特開2019-130625(P2019-130625A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-130625基準温度設定装置、基準温度設定方法及び基準温度設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-130625(P2019-130625A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】基準温度設定装置、基準温度設定方法及び基準温度設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/18 20060101AFI20190712BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   B23Q15/18
   B23Q17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-15632(P2018-15632)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】前川 進
(72)【発明者】
【氏名】角田 寛英
【テーマコード(参考)】
3C001
3C029
【Fターム(参考)】
3C001KA05
3C001KB00
3C001TA01
3C001TB10
3C001TC02
3C029EE01
(57)【要約】
【課題】熱変位補正のための適切な基準温度を設定できる基準温度設定装置、基準温度設定方法及び基準温度設定プログラムを提供する。
【解決手段】基準温度設定装置1は、機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得部11と、ある時点での測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定部12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得部と、
ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定部と、を備える基準温度設定装置。
【請求項2】
前記決定部は、ある時点での前記測定値の差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定する請求項1に記載の基準温度設定装置。
【請求項3】
前記取得部は、外気温相当の温度センサの測定値を取得し、
前記決定部は、ある時点での前記外気温相当の温度センサの測定値と前記複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定する請求項1に記載の基準温度設定装置。
【請求項4】
前記取得部は、発熱の影響を受けにくい箇所に設置された所定の温度センサの測定値を取得し、
前記決定部は、ある時点での前記所定の温度センサの測定値と前記複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定する請求項1に記載の基準温度設定装置。
【請求項5】
前記取得部は、前記複数の温度センサとして、前記機械における発熱源付近に設置された所定の温度センサの測定値を取得する請求項1から請求項4のいずれかに記載の基準温度設定装置。
【請求項6】
前記設定タイミングにおいて、前記複数の温度センサの測定値を、当該温度センサの基準温度として設定する設定部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の基準温度設定装置。
【請求項7】
前記設定タイミングにおいて、前記複数の温度センサの測定値の統計値に対応して、予め記憶されている基準温度を設定する設定部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載の基準温度設定装置。
【請求項8】
前記設定部は、前記設定タイミングを決定し前記基準温度を設定した第1の機械とは異なる第2の機械に対して、当該第1の機械と同一の基準温度を設定する請求項6又は請求項7に記載の基準温度設定装置。
【請求項9】
機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得ステップと、
ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定ステップと、をコンピュータが実行する基準温度設定方法。
【請求項10】
機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得ステップと、
ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させるための基準温度設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の熱変位を補正するための基準温度を設定する装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械の発熱による熱変位を補正するために、複数のセンサを用いて機械の状態を監視し、熱変位を推定する手法が提案されている。この手法では、基準温度と基準位置が設定され、基準温度からの温度の相対変化により基準位置からの熱変位量が推定される。
【0003】
