特開2019-190834(P2019-190834A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-190834部材間の流体状態測定装置、及び、部材間の流体状態測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-190834(P2019-190834A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】部材間の流体状態測定装置、及び、部材間の流体状態測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20191004BHJP
   F16G 13/06 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   G01B11/06 101H
   F16G13/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-79684(P2018-79684)
(22)【出願日】2018年4月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(71)【出願人】
【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中安 友明
(72)【発明者】
【氏名】大西 智彦
(72)【発明者】
【氏名】平井 晶
(72)【発明者】
【氏名】石間 経章
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀和
(72)【発明者】
【氏名】藤島 諒介
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB15
2F065BB16
2F065BB30
2F065CC31
2F065DD06
2F065EE01
2F065EE03
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF69
2F065GG04
2F065GG09
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL22
2F065PP13
2F065PP18
2F065QQ21
2F065QQ25
2F065RR06
2F065SS02
2F065SS03
2F065SS13
(57)【要約】
【課題】部材間に配置された流動性のある潤滑剤の状態を測定することのできる部材間の流体状態測定装置、及び、部材間の流体状態測定方法を提供する。
【解決手段】部材間の流体状態測定装置10は、断面が弧状を有する内周面24bを有したブシュ24と、内周面24bに沿って移動可能な外面であって断面が弧状を有する外周面23aを有したピン23と、内周面24bと外周面23aとの間に配置されている流動性を有する潤滑剤25と、内周面24bに対して外周面23aを移動させるモータ28とを備える。ブシュ24は、全体又は一部が内周面24bを構成するとともに、外側から内周面を可視可能にする透明部分を有し、透明部分にレーザ光L0を照射するレーザ照射装置30と、透明部分から出る光を撮像する撮像装置40とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が弧状を有する内面を有した外側部材と、
前記内面に沿って移動可能な外面であって断面が弧状を有する外面を有した内側部材と、
前記内面と前記外面との間に配置されている流動性を有する潤滑剤と、
前記内面に対して前記外面を移動させる移動部とを備え、
前記外側部材は、全体又は一部が前記内面を構成するとともに、外側から前記内面を可視可能にする透明部分を有し、
前記透明部分にレーザ光を照射するレーザ照射装置と、
前記透明部分から出る光を撮像する撮像部とを備える
部材間の流体状態測定装置。
【請求項2】
前記透明部分において前記内側部材の前記外面に前記外側部材の前記内面を押し付ける与圧部をさらに備える
請求項1に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項3】
前記外側部材は、断面円形の貫通孔を有し、
前記内面は、前記貫通孔の周面の少なくとも一部であり、
前記内側部材は、前記貫通孔に挿通される軸部を有し、
前記外面は、前記軸部の周面の少なくとも一部である
請求項1又は2に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項4】
前記外側部材は、一対の内側リンクプレートの両端部同士を連結する筒状のブシュであり、
前記内側部材は、前記内側リンクプレートの外側に配置された一対の外側リンク支持部の両端部同士を前記ブシュに回転自在に挿通されるとともに、一対の前記外側リンク支持部を連結するリンクピンである
請求項1〜3のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項5】
前記透明部分は、サファイアガラス、ガラス、又はアクリルである
請求項1〜4のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項6】
前記内側部材は、非透明材料からなる
請求項1〜5のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項7】
前記内側部材は、金属材料からなる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項8】
