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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-102214(P2019-102214A)
(43)【公開日】2019年6月24日
(54)【発明の名称】リチウム蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20190603BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20190603BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20190603BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20190603BHJP
【FI】
   H01M10/0562
   H01M10/052
   H01G11/56
   H01G11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-230169(P2017-230169)
(22)【出願日】2017年11月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)刊行物名:粉体粉末冶金協会講演概要集 平成29年度春季大会、発行者名:一般社団法人粉体粉末冶金協会、発行年月日:平成29年5月31日 (2)研究集会名:一般社団法人粉体粉末冶金協会 平成29年度春季大会(第119回講演大会)、主催者名:一般社団法人粉体粉末冶金協会、開催日:平成29年6月2日 (3)掲載物名:一般社団法人粉体粉末冶金協会 粉体及び粉末冶金に関する国際会議(JSPM International Conference on Powder and Powder Metallurgy)講演予稿集、掲載アドレス: https://confit.atlas.jp/guide/event/jspmic2017/subject/7E−C1−05/classlist?eventCode=jspmic2017、掲載者名:一般社団法人粉体粉末冶金協会、掲載年月日:平成29年10月30日 (4)研究集会名:一般社団法人粉体粉末冶金協会 粉体及び粉末冶金に関する国際会議(JSPM International Conference on Powder and Powder Metallurgy)、主催者名:一般社団法人粉体粉末冶金協会、開催日:平成29年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久男
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】坂元 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】仙名 保
(72)【発明者】
【氏名】ジーバン・クマール・パダルティ
(72)【発明者】
【氏名】川口 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】彦坂 英昭
(72)【発明者】
【氏名】和田口 暢基
(72)【発明者】
【氏名】獅子原 大介
(72)【発明者】
【氏名】水谷 秀俊
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AA03
5E078AB06
5E078DA11
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
(57)【要約】
【課題】リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能を十分に高くする。
【解決手段】リチウム蓄電デバイスは、一対の電極と、一対の電極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層とを備える。固体電解質層は、さらに、カルボン酸のリチウム塩を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
前記一対の電極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、
を備えるリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記固体電解質層は、さらに、カルボン酸のリチウム塩を含むことを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記カルボン酸は、ポリアクリル酸とアルギン酸との少なくとも一方を含むことを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記固体電解質は、酸化物系固体電解質であることを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記固体電解質は、LiとLaとZrとOとを少なくとも含有するガーネット型構造またはガーネット型類似構造を有する固体電解質であることを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記固体電解質は、さらに、MgとSrとの少なくとも一方を含有することを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のリチウム蓄電デバイスにおいて、