このような手法の場合、基準温度及び基順位置の設定が必要であり、これらの設定は、機体が外環境になじみ安定しているタイミングで行うことが適切である。例えば、機械の発熱がない状態から発熱した場合と、機械が発熱している状態からさらに発熱した場合とで、温度変化及び変位の生じ方が異なるため、機械が発熱している時のように不適切なタイミングで基準を設定してしまうと、熱変位量が正しく推定できなくなる。
【0004】
基準温度の設定手法として、電源投入時の温度を基準温度として設定する手法(例えば、特許文献1及び2参照)、治具をセットした時の温度を基準温度として設定する手法(例えば、特許文献3参照)、工作機械の構成要素中の温度時定数が大きい部材の温度を基準温度として設定する手法(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−47257号公報
【特許文献2】特開2004−42260号公報
【特許文献3】特開2007−167966号公報
【特許文献4】特開2009−142919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の手法では、設定のタイミング以前の外気温の変化によっては、機械の変位が安定していない場合があった。また、温度時定数が大きく温度が比較的安定している部材を基準とすると、全てのセンサの基準温度が場所、個体差、取得方法等によらず一定となるため、実際との差異が生じていた。このように、適切な基準温度を設定することは難しかった。
【0007】
本発明は、熱変位補正のための適切な基準温度を設定できる基準温度設定装置、基準温度設定方法及び基準温度設定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係る基準温度設定装置(例えば、後述の基準温度設定装置1)は、機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得部(例えば、後述の取得部11)と、ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定部(例えば、後述の決定部12)と、を備える。
【0009】
(2) (1)に記載の基準温度設定装置において、前記決定部は、ある時点での前記測定値の差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定してもよい。
【0010】
(3) (1)に記載の基準温度設定装置において、前記取得部は、外気温相当の温度センサの測定値を取得し、前記決定部は、ある時点での前記外気温相当の温度センサの測定値と前記複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定してもよい。
【0011】
(4) (1)に記載の基準温度設定装置において、前記取得部は、発熱の影響を受けにくい箇所に設置された所定の温度センサの測定値を取得し、前記決定部は、ある時点での前記所定の温度センサの測定値と前記複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、前記設定タイミングとして決定してもよい。
【0012】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の基準温度設定装置において、前記取得部は、前記複数の温度センサとして、前記機械における発熱源付近に設置された所定の温度センサの測定値を取得してもよい。
【0013】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の基準温度設定装置は、前記設定タイミングにおいて、前記複数の温度センサの測定値を、当該温度センサの基準温度として設定する設定部(例えば、後述の設定部13)を備えてもよい。
【0014】
(7) (1)から(5)のいずれかに記載の基準温度設定装置は、前記設定タイミングにおいて、前記複数の温度センサの測定値の統計値に対応して、予め記憶されている基準温度を設定する設定部(例えば、後述の設定部13)を備えてもよい。
【0015】
(8) (6)又は(7)に記載の基準温度設定装置において、前記設定部は、前記設定タイミングを決定し前記基準温度を設定した第1の機械とは異なる第2の機械に対して、前記第1の機械と同一の基準温度を設定してもよい。
【0016】
(9) 本発明に係る基準温度設定方法は、機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得ステップと、ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定ステップと、をコンピュータが実行する。
【0017】
(10) 本発明に係る基準温度設定プログラムは、機械に設置された複数の温度センサの測定値を取得する取得ステップと、ある時点での前記測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する決定ステップと、をコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱変位補正のための適切な基準温度を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る基準温度設定装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(A)を示すフローチャートである。
図3】実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(B)を示すフローチャートである。
