特開2019-158055(P2019-158055A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019158055-自動変速機 図000003
  • 特開2019158055-自動変速機 図000004
  • 特開2019158055-自動変速機 図000005
  • 特開2019158055-自動変速機 図000006
  • 特開2019158055-自動変速機 図000007
  • 特開2019158055-自動変速機 図000008
  • 特開2019158055-自動変速機 図000009
  • 特開2019158055-自動変速機 図000010
  • 特開2019158055-自動変速機 図000011
  • 特開2019158055-自動変速機 図000012
  • 特開2019158055-自動変速機 図000013
  • 特開2019158055-自動変速機 図000014
  • 特開2019158055-自動変速機 図000015
  • 特開2019158055-自動変速機 図000016
  • 特開2019158055-自動変速機 図000017
  • 特開2019158055-自動変速機 図000018
  • 特開2019158055-自動変速機 図000019
  • 特開2019158055-自動変速機 図000020
  • 特開2019158055-自動変速機 図000021
  • 特開2019158055-自動変速機 図000022
  • 特開2019158055-自動変速機 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-158055(P2019-158055A)
(43)【公開日】2019年9月19日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16D 25/0638 20060101AFI20190823BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20190823BHJP
【FI】
   F16D25/0638
   F16H61/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-47477(P2018-47477)
(22)【出願日】2018年3月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】山川 將太
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】石坂 友隆
【テーマコード(参考)】
3J057
3J552
【Fターム(参考)】
3J057AA03
3J057BB04
3J057CA01
3J057CA03
3J057CA14
3J057DA06
3J057DA13
3J057DA20
3J057GA11
3J057HH01
3J057JJ04
3J552MA02
3J552MA13
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA67
3J552QA42B
3J552RB17
3J552SA03
3J552SA07
3J552SA60
(57)【要約】
【課題】変速機ケースに結合される内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、内側固定部材のスプライン部の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成する。
【解決手段】変速機ケース11に結合される内側固定部材23の径方向内側に締結用油圧室71が配置されたブレーキBR2を備えた自動変速機10において、ピストン60は、押圧部61、締結用油圧室形成部62及び連結部63を備え、内側固定部材23は、周方向に摩擦板50がスプライン係合される複数のスプライン部25を備える。内側固定部材23のスプライン部25の軸方向一方側は、ピストン60の連結部63の内側固定部材用切欠部63bに配置され、内側固定部材23とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機ケースに結合される内側固定部材と、所定の回転部材に結合される外側回転部材と、前記内側固定部材と前記外側回転部材との間に配置される複数の摩擦板と、前記複数の摩擦板を締結するピストンと、前記内側固定部材の径方向内側に配置されて前記ピストンを締結方向に付勢する作動油が供給される締結用油圧室とを有するブレーキを備えた自動変速機であって、
前記ピストンは、前記摩擦板を押圧する押圧部と、前記締結用油圧室を形成する締結用油圧室形成部と、前記押圧部と前記締結用油圧室とを連結して径方向に延びる連結部とを備え、
前記内側固定部材は、周方向に前記摩擦板がスプライン係合される複数のスプライン部を備え、
前記内側固定部材のスプライン部の軸方向一方側は、前記ピストンの連結部に前記内側固定部材のスプライン部に対応して切り欠かれた内側固定部材用切欠部に配置され、
前記内側固定部材と前記ピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置されている、
ことを特徴する自動変速機。
【請求項2】
前記締結用油圧室に締結用の作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材を備え、
前記油路形成部材は、前記内側固定部材の軸方向一方側に結合される結合部と、前記ピストンの軸方向一方側に配置されて前記締結用油圧室を形成する締結用油圧室形成部と、前記結合部と前記締結用油圧室形成部とを連結して径方向に延びる連結部とを備え、
前記油路形成部材の結合部及び連結部は、前記ピストンの連結部に前記油路形成部材の結合部及び連結部に対応して切り欠かれた油路形成部材用切欠部に配置され、
前記油路形成部材と前記ピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【請求項3】
前記内側固定部材を有するハブ部材と、
前記内側固定部材の径方向内側に前記ピストンを挟んで前記締結用油圧室の反対側に配置されて前記ピストンを解放方向に付勢する作動油が供給される解放用油圧室とを備え、
前記ハブ部材に、前記解放用油圧室に解放用の作動油を供給する解放用供給油路が設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動変速機。
【請求項4】
前記自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、
前記ブレーキは、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキである、
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される自動変速機に関し、車両用の自動変速機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動変速機として、エンジンなどの駆動源に連結されたトルクコンバータなどの流体伝動装置と、流体伝動装置に連結されると共に複数のプラネタリギヤセット(遊星歯車機構)及びクラッチやブレーキなどの複数の摩擦締結要素を備えた変速機構とを有し、油圧制御によって複数の摩擦締結要素を選択的に締結して減速比の異なる複数の変速段を達成するようにしたものが一般に知られている。
【0003】
近年、自動変速機の多段化や軽量化要求等に応じて流体伝動装置を廃止する傾向がある。この場合、発進時に1速の変速段で締結される少なくとも1つの摩擦締結要素をスリップ制御することによりエンジンストールを回避しながら円滑な発進を実現することが考えられる。
【0004】
発進時に1速の変速段で締結される摩擦締結要素をスリップ制御する場合、油圧室が回転するクラッチに比べて油圧室が回転しないブレーキの方が締結時の制御性が良いことから、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキをスリップ制御することが考えられる。
【0005】
このように構成された自動変速機において、発進時に1速の変速段で締結されるブレーキについて、発進時における応答性を向上させるために摩擦板を締結するピストンをスプリングによって付勢して締結方向に移動させるものが知られている。
【0006】
