特開2019-190642(P2019-190642A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-190642(P2019-190642A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/853 20060101AFI20191004BHJP
   B60T 5/00 20060101ALI20191004BHJP
   F16D 55/28 20060101ALI20191004BHJP
   B60T 17/02 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   F16D65/853
   B60T5/00 B
   F16D55/28 Z
   B60T17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-87565(P2018-87565)
(22)【出願日】2018年4月27日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智徳
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 悠介
【テーマコード(参考)】
3D049
3J058
【Fターム(参考)】
3D049BB26
3D049CC07
3D049HH12
3D049HH20
3D049QQ04
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA38
3J058CC15
3J058CC62
3J058DE03
3J058FA06
(57)【要約】
【課題】例えば、ブレーキロータの回転抵抗をより低減することが可能な冷却機構を有したブレーキ装置を得る。
【解決手段】ブレーキ装置は、例えば、ブレーキステータと、回転中心回りに回転可能に設けられたブレーキロータと、ブレーキステータとブレーキロータとを回転中心の軸方向に近付けて摺動させることによりブレーキロータを制動するアクチュエータと、ブレーキステータとブレーキロータとを収容するとともに、冷却媒体を収容可能なケースと、ケース内に冷却媒体が収容された第一状態と、ケース内の冷却媒体の量が第一状態よりも少ない第二状態と、を切り替え可能な冷却機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキステータと、
回転中心回りに回転可能に設けられたブレーキロータと、
前記ブレーキステータと前記ブレーキロータとを前記回転中心の軸方向に近付けて摺動させることにより前記ブレーキロータを制動するアクチュエータと、
前記ブレーキステータと前記ブレーキロータとを収容するとともに、冷却媒体を収容可能なケースと、
前記ケース内に前記冷却媒体が収容された第一状態と、前記ケース内の前記冷却媒体の量が前記第一状態よりも少ない第二状態と、を切り替え可能な冷却機構と、
を備えた、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記冷却機構は、
前記ケースから排出された前記冷却媒体を貯留するリザーバと、
前記リザーバ内から前記ケース内への前記冷却媒体の移送、および前記ケース内から前記リザーバ内への前記冷却媒体の移送のうち少なくとも一方を実行する移送機構と、
を有した、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記冷却機構は、前記第一状態および前記第二状態のうち少なくとも一方を保持する保持機構を有した、請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記アクチュエータによる制動時に前記第一状態とし、前記アクチュエータによる制動の解除時に前記第二状態とする、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ブレーキロータの非回転時に前記第一状態とし、前記ブレーキロータの回転時に前記第二状態とする、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記移送機構は、前記リザーバ内から前記ケース内への前記冷却媒体の移送、および前記ケース内から前記リザーバ内への前記冷却媒体の移送のうち一方を実行し、
