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特開2019-150797脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-150797(P2019-150797A)
(43)【公開日】2019年9月12日
(54)【発明の名称】脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/50 20060101AFI20190816BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20190816BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20190816BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20190816BHJP
【FI】
   B01D53/50 245
   B01D53/14 200
   B01D53/78ZAB
   G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-39287(P2018-39287)
(22)【出願日】2018年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】神山 直行
(72)【発明者】
【氏名】香川 晴治
(72)【発明者】
【氏名】牛久 哲
(72)【発明者】
【氏名】盛 祥悟
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
5L049
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA01
4D002DA05
4D002DA16
4D002EA11
4D002FA03
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB06
4D002GB07
4D002GB08
4D002GB09
4D020AA06
4D020BA02
4D020BA09
4D020BB03
4D020BC05
4D020BC06
4D020CB25
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB01
4D020DB03
4D020DB05
4D020DB07
4D020DB08
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】脱硫装置の健全性を確保しながら、プラント設備の運用によるユーザの経済的メリットを最大化可能な脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法を提供する。
【解決手段】脱硫装置の運転支援システムは、脱硫装置の運転データに基づいて算出される解析性能と実測性能とを対比することにより、脱硫装置の健全性を評価し、評価結果に基づいて設定される運転条件候補及び収支予測を含む支援情報を作成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転支援システムであって、
前記脱硫装置の運転データを取得する運転データの入力・取得部と、
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関するあるべき解析性能を算出する解析性能算出部と、
前記解析性能取得時の実測性能を取得する実測性能取得部と、
前記解析性能算出部で算出された前記解析性能に対する、前記実測性能取得部で取得された前記実測性能の性能比を算出することにより、前記脱硫装置の健全性を評価する健全性評価部と、
前記健全性評価部の評価結果に基づいて設定される少なくとも一つの運転条件候補、及び、前記運転条件候補に対応する収支予測を含む支援情報を作成する支援情報作成部と、
を備える、脱硫装置の運転支援システム。
【請求項2】
前記支援情報作成部は、前記健全性評価部の評価結果に基づいて複数の前記運転条件候補を設定し、前記運転条件候補の各々に対応する前記収支予測を求めることによって、前記支援情報を作成する、請求項1に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項3】
前記支援情報作成部は、前記脱硫装置の運転に関する支出と前記脱硫装置の運転時に生成される副産物の売却による収入とを考慮して前記収支予測を求める、請求項1又は2に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項4】
前記支出を最小化することを優先に複数の前記運転条件候補から採用すべき運転条件を選定する、請求項3に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項5】
複数の前記運転条件候補は、前記脱硫装置に吸収液を循環させるための循環ポンプの運転台数が異なるように設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項6】
前記健全性評価部は、前記解析性能と前記実測性能との性能比を算出し、前記性能比を所定の基準値と比較することにより、前記健全性を評価する、請求項1から5のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項7】
前記運転データは、前記脱硫装置をモニタリング可能なローカル監視システムから地理的に離れた位置に設置される遠隔支援システムが、ネットワークを介して、前記ローカル監視システムから取得する、請求項1から6のいずれか一項に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項8】
