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特開2019-116602筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-116602(P2019-116602A)
(43)【公開日】2019年7月18日
(54)【発明の名称】筆記具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/17 20140101AFI20190627BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20190627BHJP
【FI】
   C09D11/17
   B43K8/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-252552(P2017-252552)
(22)【出願日】2017年12月27日
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】飛世 博愛
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350GA03
2C350GA04
2C350HA15
2C350KC11
2C350KD09
2C350NA12
2C350NA19
2C350NC28
2C350NC30
4J039BC07
4J039BC13
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA01
4J039EA10
4J039EA48
4J039GA26
4J039GA27
(57)【要約】

【課題】 筆跡の乾燥性や組成物の紙面裏抜け抑制に優れ、着色剤に有機蛍光顔料を用いた場合であっても組成物の変色を抑制可能な筆記具用水性インキ組成物を提供すること。
【解決手段】 水と、有機蛍光顔料と、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルとを少なくとも含み、該ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルが、ポリオキシエチレンと、炭素数が9〜15の範囲である脂肪族2級アルコールとのエーテルであることを特徴とする、筆記用具用水性インキ組成物、およびそれを用いた筆記具とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、有機蛍光顔料と、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルとを少なくとも含み、前記ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルが、炭素数が9〜15の範囲である脂肪族2級アルコールとポリオキシエチレンとのエーテルである、筆記具用水性インキ組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の筆記具用水性インキ組成物を収容してなる筆記具。
【請求項3】
20℃においてJISP3201に準拠する筆記用紙に20m直線筆記した際のインキ吐出量が1.5g/m〜7g/mの範囲内である、請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記筆記具がマーキングペンである、請求項2〜3に記載の筆記具。
【請求項5】
前記マーキングペンが、繊維集束体からなるインキ吸蔵体と、前記インキ吸蔵体に吸蔵されたインキを供給可能に接続された、繊維チップまたは多孔質チップとを備えた中詰式マーキングペンである請求項3に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性インキ組成物に関するものである。さらに詳しくは、筆跡の乾燥性とインキの紙面裏抜け抑制に優れ、鮮やかな発色性を維持可能な筆記具用水性インキ組成物を提供することを目的とするものである。また、本発明は、そのインキ組成物を用いた筆記具にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水性インキは低臭気で安全性が高いことから盛んに利用されているが、揮発性有機溶剤を用いた油性インキと比較して筆跡の乾燥性に劣り、筆記直後の筆跡に触れた際に指や筆跡周辺などを汚してしまうことがあるため、筆跡の乾燥性に優れる水性インキが検討されている。このようなインキには、表面張力を下げることが可能な添加剤を用いることによって、紙面に対するインキの浸透性を高め、筆跡の乾燥性向上を向上させることが図られているが、紙面浸透性に優れるインキは紙面の裏抜けを引き起こしやすいことから、筆跡速乾性と裏抜け抑制とを両立できるような添加剤が選択されている。(例えば、特許文献1)
【0003】
特許文献1には、フッ素系等の界面活性剤を用いた筆記具用水性インキ組成物が記載されている。このインキ組成物は、前記界面活性剤によってインキの表面張力が低下し、紙面浸透性が良好とされたものであり、筆跡が乾燥性に優れながらも紙面の裏抜けを容易に抑制可能としたインキ組成物である。
【0004】
