特開2019-130608(P2019-130608A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ファナック株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019130608-物質付着シミュレーション装置 図000003
  • 特開2019130608-物質付着シミュレーション装置 図000004
  • 特開2019130608-物質付着シミュレーション装置 図000005
  • 特開2019130608-物質付着シミュレーション装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-130608(P2019-130608A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】物質付着シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20190712BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20190712BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20190712BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   B25J19/00 Z
   G05B19/4069
   H04N5/232 290
   H04N5/225 430
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-14440(P2018-14440)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】武田 俊也
【テーマコード(参考)】
3C269
3C707
5C122
【Fターム(参考)】
3C269AB33
3C269BB11
3C269JJ20
3C269MN40
3C269MN46
3C269QE01
3C707BS10
3C707KT01
3C707KT05
3C707MS15
5C122DA27
5C122EA36
5C122FH09
5C122FH11
5C122FH14
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】システムの信頼性、稼働状況等の評価に資するために、経過時間に応じて機器に付着する汚れを推定することができる物質付着シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】この物質付着シミュレーション装置1は、機器のモデルと、機器に付着し得る物質の存在状態に関する情報と、を入力するための入力部と、入力部に入力される前記情報を用いて、機器に対する物質の付着状態を推定する処理部11と、を備え、物質が、液体状態、ガス状態、ミスト状態、粉状態、埃状態、又は液体状態とミスト状態とを組合せた状態である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器のモデルと、前記機器に付着し得る物質の存在状態に関する情報と、を入力するための入力部と、
前記入力部に入力される前記情報を用いて、前記機器に対する前記物質の付着状態を推定する処理部と、を備え、
前記物質が、液体状態、ガス状態、ミスト状態、粉状態、埃状態、又は、これらを組合せた状態である、物質付着シミュレーション装置。
【請求項2】
前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、
前記処理部が、推定された前記付着状態のデータ、又は、推定された前記付着状態のデータを用いて補正された画像データを、表示装置に対して出力するものである、請求項1に記載の物質付着シミュレーション装置。
【請求項3】
前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、
前記処理部が、
所定の撮像対象が撮像されている画像データ、又は、前記所定の撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、
前記補正処理によって補正された前記画像データを、前記所定の撮像対象を撮像するための撮像装置を備えるビジョンシステムに対して出力する出力処理と、を行う請求項1に記載の物質付着シミュレーション装置。
【請求項4】
前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、
前記処理部が、
所定の撮像対象が撮像されている画像データ、又は、前記所定の撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、
前記補正処理によって補正された前記画像データを用いて、前記所定の撮像対象を検出できるか否かを判断する判断処理と、を行う請求項1に記載の物質付着シミュレーション装置。
【請求項5】
前記機器がロボットであり、
前記処理部が、
