁気検出素子とを備える。前記磁気検出素子は、前記第1回転角度に対応するシリアル信号を前記演算処理部に出力し、一方で、前記第1回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた二相のパルス信号を前記現在位置検出部に出力する。
【0037】
この第1の構成では、前記シリアル信号を前記演算処理部に出力する機能と、前記二相のパルス信号を前記現在位置検出部に出力するインタポレータ処理の機能とを、前記磁気検出素子が兼ね備えている。また、前記演算処理部は、前記シリアル信号と、前記第2回転角度検出器が検出した前記第2回転角度とに基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を演算する。従って、第1の構成によれば、前記位置検出装置の部品点数が削減されると共に、前記演算処理部での演算負荷が軽減されるので、該位置検出装置の低コスト化を図ることができる。また、前記円柱状のバイアス磁石を採用したことにより、前記第1回転角度の検出精度の向上を図ることができる。
【0038】
また、第1の構成においても、前述した基本構成を有する位置検出装置の場合と同様に、下記の効果も得られる。
【0039】
すなわち、前記回転軸の軸方向に沿って前記減速機及び前記出力軸を設け、前記回転軸及び前記出力軸の周囲に前記第1回転角度検出器及び前記第2回転角度検出器を配置することにより、前記回転軸の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0040】
また、前記演算処理部は、前記起動時にのみ、前記第1回転角度及び前記第2回転角度に基づいて、該起動時における停止状態の前記回転軸の絶対位置を演算する。これにより、前記現在位置検出部は、前記回転軸の回転中、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を基準として、前記二相のパルス信号から、現在の前記回転軸の絶対位置を擬似的且つ容易に求めることができる。また、前記回転軸の正転又は逆転に関わりなく、前記減速機のバックラッシュの影響を無視することができる。
【0041】
すなわち、前記位置検出装置は、前記起動時にのみアブソリュート方式のロータリーエンコーダとして機能し、その後は、インクリメンタル方式のロータリーエンコーダとして機能する。これにより、リアルタイムでの絶対位置の演算が不要となり、低速且つ低価格のCPUが使用可能となる。このような位置検出装置を電動アクチュエータ等に搭載すれば、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0042】
従って、第1の構成においても、前記位置検出装置の小型化及び低コスト化を実現できると共に、低速の演算処理装置を用いて前記絶対位置の演算処理を行うことが可能となる。
【0043】
また、前記位置検出装置は、前記回転軸の回転力を前記減速機の入力軸に伝達する回転伝達機構をさらに有し、前記回転軸、前記入力軸及び前記出力軸は、略同軸に配置されていればよい。前記回転伝達機構によって、前記位置検出装置は、前記径方向に若干大きくなるが、インタポレータ機能を有する前記第1回転角度検出器を設けることにより、前記位置検出装置の部品点数が少なくなるので、装置全体の低コスト化を実現することができる。なお、前記回転伝達機構としては、例えば、減速比が1の他の減速機や、ベルトを用いた回転伝達手段のような、各種の回転伝達機構を好適に採用することができる。
【0044】
さらに、上記の目的を達成するため、本発明に係る位置検出装置は、他の第2の構成として、第1〜第3回転角度検出器、第1減速機、第2減速機、演算処理部及び現在位置検出部を有する。
【0045】
前記第1回転角度検出器は、前記回転軸の1回転内の第1回転角度を検出する。前記第1減速機は、前記回転軸の回転速度を減速して出力する。前記第2減速機は、入力軸が前記第1減速機に接続され、該第1減速機で減速された前記回転軸の回転速度をさらに減速して前記出力軸に出力する。前記第2回転角度検出器は、前記回転軸の多回転に応じた前記入力軸の1回転内の第2回転角度を検出する。前記第3回転角度検出器は、前記回転軸の多回転に応じた前記出力軸の1回転内の第3回転角度を検出する。
【0046】
前記演算処理部は、前記位置検出装置の起動時に前記第1〜第3回転角度検出器がそれぞれ検出した前記第1〜第3回転角度に基づいて、前記起動時における前記回転軸の絶対位置を演算する。前記現在位置検出部は、前記回転体の駆動による前記回転軸の回転中、前記第1回転角度検出器が検出した前記第1回転角度と、前記起動時における前記回転軸の絶対位置とに基づいて、現在の前記回転軸の絶対位置を検出する。
【0047】
この場合、前記第1回転角度検出器は、前記回転軸に略同軸に取り付けられた円柱状のバイアス磁石と、前記バイアス磁石に対向配置された磁気検出素子とを備える。また、前記磁気検出素子は、前記第1回転角度に対応するシリアル信号を前記演算処理部に出力し、一方で、前記第1回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた二相のパルス信号を前記現在位置検出部に出力する。
【0048】
この第2の構成では、前述の第1回転角度検出器及び第2回転角度検出器を備えた位置検出装置と比較して、3つの回転角度検出器(第1〜第3回転角度検出器)や2つの減速機(第1減速機、第2減速機)が備わっている。そのため、第1の構成と比較して、部品点数が多くなると共に、前記演算処理部での演算負荷が大きくなるので、コストがかかる。
【0049】
しかしながら、前記第2回転角度検出器及び前記第3回転角度検出器が前記回転軸の多回転に応じた前記第2回転角度及び前記第3回転角度をそれぞれ検出し、検出された前記第2回転角度及び前記第3回転角度等を用いて前記演算処理部が前記起動時における前記回転軸の絶対位置を高精度に演算することができる。この結果、従来の位置検出装置と比較して、前記絶対位置を高精度に演算することができると共に、コストを削減することが可能となる。また、前記円柱状のバイアス磁石を採用したことにより、前記第1回転角度の検出精度の向上を図ることができる。
