特開2019-174143(P2019-174143A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-174143熱式フローセンサ装置および流量補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-174143(P2019-174143A)
(43)【公開日】2019年10月10日
(54)【発明の名称】熱式フローセンサ装置および流量補正方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20190913BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20190913BHJP
   G05D 7/06 20060101ALI20190913BHJP
【FI】
   G01F1/696 Z
   G01F1/00 X
   G05D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-59302(P2018-59302)
(22)【出願日】2018年3月27日
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 正志
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
【テーマコード(参考)】
2F030
2F035
5H307
【Fターム(参考)】
2F030CA10
2F030CC01
2F030CD04
2F030CE04
2F030CF05
2F030CF08
2F035EA05
2F035EA08
2F035EA09
5H307BB06
5H307BB10
5H307DD01
5H307DD06
5H307DD13
5H307EE02
5H307FF04
5H307FF12
(57)【要約】
【課題】補正係数の設定の手間と補正係数のばらつきを低減する。
【解決手段】熱式フローセンサ装置1は、バルブ開度と流量の関係についての情報を記憶するバルブ開度−流量特性情報記憶部3と、補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、バルブを制御する制御装置9に送信するバルブ開度指示部5と、熱式フローセンサ2の流量出力値を取得する出力信号取得部6と、出力信号取得部6によって取得された2点の流量出力値の倍率を算出し、バルブ開度−流量特性情報記憶部3の情報から得られる、2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、2点の流量出力値の倍率に対する2点の流量の倍率の比を補正係数として算出する補正係数算出部7と、熱式フローセンサ2の流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正する流量補正部8を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測流体が流通する流路に配設され、前記計測流体の温度を測定する温度センサから得られるセンサ出力信号を出力するように構成された熱式フローセンサと、
前記熱式フローセンサよりも上流側または下流側の前記流路の箇所に配設されたバルブの開度と前記計測流体の流量との関係についての情報を予め記憶するように構成されたバルブ開度−流量特性情報記憶部と、
基準となる計測流体での流量と前記センサ出力信号との関係についての情報を予め記憶するように構成された流量−出力信号基準特性情報記憶部と、
この流量−出力信号基準特性情報記憶部に記憶されている情報に基づいて、前記センサ出力信号を流量の値に変換するように構成された流量導出部と、
この流量導出部の流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正するように構成された流量補正部と、
前記補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、前記バルブを制御する制御装置に送信するように構成されたバルブ開度指示部と、
前記開度指示信号に応じたバルブ開度になったときの前記流量導出部の流量出力値を取得するように構成された出力信号取得部と、
この出力信号取得部によって取得された2点の流量出力値の倍率を算出し、前記バルブ開度−流量特性情報記憶部の情報から得られる、前記2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、前記2点の流量出力値の倍率に対する前記2点の流量の倍率の比を前記補正係数として算出して前記流量補正部に設定するように構成された補正係数算出部とを備えることを特徴とする熱式フローセンサ装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱式フローセンサ装置において、