前記特許文献1には、用いられる着色剤として各種の顔料や染料が例示されている。しかしながら、着色剤の中には界面活性剤と併用することで変質を起こし、着色剤の発色性を低下させてしまうものが存在するため、このような着色剤を前記組成物に用いるとインキ組成物が変色してしまうことがあった。
例えば、有機蛍光顔料は高分子化合物を染料によって染色した着色剤であり、染料が高分子化合物に吸着しているか、あるいは混合状態にある場合に安定した発色性を奏するが、前記インキ組成物中に用いた際には、界面活性剤によって染料に対する濡れ性が高まった溶媒中で染料が高分子化合物から溶媒中へ移行してしまうため、顔料の発色性が低下し、インキ組成物が変色することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5714888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、筆跡の乾燥性とインキ組成物の紙面裏抜け抑制に優れ、着色剤に有機蛍光顔料を用いた場合であってもインキ組成物の変色を抑制可能な筆記具用水性インキ組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
「1.水と、有機蛍光顔料と、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルとを少なくとも含み、前記ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルが、炭素数が9〜15の範囲である脂肪族2級アルコールとポリオキシエチレンとのエーテルである、筆記具用水性インキ組成物。
2.第1項に記載の筆記具用水性インキ組成物を収容してなる筆記具。
3.20℃においてJISP3201に準拠する筆記用紙に20m直線筆記した際のインキ吐出量が1.5g/m〜7g/mの範囲内である、第2項に記載の筆記具。
4. 前記筆記具がマーキングペンである、請求項2〜3に記載の筆記具。
5.前記マーキングペンが、繊維集束体からなるインキ吸蔵体と、該インキ吸蔵体に吸蔵されたインキを供給可能に接続された、繊維チップまたは多孔質チップとを備えた中詰め式マーキングペンである請求項4に記載の筆記具。」とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筆跡の乾燥性やインキの紙面裏抜け抑制に優れ、着色剤に有機蛍光顔料を用いた場合であっても変色を抑制可能であるため、鮮やかな発色性を維持して良好な筆跡を形成できる筆記具用水性インキ組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0010】
本発明による筆記具用水性インキ組成物(以下、場合により、「水性インキ組成物」または「組成物」と表すことがある。)は、水と、有機蛍光顔料と、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルとを少なくとも含んでなる。以下、本発明による水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
(有機蛍光顔料)
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、着色剤に有機蛍光顔料を用いる。有機蛍光顔料としては、基材である高分子化合物を染料で染色したものが挙げられ、高分子化合物粒子の表面に染料を吸着させたものや、高分子化合物と染料との混合物を細粒化したものなど、従来公知のものが適宜使用できる。このような有機蛍光顔料は、染料を色素として使用しているので色が鮮やかであり、特に、高分子化合物粒子の表面に染料を吸着させた蛍光顔料はより鮮明な色調を呈しやすいため、本発明のインキ組成物に好ましく用いられる。
【0012】
有機蛍光顔料に用いられる高分子化合物としては、従来公知のものが利用可能であり、具体的には、アミノ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリアミド樹脂などを挙げることができる。
染料としては、上記高分子化合物に応じて従来公知の染料を適宜選択可能であり、塩基性染料、酸性染料、分散染料、およびソルベント染料などを用いることが可能である。
【0013】
本発明のインキ組成物には、前記有機蛍光顔料を溶媒に分散させ、顔料分散体としたものを用いることも可能である。具体的には、シンロイヒカラーSWシリーズ、同SFシリーズ(以上シンロイヒ株式会社製)、ルミコールシリーズ(日本蛍光化学株式会社製)などが挙げられる。
【0014】
有機蛍光顔料の平均粒子径は、0.05μm〜10μmであることが好ましく、0.1μm〜5μmであることがより好ましい。顔料の平均粒子径が上記数値範囲内であれば、鮮明な発色性が得られやすくまた、顔料の分散安定性を良好としやすいためである。なお、顔料の平均粒子径は、一例としては、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定機(商品名「LA−300」、株式会社堀場製作所製)を用いてレーザー回折法で測定される粒度分布の体積累積50%時の粒子径(D50)により測定することができる。本明細書では、顔料の「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指すものとする。
【0015】