【0050】
また、第2の構成においても、前記第1〜第3回転角度検出器を備えることにより、前述した基本構成を有する位置検出装置と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、位置検出装置の小型化及び低コスト化を実現できると共に、低速の演算処理装置を用いて絶対位置の演算処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明に係る位置検出装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0054】
[本実施形態の構成]
図1は、本実施形態に係る位置検出装置10のブロック図である。
【0055】
位置検出装置10は、モータ等の回転体12の回転軸14の回転角度を検出する回転角度検出機構16と、回転体12を駆動制御するコントローラ18とを有する。
【0056】
回転軸14には減速機20が接続されている。減速機20は、回転軸14の回転速度を1/Nに減速して、出力軸22を回転させる。なお、Nは、減速機20の減速比である。
【0057】
回転角度検出機構16は、第1〜第3回転角度検出器24〜28、演算処理部30及びインタポレータ32を備える。
【0058】
図1〜
図3に示すように、第1回転角度検出器24は、回転軸14に略同軸に取り付けられた平歯車34と、平歯車34に対向配置された2個の第1磁気検出素子36a、36bと、各第1磁気検出素子36a、36bの背後(平歯車34の径方向外側)に配置された第1バイアス磁石38とから構成される平歯車用角度検出器である。
【0059】
平歯車34は、回転軸14に取り付け可能な市販の平歯車を用いることができる。2個の第1磁気検出素子36a、36bは、磁気抵抗素子であり、平歯車34の歯先間(ピッチ間)を1サイクル(360°)とした場合、平歯車34の周方向に、位相を互いに90°ずらした状態で平歯車34に対向配置されている。第1バイアス磁石38は、各第1磁気検出素子36a、36bの背後において、N極を平歯車34の径方向内側、S極を径方向外側とした状態で配置されている。
【0060】
そして、第1回転角度検出器24では、第1バイアス磁石38により各第1磁気検出素子36a、36bを含む領域に磁界が発生しているときに、回転軸14の回転動作に伴って、磁性体である平歯車34が回転すると、該磁界が変化する。各第1磁気検出素子36a、36bは、この磁界の変化を電圧の変化として検出し、検出した電圧を第1アナログ信号として出力する。
【0061】
図4Aは、第1磁気検出素子36a、36bから出力される第1アナログ信号(出力電圧波形)の波形図である。
図4Aにおいて、A相は、一方の第1磁気検出素子36aから出力された第1アナログ信号(正弦波信号)を示し、B相は、他方の第1磁気検出素子36bから出力された第1アナログ信号(余弦波信号)を示す。また、
図4Aにおいて、横軸は、時間変化に応じた平歯車34の回転角度である点に留意する。
【0062】
前述のように、90°位相をずらして2個の第1磁気検出素子36a、36bが配置されているため、A相とB相との間には90°の位相差が発生する。また、A相及びB相において、360°の回転角度は平歯車34の歯先間の1サイクルに相当する。すなわち、1サイクルは360°の電気角に対応する。従って、第1回転角度検出器24は、平歯車34の歯先間を1サイクルとした場合に、1サイクル内の平歯車34の任意の位置(第1回転角度)を検出し、第1アナログ信号として演算処理部30及びインタポレータ32に出力する。
【0063】
インタポレータ32は、抵抗回路網を利用したアナログ電圧比較方式の位相補間回路であり、
図4Aの各第1アナログ信号について、所定の分割数Sで補間することにより、
図4Bに示す90°の位相差を有する二相の第1パルス信号に変換して、コントローラ18に出力する。なお、後述する演算処理部30からコントローラ18へのシリアル通信による第2パルス信号の送信と比較して、インタポレータ32からコントローラ18への二相の第1パルス信号の送信は高速である。
【0064】
図1及び
図2に示すように、第2回転角度検出器26は、回転軸14に略同軸に取り付けられたリング状の第2バイアス磁石40と、第2バイアス磁石40に対向配置された2個の第2磁気検出素子42a、42bとから構成される1回転角度検出器である。
【0065】
第2バイアス磁石40は、回転軸14における平歯車34と減速機20との間の箇所に取り付けられている。この場合、リング状の第2バイアス磁石40のうち、一方の半円部分がN極、他方の半円部分がS極に割り当てられている。2個の第2磁気検出素子42a、42bは、ホール素子であり、回転軸14及び第2バイアス磁石40の1回転を1サイクル(360°)とした場合、回転軸14及び第2バイアス磁石40の周方向に、位相を互いに90°ずらした状態で第2バイアス磁石40に対向配置されている。
【0066】
そして、第2回転角度検出器26では、第2バイアス磁石40により各第2磁気検出素子42a、42bを含む領域に磁界が発生しているときに、回転軸14の回転動作に伴って、第2バイアス磁石40が回転すると、該磁界が変化する。各第2磁気検出素子42a、42bは、この磁界の変化を電圧の変化として検出し、検出した電圧を第2アナログ信号として出力する。
【0067】
図5Aは、第2磁気検出素子42a、42bから出力される第2アナログ信号の波形図である。
図5Aにおいて、「A」は、一方の第2磁気検出素子42aから出力される第2アナログ信号(余弦波信号)を示し、「B」は、他方の第2磁気検出素子42bから出力される第2アナログ信号(正弦波信号)を示す。また、
図5Aにおいて、横軸は、時間変化に応じた回転軸14及び第2バイアス磁石40の回転角度である。
【0068】
図5Bは、回転軸14及び第2バイアス磁石40の1回転内の回転角度の変化を示す。ここでは、0°に対して反時計回りの回転(Aの位相に対してBの位相が遅れている場合)を正転、時計回りの回転(Bの位相に対してAの位相が遅れている場合)を逆転と定義する。
【0069】
