特開2019-180214(P2019-180214A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産株式会社の特許一覧
<>
  • 特開2019180214-モータ 図000003
  • 特開2019180214-モータ 図000004
  • 特開2019180214-モータ 図000005
  • 特開2019180214-モータ 図000006
  • 特開2019180214-モータ 図000007
  • 特開2019180214-モータ 図000008
  • 特開2019180214-モータ 図000009
  • 特開2019180214-モータ 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-180214(P2019-180214A)
(43)【公開日】2019年10月17日
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20190920BHJP
【FI】
   H02K1/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-70014(P2018-70014)
(22)【出願日】2018年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 邦明
(72)【発明者】
【氏名】三井 信
(72)【発明者】
【氏名】一円 明
(72)【発明者】
【氏名】大橋 弘光
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA29
5H601DD01
5H601DD11
5H601DD31
5H601DD47
5H601EE12
5H601GA02
5H601GA37
5H601GA40
5H601GB05
5H601GB12
5H601GB33
5H601GB48
5H601GC02
5H601GC12
5H601GD02
5H601GD08
5H601GD12
5H601GD13
5H601GD14
5H601GD22
5H601HH09
5H601KK01
5H601KK07
5H601KK08
5H601KK13
5H601KK14
5H601KK15
5H601KK22
5H601KK30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ステータとハウジングとの接触によるステータの磁気特性への影響を最小限にとどめ、削りくずが発生しにくく、かつ、ステータの剛性が高いモータを提供する。
【解決手段】ステータコア120は、周方向に配列する複数のコアピース131と、柱状の磁性体であり隣り合うコアピースで挟持される挿入部材139とを有する。コアピースは、円弧状を呈するコアバック部121を有する。ステータコアの外周面はハウジング13と接触する。ステータコアにおいて隣り合うコアバック部同士の接続部位には、挿入部材が挿入される被挿入部132aが設けられている。被挿入部は、ステータコアの中心軸方向に延びる貫通穴または中心軸方向に延びコアバック部の径方向内側に開口する溝である。挿入部材は、被挿入部において周方向で隣り合う2つのコアバック部にそれぞれ接触して挟持される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向外側から隙間を空けて前記ロータを囲むステータと、
前記ステータを収容し固定するハウジングと、を備え、
前記ステータは、コイルと、
ティースを有し、前記ティースに前記コイルが巻きつけられるステータコアと、を有し、
前記ステータコアは、周方向に配列する複数のコアピースと、
柱状の磁性体であり、隣り合う前記コアピースで挟持される挿入部材と、を有し、
前記コアピースは、前記中心軸方向から見て円弧状を呈するコアバック部を有し、
前記ステータコアの外周面は前記ハウジングと接触し、
前記ステータコアにおいて、周方向に隣り合う前記コアバック部同士の接続部位には、前記挿入部材が挿入される被挿入部が設けられ、
前記被挿入部は、前記ステータコアにおいて前記中心軸の方向に延びる貫通穴または前記中心軸の方向に延び前記コアバック部の径方向内側に開口する溝であり、
前記挿入部材は、前記被挿入部において前記周方向で隣り合う2つの前記コアピースの前記コアバック部にそれぞれ接触して挟持されるモータ。
【請求項2】
前記接続部位において対向する一対の前記コアバック部の端部のそれぞれに、前記周方向に窪む凹条部が設けられ、
前記一対の凹条部が一体となって前記被挿入部を構成する請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記コアピースおよび前記挿入部材は、電磁鋼板を前記中心軸の方向に積層させた積層体である請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記コアピースは、電磁鋼板を前記中心軸の方向に積層させた積層体であり、
前記挿入部材は、柱状の単一部材である請求項1または2に記載のモータ。
【請求項5】
前記コアピースは、電磁鋼板を前記中心軸の方向に積層させた積層体であり、
