特開2019-191156(P2019-191156A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特開2019-191156関節連結された振動子を有する計時器用調速機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-191156(P2019-191156A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】関節連結された振動子を有する計時器用調速機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 17/04 20060101AFI20191004BHJP
【FI】
   G04B17/04
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-50858(P2019-50858)
(22)【出願日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】18169314.4
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・ウィンクレ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ・ディ ドメニコ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】着用時の外乱や、衝撃の影響を受けず、生産容易で、最大限の効率の、フレキシブルピボットを有する機械式時計用調速機を提供する。
【解決手段】計時器用調速機構300は、固定構造101;201に対して枢転する慣性錘102;202と、1次振動子100;200と、固定構造101;201に対して慣性錘102;202を吊持する可撓性ストリップ103;203と、1次振動子100;200を同期させるための機械的手段を有し、機械的同期手段は、慣性錘102;202の間の関節連結部を含み、関節連結部は、通常の条件下で、慣性錘102;202が、反対の回転方向に、かつ近い回転角度で、枢転することを可能にするとともに、衝撃が生じた場合に、それらの慣性錘が同じ回転方向に枢転するのを防ぎ、また、1次振動子100;200と交互に協働するように構成されたフリクショナルレスト脱進機構400を含む発振器を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定構造(101,201)に対して枢転可能な少なくとも1つの慣性錘(102;202)をそれぞれが含む複数の1次振動子(100;200)を有する計時器用調速機構(300)であって、前記固定構造に対して、前記慣性錘(102;202)は複数の可撓性ストリップ(103;203)によって吊持されており、当該調速機構(300)は、少なくとも2つの前記1次振動子(100;200)を同期させるための機械的手段を有し、前記機械的同期手段は、前記2つの1次振動子(100;200)に含まれる2つの前記慣性錘(102;202)の間の関節連結部を含み、前記関節連結部は、通常の条件下で、前記2つの慣性錘(102,202)が、反対の回転方向に、かつ近い回転角度値で、枢転することを可能とするように構成されており、前記関節連結部は、衝撃が生じた場合に、前記2つの慣性錘(102;202)が同じ回転方向に枢転するのを防ぐように構成されている、計時器用調速機構において、
当該調速機構(300)は、2つの前記1次振動子(100;200)の2つの前記慣性錘(102,202)に含まれる爪石(121,221)において前記2つの1次振動子(100;200)と交互に協働するように構成されたフリクショナルレスト脱進機構(400)を含む発振器を有することを特徴とする、計時器用調速機構。
【請求項2】
前記関節連結部は、遊びを有する連結部であることを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項3】
前記2つの慣性錘(102;202)のうちの一方は、ピン(104)を含み、前記ピンは、前記2つの慣性錘(102;202)のうちの他方に含まれるスロット(204)内で遊びによってスライドし、前記スロット(204)はV字形であり、これにより、通常の条件下で、前記2つの慣性錘(102;202)は、反対の回転方向に、かつ同じ回転角度値で枢転することが可能である、ことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項4】
前記2つの1次振動子(100;200)は、同じ周波数および平衡調整を有し、前記関節連結部は、衝撃が生じた場合にのみ機械的に接触する、ことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項5】
