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特開2018-87722化学センサ測定による試料識別方法、試料識別装置、及び入力パラメータ推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2018-87722(P2018-87722A)
(43)【公開日】2018年6月7日
(54)【発明の名称】化学センサ測定による試料識別方法、試料識別装置、及び入力パラメータ推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/00 20060101AFI20180511BHJP
【FI】
   G01N19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-230468(P2016-230468)
(22)【出願日】2016年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 岳
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】吉川 元起
【住所又は居所】茨城県つくば市千現一丁目2番地1 国立研究開発法人物質・材料研究機構内
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 隆
【住所又は居所】大阪府吹田市山田丘1番1号 国立大学法人大阪大学内
(57)【要約】
【課題】化学センサを用いた測定を行う際に、どのような試料の導入であっても試料の識別を可能にする新たな分析方法を提供すること。
【解決手段】未知試料の量が時間的に変化する入力を化学センサに与え、上記化学センサからの時間的に変化する応答を測定し、上記入力及び上記応答に基づいて、上記未知試料に対する上記化学センサの伝達関数を求め、上記未知試料に対する上記化学センサの伝達関数に基づいて上記未知試料を識別する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未知試料の量が時間的に変化する入力を化学センサに与え、
前記化学センサからの時間的に変化する応答を測定し、
前記入力及び前記応答に基づいて、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求め、
前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づいて前記未知試料を識別する
化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項2】
前記伝達関数は時間以外の基底に変換された伝達関数である、請求項1に記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項3】
前記伝達関数は時間伝達関数である、請求項1に記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項4】
前記時間伝達関数は、前記入力から前記測定された応答を与えるようにフィッティングを行うことにより求める、請求項3に記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項5】
前記基底の変換は直交変換または擬直交変換により行われる、請求項2に記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項6】
前記直交変換または擬直交変換は畳み込みを乗算に変換する変換である、請求項5に記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項7】
前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づく前記未知試料の識別は、別途求められた一つまたは複数の既知試料に対する前記化学センサの伝達関数との比較に基づいて行われる、請求項1から6の何れかに記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項8】
前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求めるために前記化学センサに与えられる前記入力における前記試料の量の変化範囲を所定の範囲に制限する、請求項1から7の何れかに記載の化学センサ測定による試料識別方法。
【請求項9】
未知試料を時間的に変化させた量で化学センサへ供給する手段と、
前記化学センサからの時間的に変化する応答信号を受け取る手段と
を設け、
請求項1から8の何れかに記載の化学センサ測定による試料識別方法を使用して入力された試料の識別を行う試料識別装置。
【請求項10】
試料の量が時間的に変化する入力を化学センサに与え、
前記化学センサからの時間的に変化する応答を測定し、
前記入力及び前記応答に基づいて、未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求め、
前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づいて、前記化学センサへの前記入力のパラメータのうちで前記伝達関数を変化させる前記パラメータの値を求める
化学センサ測定による入力のパラメータの推定方法。
【請求項11】
前記パラメータは前記化学センサへの前記入力の温度または前記化学センサへの前記入力中に含まれる前記試料の濃度である、請求項10に記載の入力のパラメータの推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学センサを用いた測定の分析手法に関する。より詳細には、化学センサの入出力の伝達関数による試料の識別方法に関する。本発明は更にそのような識別方法により試料の識別を行う装置、及び化学センサへの入出力の伝達関数により入力のパラメータを推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学センサを用いた試料の分析において、試料の特性(試料の種類、濃度、温度等)に基づいた識別を行う手法は、用いる化学センサの原理に基づき様々なものが存在する。特定の化学物質に対して特異的に出力が変化するセンサ(例えばpHメーター)の場合には、その物質の有無や濃度に基づいて試料の識別が可能であるが、広い選択性を有する化学センサの場合には、得られるセンサ出力から識別に有用な情報を選択して抽出する必要がある。例えばガスセンサを用いて気体試料の分析を行う際には、試料をガスセンサに供給することで得られるシグナルの形状から特徴を抽出することで気体の種類を識別することができる。これは、ガスとセンサの相互作用がガスの種類により異なるため、ガス種ごとに異なる形状のシグナルが得られるためである。しかし、このように、センサのシグナルからガス種を識別するためには、センサへのガスの導入を常に一定に揃える必要がある。例えば、ある時刻から一定の流量で試料ガスを導入する場合と、ある時刻から徐々に流量を上げながら試料ガスを導入する場合とでは、同じガスであっても得られるセンサシグナルの形状は異なる。したがって、試料ガスのセンサへの供給方法が異なる測定結果同士ではデータを比較することができない。
【0003】
これに対し、理論モデルに基づきモデルを立て、測定結果から汎用のパラメータを抽出することで試料の識別を行う手法もある。例えば非特許文献1では、粘弾性体が被覆されたカンチレバー型センサに関して理論モデルを構築し、試料の導入(濃度の時間変化)を含んだ微分方程式を解くことで測定結果からパラメータの抽出を行っている。この場合、原理的にはどのような試料の導入であっても、得られるセンサシグナルの形状からパラメータが抽出できることから、このパラメータを評価することでガスの識別が可能となる。しかしこの手法では、モデルに合致する系でのみ有効であるため、適応できる系が極めて限定されてしまう。
【0004】
以上より、化学センサ測定一般において、どのような試料の導入であっても試料の識別が可能となる新規分析手法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/148774号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】M. J. Wenzel, F. Josse, S. M. Heinrich, E. Yaz, and P. G. Datskos,"Sorption-induced static bending of microcantilevers coated with viscoelastic material" Journal of Applied Physics 103, 064913 (2008).