前記ローカル監視システムは、前記ネットワークを介して、前記遠隔支援システムから取得した前記支援情報を表示可能な表示部を備える、請求項7に記載の脱硫装置の運転支援システム。
【請求項9】
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転支援方法であって、
前記脱硫装置の運転データを取得する工程と、
前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関する解析性能を算出する工程と、
前記解析性能取得時の実測性能を取得する工程と、
前記解析性能と前記実測性能とを対比することにより、前記脱硫装置の健全性を評価する工程と、
前記健全性の評価結果に基づいて少なくとも一つの運転条件候補を設定する工程と、
前記運転条件候補に対応する収支予測を求める工程と、
前記運転条件候補及び前記収支予測を含む支援情報を作成する工程と、
を備える、脱硫装置の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収剤を用いて排ガスに対して脱硫処理を実施する脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料の燃焼を伴うプラント設備では、排ガス中に含まれるSO(二酸化硫黄)を除去するための脱硫装置を備えるものがある。その一方式である湿式石灰石膏法を採用する脱硫装置では、吸収剤として石灰石粉体を懸濁状にスラリー化させた吸収液を循環ポンプで循環させながら排ガスに接触させることで、排ガス中に含まれるSOの除去が行われる。
【0003】
このような脱硫装置では、想定される様々な運転条件のもとで試運転を行い、試運転中に収集されたデータに基づいて最大性能を発揮可能な運転条件を把握することで、実際のプラント運用に反映している。また脱硫装置の運転条件を評価する際には、脱硫装置の運転に伴うユーティリティ動力費や、脱硫反応で生成される石膏や、電気集塵機から排出されるFLYASHのような副産物の第三者への売却収益を含めた収支を考慮することで、ユーザの経済的メリットを最大化することが重要である。特に、近年では環境配慮の観点から、例えば環境賦課金のように時間的に変動する経済要因を考慮する必要があり、このような要因を加味して最適な運転条件を把握することが望まれている。
【0004】
例えば特許文献1には、ユーティリティオペレーションコストとして、吸収液への石灰石供給量や吸収液を循環させるための循環ポンプの運転台数に基づく動力コスト因子を考慮するとともに、副産物である石膏の売却収益に基づく収入因子を考慮することで、脱硫装置の経済的運転を行う技術に関する開示がなされている。また特許文献2及び3には、吸収液を循環させるための循環ポンプの運転台数を、脱硫装置の出口側におけるSO濃度や脱硫率が要求仕様を満足しながら、運転コストを最小化するように決定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−110441号公報
【特許文献2】特開2000−015043号公報
【特許文献3】特開平02−180615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1乃至3では、健全性が担保された脱硫装置を対象とした運転条件の評価が行われている。しかしながら、実際のプラント設備では、燃料種変更による共存微量成分の影響(石灰石の溶解阻害や酸化阻害など)や設備閉塞のような要因によって、脱硫性能が低下した状態に陥ることがあり、このような状態で運用を継続すると症状が重篤化し、プラント設備の停止や運転負荷制限を余儀なくされ、結果として、ユーザに多大な経済的損失をもたらすおそれがある。
【0007】
脱硫装置を始めとする排煙処理設備の運転状態は、プラント設備から地理的に離れた場所(プラントメーカの管理施設等)から遠隔監視することが可能であるが、現場の脱硫装置ではユーザの裁量で、吸収剤の投入量や吸収液の供給量を過大にすることで、遠隔監視上では、一見、運用上は十分な脱硫性能が発揮されており、真の性能低下の発見が遅れてしまうおそれがある。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、脱硫装置の健全性を確保しながら、プラント設備の運用によるユーザの経済的メリットを最大化可能な脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硫装置の運転支援システムは上記課題を解決するために、
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転支援システムであって、
前記脱硫装置の運転データ(定常的な分析データのデータベースへの入力値を含む。以下「運転データ」と称す。)を入力・取得する運転データの入力・取得部と、
前記運転データの入力・取得部で取得された前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関するあるべき解析性能を算出する解析性能算出部と、
前記解析性能算出時の実測性能(DCS(分散制御システム)から自動で得られるもののみならず、分析の結果手動入力されるものを含む。以下「実測性能」と称す。)を入力・取得する実測性能取得部と、
前記解析性能算出部で算出された前記解析性能に対する、前記実測性能取得部で取得された前記実測性能の性能比を算出することにより、前記脱硫装置の健全性を評価する健全性評価部と、
前記健全性評価部の評価結果に基づいて設定される少なくとも一つの運転条件候補、及び、前記運転条件候補に対応する収支予測を含む支援情報を作成する支援情報作成部と、
を備える。
【0010】
上記(1)の構成によれば、脱硫装置に関する実運転データ(装置に組み込まれた多数のセンサーで測定された各デジタルデータを総称)に基づいて、脱硫性能に関する解析性能が演算的に求められる。当該解析性能式は、運転データに基づく、吸収剤残留濃度、SO吸収量、pH、共存成分液性状等の化学反応に関する構成要素式や、排ガス量と吸収液量の比率L/G、吸収液反応有効高さ、装置構造等の物理的な気液接触に関する構成要素式から成り、算出される。