前記フリクショナルレスト脱進機構(400)は、直線状の前記爪石(121;221)と協働するように構成された、湾曲した歯(421)を有するガンギ車(420)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項6】
前記フリクショナルレスト脱進機構(400)は、シリコンおよび/または二酸化シリコンで作製されたガンギ車(420)を有し、前記爪石(121;221)は、前記ガンギ車(420)の歯(421)と前記爪石(121;221)との間の接触力を最小限に抑えるために、ルビーで作製されている、ことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項7】
前記複数の可撓性ストリップ(103;203)は、逆V字形状の部分を有する少なくとも1つの姿勢不感ピボットを含むことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項8】
前記複数の可撓性ストリップ(103;203)は、投影において交差するストリップを2つの平行な平面内に有する少なくとも1つの姿勢不感ピボットを含むことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項9】
前記複数の可撓性ストリップ(103;203)は、少なくとも1つのV字形のWittric型ピボットを含み、前記関節連結部によって姿勢感度を排除している、ことを特徴とする、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)。
【請求項10】
請求項1に記載の計時器用調速機構(300)を少なくとも1つ備える、計時器ムーブメント(500)。
【請求項11】
請求項10に記載の計時器ムーブメント(500)を少なくとも1つ備える、さらに/または、請求項1に記載の計時器用調速機構(300)を少なくとも1つ備える、時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定構造に対して枢転可能な少なくとも1つの慣性錘をそれぞれが含む複数の1次振動子を有する計時器用調速機構に関するものであり、その固定構造に対して、慣性錘は複数の可撓性ストリップによって吊持されている。
【0002】
本発明は、さらに、かかる調速機構を少なくとも1つ備える計時器ムーブメントに関する。
【0003】
本発明は、さらに、かかるムーブメントを少なくとも1つ備える、さらに/または、かかる調速機構を少なくとも1つ備える、時計に関する。
【0004】
本発明は、機械式時計用の調速機構の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
計時器用の発振器および振動子の技術は、シリコンまたは類似の特性を有する材料から構成部品を製作する技術の出現によって著しく進歩し、これにより、仮想ピボットを形成する特にストリップを有する一体連接構造または可撓性ベアリングの出現を可能としたことで、エネルギーを消費するとともに摩耗を受けて適切な注油を必要とする通常のピボットを不要としている。
【0006】
しかしながら、低振幅、高応力伝達、特に回転に関して一般的には着用時の外乱に対する感度である衝撃感度など、多くのパラメータの改善が依然として必要である。
【0007】
LENOBLE名義の特許文献1は、時計用の接線衝撃アンクル脱進装置について開示しており、この脱進装置は、ガンギ歯車と、アンクルと、少なくとも1つのテン輪/テンプバネと、を有し、それらのアンクルは、それぞれ個別の軸で回転する2つの部品からなり、それらの2つの部品は、共通の関節連結部において隣接する端部で終端する2つの伝達アームを介して互いに関節連結されており、これにより、アンクルの2つの部品は、同じ速度で反対方向に回転し、アンクルの各部品は、係止面と衝撃面とを有し、衝撃面は、ガンギ車の歯からの衝撃を接線方向に受ける。この装置は、個別の揺動回転軸を有する2つのテン輪/テンプバネを含み、アンクルの各部品は、対応するテン輪/テンプバネの振り石に駆動係合することが可能なフォークを有する。
【0008】
SWATCH GROUP RESEARCH AND DEVELOPMENT Ltd名義の特許文献2は、計時器用の振動子機構について開示しており、この振動子機構は、第1のアンカと第2のアンカとを有する第1の支持体を備え、これに、仮想ピボット軸を規定するフレキシブルピボット機構が装着されており、その仮想ピボット軸に関して回転錘を回転可能に枢支しており、フレキシブルピボット機構は、仮想ピボット軸に関して互いに頭尾直列に取り付けられた少なくとも1つの前側RCC(リモートセンターコンプライアンス)フレキシブルピボットと少なくとも1つの後側RCCフレキシブルピボットとを含み、前側RCCフレキシブルピボットは、第1の支持体と中間回転支持体との間に、2つの直線状かつ可撓性の前側ストリップを有し、それらは、それらのクランプ点の間で同じ前側長さを有し、仮想ピボット軸で交差するとともに仮想ピボット軸において前側角度を規定する2つの前側直線方向を規定しており、仮想ピボット軸から最も遠くに離れた2つの直線状かつ可撓性の前側ストリップの個々のアンカは、両方とも仮想ピボット軸から同じ前側距離にある。