前記リチウム蓄電デバイスは、リチウム電池であることを特徴とする、リチウム蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、リチウム蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや携帯電話等の電子機器の普及、電気自動車の普及、太陽光や風力等の自然エネルギーの利用拡大等に伴い、高性能な電池の需要が高まっている。なかでも、電池要素がすべて固体で構成された全固体リチウムイオン二次電池(以下、「全固体電池」という)の活用が期待されている。全固体電池は、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた有機電解液を用いる従来型のリチウムイオン二次電池と比べて、有機電解液の漏洩や発火等のおそれがないため安全であり、また、外装を簡略化することができるため単位質量または単位体積あたりのエネルギー密度を向上させることができる。
【0003】
全固体電池は、正極と、負極と、正極と負極との間に配置された固体電解質層とを備える。全固体電池の固体電解質層の構成として、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴムやアクリル系樹脂とを含む構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−212990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の固体電解質層の構成では、バインダがリチウムイオン伝導性を有しないため、バインダによって固体電解質層中のリチウムイオンの伝導が阻害され、固体電解質層のリチウムイオン伝導性が十分に高くならず、ひいては全固体電池の電気化学的性能が十分に高くならない、という課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、全固体リチウムイオン二次電池に限られず、一対の電極と、該一対の電極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備える他のリチウム蓄電デバイス(例えば、リチウム空気電池やリチウムフロー電池、キャパシタ等)にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示されるリチウム蓄電デバイスは、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備えるリチウム蓄電デバイスにおいて、前記固体電解質層は、さらに、カルボン酸のリチウム塩を含む。固体電解質層において、カルボン酸のリチウム塩は、固体電解質の粒子間を接着するバインダとして機能するため、本リチウム蓄電デバイスによれば、固体電解質の粒子間の密着性を高めることができる。さらに、本リチウム蓄電デバイスでは、バインダとして、リチウムイオン伝導性を有するカルボン酸のリチウム塩が採用されているため、バインダによって固体電解質層中のリチウムイオンの伝導が阻害されない。従って、本リチウム蓄電デバイスによれば、固体電解質層のリチウムイオン伝導性を十分に高くすることができ、その結果、リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能を十分に高くすることができる。
【0010】
(2)上記リチウム蓄電デバイスにおいて、前記カルボン酸は、ポリアクリル酸とアルギン酸との少なくとも一方を含む構成としてもよい。本リチウム蓄電デバイスによれば、バインダのリチウムイオン伝導性を効果的に高くすることができ、その結果、固体電解質層のリチウムイオン伝導性を効果的に高くすることができ、リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能を効果的に高くすることができる。
【0011】
(3)上記リチウム蓄電デバイスにおいて、前記固体電解質は、酸化物系固体電解質である構成としてもよい。本リチウム蓄電デバイスによれば、固体電解質層のリチウムイオン伝導率をさらに向上させることができ、リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能をさらに向上させることができる。
【0012】
(4)上記リチウム蓄電デバイスにおいて、前記固体電解質は、LiとLaとZrとOとを少なくとも含有するガーネット型構造またはガーネット型類似構造を有する固体電解質である構成としてもよい。本リチウム蓄電デバイスによれば、固体電解質層のリチウムイオン伝導率を一層向上させることができ、リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能を一層向上させることができる。
【0013】