このような解析性能式として、例えば以下の(A)、(B)を用いることができる。
SO2out=f(G,YSO2in,[CaCO],L,k) (A)
ηSO2=g(G,YSO2in,[CaCO],L,k) (B)
ここで、YSO2outは脱硫装置出口SO濃度、YSO2inは脱硫装置入口SO濃度、Gは処理ガス量、[CaCO]は吸収塔スラリー中のCaCO濃度、Lはスラリー循環流量、f,gは脱硫装置特性を表す関数、ηSO2は脱硫率、kは吸収剤の活性値(溶解速度)である。すなわち、脱硫装置出口SO濃度は、上記入力値に対して関数fを介して求めることができる。この関数fは、特開昭59−199021号或いは特開昭63−229126号公報に示されるような化学反応モデルにより実現してもよく、また制御対象となる脱硫装置実機について種々の運転条件における特性を計測し、これを統計処理等の方法によりモデル化することも可能である。
健全性評価部では、このような解析性能と、それに対応する実測性能とを対比することにより、脱硫装置の健全性が評価される。このような健全性の評価は、脱硫性能をユーザ側の運用実態に関わらず絶対的な評価が可能であり、健全性を精度よく評価できる。支援情報作成部では、このような健全性の評価結果に基づいて設定される少なくとも一つの運転条件、及び、運転条件に対応する収支予測を含む支援情報を作成する。このように作成された支援情報に基づいた運用を実施することにより、ユーザは脱硫装置の健全性を確保しつつ、経済的な運用を実施することが可能となる。
尚、本願明細書において「解析性能」とは、運転データを解析性能式(例えばシミュレーションモデル)に入力して算出可能な性能に対応するパラメータを広く含む。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では上記(1)の構成において、
前記支援情報作成部は、前記健全性評価部の評価結果に基づいて複数の前記運転条件候補を設定し、前記運転条件候補の各々に対応する前記収支予測を求めることによって、前記支援情報を作成する。
【0012】
上記(2)の構成によれば、脱硫装置の健全性評価に基づいて複数の運転条件候補を設定し、各運転条件候補に対して収支予測が求められる。これにより、複数の運転条件候補の収支予測を比較することで、ユーザの経済的メリットに有利な運転支援が可能となる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では上記(1)又は(2)の構成において、
前記支援情報作成部は、前記脱硫装置の運転に関する支出と前記脱硫装置の運転時に生成される副産物の売却による収入とを考慮して前記収支予測を求める。
【0014】
上記(3)の構成によれば、脱硫装置の運転に関する支出と脱硫装置の運転時に生成される副産物の売却による収入とを考慮した収支予測に基づいて、ユーザの経済的メリットに有利な運転支援が可能となる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では上記(3)の構成において、
前記支出を最小化することを優先に複数の前記運転条件候補から採用すべき運転条件を選定する。
【0016】
上記(4)の構成によれば、ユーザの収支において大きな割合を占める支出要因を最小化するように運転条件を選定することで、ユーザの経済的メリットを最大化できる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では上記(1)から(4)のいずれか一つの構成において、
複数の前記運転条件候補は、前記脱硫装置に吸収液を循環させるための循環ポンプの運転台数が異なるように設定される。
【0018】
上記(5)の構成によれば、循環ポンプの運転台数が異なる運転条件候補の状態に変更した場合の見掛け上の脱硫性能及び運転コストを算出予測し比較することで、ユーザに対して性能を満足しつつ経済的メリットを効果的にもたらす運転台数を有する運転条件を選定できる。循環ポンプは、ユーティリティ動力費において比較的大きな割合を占めるため、このような運転条件を採用することで、ユーザの経済的メリットに有利な運転支援が可能となる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では上記(1)から(5)のいずれか一つの構成において、
前記健全性評価部は、前記解析性能と前記実測性能との性能比を算出し、前記性能比を所定の基準値と比較することにより、前記健全性を評価する。
【0020】
上記(6)の構成によれば、健全性評価部では、解析性能と、それに対応する実測性能との比率である性能比に基づいて健全性の評価がなされる。このような性能比は、脱硫装置に関する実測性能に基づいて脱硫性能を絶対的に評価可能であり、予兆段階を含めた健全性を精度よく評価できる。そのため、ユーザ側の裁量で、吸収剤の投入量や吸収液の供給量が過大になっている場合であっても、性能比に基づいて脱硫装置の健全性を精度よく且つ早期に検知できる。
【0021】
(7)幾つかの実施形態では上記(1)から(6)のいずれか一つの構成において、
前記運転データは、前記脱硫装置をモニタリング可能なローカル監視システムから地理的に離れた位置に設置される遠隔支援システムが、ネットワークを介して、前記ローカル監視システムから取得する。
【0022】
上記(7)の構成によれば、運転支援システムは、脱硫装置がある現場に設置されたローカル監視システムから離れた位置に設置される遠隔支援システムが、ネットワークを介して、ローカル監視システムから健全性評価に用いられる運転データを取得することで、現場から離れた位置において、脱硫装置の運転をリアルタイム的に支援できる。
【0023】
(8)幾つかの実施形態では上記(7)の構成において、
前記ローカル監視システムは、前記ネットワークを介して、前記遠隔支援システムから取得した前記支援情報を表示可能な表示部を備える。
