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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-158052(P2019-158052A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/12 20060101AFI20190823BHJP
   F16D 55/40 20060101ALI20190823BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20190823BHJP
   F16D 65/853 20060101ALI20190823BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20190823BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20190823BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20190823BHJP
【FI】
   F16D25/12 C
   F16D55/40 F
   F16D65/18
   F16D65/853
   F16H57/04 J
   F16D121:04
   F16D125:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-47473(P2018-47473)
(22)【出願日】2018年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】岩下 典生
(72)【発明者】
【氏名】石坂 友隆
(72)【発明者】
【氏名】山川 將太
(72)【発明者】
【氏名】溝部 龍利
(72)【発明者】
【氏名】佐古 香
(72)【発明者】
【氏名】景山 慶太郎
【テーマコード(参考)】
3J057
3J058
3J063
【Fターム(参考)】
3J057AA03
3J057BB04
3J057CA06
3J057DA06
3J057EE05
3J057GA17
3J057HH01
3J057JJ01
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA59
3J058AA70
3J058AA73
3J058AA77
3J058AA83
3J058AA87
3J058BA38
3J058CC03
3J058CC35
3J058CD34
3J058DE02
3J058FA29
3J063AA01
3J063AB12
3J063AB53
3J063AC04
3J063BA11
3J063BA15
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD47
3J063XD56
3J063XD62
3J063XD64
3J063XD75
3J063XE15
3J063XE18
3J063XH03
3J063XH42
(57)【要約】
【課題】ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された摩擦締結要素を備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却する。
【解決手段】ハブ部材20とドラム部材との間に複数の摩擦板50が配置された摩擦締結要素BR2を備えた自動変速機は、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路を備える。潤滑用供給油路は、ハブ部材20に設けられると共に軸方向油路133と軸方向油路133から径方向外側に延びる供給口134とを備え、供給口134は、軸方向油路133から径方向外側に向かうにつれて摩擦板50の回転方向下流側に傾斜して設けられる。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ部材と、ドラム部材と、前記ハブ部材と前記ドラム部材との間に配置される複数の摩擦板と、前記複数の摩擦板を締結するピストンとを有する摩擦締結要素を備えた自動変速機であって、
前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路を備え、
前記潤滑用供給油路は、前記ハブ部材に設けられると共に軸方向に延びる軸方向油路と前記軸方向油路から径方向外側に延びて前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給する供給口とを備え、
前記供給口は、前記軸方向油路から径方向外側に向かうにつれて前記摩擦板の回転方向下流側に傾斜して設けられている、
ことを特徴する自動変速機。
【請求項2】
前記摩擦締結要素は、前記ハブ部材が変速機ケースに結合されると共に前記ドラム部材が所定の回転部材に結合されるブレーキである、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記ハブ部材は、前記摩擦板がスプライン係合されるスプライン部を備えた円筒部を有すると共に鉄系材料から形成される第1ハブ部材と、前記第1ハブ部材に隣接して配置されると共に前記潤滑用供給油路を備えた潤滑用供給部を有し、且つアルミニウム系材料から形成される第2ハブ部材とを備え、
前記第1ハブ部材の円筒部に、前記第2ハブ部材の潤滑用供給部に対応して周方向に切り欠かれた潤滑用切欠部が形成され、
前記潤滑用供給部は、前記潤滑用切欠部を通じて前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給する、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記変速機ケースの下方に配設されるバルブボディを備え、
前記第2ハブ部材は、前記変速機ケースに嵌合されると共に前記潤滑用供給油路が前記バルブボディに接続されるように形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載の自動変速機。
【請求項5】
前記自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、
前記摩擦締結要素は、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキである、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機に関し、車両用の自動変速機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機として、エンジンなどの駆動源に連結されたトルクコンバータなどの流体伝動装置と、流体伝動装置に連結されると共に複数のプラネタリギヤセット(遊星歯車機構)及びクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素を備えた変速機構とを有し、油圧制御によって複数の摩擦締結要素を選択的に締結して減速比の異なる複数の変速段を達成するようにしたものが一般に知られている。
【0003】
近年、自動変速機の多段化や軽量化要求等に応じて流体伝動装置を廃止する傾向がある。この場合、発進時に1速の変速段で締結される少なくとも1つの摩擦締結要素をスリップ制御することによりエンジンストールを回避しながら円滑な発進を実現することが考えられる。
【0004】
発進時に1速の変速段で締結される摩擦締結要素をスリップ制御する場合、油圧室が回転するクラッチに比べて油圧室が回転しないブレーキの方が締結時の制御性が良いことから、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキをスリップ制御することが考えられる。
【0005】
このように構成された自動変速機では、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキは、スリップ制御の実施頻度が多くなることから、所要の耐久性を維持するためにスリップ制御による摩擦板の発熱を効果的に抑制する必要がある。
【0006】
摩擦板の発熱を抑制するために、摩擦板に供給する潤滑用の作動油の量を多くして冷却性能を高めることが考えられるが、変速機ケースの内周面と変速機ケース内に収納された所定の回転部材の外周面との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキでは、変速機ケースの内周面付近に潤滑用の作動油が滞留して摩擦板間に引き摺り抵抗が生じて回転抵抗を増大させるおそれがある。
【0007】