(5)上記リチウム蓄電デバイスにおいて、前記固体電解質は、さらに、MgとSrとの少なくとも一方を含有する構成としてもよい。本リチウム蓄電デバイスによれば、固体電解質層のリチウムイオン伝導率を極めて効果的に向上させることができ、リチウム蓄電デバイスの電気化学的性能を極めて効果的に向上させることができる。
【0014】
(6)上記リチウム蓄電デバイスにおいて、前記リチウム蓄電デバイスは、リチウム電池であることを特徴とする構成としてもよい。本リチウム蓄電デバイスによれば、リチウム電池の電気化学的性能を十分に高くすることができる。
【0015】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、固体電解質層、該固体電解質層を備えるリチウム蓄電デバイスまたはリチウム二次電池、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態における全固体リチウムイオン二次電池102の断面構成を概略的に示す説明図である。
図2】全固体電池102の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図3】性能評価結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
A−1.全固体電池102の構成:
(全体構成)
図1は、本実施形態における全固体リチウムイオン二次電池(以下、「全固体電池」という)102の断面構成を概略的に示す説明図である。図1には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向という。
【0018】
全固体電池102は、電池本体110と、電池本体110の一方側(上側)に配置された正極側集電部材154と、電池本体110の他方側(下側)に配置された負極側集電部材156とを備える。正極側集電部材154および負極側集電部材156は、導電性を有する略平板形状部材であり、例えば、ステンレス鋼、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Fe(鉄)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、これらの合金から選択される導電性金属材料、炭素材料等によって形成されている。以下の説明では、正極側集電部材154と負極側集電部材156とを、まとめて集電部材ともいう。
【0019】
(電池本体110の構成)
電池本体110は、電池要素がすべて固体で構成されたリチウムイオン二次電池本体である。なお、本明細書において、電池要素がすべて固体で構成されているとは、すべての電池要素の骨格が固体で構成されていることを意味し、例えば該骨格中に液体が含浸した形態等を排除するものではない。電池本体110は、正極114と、負極116と、正極114と負極116との間に配置された固体電解質層112とを備える。以下の説明では、正極114と負極116とを、まとめて電極ともいう。
【0020】
(固体電解質層112の構成)
固体電解質層112は、略平板形状の部材であり、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質122を含んでいる。固体電解質層112に含まれる固体電解質122は、例えば、酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質、錯体水素化物系固体電解質、ハロゲン化物系固体電解質であり、1種類であってもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0021】
酸化物系固体電解質は、例えば、少なくともLi(リチウム)とLa(ランタン)とZr(ジルコニウム)とO(酸素)とを含有するガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有する固体電解質材料と、少なくともLiとM(MはTi、Zr、Ge(ゲルマニウム)の内の少なくとも1つ)とP(リン)とOとを含有するNASICON型構造を有する固体電解質材料と、少なくともLiとTiとLaとOとを含有するペロブスカイト型構造を有する固体電解質材料と、のいずれか1種類、または、これらの内の少なくとも2つの種類を混ぜたものである。上記ガーネット型結晶構造またはガーネット型類似結晶構造を有する固体電解質材料としては、例えば、LiLaZr12(以下、「LLZ」という)や、LLZに対してMg(マグネシウム)およびSr(ストロンチウム)の元素置換を行ったもの(以下、「LLZ−MgSr」という)やLLZに対してAl(アルミニウム)の元素置換を行ったもの(以下、「LLZ−Al」という)等を用いることができる。また、上記NASICON型構造を有する固体電解質材料としては、例えば、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO(以下、「LAGP」という)等を用いることができる。
【0022】
また、硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiI−LiO、LiS−P−LiI−SiS、LiS−SiS、LiS−SiS−LiX(XはI、Br、Clの内のいずれか)、LiS−SiS−LiI−B、LiS−SiS−LiPO、LiS−B、LiS−GeS、LiS−P−GeS等を用いることができる。