【0024】
上記(8)の構成によれば、ユーザ側に設置されたローカル監視システムに備えられた表示部に支援情報を表示することで、ユーザへの効率的で迅速な支援が可能となる。
【0025】
(9)本発明の少なくとも一実施形態に係る脱硫装置の運転支援方法は上記課題を解決するために、
吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転支援方法であって、
前記脱硫装置の運転データを取得する工程と、
前記運転データに基づいて、前記脱硫装置の脱硫性能に関する解析性能を算出する工程と、
前記解析性能取得時の実測性能を取得する工程と、
前記解析性能と前記実測性能とを対比することにより、前記脱硫装置の健全性を評価する工程と、
前記健全性の評価結果に基づいて少なくとも一つの運転条件候補を設定する工程と、
前記運転条件候補に対応する収支予測を求める工程と、
前記運転条件候補及び前記収支予測を含む支援情報を作成する工程と、
を備える。
【0026】
上記(9)の方法は、上述の脱硫装置の運転支援システム(上記各種態様を含む)によって好適に実施可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、脱硫装置の健全性を確保しながら、プラント設備の運用によるユーザの経済的メリットを最大化可能な脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る脱硫装置の運転支援システムの全体構成を示す模式図である。
図2図1のローカル監視システム、ネットワーク及び遠隔支援システムの構成レイアウトの一例を示す模式図である。
図3図2の遠隔支援システムにおける中央サーバの内部構成を機能的に示すブロック図である。
図4図3の中央サーバで実施される運転支援方法を工程毎に示すフローチャートである。
図5】吸収液循環ポンプの運転台数に伴う吸収液の循環量の変化を示すグラフである。
図6図4のステップS7で作成される支援情報の一例である。
図7図4のステップS7で作成される支援情報に含まれる補助情報の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
また例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係る脱硫装置1の運転支援システム100の全体構成を示す模式図である。運転支援システム100では、所定のプラント設備に含まれる脱硫装置1を支援対象とし、以下の実施形態では、プラント設備から地理的に離れた地点で遠隔支援する場合を例に説明する。
【0031】
脱硫装置1は、火力発電所などのプラント設備のボイラ(不図示)に付随して設置され、ボイラの排気通路3aを流れる排ガスG0に含まれる微粒子を収集する集塵装置2と、集塵装置2の下流側において、集塵装置2を通過した排ガスG1が流れる排気通路3bに設置された吸収塔4と、を備える。
【0032】
集塵装置2は、ケーシング内に供給された排ガスG0に対してコロナ放電を行うことで、排ガスG0に含まれる微粒子を帯電させ、正負に荷電させた付着部に対して電気的吸引力によって付着させることで集塵する電気集塵器である。集塵装置2によって集塵処理が行われた排ガスG1は、排気通路3bを介して吸収塔4に供給される。
【0033】
吸収塔4は、集塵装置2で集塵処理が行われた排ガスG1に対して、石灰石10を含む吸収液6を接触させることで排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を吸収することにより、脱硫処理を行う。吸収塔4の底部には吸収液6が貯留されている。吸収液6は、吸収塔4の外部に設けられた石灰石フィーダ8から供給される石灰石10が、吸収塔4の底部に供給される水12と混合されることで生成される。
【0034】
吸収塔4の底部に貯留された吸収液6は、吸収液循環ポンプ14により圧送され、吸収塔4の外部に設けられた吸収液ヘッダ16を介して、吸収塔4内の上部に供給される。吸収液循環ポンプ14は、互いに直列又は並列に接続された複数台のポンプユニットから構成されており、各ポンプユニットの運転状態が独立的に制御されることにより、吸収液循環ポンプ14から圧送される吸収液6の流量を可変に調整可能に構成されている。このように吸収塔4内の上部に供給された吸収液6は、吸収塔4内の上部に設けられたノズル18から散布されて落下する過程において、吸収塔4内を上昇する排ガスG1と接触する。これにより、排ガスG1に含まれるSOが吸収液6中の石灰石10と反応し、脱硫処理が行われる。
【0035】
下記(1)式は、吸収塔4で実施される脱硫処理の化学反応式である。脱硫反応では石灰石10と排ガスG1に含まれるSOとが反応することで石膏24(CaCO・2HO)が副産物として生成される。SOが除去された排ガスG2は、吸収塔4の頂部から脱硫排ガス管25を介して外部に排出される。
SO+1/2O+CaCO+2HO→CaCO・2HO+CO (1)
【0036】
また、吸収塔4の底部に貯留された吸収液6の一部は、吸収液循環ポンプ14により圧送されつつ吸収塔4の外部の吸収液ヘッダ16から分岐した抜出管20を経て脱水器22に送られる。脱水器22は、例えば、ベルトフィルタで構成され、当該ベルトフィルタで搬送される過程で吸収液6を脱水処理し、生成された石膏24が系外に排出される。
尚、脱水器22の脱水処理で生じたろ過液は、水12として吸収塔4の底部に供給されることで再利用される。
【0037】
また吸収塔4の底部には、酸化用空気26が供給される。これにより、吸収液6には酸化用空気26が含まれることでSO2排ガスから吸収液6中に移行し生成した亜硫酸基から硫酸基への酸化が促進され、この結果として排ガス中のSOの除去効率も向上する。
【0038】