前記ロボットが描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、
前記補正処理によって補正された前記画像データを表示装置に対して出力する出力処理と、を行う請求項1に記載の物質付着シミュレーション装置。
【請求項6】
前記機器がロボットであり、
前記処理部が、
前記ロボットが描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、
前記補正処理によって補正された前記画像データを用いて、前記ロボットの保守が必要であるか否かを判断する判断処理と、を行う請求項1に記載の物質付着シミュレーション装置。
【請求項7】
前記物質の存在状態に関する情報が、前記物質の発生源の位置の情報と、前記発生源からの前記物質の発生量の情報と、前記発生源からの前記物質の発生方向の情報と、を少なくとも含んでいる、請求項1〜6に記載の物質付着シミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は物質付着シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シミュレーションモデル内において撮像装置のモデルを作成するシミュレーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。実際の撮像装置の設置位置の決定および実際の撮像装置のパラメータの調整は、高度な専門技術、高度な専門知識、および十分な経験を必要とする。このため、このシミュレーション装置は、実際の撮像装置の設置位置の決定および実際の撮像装置のパラメータの調整の手間を低減する目的で使用される。
【0003】
また、ハンドに汚れが付いているか否かを、撮像された画像に基づいて自動的に判断するロボットが知られている(例えば、特許文献2参照。)。このロボットは、汚れが付いていないハンドの画像と現在のハンドの画像とを比較することによって、ハンドに汚れが付いているか否かを判断する。
【0004】
また、ハンドに汚れが付いているか否かを、接触状態を計測するセンサを用いて自動的に判断するロボットが知られている(例えば、特許文献3参照。)。このロボットは対象物に接触する複数の把持部を有し、複数の把持部を相対的に移動させることによって、対象物の表面状態が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−21092号公報
【特許文献2】特開2012−245570号公報
【特許文献3】特開2008−89522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、汚れていない撮像装置についてシミュレーションを行うためのシミュレーション装置を開示しているだけである。特許文献2および特許文献3は、実際にハンドに付着している汚れの検出を行うロボットを開示しているだけである。
【0007】
一方、工作機械等の機械の中又は付近において使用される撮像装置のレンズは、機械に用いる液体等の影響によって汚れる。レンズが汚れると、撮像装置を用いた対象物の検出精度が低下する。また、時間の経過に応じてレンズに汚れが蓄積する場合がある。例えば、撮像装置が設置された後の経過時間が短い時には、検出精度が要求レベル以上であるが、経過時間が長くなると、検出精度が要求レベルに到達し難くなる場合がある。
【0008】
また、対象物の検出精度の要求レベルは、対象物の種類、検出の方法、検出目的等に応じて変化する。例えば、対象物の大まかな位置の検出が検出目的である場合は、検出精度の要求レベルは低くなる。一方、対象物の正確な位置および姿勢の検出が検出目的である場合は、検出精度の要求レベルは高くなる。経過時間に応じて撮像装置に付着する汚れの推定は、撮像装置を有するシステムの将来における信頼性、稼働状況等の評価に対して有用である。同様に、経過時間に応じてロボットに付着する汚れの推定は有用である。
【0009】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされている。本発明の目的の一つは、システムの信頼性、稼働状況等の評価に資するために、経過時間に応じて機器に付着する汚れを推定することができる物質付着シミュレーション装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の一態様の物質付着シミュレーション装置は、機器のモデルと、前記機器に付着し得る物質の存在状態に関する情報と、を入力するための入力部と、前記入力部に入力される前記情報を用いて、前記機器に対する前記物質の付着状態を推定する処理部と、を備え、前記物質が、液体状態、ガス状態、ミスト状態、粉状態、埃状態、又は、これらを組合せた状態である。
【0011】
上記態様では、処理部が、機器に付着し得る物質の存在状態に関する情報を用いて、機器に対する物質の付着状態を推定する。つまり、使用されている機器に対する物質の付着状態、使用後の機器に対する物質の付着状態等が、処理部によって推定される。このような推定結果は、機器を使用するシステムの信頼性、稼働状況等の評価に資する。
【0012】