これに対し、例えば特許文献1には、発進時にスリップ制御される1速の変速段で締結されるブレーキにおいて、変速機ケースに結合されたハブ部材の外周面と所定の回転部材に結合されたドラム部材の内周面との間に複数の摩擦板を配置するようにしたものが開示されている。
【0008】
図21は、従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。図21に示すように、このブレーキ200は、変速機ケース201に結合されたハブ部材202と、所定の回転部材203に結合されたドラム部材204と、ハブ部材202とドラム部材204との間に配置された複数の摩擦板205と、複数の摩擦板205を締結するピストン206とを有している。
【0009】
ブレーキ200では、潤滑用供給油路207は、矢印208で示すように、変速機ケース201から変速機ケース201に結合された連結部材209内を通じて径方向内側に延び、ハブ部材202の外周面に形成されたスプライン部210を通じて軸方向一方側から軸方向他方側に延び、複数の摩擦板205に潤滑用の作動油を供給するようになっている。
【0010】
潤滑用の作動油は、ドラム部材204にスプライン係合された摩擦板205の遠心力を受けて、矢印211で示すように、径方向外側に移動して摩擦板205間に供給され、スリップ制御による摩擦板205の発熱を冷却するようになっている。そして、ドラム部材204の内周面に移動した潤滑用の作動油は、ドラム部材204の回転によって、矢印212で示すように軸方向外側に移動して滞留することを抑制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2016−90048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記特許文献1に記載されるブレーキでは、図21に示すように、潤滑用の作動油はハブ部材202の外周面に形成されたスプライン部210を通じて軸方向一方側から軸方向他方側に移動されることから、摩擦板205に達する前に、矢印213で示すように径方向外側に流出して摩擦板205の冷却効率の低下を引き起こし得る。
【0013】
これに対し、ハブ部材内に、潤滑用供給油路を軸方向に延びるように形成すると共に摩擦板が配置される部分及び連結部材が配置される部分にそれぞれ供給口及び導入口を設けることで、潤滑用の作動油を摩擦板に効率良く供給して摩擦板の冷却効率を向上させることができる。
【0014】
このように構成された発進時にスリップ制御される1速の変速段で締結されるブレーキにおいて、変速機ケースに結合されたハブ部材の外周面と所定の回転部材に結合されたドラム部材の内周面との間に配置された複数の摩擦板の冷却性能をさらに向上させる場合、潤滑用の作動油の供給量を多くすることが考えられるが、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗が大きくなるおそれがある。
【0015】
ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されるクラッチを備えた自動変速機についても同様に、ハブ部材の外周面とドラム部材の内周面との間に配置された複数の摩擦板の冷却性能をさらに向上させるために、潤滑用の作動油の供給量を多くすると、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗が大きくなるおそれがある。
【0016】
そこで、本発明は、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された摩擦締結要素を備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0018】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、ハブ部材と、ドラム部材と、前記ハブ部材と前記ドラム部材との間に配置される複数の摩擦板と、前記複数の摩擦板を締結するピストンとを有する摩擦締結要素を備えた自動変速機であって、前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路を備え、前記潤滑用供給油路は、前記ハブ部材に設けられると共に軸方向に延びる軸方向油路と前記軸方向油路から径方向外側に延びて前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給する供給口とを備え、前記供給口は、前記軸方向油路から径方向外側に向かうにつれて前記摩擦板の回転方向下流側に傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記摩擦締結要素は、前記ハブ部材が変速機ケースに結合されると共に前記ドラム部材が所定の回転部材に結合されるブレーキであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の発明において、前記ハブ部材は、前記摩擦板がスプライン係合されるスプライン部を備えた円筒部を有すると共に鉄系材料から形成される第1ハブ部材と、前記第1ハブ部材に隣接して配置されると共に前記潤滑用供給油路を備えた潤滑用供給部を有し、且つアルミニウム系材料から形成される第2ハブ部材とを備え、前記第1ハブ部材の円筒部に、前記第2ハブ部材の潤滑用供給部に対応して周方向に切り欠かれた潤滑用切欠部が形成され、前記潤滑用供給部は、前記潤滑用切欠部を通じて前記摩擦板に潤滑用の作動油を供給することを特徴とする。
【0021】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の発明において、前記変速機ケースの下方に配設されるバルブボディを備え、前記第2ハブ部材は、前記変速機ケースに嵌合されると共に前記潤滑用供給油路が前記バルブボディに接続されるように形成されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、前記摩擦締結要素は、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本願の請求項1に記載の発明によれば、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された摩擦締結要素を備えた自動変速機は、摩擦板に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路を備える。潤滑用供給油路は、ハブ部材に設けられると共に軸方向油路と軸方向油路から径方向外側に延びる供給口とを備え、供給口は、軸方向油路から径方向外側に向かうにつれて摩擦板の回転方向下流側に傾斜して設けられる。
【0024】
これにより、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された摩擦締結要素を備えた自動変速機において、ハブ部材に設けられた供給口から潤滑用の作動油が摩擦板の回転方向下流側に向けて供給されるので、潤滑用の作動油を摩擦板の回転方向に直交する方向に向けて供給する場合に比して、潤滑油の作動油のせん断抵抗を低減することができ、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却することができる。
【0025】
また、請求項2に記載の発明によれば、摩擦締結要素は、ハブ部材が変速機ケースに結合されると共にドラム部材が所定の回転部材に結合されるブレーキであることにより、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却することができる。
【0026】
また、請求項3に記載の発明によれば、ハブ部材は、摩擦板がスプライン係合されるスプライン部を備えた円筒部を有すると共に鉄系材料から形成される第1ハブ部材と、潤滑用供給油路を備えた潤滑用供給部を有すると共にアルミニウム系材料から形成される第2ハブ部材とを備え、第1ハブ部材の円筒部に潤滑用切欠部が形成され、第2ハブ部材の潤滑用供給部は、潤滑用切欠部を通じて摩擦板に潤滑用の作動油を供給する。
【0027】
これにより、スプライン部を備えた円筒部と潤滑用供給部とを有するハブ部材をアルミニウム系材料で形成する場合に比して、スプライン部の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。また、スプライン部を備えた円筒部と潤滑用供給部とを有するハブ部材を鉄系材料で形成する場合に比して、ハブ部材側から潤滑用の作動油を供給しつつ軽量化を図ることができる。したがって、ハブ部材側から潤滑用の作動油を供給しつつ軽量化を図ると共に径方向にコンパクトに構成することができる。
【0028】