水性インキ組成物における顔料の含有量は、水性インキ組成物の総質量を基準として、1質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜30質量%であることがより好ましい。顔料の含有量が上記数値範囲内であれば、インキ吐出性の低下を防止することができるとともに、水性インキ組成物、およびそれを用いて形成させた筆跡の鮮明性や隠蔽性を維持することができる。
【0016】
(ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル)
本発明の水性インキ組成物は、炭素数が9〜15の範囲内である脂肪族2級アルコールと、ポリオキシエチレンとのエーテルであるポリオキシエチレン2級アルコールエーテルを含む。上記物質はインキ組成物の紙面浸透性を適度に良好とするため、本発明の組成物は良好な筆跡乾燥性を奏しながらも組成物の紙面裏抜けが抑制可能となる。
また、一般的に有機蛍光顔料を用いたインキは、有機蛍光顔料の染料分子が高分子化合物表面に吸着状態にあるか、または高分子化合物と混合細粒物を形成している場合において安定した発色性を奏する。そのため染料が高分子化合物から脱離すると変色が生じるものであるが、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルは、インキ組成物中で染料分子を高分子化合物から引き離すことのない物質であるため、本発明のインキ組成物は、変色が抑制されて、長期に渡って安定した発色性を奏することが可能となる。
【0017】
本発明に用いられるポリオキシエチレン2級アルコールエーテルは、脂肪族2級アルコールに含まれる炭素数が上記数値範囲内であれば、脂肪族2級アルコールの構造や、ポリオキシエチレン基に含まれるオキシエチレン基の数に限りはないが、好ましくは10〜18のHLB値を有するものであり、12〜15のHLB値を有するものがより好ましい。
上記HLB値を有するポリオキシエチレン2級アルコールエーテルはインキ組成物中で安定した乳化性や溶解性を奏しやすい。
なお、前記HLB値はグリフィン法に基づく数値であり、下記の式(1)によって算出される値をいう。グリフィン法によるHLB値は、0〜20の範囲内の値を示し、数値が大きい程、化合物が親水性であることを示す。
HLB値=20×(親水基の質量%)=20×(親水基の式量の総和/界面活性剤の分子量) ・・・(1)
【0018】
前記ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルの具体例としては、商品名:サンノニックDE−70(HLB値:13.2)、同SS−90(HLB値:13.2)、同SS−120(HLB値14.5)、以上三洋化成株式会社製、商品名:エマルゲン707(HLB値:12.1)、同709(HLB値:13.3)、以上花王株式会社製が挙げられる。
本発明に用いられるポリオキシエチレン2級アルコールエーテルはこれらに限られるものではない。
【0019】
本発明におけるポリオキシエチレン2級アルコールエーテルの含有量は、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.2質量%〜5質量%であることがより好ましい。特に好ましくは、0.3質量%〜1質量%である。
また、前記有機蛍光顔料のインキ組成物全量に対する総含有量をA、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルのインキ組成物全量に対する総含有量をBとすると、B/Aは、0.01≦B/A≦0.5であることが好ましく、0.02≦B/A≦0.2であることがさらに好ましい。ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルの含有量および、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテルの含有量と有機蛍光顔料の含有量との比が上記数値範囲内であると、インキ組成物の変色抑制性、筆跡の乾燥性、およびインキの裏抜け抑制性を良好とすることが容易となる。
【0020】
(その他)
また、水性インキ組成物は、必要に応じて以下の添加剤を用いることができる。具体的には、有機顔料、無機顔料、染料、カオリン、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、セリサイト、およびチタン酸カリウムなどの体質材、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、およびポリグリセリンなどのアルコールまたはグリコール、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、およびフッ素樹脂などからなる樹脂粒子、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、アルキッド樹脂、スルフォアミド樹脂、マレイン酸樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン酢ビ樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、スチレンとマレイン酸エステルとの共重合体、スチレン−アクリロニトリル樹脂、シアネート変性ポリアルキレングリコール