前記バルブ開度−流量特性情報記憶部は、前記バルブの開度と流量との関係を近似した理論曲線から得られる前記2点の流量の倍率を記憶することを特徴とする熱式フローセンサ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱式フローセンサ装置において、
予め規定されたタイミングで前記補正係数の算出・設定処理を実行するように制御管理するように構成された実行管理部と、
前記補正係数算出部によって算出された過去から現在までの補正係数の履歴情報を提示するように構成された履歴情報提示部と、
前記補正係数算出部によって算出された補正係数の正常値からの乖離度合が、規定量以上になったときにアラームを出力するように構成されたアラーム出力部とを、さらに備えることを特徴とする熱式フローセンサ装置。
【請求項4】
基準となる計測流体での流量とセンサ出力信号との関係についての情報を予め記憶する流量−出力信号基準特性情報記憶部を参照し、計測流体が流通する流路に配設された熱式フローセンサのセンサ出力信号を流量出力値に変換する第1のステップと、
前記流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正する第2のステップと、
前記補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、前記熱式フローセンサよりも上流側または下流側の前記流路の箇所に配設されたバルブを制御する制御装置に送信する第3のステップと、
前記開度指示信号に応じたバルブ開度になったときの前記流量出力値を取得する第4のステップと、
前記第4のステップで取得した2点の流量出力値の倍率を算出すると共に、前記バルブの開度と前記計測流体の流量との関係についての情報を予め記憶するバルブ開度−流量特性情報記憶部を参照して、前記2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、前記2点の流量出力値の倍率に対する前記2点の流量の倍率の比を前記補正係数として算出する第5のステップとを含むことを特徴とする流量補正方法。
【請求項5】
請求項4記載の流量補正方法において、
前記バルブ開度−流量特性情報記憶部に予め記憶された情報は、前記バルブの開度と流量との関係を近似した理論曲線から得られる前記2点の流量の倍率であることを特徴とする流量補正方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の流量補正方法において、
予め規定されたタイミングで前記補正係数の算出・設定処理を実行するように指示する第6のステップと、
前記第5のステップによって算出された過去から現在までの補正係数の履歴情報を提示する第7のステップと、
前記第5のステップによって算出された補正係数の正常値からの乖離度合が、規定量以上になったときにアラームを出力する第8のステップとを、さらに含むことを特徴とする流量補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測流体の温度を測定する温度センサから得られるセンサ出力信号を基に計測流体の流量を算出する熱式フローセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を計測するための熱式フローセンサが実用されている(例えば特許文献1参照)。熱式フローセンサでは、想定されている計測流体(例えば水)について流量−出力信号特性を予め把握することで、計測流体の流量を測定(推定)することができる。このため、特性が予め把握できている計測流体以外の流体を計測対象とする場合は、流量−出力信号特性から得られる流量値を補正係数で補正して対応することになる。
【0003】
現在の熱式フローセンサの使用方法では、流体の熱物性や、同種の流体を過去に流した時の感度を確認して、推定で補正係数を設定するようにしている。この設定作業は、手順がある程度標準化されているケースであっても、実質的にオペレータの手作業となる。したがって、手間がかかると同時に、オペレータの能力や主観に依存するばらつきが生じ易いので、改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−009348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、補正係数の設定の手間と補正係数のばらつきとを低減することができる熱式フローセンサ装置および流量補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱式フローセンサ装置は、計測流体が流通する流路に配設され、前記計測流体の温度を測定する温度センサから得られるセンサ出力信号を出力するように構成された熱式フローセンサと、前記熱式フローセンサよりも上流側または下流側の前記流路の箇所に配設されたバルブの開度と前記計測流体の流量との関係についての情報を予め記憶するように構成されたバルブ開度−流量特性情報記憶部と