【0023】
また、錯体水素化物系固体電解質としては、例えば、LiBH、LiNH、LiBH・3KI、LiBH・P、LiBH・P、LiAlH、Li(NHI、3LiBH・LiI、LiNH、LiGd(BHCl、Li(BH)(NH)、LiBH・NaI、Li(BH)(NH等を用いることができる。また、ハロゲン化物系固体電解質としては、例えば、LiI、LiBr、LiI−LiBr、LiI−LiCl、Lil−LiF、LiOCl1−x(OH)(x=0〜1)、Li2.990.005OCl1−x(OH)(MはBa、Caの内のいずれか、x=0〜1)等を用いることができる。
【0024】
固体電解質層112は、さらに、カルボン酸のリチウム塩124を含んでいる。カルボン酸のリチウム塩124は、固体電解質層112において、固体電解質122の粒子間を接着するバインダとして機能する。本実施形態では、カルボン酸のリチウム塩124は、ポリアクリル酸のリチウム塩である。ポリアクリル酸のリチウム塩は、下記の化学式(1)で表されるポリアクリル酸における少なくとも1つのカルボキシル基の水素(H)がリチウム(Li)で置換された化学式(2)で表される物質である。
【化1】
【化2】
【0025】
なお、カルボン酸のリチウム塩124として、ポリアクリル酸のリチウム塩に限られず、下記の化学式(3)や化学式(4)で表されるカルボン酸における少なくとも1つのカルボキシル基の水素(H)がリチウム(Li)で置換されたリチウム塩を用いることもできる。
【化3】
【化4】
【0026】
また、カルボン酸のリチウム塩124として、アルギン酸のリチウム塩を用いることもできる。アルギン酸は、ポリアクリル酸に比べて柔らかいため、カルボン酸のリチウム塩124としてアルギン酸のリチウム塩を用いると、固体電解質層112に柔軟性を持たせることができる。また、カルボン酸のリチウム塩124として、ポリアクリル酸のリチウム塩とアルギン酸のリチウム塩との混合物を用いることもできる。
【0027】
カルボン酸は、分子式中にカルボキシル基(−COOH)を有し、共鳴効果により水素イオン(H)が容易にリチウムイオン(Li)に置換される。置換されたリチウムイオンも遊離し易く、これによりリチウムイオンの伝導が促進されていると考えられる。また、カルボキシル基が固体電解質に配位することにより、固体電解質粒子同士の密着性を向上させ、固体電解質層の強度を高くする効果も期待される。
【0028】
(正極114の構成)
正極114は、略平板形状の部材であり、正極活物質142を含んでいる。正極活物質142としては、例えば、S(硫黄)、TiS、LiCoO(以下、「LCO」という)、LiMn、LiFePO、LiTi12、LiS等を用いることができる。なお、正極114は、リチウムイオン伝導助剤(例えば、酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質)や、電子伝導助剤(例えば、導電性カーボン、Ni、Pt(白金)等)を含んでいてもよい。
【0029】
(負極116の構成)
負極116は、略平板形状の部材であり、負極活物質162を含んでいる。負極活物質162としては、例えば、Li金属、Li−Al合金、LiTi12(以下、「LTO」という)、C(黒鉛)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、SiO等を用いることができる。なお、負極116は、リチウムイオン伝導助剤(例えば、酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質)や、電子伝導助剤(例えば、導電性カーボン、Ni、Pt等)を含んでいてもよい。
【0030】
A−2.全固体電池102の製造方法:
図2は、全固体電池102の製造方法の一例を示すフローチャートである。はじめに、固体電解質の粉末(例えば、LLZ−MgSrの粉末)を準備する(S110)。
【0031】
次に、溶媒(例えば、純水)にカルボン酸(例えば、ポリアクリル酸)とリチウム塩(例えば、水酸化リチウム)とを溶解させて、カルボン酸のリチウム塩(例えば、ポリアクリル酸のリチウム塩)の溶液を得る(S120)。
【0032】
次に、上記カルボン酸のリチウム塩の溶液に上記固体電解質の粉末を加えて、固体電解質層用スラリーを得る(S130)。
【0033】
次に、正極側集電部材154上に正極114を積層し、さらに、上記固体電解質層用スラリーを塗布して所定の条件(例えば、100℃、3時間)で乾燥させることにより、固体電解質層を形成する(S140)。同様に、負極側集電部材156上に負極116を積層し、さらに、上記固体電解質層用スラリーを塗布して所定の条件(例えば、100℃、3時間)で乾燥させることにより、固体電解質層を形成する(S140)。
【0034】
次に、各集電部材154,156上に形成された固体電解質層同士を貼り合わせ、加圧することより、固体電解質層112を形成する(S150)。すなわち、正極側集電部材154上に形成された固体電解質層と、負極側集電部材156上に形成された固体電解質層とが合わさって、固体電解質層112が形成される。以上の工程により、上述した構成の全固体電池102が製造される。