【非特許文献2】G. Yoshikawa, T. Akiyama, S. Gautsch, P. Vettiger, and H. Rohrer, "Nanomechanical Membrane-type Surface Stress Sensor" Nano Letters 11, 1044-1048 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、化学センサを用いた測定を行う際に、どのような試料の導入であっても試料の識別を可能にする新たな分析方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、未知試料の量が時間的に変化する入力を化学センサに与え、前記化学センサからの時間的に変化する応答を測定し、前記入力及び前記応答に基づいて、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求め、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づいて前記未知試料を識別する化学センサ測定による試料識別方法が与えられる。
ここで、前記伝達関数は時間以外の基底に変換された伝達関数であってよい。
また、前記伝達関数は時間伝達関数であってよい。
また、前記時間伝達関数は、前記入力から前記測定された応答を与えるようにフィッティングを行うことにより求めてよい。
また、前記基底の変換は直交変換または擬直交変換により行われてよい。
また、前記直交変換または擬直交変換は畳み込みを乗算に変換する変換であってよい。
また、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づく前記未知試料の識別は、別途求められた一つまたは複数の既知試料に対する前記化学センサの伝達関数との比較に基づいて行われてよい。
また、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求めるために前記化学センサに与えられる前記入力における前記試料の量の変化範囲を所定の範囲に制限してよい。
本発明の他の側面によれば、未知試料を時間的に変化させた量で化学センサへ供給する手段と、前記化学センサからの時間的に変化する応答信号を受け取る手段とを設け、上記何れかの化学センサ測定による試料識別方法を使用して入力された試料の識別を行う試料識別装置が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、試料の量が時間的に変化する入力を化学センサに与え、前記化学センサからの時間的に変化する応答を測定し、前記入力及び前記応答に基づいて、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数を求め、前記未知試料に対する前記化学センサの伝達関数に基づいて、前記化学センサへの前記入力のパラメータのうちで前記伝達関数を変化させる前記パラメータの値を求める化学センサ測定による入力パラメータ推定方法が与えられる。
ここで、前記パラメータは前記化学センサへの前記入力の温度または前記化学センサへの前記入力中に含まれる前記試料の濃度であってよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、試料の導入を入力、化学センサで得られるシグナルを出力としたときの両者の関係である「伝達関数」を求めることで試料の分析ができるようになる。これにより、どのような試料の入力であっても、試料の特性に基づいた識別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】化学センサを用いて試料i(i=1〜3)の測定を行った際の、試料の入力とセンサで得られる出力と両者をつなぐ伝達関数との関係を時間領域で示した図。
図2】実施例1において、測定を行う際のガスの流路を示す図。
図3】実施例1において、マスフローコントローラ(Mass Flow Controller、MFC)の制御信号、MFC1の流量(実測値)及びセンサのシグナル(応答信号)を示す図。
図4】実施例1において、水(HO)、エタノール(EtOH)、ベンゼン(Benzene)、酢酸エチル(AcOEt)及びヘキサン(Hexane)を測定した際のセンサシグナルを示す図。
図5】(a)は、実施例1において、各測定で得られた周波数伝達関数をもとに主成分分析を行った結果を示す図。(b)は、(a)中の点線で囲まれた領域を拡大した図。