前述のように、90°位相をずらして2個の第2磁気検出素子42a、42bが配置されているので、AとBとの間には90°の位相差がある。また、A及びBにおいて、360°は回転軸14及び第2バイアス磁石40の1サイクルに相当する。つまり、1サイクルは360°の電気角に相当する。従って、第2回転角度検出器26は、回転軸14及び第2バイアス磁石40の1回転を1サイクルとした場合に、1サイクル内の回転軸14及び第2バイアス磁石40の任意の位置(第2回転角度)を検出し、第2アナログ信号として演算処理部30に出力する。
【0070】
図1及び
図2に示すように、第3回転角度検出器28は、出力軸22に略同軸に取り付けられたリング状の第3バイアス磁石44と、第3バイアス磁石44に対向配置された2個の第3磁気検出素子46c、46dとから構成される多回転角度検出器である。リング状の第3バイアス磁石44において、一方の半円部分はN極、他方の半円部分はS極に割り当てられている。2個の第3磁気検出素子46c、46dは、ホール素子であり、出力軸22の1回転を1サイクル(360°)とした場合、出力軸22及び第3バイアス磁石44の周方向に、位相を互いに90°ずらした状態で第3バイアス磁石44に対向配置されている。
【0071】
そして、第3回転角度検出器28では、第3バイアス磁石44により各第3磁気検出素子46c、46dを含む領域に磁界が発生しているときに、出力軸22の回転動作に伴って、第3バイアス磁石44が回転すると、該磁界が変化する。各第3磁気検出素子46c、46dは、この磁界の変化を電圧の変化として検出し、検出した電圧を第3アナログ信号として出力する。
【0072】
従って、第3磁気検出素子46c、46dから出力される第3アナログ信号の波形は、
図5Aに示すように、第2アナログ信号と同様の波形になる。なお、
図5Aにおいて、「C」は、一方の第3磁気検出素子46cから出力される第3アナログ信号(余弦波信号)を示し、「D」は、他方の第3磁気検出素子46dから出力される第3アナログ信号(正弦波信号)を示す。また、90°位相をずらして2個の第3磁気検出素子46c、46dが配置されているので、CとDとの間には90°の位相差が発生する。さらに、C及びDにおいて、360°の電気角は出力軸22及び第3バイアス磁石44の1サイクルに相当する。
【0073】
但し、減速機20は、回転軸14の回転速度を1/Nに減速して出力軸22を回転させている。従って、第3回転角度検出器28は、出力軸22及び第3バイアス磁石44の1回転を1サイクルとした場合に、多回転の回転軸14に応じた出力軸22及び第3バイアス磁石44の任意の位置(第3回転角度)を検出し、第3アナログ信号として演算処理部30に出力する。従って、回転軸14の最大回転量は、出力軸22の1回転以内に対応する。
【0074】
演算処理部30は、比較的低速且つ小型の演算処理装置(CPU)から構成される。演算処理部30は、位置検出装置10の起動時に、第1〜第3回転角度検出器24〜28からの第1〜第3アナログ信号に基づいて、起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置を演算する。そして、コントローラ18から絶対位置の転送要求があった場合、演算処理部30は、シリアル通信により、該絶対位置に応じたシリアル信号をコントローラ18に転送する。
【0075】
ここで、演算処理部30の処理を具体的に説明する。先ず、演算処理部30は、第1〜第3アナログ信号の出力電圧を直交座標から極座標に変換する。
【0076】
この場合、第1アナログ信号については、平歯車34の歯先間を1サイクル(360°)とし、1サイクルをS個に分割する。また、第2アナログ信号については、回転軸14及び第2バイアス磁石40の1回転を1サイクル(360°)とし、1サイクルをT個に分割する。第3アナログ信号については、出力軸22の1回転を1サイクル(360°)とし、1サイクルをN個に分割する。さらに、回転軸14の最大回転量を、出力軸22の1サイクル以内に対応させる。なお、直交座標から極座標への変換処理(分割処理)は、例えば、特許文献4に開示されている公知の補間方法を適用すればよい。
【0077】
ここで、平歯車34の位置をP1(第1回転角度)、平歯車34での分割数をS、第2バイアス磁石40の位置をP2(第2回転角度)、第2バイアス磁石40での分割数をT、第3バイアス磁石44の位置をP3(第3回転角度)、第3バイアス磁石44での分割数をNとした場合、回転軸14の回転量TAは、下記の(1)式で表わすことができる。
TA=(P1÷T)+INT(P2×T÷360)
×(360÷T)+(P3×N) (1)
【0078】
なお、INT(P2×T÷360)は、P2×T÷360の算出結果の小数点以下を切り捨てて整数化することを意味する。また、分割数Tは、平歯車34の歯数Tであり、分割数Nは、減速比Nである。
【0079】
そして、演算処理部30からコントローラ18に絶対位置をシリアル通信で転送する場合、回転軸14を1回転させたときのパルス数をPPとすれば、回転量TAに応じたパルス数(トータルパルス数)TPは、下記の(2)式となる。
TP=TA÷(360÷PP) (2)
【0080】
従って、トータルパルス数TPの算出結果について、小数点以下を切り捨てて整数化する場合には、下記の(3)式となる。
TP=INT(TA×PP÷360) (3)
演算処理部30は、(1)及び(3)式を用いて、起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置に応じたトータルパルス数TPを算出し、算出後のトータルパルス数TPに応じたシリアル信号(第2パルス信号)をコントローラ18に転送する。
【0081】
ここで、例えば、T=25、N=150、P1=55°、P2=175°、P3=156°、PP=200、S=8の場合、TA=23575°、TP=13097となる。
【0082】
コントローラ18は、シリアル通信部50、逓倍回路52、現在位置カウンタ(現在位置検出部)54及び回転体駆動制御部56を有する。
【0083】
シリアル通信部50は、演算処理部30との間でシリアル通信を行う。例えば、演算処理部30に対してトータルパルス数TPの転送要求を送信し、転送要求に応じたシリアル信号(トータルパルス数TPの第2パルス信号)を受信する。