前記ステータコアは、複数の前記コアピースのそれぞれが有する前記電磁鋼板の圧延方向が一致している請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記接続部位において、前記コアバック部同士が対向する一対の端部のうち一方の端部には、前記周方向に窪む凹部が設けられ、
前記一対の端部のうち他方の端部には、前記周方向に突出し前記凹部に嵌合する凸部が設けられている請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
隣り合う前記コアピース同士は、前記コアバック部の径方向外側の面で溶接されている請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記複数のコアピースは、前記コアバック部において前記周方向に帯状に連結されたストレートコアである請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記ストレートコアの前記周方向の両端に位置する前記コアピース同士は、前記コアバック部の径方向外側の面で溶接されている請求項8に記載のモータ。
【請求項10】
前記ステータは、前記ハウジングに締まり嵌めで固定されている請求項1から9のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項11】
複数の前記挿入部材を有し、
前記ステータコアにおいて、全ての前記接続部位にそれぞれ前記被挿入部が設けられ、
前記挿入部材は、全ての前記被挿入部に挿入されている請求項1から10のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項12】
前記モータは、3相モータであって、
3つの前記挿入部材を有し、
前記ステータコアにおいて、前記中心軸を中心として点対象となる3カ所に前記被挿入部が設けられ、
前記挿入部材は、3カ所の前記被挿入部に挿入されている請求項1から10のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中心軸を中心として回転するロータと、ロータを径方向外側から囲むステータと、を有するインナーロータ型のモータが知られている。インナーロータ型のモータが備えるステータとしては、周方向に分割された複数の固定子鉄心ブロックを集積して円筒状の1つのステータとする構成が知られている。
【0003】
複数の固定子鉄心ブロックを集積して構成するステータでは、隣り合う固定子鉄心ブロック同士の間に隙間が生じ、隣り合う固定子鉄心ブロックの間で磁気特性が劣化するおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1においては、複数の固定子鉄心ブロックを集積して構成するステータを円筒状のフレームに挿入した後、ステータの径方向外側に柱状の楔を挿入することで、隣り合う固定子鉄心ブロック同士の接触部分を密着させている。これにより、特許文献1のステータを有するモータでは、磁気特性の劣化が抑制され、コギングトルクが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−291003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のモータの構成では、ステータとフレームとの間に柱状の楔が打ち込まれており、打ち込まれた楔によってステータとフレームとが固定される。このような構成のモータが有するステータにおいては、楔が打ち込まれた特定の部位に応力が集中することになる。
【0007】
この場合、ステータの外側の特定の部位に集中した応力は、周囲に分散することなくステータを構成する固定子鉄芯ブロックの径方向内部にまで及び、ステータの磁気特性を悪化させるおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1のモータの構成では、柱状の楔を打ち込む際に、楔と固定子鉄芯ブロック、または楔とフレームとが擦れることにより、削りくずが発生してしまうおそれがある。特許文献1のモータでは、ステータとフレームとの間に楔を打ち込むことにより、ステータとフレームとの間に隙間が空きやすい。そのため、削りくずが発生した場合、削りくずがステータとフレームとの間に留まらず、ステータとフレームとの間からステータの内側に移動するおそれがある。その場合、削りくずが例えばステータとロータとの間に入り込み、可動を阻害するおそれがあった。また、削りくずがコイルに接触し、短絡の原因になるおそれがあった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ステータとハウジングとの接触によるステータの磁気特性への影響を最小限にとどめ、削りくずが発生しにくく、かつ、ステータの剛性が高いモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側から隙間を空けて前記ロータを囲むステータと、前記ステータを収容し固定するハウジングと、を備え、前記ステータは、コイルと、ティースを有し、前記ティースに前記コイルが巻きつけられるステータコアと、を有し、前記ステータコアは、周方向に配列する複数のコアピースと、柱状の磁性体であり、隣り合う前記コアピースで挟持される挿入部材と、を有し、前記コアピースは、前記中心軸方向から見て円弧状を呈するコアバック部を有し、前記ステータコアの外周面は前記ハウジングと接触し、前記ステータコアにおいて、周方向に