例えば特許文献1には、複数の摩擦板を締結するピストンを解放位置から締結方向に所定距離移動した第1位置まで第1スプリングと第2スプリングとによって付勢し、第1位置から複数の摩擦板がゼロクリアランス状態となる第2位置まで第2スプリングのみによって付勢し、第2位置から締結位置まで締結用油圧によって付勢して複数の摩擦板を締結するようにしたブレーキが開示されている。
【0007】
図21は、従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。図21に示すように、このブレーキ200は、変速機ケースに結合された内側固定部材201と所定の回転部材に結合された外側回転部材202との間に配置された複数の摩擦板203と、変速機ケースの一部であるハウジング204の外筒部204a、フランジ部204b及び内筒部204cによって形成されるシリンダ205に嵌合されたピストン206とを有している。
【0008】
ブレーキ200はまた、ピストン206を締結方向に付勢する締結用の作動油が供給される締結用油圧室207と、ピストン206を挟んで締結用油圧室207の反対側に配置されてピストン206を解放方向に付勢する解放用の作動油が供給される解放用油圧室208とを有している。
【0009】
締結用油圧室207内には、ピストン206を締結方向に付勢する第1スプリング209と第2スプリング210とが配置されている。第2スプリング210は、ハウジング204の外筒部204aに形成された溝部204d内に配置され、第1スプリング209は、第2スプリング210の径方向内側に配置されている。
【0010】
そして、ブレーキ200を締結する際には、締結用油圧室207から締結用油圧を排出すると共に解放用油圧室208に解放用油圧を供給してピストン206が第1スプリング209及び第2スプリング210を圧縮した解放位置にある状態から、解放用油圧を排出すると、ピストン206が第1スプリング209と第2スプリング210とによって付勢され、解放位置から締結方向に所定距離移動した第1位置まで移動される。
【0011】
ピストン206が第1位置に達すると、ピストン206が第1スプリング209のみによって付勢され、第1位置から複数の摩擦板203がゼロクリアランス状態となる第2位置まで移動される。ピストン206が第2位置に達した後に、締結用油圧が供給されると、ピストン206が締結用油圧によって付勢され、複数の摩擦板203が締結される締結位置に移動される。
【0012】
一方、ブレーキ200を解放する際には、解放用油圧室208から解放用油圧を排出すると共に締結用油圧室207に締結用油圧を供給してピストン206が締結位置にある状態から、締結用油圧を排出して解放用油圧を供給すると、ピストン206が解放方向に付勢され、ピストン206が第1スプリング209及び第2スプリング210を圧縮した解放位置に移動される。
【0013】
ブレーキ200では、第2スプリング210の付勢力を第1スプリング209の付勢力より大きく設定することで、ピストン206を解放位置から第1位置まで第1スプリング209及び第2スプリング210によって応答性良く移動させ、第1位置から第2位置まで第1スプリング209によって精度良く移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2017−150533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前記特許文献1に記載されるように、変速機ケースに結合される内側固定部材と所定の回転部材に結合される外側回転部材との間に配置される複数の摩擦板を締結するピストンの反摩擦板側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機では、ピストンの反摩擦板側に締結用油圧室が軸方向に並んで配置されることから軸方向寸法が大きな構成とされている。
【0016】
これに対し、内側固定部材と外側回転部材との間に配置される複数の摩擦板を締結するピストンと締結用油圧室とを有するブレーキを備えた自動変速機において、内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室を配置することで、軸方向寸法を短縮して軸方向にコンパクトに構成することができると考えられる。
【0017】
この場合、摩擦板の軸方向一方側に配置されるピストンは、摩擦板を押圧する押圧部が内側固定部材の径方向外側に配置される一方、締結用油圧室の一部を形成して締結用油圧を受ける締結用油圧室形成部が内側固定部材の径方向内側に配置されることから、押圧部と締結用油圧室形成部とを連結する連結部が内側固定部材の軸方向一方側を通じて径方向に延びるように設けられることとなる。
【0018】
このように構成されたブレーキを備えた自動変速機では、限られた車載スペースに搭載するために軸方向にコンパクトに構成することが求められるが、摩擦板がスプライン係合される内側固定部材のスプライン部は、複数の摩擦板の解放状態においても複数の摩擦板にスプライン係合するように所定の軸方向長さを確保する必要がある。
【0019】
そこで、本発明は、変速機ケースに結合される内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、内側固定部材のスプライン部の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記課題を解決するため、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0021】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、変速機ケースに結合される内側固定部材と、所定の回転部材に結合される外側回転部材と、前記内側固定部材と前記外側回転部材との間に配置される複数の摩擦板と、前記複数の摩擦板を締結するピストンと、前記内側固定部材の径方向内側に配置されて前記ピストンを締結方向に付勢する作動油が供給される締結用油圧室とを有するブレーキを備えた自動変速機であって、前記ピストンは、前記摩擦板を押圧する押圧部と、前記締結用油圧室を形成する締結用油圧室形成部と、前記押圧部と前記締結用油圧室とを連結して径方向に延びる連結部とを備え、前記内側固定部材は、周方向に前記摩擦板がスプライン係合される複数のスプライン部を備え、前記内側固定部材のスプライン部の軸方向一方側は、前記ピストンの連結部に前記内側固定部材のスプライン部に対応して切り欠かれた内側固定部材用切欠部に配置され、前記内側固定部材と前記ピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の発明において、前記締結用油圧室に締結用の作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材を備え、前記油路形成部材は、前記内側固定部材の軸方向一方側に結合される結合部と、前記ピストンの軸方向一方側に配置されて前記締結用油圧室を形成する締結用油圧室形成部と、前記結合部と前記締結用油圧室形成部とを連結して径方向に延びる連結部とを備え、前記油路形成部材の結合部及び連結部は、前記ピストンの連結部に前記油路形成部材の結合部及び連結部に対応して切り欠かれた油路形成部材用切欠部に配置され、前記油路形成部材と前記ピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置されていることを特徴とする。
【0023】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記内側固定部材を有するハブ部材と、前記内側固定部材の径方向内側に前記ピストンを挟んで前記締結用油圧室の反対側に配置されて前記ピストンを解放方向に付勢する作動油が供給される解放用油圧室とを備え、前記ハブ部材に、前記解放用油圧室に解放用の作動油を供給する解放用供給油路が設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3の何れか1項に記載の発明において、前記自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、前記ブレーキは、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本願の請求項1に記載の発明によれば、変速機ケースに結合される内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、ピストンは、押圧部、締結用油圧室形成部及び連結部を備え、内側固定部材は、周方向に摩擦板がスプライン係合される複数のスプライン部を備える。内側固定部材のスプライン部の軸方向一方側は、ピストンの連結部の内側固定部材用切欠部に配置され、内側固定部材とピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置される。