前記リザーバ内から前記ケース内への前記冷却媒体の移送、および前記ケース内から前記リザーバ内への前記冷却媒体の移送のうち他方は、前記冷却媒体の自重により実行される、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却媒体を作用させることによりブレーキロータとブレーキパッドとの摩擦熱による温度上昇を抑制するブレーキ装置が、知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−145915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブレーキ装置では、ブレーキロータが常時冷却媒体と接しているため、非制動時においては、回転するブレーキロータが冷却媒体と接することにより、ブレーキロータの回転抵抗(引き摺りトルク)ひいては駆動源のエネルギロスが増大しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、ブレーキロータの回転抵抗をより低減することが可能な冷却機構を有したブレーキ装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のブレーキ装置は、例えば、ブレーキステータと、回転中心回りに回転可能に設けられたブレーキロータと、上記ブレーキステータと上記ブレーキロータとを上記回転中心の軸方向に近付けて摺動させることにより上記ブレーキロータを制動するアクチュエータと、上記ブレーキステータと上記ブレーキロータとを収容するとともに、冷却媒体を収容可能なケースと、上記ケース内に上記冷却媒体が収容された第一状態と、上記ケース内の上記冷却媒体の量が上記第一状態よりも少ない第二状態と、を切り替え可能な冷却機構と、を備える。
【0007】
このような構成によれば、例えば、冷却機構は、第一状態と第二状態とを切り替え可能であるため、第一状態において冷却媒体により摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、第二状態において冷却媒体によるブレーキロータの回転抵抗の増大を抑制することができる。
【0008】
また、上記ブレーキ装置では、上記冷却機構は、上記ケースから排出された上記冷却媒体を貯留するリザーバと、上記リザーバ内から上記ケース内への上記冷却媒体の移送、および上記ケース内から上記リザーバ内への上記冷却媒体の移送のうち少なくとも一方を実行する移送機構と、を有する。このような構成によれば、例えば、移送機構により、第一状態と第二状態との切り替えをより円滑にあるいはより確実に実行することができる。
【0009】
また、上記ブレーキ装置は、上記冷却機構は、上記第一状態および上記第二状態のうち少なくとも一方を保持する保持機構を有する。このような構成によれば、例えば、第一状態と第二状態との切り替えによって得られる効果を、より確実に得ることができる。
【0010】
また、上記ブレーキ装置は、例えば、上記アクチュエータによる制動時に上記第一状態とし、上記アクチュエータによる制動の解除時に上記第二状態とする。このような構成によれば、例えば、制動時に摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、制動の解除時すなわち非制動時に回転抵抗の増大を抑制することができる。
【0011】
また、上記ブレーキ装置は、例えば、上記ブレーキロータの非回転時に上記第一状態とし、上記ブレーキロータの回転時に上記第二状態とする。このような構成によれば、例えば、ブレーキロータの非回転時に摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、ブレーキロータの回転時に回転抵抗の増大を抑制することができる。
【0012】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記移送機構は、上記リザーバ内から上記ケース内への上記冷却媒体の移送、および上記ケース内から上記リザーバ内への上記冷却媒体の移送のうち一方を実行し、上記リザーバ内から上記ケース内への上記冷却媒体の移送、および上記ケース内から上記リザーバ内への上記冷却媒体の移送のうち他方は、上記冷却媒体の自重により実行される。このような構成によれば、例えば、比較的簡素な構成によってケース内とリザーバ内との間で冷却媒体を移送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、非制動状態を示す図である。
図2図2は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、制動状態を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の変形例のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図である。
図4図4は、第2実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図である。
図5図5は、第3実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
また、以下の実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。また、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために便宜上付与されており、優先順位や順番を示すものではない。また、以下では、シャフト12の回転中心Axの軸方向を単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を単に周方向と称する。