また、請求項4に記載の発明によれば、第2ハブ部材は、変速機ケースに嵌合されると共にバルブボディに接続されるように形成されることにより、潤滑用供給油路を備えた第2ハブ部材が変速機ケースに嵌合されるので、潤滑用供給油路を備えた第2ハブ部材を変速機ケースに固定させることができ、ハブ部材とバルブボディとの接続部において変速機ケースの周方向のガタをなくしてバルブボディからハブ部材の潤滑用供給油路に作動油を容易に供給することができる。
【0029】
また、請求項5に記載の発明によれば、自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、摩擦締結要素は、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキであることにより、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機において、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキをスリップ制御する場合に、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
図2】自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。
図3】自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図である。
図4】自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図である。
図5】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図6】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図7】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図8】ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図である。
図9】ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図である。
図10】ブレーキのハブ部材を示す斜視図である。
図11】第1ハブ部材を示す斜視図である。
図12】第2ハブ部材を示す斜視図である。
図13】ピストンを示す斜視図である。
図14図5におけるY14−Y14線に沿ったハブ部材の断面図である。
図15】付勢ユニットを示す斜視図である。
図16図15のY16−Y16線に沿った付勢ユニットの断面図である。
図17】解放状態にあるブレーキを示す断面図である。
図18】接触直前状態にあるブレーキを示す断面図である。
図19】ゼロクリアランス状態にあるブレーキを示す断面図である。
図20】締結状態にあるブレーキを示す断面図である。
図21】従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。この自動変速機10は、エンジンなどの駆動源にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。自動変速機10は、変速機ケース11内に、駆動源に連結されて駆動源側(図の左側)に配設された入力軸12と、反駆動源側(図の右側)に配設された出力軸13とを有している。自動変速機10は、入力軸12と出力軸13とが同一軸線上に配置されたフロントエンジン・リヤドライブ車用等の縦置き式のものである。
【0033】
入力軸12及び出力軸13の軸心上には、駆動源側から、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3、第4ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4が配設されている。
【0034】
変速機ケース11内において、第1ギヤセットPG1の駆動源側に第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の駆動源側に第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の駆動源側に第3クラッチCL3が配設されている。また、第3クラッチCL3の駆動源側に第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の駆動源側且つ第2ギヤセットPG2の反駆動源側に第2ブレーキBR2が配設されている。
【0035】
第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型である。第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4はそれぞれ、回転要素として、サンギヤS1、S2、S3、S4と、リングギヤR1、R2、R3、R4と、キャリヤC1、C2、C3、C4とを有している。
【0036】
第1ギヤセットPG1は、サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。サンギヤS1は、駆動源側に配置された第1サンギヤS1aと、反駆動源側に配置された第2サンギヤS1bとを有している。第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、同一歯数を有し、キャリヤC1に支持された同一ピニオンに噛合する。これにより、第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、常に同一回転する。
【0037】
自動変速機10では、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とが常時連結され、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1と第2ギヤセットPG2のサンギヤS2とが常時連結され、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とが常時連結され、第3ギヤセットPG3のキャリヤC3と第4ギヤセットPG4のリングギヤR4とが常時連結されている。
【0038】
入力軸12は、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1に第1サンギヤS1a及び第2サンギヤS1bの間を通じて常時連結され、出力軸13は、第4ギヤセットPG4のキャリヤC4に常時連結されている。
【0039】
第1クラッチCL1は、入力軸12及び第1ギヤセットPG1のキャリヤC1と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1及び第2ギヤセットPG2のサンギヤS2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設され、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第2ギヤセットPG2のリングギヤR2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0040】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第1サンギヤS1aとの間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3ギヤセットPG3のリングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0041】
以上の構成により、自動変速機10は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2の締結状態の組み合わせにより、図2に示すように、Dレンジでの1〜8速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
【0042】
自動変速機10では、発進時に1速の変速段で締結される第2ブレーキBR2がスリップ制御され、第2ブレーキBR2が本発明に係る自動変速機の摩擦締結要素に相当する。以下、このブレーキBR2について説明する。
【0043】
図3は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図、図4は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図、図5図6図7はそれぞれ、自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。図3図4図5図6図7はそれぞれ、後述する図8のY3−Y3線、Y4−Y4線、Y5−Y5線、Y6−Y6線、Y7−Y7線に沿った断面に対応する自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面を示している。
