特開2019-130627(P2019-130627A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-130627(P2019-130627A)
(43)【公開日】2019年8月8日
(54)【発明の名称】熱変位補正装置及び機械学習装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/18 20060101AFI20190712BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20190712BHJP
【FI】
   B23Q15/18
   B23Q17/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-15657(P2018-15657)
(22)【出願日】2018年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】前川 進
(72)【発明者】
【氏名】角田 寛英
【テーマコード(参考)】
3C001
3C029
【Fターム(参考)】
3C001KA05
3C001KB00
3C001SA00
3C001TA01
3C001TB10
3C029EE01
(57)【要約】
【課題】複数のセンサの内の一部のセンサが故障した場合であっても精度の高い熱変位補正を継続することが可能な熱変位補正装置。
【解決手段】本発明の熱変位補正装置1は、センサ3が検出した工作機械2の温度及びセンサ3の状態を取得するセンサ情報取得部30と、熱変位推定手段を複数記憶する熱変位推定手段記憶部32と、センサ3の状態に基づいて工作機械2の熱変位量の推定に使用する熱変位推定手段を選択する熱変位推定手段選択部31と、熱変位推定手段選択部31が選択した熱変位推定手段に従って、工作機械2の温度に基づいて工作機械2の熱変位量を推定する熱変位推定部33と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサが検出した工作機械の温度に基づいて、該工作機械の熱変位量を推定する熱変位補正装置において、
前記センサが検出した前記工作機械の温度及び前記センサの状態を取得するセンサ情報取得部と、
前記センサの状態に関連付けて熱変位推定手段を複数記憶する熱変位推定手段記憶部から、前記センサ情報取得部が取得した前記センサの状態に基づいて前記工作機械の熱変位量の推定に使用する熱変位推定手段を選択する熱変位推定手段選択部と、
前記熱変位推定手段選択部が選択した熱変位推定手段に従って、前記センサ情報取得部が取得した前記工作機械の温度に基づいて前記工作機械の熱変位量を推定する熱変位推定部と、
を備える熱変位補正装置。
【請求項2】
前記熱変位推定手段記憶部に記憶された熱変位推定手段の最適化、又は前記熱変位推定手段記憶部に記憶する熱変位推定手段の生成を行う熱変位推定手段最適化部を更に備える、
請求項1に記載の熱変位補正装置。
【請求項3】
前記熱変位推定手段記憶部に記憶された熱変位推定手段には順位付けがされており、
前記熱変位推定手段選択部は、前記センサの状態に対して複数の熱変位推定手段が選択可能である場合に、前記順位付けに基づいて熱変位推定手段を選択する、
請求項1又は2に記載の熱変位補正装置。
【請求項4】
前記熱変位推定手段選択部は、前記センサの状態が異常である場合に、前記熱変位推定手段の中から、前記センサの状態が正常なときに取得された履歴データに含まれる熱変位量と最も近い熱変位量を当該履歴データに基づいて推定できる熱変位推定手段を選択する、
請求項1又は2に記載の熱変位補正装置。
【請求項5】
前記熱変位推定手段選択部は、前記センサの状態が異常である場合に、前記熱変位推定手段の中から、前記工作機械の各部を計測して得られた熱変位量と最も近い熱変位量を推定できる熱変位推定手段を選択する、
請求項1又は2に記載の熱変位補正装置。
【請求項6】
前記熱変位推定手段は、前記工作機械の温度から前記工作機械の熱変位量を算出する算出式である、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱変位補正装置。
【請求項7】
前記熱変位推定手段は、前記工作機械の温度から前記工作機械の熱変位量を出力する機械学習器である、
請求項1〜5のいずれか1つに記載の熱変位補正装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変位補正装置及び機械学習装置に関し、特に複数のセンサの内の一部のセンサが故障した場合であっても精度の高い熱変位補正を継続することが可能な熱変位補正装置及び機械学習装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の発熱による熱変位を補正する技術として、複数の温度センサを用いて工作機械の状態を監視し、それぞれの温度センサにより検出された工作機械の各部の温度状態に基づいて工作機械の各部の熱変位量を推定する技術がある。
【0003】