【0084】
逓倍回路52は、インタポレータ32から受信した第1パルス信号を逓倍し、逓倍後の第1パルス信号(逓倍パルス信号)を現在位置カウンタ54に出力する。この場合、逓倍回路52は、
図6及び
図7に示すように、例えば、A相の立ち上がり時におけるB相の電圧レベルを調べることにより、二相の第1パルス信号(に応じた回転軸14)の正転又は逆転を判別し、判別した正転又は逆転の逓倍パルス信号を生成する。
【0085】
図6の場合、A相の立ち上がり時にB相の電圧レベルが低レベル(Lレベル)であるため、逓倍回路52は、二相の第1パルス信号は正転であると判別し、正転で4逓倍の逓倍パルス信号(正転パルス信号)を生成する。
図7の場合、A相の立ち上がり時にB相の電圧レベルが高レベル(Hレベル)であるため、逓倍回路52は、二相の第1パルス信号は逆転であると判別し、逆転で4逓倍の逓倍パルス信号(逆転パルス信号)を生成する。
【0086】
なお、
図6及び
図7は、一例であり、逓倍回路52は、二相の第1パルス信号から1逓倍(×1)、2逓倍(×2)又は4逓倍(×4)の逓倍パルス信号を生成することが可能である。また、逓倍回路52は、高倍率の逓倍パルス信号から低倍率の逓倍パルス信号に変更して出力することも可能である(4逓倍→2逓倍→1逓倍)。
【0087】
現在位置カウンタ54は、位置検出装置10の起動時に、シリアル通信部50が取得したトータルパルス数TPをプリセットする。また、現在位置カウンタ54には、回転軸14の回転中、逓倍回路52から逓倍パルス信号が入力される。そこで、現在位置カウンタ54は、プリセットしたトータルパルス数TPを基準として、逓倍パルス信号に応じたパルス数を計数することにより、現在の回転軸14の絶対位置を擬似的に検出する。
【0088】
回転体駆動制御部56は、現在位置カウンタ54にトータルパルス数TPがプリセットされた場合、回転体12に回転体動作信号を供給することにより、回転体12を駆動させて回転軸14を回転させる。
【0089】
[本実施形態の動作]
次に、本実施形態に係る位置検出装置10の動作について、
図8及び
図9のシーケンス図を参照しながら説明する。なお、この動作説明では、必要に応じて、
図1〜
図7も参照しながら説明する。
【0090】
先ず、ステップS1において、作業者は、位置検出装置10のコントローラ18の電源をオンにする。これにより、ステップS2において、コントローラ18は、回転角度検出機構16に対する電力供給を開始する。この結果、ステップS3において、回転角度検出機構16は、コントローラ18からの電力供給を受けて起動する。この場合、回転角度検出機構16は、第1〜第3回転角度検出器24〜28及び演算処理部30のみ起動させる。
【0091】
次のステップS4において、第1〜第3回転角度検出器24〜28は、現時点(位置検出装置10の起動時)における第1〜第3回転角度を検出し、第1〜第3回転角度に応じた第1〜第3アナログ信号を演算処理部30に出力する。
【0092】
次のステップS5において、演算処理部30は、入力された第1〜第3アナログ信号に基づいて、上記の(1)式及び(3)式から、位置検出装置10の起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置に応じたトータルパルス数TPを算出する。ステップS6において、演算処理部30は、トータルパルス数TPをシリアル信号(第2パルス信号)に変換する。
【0093】
次のステップS7において、演算処理部30は、コントローラ18からシリアル信号の転送要求があったか否かを確認する。転送要求がない場合、ステップS4に戻り、ステップS4〜S7の処理が再度実行される。従って、コントローラ18からの転送要求の通知を受けるまで、回転角度検出機構16は、停止状態の回転軸14の絶対位置の検出処理を逐次実行する。
【0094】
一方、ステップS8においてコントローラ18のシリアル通信部50が演算処理部30に対してシリアル信号の転送要求を行った場合、演算処理部30は、転送要求の通知を受け取ると(ステップS7:YES)、シリアル通信部50へのシリアル信号の送信を開始する(ステップS9)。演算処理部30は、シリアル通信部50からシリアル信号の受信完了の通知を受けるまで、シリアル信号の送信処理を継続する(ステップS9、ステップS10:NO)。
【0095】
シリアル通信部50は、シリアル信号の受信を開始すると、ステップS11において、シリアル信号の受信を完了したか否かの判定処理を行う。シリアル信号の受信が完了していない場合(ステップS11:NO)には、ステップS8を再度実行し、演算処理部30に対してシリアル信号の転送要求を行う。
【0096】
一方、シリアル信号の受信が完了した場合(ステップS11:YES)、シリアル通信部50は、シリアル信号を現在位置カウンタ54に出力し、ステップS12において、現在位置カウンタ54は、入力されたシリアル信号に応じたトータルパルス数TPをプリセットする。
【0097】
ステップS13において、シリアル通信部50は、トータルパルス数TPのプリセットを確認すると、受信完了通知を演算処理部30に送信する。演算処理部30は、受信完了通知を受信すると、シリアル信号の送信が完了したと判断し(ステップS10:YES)、回転体12を回転駆動させる動作モードに移行する(
図9のステップS14)。なお、動作モードにおいて、回転角度検出機構16は、第1回転角度検出器24及びインタポレータ32のみ動作させる。
【0098】
ステップS15において、回転体駆動制御部56は、トータルパルス数TPのプリセットを確認すると、回転体12を回転駆動させるための回転体動作信号を回転体12に供給する。回転体12は、回転体動作信号の供給に基づき駆動し、回転軸14を回転させる(ステップS16)。
【0099】
ステップS17において、第1回転角度検出器24の第1磁気検出素子36a、36bは、回転中の回転軸14の第1回転角度に応じた第1アナログ信号をインタポレータ32にそれぞれ出力する。なお、この第1回転角度は、停止状態の回転軸14の絶対位置に対する回転軸14の移動量(回転量)を示す回転角度であり、各第1アナログ信号は、当該移動量に応じたアナログ信号である。インタポレータ32は、各第1アナログ信号を二相の第1パルス信号に変換し、変換した各第1パルス信号をコントローラ18の逓倍回路52に出力する。