前記潤滑剤には、前記レーザ光が照射されることに応じて発光する発光物質が分散されている
請求項1〜7のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項9】
前記潤滑剤には、前記レーザ光の照射により発光する粒子状の発光物質が混合されている
請求項1〜8のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項10】
前記発光物質は、蛍光物質であり、
前記透明部分から出る光は、前記蛍光物質が前記レーザ光の照射で誘起されて発光した光である
請求項8又は9に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項11】
前記撮像部の撮像画像から前記潤滑剤の状態を算出する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記透明部分から出る光の強度に基づいて前記内面の直径方向に対する前記潤滑剤の厚さを算出し、前記算出した厚さを前記内面の撮影画像上の対応箇所に表示させる
請求項1〜10のいずれか一項に記載の部材間の流体状態測定装置。
【請求項12】
断面が弧状を有する内面を有した外側部材と、
前記内面に沿って移動可能な外面であって断面が弧状を有する外面を有した内側部材と、
前記内面と前記外面との間に配置されている流動性を有する潤滑剤と、
前記内面に対して前記外面を移動させる移動部とを備え、
前記外側部材は、全体又は一部が前記内面を構成するとともに、外側から前記内面を可視可能にする透明部分を有する部材間の流体状態測定装置に適用される
部材間の流体状態測定方法であって、
前記透明部分にレーザ照射装置からレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
前記透明部分から出る光を撮像部で撮像する撮像工程とを備える
部材間の流体状態測定方法。
【請求項13】
前記撮像部の撮像画像から前記潤滑剤の状態を制御装置で算出する算出工程を備え、
前記算出工程では、前記透明部分から出る光の強度に基づいて前記内面の直径方向に対する前記潤滑剤の厚さを算出し、前記算出した厚さを前記内面の撮影画像上の対応箇所に表示させる
請求項12に記載の部材間の流体状態測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン等の可動連結部を構成する複数の部材において部材間に配置される流体の状態を測定することのできる部材間の流体状態測定装置及び部材間の流体状態測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の搬送や動力の伝達等に可動連結部を有するチェーンが用いられることが知られている。このようなチェーンは、内側リンクと外側リンクとが重ね合わされる部分に上述の可動連結部を有している。具体的には、内側リンクは、一対の内側リンクプレートの両端部同士を筒状のブシュでそれぞれ連結してなり、外側リンクは、一対の外側リンクプレートの両端部同士をブシュに回転自在に挿通されるリンクピンでそれぞれ連結されている。
【0003】
そして、こうしたチェーンは、その寿命がピン及びブシュ間の耐摩耗性によって決まるため、チェーンの摩耗を試験する試験装置が知られている(特許文献1参照)。
特許文献1に記載のチェーン摩耗試験機は、チェーンのピンとブシュとの間に生じる摩耗を簡易に試験することのできる試験機である。チェーン摩耗試験機は、ピン試験体を固定するピン試験体固定機構と、ブシュを保持するブシュ保持機構と、ピン試験体の中心線からピン試験体とブシュ試験体の接線へ向け、ピン試験体をブシュ試験体に押圧する押圧機構と、ブシュを揺動させる揺動機構とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−118256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたチェーンは、ピンとブシュとの間の耐摩耗性を高めるため、ピンとブシュとの間に潤滑油が保持されている。ピンとブシュとの間には動力伝達等による張力によって高い圧力が印加されるため、この高い圧力が印加された部分において潤滑油の量が減る、いわゆる油膜が薄くなる。そして、油膜が薄くなった部位では摩擦力が高まることが懸念されているため、同部位での潤滑油の動的な状態を測定する技術が強く求められている。
【0006】
なお、こうした課題は、チェーンのピンとブシュとの間の潤滑油の状態測定のみに限られるものではなく、チェーンのその他の構造からなる可動連結部における複数部材間の潤滑油の状態測定においても同様である。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、部材間に配置された流動性のある潤滑剤の状態を測定することのできる部材間の流体状態測定装置、及び、部材間の流体状態測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する部材間の流体状態測定装置は、断面が弧状を有する内面を有した外側部材と、前記内面に沿って移動可能な外面であって断面が弧状を有する外面を有した内側部材と、前記内面と前記外面との間に配置されている流動性を有する潤滑剤と、前記内面に対して前記外面を移動させる移動部とを備え、前記外側部材は、全体又は一部が前記内面を構成するとともに、外側から前記内面を可視可能にする透明部分を有し、前記透明部分にレーザ光を照射するレーザ照射装置と、前記透明部分から出る光を撮像する撮像部とを備える。
【0009】