【0044】
図3から図7に示すように、ブレーキBR2は、略円筒状に形成された変速機ケース11内に収容され、第3ギヤセットPG3のサンギヤS3に連結されて第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の内外一対の回転部材の一方が一体化された動力伝達部材14の外周側に配置されている。
【0045】
動力伝達部材14は、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とを連結する動力伝達部材15の外周側に配置され、動力伝達部材15は、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とを連結する動力伝達部材16の外周側に配置されている。
【0046】
ブレーキBR2は、変速機ケース11に結合されるハブ部材20と、ハブ部材20の反駆動源側に配置されて第3ギヤセットPG3のリングギヤR3に結合されるドラム部材40と、ハブ部材20とドラム部材40との間に軸方向に並べて配置される複数の摩擦板50と、複数の摩擦板50の反駆動源側に配置されて複数の摩擦板50を締結するピストン60とを有している。
【0047】
ブレーキBR2は、ピストン60を付勢する作動油が供給される油圧室70を有し、油圧室70は、ピストン60を締結方向に付勢する締結用作動油が供給される締結用油圧室71と、ピストン60を挟んで締結用油圧室71の反対側に配置されてピストン60を解放方向に付勢する解放用作動油が供給される解放用油圧室72とを備えている。
【0048】
ブレーキBR2はまた、図6に示すように、締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材80を有し、油路形成部材80は、ピストン60の反駆動源側に配置されてハブ部材20の反駆動源側に結合されている。
【0049】
ブレーキBR2はまた、図3に示すように、ピストン60を付勢する付勢ユニット90を有している。付勢ユニット90は、ピストン60を付勢する付勢部材91を備え、付勢部材91として、ピストン60に締結方向に付勢力を作用させる第1付勢部材及び第2付勢部材としての第1スプリング92及び第2スプリング93を備えている。
【0050】
図8は、ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図、図9は、ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図、図10は、ブレーキのハブ部材を示す斜視図、図11は、第1ハブ部材を示す斜視図、図12は、第2ハブ部材を示す斜視図、図13は、ピストンを示す斜視図、図14は、図5におけるY14−Y14線に沿ったハブ部材の断面図、図15は、付勢ユニットを示す斜視図、図16は、図15のY16−Y16線に沿った付勢ユニットの断面図である。なお、図14では、摩擦板50の固定側摩擦板51も示している。
【0051】
図3から図14に示すように、変速機ケース11に結合されるハブ部材20は、摩擦板50がスプライン係合される第1ハブ部材21と、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する第2ハブ部材31とを備え、第2ハブ部材31は、第1ハブ部材21の駆動源側に隣接して配置されている。
【0052】
第1ハブ部材21は、図3に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部22と、縦壁部22の径方向内側において縦壁部22から反駆動源側に略円筒状に延びる円筒部23とを備えている。
【0053】
第1ハブ部材21は、縦壁部22の外周面にスプラインが形成されたスプライン部24を有し、スプライン部24が変速機ケース11の内周面にスプラインが形成されたスプライン部11aにスプライン係合されて変速機ケース11に結合されている。
【0054】
第1ハブ部材21の円筒部23は、外周面にスプラインが形成されたスプライン部25を周方向に複数、具体的には6つ有し、スプライン部25には摩擦板50を構成する固定側摩擦板51がスプライン係合されている。第1ハブ部材21の円筒部23は、変速機ケース11に結合された内側固定部材を構成する。
【0055】
第1ハブ部材21の円筒部23は、スプライン部25が複数の摩擦板50の解放状態においても複数の摩擦板50にスプライン係合する所定の軸方向長さを有し、スプライン部25を除く部分がスプライン部25より軸方向に短く形成されている。
【0056】
第2ハブ部材31は、図5に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部32と、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給部としての潤滑用ボス部33とを備えている。
【0057】
第2ハブ部材31は、図3に示すように、縦壁部32の外周面が第1ハブ部材21のスプライン部24の駆動源側において変速機ケース11の内周面11bに嵌合されている。第2ハブ部材31は、スナップリング17により駆動源側への抜け止めが図られると共に回り止めピン18を用いて変速機ケース11に固定され、変速機ケース11に結合されている。なお、第2ハブ部材31を変速機ケース11の内周面11bに圧入によって嵌合させて固定し、変速機ケース11に結合させるようにしてもよい。
【0058】
第2ハブ部材31には、図12に示すように、複数の潤滑用ボス部33、具体的には5つの潤滑用ボス部33が設けられている。5つの潤滑用ボス部33は、入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に周方向に異なる位置に配置されている。潤滑用ボス部33はそれぞれ、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路L1を備えている。
【0059】
変速機ケース11の下方には、図4に示すように、ブレーキBR2の油圧室70や摩擦板50などに作動油を供給するバルブボディ5が配設されている。バルブボディ5は、変速機ケース11の下方に取り付けられたオイルパン(不図示)内に収容され、変速機ケース11に固定されている。第2ハブ部材31は、バルブボディ5に接続するためのバルブボディ接続部34を有し、変速機ケース11に形成されたケース開口部11cを通じて潤滑用供給油路L1がバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0060】
第2ハブ部材31はまた、図6に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路L2を備えた締結用ボス部35を備えると共に、図7に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて解放用油圧室72に作動油を供給する解放用供給油路L3を備えた解放用ボス部36とを備えている。
【0061】
図12に示すように、締結用ボス部35及び解放用ボス部36は、潤滑用ボス部33と共に入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に異なる位置に配置され、変速機ケース11の下方側に配置される2つの潤滑用ボス部33の間に配置されている。
【0062】
自動変速機10では、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置され、第2ハブ部材31は、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1がそれぞれバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0063】
第2ハブ部材31はまた、図3に示すように、縦壁部32から反駆動源側にそれぞれ略円筒状に延びる第1円筒部37、第2円筒部38及び第3円筒部39を備えている。第1円筒部37は、第1ハブ部材21の円筒部23より径方向内側に配置されて縦壁部32の径方向中央側から延び、第2円筒部38は、第1円筒部37より径方向内側において縦壁部32から延び、第3円筒部39は、第2円筒部38より径方向内側において縦壁部32から延びている。第1円筒部37は、5つの潤滑用ボス部33と略同一円周上に配置され、変速機ケース11の下方側を除いて潤滑用ボス部33間を連結するように設けられている。
【0064】
第2円筒部38は、第1円筒部37より軸方向に長く形成され、第3円筒部39は、第2円筒部38より軸方向に長く形成されている。第1円筒部37は、後述する付勢ユニット90の第2保持プレート95を受け止めるストッパ部材として機能する。第2円筒部38及び第3円筒部39は、縦壁部32と共に解放用油圧室72のシリンダ72aを構成する。