【0026】
これにより、変速機ケースに結合される内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、内側固定部材のスプライン部の軸方向一方側がピストンと軸方向にオーバーラップして配置されるので、ピストンが内側固定部材のスプライン部の軸方向一方側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、内側固定部材のスプライン部の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0027】
また、請求項2に記載の発明によれば、締結用油圧室に締結用の作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材は、内側固定部材の軸方向一方側に結合される結合部、ピストンの軸方向一方側に配置される締結用油圧室形成部、及び結合部と締結用油圧室形成部とを連結して径方向に延びる連結部とを備え、油路形成部材の結合部及び連結部は、ピストンの連結部の油路形成部材用切欠部に配置され、油路形成部材とピストンとは、軸方向にオーバーラップして配置される。
【0028】
これにより、締結用油圧室に作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材を内側固定部材の軸方向一方側に結合する場合に、ピストンが油路形成部材の軸方向一方側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0029】
また、請求項3に記載の発明によれば、内側固定部材を有するハブ部材に、解放用油圧室に解放用の作動油を供給する解放用供給油路が形成されることにより、変速機ケースに結合されるハブ部材に解放用油圧室に解放用の作動油を供給する解放用供給油路が形成されるので、バルブボディからハブ部材の解放用供給油路に作動油を容易に供給することができる。
【0030】
また、請求項4に記載の発明によれば、自動変速機は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、前記ブレーキは、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキであることにより、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機において、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキを軸方向にコンパクトに構成することができ、前記効果を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。
図2】自動変速機の摩擦締結要素の締結表である。
図3】自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図である。
図4】自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図である。
図5】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図6】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図7】自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。
図8】ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図である。
図9】ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図である。
図10】ブレーキのハブ部材を示す斜視図である。
図11】第1ハブ部材を示す斜視図である。
図12】第2ハブ部材を示す斜視図である。
図13】ピストンを示す斜視図である。
図14図5におけるY14−Y14線に沿ったハブ部材の断面図である。
図15】付勢ユニットを示す斜視図である。
図16図15のY16−Y16線に沿った付勢ユニットの断面図である。
図17】解放状態にあるブレーキを示す断面図である。
図18】接触直前状態にあるブレーキを示す断面図である。
図19】ゼロクリアランス状態にあるブレーキを示す断面図である。
図20】締結状態にあるブレーキを示す断面図である。
図21】従来の自動変速機のブレーキを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施形態に係る自動変速機の骨子図である。この自動変速機10は、エンジンなどの駆動源にトルクコンバータなどの流体伝動装置を介することなく連結されている。自動変速機10は、変速機ケース11内に、駆動源に連結されて駆動源側(図の左側)に配設された入力軸12と、反駆動源側(図の右側)に配設された出力軸13とを有している。自動変速機10は、入力軸12と出力軸13とが同一軸線上に配置されたフロントエンジン・リヤドライブ車用等の縦置き式のものである。
【0034】
入力軸12及び出力軸13の軸心上には、駆動源側から、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「第1、第2、第3、第4ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4が配設されている。
【0035】
変速機ケース11内において、第1ギヤセットPG1の駆動源側に第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の駆動源側に第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の駆動源側に第3クラッチCL3が配設されている。また、第3クラッチCL3の駆動源側に第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の駆動源側且つ第2ギヤセットPG2の反駆動源側に第2ブレーキBR2が配設されている。
【0036】
第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型である。第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4はそれぞれ、回転要素として、サンギヤS1、S2、S3、S4と、リングギヤR1、R2、R3、R4と、キャリヤC1、C2、C3、C4とを有している。
【0037】
第1ギヤセットPG1は、サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。サンギヤS1は、駆動源側に配置された第1サンギヤS1aと、反駆動源側に配置された第2サンギヤS1bとを有している。第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、同一歯数を有し、キャリヤC1に支持された同一ピニオンに噛合する。これにより、第1及び第2サンギヤS1a、S1bは、常に同一回転する。
【0038】
自動変速機10では、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とが常時連結され、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1と第2ギヤセットPG2のサンギヤS2とが常時連結され、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とが常時連結され、第3ギヤセットPG3のキャリヤC3と第4ギヤセットPG4のリングギヤR4とが常時連結されている。
【0039】
入力軸12は、第1ギヤセットPG1のキャリヤC1に第1サンギヤS1a及び第2サンギヤS1bの間を通じて常時連結され、出力軸13は、第4ギヤセットPG4のキャリヤC4に常時連結されている。
【0040】