工場におけるFA環境では、工作機械において用いられる切削液や、ワークを加工した時に発生する切粉等が原因で、通常の使用方法に比べてセンサ等に異常が生じ易く、熱変位補正に用いられる温度センサについても例外ではない。工作機械の運転時に温度センサに異常が生じた場合、工作機械の各部の熱変位量を正しく推定することができなくなる。この様な場合、従来技術では、温度センサに異常が生じたと判定された時点で、熱変位を補正するための補正量の変更を禁止する等の手法により対処をしていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5336042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の手法をとる場合、異常な温度センサの出力に基づいた熱変位の補正は実施されないが、補正量の変更を禁止した後は、機械の動作状態などに基づいた熱変位の補正は実施されないため、加工された製品の質が低下するという問題が生じる。この様な場合には、適当なタイミングで工作機械の運転を停止し、異常が生じた温度センサをメンテナンスすることで状況の回復をすることができるが、工作機械の運転を停止すると生産性の低下を招くので、温度センサに異常が生じた場合であっても継続して精度良く熱変位を推定する手法が切望される。
【0006】
そこで本発明の目的は、複数のセンサの内の一部のセンサが故障した場合であっても精度の高い熱変位補正を継続することが可能な熱変位補正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱変位補正装置は、温度センサに異常が生じた時に使用するものであって、1つ以上の温度センサの出力を使用せずに熱変位を推定することが可能な熱変位推定手段を複数用意しておき、温度センサに異常が生じた際に、用意されている複数の熱変位推定手段の中から、異常が生じた温度センサを使用しない熱変位推定手段を選択し、選択した熱変位推定手段を利用して継続した熱変位補正を可能にすることで、上記課題を解決する。
【0008】
そして、本発明の一態様は、複数のセンサが検出した工作機械の温度に基づいて、該工作機械の熱変位量を推定する熱変位補正装置において、前記センサが検出した前記工作機械の温度及び前記センサの状態を取得するセンサ情報取得部と、前記センサの状態に関連付けて熱変位推定手段を複数記憶する熱変位推定手段記憶部から、前記センサ情報取得部が取得した前記センサの状態に基づいて前記工作機械の熱変位量の推定に使用する熱変位推定手段を選択する熱変位推定手段選択部と、前記熱変位推定手段選択部が選択した熱変位推定手段に従って、前記センサ情報取得部が取得した前記工作機械の温度に基づいて前記工作機械の熱変位量を推定する熱変位推定部と、を備える熱変位補正装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、温度センサに異常が生じた場合でも、熱変位の推定及び補正を継続して実施することができるようになり、サイクルタイムを低下させること無く信頼性の高い熱変位を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態による熱変位補正装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。
図2】第1の実施形態による熱変位補正装置の概略的な機能ブロック図である。
図3】熱変位推定手段の例を示す図である。
図4】工作機械に対するセンサの取り付け例を示す図である。
図5】第2の実施形態による熱変位補正装置の概略的な機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は第1の実施形態による熱変位補正装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。熱変位補正装置1は、例えば工作機械を制御する制御装置として実装することができる。また、熱変位補正装置1は、工作機械を制御する制御装置と併設されたパソコンや、制御装置とネットワークを介して接続されたセルコンピュータ、ホストコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータとして実装することが出来る。図1は、工作機械を制御する制御装置として熱変位補正装置1を実装した場合の例を示している。
【0012】
本実施形態による熱変位補正装置1が備えるCPU11は、熱変位補正装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、ROM12に格納されたシステム・プログラムをバス20を介して読み出し、該システム・プログラムに従って熱変位補正装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、図示しない入力部を介してオペレータが入力した各種データ等が一時的に格納される。