【0065】
このようにして形成されるハブ部材20では、第1ハブ部材21は、第2ハブ部材31より強度が高い材料から形成されている。具体的には、第1ハブ部材21は、鉄系材料から形成され、第2ハブ部材31は、アルミニウム系材料から形成されている。
【0066】
ブレーキBR2の締結時に摩擦板50から入力される力を受ける第1ハブ部材21が第2ハブ部材31より強度が高い材料から形成されるので、第1ハブ部材21を第2ハブ部材31と同じ材料から形成する場合に比して、スプライン部25の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。
【0067】
特に、第1ハブ部材21は、鉄系材料から形成され、第2ハブ部材31は、アルミニウム系材料から形成されることにより、第1ハブ部材21と第2ハブ部材31とをアルミニウム系材料で形成する場合に比して、スプライン部25の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。また、第1ハブ部材21と第2ハブ部材31とを鉄系材料で形成する場合に比して、軽量化を図ることができる。
【0068】
ドラム部材40は、第1ハブ部材21の円筒部23の外周側に対向配置されて略円筒状に軸方向に延びる円筒部41と、円筒部41の反駆動源側から径方向内側に変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部42とを備えている。
【0069】
ドラム部材40の縦壁部42は、リングギヤR3に結合されている。ドラム部材40の円筒部41は、内周面にスプラインが形成されたスプライン部41aを有し、スプライン部41aには、摩擦板50を構成する回転側摩擦板52がスプライン係合されている。ドラム部材40の縦壁部42は、回転部材としてのリングギヤR3に結合された外側回転部材を構成する。固定側摩擦板51と回転側摩擦板52とは、軸方向に交互に配置されている。
【0070】
ピストン60は、ハブ部材20とドラム部材40との間に、具体的には第1ハブ部材21の円筒部23とドラム部材40の円筒部41との間に配置されて第2ハブ部材31の第3円筒部39の外周側に摺動自在に嵌合されている。ピストン60は、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0071】
ピストン60は、環状に形成され、外周側に設けられて摩擦板50を押圧する押圧部61と、内周側に設けられて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部62と、押圧部61と締結用油圧室形成部62とを連結して径方向に延びる連結部63とを備えている。
【0072】
押圧部61は、摩擦板50の反駆動源側に配置され、締結用油圧室形成部62は、第1ハブ部材21の円筒部23の径方向内側に配置され、連結部63は、押圧部61から締結用油圧室形成部62に連結するように設けられている。締結用油圧室形成部62は、連結部63から駆動源側に突出するように設けられている。
【0073】
油路形成部材80は、図5から図7に示すように、ピストン60の反駆動源側に配置されている。油路形成部材80は、第2ハブ部材31の第3円筒部39の外周側に嵌合されて第2ハブ部材31のボス部33、36、具体的には潤滑用ボス部33及び解放用ボス部36の駆動源側に結合されている。
【0074】
油路形成部材80は、外周側に設けられて第2ハブ部材31のボス部33、36の反駆動源側に結合される結合部81と、内周側に設けられてピストン60の反駆動源側に配置されて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部82と、結合部81と締結用油圧室形成部82とを連結して径方向に延びる連結部83とを備えている。
【0075】
締結用油圧室形成部82は、所定厚さを有して環状に形成され、図3に示すように、第2ハブ部材31の第3円筒部39とピストン60の締結用油圧室形成部62の外周側との間に嵌合されている。締結用油圧室71は、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第3円筒部39とによって構成されている。
【0076】
結合部81は、図5及び図7に示すように、締結用油圧室形成部82より厚さが薄く形成され、締結用油圧室形成部82の反駆動源側と軸方向にオーバーラップするように設けられている。図8及び図9に示すように、結合部81は円弧状に形成されている。油路形成部材80には、周方向に複数の結合部81、本実施形態では3つの結合部81が設けられ、周方向に離間して略等間隔に配置されている。
【0077】
結合部81には、締結部材としての締結ボルト84を挿通するボルト挿通穴81aと締結ボルト84の頭部84aが収容されるボルト収容穴81bとが設けられている。油路形成部材80は、ボルト挿通穴81aを通じて締結ボルト84を第2ハブ部材31のボス部33、36の反駆動源側に設けられたネジ孔33a、36aに螺合させることによりボス部33、36の反駆動源側に結合されている。締結ボルト84として、ネジ部84bの外周面がシール材によって覆われたシール付きボルトが用いられる。
【0078】
油路形成部材80の連結部83は、結合部81と略等しい厚さを有し、図8及び図9に示すように、結合部81の周方向中央側から径方向内側に延びて締結用油圧室形成部82に連結するように設けられている。
【0079】
図9に示すように、変速機ケース11の下方側に配置される結合部81は、周方向両側が2つの締結ボルト84を用いて第2ハブ部材31のボス部33、36に結合され、変速機ケース11の上方側に配置される2つの結合部81はそれぞれ、周方向中央側が1つの締結ボルト84を用いて第2ハブ部材31のボス部33に結合されている。
【0080】
ピストン60の連結部63には、油路形成部材80の結合部81及び連結部83に対応して結合部81及び連結部83と略同一形状に切り欠かれた油路形成部材用切欠部63aが形成されている。油路形成部材80は、ピストン60の径方向範囲内に配置され、油路形成部材80の結合部81及び連結部83がピストン60の連結部63の油路形成部材用切欠部63aに嵌合されてピストン60の連結部63と軸方向にオーバーラップする位置に配置されている。
【0081】
このように、油路形成部材80とピストン60とが軸方向にオーバーラップして配置されることにより、ピストン60が油路形成部材80の反駆動源側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0082】
ピストン60の連結部63にはまた、第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25に対応してスプライン部25と略同一形状に切り欠かれたスプライン部用切欠部63bが形成されている。第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25の反駆動源側は、ピストン60の連結部63のスプライン部用切欠部63bに嵌合され、第1ハブ部材21の円筒部23とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置されている。
【0083】
このように、第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25の反駆動源側がピストン60と軸方向にオーバーラップして配置されるので、ピストン60がスプライン部25の反駆動源側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、円筒部23のスプライン部25の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0084】
ピストン60の締結用油圧室形成部62は、図3に示すように、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82の外周側に嵌合して軸方向に延びる外側円筒部62a、外側円筒部62aの駆動源側から径方向内側に延びる締結用油圧受け部62bと、締結用油圧受け部62bの径方向内側から反駆動源側に延びて第2ハブ部材31の第3円筒部39に嵌合して軸方向に延びる内側円筒部62cとを備えている。
【0085】
自動変速機10では、油圧室70は、第1ハブ部材21の円筒部23及び第2ハブ部材31のボス部33、35、36の径方向内側に配置され、締結用油圧室71及び解放用油圧室72はそれぞれ、第1ハブ部材21の円筒部23及び第2ハブ部材31のボス部33、35、36の径方向内側に配置されている。