尚、集塵装置2と吸収塔4との間を接続する排気ダクト3bには、吸収塔4に取り込まれる排ガスG1のSO濃度(入口側SO濃度)を検出するための入口側SO濃度センサ28が設置されている。また脱硫排ガス出口ダクト25には、吸収塔4から排出される排ガスG2のSO濃度(出口側SO濃度)を検出するための出口側SO濃度センサ30が設置されている。また吸収液ヘッダ16には吸収塔4内における吸収液6の石灰石濃度を検出するための石灰石濃度センサ32や、pH値を検出するためのpHセンサ34が設置されている。
【0039】
これら各センサの検出値は、脱硫装置1のコントロールユニット(不図示)に入力されることにより、脱硫装置1の動作制御に利用される。具体的には、各センサの検出値が所定の範囲になるように石灰石フィーダ8や吸収液循環ポンプ14の動作、酸化用空気26の供給が調整されることで、所望の脱硫性能が発揮されるように脱硫装置1の制御がなされる。
【0040】
このような構成を有する脱硫装置1が設置されたプラント設備には、脱硫装置1を監視するためのローカル監視システム200が備えられている。ローカル監視システム200は、監視対象となる脱硫装置1と同じ現場(プラント設備の敷地内)に設置されており、ネットワーク300を介して、地理的に離れた遠隔支援システム400と通信可能に構成される。
【0041】
尚、図1に示されるように、遠隔支援システム400は、ネットワーク300を介して複数のプラント設備にそれぞれ設置された複数のローカル監視システム200と通信可能に構成される。以下の説明では、主に特定の一つのローカル監視システム200について言及するが、特段の記載がない限りにおいて、他のローカル監視システム200についても同様である。
【0042】
図2図1のローカル監視システム200、ネットワーク300及び遠隔支援システム400の構成レイアウトの一例を示す模式図である。
【0043】
ローカル監視システム200は、脱硫装置1に関する運転データを収集するための監視用サーバ202と、ローカル監視システム200内で取り扱われる各種情報をネットワーク300を介して遠隔支援システム400と通信するためのローカルサーバ204と、ローカルサーバ204にアクセス可能なクライアント端末206と、を備える。
【0044】
監視用サーバ202では、脱硫装置1の設置現場において所定の計器類によって脱硫装置1に関する運転データが収集される。運転データには、例えば、図1に示される各センサの検出値(具体的には、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度、pHセンサ34で検出される吸収液6のpH値など)や、石灰石フィーダ8、吸収液循環ポンプ14及び酸化用空気26の供給装置(不図示)への制御信号が含まれる。監視用サーバ202で収集されたこれらの運転データは、ローカルネットワークを介して、ローカルサーバ204に送られる。
【0045】
ローカルサーバ204で監視用サーバ202から受信した運転データは、リアルタイムデータとして、ネットワーク300を介して遠隔支援システム400に送信される。ネットワーク300は例えば専用回線(Virtual Private Network:VPN)を通じ、ローカルサーバ204はVPNルータ208を介してネットワーク300に接続されている。
【0046】
尚、ローカルサーバ204は、監視用サーバ202から取得した運転データをヒストリカルデータとして所定周期で所定期間保存してもよい。この場合、ローカルサーバ204はヒストリカルデータを所定周期のデータに加工したものを、リアルタイムデータとして遠隔支援システム400に送信してもよい。
【0047】
遠隔支援システム400は、ローカル監視システム200から地理的に離れた位置、例えば脱硫装置1を含むプラント設備の製造元であるプラントメーカの敷地内に設置されており、VPNルータ402を介してネットワーク300に接続されることで、ローカル監視システム200と通信可能に構成される。遠隔支援システム400は、遠隔支援システム400内で取り扱われる各種情報をネットワーク300を介してローカル監視システム200と通信可能な中央サーバ404と、中央サーバ404にアクセス可能な支援用端末406と、を備える。中央サーバ404及び支援用端末406は、ローカルネットワークを介して互いに通信可能に構成されている。
【0048】
遠隔支援システム400では、ローカル監視システム200からネットワーク300を介して受信した運転データに基づいて、脱硫装置1の遠隔支援が行われる。尚、中央サーバ404で受信した運転データは、遠隔支援システム400内のデータ保管用サーバ(不図示)に保管されてもよい。
【0049】
中央サーバ404に送られた運転データは、支援用端末406から適宜アクセス可能であり、支援用端末406を操作するオペレータ(例えば、遠隔支援システム400に駐在しているプラントメーカ保守専門家)が常時確認できるようになっている。
【0050】
オペレータは支援用端末406を用いて中央サーバ404に送られた運転データに基づいた解析を実施し、必要に応じて、解析結果に基づいて作成された支援情報をプラント設備のユーザ(ローカル監視システム200側)に送信する。
【0051】
ローカル監視システム200では、ネットワーク300を介して遠隔支援システム400から送信された支援情報が受信される。ローカル監視システム200で受信した支援情報は、ローカルサーバ204を介してクライアント端末206上で、ユーザが適宜確認可能となっている。
【0052】
続いて図3図2の遠隔支援システム400における中央サーバ404の内部構成を機能的に示すブロック図であり、図4図3の中央サーバ404で実施される運転支援方法を工程毎に示すフローチャートである。
【0053】
尚、図3に示される中央サーバ404の内部構成の少なくとも一部は、遠隔支援システム400を構成する支援用端末406に分配されていてもよいし、クラウドサーバ内に構築されていてもよい。
【0054】