【0013】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされるなどして、熱変位補正装置1の電源がオフされても記憶状態が保持されるメモリとして構成される。不揮発性メモリ14には、インタフェース15を介して読み込まれた制御用プログラムや図示しない入力装置等を介して入力された制御用プログラム、工作機械2やセンサ3から取得された各種データ等が記憶される。不揮発性メモリ14に記憶された制御用プログラムは、利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、熱変位補正装置1の動作に必要な各種のシステム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0014】
熱変位補正装置1は、制御用プログラム等に基づいてインタフェース18を介して工作機械2に対して工作機械2が備える各軸を制御する指令を出力する。また、熱変位補正装置1は、インタフェース18を介して工作機械2の各部からデータを取得する。
また、熱変位補正装置1は、インタフェース19を介して工作機械2の周辺乃至各部に取り付けられたセンサ3(例えば、温度センサ等)が検出したデータを取得する。なお、図においてセンサ3は1つしか示されていないが、実際には工作機械2の各部に複数のセンサ3が取り付けられており、それぞれのセンサ3が検出したデータを熱変位補正装置1に取得できるように構成される(以下では、複数のセンサ3のそれぞれを示す際には、センサ3a,3b,3c,…と示す)。
【0015】
図2は、第1の実施形態による熱変位補正装置1の概略的な機能ブロック図である。図2に示した各機能ブロックは、図1に示した熱変位補正装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、熱変位補正装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0016】
本実施形態の熱変位補正装置1は、それぞれのセンサ3が検出した工作機械2の各部の温度及びそれぞれのセンサ3の状態を取得するセンサ情報取得部30と、センサ情報取得部30が取得したそれぞれのセンサ3の状態に基づいて熱変位推定手段記憶部32に予め記憶されている熱変位推定手段から熱変位の推定に用いる熱変位推定手段を選択する熱変位推定手段選択部31、熱変位推定手段選択部31が選択した熱変位推定手段に従ってセンサ情報取得部30が取得した工作機械2の各部の温度に基づいた工作機械2の熱変位量の推定を行う熱変位推定部33と、不揮発性メモリ14に記憶された制御用プログラム及び熱変位推定部33が推定した工作機械2の熱変位量に基づいて工作機械2の動作を制御する制御部34とを備える。
【0017】
センサ情報取得部30は、工作機械2の各部に取り付けられた複数のセンサ3が検出した工作機械2の各部の温度を取得する。また、センサ情報取得部30は、工作機械2の各部に取り付けられたそれぞれのセンサ3の状態を取得する。センサ情報取得部30が取得するそれぞれのセンサ3の状態は、センサ3が正常に動作しているのか否か、という情報を含む。センサ3の状態は、例えば電気的な接続が異常な状態にある(例えば、断線を検出した、通常の電位状態に無い、等)、センサ3がありえない温度値を示している(例えば、通常の検出されない温度を示している、他のセンサ3と比較して大きく異なる値を示している、等)、といった公知の判定方法を用いることで取得できる。この様にして取得した工作機械2の各部の温度及びそれぞれのセンサ3の状態を、センサ情報取得部30は、それぞれ熱変位推定部33及び熱変位推定手段選択部31へと出力する。
【0018】
熱変位推定手段選択部31は、センサ情報取得部30が取得したそれぞれのセンサ3の状態に基づいて、工作機械2の熱変位の推定方法を選択する。熱変位推定手段選択部31は、例えば、複数のセンサ3の内のいくつかのセンサ3について異常が発生した場合に使用するための、熱変位推定手段(例えば、熱変位量の算出式)をあらかじめ複数用意して熱変位推定手段記憶部32に記憶しておき、一部のセンサ3に異常が生じた場合に、異常が生じたセンサ3を用いずに工作機械2の熱変位量を推定することが可能な熱変位推定手段を熱変位推定手段記憶部32に記憶された複数の熱変位推定手段の中から選択する。熱変位推定手段選択部31は、選択した熱変位推定手段を熱変位推定部33へと出力する。
【0019】
図3は、熱変位推定手段選択部31が選択する熱変位推定手段の例を示す図である。図3上の表は、熱変位推定手段記憶部32に記憶されている熱変位推定手段の例を示しており、図3下は工作機械2に取り付けられたセンサ3の例を示している。図3の例では、予め熱変位推定手段記憶部32に、センサ3の状態と関連付けられた熱変位量の算出式が複数記憶されている。図3に例示される熱変位量の算出式は、複数のセンサ3a,3b,3c…が検出する温度をそれぞれT1、T2、T3、…とした場合の工作機械2のX軸の熱変位量を算出するための式である。なお、図3の例では、工作機械2のX軸の熱変位量を算出する式のみが示されているが、工作機械2がY軸、Z軸等の複数の軸を更に備えている場合には、それぞれの軸について熱変位量の算出式が熱変位推定手段としてセンサ3の状態と関連付けられて記憶される。センサ3の状態は複数のセンサの内でどのセンサが使用できるか(または、どのセンサが使用できないか)を示している。図3の例では、この様に複数の熱変位量の算出式が熱変位推定手段として熱変位推定手段記憶部32に記憶されている状態で、センサ情報取得部30から工作機械2の各部の温度及びそれぞれのセンサ3の状態を受けると、熱変位推定手段選択部31は、それぞれのセンサ3の状態に基づいて使用可能な熱変位量の算出式を選択し、選択した熱変位量の算出式を熱変位推定部33へと出力する。例えば、図3に示す熱変位量の算出式が記憶されている時、センサ3aが異常な状態にある場合には、No.2として記憶されている熱変位量の算出式が選択される。なお、熱変位推定手段として図3に例示されるような熱変位量の算出式を用いる場合には、各算出式の係数等については予め実験などにより求めておけば良い。