【0100】
次のステップS18において、回転角度検出機構16は、コントローラ18からの電力供給が停止したか否かを判定する。電力供給が停止していない場合(ステップS18:NO)には、ステップS16〜S18の処理が再度実行される。すなわち、回転角度検出機構16は、コントローラ18からの電力供給が停止するまで(ステップS18:YES)、第1回転角度の検出動作と、二相の第1パルス信号の出力動作とを、繰り返し実行する。
【0101】
一方、ステップS19において、逓倍回路52に各第1パルス信号が入力された場合、逓倍回路52は、二相の第1パルス信号を比較して、二相の第1パルス信号が正転又は逆転のどちらであるのかを判定する。逓倍回路52は、判定結果に基づいて、第1パルス信号を逓倍した正転の逓倍パルス信号(正転パルス)又は逆転の逓倍パルス信号(逆転パルス)を生成し、生成した正転パルス又は逆転パルスを現在位置カウンタ54に出力する。
【0102】
現在位置カウンタ54は、プリセットされたトータルパルス数TPを基準として、トータルパルス数TPからの正転パルス又は逆転パルスのパルス数を計数する。すなわち、現在位置カウンタ54は、トータルパルス数TPに応じた起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置を原点として、回転中の回転軸14の回転角度(移動量、回転量)に応じた絶対位置を擬似的に検出する。
【0103】
次のステップS20において、コントローラ18は、該コントローラ18の電源がオフされたか否かを確認する。電源がオフされていない場合(ステップS20:NO)、コントローラ18は、ステップS15、S19、S20の処理を再度実行する。すなわち、位置検出装置10では、コントローラ18の電源がオフになるまで、回転軸14の絶対位置の検出処理が逐次実行される。
【0104】
ステップS20において、作業者がコントローラ18の電源をオフにすると(ステップS20:YES)、コントローラ18内の各部が停止する(ステップS21)と共に、回転角度検出機構16への電力供給も停止する(ステップS18:YES)。この結果、回転角度検出機構16内の各部も停止する(ステップS22)。
【0105】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る位置検出装置10によれば、回転軸14の軸方向に沿って平歯車34、減速機20及び出力軸22を設け、回転軸14及び出力軸22の周囲に第1〜第3回転角度検出器24〜28を配置することにより、位置検出装置10における回転軸14の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0106】
また、第1回転角度検出器24は、回転軸14に取り付けられた平歯車34のピッチ間の第1回転角度を検出するため、特許文献4及び5のような特殊コードを担持したコード記録媒体が不要となる。従って、位置検出装置10の低コスト化を図ることができる。
【0107】
さらに、演算処理部30は、位置検出装置10の起動時にのみ、第1〜第3回転角度に基づいて、該起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置を演算する。この結果、現在位置カウンタ54は、回転軸14の回転中、起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置を基準として、第1回転角度検出器24が検出した第1回転角度から、現在の回転軸14の絶対位置を擬似的に求めることができる。
【0108】
すなわち、位置検出装置10は、起動時にのみアブソリュート方式のロータリーエンコーダとして機能し、その後は、インクリメンタル方式のロータリーエンコーダとして機能する。つまり、位置検出装置10では、起動時には、停止状態の回転軸14の絶対位置を検出し、その後の回転軸14の回転中は、起動時の絶対位置に対する回転軸14の移動量(回転量)に相当する第1回転角度を検出し、起動時の絶対位置に対する第1回転角度の位置を、現在の回転軸14の絶対位置として求める。この結果、特許文献6のようにリアルタイムでの絶対位置の演算は不要となり、低速且つ低価格の演算処理装置(CPU)を演算処理部30として使用可能となる。
【0109】
また、従来のインクリメンタル方式のロータリーエンコーダでは、電源のオン時及びオフ時には、磁極検出動作と原点復帰動作とを行う必要があった。これに対して、位置検出装置10では、起動時に回転軸14の絶対位置を検出することができるので、これらの動作が不要となる。この結果、位置検出装置10を電動アクチュエータ等に搭載すれば、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0110】
このように、本実施形態に係る位置検出装置10によれば、位置検出装置10の小型化及び低コスト化を実現できると共に、低速の演算処理装置を用いて絶対位置の演算処理を行うことが可能となる。
【0111】
また、第1回転角度検出器24において、第1バイアス磁石38により各第1磁気検出素子36a、36bを含む領域に発生した磁界が平歯車34の回転によって変化した場合、各第1磁気検出素子36a、36bは、磁界の変化を各第1アナログ信号としてそれぞれ出力する。各第1アナログ信号は、第1回転角度に応じた信号であるため、演算処理部30は、各第1アナログ信号等に基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置が、平歯車34の何番目の歯の位置に対応するのかを精度良く求めることができる。また、市販の平歯車34を使用することが可能であるため、特許文献4及び5と比較して、位置検出装置10のさらなる低コスト化を実現することができる。
【0112】
さらに、第2回転角度検出器26において、第2バイアス磁石40の回転により各第2磁気検出素子42a、42bを含む領域に発生した磁界が変化した場合、各第2磁気検出素子42a、42bは、磁界の変化を各第2アナログ信号としてそれぞれ出力する。各第2アナログ信号は、第2回転角度に応じた信号であるため、演算処理部30は、各第2アナログ信号等に基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置が、回転軸14の1回転内のどの角度に対応するのかを容易に求めることができる。