上記課題を解決する部材間の流体状態測定方法は、断面が弧状を有する内面を有した外側部材と、前記内面に沿って移動可能な外面であって断面が弧状を有する外面を有した内側部材と、前記内面と前記外面との間に配置されている流動性を有する潤滑剤と、前記内面に対して前記外面を移動させる移動部とを備え、前記外側部材は、全体又は一部が前記内面を構成するとともに、外側から前記内面を可視可能にする透明部分を有する部材間の流体状態測定装置に適用される部材間の流体状態測定方法であって、前記透明部分にレーザ照射装置からレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、前記透明部分から出る光を撮像部で撮像する撮像工程とを備える。
【0010】
チェーン等の可動連結部の信頼性の向上を図るためには、可動連結部における2つの部材の摺接面及びそれらの間の潤滑剤の状態を観察できることが望ましい。この点、このような構成又は方法によれば、2つの部材のうち外側にある外側部材が透明であることから、外側部材と内側部材との間に配置されている流動性のある潤滑剤について、当該潤滑剤の透過度や吸光度などを外部から測定することが可能になる。そして、撮像部で撮像する観察光が、潤滑剤の分光特性、吸光度、透過度等に応じて変化するため、観測光の撮像に基づいて潤滑剤の膜厚等を測定することができる。また、こうした観測光の時系列的な変化に基づいて潤滑剤の流動を測定することもできる。これにより、部材間に配置された流動性のある潤滑剤の状態を測定することができるようになる。
【0011】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記透明部分において前記内側部材の前記外面に前記外側部材の前記内面を押し付ける与圧部をさらに備える。
チェーン等の可動連結部の信頼性の向上を図るためには、可動連結部において最も摩擦の高くなる部分で、潤滑剤の状態を観測できることが好ましい。この点、上記構成によれば、与圧部の押し付けによって摩擦力が透明部分で高くなり、当該透明部分での潤滑剤の状態が撮像部によって撮像可能になる。よって、摩耗等による影響の生じやすい部分で、潤滑剤の状態が観測できるようになる。
【0012】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記外側部材は、断面円形の貫通孔を有し、前記内面は、前記貫通孔の周面の少なくとも一部であり、前記内側部材は、前記貫通孔に挿通される軸部を有し、前記外面は、前記軸部の周面の少なくとも一部である。
【0013】
このような構成によれば、チェーンの連結部の形状を模擬することが容易である。
上記部材間の流体状態測定装置において、前記外側部材は、一対の内側リンクプレートの両端部同士を連結する筒状のブシュであり、前記内側部材は、前記内側リンクプレートの外側に配置された一対の外側リンク支持部の両端部同士を前記ブシュに回転自在に挿通されるとともに、一対の前記外側リンク支持部を連結するリンクピンである。
【0014】
このような構成によれば、チェーン等の可動連結部を模擬することができるのでチェーン等における潤滑剤の流動状態の再現性が高められる。
上記部材間の流体状態測定装置において、前記透明部分は、サファイアガラス、ガラス、又はアクリルである。
【0015】
このような構成によれば、透明部分に適切な透明度及び強度を確保することができる。また、サファイアガラスは、特に高い透明度及び強度を透明部分に確保させることができる。
【0016】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記内側部材は、非透明材料からなる。
このような構成によれば、内側部材が非透明であることで、透明部分から出る光の撮像において、内側部材の外面よりも他の部分による光の影響が抑制されるようになる。
【0017】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記内側部材は、金属材料からなる。
このような構成によれば、内側部材がチェーン等に使用されている部材と同様の金属材料より構成されるので潤滑剤の流動状態の再現性が高められるようになる。
【0018】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記潤滑剤には、前記レーザ光が照射されることに応じて発光する発光物質が分散されている。
このような構成によれば、潤滑剤に分散された発光物質の光が撮像できるので、撮像した光の強弱によって潤滑剤の分布を測定することができるようになる。
【0019】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記潤滑剤には、前記レーザ光の照射により発光する粒子状の発光物質が混合されている。
このような構成によれば、潤滑剤に混合された粒子状の発光物質の位置が撮像できるので、潤滑剤の流動を測定することができるようになる。
【0020】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記発光物質は、蛍光物質であり、前記透明部分から出る光は、前記蛍光物質が前記レーザ光の照射で誘起されて発光した光である。
このような構成によれば、蛍光物質から発光される光を選択的に撮像することで、撮像したい光がより高い精度で撮像されるようになる。
【0021】
上記部材間の流体状態測定装置において、前記撮像部の撮像画像から前記潤滑剤の状態を算出する制御装置を備え、前記制御装置は、前記透明部分から出る光の強度に基づいて前記内面の直径方向に対する前記潤滑剤の厚さを算出し、前記算出した厚さを前記内面の撮影画像上の対応箇所に表示させる。
【0022】