隣り合う前記コアバック部同士の接続部位には、前記挿入部材が挿入される被挿入部が設けられ、前記被挿入部は、前記ステータコアにおいて前記中心軸の方向に延びる貫通穴または前記中心軸の方向に延び前記コアバック部の径方向内側に開口する溝であり、前記挿入部材は、前記被挿入部において前記周方向で隣り合う2つの前記コアピースの前記コアバック部にそれぞれ接触して挟持されるモータが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステータとハウジングとの接触によるステータの磁気特性への影響を最小限にとどめ、削りくずが発生しにくく、かつ、ステータの剛性が高いモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態のモータ1を示す分解斜視図である。
図2図2は、ハウジング13に収容されたステータ12の平面図である。
図3図3は、モータ1の製造方法を説明する説明図である。
図4図4は、コアピース131に挟持される挿入部材を説明する説明図である。
図5図5は、コアピース131に挟持される挿入部材を説明する説明図である。
図6図6は、モータ1の製造方法を説明する説明図である。
図7図7は、モータ1が有するコアピースの変形例を示す説明図である。
図8図8は、モータ1が有するコアピースの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1図8を参照しながら、本実施形態に係るモータについて説明する。
【0014】
各図には、適宜Z軸を示す。各図のZ軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側,一方側)を「上側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側,他方側)を「下側」と呼ぶ。なお、上側および下側とは、単に説明のために用いられる方向であって、実際の位置関係や方向を限定しない。
【0015】
また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」又は「上下方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。
【0016】
また、以下の説明において、「平面視」とは、軸方向から視た状態を意味する。
【0017】
また、以下の説明において、「平面図」とは、平面視したときの図を意味する。
【0018】
また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0019】
図1は、本実施形態のモータ1を示す分解斜視図である。図1では、一部構成を省略している。
【0020】
図1に示すように、モータ1は、ロータ11と、ステータ12と、ハウジング13とを備える。
【0021】
(ロータ)
ロータ11は、上下方向に延びる中心軸Jに沿って配置されるシャフト20と、シャフト20において中心軸に沿って配列したベアリング15、ロータコア18、ベアリング16と、を有する。ベアリング15、ロータコア18、ベアリング16は、下側から上側に向けてこの順に配列している。
【0022】
シャフト20は、軸方向に延びる円柱状の部材である。シャフト20は、ベアリング15およびベアリング16に回転可能に支持される。
【0023】
ロータコア18は、シャフト20の外側面に固定される。ロータコア18は、シャフト20を周方向に囲んでいる。ロータコア18は、不図示の複数のロータマグネットを有している。ロータマグネットは、N極とS極とが周方向に交互に配列し固定される。ロータコア18は、シャフト20と一緒に回転する。
【0024】
(ステータ)
ステータ12は、ロータ11の径方向外側から隙間を空けてロータ11を囲む。
ステータ12は、ステータコア120と、コイル123とを有する。図1では、コアバック121、ティース122、コイル123の一部のみを示している。また、図1では、インシュレータや絶縁シートなど、通常のステータが備える構成の図示を省略している。
ステータ12については、後に詳述する。
【0025】
ステータコア120は、中心軸Jを中心とする筒状のコアバック121と、コアバック121から径方向内側に延び、且つ周方向に沿って並ぶ複数のティース122とを有する。コイル123は、ティース122に巻き付けられている。
【0026】
ステータ12の外周面、すなわちコアバック121の外周面121xには、中心軸方向に沿って延びる複数の凹溝125が設けられている。凹溝125は、径方向内側に向かって凹んでいる。すなわち、凹溝125は、径方向外側、上側、下側にそれぞれ開口している。複数の凹溝125は、径方向から見て複数のティース122のそれぞれと一対一で重なっている。
【0027】
凹溝125は、例えば、ティース122にコイル123を巻き付ける際の基準として用いられる。
【0028】
モータ1の極数およびスロット数は、本実施形態に限定されず、要求出力および巻線方式などによって適宜選定される。なお、本実施形態におけるモータ1は、極数が10極、スロット数が12スロットである、3相モータである。
【0029】
(ハウジング)
ハウジング13は、ロータ11およびステータ12を収容する。ハウジング13は、ステータ12を径方向外側から囲むと共にステータ12を固定する筒状部13aと、筒状部13aの下端に設けられたブラケット13bと、筒状部13aの上端に設けられた不図示のフランジと、を有する。