、基準となる計測流体での流量と前記センサ出力信号との関係についての情報を予め記憶するように構成された流量−出力信号基準特性情報記憶部と、この流量−出力信号基準特性情報記憶部に記憶されている情報に基づいて、前記センサ出力信号を流量の値に変換するように構成された流量導出部と、この流量導出部の流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正するように構成された流量補正部と、前記補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、前記バルブを制御する制御装置に送信するように構成されたバルブ開度指示部と、前記開度指示信号に応じたバルブ開度になったときの前記流量導出部の流量出力値を取得するように構成された出力信号取得部と、この出力信号取得部によって取得された2点の流量出力値の倍率を算出し、前記バルブ開度−流量特性情報記憶部の情報から得られる、前記2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、前記2点の流量出力値の倍率に対する前記2点の流量の倍率の比を前記補正係数として算出して前記流量補正部に設定するように構成された補正係数算出部とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の熱式フローセンサ装置の1構成例において、前記バルブ開度−流量特性情報記憶部は、前記バルブの開度と流量との関係を近似した理論曲線から得られる前記2点の流量の倍率を記憶することを特徴とするものである。
また、本発明の熱式フローセンサ装置の1構成例は、予め規定されたタイミングで前記補正係数の算出・設定処理を実行するように制御管理するように構成された実行管理部と、前記補正係数算出部によって算出された過去から現在までの補正係数の履歴情報を提示するように構成された履歴情報提示部と、前記補正係数算出部によって算出された補正係数の正常値からの乖離度合が、規定量以上になったときにアラームを出力するように構成されたアラーム出力部とを、さらに備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の流量補正方法は、基準となる計測流体での流量とセンサ出力信号との関係についての情報を予め記憶する流量−出力信号基準特性情報記憶部を参照し、計測流体が流通する流路に配設された熱式フローセンサのセンサ出力信号を流量出力値に変換する第1のステップと、前記流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正する第2のステップと、前記補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、前記熱式フローセンサよりも上流側または下流側の前記流路の箇所に配設されたバルブを制御する制御装置に送信する第3のステップと、前記開度指示信号に応じたバルブ開度になったときの前記流量出力値を取得する第4のステップと、前記第4のステップで取得した2点の流量出力値の倍率を算出すると共に、前記バルブの開度と前記計測流体の流量との関係についての情報を予め記憶するバルブ開度−流量特性情報記憶部を参照して、前記2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、前記2点の流量出力値の倍率に対する前記2点の流量の倍率の比を前記補正係数として算出する第5のステップとを含むことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の流量補正方法の1構成例において、前記バルブ開度−流量特性情報記憶部に予め記憶された情報は、前記バルブの開度と流量との関係を近似した理論曲線から得られる前記2点の流量の倍率である。
また、本発明の流量補正方法の1構成例は、予め規定されたタイミングで前記補正係数の算出・設定処理を実行するように指示する第6のステップと、前記第5のステップによって算出された過去から現在までの補正係数の履歴情報を提示する第7のステップと、前記第5のステップによって算出された補正係数の正常値からの乖離度合が、規定量以上になったときにアラームを出力する第8のステップとを、さらに含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バルブ開度−流量特性情報記憶部とバルブ開度指示部と出力信号取得部と補正係数算出部とを設けることにより、補正係数の設定の手間と補正係数のばらつきとを低減することができる。したがって、流量計測の専門的知識のないオペレータであっても、計測流体に応じた適切な補正係数を設定することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、実行管理部と履歴情報提示部とアラーム出力部とを設けることにより、補正係数算出部によって算出・設定される補正係数をモニタリングすることができ、計測流体の状態変化(異常発生など)を検出することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、計測流体を水とする設定後に各種の流体を熱式フローセンサに流通させた場合の真流量と熱式フローセンサの流量出力との関係を示す図である。