図6】(a)は、実施例1において、各測定で得られた離散時間有限応答伝達関数をもとに主成分分析を行った結果を示す図。(b)は、(a)中の点線で囲まれた領域を拡大した図。
図7】実施例2において、濃度を変えて水の蒸気を測定した際の、(a)は、MFC1の流量、(b)は、センサでの応答を夫々示す図。
図8】実施例2において、各測定で得られた伝達関数をもとに主成分分析を行った結果を示す図。
図9】実施例3において、温度を変えて水の蒸気を測定した際のセンサシグナルを示す図。
図10】実施例3において、各測定で得られた伝達関数をもとに主成分分析を行った結果を示す図。
図11】実施例4において、MFC1での実測流量と、伝達関数を元にセンサシグナルから推定したMFC1の流量とを比較した図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一態様では、化学センサに試料を導入する際に、流量を入力、センサのシグナルを出力とする伝達関数を求めることで試料の解析を行う手法が提供される。これにより、試料の特性(試料の種類、濃度、温度、圧力等)による識別手法が提供される。
【0012】
本発明は、化学センサを用いた測定により試料の分析を行うものである。したがって、本発明で使用可能なセンサ本体は、試料に対し何らかの応答を示すものであれば、その構造、動作原理等は特に制限されない。なお、試料としては気体試料だけではなく、液体試料でも使用できる。
【0013】
<理論的背景>
図1に本発明の概念図を示す。化学センサに対して試料を導入すると、化学センサの動作原理に応じてシグナルが得られる。今この試料の導入を入力とし、得られるシグナルを出力とする。このとき、入力と出力の関係を結ぶものを「伝達関数」と定義する。一般的には、化学センサを用いて試料を分析する際、シグナルを解析することによって試料を分析するが、本発明ではシグナルでは無く伝達関数を試料の分析に用いる。試料の特性(試料の種類、濃度、温度、圧力等)により入力と出力の関係が変化することから、両者をつなぐ伝達関数に注目することで試料の分析が可能となる。
【0014】
例として、入力と出力との関係が線形である系について考える。まず図1のように、試料i(i=1〜3)のセンサ素子への流入量x(t)を入力とし、その結果得られるセンサシグナルy(t)を出力とする。ただしtは時刻である。今、x(t)とy(t)は線形性を有すると仮定していることから、伝達関数として時間伝達関数h(t)を用いて
【0015】
【数1】
【0016】
と畳み込みで表すことができる。通常畳み込み積分では積分区間を−∞から+∞までとするが、因果律より時刻tより後の未来のxが現在のyに影響を与えることはないのでτ<0をτの積分区間から除外する。また、測定はxからyへの信号伝達に要する時間よりも十分長時間行われ、測定開始時刻t=0より過去のxの現在のyへの影響は無視できると仮定し、t−τ<0、すなわちτ>tをτの積分区間から除外する。したがって、積分区間は[0:t]とすることができる。
【0017】
この時間伝達関数h(t)は線形の系である限り試料iの流入量x(t)には依存しない一方で、試料iの特性により異なるため、入力となる流入量x(t)と出力となるセンサシグナルy(t)とから時間伝達関数h(t)を求めることで試料の分析が可能となる。
【0018】
次に周波数領域での入出力を考える。時間領域で考えた場合の入力x(t)、出力y(t)、及び時間伝達関数h(t)はフーリエ変換もしくはラプラス変換することで周波数fの関数として夫々X(f)、Y(f)、及びH(f)と表すことができる。このとき、X(f)、Y(f)は周波数伝達関数H(f)を用いて
【0019】
【数2】
【0020】
と記述することができる。同様に周波数伝達関数H(f)も試料iの特性により異なるため、測定によりH(f)を求めることで試料の分析が可能となる。なお、式(1)及び式(2)は夫々時間領域及び周波数領域での表現であり、数学的に等価である。
【0021】
また式(1)及び式(2)より、h(t)もしくはH(f)がわかっている場合には、得られたセンサシグナルy(t)もしくはY(f)から入力であるx(t)もしくはX(f)を推定することができる。
【0022】