上記部材間の流体状態測定方法において、前記撮像部の撮像画像から前記潤滑剤の状態を制御装置で算出する算出工程を備え、前記算出工程では、前記透明部分から出る光の強度に基づいて前記内面の直径方向に対する前記潤滑剤の厚さを算出し、前記算出した厚さを前記内面の撮影画像上の対応箇所に表示させる。
【0023】
このような構成によれば、内周部材の外面に対する潤滑剤の径方向厚さ、いわゆる膜厚を撮影画像上に対応させて表示することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、部材間に配置された流動性のある潤滑剤の状態を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態の流体状態測定装置の構成を示すブロック図。
図2】ブシュ及びピンの構造を示す斜視図。
図3】レーザ誘起蛍光法を模式的に示す模式図。
図4】レーザ誘起蛍光法での蛍光強度と油膜厚さの関係を示すグラフ。
図5】潤滑剤の状態を測定する手順を示すフローチャート。
図6】潤滑剤の厚さを算出する手順を示すフローチャート。
図7】油膜厚さと輝度と温度との関係を示すグラフ。
図8】油膜厚さを撮像画像上に記載した模式図。
図9】ブシュの構造の他の例を示す斜視図。
図10】ブシュとピンの他の例を示す斜視図。
図11】ブシュとピンのその他の例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図。
図12】ブシュとピンのその他の例を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図。
図13】ブシュとピンのその他の例を示す断面図であって、(a)は外輪が内輪に従動しないときの図、(b)は外輪が内輪に従動するときの図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、部材間の流体状態測定装置及び部材間の流体状態測定方法の一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、部材間の流体状態測定装置10は、チェーンの構成部材を再現する実験装置20を備える。実験装置20は、チェーンの内側リンクと外側リンクとの間の可動連結部の構造を再現する外側部材としてのブシュ24と内側部材としてのピン23とを有する。ブシュ24は、全体がサファイアガラス等の硬質な透明部材製であり、ピン23は、透明部材製のブシュ24内に配置され、ブシュ24内を回転運動する。なお、回転運動には、1回転する運動や運動する向きを交互に変えて1回転未満の運動を繰り返す揺動等の反復運動も含まれる。実験装置20は、ブシュ24とピン23との間に潤滑剤25が配置されている。すなわち、実験装置20は、ブシュ24の外側からブシュ24の内周面24bとピン23の外周面23aとの間に配置されている潤滑剤25の状態を測定可能である。
【0027】
潤滑剤25は、チェーンの摩擦低減や摩耗抑制に利用される流動性を有する物質、例えば潤滑油である。潤滑剤25は、ブシュ24とピン23との間に介在することブシュ24とピン23との間の摩擦を低減させる。潤滑剤25は、ブシュ24とピン23との当接部分では、ブシュ24とピン23との間に生じる微細な隙間に浸透し、ブシュ24とピン23とが離間している部分では少なくともブシュ24の表面と、ピン23の表面とに広がっている。潤滑剤25には、レーザ光L0が照射されると蛍光する発光物質としての蛍光物質26が含まれている。蛍光物質26は、潤滑剤25に分散しており、潤滑剤25と一体的に移動する。潤滑剤25は、蛍光物質を略均一の濃度で含んでいて、潤滑剤25の量に蛍光物質26の量が比例することから、蛍光物質26の量に基づいて潤滑剤25の量や膜厚を測定することができる。
【0028】
また、部材間の流体状態測定装置10は、レーザ光L0を実験装置20のブシュ24とピン23に照射するレーザ照射装置30と、実験装置20のブシュ24とピン23を撮像する撮像部としての撮像装置40とを備えている。また、部材間の流体状態測定装置10は、撮像された画像に補正処理等を行う制御装置50と、ブシュ24の温度分布を測定する温度測定装置45を備えている。温度測定装置45は、例えばサーモグラフィーである。
【0029】
レーザ照射装置30は、実験装置20のブシュ24とピン23とに向けてレーザ光L0を出力する。具体的には、レーザ光L0は、ピン23の外周面23aに照射される。レーザ照射装置30は、レーザ光L0でピン23の外周面23aまでの間に存在する潤滑剤25に含まれる蛍光物質26を励起して蛍光させる。レーザ照射装置30は、例えば532ナノメートルの波長を出力するYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ等の固体レーザを含んで構成される。また、レーザ照射装置30は、例えば10Wの出力でレーザ光を出力する。なお、レーザ照射装置30は、蛍光物質26の励起に適している波長、出力のレーザ光L0を出力するものであればよい。レーザ照射装置30は、制御装置50に接続されており、レーザ光L0の出力や停止等が制御装置50から制御可能である。
【0030】
撮像装置40は、ブシュ24からの観測光R0から特定の波長の光のみを選択的に透過させるカットフィルタ42と、カットフィルタ42を通過した測定光R1を撮像するカメラ41とを備えている。カットフィルタ42は、観測光R0から蛍光物質26の蛍光のみを選択的に透過させるフィルタであって、例えば、オレンジ色の波長領域(590〜610nm)を透過させる。カメラ41は、可視光領域の光を撮像可能なCCDカメラ等である。撮像装置40は、制御装置50に接続されており、撮像された測定光R1に対応する撮像画像を制御装置50に出力可能である。