【0086】
締結用油圧室71は、前述したように、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第3円筒部39とによって形成されている。ピストン60の内側円筒部62cは、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0087】
解放用油圧室72は、図3に示すように、ピストン60の締結用油圧受け部62bの径方向内側が駆動源側に断面略コ字状に膨出した膨出部62dが、シール部材73、74を介して第2ハブ部材31のシリンダ72a内に摺動自在に嵌合され、ピストン60の膨出部62dと第2ハブ部材31のシリンダ72aとによって形成されている。
【0088】
自動変速機10では、解放用油圧室72は、締結用油圧室71より外径が小さく形成され、解放用油圧室72の外周側に、ピストン60に結合されると共に付勢ユニット90の付勢部材91による付勢力を受ける付勢受け部材100が配置されている。
【0089】
付勢受け部材100は、環状に形成され、図3に示すように、第1ハブ部材21の円筒部23と第2ハブ部材31の第2円筒部38との間で径方向に延びる径方向延設部101と、径方向延設部101の径方向内側から反駆動源側に軸方向に延びる軸方向延設部102とを備えている。
【0090】
付勢受け部材100は、軸方向延設部102の反駆動源側がピストン60の締結用油圧受け部62bにおける膨出部62dより径方向外側に結合されてピストン60に結合されている。付勢受け部材100、具体的には径方向延設部101と油路形成部材80との間に付勢ユニット90が装着されている。
【0091】
図15及び図16に示すように、付勢ユニット90は、軸方向に延びる第1スプリング92及び第2スプリング93と、第1スプリング92及び第2スプリング93の一端部である反駆動側の端部をそれぞれ保持する第1保持プレート94と、第1保持プレート94と軸方向に離間して配置されて第1スプリング92の他端部である駆動源側の端部を保持する第2保持プレート95とを備えている。
【0092】
第1保持プレート94は、環状に形成され、駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92及び第2スプリング93がそれぞれ装着される第1スプリングガイド部94a及び第2スプリングガイド部94bを備えている。第1スプリング92と第2スプリング93とは、径方向にオーバーラップする位置且つ周方向に異なる位置に配置されている。自動変速機10では、6つの第2スプリング93の周方向両側にそれぞれ第1スプリング92が配置されている。
【0093】
第2保持プレート95は、第1保持プレート94と軸方向に略対称に形成されている。第2保持プレート95は、反駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92が装着される第1スプリングガイド部95aを備えている。第2保持プレート95はまた、第2スプリング93の他端部である駆動源側の端部が反第1保持プレート側に突出可能であるように第2スプリング93を挿通する挿通穴95bを備えている。
【0094】
第1スプリング92は、第2スプリング93より付勢力が大きく設定されている。第1スプリング92及び第2スプリング93は、コイルスプリングであり、第1スプリング92は、第2スプリング93よりコイル径が大きく大型のコイルスプリングである。第2スプリング93は、第1スプリング92より自由長さが長く形成され、第2スプリング93の他端部が第2保持プレート95の反第1保持プレート側に突出可能に第1保持プレート94に保持されている。
【0095】
図3に示すように、付勢ユニット90は、第1保持プレート94が油路形成部材80の結合部81の周方向両側における駆動源側に支持されると共に第2保持プレート95が付勢受け部材100の径方向延設部101の反駆動源側に支持され、変速機ケース11に取り付けられている。
【0096】
付勢受け部材100の径方向延設部101は、第2保持プレート95を支持すると共に第2保持プレート95の挿通穴95bに挿通された第2スプリング93の他端部を支持するように第2保持プレート95の外径より小さく第2スプリング93と略等しい径方向寸法を有するように形成されている。
【0097】
第1ハブ部材21の円筒部23の内周面は、第1保持プレート94及び第2保持プレート95より径方向に大きく形成され、円筒部23の内周側に付勢ユニット90が配置されている。付勢ユニット90は、第2ハブ部材31のボス部33、35、36に対応して第1保持プレート94、第2保持プレート95にそれぞれ切欠部94c、95cが形成されている。
【0098】
第2ハブ部材31の第1円筒部37は、付勢受け部材100の径方向延設部101より径方向に大きく形成され、反駆動源側の端面によって付勢部材91による付勢力を受けて第2保持プレート95が駆動源側に移動されるときに第2保持プレート95を受け止めるようになっている。第2ハブ部材31の第1円筒部37は、第2保持プレート96を受け止めるストッパ部材として機能する。
【0099】
第2ハブ部材31の第1円筒部37は、付勢受け部材100に支持された第2保持プレート95が当接したときに、ピストン60は、複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置となるように設定されている。ピストン60の接触直前位置は、複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置とゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置との間に適宜設定される。
【0100】
付勢受け部材100に第2保持プレート95が当接すると、付勢受け部材100は、第2スプリング93のみによって締結方向に付勢力を受けるようになっている。第2スプリング93が自由長さとなったときに、ピストン60はゼロクリアランス位置となるように設定されている。
【0101】
このようにして、付勢ユニット90は、第1スプリング92が付勢受け部材100を介してピストン60に解放位置から接触直前位置まで締結方向に付勢力を作用させ、第2スプリング93が付勢受け部材100を介して解放位置からゼロクリアランス位置まで締結方向に付勢力を作用させるようになっている。
【0102】
そして、ピストン60がゼロクリアランス位置にあるときに締結用油圧室71に締結用油圧を供給すると、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けて、複数の摩擦板50が第1ハブ部材21の縦壁部22に反駆動源側に突出して設けられた保持部26とピストン60との間に挟み込まれて相対回転不能になる締結状態となる締結位置まで移動される。
【0103】
一方、ピストン60が締結位置にあるときに、締結用油圧室71から締結用油圧を排出して解放用油圧室72に解放用油圧を供給すると、ピストン60が解放方向に付勢されて移動され、ピストン60がゼロクリアランス位置に移動される。
【0104】
ピストン60はさらに、第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、接触直前位置に移動される。次いで、ピストン60は、第1スプリング92及び第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、解放位置に移動される。
【0105】
次に、ブレーキBR2に作動油を供給する供給油路について説明する。
ブレーキBR2の締結用油圧室71に締結用作動油を供給する締結用供給油路L2は、第2ハブ部材31及び油路形成部材80に形成されている。ブレーキBR2の解放用油圧室72に解放用作動油を供給する解放用供給油路L3と摩擦板50に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給油路L1とは、第2ハブ部材31に形成されている。締結用供給油路L2及び解放用供給油路L3は、油圧室70に作動油を供給する作動用供給油路を構成する。
【0106】
締結用供給油路L2は、図6に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路111と、締結用ボス部35に設けられて軸方向に延びて径方向油路111と接続される軸方向油路112と、油路形成部材80の結合部81に設けられて軸方向に延びて軸方向油路112と接続される軸方向油路113と、油路形成部材80の結合部81、連結部83及び締結用油圧室形成部82に設けられて径方向に延びて軸方向油路113と接続される径方向油路114と、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82に設けられて軸方向に延びて径方向油路114と接続されると共に締結用油圧室71に開口する軸方向油路115とによって構成されている。