なお、現実のこの種の測定系は厳密には線形ではない場合が多い。しかし、この線形性からのずれがもたらす誤差が測定の目的等によって許容される範囲内に収まるのであれば、そのような系を線形であると見なして本発明により測定を行うことができる。また、測定の際の入力側のパラメータ(例えば測定対象物質の濃度)の全範囲では大きな非線形性が見られる測定系であっても、そのパラメータがある特定の範囲内でしか変化しない場合、あるいは大きな範囲で変化するが、その大まかな値(つまり実際のパラメータの値がどの範囲にあるか)があらかじめ分かっていたり、別の手段からもとめられたりする場合には、そのような範囲内で十分に線形であること、すなわち「区分的な線形性」が保証されてさえいれば、やはり系を線形であると見なして本発明を適用することができる。本発明はこのような僅かな非線形性を有していたりあるいは区分的な線形性を有していたり場合も包含することに注意されたい。これを実現するには、例えば化学センサへの入力の濃度等のパラメータの変化範囲を概ね線形性が保証されている範囲に制限して伝達関数を求めたり、あるいはそのようなパラメータの変化範囲を夫々概ね線形性が保証されている複数の範囲に区分し、これらの区分のそれぞれの中でパラメータを変化させて区分ごとの伝達関数を求めたりすればよい。
【0023】
あるいは、上述のような非線形性が顕著である場合でも、測定系に入力される物質が判っていれば、逆に入力側のパラメータ(例えば上述したような場合の濃度)の値を求めることができる。
【0024】
また、h(t)やx(t)には陽に現れないが、実際には系の挙動に影響を与えるパラメータがある場合、同様に物質が判っていればそのようなパラメータの値を求めることができる。例えば、温度によって時間伝達関数が変化する場合には、温度範囲毎に時間伝達関数がどのようになるかという対応関係を事前に調べておけば、時間伝達関数(周波数伝達関数)を求めることにより、該当する温度範囲を得ることができる。
【0025】
また、上記理論的説明においては、式(1)で表される測定系の入力として試料のセンサ素子への流入量を使用しているが、化学センサ測定における入力となり得るパラメータであれば入力として採用することができる。
【0026】
また、このような測定により求められた伝達関数を与える試料が何であるかを識別するためには、実施例のような主成分分析を行う代わりに、パターン認識の手法、その他の判別手法を用いることで、測定結果の伝達関数(例えば実施例中の表に示すように周波数毎の関数の値からなるベクトル)が事前に求めておいた各種試料の伝達関数のうちのどれに近いか(あるいは伝達関数空間における各種試料の伝達関数のクラスタのうちのどれに属するか)を判別するなどの方法を使用することができる。
【0027】
なお、上の説明では図1に示す入力x(t)から出力y(t)への時間伝達関数h(t)をそのラプラス変換あるいはフーリエ変換H(f)として求めたが、必ずしもラプラス変換やフーリエ変換を使用する必要もないし、またこの変換は周波数領域の関数として表現できるものである必要もない。つまり、この変換は時間伝達関数h(t)の基底を時間以外のものに変換する変換であってよい。一般的に記述すれば、図1にあるように
y(t)=f(x(t,t−1,・・・,t−Τ))(ここでΤはゼロ以上で有限)
という関数で表されるセンサへの入力時系列x(t)からセンサの出力時系列y(t)への伝達関数fであればよい。なお、この変換としては、好ましくは直交変換または擬直交変換を使用し、更に好ましくは上で例示したラプラス変換やフーリエ変換の場合のように、畳み込みを乗算に変換する(式(2))ものを使用する。
【0028】
また、上述の基底変換を行わず、入力x(t)と出力y(t)との関係から時間伝達関数h(t)を直接求めることもできる。これを実現するための手法の非限定的な例示としては、入力x(t)に対してそれに対する出力y(t)を測定し、両者が上記式(1)の関係を満たすように時間伝達関数h(t)をフィッティングにより求めることができる。その詳細は実施例1の後半で説明する。
【0029】
なお、ここでfが非線形関数の場合には、同じ入力時系列x(t)と出力時系列y(t)の組に対して必ずしも関数fが一意に決まらない(局所解が複数存在する)可能性がある。一意に決まらないと、fのパラメータ値の可能な組合せ(例えば実施例1における周波数点毎の伝達関数値の系列を参照)が複数ありえるので、各試料に対してその可能な組合せをすべて見つけておいて、未知の試料を測ってfのパラメータ値の組を推定したときに、その何れかの組合せに一致ないし近いならば、そのパラメータ値の組に対応する試料や濃度等であると判定する必要がある。これは、各試料に対してその可能な組合せをすべて見つけることができるなら可能である。実験で予めすべて見つけられるか否かについては、センサがどういう関数fで表されるか、またそのfがどのような数学的性質を持つかにかかってくる。従って、fが何の制限もない関数の場合には実験で全て求めておくことは困難である。