【0035】
A−3.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の全固体電池102は、一対の電極114,116と、一対の電極114,116の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質122を含む固体電解質層112と、を備える。固体電解質層112は、さらに、カルボン酸のリチウム塩124を含む。このように、本実施形態の全固体電池102では、固体電解質層112がカルボン酸のリチウム塩124を含む。固体電解質層112において、カルボン酸のリチウム塩124は、固体電解質122の粒子間を接着するバインダとして機能するため、固体電解質122の粒子間の密着性を高めることができる。さらに、本実施形態の全固体電池102では、バインダとして、リチウムイオン伝導性を有するカルボン酸のリチウム塩124が採用されているため、バインダによって固体電解質層112中のリチウムイオンの伝導が阻害されない。従って、本実施形態の全固体電池102によれば、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性を十分に高くすることができ、その結果、全固体電池102の電気化学的性能を十分に高くすることができる。
【0036】
また、本実施形態の全固体電池102では、固体電解質層112に含まれるカルボン酸のリチウム塩124は、ポリアクリル酸のリチウム塩とアルギン酸のリチウム塩との少なくとも一方を含む。すなわち、上記カルボン酸は、ポリアクリル酸とアルギン酸との少なくとも一方である。本実施形態の全固体電池102によれば、バインダのリチウムイオン伝導性を効果的に高くすることができ、その結果、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性を効果的に高くすることができる。
【0037】
なお、固体電解質層112を構成する固体電解質122として、LiとLaとZrとOとを少なくとも含有するガーネット型構造またはガーネット型類似構造を有する酸化物系固体電解質(例えば、LLZ−MgSrやLLZ−Al)であることが好ましい。このような構成を採用すれば、固体電解質層112のリチウムイオン伝導率をさらに向上させることができ、全固体電池102の電気化学的性能をさらに向上させることができる。また、固体電解質層112を構成する固体電解質122として、LiとLaとZrとOとを少なくとも含有するガーネット型構造またはガーネット型類似構造を有する酸化物系固体電解質であり、かつ、MgとSrとの少なくとも一方を含有するもの(例えば、LLZ−MgSr)であることがさらに好ましい。このような構成を採用すれば、固体電解質層112のリチウムイオン伝導率を極めて効果的に向上させることができ、全固体電池102の電気化学的性能を極めて効果的に向上させることができる。
【0038】
A−4.性能評価:
全固体電池102用の固体電解質層112、および、固体電解質層112を備える全固体電池102を対象として、性能評価を行った。図3は、性能評価結果を示す説明図である。
【0039】
A−4−1.サンプルについて:
図3に示すように、性能評価には、6つのサンプル(S1〜S6)が用いられた。サンプルS1,S3〜S6では、固体電解質層112に含まれる固体電解質として、LLZ−MgSrが用いられ、サンプルS2では、固体電解質層112に含まれる固体電解質として、LLZ−Alが用いられた。また、各サンプルは、固体電解質層112に含まれるバインダの材料が互いに異なっている。具体的には、サンプルS1,S2では、上記実施形態と同様に、固体電解質層112に含まれるバインダとして、ポリアクリル酸のリチウム塩が用いられ、サンプルS3では、上記実施形態と同様に、固体電解質層112に含まれるバインダとして、アルギン酸のリチウム塩が用いられた。一方、サンプルS4では、固体電解質層112に含まれるバインダとして、スチレンブタジエンゴム(以下、「SBR」という)が用いられ、サンプルS5では、固体電解質層112に含まれるバインダとして、アクリル樹脂が用いられた。なお、サンプルS6では、固体電解質層112にバインダが含まれていない。性能評価に用いられた各サンプルの作製方法は、以下の通りである。
【0040】
(固体電解質(LLZ−MgSr)粉末の作製)
組成:Li6.95Mg0.15La2.75Sr0.25Zr2.012(LLZ−MgSr)となるように、LiCO、MgO、La(OH)、SrCO、ZrOを秤量する。その際、焼成時のLiの揮発を考慮し、元素換算で15mol%程度過剰になるように、LiCOをさらに加える。この原料をジルコニアボールとともにナイロンポットに投入し、有機溶媒中で15時間、ボールミルで粉砕混合を行う。粉砕混合後、スラリーを乾燥させ、1100℃で10時間、MgO板上にて仮焼成を行う。仮焼成後、窒素雰囲気で1100℃で4時間、MgO板上にて焼成を行い、乳鉢で粉砕して篩にかけることにより、LLZ−MgSr粉末を得る。
【0041】
(固体電解質(LLZ−Al)粉末の作製)