【0016】
[第1実施形態]
図1,2は、本実施形態のブレーキ装置100Aの構成図であって、図1は、非制動状態を示し、図2は、制動状態を示している。図1に示されるように、ブレーキ装置100Aは、摩擦ブレーキ機構10と、アクチュエータ20と、冷却機構30Aと、を有している。ブレーキ装置100Aは、摩擦ブレーキ機構10において、車両の駆動源から車輪に至る回転伝達経路に含まれる回転体(不図示)と連動して回転するディスクロータ13を摩擦制動することにより、車両を減速する。すなわち、ブレーキ装置100Aは、車両用の制動装置である。アクチュエータ20は、押圧部材22を軸方向に動かすことにより、摩擦ブレーキ機構10におけるディスクロータ13の制動状態(図2)と非制動状態(図1)とを切り替える。また、冷却機構30Aは、ディスクロータ13および摩擦材14a,14bに冷却媒体Cを作用させることにより、ディスクロータ13および摩擦材14a,14bの摩擦熱に伴う温度上昇を、抑制する。
【0017】
摩擦ブレーキ機構10は、ケース11、シャフト12、ディスクロータ13、および摩擦材14a,14bを有している。
【0018】
ケース11の形状は、円筒状である。ケース11は、第一端壁11a、第二端壁11b、および周壁11cを有している。第一端壁11aは、軸方向と交差している(略直交している)。第一端壁11aの形状は、円板状である。第二端壁11bは、軸方向と交差している(略直交している)。第二端壁11bは、第一端壁11aと軸方向に並び、第一端壁11aと略平行である。第二端壁11bの形状は、円板状である。周壁11cの形状は、円筒状である。周壁11cは、第一端壁11aの外縁と第二端壁11bの外縁との間で軸方向に延びている。周壁11cは、側壁とも称されうる。なお、周壁11cの中心線は、回転中心Axと略一致しているが、これには限定されない。また、ケース11の材料は、例えば、アルミ二ウム合金のような金属材料であるが、これには限定されない。
【0019】
ケース11の内部には、第一端壁11a、第二端壁11b、および周壁11cによって囲まれた収容室Rが設けられている。ケース11は、収容室R内に冷却媒体C(図2参照)を収容可能に構成されている。ケース11には、収容室R内に冷却媒体Cを導入するとともに収容室R外に冷却媒体Cを排出するポート11dが設けられている。なお、ポート11dは、第一端壁11aまたは第二端壁11bに設けられてもよい。
【0020】
シャフト12は、第一端壁11aに設けられた貫通孔11a1を貫通し、軸方向に延びている。シャフト12は、回転中心Ax回りに回転可能にベアリング15aを介して第一端壁11aに支持されている。
【0021】
ディスクロータ13の形状は円盤状である。ディスクロータ13の中央部には回転中心Axに沿う貫通孔13cが設けられている。シャフト12は、貫通孔13cを貫通している。ディスクロータ13は、例えばスプライン嵌合構造のような、ディスクロータ13が周方向にはシャフト12と一体的に回転し軸方向にはシャフト12に対して相対的に移動可能な接続構造を介して、シャフト12と接続されている。なお、接続構造は、スプライン嵌合構造には限定されない。
【0022】
第一端壁11aには、ディスクロータ13と面した摩擦材14aが設けられている。ディスクロータ13は、摩擦材14aと面した被制動面13aと、当該被制動面とは反対側の被制動面13bと、を有している。被制動面13bは、押圧部材22に設けられた摩擦材14bと面している。摩擦材14aは、被制動面13aの外周部に沿って円環状に配置され、摩擦材14bは、被制動面13bの外周部に沿って円環状に配置されている。ディスクロータ13は、ブレーキロータの一例であり、被制動部材と称されうる。摩擦材14aおよび第一端壁11aは、ブレーキステータの一例である。なお、摩擦材14a,14bは、ディスクロータ13に設けられてもよい。その場合、摩擦材14aは、ブレーキロータの一例となる。
【0023】
アクチュエータ20は、モータ21および押圧部材22を有している。モータ21は、軸方向に延びたモータシャフト21aを有している。モータシャフト21aの回転中心と、シャフト12の回転中心Axとは、軸方向に並んでいる。モータ21は、供給された電力によりモータシャフト21aを回転させることができる。押圧部材22の形状は円盤状である。押圧部材22の中央部には回転中心Axに沿う貫通孔22aが設けられている。モータシャフト21aは、貫通孔22a、および第二端壁11bの中央部に設けられた回転中心Axに沿う貫通孔11b1を、貫通している。モータシャフト21aは、回転中心Ax回りに回転可能にベアリング15bを介して第二端壁11bに支持されている。
【0024】