上記態様において、好ましくは、前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、前記処理部が、推定された前記付着状態のデータ、又は、推定された前記付着状態のデータを用いて補正された画像データを、表示装置に対して出力するものである。
この態様を用いる場合、オペレータ等が付着状態を容易に認識することができる。オペレータ等が付着状態を直感的に認識することができる場合もある。このため、この態様は、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討する時に有利である。
【0013】
上記態様において、好ましくは、前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、前記処理部が、所定の撮像対象が撮像されている画像データ、又は、前記所定の撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、前記補正処理によって補正された前記画像データを、前記所定の撮像対象を撮像するための撮像装置を備えるビジョンシステムに対して出力する出力処理と、を行う。
【0014】
ビジョンシステムは実際に撮像対象の検出を行うものである。つまり、処理部が補正した画像データを用いて、ビジョンシステムによって撮像対象を検出できるか否かをテストできる。この態様によって、ビジョンシステムの将来における信頼性、稼働状況等の評価が容易となる。また、その評価結果の正確性の向上を図る時に、この態様は有用である。
【0015】
上記態様において、好ましくは、前記機器が画像データを取得する撮像装置であり、前記処理部が、所定の撮像対象が撮像されている画像データ、又は、前記所定の撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、前記補正処理によって補正された前記画像データを用いて、前記所定の撮像対象を検出できるか否かを判断する判断処理と、を行う。
【0016】
当該判断結果を処理部が表示装置によって表示してもよい。当該判断結果が、撮像装置の位置、姿勢等を決定するための情報として、処理部によって活用されてもよい。即ち、このような判断が自動的に行われることによって、撮像装置の位置、姿勢等を決定するための工程を短時間で行うことが可能となる。
【0017】
上記態様において、好ましくは、前記機器がロボットであり、前記処理部が、前記ロボットが描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、前記補正処理によって補正された前記画像データを表示装置に対して出力する出力処理と、を行う。
この態様を用いる場合、オペレータ等が物質の付着状態を容易に認識することができる。オペレータ等が物質の付着状態を直感的に認識することができる場合もある。このため、当該構成は、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討する時に有利である。
【0018】
上記態様において、好ましくは、前記機器がロボットであり、前記処理部が、前記ロボットが描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された前記付着状態のデータを用いて補正する補正処理と、前記補正処理によって補正された前記画像データを用いて、前記ロボットの保守が必要であるか否かを判断する判断処理と、を行う。
【0019】
当該判断結果を処理部が表示装置によって表示してもよい。当該判断結果が、ロボットの位置、姿勢、作動等を決定するための情報として、処理部によって活用されてもよい。即ち、このような判断が自動的に行われることによって、ロボットの位置、姿勢、作動等を決定するための工程を短時間で行うことが可能となる。
【0020】
上記態様において、好ましくは、前記物質の存在状態に関する情報が、前記物質の発生源の位置の情報と、前記発生源からの前記物質の発生量の情報と、前記発生源からの前記物質の発生方向の情報と、を少なくとも含んでいる。
この態様を用いる場合、シミュレーションが実際のシステムに近い状態で行われる。このため、オペレータ等が、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、システムの信頼性、稼働状況等の評価に資する目的で、経過時間に応じて機器に付着する汚れを推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態の物質付着シミュレーション装置のブロック図である。
図2】本実施形態の物質付着シミュレーション装置の処理部の作動を示すフローチャートである。
図3】本実施形態の物質付着シミュレーション装置において用いられるシミュレーションモデルの概略図である。
図4】本実施形態の物質付着シミュレーション装置によって推定された付着状態のデータを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態に係る物質付着シミュレーション装置1が、図面を用いながら以下説明されている。