後側RCCフレキシブルピボットは、第3のアンカおよび第4のアンカを含む中間回転支持体と回転錘との間に、2つの直線状かつ可撓性の後側ストリップを有し、それらは、それらのクランプ点の間で同じ後側長さを有し、仮想ピボット軸で交差するとともに仮想ピボット軸において後側角度を規定する2つの後側直線方向を規定しており、仮想ピボット軸から最も遠くに離れた2つの直線状かつ可撓性の後側ストリップの個々のアンカは、両方とも仮想ピボット軸から同じ後側距離にある。このフレキシブルピボット機構は、平面状であり、回転錘および回転錘に支持される任意の追加の慣性錘によって形成されるアセンブリの慣性中心は、仮想ピボット軸上またはその直近にある。度で表す前側角度は、前側長さおよび前側距離に基づく不等式によって規定され、度で表す後側角度は、後側長さおよび後側距離に基づく同様の不等式によって規定される。
【0009】
特許文献3は、計時器用調速機構について開示しており、この計時器用調速機構は、プレートと、少なくとも枢転動でプレートに対して動くように取り付けられたガンギ車セットであって、脱進軸に関して枢転するとともに駆動トルクを受けるガンギ車セットと、第1の弾性復帰手段によってプレートに連結された第1の剛性構造体を含む少なくとも第1の振動子と、を備える。第1の剛性構造体は、少なくとも1つの慣性アームを支持しており、第1の慣性アームは、少なくとも1つの第1の慣性アームとガンギ車セットの両方に含まれる帯磁路および/または帯電路を介してガンギ車セットと協働して、ガンギ車セットと第1の振動子との間の同期装置を形成するように構成されている。この同期装置は、不測のトルク増加が生じたときに同期を失うことがないように、機械的な脱同期防止機構によって保護されており、脱同期防止機構は、ガンギ車セットに支持された機械的な脱進機ストッパと、第1の慣性アームに支持された少なくとも1つの機械的な慣性アームストッパとを含み、これらが共同で、不測のトルク増加が生じた場合に停止状態に維持するように構成されている。
【0010】
MEYER名義の特許文献4は、弾性振動子について開示しており、この弾性振動子は、固定支持体と、少なくとも1つの回転部材と、回転部材に対して径方向に配置されたバネと、を備え、バネは、一端で支持体に、他端で回転部材に、固定されている。バネは、それらの有効な振幅の限界内での、それらと回転部材との様々な接触点において、それらのバネが回転部材の回転軸上に中心がある円弧を描くように構成されている。それらのバネは角柱形状を有し、その長さは、円弧半径値の1.5倍に等しい。回転部材は、互いに90°に配置された2つのバネ要素によって、または互いに120°に配置された3つのバネ要素によって、支持体に固定されている。互いに横並びで配置されて、反対方向に振動する2つの回転部材を、共通の支持体で支持することができる。それらの回転部材は、噛合することで振動方向を規定する部材を含むことができる。それらの回転部材は、共通の磁気システムで駆動することができる。反対方向に振動する2つの同軸の回転部材を、共通の支持体で支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2928015号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第3206089号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3128380号明細書
【特許文献4】仏国特許発明第1574359号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、機械式時計用の、フレキシブルピボットを有する調速機を製作することを提案し、この調速機は、着用時のそのような外乱の影響を受けず、衝撃の影響を受けず、生産が容易であり、摩擦を最小限に抑えることで最大限の効率を有する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のため、本発明は、請求項1に記載の計時器用調速機構に関するものである。
【0014】
本発明は、さらに、かかる調速機構を少なくとも1つ備える計時器ムーブメントに関する。
【0015】
本発明は、さらに、かかるムーブメントを少なくとも1つ備える、さらに/または、かかる調速機構を少なくとも1つ備える、時計に関する。
【0016】