第1クラッチCL1は、入力軸12及び第1ギヤセットPG1のキャリヤC1と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2クラッチCL2は、第1ギヤセットPG1のリングギヤR1及び第2ギヤセットPG2のサンギヤS2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設され、これらを断接するようになっており、第3クラッチCL3は、第2ギヤセットPG2のリングギヤR2と第3ギヤセットPG3のサンギヤS3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0041】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第1サンギヤS1aとの間に配設されて、これらを断接するようになっており、第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3ギヤセットPG3のリングギヤR3との間に配設されて、これらを断接するようになっている。
【0042】
以上の構成により、自動変速機10は、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、第2ブレーキBR2の締結状態の組み合わせにより、図2に示すように、Dレンジでの1〜8速と、Rレンジでの後退速とが形成されるようになっている。
【0043】
自動変速機10では、発進時に1速の変速段で締結される第2ブレーキBR2がスリップ制御され、第2ブレーキBR2が本発明に係る自動変速機の摩擦締結要素に相当する。以下、このブレーキBR2について説明する。
【0044】
図3は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面図、図4は、自動変速機のブレーキ及びその周辺の別の断面図、図5図6図7はそれぞれ、自動変速機のブレーキ及びその周辺の更に別の断面図である。図3図4図5図6図7はそれぞれ、後述する図8のY3−Y3線、Y4−Y4線、Y5−Y5線、Y6−Y6線、Y7−Y7線に沿った断面に対応する自動変速機のブレーキ及びその周辺の断面を示している。
【0045】
図3から図7に示すように、ブレーキBR2は、略円筒状に形成された変速機ケース11内に収容され、第3ギヤセットPG3のサンギヤS3に連結されて第1、第2、第3クラッチCL1、CL2、CL3の内外一対の回転部材の一方が一体化された動力伝達部材14の外周側に配置されている。
【0046】
動力伝達部材14は、第2ギヤセットPG2のキャリヤC2と第4ギヤセットPG4のキャリヤC4とを連結する動力伝達部材15の外周側に配置され、動力伝達部材15は、第1ギヤセットPG1のサンギヤS1、具体的には第2サンギヤS1bと第4ギヤセットPG4のサンギヤS4とを連結する動力伝達部材16の外周側に配置されている。
【0047】
ブレーキBR2は、変速機ケース11に結合されるハブ部材20と、ハブ部材20の反駆動源側に配置されて第3ギヤセットPG3のリングギヤR3に結合されるドラム部材40と、ハブ部材20とドラム部材40との間に軸方向に並べて配置される複数の摩擦板50と、複数の摩擦板50の反駆動源側に配置されて複数の摩擦板50を締結するピストン60とを有している。
【0048】
ブレーキBR2は、ピストン60を付勢する作動油が供給される油圧室70を有し、油圧室70は、ピストン60を締結方向に付勢する締結用作動油が供給される締結用油圧室71と、ピストン60を挟んで締結用油圧室71の反対側に配置されてピストン60を解放方向に付勢する解放用作動油が供給される解放用油圧室72とを備えている。
【0049】
ブレーキBR2はまた、図6に示すように、締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路を形成する油路形成部材80を有し、油路形成部材80は、ピストン60の反駆動源側に配置されてハブ部材20の反駆動源側に結合されている。
【0050】
ブレーキBR2はまた、図3に示すように、ピストン60を付勢する付勢ユニット90を有している。付勢ユニット90は、ピストン60を付勢する付勢部材91を備え、付勢部材91として、ピストン60に締結方向に付勢力を作用させる第1付勢部材及び第2付勢部材としての第1スプリング92及び第2スプリング93を備えている。
【0051】
図8は、ブレーキのハブ部材、油路形成部材及びピストンの組付状態を示す斜視図、図9は、ブレーキのハブ部材及び油路形成部材の組付状態を示す斜視図、図10は、ブレーキのハブ部材を示す斜視図、図11は、第1ハブ部材を示す斜視図、図12は、第2ハブ部材を示す斜視図、図13は、ピストンを示す斜視図、図14は、図5におけるY14−Y14線に沿ったハブ部材の断面図、図15は、付勢ユニットを示す斜視図、図16は、図15のY16−Y16線に沿った付勢ユニットの断面図である。なお、図14では、摩擦板50の固定側摩擦板51も示している。
【0052】
図3から図14に示すように、変速機ケース11に結合されるハブ部材20は、摩擦板50がスプライン係合される第1ハブ部材21と、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する第2ハブ部材31とを備え、第2ハブ部材31は、第1ハブ部材21の駆動源側に隣接して配置されている。
【0053】
第1ハブ部材21は、図3に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部22と、縦壁部22の径方向内側において縦壁部22から反駆動源側に略円筒状に延びる円筒部23とを備えている。
【0054】
第1ハブ部材21は、縦壁部22の外周面にスプラインが形成されたスプライン部24を有し、スプライン部24が変速機ケース11の内周面にスプラインが形成されたスプライン部11aにスプライン係合されて変速機ケース11に結合されている。
【0055】
第1ハブ部材21の円筒部23は、外周面にスプラインが形成されたスプライン部25を周方向に複数、具体的には6つ有し、スプライン部25には摩擦板50を構成する固定側摩擦板51がスプライン係合されている。第1ハブ部材21の円筒部23は、変速機ケース11に結合された内側固定部材を構成する。
【0056】
第1ハブ部材21の円筒部23は、スプライン部25が複数の摩擦板50の解放状態においても複数の摩擦板50にスプライン係合する所定の軸方向長さを有し、スプライン部25を除く部分がスプライン部25より軸方向に短く形成されている。
【0057】
第2ハブ部材31は、図5に示すように、変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部32と、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給部としての潤滑用ボス部33とを備えている。
【0058】
第2ハブ部材31は、図3に示すように、縦壁部32の外周面が第1ハブ部材21のスプライン部24の駆動源側において変速機ケース11の内周面11bに嵌合されている。第2ハブ部材31は、スナップリング17により駆動源側への抜け止めが図られると共に回り止めピン18を用いて変速機ケース11に固定され、変速機ケース11に結合されている。なお、第2ハブ部材31を変速機ケース11の内周面11bに圧入によって嵌合させて固定し、変速機ケース11に結合させるようにしてもよい。
【0059】
第2ハブ部材31には、図12に示すように、複数の潤滑用ボス部33、具体的には5つの潤滑用ボス部33が設けられている。5つの潤滑用ボス部33は、入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に周方向に異なる位置に配置されている。潤滑用ボス部33はそれぞれ、摩擦板50に潤滑用の作動油を供給する潤滑用供給油路L1を備えている。
【0060】
変速機ケース11の下方には、図4に示すように、ブレーキBR2の油圧室70や摩擦板50などに作動油を供給するバルブボディ5が配設されている。バルブボディ5は、変速機ケース11の下方に取り付けられたオイルパン(不図示)内に収容され、変速機ケース11に固定されている。第2ハブ部材31は、バルブボディ5に接続するためのバルブボディ接続部34を有し、変速機ケース11に形成されたケース開口部11cを通じて潤滑用供給油路L1がバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0061】
