特開2019-184354(P2019-184354A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-184354電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置を用いた検査システム及び電子顕微鏡装置を用いた検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-184354(P2019-184354A)
(43)【公開日】2019年10月24日
(54)【発明の名称】電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置を用いた検査システム及び電子顕微鏡装置を用いた検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/00 20060101AFI20190927BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20190927BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20190927BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20190927BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20190927BHJP
【FI】
   G01B15/00 K
   H01J37/22 502H
   H01J37/244
   H01J37/28 B
   H01L21/66 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-73716(P2018-73716)
(22)【出願日】2018年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西畑 貴博
(72)【発明者】
【氏名】大崎 真由香
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼口 晶
(72)【発明者】
【氏名】飯田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】井田 知宏
【テーマコード(参考)】
2F067
4M106
5C033
【Fターム(参考)】
2F067AA16
2F067AA21
2F067AA22
2F067BB04
2F067EE04
2F067HH06
2F067JJ05
2F067LL17
2F067RR20
2F067RR24
2F067RR35
4M106AA01
4M106BA02
4M106CA39
4M106DB01
4M106DH11
4M106DH33
4M106DJ21
4M106DJ27
5C033NN02
5C033NP02
5C033UU04
5C033UU05
(57)【要約】
【課題】電子線の照射位置周辺の対象形状に依存する計測誤差を抑制する。
【解決手段】一次電子発生部(電子銃101)が発射した一次電子102が試料120に照射され、試料120から反射した反射電子110を検出する検出部106と、検出部106からの出力に基づいて、反射電子110による試料120の表面の画像を生成する画像生成部113と、画像生成部113で生成した画像の微分波形信号を生成し、微分波形信号の情報を用いて画像を処理し、試料120に形成されたパターンの寸法を計測する処理部022とを有する電子顕微鏡装置。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次電子発生部が発射した一次電子が試料に照射され、前記試料から反射した反射電子を検出する検出部と、
前記検出部からの出力に基づいて、前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部で生成した前記画像の微分波形信号を生成し、前記微分波形信号の情報を用いて前記画像を処理し、前記試料に形成されたパターンの寸法を計測する処理部と、
を有することを特徴とする電子顕微鏡装置。
【請求項2】
前記検出部は、シンチレータと前記シンチレータに接続する光ファイバと、前記光ファイバと接続する光電子増倍管を有し、50eV以上のエネルギーを持った前記反射電子を検出することを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記微分波形信号が最大となる位置、前記微分波形信号が最小となる位置及び前記微分波形信号の絶対値が最小になる位置の情報を用いて、前記画像を処理することを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記試料に形成されたパターンのエッジの位置情報を求め、前記求めたパターンのエッジの位置情報を用いて前記画像の輝度の分布を補正することを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記試料に形成されたパターンのエッジの位置情報を用いて、前記画像における前記試料の表面の平坦部の輝度が前記画像の全体に亘って等しくなるように補正することを特徴とする請求項4に記載の電子顕微鏡装置。
【請求項6】
一次電子発生部が発射した一次電子が試料に照射され、前記試料から反射した反射電子を検出する検出部と、
前記検出部からの出力に基づいて、前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部で生成した前記画像の微分波形信号を生成し、前記微分波形信号の情報を用いて前記画像を処理して前記試料に形成されたパターンの寸法を計測する処理部と、
前記処理部で処理する条件を入力し、処理した結果を出力する入出力部と、を有し、
前記処理部は、前記微分波形信号の情報を用いて計測した前記パターンの寸法を、予め記憶しておいたしきい値と比較して前記試料に形成されたパターンの寸法の良否を判定し、
前記入出力部は、前記処理部で判定した前記試料に形成されたパターンの寸法の良否の結果を出力することを特徴とする電子顕微鏡装置を用いた検査システム。
【請求項7】
前記検出部は、シンチレータと前記シンチレータに接続する光ファイバと、前記光ファイバと接続する光電子増倍管を有し、50eV以上のエネルギーを持った前記反射電子を検出することを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡装置を用いた検査システム。