本実施形態の物質付着シミュレーション装置1は、図1に示されるように、プロセッサ等を有する処理部11と、表示装置12と、不揮発性ストレージ、ROM、RAM等を有する記憶装置13と、キーボード、タッチパネル、操作盤等である入力装置14と、信号の送受信を行うための送受信部15とを備えている。入力装置14および送受信部15は入力部として機能する。
【0024】
記憶装置13にはシステムプログラム13aが格納されており、システムプログラム13aは物質付着シミュレーション装置1の基本機能を担っている。また、記憶装置13にはシミュレーションプログラム13bが少なくとも1つ格納されている。また、記憶装置13には、シミュレーションモデル13cが少なくとも1つ格納されている。
【0025】
本実施形態のシミュレーションモデル13cは、図3に示されるように、製造用の機械である工作機械20と、工作機械20に対して所定の作業を行う多関節ロボット等であるロボット40と、2Dカメラ、3Dカメラ等である撮像装置50と、工作機械20中のスペースである内側スペース20aと、工作機械20およびロボット40が存在するスペースである外側スペース20dとを有する。
本実施形態では、ロボット40の先端にはハンド、加工ツール等が取付けられている。また、撮像装置50はロボット40の先端に取付けられている。
【0026】
ロボット40は、工作機械20に保持されたワークW又は工作機械20に対して所定の作業を行う。この場合の当該所定の作業は、バリ取り作業、加工作業、組立作業、治具の交換作業、ワークの交換作業、部品の装着作業等である。本実施形態では機械は工作機械20であるが、工作機械20の代わりに他の機械をシミュレーションモデル13c内に設定することも可能である。ロボット40は、機械の種類、機械に保持されたワークの種類等に応じた作業を行う。
【0027】
記憶装置13には、ロボット40に前記所定の作業を行わせるための動作プログラム13dが少なくとも1つ格納されている。
本実施形態では、シミュレーションモデル13c内の工作機械20、ロボット40、撮像装置50、内側スペース20a、および外側スペース20dのモデルは、実際の工作機械、実際のロボット、実際の撮像装置、実際の内側スペース、および実際の外側スペースの仕様にそれぞれ対応している。また、記憶装置13に格納されている動作プログラム13dは、実際のロボットに前記所定の作業を行わせる動作プログラムに対応している。このように構成すると、現実の状態に近いシミュレーションを行うことができる。
【0028】
処理部11はシミュレーションプログラム13bを一時的にRAMに格納する。そして、処理部11はシミュレーションプログラム13bに基づいて以下の処理を行う。処理部11による処理が図2を用いて以下説明されている。
先ず、処理部11は、入力装置14への入力に基づいて、シミュレーションモデル13cを設定する(ステップS1−1)。ステップS1−1では、処理部11が、送受信部15を経由して物質付着シミュレーション装置1に入力されるデータに基づいて、シミュレーションモデル13cを設定してもよい。この場合、CADを有するコンピュータ、他のシミュレーション装置等からのデータが物質付着シミュレーション装置1に入力される。
【0029】
次に、処理部11は、入力装置14を用いて入力される情報に基づいて、物質の発生源の位置と、発生源からの物質の発生量と、発生源からの物質の発生方向とを、少なくとも設定する(ステップS1−2)。なお、発生源からの物質の発生タイミングが設定されてもよい。
【0030】
また、処理部11は、入力装置14を用いて入力される情報に基づいて、物質の種類、物質の特性等を設定する(ステップS1−3)。ステップS1−2およびS1−3において、処理部11が、送受信部15を経由して物質付着シミュレーション装置1に入力される情報に基づいて、前記設定を行ってもよい。
【0031】
入力装置14を用いて入力される情報および送受信部15を経由して入力される情報は、物質の発生源の位置の情報、発生源からの物質の発生量の情報、発生源からの物質の発生方向の情報、物質の種類の情報等である。これらの情報は、シミュレーションモデル13c内における物質の存在状態に関する情報である。
【0032】
例えば、図3に示されるように機械は工作機械20であり、物質は切削油である。第1の発生源31は切削油を噴出するノズルの先端であり、第1の発生源31は工作機械20の内側スペース20a内に配置される。ステップS1−2において、処理部11は、第1の発生源31の位置と、第1の発生源31からの液体状態の物質の発生量と、第1の発生源31からの液体状態の物質の発生方向とを、少なくとも設定する。
【0033】
また、第1の発生源31から噴出される切削油は、ワークWおよびワークWの周辺の物体に衝突する。ワークWの周辺の物体は、工作機械20のチャック21、ワークWを加工するための加工ツール22等である。この場合、切削油がワークWおよびワークWの周辺の物体に衝突することによって、ミスト状態の切削油が発生する。このため、ステップS1−2において、処理部11は、第2の発生源32の位置と、第2の発生源32からのミスト状態の物質の発生量と、第2の発生源32からのミスト状態の物質の発生方向とを、少なくとも設定する。第2の発生源32は例えばワークWの表面である。