、エステルガム、キシレン樹脂、尿素樹脂、尿素アルデヒド樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン系樹脂やその水添化合物、ロジンフェノール樹脂、ポリビニルアルキルエーテル、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、シクロヘキサノン系樹脂などの定着剤、pH調整剤、剪断減粘性付与剤、粘度調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、およびサポニンなどの防錆剤、尿素、アニオン、カチオン系、ノニオン系、両性等の各種界面活性剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂からなる顔料分散剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、およびピロリン酸ナトリウムなどの湿潤剤、防腐剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤などの添加剤を用いることができる。
【0021】
(水性インキ組成物の物性)
本発明による水性インキ組成物の粘度は、60rpmにおける測定粘度(20℃)が、1〜20mPa・sであることが好ましく、2〜10mPa・sであることがより好ましい。組成物の粘度測定はB型回転粘度計(東京計器株式会社製、BLアダプタ使用)を用いて行うことができる。水性インキ組成物の粘度が上記数値範囲内であれば、筆記用具に使用した場合のインキ吐出性を適度に良好とすることができるので、筆跡の発色性や乾燥性に優れ、紙面に裏抜けすることのないインキ組成物とすることが容易となる。
【0022】
水性インキ組成物の表面張力は、20℃環境下において、25〜40mN/mが好ましい。表面張力が上記数値範囲内であれば、筆記線の滲みや、紙面への裏抜けを抑制することが容易であると共に、水性インキ組成物のぬれ性を改善し、筆跡カスレ・中抜けなどを良好として、筆記性を向上させることができる。筆記性をより考慮すれば、水性インキ組成物の表面張力は、30〜35mN/mが好ましい。
なお、表面張力は、20℃環境下において、協和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、白金プレートを用いて、垂直平板法によって測定して求められる。
【0023】
水性インキ組成物のpHは、3〜7であることが好ましく、4〜6であることがより好ましい。水性インキ組成物のpHを上記数値範囲内とすると、インキ組成物の過度な高粘度化や変質を抑制することが容易となる。
本発明において、pHの値は、例えばIM−40S型pHメーター(東亜ディーケーケー株式会社製)により20℃にて測定することができる。
【0024】
本発明による水性インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0025】
(筆記具)
本発明の水性インキ組成物は、ペン先、インキ充填機構、出没機構、インキ供給機構を備えた、マーキングペン、ボールペン、および万年筆等の筆記具に収容される。
【0026】
ペン先としては、繊維チップ、フェルトチップ、多孔質チップ、およびプラスチックチップなどのペン芯、ボールペンチップ、万年筆用ペン先などを好ましく用いることができる。その中でも、インキ組成物の吐出性を良好とするには、ペン先は、繊維チップ、フェルトチップ、多孔質チップ、およびプラスチックチップからなるペン芯とすることがより好ましく、特には、繊維束を樹脂で結着させてなる繊維チップまたはポリプロピレン等の樹脂粒子を融着させてなる多孔質チップ、のペン芯が一層好ましい。
【0027】
前記ペン芯は細孔からなる空隙を含んでいるが、その細孔径は、有機蛍光顔料が通過できる程度の気孔径であれば任意に設定することが可能で有り、空隙率は、繊維チップの場合は55〜75%とすることが好ましく、多孔質チップの場合は30〜50%とすることが好ましい。インキ組成物の吐出性をより考慮すれば、ペン芯の空隙率は、繊維チップの場合は60〜70%とすることがより好ましく、多孔質チップの場合は35〜45%とすることがより好ましい。前記ペン芯の空隙率が上記数値範囲内であれば、前記顔料の目詰まりがなく、適切なインキ吐出量を維持することができる。
【0028】
筆記具のインキ充填機構は、水性インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、水性インキ組成物を充填することのできるインキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。
筆記具が水性インキ組成物を直に充填する構成のものである場合、有機蛍光顔料を再分散させるために、インキ収容体にはインキを攪拌する攪拌ボールなどの攪拌体を内蔵することが好ましい。前記攪拌体の形状としては、球状体、棒状体などが挙げられる。攪拌体の材質は特に限定されるものではないが、具体例として、金属、セラミック、樹脂、硝子などを挙げることができる。
また、筆記具が水性インキ組成物を充填することのできるインキ吸蔵体を備えるものである場合は、インキ吸蔵体は、撚り合わせた繊維を用いてなる繊維集束体が好ましい。
【0029】