【請求項8】
前記処理部は、前記微分波形信号が最大となる位置、前記微分波形信号が最小となる位置及び前記微分波形信号の絶対値が最小になる位置の情報を用いて、前記画像を処理することを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡装置を用いた検査システム。
【請求項9】
前記処理部は、前記試料に形成されたパターンのエッジの位置情報を求め、前記求めたパターンのエッジの位置情報を用いて、前記画像の輝度の分布を補正することを特徴とする請求項6に記載の電子顕微鏡装置を用いた検査システム。
【請求項10】
前記処理部は、前記試料に形成されたパターンのエッジの位置情報を用いて、前記画像における前記試料の表面の平坦部の輝度が前記画像の全体に亘って等しくなるように補正することを特徴とする請求項9に記載の電子顕微鏡装置を用いた検査システム。
【請求項11】
一次電子を試料に照射し、
前記試料から反射した反射電子を検出し、
前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成し、
前記画像の微分波形信号を生成し、
前記微分波形信号の情報を用いて、前記画像を処理して前記試料に形成されたパターンの寸法を計測し、
前記微分波形信号の情報を用いて計測した前記パターンの寸法を、予め記憶しておいたしきい値と比較して前記試料に形成されたパターンの寸法の良否を判定し、
前記判定したパターンの寸法の良否の結果を出力することを特徴とする電子顕微鏡装置を用いた検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡装置、電子顕微鏡装置を用いた検査システム及び電子顕微鏡装置を用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡装置を用いて、試料に形成されたパターンの寸法を計測することが広く行われている。例えば、特許文献1には、電子顕微鏡装置を用いて、試料に形成された穴のパターンの寸法を計測する技術が開示されている。具体的には、超高アスペクト比の穴のトップ径及びボトム径を計測するために、穴底で発生した後方散乱電子(Back Scattered Electron:BSE)を検出している。この際、高加速電圧で加速した一次電子線を試料に照射し、試料で反射した後方散乱電子(BSE)を検出する。これによって、穴底から放出され側壁を突き抜けた“突き抜けBSE”を用いて穴底の観察を行う。
【0003】
このように、特許文献1では、高加速電圧で加速した一次電子線を試料に照射することにより得られるBSE信号(以下、高加速BSE信号という)を用いて、試料に形成された穴のパターンの寸法を計測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−106530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の“突き抜けBSE”は電子線の照射位置の周辺の対象内を突き抜ける。このため、高加速BSE信号は、この突き抜け範囲内の対象形状に応じて変化する。
【0006】
特許文献1では、穴のパターンの寸法を計測する際に、信号波形の最大値(max)と最小値(min値)を使用している。しかし、信号波形の最大値(max)と最小値(min値)は、各々突き抜け範囲内の対象形状により異なってしまう。この結果、特許文献1の寸法計測方法では、電子線の照射位置周辺の対象形状に依存する計測誤差が発生してしまう。
【0007】
本発明の目的は、電子線の照射位置周辺の対象形状に依存する計測誤差を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る電子顕微鏡装置は、一次電子発生部が発射した一次電子が試料に照射され、前記試料から反射した反射電子を検出する検出部と、前記検出部からの出力に基づいて、前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部で生成した前記画像の微分波形信号を生成し、前記微分波形信号の情報を用いて前記画像を処理し、前記試料に形成されたパターンの寸法を計測する処理部とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る電子顕微鏡装置を用いた検査システムは、一次電子発生部が発射した一次電子が試料に照射され、前記試料から反射した反射電子を検出する検出部と、前記検出部からの出力に基づいて、前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部で生成した前記画像の微分波形信号を生成し、前記微分波形信号の情報を用いて前記画像を処理して前記試料に形成されたパターンの寸法を計測する処理部と、前記処理部で処理する条件を入力し、処理した結果を出力する入出力部と、を有し、前記処理部は、前記微分波形信号の情報を用いて計測した前記パターンの寸法を、予め記憶しておいたしきい値と比較して前記試料に形成されたパターンの寸法の良否を判定し、前記入出力部は、前記処理部で判定した前記試料に形成されたパターンの寸法の良否の結果を出力することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る電子顕微鏡装置を用いた検査方法は、一次電子を試料に照射し、前記試料から反射した反射電子を検出し、前記反射電子による前記試料の表面の画像を生成し、前記画像の微分波形信号を生成し、前記微分波形信号の情報を用いて、前記画像を処理して前記試料に形成されたパターンの寸法を計測し、前記微分波形信号の情報を用いて計測した前記パターンの寸法を、予め記憶しておいたしきい値と比較して前記試料に形成されたパターンの寸法の良否を判定し、前記判定したパターンの寸法の良否の結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子線の照射位置周辺の対象形状に依存する計測誤差を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】実施例1に係る走査電子顕微鏡システムの概略の構成を示すブロック図である。
図1B】実施例1で計測対象とする試料に形成されたパターンの断面図である。
図2】実施例1においてシミュレーションに用いたモデルの上面図と、上面図における一点鎖線部A−A’の断面図及び一点鎖線部A−A’においてシミュレーションで計算したBSE信号波形である。
図3】実施例1における原理を説明する図で、穴パターンの断面図および側壁部に電子線を照射した際の電子の軌跡を示す試料の部分断面図である。