【0030】
あるいは関数fを線形の関数に限定するのであれば、伝達関数が一意に定まる(つまり、パラメータ値は一組しか存在しない)ので、取り扱いが容易になる。
【0031】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、当然ながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。例えば、以下では化学センサとして膜型表面応力センサ(Membrane−type Surface stress Sensor、MSS)(特許文献1、非特許文献2)を例として使用したが、これ以外の種類の化学センサも、条件に応じて使用できる。
【実施例1】
【0032】
<伝達関数によるガス種の識別>
本実施例では、MSSを用いて溶媒のヘッドスペースガスの測定を行い、ガス種の識別を行った。
【0033】
図2に本実施例で使用した実験系100の概要を示す。2つのマスフローコントローラ(MFC)10、20より窒素ガスを供給し、その一方のMFC(MFC1)10は試料となる溶媒30が入ったバイアル瓶40に接続した。溶媒30が入ったバイアル瓶40はさらに別の空のバイアル瓶50に接続し、もう片方のMFC(MFC2)20もこの空のバイアル瓶50に直接接続した。この空のバイアル瓶50をさらにMSSがセットされているセンサチャンバー60に接続し、センサチャンバー60を通ったガスはその後排気した。この実験系により、ヘッドスペースガス70の濃度を様々に変化させてセンサに供給することができる。溶媒ごとに飽和蒸気圧が異なることから、ここでは比飽和蒸気濃度xを入力として用いる。例えば溶媒として水(HO)を用いてMFC1 10の流量を30sccm、MFC2 20の流量を70sccmとした場合、水の比飽和蒸気濃度xH2Oは30%となる。MSSにはガス感応膜としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)を被覆しておいた。バイアル瓶およびセンサチャンバーはインキュベータ内に設置され、温度を一定(25℃)に保持した。
【0034】
本実施例ではMFC1 10でランダムに流量を変化させ、MFC1 10の流量(実測)及びセンサのシグナルを測定した。周波数伝達関数は、原理的にはインパルス(時間的幅が無限小で高さが無限大のパルス)を入力として与え、それに対する応答を見ることで求めることができる。しかし、現実の実験系ではこのようなインパルスを与えることは困難であり、さらに出力にノイズが入り込んでいる場合には出力信号からインパルスに対する応答のみを抽出することは難しいという問題がある。そこで、本実施例では入力としてインパルスではなく、ホワイトノイズを与えることで周波数伝達関数を求めた。ホワイトノイズは全周波数に渡って一定の値をとることから、ホワイトノイズに対する応答を評価することで周波数伝達関数を求めることが可能となる。現実の実験系では、入力を制御できる周波数は有限であるため、ナイキストの定理よりこの周波数の半分の周波数までの応答を評価することが可能となる。本実施例では、図3に示すように、MFC1 10の流量を0〜100sccmの範囲で1秒ごと(1Hz)にランダムに変化させた。MFC1の流量をV1,in(t)sccmとすると、MFC2 20の流量V2,in(t)はV2,in(t)=100−V1,in(t)sccmとし、MFC1 10とMFC2 20の流量の和が常に100sccmとなるようにした。測定時間は一測定につき20秒とし、サンプリング周波数20Hzで400点のデータを取得した(0.05秒刻みで0秒から19.95秒まで)。試料として水、エタノール(EtOH)、ベンゼン(Benzene)、酢酸エチル(AcOEt)、ヘキサン(Hexane)の5種類の溶媒を用い、各溶媒につき6回の測定を行った。各溶媒の測定例を図4に示す。
【0035】