【0113】
また、第3回転角度検出器28において、第3バイアス磁石44の回転により各第3磁気検出素子46c、46dを含む領域に発生した磁界が変化した場合、各第3磁気検出素子46c、46dは、磁界の変化を各第3アナログ信号としてそれぞれ出力する。この場合、減速機20は、回転体12の回転速度を所定の減速比Nで減速して出力軸22を回転させているので、演算処理部30は、各第3アナログ信号等に基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置が、回転軸14の多回転内のどの角度に対応するのかを容易に求めることができる。
【0114】
なお、第2バイアス磁石40に回転軸14が貫通し、第3バイアス磁石44に出力軸22が貫通しているため、第2回転角度検出器26及び第3回転角度検出器28における第2回転角度及び第3回転角度の検出精度が低下する可能性がある。しかしながら、位置検出装置10では、第1回転角度検出器24で平歯車34を用いて第1回転角度を高精度に検出している。この結果、第2回転角度及び第3回転角度の検出精度の低下は、第1回転角度の検出精度によって補償されるので、演算処理部30での絶対位置の演算処理に及ぼす影響を抑えることができる。
【0115】
また、インタポレータ32は、各第1アナログ信号を二相の第1パルス信号に変換し、演算処理部30は、各第1〜第3アナログ信号に基づいて起動時における回転軸14の絶対位置を演算し、演算した絶対位置に応じた第2パルス信号を出力する。これにより、現在位置カウンタ54は、インタポレータ32から出力された各第1パルス信号と、演算処理部30から出力された第2パルス信号とに基づいて、現在の回転軸14の絶対位置を容易に検出することが可能となる。また、回転軸14の正転又は逆転に関わりなく、減速機20のバックラッシュの影響を無視することができる。
【0116】
なお、減速機20のバックラッシュは、360°/(2×N)以内に収めることが好ましい。また、バックラッシュの補正は、上記のように、インタポレータ32及び現在位置カウンタ54等によるソフトウェア処理によって可能である。本実施形態では、減速機20の出力軸22に対して一定方向にトルクがかかるようなゼンマイバネ等の機構を設けることにより、ソフトウェアによる補正処理を不要にすることができる。
【0117】
また、位置検出装置10において、演算処理部30は、第2パルス信号を起動時における回転軸14の絶対位置に応じたトータルパルス数TPのシリアル信号として、シリアル通信部50を介して現在位置カウンタ54に送信するので、位置検出装置10の一層の低コスト化を実現できる。
【0118】
さらに、現在位置カウンタ54は、位置検出装置10の起動時にトータルパルス数TPをプリセットする。また、回転軸14の回転中、逓倍回路52は、第1パルス信号に基づいて逓倍パルス信号を生成する。現在位置カウンタ54は、プリセットしたトータルパルス数TPを基準として、逓倍パルス信号に応じたパルス数を計数することにより、現在の回転軸14の絶対位置を検出する。この結果、現在の回転軸14の絶対位置を容易に且つ効率よく求めることができる。また、逓倍回路52から現在位置カウンタ54に逓倍パルス信号が供給されることにより、現在位置カウンタ54における現在の回転軸14の絶対位置の分解能が向上し、該絶対位置を精度よく求めることができる。
【0119】
また、逓倍回路52は、二相の第1パルス信号を比較することにより回転軸14の正転又は逆転を判別し、判別した正転又は逆転の逓倍パルス信号を生成するので、現在位置カウンタ54は、現在の回転軸14の絶対位置を正確に求めることができる。
【0120】
さらに、回転体駆動制御部56は、現在位置カウンタ54にトータルパルス数TPがプリセットされた場合、回転体12を駆動させて回転軸14を回転させるので、回転中の回転軸14の絶対位置を確実に取得することができる。
【0121】
[本実施形態の変形例]
次に、本実施形態に係る位置検出装置10の変形例(第1変形例に係る位置検出装置10A、第2変形例に係る位置検出装置10B)について、
図10〜
図14を参照しながら説明する。なお、位置検出装置10A、10Bにおいて、
図1〜
図9で説明した位置検出装置10と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、その詳細な説明を省略する。
【0122】
<第1変形例>
先ず、第1の構成としての第1変形例に係る位置検出装置10Aについて、
図10〜
図12Bを参照しながら説明する。
【0123】
位置検出装置10Aは、回転角度検出機構16が第1減速機60、第2減速機62、第1回転角度検出器64及び第2回転角度検出器66を有する点で、
図1〜
図9に示す基本構成としての位置検出装置10とは異なる。
【0124】
第1減速機60は、回転体12の回転軸14の回転速度を減速させ、減速後の回転速度を第1減速機60の出力軸である第2減速機62の入力軸68に伝達可能な回転伝達機構である。なお、第1変形例では、第1減速機60の減速比は1であり、回転軸14の回転速度(回転力)が入力軸68にそのまま出力されることに留意する。
【0125】
第1減速機60は、回転軸14側に設けられた第1減速部60aと、回転軸14、入力軸68及び出力軸22に対して略平行に延び、一端が第1減速部60aに連結される中間軸60bと、入力軸68側に設けられ且つ中間軸60bの他端に連結される第2減速部60cとを備える。
【0126】
第1減速部60aは、回転軸14に略同軸に取り付けられた入力側の第1歯車70aと、中間軸60bの一端側に略同軸に取り付けられ且つ第1歯車70aに噛み合う出力側の第2歯車72aとから構成される。第2減速部60cは、中間軸60bの他端側に略同軸に取り付けられた入力側の第3歯車70bと、入力軸68に略同軸に取り付けられ且つ第3歯車70bに噛み合う出力側の第4歯車72bとから構成される。なお、前述のように、第1減速機60の減速比が1であるため、第1減速部60a及び第2減速部60cの各減速比nは、n=1に設定されている。