【0034】
また、ワークWおよびワークWの周辺の物体に切削油が衝突することによって、液体状態の切削油も飛び散る。このため、ステップS1−2において、処理部11は、第2の発生源32からの液体状態の物質の発生量と、第2の発生源32からの液体状態の物質の発生方向とを、少なくとも設定する。つまり、第2の発生源32から発生する物質は、液体状態とミスト状態とを組合せた状態である。
第1の発生源31から発生する液体状態の物質の影響として、シミュレーション上において、ワークWおよびワークWの周辺の物体から生ずる物質の量、発生量、発生方向等が計算されてもよい。この場合、第2の発生源32の設定は不要となる。
【0035】
また、ミスト状態の物質が内部スペース20aの天井20bに付着するので、天井20bから液体状態の物質が滴下する。つまり、天井20bは第3の発生源33として設定され得る。この場合、ステップS1−2において、処理部11は、第3の発生源33の位置と、第3の発生源33からの液体状態の物質の発生量と、第3の発生源33からの液体状態の物質の発生方向とを、少なくとも設定する。第2の発生源32から発生するミスト状態の物質の影響として、シミュレーション上において、天井20bから滴下する液体状態の物質の量、滴下タイミング、滴下間隔等が計算されてもよい。この場合、第3の発生源33の設定は不要となる。
【0036】
ここで、工作機械20のチャック21、加工ツール22等が動く場合、当該動きに応じて、第2の発生源32が処理部11によってシミュレーションモデル13c内において移動する。また、第2の発生源32の移動に応じて、第2の発生源32からの物質の発生量および発生方向が変化する。
第2の発生源32が加工ツール22等の回転部材の表面に設定される場合、処理部11は、回転部材の回転速度に応じて第2の発生源32からの物質の発生方向を変化させる。
【0037】
シミュレーションを行う時、第2の発生源32から発生したミスト状態の物質は、工作機械20の開口部20cを経由して工作機械20の外に出る。工作機械20の外に出るミスト状態の物質が重要である場合は、第4の発生源34が設定され得る。第4の発生源34が外側スペース20dにおいて設定されてもよい。この場合、処理部11は、第4の発生源34の位置と、第4の発生源34からのミスト状態の物質の発生量と、第4の発生源34からのミスト状態の物質の発生方向とを、少なくとも設定する。
【0038】
前記物質が、ワークWの加工によって発生する切り粉等を含む時もある。例えば、プラスチック製のワークW、軽い粉を固めることによって成形されるワークW等を加工する時に、空気中に浮遊する切り粉、静電気によって工作機械20内の壁等に付着する切り粉等が発生する。この場合、他の発生源の位置等が設定される。
【0039】
続いて、処理部11は、入力装置14を用いて入力される情報に基づいて、シミュレーションモデル13c内のロボット40を作動させるための動作プログラム13dを設定する(ステップS1−4)。例えば、動作プログラム13dは、実際のロボットの動作プログラムである。
【0040】
また、処理部11は、入力装置14を用いて入力される情報に基づいて、作動条件を設定する(ステップS1−5)。作動条件は、シミュレーションモデル13c内においてロボット40、工作機械20等を作動させる作動時間を含む。作動条件は、シミュレーションモデル13c内においてロボット40、工作機械20等を作動させる回数を含んでいてもよい。作動条件は、ロボット40の温度、ロボット40に取付けられた撮像装置50のレンズ51の温度等を含んでいてもよい。ステップS1−4およびS1−5では、送受信部15を経由して物質付着シミュレーション装置1に入力されるデータに基づいて、処理部11が前記設定を行ってもよい。
【0041】
続いて、シミュレーションを開始するための開始指令を処理部11が受付けた時に(ステップS1−6)、処理部11は設定された作動条件に応じたシミュレーションを行う(ステップS1−7)。シミュレーションの中で、処理部11は、撮像装置50のレンズ51に対する物質の付着状態を推定する。
【0042】
推定された付着状態のデータの一例は、例えば図4に示されるように、撮像装置50の画角50a内の物質の付着量の分布のデータである。付着量の分布のデータは、画角50a内の可視度の分布のデータであってもよい。可視度の分布のデータは、画角50a内において、撮像対象が明確に見える範囲、撮像対象が薄く見える範囲、撮像対象がぼやけて見える範囲、撮像対象が歪んで見える範囲、撮像対象が変色を伴って見える範囲、撮像対象が見えない範囲等を特定できるデータである。前記様々な範囲が互いに重複することもある。
【0043】
多くの工作機械20は、ノズルから切削油が噴出されていない時に、扉を開ける。また、扉が開いた時に、工作機械20内に存在しているミスト状態の物質が工作機械20の外に出る。このような状況がシミュレーション上で作られる。この場合、工作機械20の外に配置されたロボット40およびレンズ51に対して、主にミスト状態の物質が付着する。また、ロボット40の先端部が工作機械20内に配置された時に、ロボット40およびレンズ51に対して、第3の発生源33から滴下する液体状態の物質が付着する。