【0107】
第2ハブ部材31は、締結用供給油路L2がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路111は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、締結用供給油路L2を通じて締結用油圧室71に締結用作動油を供給して所定の締結用油圧を供給できるようになっている。
【0108】
油路形成部材80の径方向油路114は、油路形成部材80の結合部81の外周面から径方向内側に延びるように形成され、結合部81の外周面に径方向油路114の開口部を閉塞する閉塞部材85が取り付けられている。
【0109】
解放用供給油路L3は、図7に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びて解放用油圧室72に開口する径方向油路121と、解放用ボス部36に設けられて軸方向に延びて径方向油路121と接続される軸方向油路122とによって構成されている。
【0110】
第2ハブ部材31は、解放用供給油路L3がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路121は、第2ハブ部材310の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、解放用供給油路L3を通じて解放用油圧室72に解放用作動油を供給して所定の解放用油圧を供給できるようになっている。
【0111】
第2ハブ部材31の軸方向油路122は、解放用ボス部36の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、解放用ボス部36の反駆動側の端面に軸方向油路122の開口部を閉塞する閉塞部材として締結ボルト84が取り付けられている。解放用ボス部36の反駆動源側には、軸方向油路122の開口部にネジ孔36aが形成されている。
【0112】
潤滑用供給油路L1は、図4及び図5に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路131と、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて周方向に円弧状に延びて径方向油路131と接続される周方向油路132と、潤滑用ボス部33に設けられて軸方向に延びて周方向油路132と接続される軸方向油路133と、潤滑用ボス部33に設けられて径方向に延びて軸方向油路133と接続されると共に締結用ボス部35の外周面に開口する供給口134とによって構成されている。
【0113】
自動変速機10では、図12に示すように、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1をそれぞれ構成する径方向油路111、121、131が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置されている。潤滑用供給油路L3を構成する周方向油路132は、径方向油路131に接続されると共に反径方向油路121側に円弧状に周方向に沿って延び、径方向油路111の反径方向油路121側まで延びている。
【0114】
5つの潤滑用ボス部33はそれぞれ、周方向油路132に接続されて軸方向に延びる軸方向油路133と、軸方向油路133から径方向外側に潤滑用ボス部33の外周面まで延びて摩擦板50に潤滑用作動油を供給する供給口134とを備えている。供給口134は、軸方向に並んで複数設けられている。
【0115】
第2ハブ部材31は、潤滑用供給油路L1がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路131は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油を供給できるようになっている。
【0116】
ブレーキBR2では、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33の外周面から摩擦板50に潤滑用作動油を供給し、摩擦板50の発熱を冷却するようになっている。摩擦板50に供給した潤滑用作動油は、ドラム部材40の円筒部41の内周面に移動し、ドラム部材40の円筒部41の回転によって軸方向に移動して滞留することが抑制されている。
【0117】
第2ハブ部材31の2つの軸方向油路133は、図4及び図12に示すように、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面に軸方向油路133の開口部を閉塞する閉塞部材29が取り付けられている。
【0118】
第2ハブ部材31の3つの軸方向油路133´は、図5に示すように、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、潤滑用ボス部33の反駆動側の端面に軸方向油路133´の開口部を閉塞する閉塞部材として締結ボルト84が取り付けられている。潤滑用ボス部33の反駆動源側には、軸方向油路133´の開口部にネジ孔33aが形成されている。
【0119】
第1ハブ部材21の円筒部23には、図10に示すように、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33に対応して周方向に切り欠かれた潤滑用切欠部27が形成されている。第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33は、第1ハブ部材21の円筒部23の潤滑用切欠部27に対応して配置され、潤滑用切欠部27を通じて摩擦板50に潤滑用の作動油を供給できるようになっている。
【0120】
図14に示すように、潤滑用ボス部33の供給口134は、軸方向油路133から径方向外側に向かうにつれて摩擦板50の回転方向下流側(矢印50aで示す方向)に傾斜して設けられている。供給口134は、潤滑用ボス部33の中心軸33bを通る第2ハブ部材31の径方向(矢印31aで示す方向)に対し、矢印134aで示すように摩擦板50の回転方向下流側に所定角度θ1で傾斜して設けられている。角度θ1は、0度より大きく90度より小さい角度に設定され、好ましくは30度から45度の間の角度に設定される。
【0121】
これにより、供給口134から潤滑用の作動油が摩擦板50の回転方向下流側に向けて供給されるので、潤滑用の作動油を摩擦板50の回転方向に直交する方向に向けて供給する場合に比して、潤滑油の作動油のせん断抵抗を低減することができ、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制することができる。
【0122】
次に、このようにして構成されたブレーキBR2の作動について説明する。
図17は、解放状態にあるブレーキを示す断面図、図18は、接触直前状態にあるブレーキを示す断面図、図19は、ゼロクリアランス状態にあるブレーキを示す断面図、図20は、締結状態にあるブレーキを示す断面図である。図17から図20は、図3に示すブレーキBR2の要部を拡大して示している。
【0123】
図17では、締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93を圧縮してピストン60が反駆動源側である解放方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置にあるブレーキBR2の解放状態が示されている。
【0124】
ブレーキBR2の締結時には、図17に示す解放状態において解放用油圧室72から解放用油圧が排出され、図18に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93の付勢力を受けて第2保持プレート95が第2ハブ部材31の第1円筒部37に当接するまで駆動源側である締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置になり、ブレーキBR2が接触直前状態となる。
【0125】
図18に示す接触直前状態において第2保持プレート95が第2ハブ部材31の第1円筒部37に当接すると、図19に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第2スプリング93の付勢力を受けて第2スプリング93の自由長さまで締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50を押圧することなく摩擦板50に接した状態若しくはほぼ接した状態であるゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置になり、ブレーキBR2がゼロクリアランス状態となる。