図4A】実施例1における原理を説明する図で、電子線を側壁部に照射した際のBSEの散乱の軌跡を示す試料の部分断面図である。
図4B】実施例1における原理を説明する図で、照射された電子が表面から脱出するまでの固体内の透過距離の確率分布と電子のエネルギーと固体内の透過距離との関係を示す図である。
図5】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の側壁部の部分断面図と側壁部における電子線の照射位置の深さと透過距離の確率分布の関係を示すグラフである。
図6A】実施例1における原理を説明する図で、穴パターンの断面図および上面部に電子線を照射した際の電子の軌跡を示す試料の部分断面図である。
図6B】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における、電子線の照射位置からトップエッジまでの距離と電子の散乱との関係を示す試料の部分断面図で、電子線の照射位置からトップエッジまでの距離が長い状態を示している。
図6C】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における、電子線の照射位置からトップエッジまでの距離と電子の散乱との関係を示す試料の部分断面図で、電子線の照射位置からトップエッジまでの距離が図6Bの状態よりも短い状態を示している。
図6D】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における、電子線の照射位置からトップエッジまでの距離と電子の散乱との関係を示す試料の部分断面図で、電子線の照射位置がほぼトップエッジの上である状態を示している。
図7A】実施例1における原理を説明する図で、図2の中段のパターンの断面図における穴の幅が基準幅、基準幅+10%、基準幅−10%と異なるモデルにおける図2上段の試料の平面図における一点鎖線部A−A’ の右半分に相当する断面形状の輪郭線、およびシミュレーションで計算したBSE信号波形と微分信号波形である。
図7B】実施例1における原理を説明する図で、図2の中段のパターンの断面図におけるパターンの側壁角が89.6、89.8、89.9°と異なるモデルにおける図2上段の試料の平面図における一点鎖線部A−A’ の右半分に相当する断面形状の輪郭線、およびシミュレーションで計算したBSE信号波形と微分信号波形である。
図8A】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における対象形状(線幅、側壁角)と電子の散乱との関係を示す幅の広いパターンの断面図である。
図8B】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における対象形状(線幅、側壁角)と電子の散乱との関係を示す図8Aと比べて幅が狭いパターンの断面図である。
図8C】実施例1における原理を説明する図で、計測対象の上面部における対象形状(線幅、側壁角)と電子の散乱との関係を示す図8Aと比べて上端部の幅が狭いパターンの断面図である。
図9A】実施例1における走査電子顕微鏡システムを用いた寸法計測処理を説明するフローチャートである。
図9B】実施例1における走査電子顕微鏡システムを用いた寸法計測処理を説明するフローチャートで、図9Aの処理に続いて穴底の寸法判定を行い処理のフローチャートである。
図10】実施例1における穴パターンのBSE画像とその画像内における寸法計測領域、及び寸法計測領域内のBSE信号波形とその加算平均の信号波形である。
図11】実施例1におけるBSE信号波形とその微分信号波形の図である。
図12】実施例1の寸法計測手法の概要を示すBSE信号波形の図である。
図13A】実施例1における原理を説明する穴パターンの断面図である。
図13B】実施例1における原理を説明する図で、図7Aおよび図7Bに示す信号波形に対して、信号の最大値と最小値の間をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を寸法値として算出した際の、しきい値と対応する寸法計測高さのばらつく範囲の関係を示すグラフである。
図13C】実施例1における原理を説明する図で、図7Aおよび図7Bに示す信号波形に対して、実施例1を適用した際のしきい値と対応する寸法計測高さのばらつく範囲の関係を示すグラフである。
図14】実施例2における寸法計測手法の概要を示すBSE信号波形とその微分信号波形を示す信号波形図である。
図15】実施例3における寸法計測手法の概要を示すBSE信号の波形図である。
図16】実施例4における寸法計測手法の概要を示すBSE信号の波形図である。
図17】実施例5における撮像条件設定の画面の正面図である。
図18】実施例5における寸法計測手法設定ならびに寸法計測条件入力の画面の正面図である。
図19】実施例5における寸法計測結果の出力画面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
図1Aに示すように、本発明の実施の形態に係る電子顕微鏡装置は、一次電子発生部(電子銃101)が発射した一次電子102が試料120に照射され、試料120から反射した反射電子110を検出する検出部(環状のシンチレータ106)と、検出部(環状のシンチレータ106)からの出力に基づいて、反射電子110による試料120の表面の画像を生成する画像生成部113と、画像生成部113で生成した画像の微分波形信号を生成し、微分波形信号の情報を用いて画像を処理し、試料120に形成されたパターンの寸法を計測する処理部022を有する。このように、本発明の実施の形態では、電子線の照射位置周辺の対象形状に依存する計測誤差を抑制するために、画像生成部113で生成した画像の微分波形信号の情報を用いて画像を処理する。
【0015】
具体的には、高エネルギーの電子線(一次電子102)を試料120に照射したときに、試料120から発生するBSE信号110の特性を考慮して、BSE信号110を微分した微分信号波形の極大の位置を試料に形成されたパターンの側壁の上端部として捉えるようにした。さらに、BSE信号110を微分した微分信号波形の絶対値が最小となる位置を試料に形成されたパターンの側壁の下端部として捉え、パターンの側壁の上端部との間のBSE信号波形を抽出する。この抽出された範囲の信号に対して、最大値と最小値の間をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出することで、パターンの形状によらずしきい値に応じた位置(深さ)の寸法を計測できるようにした。