【0044】
ある例示的な作動条件が用いられる場合、工作機械20の外にレンズ51およびロボット40が配置されている時に、レンズ51およびロボット40の表面の物質の水分が蒸発する。この場合、レンズ51およびロボット40の表面には、個体状態の物質、ペースト状態の物質等が堆積する。個体状態の物質、ペースト状態の物質等が堆積する速度は、作動条件に応じて変化する。例えば、蒸発の程度は、レンズ51およびロボット40の温度、ロボット40の待機時間等に応じて変化する。
【0045】
続いて、処理部11は、ステップS1−7において推定された付着状態のデータを用いて、画像データを補正し、補正された画像データを表示装置12によって表示する(ステップS1−8)。画像データの一例は、実際の撮像装置によって撮像された撮像対象の画像データである。画像データの他の例は、撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データである。本実施形態では、撮像対象はワークW、チャック21等である。
【0046】
例えば、推定された付着状態のデータによって補正された画像データ内では、撮像対象の一部がぼやけている。また、撮像対象の他の一部が薄く見える。また、撮像対象の他の一部が歪んで見える。また、撮像対象の他の一部が変色を伴って見える。つまり、処理部11によって作成される画像データは、レンズ51に物質が付着している状態の推定結果である。
【0047】
一方、処理部11は、ステップS1−7において推定された付着状態のデータを用いて、ロボット40が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを補正し、補正された画像データを表示装置12によって表示する(ステップS1−9)。
【0048】
続いて、処理部11は、ステップS1−8において補正された画像データを用いて、撮像対象の検出が可能であるか否かを判断する(ステップS1−10)。ステップS1−10では、処理部11が、ステップS1−8において補正された画像データをビジョンシステム60に対して送信してもよい。一例では、ビジョンシステム60は物質付着シミュレーション装置1に含まれている。他の例では、ビジョンシステム60は物質付着シミュレーション装置1に含まれていない。ビジョンシステム60は実際の撮像装置61を有し、実際の撮像装置61によって撮像された画像データを用いて、撮像対象の検出が可能であるか否かを判断できる。ビジョンシステム60は、ステップS1−8において補正された画像データを用いて、撮像対象の検出が可能であるか否かを判断する。
【0049】
一例では、ビジョンシステム60は、プロセッサ等を有する処理部と、画像処理プログラム、検出プログラム、モデル画像データ等が格納されている記憶装置とを有する。検出プログラムは、モデル画像データを用いて画像データ中の対象を検出するためのプログラムである。
【0050】
続いて、処理部11は、ステップS1−9において補正された画像データを用いて、ロボットの保守が必要か否かを判断する(ステップS1−11)。ロボットの保守は、ロボットの潤滑油の補充、ロボットの部品の洗浄、ロボットの部品の交換等である。
続いて、処理部11は、ステップS1−7〜S1−11を所定回数繰り返す(ステップS1−12)。これによって、連続して変化する複数の付着状態の推定結果が得られる。ステップS1−5において設定される作動時間が1時間であれば、オペレータ等は1時間ごとの変化を把握できる。
【0051】
なお、ステップS1−9およびステップS1−11を省くことは可能である。代わりに、ステップS1−8およびステップS1−10を省くことも可能である。また、ステップS1−11を省くことも可能である。この場合、オペレータ等が、ロボットの保守が必要か否かを判断する。また、S1−10を省くことも可能である。この場合、オペレータ等が、撮像対象の検出が可能であるか否かを判断する。また、ステップS1−8およびS1−9において、表示装置12による表示を省くことも可能である。
【0052】
このように、本実施形態では、処理部11が、物質の存在状態に関する情報を用いて、撮像装置50およびロボット40に対する物質の付着状態を推定する。つまり、使用されている撮像装置50およびロボット40に対する物質の付着状態、使用後の撮像装置50およびロボット40に対する物質の付着状態等が、処理部11によって推定される。このような推定結果は、撮像装置50およびロボット40を使用するシステムの信頼性、稼働状況等の評価に資する。
【0053】
また、本実施形態では、処理部11が、推定された付着状態のデータを用いて補正された撮像対象の画像データを、表示装置12に対して出力する。このため、オペレータ等が付着状態を容易に認識することができる。オペレータ等が付着状態を直感的に認識することができる場合もある。このため、当該構成は、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討する時に有利である。
【0054】