【0030】
ブラケット13bには、ベアリングホルダ140が設けられている。ベアリングホルダ140は、ベアリング15を保持している。
【0031】
ブラケット13bの平面視中央部には、貫通孔141が設けられている。貫通孔141には、シャフト20の下端が挿入されている。シャフト20の下端は、貫通孔141からハウジング13の外部に突出している。
【0032】
また、ハウジング13の内部には、ステータ12の上側に不図示のベアリングホルダが設けられている。ベアリングホルダは、ベアリング16を保持している。
【0033】
図2は、ハウジング13に収容されたステータ12の平面図である。
ステータ12は、ハウジング13に締まり嵌めで固定されている。締まり嵌めは、圧入であってもよく、焼嵌めであってもよい。ステータ12の外周面121xは、ハウジング13の内周面13xに接している。
【0034】
ステータコア120は、周方向に配列する複数のコアピース131と、隣り合うコアピース131で挟持される複数の挿入部材139と、を有している。
【0035】
コアピース131は、平面視で円弧状を呈するコアバック部132と、コアバック部132から径方向内側に延びるティース122と、を有する。
【0036】
コアピース131は、コアピース131の平面視形状に打ち抜いた複数の電磁鋼板を軸方向に積層させた積層体である。
【0037】
ステータコア120において、周方向に隣り合うコアバック部132同士の接続部位Aには、挿入部材139が挿入される被挿入部132aが設けられている。図に示すステータコア120では、接続部位Aにおいて対向するコアバック部132の端部のそれぞれに、周方向に窪む凹条部132bが設けられており、接続部位Aにおいて向かい合う凹条部132b同士が一体となって被挿入部132aを構成している。
【0038】
なお、凹条部132bは、隣り合うコアバック部132のいずれか一方にのみ設けられていることとしてもよい。この場合、一方のコアバック部132に設けられた凹条部132bと、他方のコアバック部132の端部とで囲まれた部分が被挿入部となる。
【0039】
被挿入部132aは、ステータコア120において軸方向に延びる貫通穴、または軸方向に延びコアバック部132の径方向内側、すなわちコアバック121の内周面121yに開口する溝である。被挿入部132aは、溝であるほうが好ましい。
図では、被挿入部132aが溝であることとして示している。
【0040】
挿入部材139は、柱状の磁性体である。挿入部材139の周方向の幅は、被挿入部132aの周方向の幅よりも大きい。
【0041】
溝状の被挿入部132aに挿入された挿入部材139の径方向内側の面139aは、コアバック121の内周面121yと段差なく連続した状態、またはコアバック121の内周面121yよりも径方向内側に突出した状態であることが好ましい。
【0042】
被挿入部132aは、ステータコア120の全ての接続部位Aにそれぞれ設けられている。複数の挿入部材139は、全ての被挿入部132aに挿入されている。挿入部材139は、被挿入部132aにおいて周方向で隣り合う2つのコアピース131のコアバック部132に、それぞれ接触して挟持されている。
【0043】
次に、モータ1の製造方法を説明する。
まず、図3に示すように、電磁鋼板の母材1000から、ステータコア120の平面視形状と同じ形状を有する板材150を複数製造する。板材150は、さらにコアピース131の平面視形状と同じ形状を有する複数の板材151に分割される。複数の板材151を軸方向に積層することで、コアピース131が製造される。
【0044】
上述したとおり、得られたコアピース131を周方向に配列することで、ステータコア120を製造する。
【0045】
ここで、製造されたコアピース131を用いてステータコア120を製造する際には、複数のコアピース131のそれぞれが有する板材151の圧延方向を一致させながら、複数のコアピース131を周方向に配列させることが好ましい。
【0046】
複数の板材151は、元の板材150を復元するような配置で配列することで、隣り合う板材151同士の金属組織の成長方向が一致し、板材151間で磁束の乱れを生じにくくなる。
【0047】
ここで、母材1000の組織は、母材の圧延方向αに延伸されている。そのため、複数の板材151がそれぞれ同じ形状であったとしても、それぞれの板材151における圧延方向を一致させることで、上述のように板材151の金属組織の成長方向が一致した状態となり、板材151間で磁束の乱れを生じにくくなる。
【0048】
なお、板材151の圧延方向は、目視または顕微鏡観察にて観察できる。具体的には、板材151の圧延方向は、板材151の表面を観察することで確認できる。すなわち、板材151の表面を観察すると、筋状の線が同一方向に複数伸びている。この筋状の線が伸びる方向に平行な方向が圧延方向である。
【0049】
また、複数の板材151を積層させてコアピース131を製造する際には、複数の板材150から作製した複数の板材151のうち、圧延方向αが一致する板材151を集めて積層させるとよい。
【0050】
図4,5は、コアピース131に挟持される挿入部材を説明する説明図である。
【0051】