【0020】
熱変位推定部33は、熱変位推定手段選択部31が選択した熱変位推定手段に従って、センサ情報取得部30が取得した工作機械2の各部の温度に基づいて工作機械2の熱変位量を推定し、その推定の結果を制御部34へと出力する。
制御部34は、不揮発性メモリ14に記憶された制御用プログラムに基づいて工作機械2の各軸を制御するに際して、熱変位推定部33から受けた工作機械2の各軸の熱変位量の推定値に基づいて各軸の位置を補正し、補正した結果に基づいて工作機械2の各軸の動作を制御する。
【0021】
熱変位補正装置1の一変形例として、熱変位推定手段選択部31が熱変位推定手段を選択する際に、現在の状態において複数の熱変位推定手段が選択可能であった場合に、現在の状態においてより高い精度で工作機械2の熱変位量を推定可能な熱変位推定手段を選択するように構成してもよい。
【0022】
例えば、図4に例示されるように、工作機械2に取り付けられているセンサ3の数が増えてくると、熱変位推定手段記憶部32に記憶される熱変位推定手段の数も増加するが、センサ3の一部には機械に対して左右対称に設置することで熱変位量の推定に良い効果を生じるものがある。例えば、センサ3eとセンサ3jがこの様な関係にある場合に、センサ3jに異常が発生したとすると、熱変位推定手段としては、センサ3a〜3iを全て用いる熱変位推定手段を選択するよりも、センサ3jと対となるセンサ3eを除いた、センサ3a〜3d,3f〜3iを用いる熱変位推定手段を選択した方が、より高い精度で工作機械2の熱変位量を推定できる場合もある。また、工作機械2の構造によっては、温度変化による一部の部材の伸び縮みが所定の軸には大きく影響し、他の軸には影響しない場合等もある。この様なことを考慮して、熱変位推定手段選択部31が熱変位推定手段を選択する際に、単純に現在使用可能なセンサ3が検出した温度を全て利用する熱変位推定手段を選択するのではなく、異常が検出されたセンサ3を使用しない熱変位推定手段の中から、工作機械2の構造、センサ3の配置、熱変位量を推定する軸等を考慮して、使用可能なセンサ3の一部を使用してより高い精度で熱変位量を推定可能な熱変位推定手段を選択するようにしても良い。
【0023】
本変形例において熱変位推定手段選択部31が熱変位推定手段を選択する方法としては、例えば、あらかじめ、異常が生じた場合に用いる熱変位推定手段に順位付けをしておき、センサ3に異常が生じた場合、予め設定した精度よく熱変位量を推定する順位に基づいて、異常が生じたセンサ3を使用しない熱変位推定手段の中から順位が高い熱変位推定手段を選択する方法が考えられる。この順位付けは、例えば熱変位量を推定しようとする軸に応じて異なるようにしても良い。
【0024】
また、他の選択方法として、温度センサが正常な時に推定した熱変位量を最も精度がよい状態として仮定し、予めセンサ3が全て正常なときに取得された各センサ3が検出した温度とその時に推定された熱変位量を履歴データとして記憶しておき、温度センサに異常が生じた時に、異常が生じたセンサ3を使用しない複数の熱変位推定手段について該履歴データに基づいた熱変位量の推定を行い、温度センサが正常な時に推定した結果と比較して、結果が最も近い熱変位補正手段を以後選択するようにしても良い。
【0025】
更に、他の選択方法として、温度センサに異常が生じた時にタッチプローブなどの計測機器で熱変位量を計測して実測値を得て、異常が生じたセンサ3を使用しない複数の熱変位推定手段の中で、実測した結果と最も近い熱変位補正手段を以後選択するようにしても良い。
【0026】
熱変位補正装置1の他の変形例として、複数の熱変位推定手段を記憶する熱変位推定手段記憶部32は、ネットワーク上のセルコンピュータ、ホストコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータで管理してもよい。工作機械2に取り付けられるセンサ3の数が多い場合、熱変位推定手段記憶部32に記憶するべき熱変位推定手段の数が多くなり、熱変位補正装置1のメモリを圧迫する。そのため、熱変位推定手段をサーバー上などで管理し、ネットワークを介して取得することで、熱変位補正装置1上のメモリに保存するデータを軽減することができるようになる。また、これらのデータをネットワークを介して他の熱変位補正装置1と共有することも可能となる。
【0027】