なお、処理部11が、図4に示されるような推定された付着状態のデータを、表示装置12に対して出力してもよい。この場合でも、オペレータ等が物質の付着状態を容易に認識することができ、オペレータ等が物質の付着状態を直感的に認識することができる場合もある。なお、表示装置12以外の表示装置に対して、補正された画像データ又は推定された付着状態のデータを出力することも可能である。
【0055】
また、処理部11は、撮像対象が撮像されている画像データ、又は、撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された付着状態のデータを用いて補正する。また、処理部11は、補正された画像データを、撮像対象を撮像するための実際の撮像装置61を備えるビジョンシステム60に対して出力することができる。ビジョンシステム60は実際に撮像対象の検出を行うものである。つまり、処理部11が補正した画像データを用いて、ビジョンシステム60によって撮像対象を検出できるか否かをテストできる。上記構成によって、ビジョンシステム60の将来における信頼性、稼働状況等の評価が容易となる。また、その評価結果の正確性の向上を図る時に、上記構成は有用である。
【0056】
また、本実施形態では、処理部11が、撮像対象が撮像されている画像データ、又は、撮像対象が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された付着状態のデータを用いて補正する。また、処理部11は、補正された画像データを用いて、撮像対象を検出できるか否かを判断する。当該判断結果を処理部11が表示装置12によって表示してもよい。当該判断結果が、撮像装置の位置、姿勢等を決定するための情報として、処理部11によって活用されてもよい。即ち、このような判断が自動的に行われることによって、撮像装置の位置、姿勢等を決定するための工程を短時間で行うことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、処理部11が、ロボット40が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された付着状態のデータを用いて補正する。また、処理部11が、補正された画像データを表示装置に対して出力する。このため、オペレータ等が物質の付着状態を容易に認識することができる。オペレータ等が物質の付着状態を直感的に認識することができる場合もある。このため、当該構成は、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討する時に有利である。
【0058】
また、本実施形態では、処理部11が、ロボット40が描かれているコンピュータグラフィックの画像データを、推定された付着状態のデータを用いて補正する。また、処理部11が、補正された画像データを用いて、ロボット40の保守が必要であるか否かを判断する。当該判断結果を処理部11が表示装置12によって表示してもよい。当該判断結果が、ロボットの位置、姿勢、作動等を決定するための情報として、処理部11によって活用されてもよい。即ち、このような判断が自動的に行われることによって、ロボットの位置、姿勢、作動等を決定するための工程を短時間で行うことが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、物質の存在状態に関する情報として、処理部11が、各発生源31,32,33,34の位置の情報と、各発生源31,32,33,34からの物質の発生量の情報と、各発生源31,32,33,34からの物質の発生方向の情報と、を少なくとも受付ける。つまり、シミュレーションが実際のシステムに近い状態で行われる。このため、オペレータ等が、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討することができる。
【0060】
なお、ステップS1−5において、処理部11が、入力装置14等を用いて入力される情報に基づいて、レンズ51およびロボット40の清掃条件を設定してもよい。清掃条件は、例えば、所定時間ごとに所定の清掃方法を用いてレンズ51およびロボット40の清掃を行うという条件である。所定の清掃方法は、レンズ51およびロボット40に水をかける方法、レンズ51およびロボット40に空気を吹き掛ける方法等がある。この場合、様々な清掃方法、様々な清掃のタイミング等を試すことによって、レンズ51およびロボット40が汚れ難い清掃条件を見つけることができる。
【0061】
本実施形態では、好ましくは、ステップS1−7のシミュレーションが行われる時に、処理部11がシミュレーションモデル13c内において工作機械20およびロボット40を作動させる。この時、撮像対象を撮像するための位置および姿勢に撮像装置50が配置された時に、処理部11が、撮像装置50の位置から見える撮像対象の画像をシミュレーションに基づいて成してもよい。当該画像内には、第1の発生源31、第2の発生源32、第3の発生源33、および第4の発生源34から発生する物質の影響があらわれる。例えば、当該画像内には、浮遊しているミスト状態の物質、滴下している液体状態の物質等が存在することになる。
【0062】