図4に示すように、挿入部材139Aは、電磁鋼板の母材から製造した複数の板材152を軸方向に積層した積層体であってもよい。板材152は、挿入部材139Aの平面視形状と同じ形状を有する。
【0052】
図4に示すように、このような挿入部材139Aは、挿入部材139Aを挟持するコアピース131Aとコアピース131Bと同じく電磁鋼板の積層体であるため、電磁鋼板における金属組織の成長方向が同じ面内方向となる。そのため、コアピース131Aと挿入部材139Aとの界面、およびコアピース131Bと挿入部材139Aとの界面において、磁束の乱れを生じにくくなり好ましい。
【0053】
また、図5に示すように、挿入部材139Bは、柱状の単一部材であってもよい。
このような挿入部材139Bは、コアピース131Aおよびコアピース131Bに挟持され、高い圧力で締め付けられたとしても破損しにくいため好ましい。
図4,5に示すように、本実施形態のモータ1では、組立時に挿入部材139を隣り合うコアピース131Aおよびコアピース131Bで挟み込み、接触して挟持している。そのため、挿入部材139を軸方向に打ち込む場合と比べ、挿入部材139を被挿入部132aに挿入する際に、挿入部材139とコアピースとの軸方向の摩擦による内部応力が生じにくく、得られるステータコアの磁気特性の劣化を抑制することができる。
【0054】
次いで、図6に示すように、各コアピース131が有するティース122にコイル123を巻き付ける。コイル123は、ティース122に対して、いわゆる集中巻きで巻かれる。
【0055】
本実施形態のモータにおいては、ステータコア120が複数のコアピース131に分割されているため、ステータコアが周方向で分割されない一体コアの場合と比べ、ティース122にコイル123を巻き付ける作業が容易となる。これにより、ティース122にコイル123を多く巻き付けることができ、占積率を高めることができる。
【0056】
次いで、ティース122にコイル123を巻き付けた複数のコアピース131を周方向に配列する。また、隣り合うコアバック部132に設けられた被挿入部132aには、挿入部材139を挿入し、コアピース131の径方向外側の面から全体を締め付ける。
【0057】
上述したように、挿入部材139の周方向の幅は、被挿入部132aの周方向の幅よりも大きい。そのため、挿入部材139は、内部応力を有した状態で隣り合うコアバック部132に接する。
【0058】
次いで、隣り合うコアピース131同士を、コアバック部132の径方向外側の面132xで溶接して固定し、ステータコア120を得る。図では、溶接箇所を符号Xで示す。
【0059】
その後、図2に示すように、得られたステータコア120をハウジング13に圧入または焼嵌めで挿入して固定する。
【0060】
ステータコア120をハウジング13に圧入して固定する場合、ステータコア120とハウジング13とが擦れ、削りくずが発生するおそれがある。そのため、ステータコア120を圧入する場合には、ステータコア120の外周面に接着剤を塗布しておくとよい。ステータコア120の外周面に塗布した接着剤は、発生した削りくずを捕捉し、削りくずをステータコア120とハウジング13との間に留める。これにより、削りくずが原因で生じるロックや短絡等の不具合を抑制することができる。
【0061】
ステータコア120をハウジング13に焼嵌めで固定する場合、ステータコア120とハウジング13とが擦れ難く、削りくずが発生しにくいため好ましい。
【0062】
なお、図2に示すように、平面視においてステータコア120の外周面は、全周に亘ってハウジング13の内周面13xに沿って密着している。そのため、圧入または焼嵌めに伴いステータコア120に発生する内部応力は、ステータコア120とハウジング13との接触面全体に分散する。このような構成の場合、ステータコア120の外周面で発生する内部応力は、ステータコア120の内周面にまで届きにくく、磁気特性への悪影響を抑制することができる。
【0063】
その他、ロータ11などを組み付けることで、モータ1を製造することができる。
【0064】
上述したように、複数のコアピースを集積して構成するステータでは、隣り合うコアピース同士の間に隙間が生じ、隣り合うコアピースの間で磁気特性が劣化するおそれがある。ステータの磁気特性が劣化すると、コギングトルクが増加するおそれがある。
【0065】
対して、本実施形態のモータ1では、ステータコア120の外周面はハウジング13により固定され、さらに溶接されている。そのため、モータ1では、ステータコア120の外周面121xの側で隣り合うコアピース131同士の間に隙間が生じ難い。
【0066】
また、ステータコア120の内周面側では、磁性体である挿入部材139が、隣り合うコアピース131のコアバック部132に接触して挟持されている。そのため、ステータコア120では、挿入部材139を有さないステータコアと比べて磁気特性が改善し、ティース122に巻き付けられたコイル123で生じる磁束が、ステータコア120の内周面側に良好に生じる。
【0067】
さらに、ステータコア120がハウジング13から受ける応力は、ステータコア120の外周面において特定の部位に集中することなく、外周面全体に分散している。そのため、ステータコア120の外周面で生じる応力が、ステータコア120の内周面にまでは届きにくく、磁気特性の低下を抑制することができる。
【0068】
したがって、本実施形態のモータ1によれば、ステータとハウジングとの接触によるステータの磁気特性への影響を最小限にとどめ、削りくずが発生しにくく、かつ、ステータの剛性が高いモータとなる。