【0016】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態を実現するための実施例について説明する。
【実施例1】
【0017】
(装置構成)
図1Aは本発明が適用される走査電子顕微鏡システムの基本構成の一例である。走査電子顕微鏡システム100は、撮像光学系001、制御部021、処理部022、記憶部023及び入出力部024を有する。
【0018】
撮像光学系001は、電子銃101、コンデンサレンズ103、偏向器104、対物レンズ105、環状のシンチレータ106、光ファイバ111、光電子増倍管(Photo Multiplier:PM)112を備えた電子光学系と、ステージ108と、画像生成部113を備えている。
【0019】
電子銃101は、高加速電圧(15kVより大きい電圧)の一次電子線102を発生させる。コンデンサレンズ103と対物レンズ105は、この一次電子線102を試料120の表面に集束させる。偏向器104は、一次電子線102を試料120の上に二次元的に走査する。環状のシンチレータ106は、試料120から放出される電子のうち、高エネルギー(50eVより大きいエネルギー)のBSE110を受けて光信号に変換する。光ファイバ111はこの光信号を光電子増倍管112に導く。
【0020】
光電子増倍管112は、この光信号を電気信号に変換し増倍する。この増倍された信号(BSE信号)を用いて、画像生成部113はデジタル画像を生成する。ステージ108は試料120を移動させることで、試料120の任意の位置での画像撮像を可能にする。
【0021】
制御部021は、電子銃101周辺に印加する電圧、コンデンサレンズ103および対物レンズ105の焦点位置調整、ステージ108の移動、画像生成部113の動作タイミング等を制御する。処理部022は、画像生成部113で生成された撮像画像を処理して(画像処理)寸法計測処理を行う。
【0022】
記憶部023は、画像生成部113で生成された撮像画像や入出力部024からユーザによって入力された撮像条件、寸法計測条件等を保存する。
【0023】
入出力部024は、表示画面0241を有し、撮像条件の入力、寸法計測条件の入力、寸法計測結果を表示画面0241に表示する出力等を行う。
【0024】
図1Aに示すような構成を用いることで、図1Bに示すような断面の試料120に形成された穴パターン1201の穴底1202に一次電子線を照射したとき、この穴底1202から放出され側壁1203を突き抜けた、“突き抜けBSE”を検出可能である。これにより、穴パターン1201の構造の情報を有する画像を得ることができる。
【0025】
例えば、材質がSiの試料120上に形成された深さ1.5um、アスペクト比10の穴パターン1201を対象とした場合、15kVの加速電圧で一次電子線102を穴底1202に照射する。これにより、穴底1202からBSEが放出され、放出されたBSEの一部は、穴パターン1201の側壁1203を突き抜けて、円環型のシンチレータ106に達する。シンチレータ106に達する電子の中には、試料120の上面で発生した二次電子も含まれるが、エネルギーが50eV以上の電子のみを検出することで、前述の穴パターン1201の側壁1203を突き抜けたBSE成分を多く含む画像を得ることができる。
【0026】
(撮像画像の特徴)
本実施例で用いる走査電子顕微鏡システム100により得られるBSE信号波形の例を、電子線シミュレーション(モンテカルロシミュレーション)の結果を用いて示す。シミュレーション時の加速電圧は30kVとし、BSE信号波形は計測対象から放出される電子のうちエネルギーが50eV以上の電子を検出器(図1の構成の場合は、シンチレータ106)で検出することによって得た。
【0027】
図2の上段の210はシミュレーションに用いたモデルの平面図である。モデルの左側にはパターンのない平坦部(以降、上面部という)2101が続き、右側には正方形状の穴パターン2102が穴の幅と同じ間隔で碁盤の目状に形成されている。
【0028】
図2の中段の250は、平面図210の一点鎖線部A−A’における試料220(図1Aの120に相当)の断面図である。穴パターン221は3D−NANDデバイスのコンタクトホールを想定しており、穴パターン221の深さ200は数マイクロメートル、穴パターン221のアスペクト比は40、側壁角202は89.8°である。
【0029】
図2の230は平面図210の一点鎖線部A−A’においてシミュレーションで計算したBSE信号波形である。側壁部203に相当する部分のBSE信号2031、2032は電子線の照射位置が深いほど減少し、上面部204、205に相当する部分のBSE信号2041、2051は電子線の照射位置が側壁部203に近いほど減少する。また、底面部206に相当する部分のBSE信号2061は電子線の照射位置によらず一定である。
【0030】
図3から図5を用いて、側壁部203におけるBSE信号波形と対象断面形状の関係を詳細に説明する。
【0031】
図3は試料220に形成された穴パターン221の断面図を示しており、この穴パターン221の側壁部203に一次電子線102を照射した際の電子の軌跡の模式図である。ここで、図3図2の断面図250と同じ断面を表しているが、図2に示した断面図250における穴パターン221の側壁部203の傾きを強調して示した図で、図3図2に示した断面図250と縦と横の寸法比が異なる。
【0032】
計測対象の穴パターン221の側壁部203に一次電子線102を照射した場合、試料220内で散乱を繰り返した後に上面部204から上方に放出される電子300(以降、上方飛び出し電子と表記)と、散乱の過程で側壁部203から下方に飛び出す電子301(以降、下方飛び出し電子と表記)及びそのまま試料220の内部を突き進む電子302の三種類が生じる。
【0033】
このうち、上方飛び出し電子300は試料220の上方に配置された上方の検出器(例えば、図1Aのシンチレータ106)にて検出される一方で、下方飛び出し電子301は真空中を直進した後、穴パターン221の深部で再度計測対象内に侵入する。
【0034】
これにより、上面部204から上方に脱出するために必要な試料220の内部を透過する透過距離が長くなるため、下方飛び出し電子301の多くは試料220から脱出できず、この分試料220の上方に配置した検出器であるシンチレータ106で検出される検出信号が減少する。但し、側壁部203では、側壁角が一定であれば照射位置の深さによらず照射位置からの散乱範囲は一定と考えられるため、上方飛び出し電子300と下方飛び出し電子301の割合は一定となる。
【0035】