測定結果より、比飽和蒸気濃度(MFC1の流量実測値に線形)を入力、センサシグナルを出力とした場合の周波数伝達関数を求め解析に用いた。まず測定データをフーリエ変換し、比飽和蒸気濃度およびセンサシグナルの周波数成分を求める。次に、センサシグナルの周波数成分を比飽和蒸気濃度の周波数成分で割ることにより周波数伝達関数を求めることができる。本実施例ではサンプリング周波数20Hzで20秒(400点)測定を行っていることから、0.05Hz刻みでの周波数特性が得られる。本実施例では流量を1秒おき(1Hz)でランダムに変化させているため、ナイキストの定理より、1Hzの半分の0.5Hzまでの周波数成分が解析で有用となる。なお、上述したように、現実の装置では入力を制御できる周波数には上限があって、本実施例ではMFCの応答性の制限などから、1Hzよりも高い周波数での流量切替を行おうとしても系がほとんど追随できなかった。したがって、0.05、0.1、0.15、・・・、0.5Hzの10成分を用いて周波数伝達関数を評価した。これにより、一測定につき10次元の複素ベクトルとして周波数伝達関数が得られる。
【0036】
実際に得られた水、エタノール、ベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン(THF)、及び酢酸エチルの伝達関数を以下の表1〜3に示す。なお、表中のTHFは実施例4で使用される溶媒であるが、上述の5種類の溶媒と同様にして周波数伝達関数を得た。なお、これらの表について簡単に説明すれば、周波数伝達関数H(f)は周波数の関数であるが、表中に示されている数値は、上述したところの0.05Hz〜0.5Hzまでの0.05Hz刻みの10点の周波数における周波数伝達関数の値(複素数)であることに注意されたい。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
得られた周波数伝達関数をもとに、ガス種の識別を行った。5種類の溶媒につき、各々6回の測定から得た合計30個の10次元複素ベクトル周波数伝達関数に主成分分析(PCA)を行った。結果を図5(a)、(b)に示す。なお図5(a)、(b)は、周波数伝達関数のうちガス種ごとの違いが表れやすい虚数成分のみを用いたものである。図5(a)、(b)より、周波数伝達関数を用いることで5種類の溶媒蒸気の識別に成功した。本実施例で化学センサとして用いたMSSはナノメカニカルセンサの一種であり、センサ素子表面上に塗布されたガス感応膜がガスを吸収し膨張することで発生する応力をピエゾ抵抗で検知することでセンサシグナルを得ている(特許文献1、非特許文献2)。したがってセンサの応答は、ガスと感応膜との相互作用(ガスの吸収・脱離、およびそれに伴う感応膜の膨張・収縮など)により決まる。同じMSSを用いて複数のガス測定を行った場合この相互作用がガス種ごとに変わるため周波数伝達関数が変化し、周波数伝達関数をもとにしたガス種の識別が可能となる。
【0041】
ある試料のガス種が何であるかを識別するには、予め上述した測定及びその主成分分析を行い、いくつかの主成分からなる座標空間を、各ガス種が属する可能性の高い領域毎にクラスタに分割しておく。例えば、図5(a)、(b)に示す主成分分析結果の例では、第1主成分PC1と第3主成分PC3とが張る二次元空間が、上記5種類の溶媒の各々が属するクラスタに分割されている。識別したい試料も同様にして測定を行うことにより、その周波数伝達関数を求める。そして、この周波数伝達関数(具体的には上記表に示すような周波数点毎の伝達関数の値からなるベクトル)を先に行った主成分分析で得られた各主成分の値に換算し、これらの主成分の値の組が、先に求めておいたどのクラスタに属するかにより、当該試料のガス種を識別することができる。なお、当該試料の各主成分の値がその周波数伝達関数である上記ベクトルの各成分からどのようにして換算できるかは、周知のとおり、先に行っておいた主成分分析結果から自明なので、これ以上の説明は省略する。
【0042】
ここで注意すべきこととして、上記実施例ではMFC1 10の流量をランダムに変化させることによって、入力としてインパルスではなく、ホワイトノイズを与えることで周波数伝達関数を求めたが、実際には、入力x(t)は、所定範囲の周波数成分を含む変化であればランダムである必要はない。ここで「所定の周波数成分」とは、その上限について考えれば、そもそも本発明が対象としている系はローパスフィルタ特性を有する(上記実施例ではカットオフ周波数は1Hz程度)ことから、入力は実質的に系が伝達しない高域の周波数成分を含む必要はない。また、測定は有限の期間しか行わない(上記実施例では20秒間)ので、測定期間によって当該周波数成分の下限が決まる。たとえば、上の実施例ではすでに述べたことからわかるように、入力が含むべき周波数の範囲は0.05Hz〜0.5Hzとなる。あるいはもっと狭い周波数範囲でも所望の精度が達成できるのであれば、入力が含む周波数成分の範囲を当該狭い周波数範囲とすることもできる。当然のことながら、条件次第で精度が向上するのであれば、もっと広い周波数範囲を用いても良い。