図4】実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(C)を示すフローチャートである。
図5】実施形態に係る基準温度テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、本実施形態に係る基準温度設定装置1の機能構成を示すブロック図である。
なお、基準温度設定装置1は、各工作機械の制御部(Computerized Numerical Controler(CNC))の機能として内蔵されてもよいし、外付けの装置、又はネットワークを介したサーバ装置として構成されてもよい。
【0021】
本実施形態において、基準温度設定装置1は、各種インタフェースからの入力に基づいて演算結果を出力する情報処理装置(コンピュータ)であるものとして説明する。基準温度設定装置1の制御部10は、記憶部20に記憶されたソフトウェア(基準温度設定プログラム)を実行することにより、取得部11、決定部12、及び設定部13として機能する。
【0022】
取得部11は、工作機械それぞれに複数設置された温度センサの測定値を取得する。
さらに、取得部11は、工作機械又は外部に設置された外気温相当の温度センサの測定値を取得してもよい。なお、外気温相当の温度センサは、必ずしも工作機械の機体に設定される必要はなく、外部の温度センサが複数の工作機械で共用されてもよい。
また、取得部11は、工作機械が動作することによる発熱及びクーラントの影響を受けにくい箇所に設置された所定の温度センサの測定値を取得してもよい。
【0023】
ここで、発熱の影響を受ける部位は、例えば、以下が挙げられる。
・モータの発熱の影響を受ける部位: 主軸及び各軸のモータ付近は、発熱源である各モータが動作した際に熱伝導により影響を受ける。
・摺動による発熱の影響を受ける部位: 各送り軸の動作によって、ボールねじ又はリニアガイド等が摺動する際に発熱し、これらの付近が熱伝導により影響を受ける。
また、クーラントの影響を受ける部位として、例えば、カバー等で覆われた加工空間内でクーラントが直接かかったり、飛散したクーラントがかかったり、クーラントのミストが充満したりする空間では、クーラントの温度の影響を受ける。
【0024】
すなわち、発熱及びクーラントの影響を受けにくい部位として、モータ又は摺動部から十分に離れており発熱源からの熱伝導を無視でき、かつ、クーラントと接する空間外の部位が選択される。
【0025】
決定部12は、ある時点での複数の温度センサによる測定値が所定の条件を満たすとき、当該時点を、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングとして決定する。
【0026】
設定部13は、決定部12により基準温度の設定タイミングと決定された時に、熱変位補正のための基準温度を設定する。
なお、設定部13は、設定タイミングに必ずしも毎回、基準温度を設定する必要はなく、毎日1回、又は季節毎等、予め設定された頻度で再設定を繰り返してよい。
【0027】
具体的には、決定部12は、例えば、以下の(A)〜(C)いずれかの処理により基準温度の設定タイミングを決定してよい。
【0028】
(A)決定部12は、ある時点での複数の温度センサの測定値を互いに比較し、差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、基準温度の設定タイミングとして決定する。
【0029】
工作機械の動作に伴う熱変位が生じておらず、周囲の温度と機体の温度との差が小さい場合、全ての温度センサの測定値が同等になる。このため、全ての温度センサの測定値の差が閾値以下の時、機体が外環境になじみ安定していると判断できる。
なお、複数の温度センサには外気温相当の温度センサが含まれてもよい。
【0030】
ここで、工作機械の実際の使用状況によっては、例えば一日の気温の変化、空調のオン/オフ又は調整、シャッターの開閉等の様々な外部環境、あるいはクーラントの使用等の影響で、機体各部の温度が同時に安定している状態とはなりにくい。
【0031】
そこで、測定値を取得する複数の温度センサは、発熱源付近の温度センサに限定されてもよい。モータ又は摺動部等の発熱源で発熱がない場合、これらの温度センサは全て同等の測定値となる。発熱源の付近は、温度変化が大きい部位であるため、発熱の有無を判別しやすい。このため、発熱源付近に設置された複数の温度センサの測定値の差が閾値以下の時、決定部12は、発熱がないことを確実に判別できる。
また、主軸等の発熱源は、機体の外装で覆われていることが多く、風が直接当たる等の外部環境の影響が少ない。このため、決定部12は、機体の各部の全てのセンサの測定値の差で判定することに比べて、環境の変化等の外乱による精度の低下を抑制して、工作機械の動作に伴う発熱がないことを判別できる。
【0032】
図2は、本実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(A)を示すフローチャートである。
なお、本処理は、所定の周期(例えば、1秒、1分、10分等)で繰り返し、又は電源の投入若しくは加工の開始をトリガとして実行されてよい。
【0033】
ステップS1において、取得部11は、複数の温度センサの測定値を取得する。
ステップS2において、決定部12は、各温度センサの測定値の差が閾値以下であるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS3に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