組成:LiAl0.125LaZr12(LLZ−Al)となるように、LiCO、γ−Al、La(OH)、ZrOを秤量する。この原料をジルコニアボールとともにナイロンポットに投入し、有機溶媒中で15時間、ボールミルで粉砕混合を行う。粉砕混合後、スラリーを乾燥させ、1100℃で10時間、Al板上にて仮焼成を行う。仮焼成後、窒素雰囲気で1100℃で4時間、Al板上にて焼成を行い、乳鉢で粉砕して篩にかけることにより、LLZ−Al粉末を得る。
【0042】
(固体電解質層112の作製)
サンプルS1〜S5については、上述したLLZ−MgSr粉末またはLLZ−Al粉末を用いて固体電解質層用スラリーを作製する。具体的には、サンプルS1については、溶媒である純水に、バインダ(添加材)として、ポリアクリル酸とリチウム塩(水酸化リチウム)とをモル比で3:1となるように溶解させ、0.5Mの溶液を得る。この溶液にLLZ−MgSr粉末をLLZ−MgSr:ポリアクリル酸リチウム塩が体積比で70:30となるように加えて、固体電解質層用スラリーを得る。また、サンプルS2については、溶媒である純水に、バインダ(添加材)として、ポリアクリル酸とリチウム塩(水酸化リチウム)とをサンプルS1と同様の比率で溶解させ、この溶液にLLZ−Al粉末をサンプルS1と同様の比率で加えて、固体電解質層用スラリーを得る。また、サンプルS3については、溶媒である純水に、バインダ(添加材)として、アルギン酸とリチウム塩(水酸化リチウム)とをサンプルS1と同様の比率で溶解させ、この溶液にLLZ−MgSr粉末をLLZ−MgSr:アルギン酸リチウム塩が体積比で70:30となるように加えて、固体電解質層用スラリーを得る。また、サンプルS4については、溶媒であるトルエンに、バインダ(添加材)として、スチレンブタジエンゴム(SBR)を溶解させ、この溶液にLLZ−MgSr粉末をLLZ−MgSr:SBRが重量比で98:2となるように加えて、固体電解質層用スラリーを得る。また、サンプルS5については、溶媒であるトルエンに、バインダ(添加材)として、アクリル樹脂を溶解させ、この溶液にLLZ−MgSr粉末をLLZ−MgSr:アクリルが重量比で98:2となるように加えて、固体電解質層用スラリーを得る。
【0043】
サンプルS1〜S5のそれぞれについて、固体電解質層用スラリーを集電箔上に塗布し、100℃で乾燥させる。乾燥させた固体電解質層用スラリー上に集電箔を被せて加圧することにより、固体電解質層112を得る。
【0044】
また、サンプルS6については、バインダを使用せず、上述したLLZ−MgSr粉末を500MPaでプレスすることにより、LLZ−MgSrの圧粉体である固体電解質層112を得る。
【0045】
(全固体電池102の作製)
サンプルS1〜S5については、以下のように全固体電池102を作製する。
【0046】
溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)に、正極活物質としてのLiCoO(LCO)と、電子伝導助剤としてのケッチェンブラック(KB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを添加して(重量比はLCO:KB:PVDF=85:7.5:7.5)、正極用スラリーを得る。得られた正極用スラリーを、研磨したアルミ箔上に塗布し、大気中80℃で1晩乾燥させることにより、正極114を得る。
【0047】
溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)に、負極活物質としてのLiTi12(LTO)と、電子伝導助剤としてのケッチェンブラック(KB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを添加して(重量比はLTO:KB:PVDF=80:10:10)、負極用スラリーを得る。得られた負極用スラリーを、銅箔上に塗布し、大気中80℃で1晩乾燥させることにより、負極116を得る。
【0048】
正極114および負極116のそれぞれに、サンプル毎に作製された固体電解質層用スラリーを塗布し、100℃で乾燥させる。乾燥させた固体電解質層用スラリーの上に薄くサンプル毎に作製された固体電解質用スラリーを塗布し、正極114および負極116の固体電解質層用スラリー側同士を貼り合わせてプレスする。その後、該積層体をガラス板で挟んだ状態でクリップでとめ、100℃で乾燥させることにより、全固体電池102を得る。得られた全固体電池102において、正極114の厚さは約40μmであり、固体電解質層112の厚さは約100μmであり、負極116の厚さは約40μmであった。
【0049】
A−4−2.評価方法:
固体電解質層112のリチウムイオン伝導性評価として、サンプルS1〜S6の固体電解質層112を対象として、インピーダンス法(ソーラトロン社製 1470Eおよび1255Bを用いる)により、25℃でのリチウムイオン伝導率を測定した。リチウムイオン伝導率が1.0×10−6S/cm以上である場合に「合格」(〇)と判定し、リチウムイオン伝導率が1.0×10−6S/cm未満である場合に「不合格」(×)と判定した。
【0050】
また、全固体電池102の出力評価として、サンプルS1〜S5の全固体電池102を対象として、25℃での出力密度を測定した。出力密度が1.0W/L以上である場合に「合格」(〇)と判定し、出力密度が1.0W/L未満である場合に「不合格」(×)と判定した。