【0043】
次に、同じ測定データを用いて異なる手法により解析を行った。式(1)を離散時間化した離散時間有限応答伝達関数(離散時間有限インパルス応答関数)は、以下の式で与えられる。
【0044】
【数3】
【0045】
ここでΔtをサンプリング時間間隔としたとき、τ=Δt×j、h(τ)=c(τ)Δtである。入力x(t)と出力y(t)の観測時系列x(t)、y(t)、i=1,2,・・・,nに対して、この式の両辺間の2乗誤差の合計が最小になるように最小2乗フィッティングし、離散時間有限応答伝達関数の係数ベクトルC=[C(0),・・・C(τ)]を得る。Δt=0.05秒、p=19として、物質5種類(HO、EtOH、AcOEt、Benzene、Hexane)の各々20秒間6回の測定データについてCを計算した。さらに、これらすべての20次元ベクトルのCをデータとして主成分分析を行った。図6(a)、(b)に第1及び第2主成分平面にデータをプロットしたものを示す。図6(a)、(b)に示すように、主成分平面上で各測定結果が分離できたことからガスの識別を行うことができた。先に説明した周波数伝達関数と同様に、離散時間有限応答伝達関数の係数ベクトルCを先に行った主成分分析で得られた各主成分の値に換算し、これらの主成分の値の組が、先に求めておいたどのクラスタに属するかにより、当該試料のガス種を識別することができる。
【実施例2】
【0046】
<伝達関数による濃度の識別>
本実施例では、膜型表面応力センサ(MSS)を用いて濃度の異なる水蒸気(水のヘッドスペースガス)の測定を行い、ガス濃度の識別を行った。
【0047】
実験系は実施例1と同じものを用いて、MFCを制御することで水のヘッドスペースガス70をPMMA被覆MSSがセットされたセンサチャンバー60に供給し測定を行った。本実施例では図7(a)のように、MFC1 10の流量が5sccm(比飽和蒸気濃度5%)、95sccm(比飽和蒸気濃度95%)の2パターンで実験を行い、−5〜+5sccmの範囲で1秒ごと(1Hz)にランダムに変化する成分を載せた。また、MFC1 10とMFC2 20の流量の和が常に100sccmとなるようにMFC2 20の流量を制御した。センサでの応答を図7(b)に示す。
【0048】
周波数伝達関数を実施例1と同様の手法により求めPCAにより解析を行った。その結果、図8に示すように比飽和蒸気濃度5%と95%の測定結果を識別することができた。これにより、周波数伝達関数を用いることでガス濃度の識別が可能であることが示された。センサの応答がガス濃度に対して線形であれば、ガス濃度によらず周波数伝達関数は同じになるため濃度による識別はできない。実施例1では比飽和蒸気濃度が0%から100%まで揺らぐが、濃度に対して応答がほぼ線形であることから、濃度によらずガス種および温度による識別が可能であった。しかし、ガス濃度が高い領域ではセンサの応答が濃度に対して非線形になる場合が多く、低濃度と高濃度とでは伝達関数が変化する場合がある。本実施例では5±5%と95±5%という大きく異なる2種類の比飽和蒸気濃度領域にて夫々測定を行ったことから、濃度による周波数伝達関数の違いをもとに両者を識別することができた。
【実施例3】
【0049】
<伝達関数による温度の識別>
本実施例では、膜型表面応力センサ(MSS)を用いて温度の異なる水蒸気(水のヘッドスペースガス)の測定を行い、温度の識別を行った。
【0050】
実験系は実施例1と同じものを用いて、MFCを制御することで水のヘッドスペースガス70をPMMA被覆MSSがセットされたセンサチャンバー60に供給し、測定を行った。実施例1と同様にMFC1 10の流量を0〜100sccmの範囲で1秒ごと(1Hz)にランダムに変化させ、MFC1 10とMFC2 20の流量の和が常に100sccmになるようにMFC2 20の流量を制御した。本実施例ではインキュベータ80の温度を15℃と37℃に設定してそれぞれ測定を行った。センサの応答を図9に示す。
【0051】
周波数伝達関数を実施例1と同様の手法により求めPCAにより解析を行った。その結果、図10に示すように15℃と37℃の測定結果を識別することができた。これにより、周波数伝達関数を用いることでガスの温度の識別が可能であることが示された。MSSでは受容体層でのガスの吸収・脱着、およびそれに伴う受容体層の膨張・収縮がセンサの応答に影響してくる。このような現象は温度により影響を受けるため、温度を変えることで伝達関数が変わり、温度の識別が可能となる。