図2図2は、本発明の第1の実施例に係る熱式フローセンサ装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、マスフローコントローラの断面図である。
図4図4は、熱式フローセンサのフローセンサチップの構造を示す平面図および断面図である。
図5図5は、熱式フローセンサの電気回路の構成を示すブロック図である。
図6図6は、バルブの開度と流体の流量との関係の1例を示す図である。
図7図7は、各種の流体を流路に流通させた場合の真流量とセンサ出力信号との関係を示す図である。
図8図8は、図7の水の特性を基準とした場合の各種の流体の真流量とセンサ出力信号との関係を示す図である。
図9図9は、本発明の第1の実施例に係る熱式フローセンサ装置のバルブ開度指示部と出力信号取得部と補正係数算出部と補正係数設定部の動作を説明するフローチャートである。
図10図10は、本発明の第1の実施例に係る熱式フローセンサ装置の流量導出部と流量補正部の動作を説明するフローチャートである。
図11図11は、本発明の第2の実施例に係る熱式フローセンサ装置の構成を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の第2の実施例に係る熱式フローセンサ装置のバルブ開度指示部と出力信号取得部と補正係数算出部と実行管理部と履歴情報提示部とアラーム出力部の動作を説明するフローチャートである。
図13図13は、本発明の第2の実施例における補正係数の履歴情報の提示例を示す図である。
図14図14は、本発明の第1、第2の実施例に係る熱式フローセンサ装置を実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[発明の原理1]
発明者は、例えば水(H2O)を基準の計測流体とした場合(すなわち、水を計測流体として校正した場合)の真流量−熱式フローセンサの流量出力特性と、水以外の流体を同フローセンサに流通させた場合の真流量−流量出力特性とを対比すると、図1に示すようにいずれの流体の場合も熱式フローセンサの流量出力と真流量とが概ね比例の関係にあることを突き止めた。
【0014】
図1の例では、流体の種類を、水、イソプロピルアルコール中濃度、イソプロピルアルコール高濃度、フロリナート(登録商標)、過酸化水素低濃度、過酸化水素中濃度、過酸化水素高濃度、硫酸低濃度、硫酸中低濃度、硫酸中高濃度、硫酸高濃度とし、各流体の温度を25℃とした。
【0015】
また、発明者は、熱式フローセンサで計測される流量値を基に流体の流量を制御するバルブが熱式フローセンサの上流または下流に配設されているとき、流体の供給圧力が一定(変動小)の状態であれば、バルブの開度と流量の関係(一定倍率)が予め概ね把握できていると見なせることに着眼した。
【0016】
そして、少なくとも2通りのバルブ開度に対応する理論流量の倍率と、これに対応して検出される熱式フローセンサの流量出力値の倍率との比に基づき、計測流体に応じた熱式フローセンサの補正係数を算出できることに想到した。これにより、本発明では、補正係数の設定の手間を低減し、ばらつきを低減できる。
【0017】
[発明の原理2]
定期的に補正係数を算出する手順を実行し、例えば上位側機器に送信し、これをモニタリングすることにより、計測流体の状態変化(異常発生など)を検出することが期待できる。
【0018】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施例に係る熱式フローセンサ装置の構成を示すブロック図である。本実施例は、上記発明の原理1に対応する例である。なお、図2の例では、熱式フローセンサ装置を含むマスフローコントローラの例について記載するが、本発明はマスフローコントローラ以外にも適用可能である。マスフローコントローラの場合には、熱式フローセンサの下流にバルブが配設されているが、熱式フローセンサの上流にバルブが配設されていてもよい。
【0019】
熱式フローセンサ装置1は、熱式フローセンサ2と、供給圧力が一定の状態におけるバルブ開度と流量の関係についての情報を予め記憶するバルブ開度−流量特性情報記憶部3と、基準となる計測流体での流量とセンサ出力信号との関係についての情報を予め記憶する流量−出力信号基準特性情報記憶部4と、補正係数を算出・設定する際に、予め規定された少なくとも2点のバルブ開度を指定する開度指示信号を、バルブを制御する制御装置に送信するバルブ開度指示部5と、開度指示信号に応じたバルブ開度になったときの熱式フローセンサ2の流量出力値を取得する出力信号取得部6と、出力信号取得部6によって取得された2点の流量出力値の倍率を算出し、バルブ開度−流量特性情報記憶部3の情報から得られる、前記2点のバルブ開度に対応する2点の流量の倍率を取得し、2点の流量出力値の倍率に対する2点の流量の倍率の比を補正係数として算出する補正係数算出部7と、熱式フローセンサ2の流量出力値に補正係数を乗算して流量を補正する流量補正部8とを備えている。