遠隔支援システム400の中央サーバ404は、脱硫装置1の運転データを取得するための運転データの入力・取得部410と、解析性能Pを算出するための解析性能算出部412と、解析性能P取得時の実測性能Pmを取得するための実測性能取得部414と、解析性能Pに対する実測性能Pmの性能比を算出することで脱硫装置の健全性を評価するための健全性評価部416と、健全性評価部416の評価結果に基づいて支援情報を作成するための支援情報作成部418と、を備える。
【0055】
まず運転データの入力・取得部410は、脱硫装置1の運転データを取得する(ステップS1)。このような運転データの入力・取得部410における運転データの取得は、上述したように、ネットワーク300を介して、ローカル監視システム200から送信されるリアルタイムデータを受信することで行われる。
【0056】
運転データの入力・取得部410で取得される運転データには、少なくとも吸収剤の量が含まれる。ここで吸収剤の量とは、例えば、石灰石フィーダ8からの石灰石10の供給量であり、脱硫装置1における石灰石フィーダ8への制御信号を運転データに含めることで取得可能である。この場合、運転データに含まれる石灰石10の供給量は、吸収液6に接触させられる排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を中和するのに必要十分な量であってもよいし、排ガスG1中のSO(二酸化硫黄)を十分に中和するために必要十分量に対して加算されるマージン量を含んだ量であってもよい。
【0057】
また運転データに含まれる吸収剤の量は、吸収液6中に残存する吸収剤(石灰石10)の量であってもよい。この場合、吸収剤の残存量は、例えば、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度として取得可能である。
【0058】
尚、運転データの入力・取得部410で取得される運転データには、上述したように、各センサの検出値(具体的には、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度、石灰石濃度センサ32で検出される吸収液6の石灰石濃度、pHセンサ34で検出される吸収液6のpH値)や、石灰石フィーダ8、吸収液循環ポンプ14及び酸化用空気26の供給装置(不図示)への制御信号を広く含めることができる。
【0059】
続いて解析性能算出部412は、運転データの入力・取得部410で取得された運転データに基づいて、少なくとも一つの解析性能Pを算出する(ステップS2)。ここで解析性能Pは、脱硫装置1の脱硫性能に関するパラメータとして演算的に算出され、当該解析性能式は、運転データに基づく、吸収剤残留濃度、SO吸収量、pH、共存成分液性状等の化学反応に関する構成要素式や、排ガス量と吸収液量の比率L/G、吸収液反応有効高さ、装置構造等の物理的な気液接触に関する構成要素式から成り、例えば上述の吸収剤の量に対して脱硫性能に影響を与えうる要素を総合的に勘案して設定される。
【0060】
ステップS2で解析性能Pを求めるために用いられる演算式は、運転データの入力・取得部410で取得した運転データに含まれる各パラメータを変数とする関数によって規定され、実運転データに基づいたパラメータ評価が可能である。このような関数は、解析性能Pと各変数との相関を、理論的、実験的又はシミュレーション的手法によって評価することによって規定される。このような演算式は、遠隔支援システム400の記憶装置(不図示)に予め記憶しておいてもよいし、遠隔支援システム400のオペレータが適宜入力するようにしてもよい。
【0061】
解析性能Pは脱硫性能に関する任意のパラメータであってよいが、例えば、脱硫率を採用できる。解析性能Pとして脱硫率を採用すると、脱硫装置1の健全度を包括的、簡便且つ正確に評価できるため好ましい。尚、このような解析性能は、脱硫装置1の構造パラメータ又は吸収剤(石灰石10など)の化学反応パラメータの少なくとも一方に基づいて算出されるとよい。これにより、脱硫性能を構造的又は化学反応的な側面から解析性能を精度よく算定できる。
【0062】
続いて実測性能取得部414は、解析性能算出部412で算出された解析性能Pに対応する実測性能Pmを取得する(ステップS3)。例えば、上述のように解析性能Pが脱硫率に対応する場合、実測性能取得部414では、入口側SO濃度センサ28で検出される入口側SO濃度、出口側SO濃度センサ30で検出される出口側SO濃度を用いて、脱硫率の実測性能Pmが取得される。
【0063】
続いて健全性評価部416は、解析性能算出部412で算出された解析性能Pと、実測性能取得部414で取得された実測性能Pmとを対比することにより、脱硫装置1の健全性を評価する(ステップS4)。このような健全性評価は、例えば、解析性能Pと実測性能Pmとの比率である性能比Rを算出し、性能比Rが予め設定された基準値R0によって規定される許容範囲にあるか否かにより、脱硫装置1に性能低下が生じているか否かを判断することにより行われてもよい。このように算出された性能比Rは、脱硫装置1の運用状態に関わらず(例えばユーザ側で石灰石10の供給量を過大に設定することで、見かけ上の脱硫率が閾値を満足しているように振舞っている場合であっても)、脱硫性能の健全性を絶対的に評価可能な指標となる。
【0064】
この場合、性能比Rの評価基準となる基準値R0は、評価対象となる脱硫装置1の仕様に応じて設定されるとよい。遠隔支援システム400は、図1に示されるようにネットワーク300を介して、異なる複数の脱硫装置1と接続されている。これらの各脱硫装置1は、それぞれ固有の特性(くせ)を少なからず有する。このような固有の特性は、予めデータベースに格納された各装置に対応する基準値のなかから、評価対象となる脱硫装置1に対応する基準値R0を選択することにより、性能評価に反映するとよい。
【0065】
尚、このような各脱硫装置1の固有な特性(くせ)としては、初期特性だけでなく、経時的変化(灰汚れ、炭種変更、ポンプ摩耗など)により性能評価結果が変化することも含まれてもよい。
【0066】