押圧部材22は、ディスクロータ13を挟んで摩擦材14aとは軸方向の反対側に位置されている。押圧部材22は、モータシャフト21aの回転を押圧部材22の直動に変換する運動変換機構23を介して、モータシャフト21aと接続されている。運動変換機構23は、雄ねじ21a1、雌ねじ22a1、および回転制限部23aを有している。雄ねじ21a1は、モータシャフト21aの外周に設けられている。雌ねじ22a1は、押圧部材22の貫通孔22aの内周に設けられ、雄ねじ21a1と噛み合う。回転制限部23aは、例えば、ケース11の周壁11cに設けられ、押圧部材22の回転を制限するとともに、軸方向への移動を案内する軸方向に延びた平面(内面)であるが、これには限定されない。回転制限部23aは、案内部と称されうる。このような運動変換機構23により、モータシャフト21aの所定方向への回転が、押圧部材22の第一端壁11aに近付く軸方向(図1,2では左方)への直動に変換され、他方、モータシャフト21aの所定方向とは反対方向への回転が、押圧部材22の第一端壁11aから離れる軸方向(図1,2では右方)への直動に変換される。なお、運動変換機構23は、互いに噛み合う雄ねじ21a1および雌ねじ22a1を含むねじ機構を有するものには限定されない。また、アクチュエータ20は、本実施形態では、モータ21を含む構成であったが、これには限定されず、例えば、流体圧のピストン(シリンダ)を有するものであってもよい。
【0025】
第一端壁11aとディスクロータ13との間には、ディスクロータ13を第一端壁11aおよび摩擦材14aから離れる方向に付勢するスプリング16が位置されている。スプリング16は、軸方向の圧縮ばねとして機能している。スプリング16は付勢部材とも称されうる。
【0026】
このような構成のブレーキ装置100Aにあっては、アクチュエータ20が押圧部材22を第一端壁11aに近付けると、ディスクロータ13は押圧部材22に押され第一端壁11aに近付くように、すなわち図1の左方に向けて、軸方向に移動する。この場合、ディスクロータ13は、二つの摩擦材14a,14bによって軸方向に挟まれる。ディスクロータ13の被制動面13a,13bが摩擦材14a,14bと摺動することにより、摩擦ブレーキ機構10は、図2に示されるような、ディスクロータ13が摩擦制動された制動状態となる。他方、アクチュエータ20が押圧部材22を第一端壁11aから遠ざけると、ディスクロータ13は、スプリング16の付勢力により、第一端壁11aから遠ざかるように、すなわち図2の右方に向けて、軸方向に移動する。この場合、摩擦ブレーキ機構10は、図1に示されるような、ディスクロータ13の摩擦制動が解除された非制動状態となる。
【0027】
図2の制動状態においては、ディスクロータ13と摩擦材14a,14bとの摩擦摺動により、摩擦熱が発生する。制動状態において、ディスクロータ13および摩擦材14a,14bに、収容室R内に収容された例えば油のような液体としての冷却媒体Cを作用させると、摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができる。しかしながら、図1の非制動状態においても、ディスクロータ13の周囲に当該ディスクロータ13と接するように冷却媒体Cが介在すると、当該冷却媒体Cの粘性により、冷却媒体Cが介在しない場合に比べてディスクロータ13の回転抵抗(引き摺りトルク)が大きくなる。
【0028】
そこで、本実施形態の冷却機構30Aは、制動状態(図2)においては、収容室R内においてディスクロータ13および摩擦材14a,14bに作用する冷却媒体Cの量が比較的多い第一状態となり、非制動状態(図1)においては、収容室R内においてディスクロータ13および摩擦材14a,14bに作用する冷却媒体Cの量が第一状態よりも少ない第二状態となるよう、冷却媒体Cの存在する状態を切り替える。
【0029】
冷却機構30Aは、リザーバ31、電動ポンプ32、電磁弁33、およびチェック弁34を備えている。収容室R内とリザーバ31内とは、互いに並列な通路35a,35bを介して接続されている。通路35a,35bは、配管や、ホース、ブロック内に設けられた穴や溝等によって、構成されうる。
【0030】
リザーバ31は、冷却媒体Cを貯留することができる。図1,2では、説明の便宜上、リザーバ31は摩擦ブレーキ機構10のケース11と比較して小さく描かれているが、リザーバ31は、例えば、制動状態(図2)で収容室R内に収容される冷却媒体Cの少なくとも半分以上、一例としては全量を、収容し、かつ貯留することができる。本実施形態では、リザーバ31は、車両の使用状態においてケース11の収容室Rよりも下方に位置されている。
【0031】
電動ポンプ32およびチェック弁34は、通路35aに設けられている。チェック弁34は、逆止弁や一方向弁とも称され、本実施形態では、リザーバ31内から収容室R内への冷却媒体Cの流れを許容し、収容室R内からリザーバ31内への冷却媒体Cの流れを禁止する。電動ポンプ32は、electronic control unit36(以下、ECU36と記す)によって制御されたモータ32aの回転に応じて作動し、通路35aを介して冷却媒体Cをリザーバ31内から収容室R内へ移送する。なお、電動ポンプ32は、例えばトロコイドポンプを有するが、ポンプの形式はこれには限定されない。ECU36は、コントローラや制御装置と称されうる。なお、ECU36は、アクチュエータ20(モータ21)の作動も制御する。