【0020】
図1の流量制御装置9は、バルブと共にマスフローコントローラに設けられる。図3はマスフローコントローラの構造を示す断面図である。図3において、10はマスフローコントローラの本体ブロック、11はセンサパッケージ、12はセンサパッケージ11のヘッド部、13はヘッド部12に搭載されたフローセンサチップ、14はバルブ、15は本体ブロック10の内部に形成された流路、16は流路15の入口側の開口、17は流路15の出口側の開口である。
【0021】
流体は、開口16から流路15に流入してバルブ14を通過し、開口17から排出される。熱式フローセンサ2は、流路15を流れる流体の流量を計測する。
マスフローコントローラの流量制御装置9は、熱式フローセンサ装置1によって計測された流体の流量に基づく流量制御を行う。具体的には、流量制御装置9は、計測された流量と設定値とが一致するようにバルブ14を駆動する。
【0022】
図4(A)は熱式フローセンサ2のフローセンサチップ13の構造を示す平面図、図4(B)は図4(A)のフローセンサチップ13のA−A線断面図である。図4(A)、図4(B)において、130は基台となるシリコンチップ、131はシリコンチップ130の上面に空間132を設けて薄肉状に形成された例えば窒化シリコンからなるダイアフラム、133はダイアフラム131の上に形成された金属薄膜からなるヒータ、134はダイアフラム131上のヒータ133の上流側に形成された金属薄膜の感熱抵抗体からなる温度センサ、135はダイアフラム131上のヒータ133の下流側に形成された金属薄膜の感熱抵抗体からなる温度センサ、136は金属薄膜の感熱抵抗体からなる周囲温度センサ、137はダイアフラム131を貫通するスリットである。
【0023】
ヒータ133や温度センサ134〜136は例えば窒化シリコンからなる薄膜の絶縁層138により覆われている。周囲温度センサ136は、ヒータ133からの熱の影響を受けずに、流体の温度を検出できるところに配置される。フローセンサチップ13は、図4(A)に示した面が下になるようにしてセンサパッケージ11のヘッド部12に搭載され、計測流体に晒されるように本体ブロック10に装着される。
【0024】
以上のような熱式フローセンサ2の構造とその原理は例えば特許文献1に開示されている。図5は熱式フローセンサ2の電気回路の構成を示すブロック図である。ヒータ駆動部20は、ブリッジ回路21と、トランジスタQ1と、差動増幅器A1と、固定抵抗R3,R4,R5,R6と、コンデンサC1とからなる。ブリッジ回路21は、ヒータ133を駆動する回路であり、ヒータ133と周囲温度センサ136と一対の固定抵抗R1,R2とからなる。電源電圧+Vは、図示しない所定の電源から供給され、トランジスタQ1を介してブリッジ回路21に印加される。
【0025】
差動増幅器A1は、ヒータ133と周囲温度センサ136との抵抗値の変化に応じてブリッジ回路21のブリッジ出力電圧を検出し、そのブリッジ出力電圧が零(0)になるようにトランジスタQ1を帰還制御して、ブリッジ回路21に印可するヒータ駆動電圧を調整する。これにより、ヒータ駆動部20は、ヒータ133の発熱温度がその周囲温度よりも常に一定温度だけ高くなるように制御する。
【0026】
一方、流量計測部22は、ブリッジ回路23と、差動増幅器A2と、固定抵抗Rfと、流量導出部24とからなる。ブリッジ回路23は、一対の温度センサ134,135と一対の固定抵抗Rx,Ryとからなる。電源電圧+Vは、図示しない所定の電源から供給され、ブリッジ回路23に印加される。
【0027】
差動増幅器A2は、ブリッジ回路23の出力電圧V4,V5の差の電位を温度センサ134,135によって計測された温度差に相当するセンサ出力信号(温度差信号)Vtとして出力する。こうして、一対の温度センサ134,135の熱による抵抗値変化をセンサ出力信号Vtに変換する。
【0028】
流量導出部24は、後述する流量−出力信号基準特性情報記憶部4に予め記憶されている流量PVとセンサ出力信号Vtとの関係に基づいて、差動増幅器A2から出力されるセンサ出力信号Vtを、計測流体の流量PVの値に変換する。
【0029】
次に、本実施例の熱式フローセンサ装置1の特徴的構成について説明する。バルブ開度−流量特性情報記憶部3には、流体の供給圧力が一定の状態におけるバルブ14の開度とバルブ14を通過する流体の流量PVとの関係についての情報が、あらかじめ記憶されている。例えば特許第5931668号公報には、バルブ14の開度を時間的に直線的に変化させた場合に、高開度側ほど流路を流れる流体の流量体積が少ないことが示されている。
【0030】