【0051】
A−4−3.評価結果:
図3に示すように、サンプルS4,S5では、リチウムイオン伝導性評価においてリチウムイオン伝導率が1.0×10−6S/cm未満であったため、「不合格」(×)と判定され、また、電池の出力評価において出力密度が1.0W/L未満であったため、「不合格」(×)と判定された。サンプルS4,S5では、固体電解質層112に含まれるバインダ(SBRまたはアクリル樹脂)がリチウムイオン伝導性を有しないため、バインダによって固体電解質層112中のリチウムイオンの伝導が阻害され、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性が十分に高くならず、全固体電池102の出力密度が十分に高くならなかったものと考えられる。
【0052】
また、サンプルS6では、リチウムイオン伝導性評価においてリチウムイオン伝導率が1.0×10−6S/cm未満であったため、「不合格」(×)と判定された。サンプルS6では、固体電解質層112にバインダが含まれず、固体電解質層112が固体電解質の圧粉体として構成されているため、固体電解質の粒子間の密着性が低くなり、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性が十分に高くならなかったものと考えられる。
【0053】
これに対し、サンプルS1〜S3では、リチウムイオン伝導性評価においてリチウムイオン伝導率が1.0×10−6S/cm以上であったため、「合格」(〇)と判定され、また、電池の出力評価において出力密度が1.0W/L以上であったため、「合格」(〇)と判定された。サンプルS1〜S3では、固体電解質層112に含まれるバインダ(ポリアクリル酸のリチウム塩またはアルギン酸のリチウム塩)がリチウムイオン伝導性を有するため、バインダによって固体電解質層112中のリチウムイオンの伝導が阻害されず、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性が十分に高くなり、全固体電池102の出力密度が十分に高くなったものと考えられる。なお、サンプルS1,S3に用いられたLLZ−MgSrのイオン伝導率は、サンプルS2に用いられたLLZ−Alのイオン伝導率より高いため、サンプルS1,S3では、より顕著に効果が表れたと考えられる。
【0054】
以上説明した性能評価により、固体電解質層112が、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質と、カルボン酸のリチウム塩(例えば、ポリアクリル酸のリチウム塩やアルギン酸のリチウム塩)とを含む構成を採用することにより、固体電解質層112のリチウムイオン伝導性を十分に高くすることができ、全固体電池102の電気化学的性能を十分に高くすることができることが確認された。
【0055】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上記実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0056】
上記実施形態における全固体電池102の構成は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、固体電解質層112に含まれる固体電解質122として、LLZに対してMgおよびSrの元素置換を行ったもの(LLZ−MgSr)やLLZに対してAlの元素置換を行ったもの(LLZ−Al)を用いることができるとしているが、固体電解質122として、LLZを用いてもよいし、LLZに対してMgまたはSr単独の元素置換を行ったものでもよいし、LLZに対して他の元素置換を行ったものを用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態における全固体電池102の製造方法は、あくまで一例であり、種々変更可能である。例えば、上記実施形態において、正極114上に固体電解質層用スラリーを塗布してもよいし、負極116上に固体電解質層用スラリーを塗布してもよいし、正極114と負極116との両方に固体電解質層用スラリーを塗布してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、全固体電池102を対象としているが、本願の構成は、一対の電極と、該一対の電極の間に配置され、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を含む固体電解質層と、を備える他のリチウム蓄電デバイス(例えば、リチウム空気電池やリチウムフロー電池、キャパシタ等)にも適用可能である。また、リチウム二次電池の構造としては、平板積層型の構造や、巻回型の構造であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
102:全固体リチウムイオン二次電池 110:電池本体 112:固体電解質層 114:正極 116:負極 122:固体電解質 124:カルボン酸のリチウム塩 142:正極活物質 154:正極側集電部材 156:負極側集電部材 162:負極活物質
図1
図2
図3