前記繊維集束体は前記ペン芯と同様に細孔からなる空隙を含んでおり、その細孔径は、有機蛍光顔料が通過できる程度の細孔径であれば任意に設定することが可能である。一方、繊維集束体の空隙率はペン先へのインキ供給性を考慮すると、85〜95%であることが好ましく、87〜92%であることがより好ましい。
【0030】
本発明の筆記具のペン先出没機構は、特に限定されず、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式、ノック式、回転式およびスライド式などが挙げられる。また、軸筒内にペン先を収容可能な出没式であってもよい。
【0031】
また、筆記具におけるインキ供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(1)繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(2)櫛溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、(3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、水性インキ組成物をペン先に供給する機構、および(4)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、水性インキ組成物を直接、ペン先に供給する機構などを挙げることができる。
【0032】
本発明の組成物を収容する筆記具は、前記したペン先、インキ充填機構、ペン先出没機構、およびインキ供給機構の中から各部材を適宜選択して構成することが可能であるが、紙面に形成された筆跡の速乾性とインキ組成物の耐紙面裏抜け性を容易にすることを考慮すれば、本発明に好ましい筆記具は、筆記時のインキ吐出量が1.5g/m〜7g/mを奏することが好ましく、2.0g/m〜5.0g/mを奏することがより好ましい。
上記インキ吐出量を奏する筆記具は筆跡カスレが抑制され、発色性に優れる筆跡を形成することも可能となる。
【0033】
さらに、安定したインキ吐出量を維持できることも考慮すると、本発明により好ましい筆記具は、ペン先としてペン芯を備え、前記インキ吐出量を奏するマーキングペンであり、前記マーキングペンとしては、前記繊維チップまたは多孔質チップを用いたペン先と前記繊維集束体をインキ吸蔵体に用いたインキ充填機構とを備え、該ペン先と該インキ吸蔵体とが、該インキ吸蔵体に吸蔵されたインキ組成物を該ペン先に供給可能に接続された中詰式マーキングペンであることが好ましい。
なお、上記インキ吐出量は、本発明のインキ組成物を収容してなる筆記具にて試験紙に20m筆記した際のインキ消費量を筆跡面積で除することによって得られる数値である。
前記インキ消費量は、以下に記載する測定条件で行う。
1. 環境温度 20℃
2. 試験紙 JIS P3201に準拠した筆記用紙A
3. 荷重 100g
4. 筆記速度 4m/分
5. 筆記角度 ボールペン…70°、マーキングペン…筆記の際にチップ先端と試験紙との間に隙間ができない角度
6. 筆記線 直線
【0034】
一実施形態において、筆記具は、マーキングペンであり、ペン先は、特に限定されず、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、多孔質チップ、またはプラスチックチップなどであってよく、さらに、その形状は、砲弾型、チゼル型または筆ペン型などであってよい。
【0035】
一実施形態において、筆記具は、ボールペンであり、インキ逆流防止体を備えたボールペンであることが好ましい。
【0036】
本発明を諸例を用いて説明すると以下の通りである。
(実施例1)
下記原材料および配合量にて、室温で1時間攪拌混合することにより、筆記具用水性インキ組成物を得た。得られた水性インキ組成物の粘度をB型回転粘度計(BLアダプター使用、東京計器株式会社製)により測定した。具体的には、20℃、回転速度60rpmにおける粘度は2.9mPa・sであった。
さらに、pHメーター(商品名:D−51、株式会社堀場製作所製)を用いて、20℃にて水性インキ組成物のpHを測定した結果、pHは6.1であった。
また、得られた水性インキ組成物の表面張力を、表面張力計測器(20℃環境下、垂直平板法、協和界面科学株式会社製)により測定したところ、33.3mN/mであった。
上記水性インキ組成物を繊維チップからなるペン先と繊維集束体からなる繊維吸蔵体とを備え、該インキ吸蔵体に吸蔵されたインキ組成物を該ペン先に供給可能に接続されたマーキングペンに収容し、前記筆記用紙に筆記したところ4.9g/mのインキ吐出量を奏した。

・有機蛍光顔料 50質量%
(イエロー色蛍光顔料、30質量%水分散体、平均粒子径0.1μm、シンロイヒ株式会社製、商品名:シンロイヒカラーSF−5015)
・ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル 1質量%
(ポリオキシエチレンと炭素数が11〜15の範囲内である脂肪族2級アルコールとのエーテル、HLB値:14.5、商品名:サンノニックSS−120、三洋化成株式会社製)
・グリセリン 10質量%
・防腐剤 0.5質量%
(有機窒素硫黄化合物、北興化学工業株式会社製、商品名:ホクサイドR−150)
・水 38.5質量%
【0037】
(実施例2〜12、比較例1〜3)