【0126】
そして、図19に示すゼロクリアランス状態において締結用油圧室71に締結用油圧が供給されると、図20に示すように、ピストン60が締結用油圧室71に供給された締結用油圧によって締結方向に付勢されて移動され、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けてピストン60の位置が複数の摩擦板50が相対回転不能になる締結位置になり、ブレーキBR2が締結状態となる。
【0127】
一方、ブレーキBR2の解放時には、図20に示す締結状態において締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給され、ピストン60が解放用油圧室72に供給された解放用油圧によって反駆動源側である解放方向に付勢されて移動され、図19に示すゼロクリアランス状態及び図18に示す接触直前状態を経て、図17に示す解放状態となる。
【0128】
ブレーキBR2では、ピストン60を解放位置から接触直前位置まで第1スプリング92及び第2スプリング93によって応答性良く移動させ、接触直前位置からゼロクリアランス位置まで第2スプリング93によって精度良く移動させることができる。
【0129】
ブレーキBR2は、前述したように、車両の発進時にスリップ制御される。ブレーキBR2の締結時には、締結用油圧室71に締結用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に締結用油圧室71に締結用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結される。一方、ブレーキBR2の解放時には、解放用油圧室72に解放用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結解除される。
【0130】
ブレーキBR2の締結時及び解放時には、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給され、ブレーキBR2がスリップ制御されるときに潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給される。
【0131】
本実施形態では、変速機ケース11に結合されたハブ部材20と所定の回転部材R3に結合されたドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置されたブレーキBR2において、ハブ部材20に潤滑用供給油路L1を構成する軸方向油路133と供給口134とが設けられると共に供給口134が摩擦板50の回転方向下流側に傾斜して設けられている。
【0132】
ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された他のブレーキやクラッチについても同様に、ハブ部材に潤滑用供給油路を構成する軸方向油路と供給口とを設けると共に供給口を摩擦板の回転方向下流側に傾斜して設けるようにすることが可能である。
【0133】
このように、本実施形態に係る自動変速機10では、ハブ部材20とドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置された摩擦締結要素BR2を備えると共に、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路L1を備える。潤滑用供給油路L1は、ハブ部材20に設けられると共に軸方向油路133と軸方向油路133から径方向外側に延びる供給口134とを備え、供給口134は、軸方向油路133から径方向外側に向かうにつれて摩擦板50の回転方向下流側に傾斜して設けられる。
【0134】
これにより、ハブ部材20とドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置された摩擦締結要素BR2を備えた自動変速機10において、ハブ部材20に設けられた供給口134から潤滑用の作動油が摩擦板50の回転方向下流側に向けて供給されるので、潤滑用の作動油を摩擦板50の回転方向に直交する方向に向けて供給する場合に比して、潤滑油の作動油のせん断抵抗を低減することができ、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板50を冷却することができる。
【0135】
また、摩擦締結要素BR2は、ハブ部材20が変速機ケース11に結合されると共にドラム部材40が所定の回転部材R3に結合されるブレーキBR2である。これにより、ハブ部材20とドラム部材40との間に複数の摩擦板50が配置されたブレーキBR2を備えた自動変速機10において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板50を冷却することができる。
【0136】
また、ハブ部材20は、摩擦板50がスプライン係合されるスプライン部25を備えた円筒部23を有すると共に鉄系材料から形成される第1ハブ部材21と、潤滑用供給油路L1を備えた潤滑用供給部33を有すると共にアルミニウム系材料から形成される第2ハブ部材31とを備え、第1ハブ部材21の円筒部23に潤滑用切欠部27が形成され、第2ハブ部材31の潤滑用供給部33は、潤滑用切欠部27を通じて摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する。
【0137】
これにより、スプライン部25を備えた円筒部23と潤滑用供給部33とを有するハブ部材をアルミニウム系材料で形成する場合に比して、スプライン部25の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。また、スプライン部25を備えた円筒部23と潤滑用供給部33とを有するハブ部材を鉄系材料で形成する場合に比して、ハブ部材側から潤滑用の作動油を供給しつつ軽量化を図ることができる。したがって、ハブ部材側から潤滑用の作動油を供給しつつ軽量化を図ると共に径方向にコンパクトに構成することができる。
【0138】
また、第2ハブ部材31は、変速機ケース11に嵌合されると共にバルブボディ5に接続されるように形成される。これにより、潤滑用供給油路L1を備えた第2ハブ部材31が変速機ケース11に嵌合されるので、潤滑用供給油路L1を備えた第2ハブ部材31を変速機ケース11に固定させることができ、ハブ部材20とバルブボディ5との接続部において変速機ケース11の周方向のガタをなくしてバルブボディ5からハブ部材20の潤滑用供給油路L1に作動油を容易に供給することができる。
【0139】
また、自動変速機10は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、摩擦締結要素BR2は、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキBR2である。これにより、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機10において、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキBR2をスリップ制御する場合に、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板50を冷却することができる。
【0140】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上のように、本発明によれば、ハブ部材とドラム部材との間に複数の摩擦板が配置された摩擦締結要素を備えた自動変速機において、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制しつつ摩擦板を冷却することが可能となるから、この種の自動変速機ないしこれを搭載する車両の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0142】
5 バルブボディ
10 自動変速機
11 変速機ケース
20 ハブ部材
21 第1ハブ部材
23 第1ハブ部材の円筒部
25 スプライン部
27 潤滑用切欠部
31 第2ハブ部材
33 潤滑用ボス部
40 ドラム部材
41 ドラム部材の円筒部
50 摩擦板
60 ピストン
133 潤滑用供給油路の軸方向油路
134 潤滑用供給油路の供給口
BR2 第2ブレーキ
L1 潤滑用供給油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
図17
図18
図19
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図21