脱硫装置1の健全性が理想的な状態では、解析性能Pと実測性能Pmとは互いに等しくなるため、性能比Rは「1」となる。一方、脱硫装置1の健全性が理想的な状態からずれている場合には、解析性能Pと実測性能Pmとの間には少なからず差が生じるため、性能比Rは「1」からずれた値となる。基準値R0は、性能比Rが正常値「1」からどの程度ずれた場合に、健全性が損なわれたと判定すべきかを判断するための閾値として設定される。例えば、正常値「1」からマイナス20%の誤差まで許容するように基準値R0を設定した場合、性能比Rが0.8未満の場合には運転条件に基づく真の性能が明らかに低下し健全でない状態にあると判定される。
【0067】
尚、健全性評価に用いられる性能比Rは、解析性能Pの対数値と実測性能Pmの対数値との比率であってもよい。高い脱硫性能を有する脱硫装置1(すなわち、入口と出口におけるSO濃度差が大きい脱硫装置)では、性能比Rとして線形比を用いるとピーキーな特性になるため、このように対数比を用いることで高い感度で的確な診断が可能となる。
【0068】
続いて脱硫装置1の健全性が許容範囲内において、少なくとも1つの運転条件候補が選定される(ステップS5)。ここで運転条件候補とは、ステップS4で評価された脱硫装置1の健全性を良好な状態で維持可能な範囲で選択し得る運転条件を意味する。このような運転条件候補は、現時点の運転条件が含まれていてもよく、他に取りうる運転条件が存在しない場合には、現時点の運転条件のみであってもよい。一方、他に取りうる運転条件がある場合には、その候補数は任意でよく、単数又は複数を問わない。
【0069】
以下の本実施形態では、運転条件候補の一例として、脱硫装置1のユーティリティ動力費に影響が大きな吸収液循環ポンプ14の運転台数が異なる3つの運転条件候補1−3が選定される場合を例に説明する。図5は吸収液循環ポンプ14の運転台数に伴う吸収液6の循環量の変化を示すグラフである。吸収液循環ポンプ14は、その運転台数が変化することによって脱硫装置1のユーティリティ動力費への影響が大きいため、運転台数の異なる運転条件候補を選定することで、脱硫装置1のユーティリティ動力費を最小化可能な経済的運用を実現できる。
【0070】
尚、吸収液循環ポンプ14が可変容量式である場合には、吸収液循環ポンプ14の容量が異なる運転条件候補を選定してもよい。また吸収液循環ポンプ14がインバータによる回転数制御や可動翼制御によって吸収液6の流量制御を行う場合には、回転数制御量や可動翼の制御量が異なる運転条件候補を選定してもよい。
【0071】
尚、各運転条件候補において健全性が良好な状態に維持可能であるか否かは、例えば、ステップS2で算出された解析性能及びステップS3で設定される基準値が、各運転条件においてどのように変化するかを推定することによって判断される。
【0072】
また運転条件候補を選定する際には、脱硫装置1の脱硫反応において副産物として生成される石膏24の品質が一定以上に確保できることを条件にしてもよい。脱硫装置1で生成される石膏24のような副産物は、第三者に売却することでユーザの収入要素となり得る。但し、これらを第三者に売却をするためには、第三者側が望む一定以上の品質が要求される。そのため、運転条件候補は、脱硫装置1の健全性が良好な状態に維持できることだけでなく、副産物の品質が十分に確保できることも条件として加えてもよい。特に、運転条件候補を選定する際に、吸収液6における炭酸カルシウム濃度を高く変更することで健全性を維持することも考えられるが、この場合、炭酸カルシウム濃度を過度に高くすることで石膏中の炭酸カルシウムが増加して石膏純度が低下したり、微粒子が増加する事により石膏含水率が増加し石膏の引き取り業者の引き取り品質を下回る可能性があることに留意すべきである。
【0073】
続いてステップS5で設定された各運転条件候補について収支予測が算出される(ステップS6)。収支予測は、各運転条件候補に従って脱硫装置1を運転したときに予測される収支であり、脱硫装置1の運転に関する支出と、脱硫装置1の運転時に生成される副産物の売却による収入とを考慮することで、トータル運転費として算出される。
【0074】
支出は、脱硫装置1を各運転条件候補に従って運転したときに必要となるコスト項目からなり、例えばユーティリティ動力費、薬剤費及び環境賦課金が含まれる。これらのコスト項目は、それぞれに対応する換算レートに基づいて算出される。例えば、ユーティリティ動力比、薬剤費及び環境賦課金といったコスト項目は、電力レート、燃料・原料レート及び環境賦課金レートに基づいてそれぞれ算出される。
【0075】
一方、収入は、脱硫装置1の運転時に生成される副産物の売却による収入項目からなり、例えば、石膏24やFLYASHの売却費が含まれる。これらの売却費は売却物に対応する売却レートに基づいて算出される。例えば、石膏やFLYASHの売却費は、それぞれの売却レートに基づいて算出される。
【0076】
尚、コスト項目や売却費の算出に用いられる各レートは、予めデータベースに格納された情報を用いてもよいし、オペレータが適宜入力した値を用いてもよいし、例えばネットワークを介して外部から取得した情報を用いてもよい。このようなレートは、所定のタイミングで更新されることが好ましい。
【0077】
続いて支援情報作成部418は、ステップS5で選定された運転条件候補、及び、ステップS6で算出された収支予測を含む支援情報を作成し(ステップS7)、当該支援情報を支援用端末406に表示する(ステップS8)。ここで図6は、図4のステップS7で作成される支援情報の一例である。この例では、ステップS5で選定された運転条件候補1−3が示されており、各運転条件候補に対応する収支予測として、「ユーティリティ動力(支出)」、「インカム(収入)」及び「トータル運転費(総収支)」が示されている。
【0078】