第2ハブ部材31はまた、図6に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路L2を備えた締結用ボス部35を備えると共に、図7に示すように、縦壁部32から反駆動源側に略円柱状に延びて解放用油圧室72に作動油を供給する解放用供給油路L3を備えた解放用ボス部36とを備えている。
【0062】
図12に示すように、締結用ボス部35及び解放用ボス部36は、潤滑用ボス部33と共に入力軸12及び出力軸13の軸心を中心とする略同一円周上に異なる位置に配置され、変速機ケース11の下方側に配置される2つの潤滑用ボス部33の間に配置されている。
【0063】
自動変速機10では、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置され、第2ハブ部材31は、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1がそれぞれバルブボディ5に接続されるように形成されている。
【0064】
第2ハブ部材31はまた、図3に示すように、縦壁部32から反駆動源側にそれぞれ略円筒状に延びる第1円筒部37、第2円筒部38及び第3円筒部39を備えている。第1円筒部37は、第1ハブ部材21の円筒部23より径方向内側に配置されて縦壁部32の径方向中央側から延び、第2円筒部38は、第1円筒部37より径方向内側において縦壁部32から延び、第3円筒部39は、第2円筒部38より径方向内側において縦壁部32から延びている。第1円筒部37は、5つの潤滑用ボス部33と略同一円周上に配置され、変速機ケース11の下方側を除いて潤滑用ボス部33間を連結するように設けられている。
【0065】
第2円筒部38は、第1円筒部37より軸方向に長く形成され、第3円筒部39は、第2円筒部38より軸方向に長く形成されている。第1円筒部37は、後述する付勢ユニット90の第2保持プレート95を受け止めるストッパ部材として機能する。第2円筒部38及び第3円筒部39は、縦壁部32と共に解放用油圧室72のシリンダ72aを構成する。
【0066】
このようにして形成されるハブ部材20では、第1ハブ部材21は、第2ハブ部材31より強度が高い材料から形成されている。具体的には、第1ハブ部材21は、鉄系材料から形成され、第2ハブ部材31は、アルミニウム系材料から形成されている。
【0067】
ブレーキBR2の締結時に摩擦板50から入力される力を受ける第1ハブ部材21が第2ハブ部材31より強度が高い材料から形成されるので、第1ハブ部材21を第2ハブ部材31と同じ材料から形成する場合に比して、スプライン部25の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。
【0068】
特に、第1ハブ部材21は、鉄系材料から形成され、第2ハブ部材31は、アルミニウム系材料から形成されることにより、第1ハブ部材21と第2ハブ部材31とをアルミニウム系材料で形成する場合に比して、スプライン部25の歯たけを小さくすることができ、径方向にコンパクトに構成することができる。また、第1ハブ部材21と第2ハブ部材31とを鉄系材料で形成する場合に比して、軽量化を図ることができる。
【0069】
ドラム部材40は、第1ハブ部材21の円筒部23の外周側に対向配置されて略円筒状に軸方向に延びる円筒部41と、円筒部41の反駆動源側から径方向内側に変速機ケース11の軸方向と直交する方向に延びて略円盤状に形成された縦壁部42とを備えている。
【0070】
ドラム部材40の縦壁部42は、リングギヤR3に結合されている。ドラム部材40の円筒部41は、内周面にスプラインが形成されたスプライン部41aを有し、スプライン部41aには、摩擦板50を構成する回転側摩擦板52がスプライン係合されている。ドラム部材40の縦壁部42は、回転部材としてのリングギヤR3に結合された外側回転部材を構成する。固定側摩擦板51と回転側摩擦板52とは、軸方向に交互に配置されている。
【0071】
ピストン60は、ハブ部材20とドラム部材40との間に、具体的には第1ハブ部材21の円筒部23とドラム部材40の円筒部41との間に配置されて第2ハブ部材31の第3円筒部39の外周側に摺動自在に嵌合されている。ピストン60は、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0072】
ピストン60は、環状に形成され、外周側に設けられて摩擦板50を押圧する押圧部61と、内周側に設けられて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部62と、押圧部61と締結用油圧室形成部62とを連結して径方向に延びる連結部63とを備えている。
【0073】
押圧部61は、摩擦板50の反駆動源側に配置され、締結用油圧室形成部62は、第1ハブ部材21の円筒部23の径方向内側に配置され、連結部63は、押圧部61から締結用油圧室形成部62に連結するように設けられている。締結用油圧室形成部62は、連結部63から駆動源側に突出するように設けられている。
【0074】
油路形成部材80は、図5から図7に示すように、ピストン60の反駆動源側に配置されている。油路形成部材80は、第2ハブ部材31の第3円筒部39の外周側に嵌合されて第2ハブ部材31のボス部33、36、具体的には潤滑用ボス部33及び解放用ボス部36の駆動源側に結合されている。
【0075】
油路形成部材80は、外周側に設けられて第2ハブ部材31のボス部33、36の反駆動源側に結合される結合部81と、内周側に設けられてピストン60の反駆動源側に配置されて締結用油圧室71を形成する締結用油圧室形成部82と、結合部81と締結用油圧室形成部82とを連結して径方向に延びる連結部83とを備えている。
【0076】
締結用油圧室形成部82は、所定厚さを有して環状に形成され、図3に示すように、第2ハブ部材31の第3円筒部39とピストン60の締結用油圧室形成部62の外周側との間に嵌合されている。締結用油圧室71は、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第3円筒部39とによって構成されている。
【0077】
結合部81は、図5及び図7に示すように、締結用油圧室形成部82より厚さが薄く形成され、締結用油圧室形成部82の反駆動源側と軸方向にオーバーラップするように設けられている。図8及び図9に示すように、結合部81は円弧状に形成されている。油路形成部材80には、周方向に複数の結合部81、本実施形態では3つの結合部81が設けられ、周方向に離間して略等間隔に配置されている。
【0078】
結合部81には、締結部材としての締結ボルト84を挿通するボルト挿通穴81aと締結ボルト84の頭部84aが収容されるボルト収容穴81bとが設けられている。油路形成部材80は、ボルト挿通穴81aを通じて締結ボルト84を第2ハブ部材31のボス部33、36の反駆動源側に設けられたネジ孔33a、36aに螺合させることによりボス部33、36の反駆動源側に結合されている。締結ボルト84として、ネジ部84bの外周面がシール材によって覆われたシール付きボルトが用いられる。
【0079】
油路形成部材80の連結部83は、結合部81と略等しい厚さを有し、図8及び図9に示すように、結合部81の周方向中央側から径方向内側に延びて締結用油圧室形成部82に連結するように設けられている。
【0080】
図9に示すように、変速機ケース11の下方側に配置される結合部81は、周方向両側が2つの締結ボルト84を用いて第2ハブ部材31のボス部33、36に結合され、変速機ケース11の上方側に配置される2つの結合部81はそれぞれ、周方向中央側が1つの締結ボルト84を用いて第2ハブ部材31のボス部33に結合されている。
【0081】
ピストン60の連結部63には、油路形成部材80の結合部81及び連結部83に対応して結合部81及び連結部83と略同一形状に切り欠かれた油路形成部材用切欠部63aが形成されている。油路形成部材80は、ピストン60の径方向範囲内に配置され、油路形成部材80の結合部81及び連結部83がピストン60の連結部63の油路形成部材用切欠部63aに嵌合されてピストン60の連結部63と軸方向にオーバーラップする位置に配置されている。
【0082】
このように、油路形成部材80とピストン60とが軸方向にオーバーラップして配置されることにより、ピストン60が油路形成部材80の反駆動源側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0083】