【0069】
なお、本実施形態においては、複数のコアピース131と複数の挿入部材139とを用いてステータコア120を得ることとしたが、コアピース131の構成は図に示した構成に限らない。
【0070】
図7,8は、本実施形態のモータが有するコアピースの変形例を示す説明図である。
【0071】
まず、図7の一部拡大図に示すように、ステータコア126は、周方向に配列する複数のコアピース133と、隣り合うコアピース133で挟持される複数の挿入部材139とを有する。
【0072】
コアピース133は、平面視で円弧状を呈するコアバック部134と、コアバック部134から径方向内側に延びるティース122と、を有する。
【0073】
ステータコア126の接続部位Aにおいて対向する一対のコアバック部134の端部のうち一方の端部には、周方向に窪む凹部134aが設けられている。
また、一対のコアバック部134の端部のうち他方の端部には、周方向に突出し、凹部134aに相補的に嵌合する凸部134bが設けられている。
【0074】
このような構成のコアピース133は、コアピース133同士の締結が容易である。また複数のコアピース133を周方向に配列してステータコア126を組み立てる際に、コアピース133同士が径方向にずれにくく、組立が容易となる。
【0075】
図7に示すようなコアピース133は、コアピース133の平面視形状に打ち抜いた複数の電磁鋼板を軸方向に積層させた積層体である。このようなコアピース133は、まずステータコア126の平面視形状に電磁鋼板を打ち抜いた後、得られた板材を各コアピース133の形状に分割して打ち抜いた板材とし、得られた板材を軸方向に積層して製造することが好ましい。
【0076】
一般に、電磁鋼板の打ち抜き加工は、プレス金型を用いて行う。この場合、金型の磨耗により、得られる板材の大きさがわずかに変化することがある。そのため、コアピースの平面視形状の板材を個別に打ち抜いた後に積層させた積層体を、周方向に配列することとすると、板材の大きさのわずかなずれに起因して、コアピース同士の接続部分に隙間や段差が生じることがある。
【0077】
これに対し、上述のように、まず電磁鋼板の母材からステータコア126の形状を打ち抜いた後に、コアピース133の形状に分割することとすると、得られる板材の大きさが金型の磨耗の影響を受けにくく好ましい。このようにして製造したコアピース133を用いると、組立精度が向上する。
【0078】
ここで、ステータコア126の形状の板材の大きさと、上記方法で得られたコアピース133の形状の板材を周方向に配列したときの大きさと、を比べると、ステータコア126の形状の板材を分割した切断部分の幅だけコアピース133のほうが小さくなるおそれがある。また、上記方法でコアピース133を製造すると、コアピース133の周方向の大きさを拡大することが困難である。
【0079】
これに対して、本実施形態のモータ1においては、コアピース133で挿入部材139を挟持することで、コアピース133間の隙間を無くし、磁気特性の低下を抑制可能である。そのため、上記方法で得られたコアピース133を用いても、良好なモータを得ることができる。
【0080】
また、図8に示す複数のコアピース135は、コアバック部136において隣り合うコアピース135と周方向に帯状に連結したストレートコア127を構成している。複数のコアピース135は、コアバック部136において連結部137で連結している。
【0081】
ストレートコア127を用いてステータを得る場合、ストレートコア127の周方向の両端に位置するコアピース135同士は、コアバック部136の径方向外側の面で溶接されていることが好ましい。
【0082】
このような構成のストレートコア127は、隣り合うコアピース135の間に隙間が空きやすく、磁気特性が劣化しやすい。しかし、本実施形態のように、コアバック部136に設けた被挿入部136aに上述の挿入部材を挿入してステータコアを構成することにより、磁気特性が改善し、コギングトルクが抑制されたモータとなる。
【0083】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。例えば、被挿入部は隣り合う全てのコアピースの間に設けられていなくてもよい。3相モータの場合、ステータコアにおいて、中心軸Jを中心として点対象となる3カ所に被挿入部が設けられ、挿入部材139は、3カ所の被挿入部に挿入されている構成であってもよい。このような構成の場合、コギングトルクが抑制される。
【0084】
また、上述した例において示した各構成部材の諸形状、組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…モータ、11…ロータ、12…ステータ、13…ハウジング、120,126…ステータコア、121…コアバック、123…コイル、127…ストレートコア、131,131A,131B,133,135…コアピース、132,134,136…コアバック部、132a,136a…被挿入部、132b…凹条部、132x,139a…面、134a…凹部、134b…凸部、139,139A,139B…挿入部材、1000…母材、A…接続部位、J…中心軸、α…圧延方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8