従って、下方飛び出し電子301による信号の減少量は側壁部では一定とみなし、以下、上方飛び出し電子300に基づくBSE信号量と深さの関係について述べる。
【0036】
図4Aは、一次電子線102を計測対象である試料220に形成された穴パターン221の側壁部203に照射したときに、上面部204から上方に飛び出す上方飛び出し電子300の散乱の軌跡の模式図である。
【0037】
電子は計測対象である試料220の内部でランダムな散乱を繰り返すため、各電子が上面部204から脱出するまでに辿る軌跡は確率的に決まる。図4Aに示す側壁部203から試料220の内部に侵入した一次電子線102の軌跡401、402、403にて、各々の軌跡に沿った固体内(試料320の内部)の透過距離は401<402<403の順に長くなる。
【0038】
図4Bは、計測対象である試料220の側壁部203に照射された各電子の固体内(試料220の内部)の透過距離の確率分布の一例である。試料220の内部での電子の散乱はポアソン過程に従うため、この確率分布410はポアソン分布になると考えられる。
【0039】
グラフ406は、電子のエネルギーと固体内(試料220の内部)の透過距離との関係を示している。電子は固体内の透過距離に応じて照射時に持っていたエネルギーを徐々に失い、一定のエネルギーを失うと計測対象である試料220に吸収される。この透過距離とエネルギーの関係は一般にBetheの式として知られている。
【0040】
すなわち、電子が固体内を透過できる最大の距離(以降、限界透過距離と表記)405は、照射された時の一次電子線102のエネルギーで決まる。例えば一次電子線102として30keVのエネルギーの電子が試料220であるSi基板に侵入した場合、電子の限界透過距離405は6マイクロメートル程度になる。
【0041】
従って、図4Bの上側に示したグラフ(電子の透過距離の確率分布410)において、計測対象である試料220に吸収される前に上面部204から脱出可能な電子は、計測対象である試料220の内部を透過する。図4Bの下側のグラフに示すように、透過距離が限界透過距離405を越えない電子である。この範囲の累計確率404が試料220の上方に配置した検出器であるシンチレータ106で検出されるBSE信号に相当する。
【0042】
図5の上側の断面図は試料220の側壁部203における一次電子線102の照射位置(3031、3032、3033)と上方飛び出し電子3001、3002、3003の関係を示す。下側のグラフは、側壁部203における一次電子線102の照射位置(3031、3032、3033)の深さと透過距離の確率分布の関係を示している。
【0043】
側壁部203における一次電子線102の照射位置3031、3032、3033が順に深くなると、上方飛び出し電子3001、3002、3003が試料220の上面部204から脱出するために必要な固体内透過距離(試料220の内部を通過する道の長さ)が順に長くなり、図5の下側に示したグラフにおける電子の確率分布511、512、513は固体内透過距離が長くなる方向へ推移する。
【0044】
これに伴い、限界透過距離405を越え検出されない電子が増加するため、BSE信号は減少する。照射された電子のエネルギーが大きい場合、例えば15keV以上では、一次電子線102を各照射位置3031、3032、3033に照射したときの固体内(Si基板である試料220の内部)の透過距離の各照射位置における平均値501、502、503は、何れも限界透過距離405よりも大きくなる。
【0045】
従って、BSE信号の検出範囲(図5の下側のグラフでハッチングが施された累計確率404の領域)は常に分布の平均値以下(又は、ピーク値以下)の領域、すなわち透過距離に対して単調増加な範囲となる。
【0046】
検出器(シンチレータ106)で上方飛び出し電子3001、3002、3003を検出して得られるBSE信号はこの範囲の積分値に相当するため、確率分布511、512、513が透過距離の長い方向(図5に示した例では、確率分布が511または512から513の方向)に推移するとBSE信号は減少し、照射位置3031、3032、3033に応じたBSE信号の変化率も減少する。
【0047】
つまり、図2のBSE信号波形230に示すように、側壁部203に電子線を照射した場合、照射位置の深さに応じて、得られるBSE信号は減少し、信号の変化率も減少する。
【0048】
次に、図6A乃至図6Dを用いて、上面部204および205におけるBSE信号波形と対象断面形状の関係を詳細に説明する。
【0049】
図6Aは穴パターンの断面図および上面部に一次電子線102を照射した際の電子の軌跡の模式図である。計測対象(試料220)の表面部(上面部204)に電子線を照射した場合も、側壁部203の場合と同様に上方飛び出し電子300と下方飛び出し電子301及び飛び出さずに下方にそのまま進む電子302の三種類が生じる。上面部204では、照射位置2041からトップエッジ207までの距離によって、上方飛び出し電子300と下方飛び出し電子301の割合が変化すると考えられる。以下、上方飛び出し電子300と下方飛び出し電子301の割合に基づくBSE信号量と一次電子線102の照射位置からトップエッジ207までの距離の関係について述べる。
【0050】
図6B乃至図6Dは計測対象の上面部204における、一次電子線102の照射位置2042乃至2044からトップエッジ207までの距離と電子の散乱との関係を示す図である。照射された電子は計測対象内で散乱を繰り返し、透過距離に応じて拡散範囲を広げていく。この過程で照射された電子の一部は側壁部203から真空中に飛び出す。
【0051】
一般に照射された電子は照射方向に扇状に拡散していくため、照射位置2042乃至2044が側壁部203に近づくと、下方飛び出し電子301の割合が増加し、その増加率も増加する。前述の通り、これらの下方飛び出し電子301の多くは脱出できず検出されないため、下方飛び出し電子301の増分だけ検出信号は減少する。
【0052】
つまり、図2の下側のBSE信号波形230に示すように、上面部204および205に電子線を照射した場合、照射位置がトップエッジ207に近いほど、得られるBSE信号は減少し、信号の変化率は増加する。
【0053】
最後に、底面部206におけるBSE信号波形と対象断面形状の関係を説明する。
計測対象の底面部に電子線を照射した場合は、上方飛び出し電子300のみが生じる。前述の通り、上方飛び出し電子300による信号への影響は、電子線の照射位置の深さに応じて変化する。これより、底面が平坦であれば、照射位置の深さが一定なため、BSE信号も一定となる。