また、ステップS1−8において、処理部11が補正された画像データを表示装置12によって表示する時に、撮像装置50の位置から見える撮像対象の画像を処理部11が推定された付着状態のデータによって補正してもよい。この処理によって、実際に撮像装置を使用する状態における画像が得られるので、システムの信頼性、稼働状況等の改善を効率的に検討する時に有利である。
【0063】
本実施形態では、ステップS1−10において、処理部11が、補正された画像データをビジョンシステム60に対して送信している。これに対し、ステップS1−10において、処理部11が、ステップS1−7において推定された付着状態のデータをビジョンシステム60に対して送信してもよい。この場合でも、ビジョンシステム60が撮像対象の画像を推定された付着状態のデータによって補正すれば、ステップS1−10で説明した判断は可能である。
【0064】
なお、内側スペース20aを複数のエリアに区切り、外側スペース20dも複数のエリアに区切ることができる。この場合、物質の存在状態に関する情報として、例えば入力装置14を用いて、複数のエリアの各々に存在するミスト状態の物質の量又は濃度が入力されてもよい。この場合でも、前述と同様の作用および効果が達成される。
また、物質付着シミュレーション装置1は、ロボットの制御装置内又は工作機械等の機械の制御装置内に設けられてもよい。また、物質付着シミュレーション装置1は、複数のロボット又は複数の機械を管理する上位システム内に設けられていてもよい。
【0065】
本実施形態のシミュレーションモデル13cでは、撮像装置50がロボット40の先端部に取付けられている。これに対し、撮像装置50が工作機械20の内側又は外側に取付けられていてもよい。この場合でも同様のシミュレーションを行うことが可能である。
【0066】
また、本実施形態では、シミュレーションモデル13c内に機械として工作機械20が設定されているが、シミュレーションモデル13c内に、工作機械20の代わりに、他の機械のモデルが設定されてもよい。他の機械は、加硫成形機、プレス機、塗装ブース、洗浄ブース、射出成形機等である。機械が加硫成形機である場合、ロボットは、加硫成形機に対して、ワークの交換、バリ取り、検査等の作業を行う。機械が洗浄ブースの場合、ロボットは洗浄ブースの中に配置され、ロボットは洗浄ノズルを移動させる。その他の機械に対して、ロボットは各々の機械に対応する作業を行う。
【0067】
機械が加硫成形機である場合、シミュレーションモデル13c内に、硫黄ガスの発生源の位置、発生源からの硫黄ガスの発生量、発生源からの硫黄ガスの発生方向等が設定される。機械が洗浄ブースの場合、シミュレーションモデル13c内には、洗浄液の発生源の位置、発生源からの洗浄液の発生量、発生源からの洗浄液の発生方向等が設定される。つまり、これらの場合では、物質は硫黄ガス又は洗浄液である。物質は、液体状態、ガス状態、ミスト状態、粉状態、埃状態、又は、これらを組合せた状態であればよい。
【0068】
本実施形態では、シミュレーションモデル13c内に、機械である工作機械20と、ロボット40と、撮像装置50とが設定されているが、このようなモデルは単なる一例である。即ち、シミュレーションモデル13c内に工作機械20、ロボット40、又は撮像装置50を設定しなくてもよい。
【0069】
また、シミュレーションモデル13c内にロボット40だけが設定される場合でも、物質の存在状態が設定されていれば、ロボット40に関して前述と同様の効果が達成される。また、また、シミュレーションモデル13c内に撮像装置50だけが設定される場合でも、物質の存在状態が設定されていれば、撮像装置50に関して前述と同様の効果が達成される。シミュレーションモデル13c内には、その他の機器が設定されてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、シミュレーションモデル13c内に、ロボット40および撮像装置50の全体を示すモデルが設定されている。つまり、機器のモデルが、ロボット40の全体を示すモデルと、撮像装置50の全体を示すモデルである。これに対し、シミュレーションモデル13c内に設定される機器のモデルが、撮像装置50のレンズ51の外側の面のみを示すモデルと、ロボット40の一部品を示すモデルであってもよい。機器のモデルとして、撮像装置50又はロボット40の一部を示すモデルが用いられる時でも、同様のシミュレーションを行うことが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 物質付着シミュレーション装置
11 処理部
12 表示装置
13 記憶装置
13a システムプログラム
13b シミュレーションプログラム
13c シミュレーションモデル
13d 動作プログラム
14 入力装置
15 送受信部
20 工作機械
20a 内側スペース
20b 天井
20c 開口部
20d 外側スペース
21 チャック
22 加工ツール
31 第1の発生源
32 第2の発生源
33 第3の発生源
34 第4の発生源
40 ロボット(機器)
50 撮像装置(機器)
50a 画角
51 レンズ
60 ビジョンシステム
61 実際の撮像装置
図1
図2
図3
図4