ステップS3において、設定部13は、基準温度を設定する。
【0034】
(B)決定部12は、ある時点での外気温相当の温度センサの測定値と、複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、基準温度の設定タイミングとして決定する。
【0035】
工作機械の機体が外環境の温度になじみ安定している場合、外気温相当の温度センサの測定値と、機体各部の温度センサの測定値とが同等になる。このため、外気温と機体各部の温度センサの測定値との差が閾値以下の時、機体が外環境になじみ安定していると判断できる。
なお、決定処理(B)の場合も、決定処理(A)の場合と同様に、複数の温度センサは、発熱源付近の温度センサに限定されてもよい。
【0036】
図3は、本実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(B)を示すフローチャートである。
なお、本処理についても、決定処理(A)と同様に、所定の周期で繰り返し、又は特定の条件をトリガとして実行されてよい。
【0037】
ステップS11において、取得部11は、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値、及び外気温相当の温度センサの測定値を取得する。
ステップS12において、決定部12は、工作機械に設置された各温度センサの測定値と外気温との差が閾値以下であるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS13に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
ステップS13において、設定部13は、基準温度を設定する。
【0038】
(C)決定部12は、ある時点で、発熱及びクーラントの影響を受けにくい箇所に設置された所定の温度センサの測定値と、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値との差の最大値が閾値以下であるとき、当該時点を、基準温度の設定タイミングとして決定する。
【0039】
このとき、複数の温度センサは、発熱源付近の温度センサに限定されてよい。これらの発熱源付近の温度センサは、板金等に覆われていることから発熱以外のクーラント等の外的影響を受けにくい。
工作機械で発熱がない場合、発熱源付近の温度センサの測定値と、発熱源から十分に遠く発熱の影響を受けにくい箇所の温度センサの測定値とが同等になる。このため、これらの測定値の差が閾値以下の時、発熱による変位が生じていないと判断できる。
【0040】
図4は、本実施形態に係る基準温度の設定タイミングの決定処理(C)を示すフローチャートである。
なお、本処理についても、決定処理(A)と同様に、所定の周期で繰り返し、又は特定の条件をトリガとして実行されてよい。
【0041】
ステップS21において、取得部11は、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値として、発熱源付近の複数の温度センサ、及び発熱の影響を受けにくい温度センサの測定値をそれぞれ取得する。
ステップS22において、決定部12は、発熱源付近の温度センサの測定値と発熱の影響を受けにくい温度センサの測定値との差が閾値以下であるか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS23に移り、判定がNOの場合、処理は終了する。
ステップS23において、設定部13は、基準温度を設定する。
【0042】
次に、設定部13による基準温度の設定方法を説明する。
設定部13は、例えば、以下の設定方法(1)又は(2)により基準温度を設定してよい。
【0043】
(1)設定部13は、決定された設定タイミングにおける複数の温度センサの測定値それぞれを、各温度センサの基準温度として設定する。
【0044】
(2)設定部13は、複数の温度センサの測定値の統計値に対応して、予め記憶されている基準温度を設定する。
具体的には、基準温度テーブルが基準温度設定装置1の記憶部、又は工作機械の記憶部(メモリ)等に格納され、設定部13は、このテーブルから各温度センサの基準温度を読み出して設定する。
【0045】
図5は、本実施形態に係る基準温度テーブルの一例を示す図である。
設定部13は、まず、外気温相当の温度センサ若しくは機体に設置された温度センサの一部等の特定の温度センサの測定値、又は複数の温度センサの測定値の平均等を、標準温度として決定する。
【0046】
続いて、設定部13は、標準温度に対応して記憶された各センサ番号の基準温度を抽出する。例えば、外気温を標準温度とした場合、外気温が0℃と測定されたとき、標準温度0℃に対応する5番目の基準温度8℃が、センサ5の基準温度として設定される。
なお、決定された標準温度が基準温度テーブルに存在しない場合、設定部13は、線形補間等により適宜、対応する基準温度を算出してよい。
【0047】
例えば、工作機械の電源投入状態では、モータが励磁状態となり発熱する場合がある。モータの発熱により周囲の温度が上昇するため、機械が動作せず安定している状態であっても、モータの周囲に設置された温度センサは、外気温又は他の温度センサの測定値と一致しない。このように、電源のオン/オフのみで温度が変化するような部位では、温度センサの測定値が安定するまでの時間を待つことなく、予め記憶された安定後の予測値を基準温度に設定することができる。