【0127】
第2減速機62は、位置検出装置10の減速機20と略同じ構成であり、回転軸14と略同軸に配置され、且つ、回転軸14の回転力が第1減速機60を介して伝達される入力軸68と、回転軸14及び入力軸68と略同軸に配置され、且つ、入力軸68の回転速度から減速比Nで減速された回転速度で回転する出力軸22とを備える。従って、第1変形例において、第1減速機60及び第2減速機62全体の減速比は、N(=1×N)となる。
【0128】
第1回転角度検出器64は、回転軸14の先端側に略同軸に取り付けられた円柱状のバイアス磁石74と、バイアス磁石74の中心に対向して配置された磁気検出素子76とから構成される。バイアス磁石74は、一方の半円部分がN極、他方の半円部分がS極に割り当てられている。従って、第1回転角度検出器64は、回転軸14の1回転内の第1回転角度を検出する1回転角度検出器である。磁気検出素子76は、第1回転角度に対応するシリアル信号(
図12Bに示す回転角度データの信号)をシリアル通信により演算処理部30に出力し、一方で、第1回転角度に対応し且つ位相が互いに90°ずれた二相のデジタルパルス信号(
図12Aに示すA相及びB相の第1パルス信号)を逓倍回路52に出力する。
【0129】
すなわち、第1変形例では、磁気検出素子76が、シリアル信号を演算処理部30に出力する機能と、二相の第1パルス信号を逓倍回路52に出力するインタポレータ処理の機能とを兼ね備えている。つまり、第1変形例に係る位置検出装置10Aでは、位置検出装置10の第1回転角度検出器24及び第2回転角度検出器26を、第1回転角度検出器64に置き換えている。なお、
図12Bでは、所定の期間(シリアル転送期間)において、磁気検出素子76から演算処理部30にシリアル信号を送信する場合を図示している。
【0130】
第2回転角度検出器66は、位置検出装置10の第3回転角度検出器28(
図1及び
図2参照)と同様の構成を有し、回転軸14の多回転に応じた出力軸22の1回転内の第2回転角度を第3磁気検出素子46c、46dで検出し、検出した第2回転角度に応じたアナログ信号(第3アナログ信号と同様の信号)を演算処理部30に出力する。
【0131】
演算処理部30は、磁気検出素子76からのシリアル信号を
図12Bに示す所定のサンプリング間隔でサンプリングする。また、演算処理部30は、第3磁気検出素子46c、46dからのアナログ信号の出力電圧を直交座標から極座標に変換する。そして、演算処理部30は、サンプリング後のシリアル信号と、極座標に変換された出力電圧とに基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置を演算する。
【0132】
この場合、演算処理部30は、下記の(4)式に基づいて、回転軸14の回転量TAを算出する。
TA=P1+(P3×N) (4)
【0133】
なお、第1変形例では、平歯車34が存在しないため、(4)式において、P1は、回転軸14の角度(第1回転角度)であることに留意する。
【0134】
また、第1変形例において、トータルパルス数TPは、下記の(5)式で算出される。
TP=INT(TA×PP÷360) (5)
【0135】
なお、第1変形例に係る位置検出装置10Aにおいても、
図8及び
図9のシーケンス図に従って動作することが可能である。この場合、ステップS4、S5、S17に関して、磁気検出素子76から逓倍回路52に二相の第1パルス信号が直接出力され、磁気検出素子76から演算処理部30にシリアル信号が出力され、第3磁気検出素子46c、46dから演算処理部30にアナログ信号が出力され、演算処理部30において(4)式及び(5)式に基づきトータルパルス数TPを算出する点以外は、位置検出装置10と同様の動作である。従って、詳細な動作については、説明を省略する。
【0136】
以上説明したように、第1変形例に係る位置検出装置10Aでは、シリアル信号を演算処理部30に出力する機能と、二相の第1パルス信号をコントローラ18の逓倍回路52に出力するインタポレータ処理の機能とを、第1回転角度検出器64の磁気検出素子76が兼ね備えている。また、演算処理部30は、シリアル信号と、第2回転角度検出器66(の第3磁気検出素子46c、46d)が検出した第2回転角度とに基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置を演算する。従って、第1変形例では、位置検出装置10Aの部品点数が削減されると共に、演算処理部30での演算負荷が軽減されるので、該位置検出装置10Aの低コスト化を図ることができる。また、円柱状のバイアス磁石74を採用したことにより、リング状の磁石と比較して、磁束密度の低下が抑えられ、第1回転角度の検出精度の向上を図ることができる。
【0137】
また、第1変形例に係る位置検出装置10Aにおいても、位置検出装置10の場合と同様に、下記の効果も得られる。
【0138】
すなわち、回転軸14の軸方向に沿って第2減速機62及び出力軸22を設け、回転軸14及び出力軸22の周囲に第1回転角度検出器64及び第2回転角度検出器66を配置することにより、回転軸14の径方向のサイズを小さくすることができる。
【0139】
また、演算処理部30は、起動時にのみ、第1回転角度及び第2回転角度に基づいて、該起動時における停止状態の回転軸14の絶対位置を演算する。これにより、コントローラ18(の現在位置カウンタ54)は、回転軸14の回転中、起動時における回転軸14の絶対位置を基準として、二相の第1パルス信号から、現在の回転軸14の絶対位置を擬似的且つ容易に求めることができる。
【0140】
すなわち、位置検出装置10Aは、起動時にのみアブソリュート方式のロータリーエンコーダとして機能し、その後は、インクリメンタル方式のロータリーエンコーダとして機能する。これにより、リアルタイムでの絶対位置の演算が不要となり、低速且つ低価格のCPUが使用可能となる。このような位置検出装置10Aを電動アクチュエータ等に搭載すれば、タクトタイムの短縮を図ることができる。
【0141】