【0054】
つまり、図2の下側のBSE信号波形230に示すように、底面部206に一次電子線102を照射して得られるBSE信号波形は、照射位置によらず一定である。
【0055】
以上より、BSE信号の性質をまとめると、上面部204、205においては、照射位置がトップエッジ207に近くなるほど信号量が減少し、信号の変化率が増加する。側壁部203においては、照射位置が深くなるほど信号量が減少し、信号の変化率は減少する。底面部206においては、一次電子線102の照射位置によらず信号量はほぼ一定であり、信号の変化率はゼロである。
【0056】
これらの性質から、トップエッジ207の位置では信号の変化率すなわち微分信号の絶対値が最大になると考えられる。また、ボトムエッジ208の位置では、信号が最小になると考えられる。
【0057】
図7A及び図7Bを用いて、トップエッジ、ボトムエッジ位置とBSE信号の関係を示す。図7Aの上段は、図2に示した試料220の断面図250に対して穴の幅201が異なるモデルにおける図2の平面図210における一点鎖線部A−A’の右半分に相当する穴パターン221の断面系状の輪郭線2031、2032、2033である。
【0058】
図7Aの中段は、シミュレーションで計算したそれぞれの輪郭線2031、2032、2033に対応する断面形状に対するBSE信号波形20311、20321、20331)である。図7Aの下段は、中段のBSE信号波形20311、20321、20331それぞれに対応する微分信号波形(20312、20322、20332)である。
【0059】
輪郭線2031にはBSE信号波形20311と微分信号波形20312とが対応する。また、輪郭線2032にはBSE信号波形20321と微分信号波形20322とが対応する。更に、輪郭線2033にはBSE信号波形20331と微分信号波形20332とが対応する。
穴パターン221の幅201は基準幅(輪郭線2031)、基準幅+10%(輪郭線2032)、基準幅−10%(輪郭線2033)である。
【0060】
図7Bの上段は、図2に示した断面図250において側壁角202が異なるモデルにおける図2の平面図210における一点鎖線部A−A’の右半分に相当する断面形状の輪郭線2034、2035、2036、および中段は、シミュレーションで計算したBSE信号波形20341、20351、20361、下段は、微分信号波形20342、20352、20362である。
【0061】
輪郭線2034にはBSE信号波形20341と微分信号波形20342とが対応し、輪郭線2035にはBSE信号波形20351と微分信号波形20352とが対応し、輪郭線2036にはBSE信号波形20361と微分信号波形20362とが対応する。
側壁角202は輪郭線2034の場合が89.6°、輪郭線2035の場合が89.8°、輪郭線2036の場合が89.9°である。
【0062】
図7Aでは穴の幅201、すなわち隣接する穴と穴の間の壁の厚さによって、図7Bでは側壁角202によって、上面部205の上方で検出される信号量(BSE信号波形20311、20321、20331及び20341、20351、20361)が変化している。
【0063】
これらは、図8A乃至図8Cに示すように、線幅W1、W2、W3や側壁角θ1、θ2、θ3の変化に伴い、照射位置2045、2046、2047からトップエッジ2077、2078、2079までの距離に応じて下方飛び出し電子3011乃至3015の数が変化する影響と考えられる。
【0064】
このように異なる形状で異なるBSE信号を持つモデルに対しても、図7A及び図7Bに示すように、断面形状のトップエッジ2071乃至2076の各位置にて微分信号20312、20322、20332及び20342、20352、20362の絶対値が最大となっており、ボトムエッジ2081乃至2084の各位置にて信号が最小となっている。
【0065】
そこで、断面形状のトップエッジ(図6Aの207)の位置に相当する微分信号の絶対値が最大となる位置と、ボトムエッジ(図6Aの208)の位置に相当する信号が最小となる位置との間の範囲を側壁部とみなし、この範囲の信号波形を寸法計測に用いる。これにより、トップエッジとボトムエッジの間で深さに応じた寸法の計測が可能になる。
【0066】
(手順)
以下、前述のBSE信号波形の性質を踏まえた寸法計測処理について説明する。
図9Aは、図1に示す走査電子顕微鏡システム100を用いた寸法計測処理を説明するフローチャートの例である。
【0067】
はじめに、入出力部024は、ユーザから撮像倍率、加速電圧等の撮像条件の入力を受け付ける(S100)。
続いて、撮像光学系001は入力された撮像条件に基づき計測対象のBSE画像を撮像する(S101)。
【0068】
次に、このBSE画像に対し、入出力部024は、寸法計測領域等の寸法計測条件の入力を受け付ける(S102)。例えば、図10に示す穴パターン1020のBSE画像1050の例において、穴パターン1020の幅を計測する場合は、ユーザがGUI上で長方形のカーソル1010を用いて計測対象を含むように選択することで寸法計測領域1000の入力を受け付ける。また、このカーソル1010の位置情報と合わせて、寸法計測の方向や寸法計測に用いるしきい値等の計測パラメタの入力も受け付ける。
【0069】
これらの寸法計測条件は予めユーザが設定して記憶部023に登録しておくことで、計測時に処理部022が登録済みの寸法計測条件を利用することも可能である。これにより、同じ工程で製造されたパターンの寸法を同じ寸法計測条件で計測可能となる。
【0070】
次に、処理部022は、入力された寸法計測条件に基づきBSE画像1050内の寸法計測領域1000内のBSE信号波形1001−1乃至1001−nを取得する(S103)。例えば、図10に示すように、寸法計測領域1000内において、寸法計測の方向に沿ったBSE信号波形1001−1乃至1001−nの加算平均を取ることで、ノイズの影響を低減したBSE信号波形1002を得ることができる。
【0071】
図11を用いて、S104からS106までの処理について述べる。図11はBSE信号波形1100とその微分信号波形1101の一例である。
処理部022は、取得したBSE信号波形1100の微分信号波形1101を計算する(S104)。
【0072】
次に、処理部022は、この微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102と、ゼロになる位置1103を取得する(S105)。これにより、計測対象のトップエッジ位置とボトムエッジ位置を捉えることができる。なお、微分信号波形1101がゼロになる位置1102の代わりに微分信号波形1101の絶対値が最小になる位置を用いても同様の効果が得られる。