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1に示したとおりに変更して、実施例2〜12、比較例1〜3のインキ組成物を得た。
上記実施例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
・有機蛍光顔料(1)イエロー色蛍光顔料(30質量%水分散体、平均粒子径:0.1μm、シンロイヒ株式会社製、商品名:シンロイヒカラーSF−5015)
・有機蛍光顔料(2)ピンク色蛍光顔料(30質量%水分散体、平均粒子径:0.1μm、シンロイヒ株式会社製、商品名:シンロイヒカラーSF−5017)
・ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル(1)
ポリオキシエチレンと炭素数が11〜15の範囲内である脂肪族2級アルコールとのエーテル(HLB値:14.5、商品名:サンノニックSS−120、三洋化成株式会社製)
・ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル(2)
ポリオキシエチレンと炭素数が11〜15の範囲内である脂肪族2級アルコールとのエーテル(HLB値:13.2、商品名:サンノニックSS−90、三洋化成株式会社製)
・アニオン系界面活性剤 ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル(第一工業製薬株式会社製、商品名:プライサーフAL)
・ノニオン系界面活性剤 ポリオキシエチレンアセチレングリコール(川研ファインケミカル製、商品名:アセチレノールE100)
・ポリオキシエチレン1級アルコールエーテル
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(日光ケミカルズ株式会社製、商品名:ニッコールBL−25)
・グリセリン
・プロピレングリコール−n−プロピルエーテル(The Dowchemical Company製、商品名:ダワノールPnP)
・防腐剤 有機窒素硫黄化合物(北興化学工業株式会社製、商品名:ホクサイドR−150)
・水
【0038】
【表1】
【0039】
調製した水性インキ組成物について、下記の通り、評価を行った。得られた結果は表2に記載したとおりであった。
また、評価試験で用いる筆記具は、以下のようなマーキングペン、ボールペンを作成し用いた。
マーキングペン:ポリプロピレン製の外装に、ペン芯からなるペン先と、インキ吸蔵体からなるインキ充填機構と備え、ペン先とインキ吸蔵体とが、インキ吸蔵体に吸蔵されたインキ組成物がペン先に供給可能になるよう接続されたマーキングペンに、2gのインキ組成物を内蔵し、実施例1〜8、10〜12および、比較例1〜3で得られた水性インキ組成物を充填し、ペン先に水性インキ組成物を染み込ませた。
なお、前記ペン芯として、チゼル型ポリエステル繊維チップ(内寸:長さ32mm、直径4mm)を用い、インキ吸蔵体には撚糸からなる繊維集束体(内寸:長さ77mm、直径7.3mm)を用いた。
【0040】
なお、実施例1〜5、10〜12、および比較例1〜3では、ペン芯として空隙率60%を有する繊維チップを用い、インキ吸蔵体として空隙率88%を有する繊維集束体を用いて、評価試験を行った。
また、実施例6ではペン芯として空隙率70%を有する繊維チップを用い、インキ吸蔵体として空隙率90%を有する繊維集束体を用いて試験を行った。
実施例7では、ペン芯として実施例1で用いた繊維チップを用い、インキ吸蔵体として実施例6で用いた繊維集束体からなるインキ吸蔵体を用いて評価試験を行った。
実施例8では、ペン芯として実施例6で用いた繊維チップのペン芯を用い、インキ吸蔵体として実施例1で用いた繊維集束体からなるインキ吸蔵体を用いて評価試験を行った。
ボールペン:ボールペンチップのペン先と、インキ組成物を直詰め可能なインキ充填機構と、該ペン先と該インキ充填機構との間に介在し、水性インキ組成物をペン先に供給する櫛溝状のインキ流量調節部材とを備えたボールペン(株式会社パイロットコーポレーション製、商品名:ハイテックポイントV5グリップ)に実施例9で得られたインキ組成物を収容した。
【0041】
(筆跡乾燥性の評価)
上記筆記具により試験紙に直線筆記を行い、筆記から3秒後に筆跡を指で擦過した際に筆跡のインキ組成物が周辺に広がるかを目視により観察した。なお、試験紙はJISP3201に準拠した筆記用紙を用いた。
◎:筆跡周辺にインキが広がった形跡は確認されない。
○:筆跡周辺にインキが広がった形跡が確認されるが、広がりの程度は軽微である。
×:筆跡周辺におけるインキの広がりが顕著である。
【0042】
(裏抜け性の評価)
筆記後、筆記面の裏面側から、筆記部分の裏面側に該当する部分の着色状態を目視で確認した。
試験紙には前記筆跡乾燥性の評価で使用した試験紙を用いた。
◎:着色は確認されない。
○:着色が確認されるが、着色の程度は軽微である。
×:着色が顕著である。
【0043】
(インキ組成物の耐変色性)
インキ組成物を50℃下の恒温槽に96時間静置し、静置後のインキ組成物の色を目視で確認した。
○:静置前のインキ組成物の色と比較して、色差を確認できない。
×:静置前のインキ組成物の色と比較して、色差が確認できる。
【0044】
試験結果を以下の表に記す。
【0045】
【表2】