本発明のその他の特徴および効果は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読解することで、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明による、2つの振動子を有する調速機構の概略平面図を示しており、それぞれの振動子は、可撓性ストリップによって吊持された慣性錘を含み、それらの錘は共同で、それぞれの振動子の第1のレスト角度位置において、遊びを有する関節連結部を規定している。
図2図2は、揺動中間位置にある同じ機構を、図1と同様に示している。
図3図3は、それらの振動子の1つに脱進機を有する同様の機構を、図1と同様に示している。
図4図4は、両方の振動子に脱進機を有する同様の機構を、それぞれの振動子の第1のレスト角度位置で、図1と同様に示している。
図5図5は、揺動中間位置にある同じ機構を、図4と同様に示している。
図6図6は、逆V字形ピボットの形態の可撓性ベアリングの概略平面図を示している。
図7図7は、投影において交差するストリップを有するピボットの形態の可撓性ベアリングの概略平面図を示している。
図8図8は、Wittrick型ピボットの形態の可撓性ベアリングの概略平面図を示している。
図9図9は、直接二重接線衝撃式の分離型脱進機を有する同様の機構を、図1と同様に示している。
図10図10は、そのような調速機構を備える計時器ムーブメントを含む時計を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、複数の1次振動子100、200を有する計時器用調速機構300に関する。この調速機構300は、関節連結された振動子を有する機構である。
【0019】
本発明は、通常、着用時の外乱に対して非常に敏感な、特に回転の角加速度に対して特に非常に敏感な、特に、機械式時計用のショートストロークのフレキシブルピボット上の振動子に適用することができるが、ただし、これに限定されない。
【0020】
図面には、そのような1次振動子100、200を2つ有する実施例のみを非限定的に示しているが、当業者であれば、本発明の特徴をより多数の振動子に当てはめることは、難しくはないであろう。
【0021】
これらの1次振動子100、200のそれぞれは、固定構造101、201に対して枢転可能な少なくとも1つの慣性錘102、202を含み、その固定構造に対して、慣性錘102、202は、複数の可撓性ストリップ103、203によって吊持されている。これらの可撓性ストリップは、周知の方法で、仮想ピボット軸を規定し、この仮想ピボット軸に関して、当該の慣性錘は、可撓性ストリップの形状および位置で規定される瞬間ピボット軸と理論ピボット軸の位置の間で、特に30マイクロメートル未満である数マイクロメートルまたは数十マイクロメートルの非常に短い距離で枢転する。
【0022】
本発明によれば、この調速機構300は、少なくとも2つのこのような1次振動子100、200を同期させるための機械的手段を有する。これらの機械的同期手段は、2つの1次振動子100、200に含まれる2つの慣性錘102、202の間の関節連結部を含む。
【0023】
この関節連結部は、通常の条件下で、2つの慣性錘102、202が、反対の回転方向に、かつ近い回転角度値で、枢転することを可能とするように構成されている。この関節連結部は、衝撃が生じた場合に、2つの慣性錘102、202が同じ回転方向に枢転するのを防ぐように構成されている。
【0024】
ある特定の実施形態では、この関節連結部は、いくらかの遊びを有する。
【0025】
より具体的には、非限定的に図1〜8に示すように、この関節連結部は、ピンまたは類似のものと、適切な形状の溝との協働によって得られ、より具体的には、2つの慣性錘102、202のうちの一方にピン104を含み、これが、2つの慣性錘102、202のうちの他方に含まれるスロット204内で遊びによってスライドする。このスロット204はV字形であり、これにより、通常の条件下で、2つの慣性錘102、202は、反対の回転方向に、かつ同じ回転角度値で枢転することが可能である。
【0026】
従って、図1および2に示すように、2つの振動子は、その第1の仮想ピボット軸をD1で示す第1の振動子100の第1の慣性錘102の第1のアームに取り付けられたピン104によって、同期させられる。ピン104は、第2の振動子200の第2の慣性錘202の第2のアームのスロット204内でスライドする。摩擦を最小限に抑えるために、ピン104とスロット204との間に空間がある。スロット204は、その開口205に向かって、第2の慣性錘202の第2の仮想ピボット軸D2から離間するにつれて広がるV字形であり、このV字形によって、第1の振動子100と第2の振動子200は、反対方向の同じ回転角度を有することが可能になるとともに、振動子の機械的効率を損なうことがないように、ピン104とスロット204との相互の接触を防いでいる。
【0027】