【0032】
電磁弁33は、通路35bに設けられている。電磁弁33は、ECU36によって制御され、通路35bの開状態(図1)と閉状態(図2)とを切り替える。
【0033】
ケース11を構成する壁(例えば周壁11c)には、貫通穴としての呼吸穴11eが設けられている。呼吸穴11eは、通気性かつ防水性を有したプラグ11fで塞がれたり、通気性かつ防水性を有した蓋(不図示)で覆われたりしてもよい。また、ケース11には、呼吸穴11eを経由したケース11外から収容室R内への液体の通過、または呼吸穴11eを経由した収容室R内からケース11外への液体の通過を抑制する折返し通路構造(ラビリンス構造、不図示)が設けられてもよい。なお、リザーバ31にもケース11と同様の呼吸穴(不図示)およびそれに付随する構成が設けられる。また、呼吸穴は、エア抜き孔とも称されうる。
【0034】
ECU36は、非制動状態(図1)においては、ケース11の収容室R内の冷却媒体Cが第一状態(図2)よりも少ない第二状態となるよう、電動ポンプ32の作動を停止するとともに電磁弁33を開状態とする。リザーバ31は収容室Rよりも下方に位置されているため、このような制御により、収容室R内に収容されている冷却媒体Cは、冷却媒体Cの自重、すなわち冷却媒体Cの位置エネルギ(水頭)によって、通路35bを経由してリザーバ31内に流入する。通路35bは、排出通路とも称されうる。また、通路35aにはチェック弁34が設けられているため、冷却媒体Cは通路35aを経由して収容室内からリザーバ31内に流れることはできない。第二状態における収容室R内の冷却媒体Cの量は、回転抵抗(引き摺りトルク)が所定値以下となるよう設定されうる。
【0035】
他方、ECU36は、制動状態(図2)においては、収容室R内の冷却媒体Cが第二状態(図1)よりも多い第一状態となるよう、電動ポンプ32を作動させるとともに電磁弁33を閉状態とする。このような制御により、リザーバ31内に収容されている冷却媒体Cは、電動ポンプ32の作動により、通路35aを経由して収容室R内に流入する。通路35bは、導入通路とも称されうる。また、電磁弁33は閉状態であるため、冷却媒体Cは通路35bを経由して収容室R内からリザーバ31内に流れることはできない。この場合、ECU36は、電動ポンプ32の作動時間、または電動ポンプ32若しくはモータ32aの回転回数によって、電動ポンプ32による冷却媒体Cの移送量、ひいては第一状態における収容室R内での冷却媒体Cの量を制御することができる。ECU36は、電動ポンプ32の停止後においては、電磁弁33の閉状態を維持することができる。電磁弁33が閉状態にある間は、閉状態の電磁弁33およびチェック弁34により、通路35a,35bを介した収容室R内からリザーバ31内への冷却媒体Cの流れは阻止される。すなわち、電磁弁33およびチェック弁34により、冷却媒体Cは、収容室R内に保持される。本実施形態では、電動ポンプ32は、冷却媒体Cをリザーバ31内から収容室R内へ移送する移送機構の一例であり、電磁弁33およびチェック弁34は、第一状態を保持する保持機構の一例である。第一状態における収容室R内の冷却媒体Cの量は、所要の冷却性能が得られるよう、例えばディスクロータ13と摩擦材14a,14bとの摩擦摺動領域の少なくとも一部が浸漬するよう設定されうる。制動状態は、ディスクロータ13の減速状態あるいは停止状態(非回転状態)である。
【0036】
以上、説明したように、冷却機構30Aは、第一状態(図2)と、当該第一状態よりも収容室R内(ケース11内)の冷却媒体Cの量が少ない第二状態(図1)とを、切り替えることができる。よって、本実施形態によれば、例えば、第一状態において冷却媒体Cによりディスクロータ13(ブレーキロータ)と摩擦材14a(ブレーキステータ)および摩擦材14bとの摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、第二状態において冷却媒体Cによるディスクロータ13の回転抵抗(引き摺りトルク)の増大を抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態では、電動ポンプ32(移送機構)がリザーバ31内から収容室R内(ケース11内)へ冷却媒体Cを移送する。よって、本実施形態によれば、電動ポンプ32により、第二状態から第一状態への切り替えをより円滑にあるいはより確実に実行することができる。
【0038】