ピストン60の連結部63にはまた、第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25に対応してスプライン部25と略同一形状に切り欠かれたスプライン部用切欠部63bが形成されている。第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25の反駆動源側は、ピストン60の連結部63のスプライン部用切欠部63bに嵌合され、第1ハブ部材21の円筒部23とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置されている。
【0084】
このように、第1ハブ部材21の円筒部23のスプライン部25の反駆動源側がピストン60と軸方向にオーバーラップして配置されるので、ピストン60がスプライン部25の反駆動源側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、円筒部23のスプライン部25の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0085】
ピストン60の締結用油圧室形成部62は、図3に示すように、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82の外周側に嵌合して軸方向に延びる外側円筒部62a、外側円筒部62aの駆動源側から径方向内側に延びる締結用油圧受け部62bと、締結用油圧受け部62bの径方向内側から反駆動源側に延びて第2ハブ部材31の第3円筒部39に嵌合して軸方向に延びる内側円筒部62cとを備えている。
【0086】
自動変速機10では、油圧室70は、第1ハブ部材21の円筒部23及び第2ハブ部材31のボス部33、35、36の径方向内側に配置され、締結用油圧室71及び解放用油圧室72はそれぞれ、第1ハブ部材21の円筒部23及び第2ハブ部材31のボス部33、35、36の径方向内側に配置されている。
【0087】
締結用油圧室71は、前述したように、ピストン60の締結用油圧室形成部62と油路形成部材80の締結用油圧室形成部82と第2ハブ部材31の第3円筒部39とによって形成されている。ピストン60の内側円筒部62cは、スナップリング19により反駆動源側への抜け止めが図られている。
【0088】
解放用油圧室72は、図3に示すように、ピストン60の締結用油圧受け部62bの径方向内側が駆動源側に断面略コ字状に膨出した膨出部62dが、シール部材73、74を介して第2ハブ部材31のシリンダ72a内に摺動自在に嵌合され、ピストン60の膨出部62dと第2ハブ部材31のシリンダ72aとによって形成されている。
【0089】
自動変速機10では、解放用油圧室72は、締結用油圧室71より外径が小さく形成され、解放用油圧室72の外周側に、ピストン60に結合されると共に付勢ユニット90の付勢部材91による付勢力を受ける付勢受け部材100が配置されている。
【0090】
付勢受け部材100は、環状に形成され、図3に示すように、第1ハブ部材21の円筒部23と第2ハブ部材31の第2円筒部38との間で径方向に延びる径方向延設部101と、径方向延設部101の径方向内側から反駆動源側に軸方向に延びる軸方向延設部102とを備えている。
【0091】
付勢受け部材100は、軸方向延設部102の反駆動源側がピストン60の締結用油圧受け部62bにおける膨出部62dより径方向外側に結合されてピストン60に結合されている。付勢受け部材100、具体的には径方向延設部101と油路形成部材80との間に付勢ユニット90が装着されている。
【0092】
図15及び図16に示すように、付勢ユニット90は、軸方向に延びる第1スプリング92及び第2スプリング93と、第1スプリング92及び第2スプリング93の一端部である反駆動側の端部をそれぞれ保持する第1保持プレート94と、第1保持プレート94と軸方向に離間して配置されて第1スプリング92の他端部である駆動源側の端部を保持する第2保持プレート95とを備えている。
【0093】
第1保持プレート94は、環状に形成され、駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92及び第2スプリング93がそれぞれ装着される第1スプリングガイド部94a及び第2スプリングガイド部94bを備えている。第1スプリング92と第2スプリング93とは、径方向にオーバーラップする位置且つ周方向に異なる位置に配置されている。自動変速機10では、6つの第2スプリング93の周方向両側にそれぞれ第1スプリング92が配置されている。
【0094】
第2保持プレート95は、第1保持プレート94と軸方向に略対称に形成されている。第2保持プレート95は、反駆動源側に円筒状に突出して第1スプリング92が装着される第1スプリングガイド部95aを備えている。第2保持プレート95はまた、第2スプリング93の他端部である駆動源側の端部が反第1保持プレート側に突出可能であるように第2スプリング93を挿通する挿通穴95bを備えている。
【0095】
第1スプリング92は、第2スプリング93より付勢力が大きく設定されている。第1スプリング92及び第2スプリング93は、コイルスプリングであり、第1スプリング92は、第2スプリング93よりコイル径が大きく大型のコイルスプリングである。第2スプリング93は、第1スプリング92より自由長さが長く形成され、第2スプリング93の他端部が第2保持プレート95の反第1保持プレート側に突出可能に第1保持プレート94に保持されている。
【0096】
図3に示すように、付勢ユニット90は、第1保持プレート94が油路形成部材80の結合部81の周方向両側における駆動源側に支持されると共に第2保持プレート95が付勢受け部材100の径方向延設部101の反駆動源側に支持され、変速機ケース11に取り付けられている。
【0097】
付勢受け部材100の径方向延設部101は、第2保持プレート95を支持すると共に第2保持プレート95の挿通穴95bに挿通された第2スプリング93の他端部を支持するように第2保持プレート95の外径より小さく第2スプリング93と略等しい径方向寸法を有するように形成されている。
【0098】
第1ハブ部材21の円筒部23の内周面は、第1保持プレート94及び第2保持プレート95より径方向に大きく形成され、円筒部23の内周側に付勢ユニット90が配置されている。付勢ユニット90は、第2ハブ部材31のボス部33、35、36に対応して第1保持プレート94、第2保持プレート95にそれぞれ切欠部94c、95cが形成されている。
【0099】
第2ハブ部材31の第1円筒部37は、付勢受け部材100の径方向延設部101より径方向に大きく形成され、反駆動源側の端面によって付勢部材91による付勢力を受けて第2保持プレート95が駆動源側に移動されるときに第2保持プレート95を受け止めるようになっている。第2ハブ部材31の第1円筒部37は、第2保持プレート96を受け止めるストッパ部材として機能する。
【0100】
第2ハブ部材31の第1円筒部37は、付勢受け部材100に支持された第2保持プレート95が当接したときに、ピストン60は、複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置となるように設定されている。ピストン60の接触直前位置は、複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置とゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置との間に適宜設定される。
【0101】
付勢受け部材100に第2保持プレート95が当接すると、付勢受け部材100は、第2スプリング93のみによって締結方向に付勢力を受けるようになっている。第2スプリング93が自由長さとなったときに、ピストン60はゼロクリアランス位置となるように設定されている。
【0102】
このようにして、付勢ユニット90は、第1スプリング92が付勢受け部材100を介してピストン60に解放位置から接触直前位置まで締結方向に付勢力を作用させ、第2スプリング93が付勢受け部材100を介して解放位置からゼロクリアランス位置まで締結方向に付勢力を作用させるようになっている。
【0103】
そして、ピストン60がゼロクリアランス位置にあるときに締結用油圧室71に締結用油圧を供給すると、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けて、複数の摩擦板50が第1ハブ部材21の縦壁部22に反駆動源側に突出して設けられた保持部26とピストン60との間に挟み込まれて相対回転不能になる締結状態となる締結位置まで移動される。