また、たとえ基準温度の設定タイミングが最適でない場合であっても、各温度センサの基準温度は相対的に適切に設定されるため、基準温度設定装置1は、熱変位の推定精度の悪化を抑制できる。
【0048】
本実施形態によれば、基準温度設定装置1は、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値に基づいて、機体が安定状態にあることを判別し、熱変位補正のための基準温度の設定タイミングを決定する。したがって、基準温度設定装置1は、工作機械の機体が外環境になじみ安定している状態を、複数の温度センサの測定値から適切に判別でき、熱変位補正のための適切な基準温度を設定できる。
【0049】
基準温度設定装置1は、複数の温度センサの測定値の差が閾値以下に収まっている場合に、この時点を基準温度の設定タイミングとして決定する。したがって、基準温度設定装置1は、工作機械が外環境になじみ一定の温度に安定している状態を、複数箇所の温度センサの測定値が同等の値になっている場合として、適切に判別できる。
【0050】
基準温度設定装置1は、外気温相当の温度センサの測定値と、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値との差が閾値以下に収まっている場合に、この時点を基準温度の設定タイミングとして決定する。したがって、基準温度設定装置1は、工作機械が外気温になじみ同等の温度に安定している状態を、適切に判別できる。
【0051】
基準温度設定装置1は、発熱の影響を受けにくい箇所に設置された温度センサの測定値と、工作機械に設置された複数の温度センサの測定値との差が閾値以下に収まっている場合に、この時点を基準温度の設定タイミングとして決定する。したがって、基準温度設定装置1は、工作機械が外環境になじみ一定の温度に安定している状態を、発熱源付近を含む工作機械全体が発熱に影響されない箇所と同等の温度になっている場合として、適切に判定できる。
【0052】
基準温度設定装置1は、発熱源付近に設置された温度センサの測定値を用いて、発熱による温度変化の大きい箇所を観測することで、工作機械全体が外環境になじみ一定の温度に安定している状態を、同等の精度で簡易に判定できる。
【0053】
基準温度設定装置1は、熱変位補正のための基準温度を設定するタイミングを決定した際の温度センサの測定値を、そのまま基準温度として設定する。これにより、基準温度設定装置1は、熱変位補正のための適切な基準温度を容易に設定できる。
【0054】
基準温度設定装置1は、複数の温度センサの測定値の統計値である標準温度に対応して、予め記憶されている基準温度を設定する。したがって、基準温度設定装置1は、標準温度に対して安定時の温度にばらつきがある場合に、適切な基準温度を設定できる。また、たとえ基準温度の設定タイミングが最適でなかった場合であっても、各温度センサの基準温度は相対的に適切に設定されるため、熱変位の推定精度の悪化が抑制される。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0056】
前述の実施形態では、基準温度設定装置1は、工作機械に設置された温度センサの測定値を利用して、機体の発熱がなく安定した状態を判別したが、これには限られない。
温度センサを用いずに発熱量又は熱変位量を推定する手法が知られている。例えば、以下の文献A及びBでは、主軸の回転数、主軸の移動速度及びモータの負荷等をパラメータとし、放熱係数、発熱係数及び熱伝導係数等を適切に設定した計算式により、温度センサを用いずに発熱による変位量を推定する手法が提案されている。基準温度設定装置1は、これらの手法により推定した発熱量又は変位量が閾値以下で十分に小さい場合、機体の発熱がなく、安定した状態と判定できるので、この時を基準温度の設定タイミングと決定してもよい。この手法は、温度センサが設置されないことが多い主軸等の部位において有効である。
この場合、基準温度設定装置1は、外気温又はクーラント吐出等の外的要因の影響を受けることなく、基準温度を適切に設定できる。
文献A: 特開2002−18677号公報
文献B: 特開2015−199168号公報
【0057】
1台の工作機械で設定された基準温度は、設定部13により、ネットワークを介して他の工作機械にも設定され、複数の工作機械で同一の基準温度が共有されてもよい。基準温度の設定は、機体の発熱による変位が生じていないタイミングで行われるため、工作機械が停止した状態を長時間保ち安定させる必要がある。同じ環境にある複数の工作機械で基準温度を共有することにより、1台の工作機械のみが基準温度の設定タイミングとなればよいため、他の工作機械それぞれが基準温度を設定するための前述の処理を実行する必要がなく、他の工作機械を停止させ安定状態にする時間も節約できる。
【0058】
基準温度設定装置1による基準温度設定方法は、ソフトウェアにより実現される。ソフトウェアによって実現される場合には、このソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。また、これらのプログラムは、リムーバブルメディアに記録されてユーザに配布されてもよいし、ネットワークを介してユーザのコンピュータにダウンロードされることにより配布されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 基準温度設定装置
10 制御部
11 取得部
12 決定部
13 設定部
20 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5