また、本実施形態では、電磁弁33およびチェック弁34(保持機構)が、収容室R内に冷却媒体Cが第二状態(図1)よりも多く収容された第一状態(図2)を保持する。よって、本実施形態によれば、例えば、第一状態において冷却媒体Cによって得られる冷却効果をより確実に得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、ECU36は、アクチュエータ20による制動時に第一状態となり、アクチュエータ20による制動の解除時に第二状態となるよう、電動ポンプ32および電磁弁33を制御する。よって、本実施形態によれば、例えば、制動時に摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、制動解除時すなわち非制動時に回転抵抗の増大を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ECU36は、ディスクロータ13(ブレーキロータ)の非回転時に第一状態となり、ディスクロータ13の回転時に第二状態となるよう、電動ポンプ32および電磁弁33を制御する。よって、本実施形態によれば、例えば、ディスクロータ13の非回転時に摩擦熱に伴う温度上昇を抑制することができるとともに、ディスクロータ13の回転時に回転抵抗の増大を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態では、収容室R内からリザーバ31内への冷却媒体Cの移送は冷却媒体Cの自重により実行される。よって、本実施形態によれば、例えば、比較的簡素な構成によって収容室R内からリザーバ31内へ冷却媒体Cを移送することができる。
【0042】
また、本実施形態では、移送機構は電動ポンプ32を有し、保持機構は電磁弁33を有する。よって、本実施形態によれば、例えば、冷却機構30Aにおける第一状態と第二状態との切り替えを、比較的簡素な構成によって実現することができる。
【0043】
また、本実施形態では、電動ポンプ32の作動時間、または電動ポンプ32若しくは電動ポンプ32を駆動するモータ32aの回転回数によって、収容室R内からリザーバ31内への冷却媒体Cの移送量を制御することができる。よって、本実施形態によれば、例えば、冷却媒体Cの移送量ひいては収容室R内における冷却媒体Cの量を比較的容易に制御することができる。
【0044】
[第1実施形態の変形例]
図3は、本変形例のブレーキ装置100Bの構成図である。ブレーキ装置100Bは、上記実施形態と同様の構成を備えている。よって、ブレーキ装置100Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0045】
ただし、図3に示されるように、本変形例のブレーキ装置100Bが有する冷却機構30Bでは、収容室R内(ケース11内)からリザーバ31内へ至る冷却媒体Cの通路35cが設けられている。ケース11(例えば第一端壁11a)に設けられる通路35cのポート11gは、通路35a,35bのポート11dよりも上方に設けられている。ポート11gの位置は、収容室R内における冷却媒体Cの量に応じて設定される。
【0046】
このような構成では、電動ポンプ32の動作によって、冷却媒体Cは、リザーバ31内から収容室R内に通路35aを経由して流れるとともに、収容室R内からリザーバ31内に通路35cを経由して流れる。すなわち、本変形例では、通路35aおよび通路35cにより、冷却媒体Cの循環通路が構成されている。通路35cは、排出通路やリターン通路とも称されうる。本変形例によれば、例えば、ケース11およびリザーバ31に呼吸穴11eを設ける必要がなくなる。
【0047】
[第2実施形態]
図4は、本実施形態のブレーキ装置100Cの構成図である。ブレーキ装置100Cは、上記実施形態や変形例と同様の構成を備えている。よって、ブレーキ装置100Cは、当該同様の構成に基づく上記実施形態や変形例と同様の作用および効果を得ることができる。
【0048】
ただし、図4に示されるように、本実施形態のブレーキ装置100Cが有する冷却機構30Cでは、リザーバ31は、摩擦ブレーキ機構10よりも上方に位置されている。また、リザーバ31内と収容室R内(ケース11内)とは、並列な通路35a,35bを介して接続されている。
【0049】
電磁弁33は、通路35aに設けられている。電磁弁33は、通路35aの開状態と閉状態とを切り替える。
【0050】
電動ポンプ32およびチェック弁34は、通路35bに設けられている。チェック弁34は、収容室R内からリザーバ31内への冷却媒体Cの流れを許容し、リザーバ31内から収容室R内への冷却媒体Cの流れを禁止する。電動ポンプ32は、通路35bを介して冷却媒体Cを収容室R内からリザーバ31内へ移送することができる。
【0051】