【0031】
つまり蛍光物質26は、レーザ照射装置30のレーザ光L0を受けて蛍光し、蛍光がカットフィルタ42を通過することのできる波長の光である特性を有する。逆に言えば、レーザ照射装置30は、蛍光物質26を蛍光させるレーザ光L0を出力し、カットフィルタ42は蛍光物質26の蛍光を透過させるフィルタである。
【0032】
温度測定装置45は、ブシュ24の外表面24aの温度を測定する。温度測定装置45は、広範囲を測定できる放射温度計、いわゆるサーモグラフィーである。温度測定装置45は、制御装置50に接続されており、測定した温度分布のデータを制御装置50に出力可能になっている。
【0033】
制御装置50は、レーザ照射装置30からのレーザ光L0の出力/停止等を制御可能であり、撮像装置40が撮像した撮像画像の取得が可能であり、温度測定装置45が測定した温度分布のデータの取得が可能である。また、制御装置50は、移動部としてのモータ28に接続され、モータ28の回転軸の回転角度を制御することができる。
【0034】
制御装置50は、撮像画像に基づいてブシュ24とピン23との間に配置された潤滑剤25の膜厚等の状態を測定することができるとともに、測定した潤滑剤25の膜厚等の状態を処理することができる。制御装置50は、マイクロコンピュータを含み構成されており、演算装置や記憶部を備えている。制御装置50は、記憶部に記憶されたプログラムを演算装置で演算処理することにより、所定の機能を発揮する。例えば、制御装置50は、取得した撮像画像に基づいて、潤滑剤25の膜厚を算出する処理を行う。
【0035】
図2を参照して、実験装置20について説明する。
図2に示すように、実験装置20は、チェーンを構成する部品の一部を再現する内側リンク27を備えている。内側リンク27は、一対の内側リンクプレート271の一方の端部が透明のブシュ24で連結され、他方の端部が金属性の金属ブシュ272で連結されて構成される。内側リンク27は、基台21の載置に所定の間隔を開けて設けられている一対の外側リンクとしてのリンク支持部22の間に配置され、内側リンク27の透明のブシュ24には一対のリンク支持部22を挿通し、それらリンク支持部22に支持されるピン23が回転自在に挿通されている。
【0036】
ピン23は、金属部材からなる非透明な軸体である。つまり、ピン23の外周面23aは、軸体の外周面である。ピン23は、一対のリンク支持部22を貫通する長さを有している。ピン23は、リンク支持部22を貫通した先の一方の端部に、ピン23を回転駆動させるモータ28の回転軸が接続されている。例えば、無端円周状のチェーンは、直線走行部分ではピン23とブシュ24との角度が略一定であり、曲線走行部分である歯車部分では円周の内側方向に歯車外周に対応する角度で曲がることを、走行中に繰り返す。よって、例えば、モータ28は、ピン23の角度を、基準とする角度と歯車部分で曲がる角度とまで間を、往復するように回転変化させる。
【0037】
ブシュ24は、円筒形状であって、筒内には断面円形の貫通孔を有し、貫通孔に内周面24bを有する。また、ブシュ24は、透明部材としてのサファイアガラスから構成された硬質な透明部材製である。ブシュ24は、レーザ照射装置30のレーザ光L0を透過させるとともに、測定光R1である蛍光物質26の蛍光を透過させる。サファイアガラスは、結晶が均質であり、透過性も高く、ブシュ24を介してのレーザ光L0を照射しての潤滑剤25の測定が好適に行える。
【0038】
内側リンク27は、金属ブシュ272に与圧部29が接続されている。与圧部29は、荷重帯273と荷重付与部274と支持部275とで構成されている。荷重帯273は、その一端がブシュ24の側とは反対方向に延びるように金属ブシュ272に連結され、支持部275で延びる向きが鉛直方向に変更された他端に荷重付与部274が設けられている。例えば、荷重付与部274がおもりであれば吊り下げられている。つまり、与圧部29は、荷重帯273を介して荷重付与部274が付与する荷重をピン23から離間する方向である矢印方向の張力Tとして金属ブシュ272に印加する。
【0039】
ここで、矢印方向は、撮像装置40のある方向とは反対方向である。よって、内側リンク27に張力Tが印加されると、撮像装置40側から見ると、ブシュ24の内周面24bがピン23の外周面23aに押し付けられる。つまり、動力を伝達している状態にあるチェーンが再現され、ブシュ24とピン23との間に高い摩擦力を生じさせることができる。よって、ブシュ24とピン23との間の摩擦力が高いときにおける潤滑剤25の状態を測定することができるようになる。
【0040】
図3を参照して、蛍光物質26の蛍光強度と潤滑剤25の膜厚THとの関係について説明する。
潤滑剤25は、ブシュ24とピン23との間に浸透して油膜を形成する。このとき、潤滑剤25は、油膜の膜厚THが薄ければ蛍光物質26も少なくなることから、レーザ光L0に反応して蛍光した測定光R1の強度が小さくなる。逆に、膜厚THが厚ければ蛍光物質26が多くなることから、レーザ光L0に反応して蛍光した測定光R1の強度が強くなる。なお、測定光R1は、観測光R0に含まれている光である。
【0041】
図4に示すように、測定光R1から測定される蛍光強度は、油膜厚さである膜厚THに比例して強くなる傾向を有する。よって測定光R1の強さ基づいて、潤滑剤25の形成している油膜の膜厚THを測定することができる。
【0042】
図5図7を参照して、部材間の流体状態測定装置10で潤滑剤25の膜厚THを測定する処理についてその手順を説明する。