回転衝撃が生じた場合に、第1の振動子100と第2の振動子200は、同じ方向に回転する傾向があり、そのようになることを、関節連結部によって防ぐことで、2つの振動子の少なくとも一方が協働する脱進機の適切な動作を確保する。ショートストロークのフレキシブルピボット上に単一の振動子を備える場合に見られるような、不時の停止が発生することはない。
【0028】
振動子の揺動は、様々な方法で維持することができる。
【0029】
図3は、調速機構300が、脱進機構400と1次振動子100、200のうちの1つとを含む発振器を有する構成を示している。機械的同期手段は、特に図示のようなピン/スロットの実施例では、他のすべての1次振動子100、200の揺動を維持するように構成されており、この例では、第1の振動子100は脱進機400と協働し、第2の振動子200の揺動は、第1の振動子によって維持される。
【0030】
より具体的には、この発振器は、ETA Manufacture Horlogere Suisse名義の欧州特許出願第16200152号およびそれを基礎とする国際出願PCT/EP2017/069037、PCT/EP2017/069038、PCT/EP2017/069039、PCT/EP2017/069040、PCT/EP2017/069041、PCT/EP2017/069043、PCT/EP2017/078497、PCT/EP2017/080121に記載されているような拡張されたアンクル401を含む。
【0031】
図3の場合には第1の振動子100である、脱進機構400が協働するように構成されている1次振動子100、200に含まれるアーム110は、拡張されたアンクル401と協働するように構成されている。
【0032】
振動子の揺動を維持する第2の手段は、第1の振動子100と第2の振動子200に交互に作用するフリクショナルレスト脱進機を用いることである。
【0033】
従って、本発明によれば、図4および5に示すように、調速機構300は、それらの2つの1次振動子100、200の2つの慣性錘102、202に含まれる爪石121、221において2つの1次振動子100、200と交互に協働するように構成されたフリクショナルレスト脱進機構400を含む発振器を有する。
【0034】
この実施例には多くの利点がある。
【0035】
実際に、エネルギーは2つの振動子に均等に分配される。2つの1次振動子100、200が同じ周波数および平衡調整を有する場合には、関節連結部は、衝撃が生じた場合にのみ機械的に接触し、すなわち、外乱が生じた場合を除いて、ピン104とスロット204は互いに接触することはない。これにより、ピン104とスロット204との摩擦に起因する動作の中断を最小限に抑えることが可能となる。
【0036】
好ましくは、爪石121、221の幾何学的形状は、両方の振動子について同じであり、これにより、摩擦経路を最適化することが可能となる。両方の爪石が同じ可動要素上にある従来のフリクショナルレスト脱進機と比較して、本発明による、可動要素ごとに1つの爪石を有する構成によれば、Grahamデッドビート脱進機で知られている湾曲した爪石の使用を余儀なくされることなく、同じ効率を有する爪石形状を選択することが可能となる。図4および5は、直線状の爪石121、221と協働するように構成された、湾曲歯421を有するガンギ車420を用いた、好ましい実施例を示している。この構成は、依然として経済的であるルビーで爪石を作製することができることを意味しており、ルビーの爪石をシリコンまたは類似のガンギ車420と組み合わせることで、湾曲した爪石をシリコンで作製しなければならない場合のシリコン/シリコンの組み合わせの高い接触力を回避することが可能である。実際に、シリコンのガンギ車420の実施形態は、最大限のリセスと最小限の厚さによってさらなる改善が可能であり、その慣性が最小限に抑えられるので、依然として非常に効果的である。爪石は、歯車よりも厚く、従来の方法を用いてルビーで作製するのに完全に適している。
【0037】
従って、より具体的には、フリクショナルレスト脱進機構400は、シリコンおよび/または二酸化シリコンで作製されたガンギ車420を有し、爪石121、221は、ガンギ車420の歯421と爪石121、221との間の接触力を最小限に抑えるために、ルビーで作製されている。
【0038】
振動子の揺動を維持する第3の手段は、図9に示すように、直接二重接線衝撃式のデタッチド(分離型)脱進機構400を含む発振器を有する関節連結構成の調速機構300を用いることにある。この調速機構300は、2つの1次振動子100、200に含まれるとともに反対方向に枢転するように構成された2つの慣性錘102、202の間に、運動連結部600を有する。これらの2つの慣性錘102、202は、脱進機構400に含まれるガンギ車420に有する歯421と協働するように構成された爪石121、221を含み、これにより、発振の1振動ごとに、ガンギ車420から爪石121、221の1つに対して直接的な衝撃を生じさせる。この運動連結部600は、効果的には、2つの慣性錘102、202の間に遊びを有する関節連結部を含む。