このように、バルブ14の開度MVと流量PVとは、非線形な関係であり、高開度側ほど開度MVの変化量に対して、流量PVの変化量が減少することが知られている。この開度MVと流量PVの関係の概略を図6に示す。なお、図6の例では、便宜上、バルブ14の開度MVと流量PVとを0〜100%の値に正規化している。図6に示したような特性は、非線形な収束現象なので、次式の指数関数で表現できる。
PV=K{1.0−exp(−MV/A)} ・・・(1)
【0031】
このように、バルブ14の開度MVと流量PVとの関係を近似した関数は、定数項(1.0)と、開度MVに関する項と、開度MVに対する流量PVの大きさを表すゲインに関する係数Kとによって定義される。式(1)のAは非線形な収束状態を与える係数である。図6の曲線cur1〜cur4は、いずれも流体の一定の供給圧力を前提としており、一例としていずれの曲線もA=30.0としている。この場合、式(1)は式(2)のようになる。
PV=K{1.0−exp(−MV/30.0)} ・・・(2)
【0032】
なお、曲線cur1の場合、K=104.0である。そして、図6では、例えばバルブ14の開度MV=20%の流量PVに対して開度MV=50%の流量PVは、いずれの曲線cur1〜cur4の場合でも1.667倍になる。すなわち、開度MV−流量PVの理論曲線(関数)から得られる2点の流量PVの倍率Rrefとして1.667を特定できる。
【0033】
バルブ開度−流量特性情報記憶部3は、バルブ14の開度MVと流量PVとの関係を近似した理論曲線(関数)を記憶しておいてもよいし、関数から得られる開度MV毎の流量PVの値を記憶しておいてもよいし、最低限の情報として、関数から得られる倍率Rref=1.667のみを記憶しておいてもよい。なお、関数を同定するためには、例えばマスフローコントローラの流量試験を事前に行なって係数AおよびゲインKの値を調べておけばよい。
【0034】
流量−出力信号基準特性情報記憶部4には、基準となる計測流体(例えば水)での流量と熱式フローセンサ2のセンサ出力信号との関係についての情報が、予め記憶されている。図7は各種の流体を流路15に流通させた場合の真流量とセンサ出力信号Vtとの関係を示す図である。図7の例では、流体の種類を、水、イソプロピルアルコール中濃度、イソプロピルアルコール高濃度、フロリナート(登録商標)、過酸化水素低濃度、過酸化水素中濃度、過酸化水素高濃度、硫酸低濃度、硫酸中低濃度、硫酸中高濃度、硫酸高濃度とし、各流体の温度を25℃とした。なお、センサ出力信号Vtについては0〜100%の値に正規化している。
【0035】
水を基準にするのであれば、水の特性のみ予め調査して、計測流体が水の場合の真流量とセンサ出力信号Vtとの関係を流量−出力信号基準特性情報記憶部4に記憶させておけばよい。図7は、水の真流量が30mL/minになったときのセンサ出力信号Vtを100%として描いた特性図である。
【0036】
上記で説明したとおり、水を基準の計測流体とした場合の真流量と熱式フローセンサ2の流量出力(流量導出部24の出力)との関係は図1のようになる。図1に示したようにいずれの流体の場合も熱式フローセンサ2の流量出力と真流量とが概ね比例の特性を示しているので、この特性の比例係数が本実施例で求める補正係数と関係している。
【0037】
図8は、図7の水の特性を基準とした場合(計測流体が水の場合の各流量におけるセンサ出力信号Vtを100%とした場合)の各種の流体の真流量とセンサ出力信号Vtとの関係を示す図である。図8によれば、ほとんどの流量領域において、水の特性を基準としてほぼ一定の補正係数で補正すれば、ある程度の流量計測精度が確保できることが分かる。
【0038】
図9はバルブ開度指示部5と出力信号取得部6と補正係数算出部7の動作を説明するフローチャートである。
バルブ開度指示部5は、補正係数を自動設定する際に、バルブ14が予め規定された第1の開度MV1(例えばMV1=20%)になるように開度指示信号を流量制御装置9に送信する(図9ステップS100)。
【0039】
流量制御装置9は、バルブ開度指示部5からの開度指示信号を受信した場合、この開度指示信号に応じた処理を優先的に行う。すなわち、流量制御装置9は、上記の流量制御をいったん中止して、開度指示信号で指定された開度MV1になるようにバルブ14を制御する。そして、流量制御装置9は、開度指示信号を受信してから一定時間の経過後に流量制御に復帰する。この一定時間は、例えば後述する出力信号取得部6による流量出力値の取得に十分な時間に設定されている。
【0040】
出力信号取得部6は、バルブ14が第1の開度MV1=20%のときの熱式フローセンサ2の流量導出部24から出力される流量出力値PV1を取得する(図9ステップS101)。なお、バルブ14の開度がMV1に変化したときの流量変動が落ち着くのを待つために、出力信号取得部6は、開度指示信号が送信されてから所定の待機時間の経過後に熱式フローセンサ2の流量出力値を取得することが望ましい。
【0041】