ECU36(図1参照)は、非制動状態あるいはディスクロータ13(図1参照)の回転状態にあっては、収容室R内の冷却媒体Cが第一状態よりも少ない第二状態となるよう、電動ポンプ32を作動させるとともに、電磁弁33を閉状態とする。このような制御により、収容室R内に収容されている冷却媒体Cは、電動ポンプ32の作動により、通路35bを経由してリザーバ31内に流入する。また、電磁弁33は閉状態であるため、冷却媒体Cは通路35aを経由してリザーバ31内から収容室R内に流れることはできない。この場合、ECU36は、電動ポンプ32の作動時間、または電動ポンプ32若しくはモータ32aの回転回数によって、電動ポンプ32による冷却媒体Cの移送量、ひいては収容室R内での冷却媒体Cの量を制御することができる。ECU36は、電動ポンプ32の停止後においては、電磁弁33の閉状態を維持することができる。電磁弁33が閉状態にある間は、閉状態の電磁弁33およびチェック弁34により、通路35a,35bを介したリザーバ31内から収容室R内への冷却媒体Cの流れは阻止される。本実施形態では、電動ポンプ32は、冷却媒体Cを収容室R内からリザーバ31内へ移送する移送機構の一例であり、電磁弁33およびチェック弁34は、第二状態を保持する保持機構の一例である。
【0052】
他方、ECU36は、制動状態あるいはディスクロータ13の非回転状態にあっては、収容室R内の冷却媒体Cが第二状態よりも多い第一状態となるよう、電動ポンプ32の作動を停止するとともに電磁弁33を開状態とする。リザーバ31は収容室Rよりも上方に位置されているため、このような制御により、リザーバ31内に収容されている冷却媒体Cは、冷却媒体Cの自重、すなわち冷却媒体Cの位置エネルギ(水頭)によって、通路35aを経由して収容室R内に流入する。また、通路35bにはチェック弁34が設けられているため、冷却媒体Cは通路35bを経由してリザーバ31内から収容室R内に流れることはできない。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態では、電動ポンプ32(移送機構)が収容室R内(ケース11内)からリザーバ31内へ冷却媒体Cを移送する。よって、本実施形態によれば、電動ポンプ32により、第一状態から第二状態への切り替えをより円滑にあるいはより確実に実行することができる。
【0054】
また、本実施形態では、電磁弁33およびチェック弁34(保持機構)が、収容室R内に冷却媒体Cが第一状態よりも少なく収容された第二状態を保持する。よって、本実施形態によれば、例えば、第二状態において冷却媒体Cによって得られる回転抵抗低減効果をより確実に得ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、リザーバ31内から収容室R内への冷却媒体Cの移送は冷却媒体Cの自重により実行される。よって、本実施形態によれば、例えば、比較的簡素な構成によってリザーバ31内から収容室R内へ冷却媒体Cを移送することができる。
【0056】
[第3実施形態]
図5は、本実施形態のブレーキ装置100Dの構成図である。ブレーキ装置100Dは、上記実施形態や変形例と同様の構成を備えている。よって、ブレーキ装置100Dは、当該同様の構成に基づく上記実施形態や変形例と同様の作用および効果を得ることができる。
【0057】
ただし、図5に示されるように、本実施形態のブレーキ装置100Dが有する冷却機構30Dでは、収容室R内とリザーバ31内とが一つの通路35dによって接続されている。通路35dには、電動ポンプ32Dが設けられている。電動ポンプ32Dは、両方向ポンプであり、例えば、電動ポンプ32D内の回転部分の回転方向の切り替えにより、冷却媒体Cの収容室R内からリザーバ31内への移送、および冷却媒体Cのリザーバ31内から収容室R内への移送を、実行することができる。本実施形態においては、冷却媒体Cの移送に重力を利用しないため、収容室R(摩擦ブレーキ機構10)とリザーバ31との上下位置は関係無い。また、本実施形態では、電磁弁33を有さず、電動ポンプ32D内の管路抵抗によって、冷却媒体Cの第一状態および第二状態が保持される。よって、電動ポンプ32Dは、第一状態および第二状態を保持する保持機構の一例である。本実施形態によれば、例えば、ブレーキ装置100Dをよりコンパクトに構成することができる。なお、通路35dに、電動ポンプ32Dと直列に上記実施形態や変形例と同様の構成を有した電磁弁33(図5には不図示)を設けてもよい。その場合、当該電磁弁33が、第一状態および第二状態を保持する保持機構の一例となりうる。
【0058】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0059】
例えば、冷却機構における冷却媒体の回路構成や、電動ポンプや電磁弁等による切替機構は、種々に変形して構成することができる。例えば、第1実施形態や、その変形例、第二実施形態においても、チェック弁を削除して構成してもよい。また、冷却機構は、冷却媒体を冷却可能な熱交換機構を有してもよい。
【符号の説明】
【0060】
100A〜100D…ブレーキ装置、10…摩擦ブレーキ機構、11…ケース、12…シャフト、13…ディスクロータ(ブレーキロータ)、14a…摩擦材(ブレーキステータ)、20…アクチュエータ、30A〜30D…冷却機構、31…リザーバ、32,32D…電動ポンプ(移送機構)、33…電磁弁(保持機構)、34…チェック弁(保持機構)、Ax…回転中心、C…冷却媒体。
図1
図2
図3
図4
図5