図5に示すように、潤滑剤25の膜厚測定処理は、測定条件を設定する初期設定工程(ステップS10)と、レーザ光L0を照射したブシュ24の画像情報を取得する画像情報取得工程(ステップS11)と、温度測定装置45を利用して油膜温度を取得する油膜温度取得工程(ステップS12)とを備えている。また、潤滑剤25の膜厚測定処理は、画像情報の輝度を補正する画像情報の輝度補正工程(ステップS13)と、油膜の温度分布を算出する油膜温度分布算出工程(ステップS14)と、膜厚THを算出する膜厚算出工程(ステップS15)と、算出した膜厚を可視化する可視化工程(ステップS16)とを備えている。
【0043】
まず、潤滑剤25の膜厚測定処理が開始されると、制御装置50は、初期設定工程(ステップS10)で、レーザ光L0の強度設定や、モータ28の回転軸の回転速度や回転角度の設定や、蛍光強度と膜厚と温度との関係性を示す情報等を設定する。また、制御装置50は、輝度補正工程(ステップS13)で用いる基準画像を撮像又は設定するとともに、撮像又は設定された画像の各点における相対的な輝度差を補正値として算出する。例えば、画面の基準点の輝度を「100」としたとき、輝度が「110」である「A点」の補正値を「100/110」として算出し、輝度が「90」である「B点」の補正値を「100/90」として算出する。
【0044】
画像情報取得工程(ステップS11)では、制御装置50は、チェーンの動きを再現するようにモータ28の回転数を制御しつつ、ブシュ24に向けてレーザ光L0を照射する(レーザ光照射工程)とともに、レーザ光L0を照射した部分のブシュ24の画像を撮像装置40を介して取得する(撮像工程)。つまり、制御装置50は、ブシュ24の内周面24bに配置される潤滑剤25の油膜に含まれている蛍光物質26の蛍光強度を2次元の画像情報として取得する。
【0045】
油膜温度取得工程(ステップS12)では、制御装置50は、温度測定装置45からの温度情報を利用して油膜の温度を取得する。例えば、温度測定装置45は、ブシュ24の外表面24aの温度を取得することから、油膜の温度をこれよりも高い温度、例えば5度高い温度であると推定する。
【0046】
輝度補正工程(ステップS13)では、制御装置50は、輝度の補正値に基づいて画像情報の輝度を補正する。
油膜温度分布算出工程(ステップS14)では、制御装置50は、油膜温度分布に基づいて、膜厚THを算出する各地点の温度を算出する。
【0047】
膜厚算出工程(ステップS15)では、制御装置50は、膜厚THを算出する各地点について、温度に対応する輝度と膜厚THとの関係を選択し、この選択した輝度と膜厚THとの関係に対して補正された輝度を適用することで膜厚THを算出する。
【0048】
図6を参照して詳述すると、膜厚算出工程(ステップS15)は、温度補正工程(ステップS20)と、奧行き補正工程(ステップS21)とを備える。
温度補正工程(ステップS20)では、制御装置50は、各地点における潤滑剤25の温度を考慮して各地点の膜厚THを算出する。
【0049】
図7に示すように、輝度と膜厚THとの関係は、温度によって変化する。例えば、グラフL2は温度が20度のときの輝度と膜厚THとの関係を示し、グラフL3は温度が120度のときの輝度と膜厚THとの関係を示している。グラフL2とグラフL3とによれば、潤滑剤25の温度が高いほど、輝度が低下する傾向にある。よって、膜厚THを算出する各地点の温度に対応した輝度と膜厚THとの関係を示す情報を選択することで、膜厚THをより高い精度で算出することができるようになる。
【0050】
奧行き補正工程(ステップS21)では、制御装置50は、曲面であるピン23の外周面23aを二次元で撮像することにより生じる奧行き方向の誤差を補正する。詳述すると、ピン23の径方向の厚みが膜厚THである。一方、ピン23の外周面23aを撮像した撮像画像は、ピン23の中心とカメラ41の撮像方向との最短距離上の点以外では、ピン23の径方向に対してカメラ41の撮像方向が角度を有するため膜厚THを直接的には測定できない。このため、カメラ41の撮像方向と径方向との角度を考慮し、カメラ41から見たときの油膜の厚みを、ピン23の径方向の厚みである膜厚THに変換する奧行き補正を行う。
【0051】
以上のより、ピン23の外周面23aを撮像方向から見た二次元画像上の各地点に対して膜厚THが算出される。すなわち、ピン23の外周面23a上の各地点に対して膜厚THが測定される。
【0052】
可視化工程(ステップS16)では、制御装置50は、ピン23の外周面23aの二次元画像上の各地点に対して算出された膜厚THを、撮像したピン23の画像に重ねて表示させる。ピン23の外周面23aの画像に奧行き補正を行った膜厚THを重ね合わせることで、ピン23の外周面23aの各位置においてブシュ24との間の膜厚THが容易に認識できる表示とすることができる。
【0053】
図8に、可視化された画像の一例を示す。
図8に示すように、ピン23の外周面23aの各位置に膜厚THが表示されることで、膜厚THの状態を視覚的に認識することができる。例えば、図8では、膜厚THは、厚さD1<厚さD2<厚さD3<厚さD4<厚さD5として視覚的に区別できるように表示されている。つまり、ブシュ24とピン23とは、カメラ41側から見て後方に張力Tが印加されていることから、ブシュ24がピン23に押し付けられている。このとき、張力Tに基づく押圧力の影響を最も受けるカメラ41正面では潤滑剤25の膜厚THが薄い厚さD1になり、正面から円弧に沿って離れることに応じて膜厚THの厚さが厚さD2、厚さD3、厚さD4、そして厚さD5となるように順に厚くなっていく傾向が測定されるようになる。