出力信号取得部6による流量出力値の取得後、バルブ開度指示部5は、バルブ14が予め規定された第2の開度MV2(MV1≠MV2で、例えばMV2=50%)になるように開度指示信号を流量制御装置9に送信する(図9ステップS102)。
【0042】
MV1=20%のときと同様に、流量制御装置9は、流量制御をいったん中止して、開度指示信号で指定された開度MV2になるようにバルブ14を制御する。そして、流量制御装置9は、開度指示信号を受信してから一定時間の経過後に流量制御に復帰する。
【0043】
出力信号取得部6は、バルブ14が第2の開度MV2=50%のときの熱式フローセンサ2の流量導出部24から出力される流量出力値PV2を取得する(図9ステップS103)。MV1=20%のときと同様に、出力信号取得部6は、開度指示信号が送信されてから所定の待機時間の経過後に熱式フローセンサ2の流量出力値を取得することが望ましい。
【0044】
なお、上記の倍率Rref=1.667は、基準の流量をPV1ref、倍率Rrefを決める対象の流量をPV2refとすると、R=PV2ref/PV1refとなる。バルブ開度−流量特性情報記憶部3に、開度MV−流量PVの理論曲線(関数)から得られる、2点の流量PV2ref,PV1refの倍率Rref=1.667のみが記憶されている場合には、理論曲線上で流量PV1refに対応するバルブ開度と第1の開度MV1とが等しく、かつ理論曲線上で流量PV2refに対応するバルブ開度と第2の開度MV2とが等しくなるように、第1、第2の開度MV1,MV2を規定しておけばよい。したがって、開度指示信号の送信と流量出力値の取得とを、少なくとも2回行えばよいことになる。
【0045】
補正係数算出部7は、出力信号取得部6による流量出力値の取得完了後、バルブ開度−流量特性情報記憶部3に記憶されている情報を取得し(図9ステップS104)、出力信号取得部6によって取得された2点の流量出力値PV2,PV1の倍率R=PV2/PV1を算出する(図9ステップS105)。
【0046】
そして、補正係数算出部7は、算出した倍率Rに対する、バルブ開度−流量特性情報記憶部3から取得した情報から得られる倍率Rrefの比Rref/Rを補正係数Cとして算出し、この補正係数Cを流量補正部8に設定する(図9ステップS106)。
【0047】
例えば倍率Rが1.275になったとすると、補正係数CはRref/R=1.677/1.275=1.307(130.7%)として算出される。この値は、図8によれば、硫酸高濃度(あるいはこれと同等の熱伝導率の流体)が計測流体である場合に、自動的に得られる補正係数Cの数値である。
【0048】
なお、バルブ開度−流量特性情報記憶部3に、倍率Rrefではなく、開度MV−流量PVの理論曲線(関数)が記憶されている場合、補正係数算出部7は、理論曲線上で第1の開度MV1に対応する流量PV1refと、理論曲線上で第2の開度MV2に対応する流量PV2refとを求めて、倍率Rrefを算出すればよい。
【0049】
図10は熱式フローセンサ2の流量導出部24と流量補正部8の動作を説明するフローチャートである。
流量導出部24は、流量−出力信号基準特性情報記憶部4に記憶されている流量PVとセンサ出力信号Vtとの関係に基づいて、差動増幅器A2から出力されるセンサ出力信号Vtを流量PVの値に変換する(図10ステップS200)。
【0050】
流量補正部8は、熱式フローセンサ2の流量導出部24から出力された流量PVの値に補正係数Cを乗算して流量PVを補正する(図10ステップS201)。なお、補正係数算出部7によって設定される前の補正係数Cの初期値(計測流体が水の場合の値)は1である。
流量導出部24と流量補正部8とは、流量制御(流量計測)中にステップS200,S201の処理を一定時間毎に行う。
【0051】
こうして、本実施例では、補正係数Cの設定の手間と補正係数Cのばらつきとを低減することができる。
なお、図9で説明した処理を開始するタイミングとしては、オペレータから設定開始の指示を受けたときでもよいし、後述する第2の実施例のように予め規定されたタイミングになったときでもよい。
【0052】
[第2の実施例]
次に、本発明の第2の実施例について説明する。図11は本発明の第2の実施例に係る熱式フローセンサ装置の構成を示すブロック図であり、図2と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施例は、上記発明の原理2に対応する例である。
【0053】
本実施例の熱式フローセンサ装置1aは、熱式フローセンサ2と、バルブ開度−流量特性情報記憶部3と、流量−出力信号基準特性情報記憶部4と、バルブ開度指示部5と、出力信号取得部6と、補正係数算出部7と、流量補正部8と、予め規定されたタイミングで前記補正係数の算出・設定処理を実行するように制御管理する実行管理部30と、補正係数算出部7によって算出された過去から現在までの補正係数Cの履歴情報を提示する履歴情報提示部31と、補正係数算出部7によって算出された補正係数Cの正常値からの乖離度合が、規定量以上になったときにアラームを出力するアラーム出力部32とを備えている。