【0073】
次に、処理部022は、微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102と、ゼロになる位置1103の間の図11でハッチングで示した範囲1104のBSE信号波形1105(図11で太線で示した波形の範囲)を抽出する(S106)。この抽出されたBSE信号波形は、前述の通り、計測対象の側壁部に対応する。
【0074】
次に、処理部022は、S106で抽出されたBSE信号波形1105に対し、入力されたしきい値等の寸法計測条件を用いて寸法計測を行う(S107)。図12は本実施例の寸法計測手法の概要を説明する図である。本実施例はS106で抽出された範囲1104のBSE信号波形1105の最大値1200と最小値1211の間をユーザが指定したしきい値で内分する信号1212に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離1213を算出する。
【0075】
前述の抽出された範囲1104のBSE信号波形1100は側壁部のBSE信号に相当し、深さによって変化するため、指定したしきい値に応じた深さにおける寸法(左右の位置の間の距離)1213を計測可能である。これにより、対象形状に依存した計測誤差を低減でき、高精度な寸法計測が可能となる。
【0076】
最後に、入出力部024は演算部022にて算出された寸法計測結果を入出力部024の表示画面0241に表示するとともに、図示していない回線を通じて、外部の情報処理装置又は記憶装置に出力する(S108)。
【0077】
一方、S106において求めた微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102の情報から、BSE信号波形上で左右のトップエッジ207の位置を求めることができる。この求めた左右のトップエッジ207の外側(試料の上面部204と205に対応する領域)では、図2の断面図250に示すように、試料の上面部204と205とは本来同じ高さに形成されている。
【0078】
しかし、BSE信号のレベル(画像にしたときの輝度レベル)は周辺に形成されたパターンの影響を受けて必ずしも同じレベルにはならない。このBSE信号をそのまま用いて画像を形成すると、穴パターン221の周囲の表面部分に明るさのむらが生じた画像となってしまう。
【0079】
そこで、本実施例においては、トップエッジ207の位置情報を用いて、このトップエッジの外側(試料の上面部204と205に対応する領域)の画像の輝度レベルを平均化又はトップエッジ207の位置の輝度に合わせて補正することにより、BSE画像において、試料表面の色むらが修正された(色むらが低減又は色むらをなくした)BSE画像を生成することができる。
【0080】
図9Aに示したフローチャートは、寸法計測して(S107)その結果を出力する(S108)ステップまでであったが、更に、計測した結果から、良否を判定しても良い。
【0081】
図9Bには、図9Aの寸法計測(S107)の後に行う良否判定のフローを示す。即ち、図9Bに示したフロー図においては、図9Aで説明した寸法計測(S107)までのフローに続いて、S107で計測した寸法のうち穴底の寸法を予め記憶しておいたしきい値と比較する(S109)。
【0082】
比較した結果、計測した穴底の寸法がしきい値より大きければ穴が正しく形成されているとして合格とし、しきい値より小さければ穴が正しく形成されていないとして不合格とする穴底寸法判定を実行し(S110)、その判定結果を入出力部024の表示画面0241に表示するとともに、図示していない回線を通じて、外部の情報処理装置又は記憶装置に出力する(S111)。
【0083】
図13A乃至図13Cを用いて、実施例1の効果を示す。図13Aは穴パターン1300の断面図の一例である。図13Aに示すように、穴パターン1300をしきい値1310で寸法計測した際の寸法計測値1301に対応する側壁部における位置の、底部からの高さを寸法計測高さ1302と定義する。
【0084】
図13Bは、図7Aおよび図7Bに示すBSE信号波形を用いて寸法計測した際の、寸法計測に用いたしきい値1310と対応する寸法計測高さ1302がばらつく範囲の関係を示す。図13Bは、BSE信号波形の最大値と最小値の位置の間の範囲の信号波形に対して、信号の最大値と最小値をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出した結果であり、従来の寸法計測手法による計測結果に相当する。
【0085】
図13Cは、BSE信号波形から求めた微分信号波形の絶対値が最大になる位置とゼロになる位置の間の範囲のBSE信号波形に対して、信号の最大値と最小値をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出した場合であり、本実施例による計測結果に相当する。図13Bに比べて図13Cの方が、しきい値1310に対する寸法計測高さ1302のばらつきが小さい。つまり、本実施例を用いることで、対象形状によらず安定した寸法計測高さの寸法を計測できるため、高精度な寸法計測が可能である。
【0086】
また、図10に示す寸法計測領域1000を選択するカーソル1010は、ユーザが任意に設定するが、信号波形1002に示すように信号の最大値がカーソル端部に位置する場合、カーソル1010の配置によって最大値が変化する。従って、信号の最大値を用いる従来の寸法計測手法では、カーソル1010の配置によって寸法計測値が変化するという課題がある。これに対し、カーソル1010が計測対象1020を含むように配置されてさえいれば、微分信号の絶対値の最大値は常に寸法計測領域1000内に位置し、カーソル1010の配置によって変化しない。つまり、本実施例を用いることで、カーソル1010の配置に依らない安定な寸法計測が可能である。同様の効果は、本実施例に示すBSE信号波形を用いた計測に限らず、SE信号波形等を用いた場合にも得ることができる。
【0087】
なお、上記した実施例1では、穴パターンの例について説明したが、溝パターンに対しても適用することができ、同様な効果が得られる。
【0088】
また、上記した実施例では、対象を深い穴と想定し電子銃101の加速電圧を15kV以上としたが、浅い穴については、突き抜け電子が検出できる加速電圧であれば15kV未満でも、同様な効果が得られる。
【実施例2】
【0089】