また支援情報には、上述の収支予測に加えて、運転条件候補から最適な運転条件を選定するための補助情報が含まれてもよい。図7は、図4のステップS7で作成される支援情報に含まれる補助情報の一例である。図7では、補助情報1として、脱硫処理の対象となる排ガスG1の状態を示す各パラメータが示されており、具体的には、脱硫装置1の上流側にあるボイラ負荷、排ガスG1の流量、脱硫装置1の入口SO濃度、出口SO濃度、入口ガス温度、出口ガス温度、入口ガス圧力の瞬時値が示されている。また補助情報2として、脱硫装置1の運転状態を示す各パラメータが示されており、具体的には、吸収塔4における吸収液6のレベル、吸収液循環ポンプ14の稼働台数、吸収液6のpH値及び液比重、酸化用空気26の流量について、現在指示値がそれぞれ示されている。また補助情報3として、ユーティリティ動力費やインカムを算出する根拠となる各レートが示されており、具体的には、環境賦課金レート、電力レート、燃料レート、原料レート、石膏及びFLYASHの売却レートが示されている。
【0079】
このような支援情報は、遠隔支援システム400の支援用端末406上に表示されることにより、支援用端末406のオペレータにより認識される。オペレータは、支援用端末406上に表示された支援情報を参照することにより、脱硫装置1の現状を把握するとともに、運転条件候補から、ユーザにとって適切な運転条件を選択する(ステップS9)。
【0080】
ステップS9における運転条件の選択基準は、支援情報に含まれる収支情報及び各パラメータを総合的に考慮することで設定される。トータル運転費を低く抑えることを重視する場合、図6の例では、トータル運転費が最も低い運転条件候補3が選択される。またユーティリティ動力費を低く抑えることを重視する場合には、ユーティリティ動力費が最も低い運転条件候補3が選択される。またインカムを多く確保することを重視する場合には、インカムが最も大きい運転条件候補1が選択される。
【0081】
尚、発電プラントのように外部への売電を主事業とする体系では、売電量を最大化することが優先される。また脱硫装置1の副産物である石膏24の売却価格は、売電価格に比べて低額である。これらの事情を鑑みた場合、ユーティリティ動力費(支出)が最小化される運転条件候補を選択することで、ユーザ側の事業利益を最大化するような運転条件を選定することができる。
【0082】
また運転条件候補の選定では、支援情報に含まれる補助情報を考慮することで、収支情報に限らない様々な要因を加味してユーザに適した運転条件を選択してもよい。これにより、単純な収支だけでなく、その背景にあるボイラや脱硫装置1の運転状況、あるいは、環境賦課金レートや副産物の売却レートのような外部要因を考慮した総合的な判断を行うことができる。
【0083】
特にインカムの要素である石膏24の売却は、バッチ的に行われることが多いため、現時点における売却レートと売却時の実際レートとの間に少なからずギャップがあることを考慮してもよい。
【0084】
またステップS9における運転条件の選択基準は、周辺環境に応じて可変に設定されてもよい。例えば、環境賦課金レートが高い場合には、健全性を優先した運転条件の選定基準を採用し、環境賦課金レートが安い場合には健全性よりもトータル運転費を優先したコスト重視の選定基準を採用してもよい。これにより、周辺環境の変化に応じて、脱硫装置1の健全性を確保しつつ、トータルで経済的有利性を得られるような運転条件の選定が可能となり、ユーザの収益向上に効果的である。
【0085】
尚、ステップS9における運転条件の選定は、支援用端末406のオペレータの人為的判断によって行われてもよいし、中央サーバ404又は支援用端末406によって自動的に行われてもよい。
【0086】
続いて支援用端末406で選択された運転条件は、ネットワーク300を介してローカル監視システム200に送信され、クライアント端末206に表示される(ステップS10)。これにより、クライアント端末206では、遠隔支援システム400のオペレータによって選択された運転条件が表示される。ユーザは、クライアント端末206上に表示された運転条件を認識し、当該運転条件に従った運転を実施することで、経済的な脱硫装置1の運用が可能となる。
【0087】
尚、本実施形態では、ステップS7で作成した支援情報を遠隔支援システム400の支援用端末406側に表示することでオペレータが運転条件の選択を行う場合について説明したが、ステップS7で作成した支援情報をクライアント端末206に直接表示し、運転条件の選択権をユーザ側に与えるようにしてもよい。
【0088】
以上説明したように上述の実施形態によれば、遠隔支援システム400側において脱硫装置1の健全性を監視するとともにユーザにとって適切な運転条件を選定することで、ユーザ側のプラント運用を遠隔的に支援できる。このような運転条件の選定は、脱硫装置1の健全性を確保可能な範囲内において、ユーザ側のニーズに応じて行われ、脱硫装置1の燃料種の変更などがあった場合においても、周辺環境を考慮してユーザの収益性を最大化するような経済的運用を効果的に支援できる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の少なくとも一実施形態は、吸収剤を用いて排ガス中のSOを除去する脱硫装置の運転支援システム及び運転支援方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 脱硫装置
2 集塵装置
3a,3b 排気通路
4 吸収塔
6 吸収液
8 石灰石フィーダ
10 石灰石
12 水
14 吸収液循環ポンプ
16 吸収液ヘッダ
18 ノズル
20 抜出管
22 脱水器
24 石膏
25 脱硫排ガス管
26 酸化用空気
100 運転支援システム
200 ローカル監視システム
202 監視用サーバ
204 ローカルサーバ
206 クライアント端末
300 ネットワーク
400 遠隔支援システム
404 中央サーバ
406 支援用端末
410 運転データの入力・取得部
412 解析性能算出部
414 実測性能取得部
416 健全性評価部
418 支援情報作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7