従って、第1変形例においても、位置検出装置10Aの小型化及び低コスト化を実現できると共に、低速の演算処理装置を用いて絶対位置の演算処理を行うことが可能となる。
【0142】
また、第1変形例においても、回転軸14の正転又は逆転に関わりなく、第1減速機60及び第2減速機62のバックラッシュの影響を無視することができる。この場合、第1減速機60のバックラッシュは、360°/(4×n×n)以内に収めることが好ましい。なお、第1変形例では、n=1であるため、バックラッシュは、90°以内に収めることが好ましい。
【0143】
また、位置検出装置10Aでは、回転軸14の回転力を第2減速機62の入力軸68に伝達する第1減速機60をさらに有し、回転軸14、入力軸68及び出力軸22は、略同軸に配置されている。第1減速機60によって、位置検出装置10Aは、径方向に若干大きくなるが、インタポレータ機能を有する第1回転角度検出器64を設けることにより、位置検出装置10Aの部品点数が少なくなるので、装置全体の低コスト化を実現することができる。なお、上記の説明では、減速比が1の第1減速機60を用いた場合について説明したが、第1減速機60に代えて、ベルトを用いた回転伝達手段のような各種の回転伝達機構を好適に採用することができる。
【0144】
<第2変形例>
次に、第2の構成としての第2変形例に係る位置検出装置10Bについて、
図13及び
図14を参照しながら説明する。
【0145】
位置検出装置10Bは、回転角度検出機構16が第1〜第3回転角度検出器64、78、80を有すると共に、第1減速機60の第1減速部60a及び第2減速部60cの各減速比nが1より大きい点で、第1変形例に係る位置検出装置10Aの構成(
図10及び
図11参照)とは異なる。従って、第1減速機60及び第2減速機62全体の減速比は、n×n×N(第1減速部60a:n、第2減速部60c:n、第2減速機62:N)となり、出力軸22の回転速度は、回転軸14の回転速度を(1/n)×(1/n)×(1/N)倍だけ減速させた回転速度となる。
【0146】
第2回転角度検出器78は、位置検出装置10の第2回転角度検出器26(
図1及び
図2参照)と略同様の構成を有する。但し、第2回転角度検出器78は、回転軸14ではなく、入力軸68に設けられている。すなわち、第2変形例では、n×nの減速比の第1減速機60を、回転軸14と入力軸68との間に設けることにより、第2回転角度検出器78の第2磁気検出素子42a、42bは、回転軸14の多回転に応じた入力軸68の1回転内の第2回転角度を検出することができる。
【0147】
第3回転角度検出器80は、位置検出装置10Aの第2回転角度検出器66(
図10及び
図11参照)と同様の構成を有しており、第3回転角度検出器80の第3磁気検出素子46c、46dは、回転軸14の多回転に応じた出力軸22の1回転内の第3回転角度を検出する。
【0148】
演算処理部30は、磁気検出素子76からのシリアル信号を
図12Bに示す所定のサンプリング間隔でサンプリングする。また、演算処理部30は、第2磁気検出素子42a、42bからの第2回転角度に応じたアナログ信号(第2アナログ信号と同様の信号)と、第3磁気検出素子46c、46dからの第3回転角度に応じたアナログ信号(第3アナログ信号と同様の信号)とについて、各アナログ信号の出力電圧を直交座標から極座標に変換する。そして、演算処理部30は、サンプリング後のシリアル信号と、極座標に変換された各出力電圧とに基づいて、起動時における回転軸14の絶対位置を演算する。
【0149】
この場合、演算処理部30は、下記の(6)式に基づいて、回転軸14の回転量TAを算出する。
TA=P1+(P2×n×n)+(P3×N×n×n) (6)
【0150】
なお、第2変形例では、平歯車34が存在せず、且つ、入力軸68に第2回転角度検出器78が配置されているので、(6)式において、P1は、回転軸14の角度(第1回転角度)であり、P2は、入力軸68の角度(第2回転角度)であることに留意する。また、第2変形例において、トータルパルス数TPは、前述の(5)式で算出される。
【0151】
なお、第2変形例に係る位置検出装置10Bにおいても、位置検出装置10Aと同様に、
図8及び
図9のシーケンス図に従って動作することが可能である。この場合も、ステップS4、S5、S17に関して、磁気検出素子76から逓倍回路52に二相の第1パルス信号が直接出力され、磁気検出素子76から演算処理部30にシリアル信号が出力され、第2磁気検出素子42a、42b及び第3磁気検出素子46c、46dから演算処理部30にアナログ信号がそれぞれ出力され、演算処理部30において(5)式及び(6)式に基づきトータルパルス数TPを算出する点以外は、位置検出装置10と同様の動作である。従って、詳細な動作については、説明を省略する。
【0152】
以上説明したように、第2変形例に係る位置検出装置10Bでは、第1変形例に係る位置検出装置10Aと比較して、3つの回転角度検出器(第1〜第3回転角度検出器64、78、80)や、減速比n、Nが1を超える2つの減速機(第1減速機60、第2減速機62)が備わっている。そのため、位置検出装置10Aと比較して、部品点数が多くなると共に、演算処理部30での演算負荷が大きくなるので、コストがかかる。
【0153】
しかしながら、第2変形例では、第2回転角度検出器78及び第3回転角度検出器80が回転軸14の多回転に応じた第2回転角度及び第3回転角度をそれぞれ検出し、検出された第2回転角度及び第3回転角度等を用いて演算処理部30が起動時における回転軸14の絶対位置を高精度に演算することができる。この結果、従来の位置検出装置と比較して、絶対位置を高精度に演算することができると共に、コストを削減することが可能となる。また、第2変形例でも、円柱状のバイアス磁石74を採用しているので、リング状の磁石と比較して、磁束密度の低下が抑えられ、第1回転角度の検出精度の向上を図ることができる。
【0154】
また、第2変形例に係る位置検出装置10Bにおいても、第1〜第3回転角度検出器64、78、80を備えることにより、位置検出装置10と同様の効果が得られる。
【0155】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。