【0054】
図12は本実施例のバルブ開度指示部5と出力信号取得部6と補正係数算出部7と実行管理部30と履歴情報提示部31とアラーム出力部32の動作を説明するフローチャートである。
実行管理部30は、予め規定されたタイミングになったときに(図12ステップS300においてYES)、補正係数算出・設定処理を開始するよう、バルブ開度指示部5と出力信号取得部6と補正係数算出部7とに対して指示を出す(図12ステップS301)。
【0055】
バルブ開度指示部5と出力信号取得部6と補正係数算出部7の動作(図12ステップS302〜S308)の動作は、ステップS100〜S106で説明したとおりである。
履歴情報提示部31は、補正係数算出部7によって算出された過去から現在までの補正係数Cを記憶しており、過去から現在までの補正係数Cの履歴情報を提示する(図12ステップS309)。
【0056】
図13は補正係数Cの履歴情報の提示例を示す図である。図13の例では、履歴情報提示部31が表示する画面310に、補正係数Cの算出・設定の実行回数を横軸、補正係数Cを縦軸とするグラフが表示されている。また、履歴情報提示部31は、最も初期に算出・設定された補正係数Cの+5%を示すラインL1と−5%を示すラインL2とを画面310に表示する。
【0057】
アラーム出力部32は、補正係数算出部7によって算出された最新の補正係数Cの正常値(通常は熱式フローセンサ装置の使用の初期に算出され記憶された補正係数C)からの乖離度合が、規定量以上になったときに(図12ステップS310においてYES)、アラームを出力する(図12ステップS311)。
【0058】
例えばアラーム出力部32は、最新の補正係数Cが正常値から±5%以上乖離したときに、アラームを出力する。アラームの出力方法としては、例えばアラーム発生を知らせる内容を表示したり、アラーム発生を知らせる情報を外部に送信したりする等の方法がある。
【0059】
こうして、本実施例では、補正係数算出部7によって算出・設定される補正係数Cをモニタリングすることにより、計測流体の状態変化(異常発生など)を検出することが期待できる。
【0060】
上記のとおり、第1、第2の実施例では、熱式フローセンサ装置を含むマスフローコントローラの例について説明しているが、本発明はマスフローコントローラ以外にも適用可能である。また、熱式フローセンサ2の上流、下流のどちらにバルブが配設されていてもよい。
【0061】
第1、第2の実施例の熱式フローセンサ装置のうち少なくともバルブ開度−流量特性情報記憶部3と流量−出力信号基準特性情報記憶部4とバルブ開度指示部5と出力信号取得部6と補正係数算出部7と流量補正部8と実行管理部30と履歴情報提示部31とアラーム出力部32と流量導出部24とは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0062】
このコンピュータの構成例を図14に示す。コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(以下、I/Fと略する)202とを備えている。I/F202には、熱式フローセンサ2の流量計測部22と流量制御装置9とが接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の流量補正方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施例で説明した処理を実行する。また、流量制御装置9についても、周知のとおりコンピュータとプログラムによって実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、熱式フローセンサに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1…熱式フローセンサ装置、2…熱式フローセンサ、3…バルブ開度−流量特性情報記憶部、4…流量−出力信号基準特性情報記憶部、5…バルブ開度指示部、6…出力信号取得部、7…補正係数算出部、8…流量補正部、9…流量制御装置、10…本体ブロック、11…センサパッケージ、12…ヘッド部、13…フローセンサチップ、14…バルブ、15…流路、16,17…開口、20…ヒータ駆動部、21,23…ブリッジ回路、22…流量計測部、24…流量導出部、30…実行管理部、31…履歴情報提示部、32…アラーム出力部、130…シリコンチップ、131…ダイアフラム、133…ヒータ、134,135…温度センサ、136…周囲温度センサ、137…スリット。
図1
図2
図3
図4
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図6
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図10
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