【実施例4】
【0052】
<学習した伝達関数による入力の推定>
本実施例では、膜型表面応力センサ(MSS)を用いてガス測定を行うことで周波数伝達関数を求め、その周波数伝達関数を元にシグナルからガス濃度の時間変化の推定を行った。
【0053】
実験系は実施例1と同じものを用いて、MFCを制御することでテトラヒドロフラン(THF)のヘッドスペースガス70をPMMA被覆MSSがセットされたセンサチャンバー60に供給し、測定を行った。実施例1と同様にMFC1 10の流量を0〜100sccmの範囲で1秒ごと(1Hz)にランダムに変化させ、MFC1 10とMFC2 20との流量の和が常に100sccmになるようにMFC2 20の流量を制御した。測定は5回行い、実施例1と同様の手順により周波数伝達関数を求めた。ただし、今回は0.05Hz刻みで0.05Hzから1Hzまでの20成分を周波数伝達関数として評価した。このようにして各測定で周波数伝達関数を求め、各測定での周波数伝達関数を平均化した平均伝達関数を求めた。次に再びTHFの測定を1回行い、得られたシグナルからMFC1 10の流量の推測を行った。具体的には、測定で得られたセンサシグナルy(t)をフーリエ変換しY(f)を求め、これを平均周波数伝達関数H(f)で除算することで推定MFC1流量X(f)を求めた。このX(f)を逆フーリエ変換することで推定MFC1流量x(t)を求め、これと実測のMFC1流量とを比較した。
【0054】
図11に結果を示す。実線がMFC1 10での実測流量であり、破線が平均周波数伝達関数を元にシグナルから推定されたMFC1流量である。1Hzまでの低周波数成分のみでの推測となるため細かい流量の変化は推定できていないが、おおまかな流量の変化が推定できていることがわかる。なお、推定されたMFC1 10の流量は0〜100sccmの範囲に収まっていないが、これは本来含まれる高周波成分を棄却して0.05〜1Hzの周波数成分のみで逆フーリエ変換を行っているためである。このMFC1流量は濃度に比例する量であることから、校正によりガスの濃度変化を推定することが可能となる。
【0055】
今回の実施例ではナイキスト周波数である0.5Hzまでの周波数成分を用いた推定よりも、ナイキスト周波数の2倍である1Hzまでの周波数成分を用いた推定の方がより高い精度での推定ができた。流量の変化が1Hzであるため、周波数伝達関数による入力(MFC1流量)の推定ではナイキスト周波数である0.5Hzより高い周波数成分は原理的には推定に寄与しない。しかし、センサの持つ非線形な効果によりナイキスト周波数よりも高い周波数成分が寄与することで、このようにナイキスト周波数よりも高い周波数成分を含む伝達関数で評価したほうが入力をより正確に推定できる場合がある。ただし、さらに高い周波数成分までを考慮して周波数伝達関数を求め入力の推定を行った場合、高周波成分が過剰に寄与してしまい、逆に精度が落ちる場合がある。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明したように、本発明によれば、化学センサを用いたガス測定において、入力となるガスの導入と出力となるセンサシグナルの応答との関係から伝達関数を求めることで、ガスの分析が可能となる。これにより、入力と出力がわかればどのような化学センサであっても分析が可能である。また、センサへ供給する試料の流量を精密に制御しなくても、入力となる流量や濃度の変化がわかれば試料の分析が可能となることから、例えばこれまでMFCやポンプを用いてセンサへ試料を送っていた箇所を、ブロワーやシリンジなどを用いた簡易的な試料の導入法に置き換えることが可能となる(ただし、流量はフローメーター等でモニタリングするものとする)。加えて、化学センサを適用する系において予め伝達関数を求めておけば、センサシグナルから入力となる流量や濃度の変化をモニタリングすることもできる。本発明により、大掛かりな装置を用いない小型の測定系のみで、かつ試料の導入方法を厳密に制御する必要のない試料の分析が可能となることから、例えば食品や環境、医療分野等でのオンサイト分析への応用が期待される。
【符号の説明】
【0057】
100 実験系
10 マスフローコントローラ(MFC)1
20 マスフローコントローラ(MFC)2
30 溶媒
40、50 バイアル瓶
60 センサチャンバー
70 ヘッドスペースガス
80 インキュベータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11