【0054】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)2つの部材のうち外側にあるブシュ24が透明であることから、ブシュ24とピン23との間に配置されている流動性のある潤滑剤25について、当該潤滑剤25を外部から測定することが可能になる。そして、撮像装置40で撮像する観察光が、潤滑剤25の分光特性、吸光度、透過度等に応じて変化するため、潤滑剤25に照射したレーザ光L0に基づいて撮像される測定光R1の撮像装置40での撮像に基づいて、潤滑剤25の膜厚を測定することができる。これにより、部材間に配置された流動性のある潤滑剤の状態を測定することができるようになる。
【0055】
(2)与圧部29の押し付けによって摩擦力が透明部分で高くなり、当該透明部分であるブシュ24の内周面24bとピン23の外周面23aとの間部分での潤滑剤25の状態が撮像装置40によって撮像可能になる。よって、摩耗等による影響の生じやすい部分で潤滑剤25の状態が観測できるようになる。
【0056】
(3)ブシュ24とピン23とによってチェーンの連結部の形状を模擬することが容易である。
(4)内側リンク27と一対のリンク支持部22によってチェーン等の可動連結部を模擬することができるのでチェーン等における潤滑剤25の流動状態の再現性が高められる。
【0057】
(5)サファイアガラスは特に、高い透明度及び強度を確保することができる。
(6)ピン23が非透明であることで、透明部分から出る光の撮像において、ピン23の外周面23aよりも他の部分による光の影響が抑制されるようになる。
【0058】
(7)ピン23がチェーン等に使用されている部材と同様の金属材料より構成されるので潤滑剤25の流動状態の再現性が高められるようになる。
(8)潤滑剤25に分散された蛍光物質26の蛍光が撮像できるので、測定光R1の強弱によって潤滑剤25の分布を測定することができるようになる。
【0059】
(9)潤滑剤25の蛍光物質26から蛍光される光を選択的に撮像することで、撮像したい光がより高い精度で撮像されるようになる。
(10)ピン23の外周面23aに対する潤滑剤25の径方向厚さ、いわゆる膜厚THを撮影画像上に対応させて表示することができる。
【0060】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は次のように変更してもよい。
また、これらの実施形態は、技術的に矛盾が生じない限りにおいていずれも組み合わせることができる。
【0061】
図9に示すように、上記ブシュ24に代わる透明部材からなるブシュ90の内面にチェーン用油溜まりである溝92を設けてもよい。ブシュ90は、円筒部材90aの内周面側91に多数の溝92が溝付け用ダイピンを用いて形成されている。この溝92は、溝長手方向の始端部92aと終端部92bとが封止された溝形態となっている。つまり、始端部92aは、円筒部材90aの内周面90bを塑性変形等させて円筒形状に矯正した矯正部93によって封止されている。これにより、溝92を有するブシュ90とピン23との間における潤滑剤25の状態を測定することができるようになる。
【0062】
図10に示すように、上記内側リンク27を、上記ブシュ24に対応する貫通孔102を有する透明部材からなる測定用ブロック100に置き換えてもよい。
測定用ブロック100は、透明部材からなり、上記ブシュ24に対応する貫通孔102と、上記金属ブシュ272に代わる貫通孔104とを備える。貫通孔102には、ピン23が挿通配置され、貫通孔104には荷重帯273が連結される連結具が取り付けられる。これにより、ピン23と貫通孔102との間の潤滑剤25の油膜を測定することができる。このような構成によれば、例えば、ブシュ全体の油膜の状態を再現し、測定することができる。
【0063】
図11(a),(b)に示すように、上記内側リンク27を、上記ブシュ24に対応する貫通孔112を有する透明部材からなる複数の測定用ブロック110,111に置き換えてもよい。
【0064】
複数の測定用ブロック110,111の各貫通孔112,113にはピン23が挿通配置され、各貫通孔114,115には荷重帯273が連結される連結具が取り付けられて張力が印加され、貫通孔112,113とピン23との間に荷重がかけられる。よって、ピン23と貫通孔112,113との間の潤滑剤25の油膜の状態を測定することができる。このような構成によれば、例えば、ブシュにおいて一対の内側リンクプレートが取り付けられている部分の油膜の状態を再現し、測定することができる。
【0065】
図12(a),(b)に示すように、上記内側リンク27を、上記ブシュ24に対応する貫通孔122を有する透明部材からなる測定用ブロック120に置き換えてもよい。
測定用ブロック120の貫通孔122にはピン23が挿通配置され、各貫通孔124には荷重帯273が連結される連結具が取り付けられる。これにより、ピン23と貫通孔122との間の潤滑剤25の油膜の状態を測定することができる。このような構成によれば、例えば、ブシュの一部や、その他の構成を有するチェーンにおける油膜の状態を再現し、測定することができる。
【0066】
・上記実施形態では、ピン23がブシュ24に挿通されるチェーン構造である場合について例示したが、これに限らず、チェーン構造がサイレントチェーン等の構造であってもよい。
【0067】
図13(a)及び図13(b)に示すように、リンクの構成をカムクラッチ構造を有するリンク130としてもよい。
ブシュに対応する透明部材からなる外輪132とピンに対応する内輪131との間には内輪131の一方向への回転RT2を外輪132に伝達する一方、他方向への回転RT1を外輪132に伝達しない形状を有するカム133が配置されている。そして、カム133と外輪132との間に潤滑剤25の油膜が形成されている。これにより、カム133と外輪132との間の潤滑剤25の油膜の状態を測定することができる。この構成によれば、動作が複雑であるカムクラッチを備えたリンク130にあっても、カム133と外輪132との間における油膜の状態を再現し、測定することができる。