【0104】
一方、ピストン60が締結位置にあるときに、締結用油圧室71から締結用油圧を排出して解放用油圧室72に解放用油圧を供給すると、ピストン60が解放方向に付勢されて移動され、ピストン60がゼロクリアランス位置に移動される。
【0105】
ピストン60はさらに、第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、接触直前位置に移動される。次いで、ピストン60は、第1スプリング92及び第2スプリング93に抗して解放方向に付勢されて移動され、解放位置に移動される。
【0106】
次に、ブレーキBR2に作動油を供給する供給油路について説明する。
ブレーキBR2の締結用油圧室71に締結用作動油を供給する締結用供給油路L2は、第2ハブ部材31及び油路形成部材80に形成されている。ブレーキBR2の解放用油圧室72に解放用作動油を供給する解放用供給油路L3と摩擦板50に潤滑用作動油を供給する潤滑用供給油路L1とは、第2ハブ部材31に形成されている。締結用供給油路L2及び解放用供給油路L3は、油圧室70に作動油を供給する作動用供給油路を構成する。
【0107】
締結用供給油路L2は、図6に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路111と、締結用ボス部35に設けられて軸方向に延びて径方向油路111と接続される軸方向油路112と、油路形成部材80の結合部81に設けられて軸方向に延びて軸方向油路112と接続される軸方向油路113と、油路形成部材80の結合部81、連結部83及び締結用油圧室形成部82に設けられて径方向に延びて軸方向油路113と接続される径方向油路114と、油路形成部材80の締結用油圧室形成部82に設けられて軸方向に延びて径方向油路114と接続されると共に締結用油圧室71に開口する軸方向油路115とによって構成されている。
【0108】
第2ハブ部材31は、締結用供給油路L2がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路111は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、締結用供給油路L2を通じて締結用油圧室71に締結用作動油を供給して所定の締結用油圧を供給できるようになっている。
【0109】
油路形成部材80の径方向油路114は、油路形成部材80の結合部81の外周面から径方向内側に延びるように形成され、結合部81の外周面に径方向油路114の開口部を閉塞する閉塞部材85が取り付けられている。
【0110】
解放用供給油路L3は、図7に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びて解放用油圧室72に開口する径方向油路121と、解放用ボス部36に設けられて軸方向に延びて径方向油路121と接続される軸方向油路122とによって構成されている。
【0111】
第2ハブ部材31は、解放用供給油路L3がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路121は、第2ハブ部材310の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、解放用供給油路L3を通じて解放用油圧室72に解放用作動油を供給して所定の解放用油圧を供給できるようになっている。
【0112】
第2ハブ部材31の軸方向油路122は、解放用ボス部36の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、解放用ボス部36の反駆動側の端面に軸方向油路122の開口部を閉塞する閉塞部材として締結ボルト84が取り付けられている。解放用ボス部36の反駆動源側には、軸方向油路122の開口部にネジ孔36aが形成されている。
【0113】
潤滑用供給油路L1は、図4及び図5に示すように、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて径方向に延びる径方向油路131と、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられて周方向に円弧状に延びて径方向油路131と接続される周方向油路132と、潤滑用ボス部33に設けられて軸方向に延びて周方向油路132と接続される軸方向油路133と、潤滑用ボス部33に設けられて径方向に延びて軸方向油路133と接続されると共に締結用ボス部35の外周面に開口する供給口134とによって構成されている。
【0114】
自動変速機10では、図12に示すように、締結用供給油路L2、解放用供給油路L3及び潤滑用供給油路L1をそれぞれ構成する径方向油路111、121、131が変速機ケース11の下方側に周方向に並んで配置されている。潤滑用供給油路L3を構成する周方向油路132は、径方向油路131に接続されると共に反径方向油路121側に円弧状に周方向に沿って延び、径方向油路111の反径方向油路121側まで延びている。
【0115】
5つの潤滑用ボス部33はそれぞれ、周方向油路132に接続されて軸方向に延びる軸方向油路133と、軸方向油路133から径方向外側に潤滑用ボス部33の外周面まで延びて摩擦板50に潤滑用作動油を供給する供給口134とを備えている。供給口134は、軸方向に並んで複数設けられている。
【0116】
第2ハブ部材31は、潤滑用供給油路L1がバルブボディ5に接続されるように形成されている。第2ハブ部材31の径方向油路131は、第2ハブ部材31の縦壁部32に設けられると共にバルブボディ接続部34の下面に開口し、バルブボディ5に接続されている。バルブボディ5は、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油を供給できるようになっている。
【0117】
ブレーキBR2では、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33の外周面から摩擦板50に潤滑用作動油を供給し、摩擦板50の発熱を冷却するようになっている。摩擦板50に供給した潤滑用作動油は、ドラム部材40の円筒部41の内周面に移動し、ドラム部材40の円筒部41の回転によって軸方向に移動して滞留することが抑制されている。
【0118】
第2ハブ部材31の2つの軸方向油路133は、図4及び図12に示すように、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面に軸方向油路133の開口部を閉塞する閉塞部材29が取り付けられている。
【0119】
第2ハブ部材31の3つの軸方向油路133´は、図5に示すように、潤滑用ボス部33の反駆動源側の端面から駆動源側に軸方向に延びるように形成され、潤滑用ボス部33の反駆動側の端面に軸方向油路133´の開口部を閉塞する閉塞部材として締結ボルト84が取り付けられている。潤滑用ボス部33の反駆動源側には、軸方向油路133´の開口部にネジ孔33aが形成されている。
【0120】
第1ハブ部材21の円筒部23には、図10に示すように、第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33に対応して周方向に切り欠かれた潤滑用切欠部27が形成されている。第2ハブ部材31の潤滑用ボス部33は、第1ハブ部材21の円筒部23の潤滑用切欠部27に対応して配置され、潤滑用切欠部27を通じて摩擦板50に潤滑用の作動油を供給できるようになっている。
【0121】
図14に示すように、潤滑用ボス部33の供給口134は、軸方向油路133から径方向外側に向かうにつれて摩擦板50の回転方向下流側(矢印50aで示す方向)に傾斜して設けられている。供給口134は、潤滑用ボス部33の中心軸33bを通る第2ハブ部材31の径方向(矢印31aで示す方向)に対し、矢印134aで示すように摩擦板50の回転方向下流側に所定角度θ1で傾斜して設けられている。角度θ1は、0度より大きく90度より小さい角度に設定され、好ましくは30度から45度の間の角度に設定される。
【0122】
これにより、供給口134から潤滑用の作動油が摩擦板50の回転方向下流側に向けて供給されるので、潤滑用の作動油を摩擦板50の回転方向に直交する方向に向けて供給する場合に比して、潤滑油の作動油のせん断抵抗を低減することができ、潤滑用の作動油による摩擦板間の引き摺り抵抗を抑制することができる。
【0123】