【0039】
この機構は、コーアクシャル(同軸)脱進機に匹敵し、この例では、アンクルからの直接的な衝撃を、第2の振動子の慣性錘への直接的な衝撃で置き換えている。
【0040】
より具体的には、図9で示す実施例では、調速機構300は双安定ストッパ700を有し、これは、一方で、ガンギ車420を停止させるために、歯421の1つと、第1のアーム701を介して協働するとともに、他方で、2つの慣性錘102、202の1つに含まれるピン207と、フォーク703を介して協働するように構成されている。2つの安定位置を有するこのストッパは、アンクルレバーに類似しており、第1のアーム701を介してガンギ車を停止させるためのロック機能のみを担うものである。第2の慣性錘の枢転によって、ピン207がフォーク703から解放されると、ストッパ700は枢転させられて、これによりガンギ車の回転を許す。
【0041】
この第3の手段によれば、脱進機構400は、直接二重接線衝撃を用いるデタッチド(分離型)脱進機である。
【0042】
実際に、これは、振動子が、その発振の一部の期間において自由であるので、分離型であり、このことは、精密計時の観点から望ましい。
【0043】
これは、発振の1振動ごとに1つの衝撃を生じさせるので、二重衝撃式のものである。
【0044】
これは、(通常のスイスレバー脱進機の摩擦衝撃とは対照的に)衝撃を発生させる接触が、当該の慣性錘の慣性中心とガンギ車の中心とを結ぶ線上において概ね生じるので、接線衝撃式のものである。
【0045】
これは、衝撃が、必ずしもアンクルを通してではなく、歯車から振動子に直接付与されるので、直接衝撃式のものである。
【0046】
なお、この直接二重衝撃は、2つの慣性錘が反対方向に枢転することによってのみ可能であることは明らかである。従って、常に同じ方向に回転するガンギ車は、第1の振動中に慣性錘のうちの一方を押すことができ、第2の振動中に他方の慣性錘を押すことができる。
【0047】
図9の一点鎖線A、B、C、Dは、効果的な相対配置を示している。2つの可撓性ベアリングの仮想ピボットを結ぶ直線Aは、これらの2つのピボットの間をガンギ車の中心から2等分する方向Bに対して垂直であり、歯421と爪石121、221との間の衝撃は、この直線Bの近くで発生する。それらのピボットの1つは、ストッパ700の軸と共に、ガンギ車の軸とストッパの軸を結ぶ直線Dに垂直な直線Cを規定し、ピン207とフォーク703との接触は、この直線Cの近くで発生する。
【0048】
フレキシブルピボットに関して、様々な構成を用いることができる。
【0049】
図6は、複数の可撓性ストリップ103、203が、逆V字形状を有する少なくとも1つのピボットを含む場合を示しており、この構成は、時計の姿勢の影響を受けないことが知られている。
【0050】
図7は、複数の可撓性ストリップ103、203が、投影において交差するストリップを2つの平行な平面内に有する少なくとも1つのピボットを含む場合を示しており、この構成も同じく、特定の角度および交点条件では、時計の姿勢の影響を受けないことが知られている。
【0051】
図8は、複数の可撓性ストリップ103、203が、着用時の時計の姿勢の影響を受けることが知られているV字形のWittrick型ピボットを少なくとも1つ含む場合を示している。しかしながら、関節連結を用いた同期手段によって、その姿勢感度は関節連結により排除されるので、この構成を用いることもできる。この実施例は、特に作製するのが簡単である。
【0052】
本発明は、さらに、かかる計時器用調速機構300を少なくとも1つ備える計時器ムーブメント500に関する。
【0053】
本発明は、さらに、かかるムーブメント500を少なくとも1つ備える、さらに/または、かかる計時器用調速機構300を少なくとも1つ備える、時計1000に関する。
【符号の説明】
【0054】
100 1次振動子
101 固定構造
102 慣性錘
103 可撓性ストリップ
104 (慣性錘の)ピン
110 (1次振動子の)アーム
121 爪石
200 1次振動子
201 固定構造
202 慣性錘
203 可撓性ストリップ
204 (慣性錘の)スロット
205 (慣性錘のスロットの)開口
221 爪石
300 調速機構
400 脱進機構
401 アンクル
420 ガンギ車
421 (ガンギ車の)歯
500 計時器ムーブメント
600 運動連結部
700 双安定ストッパ
701 (双安定ストッパの)第1のアーム
703 (双安定ストッパの)フォーク
1000 時計
A 2つの仮想ピボットを結ぶ直線
B 2つの仮想ピボットの間をガンギ車の中心から2等分する直線
C 仮想ピボットの1つと双安定ストッパの軸を結ぶ直線
D ガンギ車の軸とストッパの軸を結ぶ直線
D1 第1の仮想ピボット軸
D2 第2の仮想ピボット軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10