【0068】
・上記実施形態では、ピン23がモータ28で回転可能である場合について例示したが、ブシュに対してピンが相対的に非回転であってもよい。
・上記実施形態では、レーザ照射装置30は、YAGレーザ等の固体レーザである場合について例示したが、これに限らず、レーザ照射装置は、半導体レーザやファイバーレーザ等の個体レーザであってもよい。また、出力は10W未満や10Wよりも大きい等、10W以外であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、カットフィルタ42が蛍光物質26の蛍光のみを選択的に透過させる場合について例示したが、カットフィルタは測定に適する光を選択的に透過させることができるものであればよい。
【0070】
・上記実施形態では、潤滑剤25が潤滑油である場合について例示したが、これに限らず、潤滑剤としては、ブシュとピンとの動きに応じて移動する流動性を有するグリースであってもよい。つまり、ブシュとピンとの間で、ブシュとピンとの動きに応じて移動することができる流動性を有している物質であれば潤滑剤として適用することができる。
【0071】
・上記実施形態では、潤滑剤25はチェーンに利用される潤滑油である場合について例示したが、これに限らず、潤滑剤は、チェーン以外に利用される潤滑油であってもよいし、潤滑油以外の油類、油類以外の流動体であってもよい。いずれの場合であっても、ブシュとピンとの間における流動体の状態を測定することができる。
【0072】
・上記実施形態では、潤滑剤25には蛍光物質26が含まれている場合について例示したが、潤滑剤の状態を測定することができるのであれば、潤滑剤には、蛍光物質ではない物質、例えば、透明度を低下させる着色剤等が含まれていてもよい。例えば透明度を取得して膜厚を測定するようにしてもよい。
【0073】
・上記実施形態では、潤滑剤25には蛍光物質26が分散している場合について例示した。しかしこれに限らず、潤滑剤には蛍光物質が分散していることに加えて、もしくは、代えて、レーザ光の照射により発光する粒子状の蛍光物質が混合されていてもよい。こうして分散された蛍光物質の時系列的な位置変化を観測することに基づいて潤滑剤の流動を測定することもできる。
【0074】
・上記実施形態では、潤滑剤25には蛍光物質26が含まれている場合について例示したが、潤滑剤そのものの厚さによって変化する色や、そのものの透明度を測定して膜厚を測定するようにしてもよい。また例えば、潤滑剤の膜厚等の影響、例えば、分光、吸光度、透過度等に応じて変化する観測光に基づいて膜厚を測定するようにしてもよい。
【0075】
さらに、こうした膜厚測定に用いられる観測光の時系列的な変化を観測して潤滑剤の流動を測定するようにしてもよい。
・上記実施形態では、ブシュ24がサファイアガラスから構成される場合について例示したが、これに限らず、ブシュとしての強度や測定に適した透過性を有しており、内周面に配置された潤滑剤を測定可能であれば、その他の透明なガラスや、アクリル、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の透明な樹脂から構成されていてもよい。これにより、透明部分に適切な透明度及び強度を確保することができる。
【0076】
・上記実施形態では、ブシュ24の内周面24bが円筒形状の貫通孔である場合について例示したが、これに限らず、貫通孔においてピンとの摺動面を円弧状にすることができるのであれば、貫通孔の長手方向断面は、その一部に円弧を有する形状であれば、他の部分が楕円や長孔、直線部分や角部を有する形状であってもよい。
【0077】
・上記実施形態では、ブシュ24の全体が透明部材から構成されている場合について例示したが、これに限らず、測定したい部分を透明にすることができるのであればブシュの一部のみが透明部材から構成されていてもよい。例えば、筒外から筒内を見ることができるように金属の筒の一部が透明部材に置き換えられていてもよい。なお、内周面においては金属と透明部材との間には段差がないか、極めて微小であることが好ましい。
【符号の説明】
【0078】
10…流体状態測定装置、20…実験装置、21…基台、22…リンク支持部、23…ピン、23a…外周面、24…ブシュ、24a…外表面、24b…内周面、25…潤滑剤、26…蛍光物質、27…内側リンク、28…モータ、29…与圧部、30…レーザ照射装置、40…撮像装置、41…カメラ、42…カットフィルタ、45…温度測定装置、50…制御装置、90…ブシュ、90a…円筒部材、90b…内周面、91…内周面側、92…溝、92a…始端部、92b…終端部、93…矯正部、100…測定用ブロック、102,104…貫通孔、110,111…測定用ブロック、112,113,114,115…貫通孔、120…測定用ブロック、122,124…貫通孔、130…リンク、131…内輪、132…外輪、133…カム、271…内側リンクプレート、272…金属ブシュ、273…荷重帯、274…荷重付与部、275…支持部。
図1
図2
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図4
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図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13