次に、このようにして構成されたブレーキBR2の作動について説明する。
図17は、解放状態にあるブレーキを示す断面図、図18は、接触直前状態にあるブレーキを示す断面図、図19は、ゼロクリアランス状態にあるブレーキを示す断面図、図20は、締結状態にあるブレーキを示す断面図である。図17から図20は、図3に示すブレーキBR2の要部を拡大して示している。
【0124】
図17では、締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93を圧縮してピストン60が反駆動源側である解放方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50が解放状態となる解放位置にあるブレーキBR2の解放状態が示されている。
【0125】
ブレーキBR2の締結時には、図17に示す解放状態において解放用油圧室72から解放用油圧が排出され、図18に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第1スプリング92及び第2スプリング93の付勢力を受けて第2保持プレート95が第2ハブ部材31の第1円筒部37に当接するまで駆動源側である締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50に接触する直前である接触直前位置になり、ブレーキBR2が接触直前状態となる。
【0126】
図18に示す接触直前状態において第2保持プレート95が第2ハブ部材31の第1円筒部37に当接すると、図19に示すように、ピストン60が付勢受け部材100を介して第2スプリング93の付勢力を受けて第2スプリング93の自由長さまで締結方向に移動され、ピストン60の位置が複数の摩擦板50を押圧することなく摩擦板50に接した状態若しくはほぼ接した状態であるゼロクリアランス状態となるゼロクリアランス位置になり、ブレーキBR2がゼロクリアランス状態となる。
【0127】
そして、図19に示すゼロクリアランス状態において締結用油圧室71に締結用油圧が供給されると、図20に示すように、ピストン60が締結用油圧室71に供給された締結用油圧によって締結方向に付勢されて移動され、ピストン60が複数の摩擦板50を押し付けてピストン60の位置が複数の摩擦板50が相対回転不能になる締結位置になり、ブレーキBR2が締結状態となる。
【0128】
一方、ブレーキBR2の解放時には、図20に示す締結状態において締結用油圧室71から締結用油圧が排出されると共に解放用油圧室72に解放用油圧が供給され、ピストン60が解放用油圧室72に供給された解放用油圧によって反駆動源側である解放方向に付勢されて移動され、図19に示すゼロクリアランス状態及び図18に示す接触直前状態を経て、図17に示す解放状態となる。
【0129】
ブレーキBR2では、ピストン60を解放位置から接触直前位置まで第1スプリング92及び第2スプリング93によって応答性良く移動させ、接触直前位置からゼロクリアランス位置まで第2スプリング93によって精度良く移動させることができる。
【0130】
ブレーキBR2は、前述したように、車両の発進時にスリップ制御される。ブレーキBR2の締結時には、締結用油圧室71に締結用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に締結用油圧室71に締結用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結される。一方、ブレーキBR2の解放時には、解放用油圧室72に解放用油圧よりも低い油圧が供給されて複数の摩擦板50がスリップ状態とされた後に解放用油圧室72に解放用油圧が供給されて複数の摩擦板50が締結解除される。
【0131】
ブレーキBR2の締結時及び解放時には、潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給され、ブレーキBR2がスリップ制御されるときに潤滑用供給油路L1を通じて複数の摩擦板50に潤滑用作動油が供給される。
【0132】
このように、本実施形態に係る自動変速機10では、変速機ケース11に結合される内側固定部材23の径方向内側に締結用油圧室71が配置されたブレーキBR2を備え、ピストン60は、押圧部61、締結用油圧室形成部62及び連結部63を備え、内側固定部材23は、周方向に摩擦板50がスプライン係合される複数のスプライン部25を備える。内側固定部材23のスプライン部25の軸方向一方側は、ピストン60の連結部63の内側固定部材用切欠部63bに配置され、内側固定部材23とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置される。
【0133】
これにより、変速機ケース11に結合される内側固定部材23の径方向内側に締結用油圧室71が配置されたブレーキBR2を備えた自動変速機10において、内側固定部材23のスプライン部25の軸方向一方側がピストン60と軸方向にオーバーラップして配置されるので、ピストン60が内側固定部材23のスプライン部25の軸方向一方側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、内側固定部材23のスプライン部25の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0134】
また、締結用油圧室71に締結用の作動油を供給する締結用供給油路L2を形成する油路形成部材80は、内側固定部材23の軸方向一方側に結合される結合部81、ピストン60の軸方向一方側に配置される締結用油圧室形成部82、及び結合部81と締結用油圧室形成部82とを連結して径方向に延びる連結部83とを備え、油路形成部材80の結合部81及び連結部83は、ピストン60の連結部63の油路形成部材用切欠部63aに配置され、油路形成部材80とピストン60とは、軸方向にオーバーラップして配置される。
【0135】
これにより、締結用油圧室71に作動油を供給する締結用供給油路L2を形成する油路形成部材80を内側固定部材23の軸方向一方側に結合する場合に、ピストン60が油路形成部材80の軸方向一方側を通じて径方向に延びる場合に比して軸方向寸法を短縮することができ、軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0136】
また、内側固定部材23を有するハブ部材20に、解放用油圧室72に解放用の作動油を供給する解放用供給油路L3が形成される。これにより、変速機ケース11に結合されるハブ部材20に解放用油圧室72に解放用の作動油を供給する解放用供給油路L3が形成されるので、バルブボディ5からハブ部材20の解放用供給油路L3に作動油を容易に供給することができる。
【0137】
また、自動変速機10は、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結され、前記ブレーキBR2は、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキBR2である。これにより、流体伝動装置を介することなく駆動源に連結された自動変速機10において、発進時にスリップ制御されると共に1速の変速段で締結されるブレーキBR2を軸方向にコンパクトに構成することができる。
【0138】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0139】
以上のように、本発明によれば、変速機ケースに結合される内側固定部材の径方向内側に締結用油圧室が配置されたブレーキを備えた自動変速機において、内側固定部材のスプライン部の軸方向長さを確保しつつ軸方向にコンパクトに構成することが可能となるから、この種の自動変速機ないしこれを搭載する車両の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0140】
10 自動変速機
11 変速機ケース
20 ハブ部材
21 第1ハブ部材
23 第1ハブ部材の円筒部
25 スプライン部
31 第2ハブ部材
40 ドラム部材
41 ドラム部材の円筒部
50 摩擦板
60 ピストン
61 押圧部
62 締結用油圧室形成部
63 連結部
63b スプライン部用切欠部
70 油圧室
71 締結用油圧室
72 解放用油圧室
80 油路形成部材
BR2 第2ブレーキ
L2 締結用供給油路
L3 解放用供給油路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21