実施例2では、実施例1にて述べた寸法計測において、BSE信号波形の代わりに、微分信号波形に対して、信号の最大値と最小値をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出する手法を用いる例について述べる。
実施例2で用いる走査電子顕微鏡システムの構成は、実施例1で説明した図1に示す走査電子顕微鏡システム100と同じである。
【0090】
また、本実施例のフローは図9の実施例1のフロー図における寸法計測(S107)を除き同じであるため、寸法計測(S107)についてのみ、図14を用いて述べる。
BSE信号波形1100から求めた微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102と、ゼロになる位置1103の間のハッチングで示した範囲1104で抽出されたBSE信号波形1105を用いて抽出された微分信号波形1110(図14で太線で示した波形の範囲)を生成する。
【0091】
次に、この抽出された微分信号波形1110に対して、入力されたしきい値等の寸法計測条件を用いて寸法計測を行う。微分信号波形1110の絶対値の最大値1400とゼロ1401の間をユーザが指定したしきい値で内分する微分信号1402に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離1403を算出する。前述の抽出された微分信号波形1110は側壁部203の微分信号に相当する。
【0092】
BSE信号波形1105に対して、信号の最大値と最小値をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出する手法は、最大信号と最小信号の範囲に対してしきい値を切るため、穴底付近の寸法計測をする場合、信号変化量が前述の範囲に対して小さい影響でしきい値の設定の裕度が小さい。
【0093】
一方で、微分信号波形1110に対して、信号の最大値と最小値をユーザが指定したしきい値で内分する信号に相当する位置を検出し、この左右の位置の間の距離を算出する手法は信号の最大変化率に対してしきい値を切るため、穴底付近の波形に対しても比較的しきい値の裕度が大きい。従って、実施例2は穴底付近の寸法計測に効果的である。
【実施例3】
【0094】
実施例3では、実施例1にて述べた寸法計測において、BSE信号波形の代わりに、トップエッジ207に相当する信号変化率が最大になる位置とボトムエッジ208に相当する信号が最小になる位置とを結ぶ直線を用いる例について述べる。
実施例3で用いる走査電子顕微鏡システムの構成は、実施例1で説明した図1に示す走査電子顕微鏡システム100と同じである。
【0095】
また、本実施例のフローは図9の実施例1のフロー図における寸法計測(S107)を除き同じであるため、寸法計測(S107)についてのみ、図15を用いて述べる。
微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102と、ゼロになる位置1103の間の範囲1104で抽出されたBSE信号波形1105(図11参照)に対して、入力されたしきい値等の寸法計測条件を用いて寸法計測を行う。
【0096】
BSE信号波形1105において、微分信号波形1101が最大値となるBSE信号波形上の位置1500と微分信号波形1101が最小値となるBSE信号波形上の位置1501との間を直線1503で結び、ユーザが指定したしきい値1502で内分する位置を検出し、この左右の位置の間の距離1504を算出する。前述の抽出されたBSE信号波形1100は側壁部203のBSE信号に相当するため、本実施例を用いれば、側壁角が一定の場合にしきい値と同じ割合の深さの寸法を計測可能である。
【実施例4】
【0097】
実施例4では、実施例1にて述べた寸法計測において、BSE信号波形の代わりに、トップエッジ207に相当する信号変化率が最大になる位置とボトムエッジ208に相当する信号が最小になる位置とを結ぶ曲線を用いる例について述べる。
実施例4で用いる走査電子顕微鏡システムの構成は、実施例1で説明した図1に示す走査電子顕微鏡システム100と同じである。
【0098】
また、本実施例のフローは図9の実施例1のフロー図における寸法計測(S107)を除き同じであるため、寸法計測(S107)についてのみ、図16を用いて説明する。
微分信号波形1101の絶対値が最大になる位置1102と、ゼロになる位置1103の間の範囲1104で抽出されたBSE信号波形1105(図11参照)に対して、入力されたしきい値等の寸法計測条件を用いて寸法計測を行う。
【0099】
BSE信号波形1105において、微分信号波形1101が最大値となるBSE信号波形上の位置1600と微分信号波形1101が最小値となるBSE信号波形上の位置1601との間を曲線1620で結び、ユーザが指定したしきい値1602で内分する位置を検出し、この左右の位置の間の距離1604を算出する。ここで、曲線1620の求めかたは、多項式近似法によって求めても良いし、又はシグモイド関数を用いて求めても良い。
【0100】
実施例4を用いれば、実施例1と比べてBSE信号波形上のノイズの影響を低減できるため、高精度な寸法計測が可能となる。
【実施例5】
【0101】
実施例5は、本発明の実施形態を実行するためのユーザ・インタフェースである。実施例1から実施例4に示した計測を自動で行うためには、事前に、種々の条件を指定したレシピを作成する必要がある。レシピでは、図17に示す撮像条件設定ボックスの他、図10に示す計測対象のBSE画像および寸法計測領域1000の表示ボックスを入出力部024の画面上に表示する。
【0102】
また、図18に示す実施例1から実施例4にて述べた寸法計測手法を選択する寸法計測手法選択ボックスおよび寸法計測条件設定ボックスを入出力部024の画面上に表示する。
さらに、図11に示すBSE信号波形と微分信号波形および側壁部抽出領域の表示ボックス、そして図19に示す計測結果出力ボックスを入出力部024の画面上に表示する。
【0103】
実施例5によれば、本発明の実施形態を実行するのに、ユーザ入力が必要な項目を指定することができる。
【符号の説明】
【0104】
001…撮像光学系、021…制御部、022…演算部、023…記憶部、024…入出力部、100…走査電子顕微鏡システム、101…電子銃、102…一次電子線、103…コンデンサレンズ、104…偏向器、105…対物レンズ、106…シンチレータ、108…ステージ、110…BSE、111…光ファイバ、112…光電子増倍管、113…画像生成部、120…試料
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
図19