図5は、第2の実施形態による熱変位補正装置1の概略的な機能ブロック図である。本実施形態による熱変位補正装置1は、第1の実施形態による熱変位補正装置1に対して、更に熱変位推定手段を作成乃至最適化する熱変位推定手段最適化部35と、熱変位推定手段の作成乃至最適化に必要なデータを記憶する履歴データ記憶部36とを備えたものである。
【0028】
熱変位推定手段最適化部35は、履歴データ記憶部36に記憶された情報を用いて、熱変位補正手段を作成乃至最適化する機能手段である。履歴データ記憶部36には、あらかじめ用意された、又は工作機械2を用いて加工を行っている最中に取得された履歴データが記憶される。履歴データには、例えば、センサ3が全て正常に動作している状態で工作機械2を用いて加工をしている際に、センサ3が検出した工作機械2の各部の温度と、該温度を全て用いて推定した工作機械2の熱変位を含んでいても良い。また、履歴データには、例えば、工作機械2を用いて加工をしている際に、センサ3が検出した工作機械2の各部の温度と、タッチプローブ等の計測機器で計測された熱変位量の実測値を含んでいても良い。これらの履歴データを用いて、熱変位推定手段最適化部35は、一部のセンサ3の検出値を使用しない熱変位推定手段の作成乃至最適化を行う。熱変位推定手段最適化部35が行う熱変位推定手段の作成乃至最適化の例としては、例えば図3に示すような熱変位量の算出式を熱変位推定手段として用いている場合であって、履歴データとして、センサ3が検出した工作機械2の各部の温度と、タッチプローブ等の計測機器で計測された熱変位量の実測値が履歴データ記憶部36に記憶されている場合には、該履歴データに基づく多変量解析等の手法を用いてそれぞれの熱変位量の算出式の係数を調整するようにすれば良い。また、熱変位推定手段最適化部35に機械学習の手法を導入し、予めセンサ値と熱変位量を入力値として、熱変位量の算出式の係数を出力値とする学習モデルを予め作成しておき、加工中に取得された履歴データを用いて該学習モデルにより熱変位量の算出式の係数を出力させ、出力された係数で熱変位量の算出式を変更するようにしても良い。
【0029】
第2の実施形態による熱変位補正装置1の一変形例として、履歴データを記憶する履歴データ記憶部36は、ネットワーク上のセルコンピュータ、ホストコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータで管理してもよい。適切な熱変位推定手段の作成乃至最適化を行うためには、相当数の履歴データが必要となり、熱変位補正装置1のメモリを圧迫する。そのため、履歴データをサーバー上などで管理し、ネットワークを介して取得することで、熱変位補正装置1上のメモリに保存するデータを軽減することができるようになる。また、これらのデータをネットワークを介して他の熱変位補正装置1と共有することも可能となる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【0031】
例えば、上記した実施形態では、熱変位推定手段として1次式を用いた例を示したが、工作機械2の構造やセンサ3の配置によっては、熱変位推定手段として2次式や3次式などを用いたり、他の高度な演算式を用いるようにしても良い。また、熱変位推定手段としては、ニューラルネットワーク等の機械学習器を用いるようにすることも可能である。熱変位補正装置1が十分な性能を備えている場合には、工作機械2の構造やセンサ3の配置に対して高い精度で熱変位の推定が可能な熱変位推定手段を用いることで、より信頼性の高い熱変位補正が可能となる。
【0032】
また、上記した実施形態の熱変位補正装置1は、工作機械2を制御する制御装置として実装した例を示しているため制御部34を備えているが、例えば、制御装置に併設されるパソコンや、制御装置とネットワークを介して接続されたセルコンピュータ、ホストコンピュータ、クラウドサーバ等のコンピュータとして実装する場合には、制御部34は必ずしも必須の構成とはならない。この場合、熱変位補正装置1は、制御部34を備えた制御装置に対して工作機械2の熱変位を送信するところまでの役割を果たせばよい。
【0033】
また、上記した実施形態では、熱変位推定手段選択部31は1つの熱変推定手段を選択するように構成しているが、現在のセンサ3の状態に応じて選択可能な複数の熱変位推定手段を選択した上で、熱変位推定部33が、選択された複数の熱変位推定手段のそれぞれに従って工作機械2の熱変位量を算出し、この様にして算出された複数の工作機械2の熱変位量に対して公知の統計的手法(例えば、最大値と最小値を除く他の工作機械2の熱変位量の平均値を求める等)を用いることで、工作機械2の熱変位量を推定するようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
1 熱変位補正装置
2 工作機械
3 センサ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15 インタフェース
18 インタフェース
19 インタフェース
20 バス
30 センサ情報取得部
31 熱変位推定手段選択部
32 熱変位推定手段記憶部
33 熱変位推定部
34 制御部
35 熱変位推定手段最適化部
36 履歴データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5