特開2019-196519(P2019-196519A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧
特開2019-196519アルミニウム合金線材およびその製造方法
<>
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000005
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000006
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000007
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000008
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000009
  • 特開2019196519-アルミニウム合金線材およびその製造方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-196519(P2019-196519A)
(43)【公開日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】アルミニウム合金線材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/00 20060101AFI20191018BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20191018BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20191018BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20191018BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20191018BHJP
【FI】
   C22C21/00 A
   C22F1/04 D
   H01B1/02 B
   H01B13/00 501D
   C22F1/00 602
   C22F1/00 604
   C22F1/00 625
   C22F1/00 630A
   C22F1/00 650A
   C22F1/00 685Z
   C22F1/00 694A
   C22F1/00 691B
   C22F1/00 691C
   C22F1/00 630K
   C22F1/00 661A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-90930(P2018-90930)
(22)【出願日】2018年5月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 亨
(72)【発明者】
【氏名】西 和也
(72)【発明者】
【氏名】秦 昌平
(72)【発明者】
【氏名】早坂 孝
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 威
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301AA01
5G301AA02
5G301AA03
5G301AA07
5G301AA08
5G301AA09
5G301AA12
5G301AA13
5G301AA14
5G301AA19
5G301AA21
5G301AA24
5G301AB01
5G301AB08
5G301AD01
5G301AE02
(57)【要約】
【課題】強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく有するアルミニウム合金線材を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金からなる線材であって、アルミニウム合金は、Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ、Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織を有し、引張強度が150MPa以上、導電率が55%IACS以上、200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上である、アルミニウム合金線材が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金からなる線材であって、
前記アルミニウム合金は、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ、
Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織を有し、
引張強度が150MPa以上、
導電率が55%IACS以上、
200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上である、
アルミニウム合金線材。
【請求項2】
前記金属組織において、結晶粒径が10μm以下の前記Al結晶粒が占める領域が面積比で90%以上である、
請求項1に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項3】
長手方向に垂直な断面において、前記Al−Zr化合物の単位面積当たりの数が500個/100μm以上である、
請求項1又は2に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項4】
長手方向に垂直な断面において、前記Al−Co−Fe化合物の単位面積当たりの数が50個/100μm以上である、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項5】
前記Al−Co−Fe化合物の大きさが20nm以上500nm以下である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項6】
前記Al−Zr化合物の大きさが5nm以上100nm以下である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項7】
線径が2.0mm以下である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項8】
前記Al−Co−Fe化合物および前記Al−Zr化合物は球形状を有する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材。
【請求項9】
アルミニウム合金からなる線材の製造方法であって、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる溶湯を準備する準備工程と、
前記溶湯を、Zrの晶出を抑制しつつCoを晶出させるような冷却速度で急冷して鋳造することで、Al−Co−Fe化合物を含む鋳造材を形成する鋳造工程と、
前記鋳造材を伸線して伸線材を形成する伸線工程と、
前記伸線材に時効処理を施し、前記Al相に固溶するZrをAl−Zr化合物として析出させる時効処理工程と、を有し、
前記アルミニウム合金が、前記化学組成と、Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織とを有し、前記線材の引張強度を150MPa以上、導電率を55%IACS以上、200℃で10年間加熱させたときの強度を初期状態の強度の90%以上となるように構成する、
アルミニウム合金線材の製造方法。
【請求項10】
前記金属組織において、結晶粒径が10μm以下の前記Al結晶粒が占める領域が面積比で90%以上である、
請求項9に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
【請求項11】
前記鋳造工程では、冷却速度を1℃/s以上60℃/s以下とする、
請求項9又は10に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
【請求項12】
前記伸線工程では、前記鋳造材を断面積が0.01倍以下となるような加工度で伸線する、
請求項8〜11のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
【請求項13】
前記伸線工程では、前記伸線材の線径を2.0mm以下とする、
請求項8〜12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金線材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金線材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、自動車、その他の電気機器等の用途では、配線材として、銅または銅合金からなる導体を備える電線やケーブルが使用されている。これらの電線やケーブルには、自動車などでのエネルギー消費量を低減する観点から、軽量化の要望が大きい。そのため、近年、これらの用途に使用される電線やケーブルには、銅または銅合金よりも比重の小さなアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体を使用することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、アルミニウム合金において、マグネシウム(Mg)やジルコニウム(Zr)などの合金元素を添加し、これらの元素を時効析出させる方法が提案されている。特許文献1では、導体として、このようなアルミニウム合金を採用することにより、導体の強度、伸び、導電率および耐熱性を向上させることができるとされている。なお、特許文献1における耐熱性とは、室温から150℃までの温度で1000時間保持されたときに強度が150MPa以上であることを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−229485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄道車両等に使用される電線やケーブルでは、導体にアルミニウムまたはアルミニウム合金を適用したときに、導体の断面積が銅を適用した場合に比べて大きくなる。鉄道車両等の移動体では、電線やケーブルを配線する配線スペースが制限されているため、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体の断面積をできるだけ小さくし、従来と同等の配線スペースに電線やケーブルを配線させることが望まれている。しかし、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる導体の断面積を小さくすると、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランス良く得ることが難しかった。
【0006】
本発明は、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく有するアルミニウム合金線材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、
アルミニウム合金からなる線材であって、
前記アルミニウム合金は、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ、
Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織を有し、
引張強度が150MPa以上、
導電率が55%IACS以上、
200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上である、
アルミニウム合金線材が提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、
アルミニウム合金からなる線材の製造方法であって、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる溶湯を準備する準備工程と、
前記溶湯を、Zrの晶出を抑制しつつCoを晶出させるような冷却速度で急冷して鋳造することで、Al−Co−Fe化合物を含む鋳造材を形成する鋳造工程と、
前記鋳造材を伸線して伸線材を形成する伸線工程と、
前記伸線材に時効処理を施し、前記Al相に固溶するZrをAl−Zr化合物として析出させる時効処理工程と、を有し、
前記アルミニウム合金が、前記化学組成と、Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織とを有し、前記線材の引張強度を150MPa以上、導電率を55%IACS以上、200℃で10年間加熱させたときの強度を初期状態の強度の90%以上となるように構成する、
アルミニウム合金線材の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく有するアルミニウム合金線材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例4のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSIM(二次イオン顕微鏡)像である。
図2図2は、実施例4のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSTEM(走査型電子顕微鏡)による暗視野像である。
図3図3は、図3の拡大図である。
図4図4は、比較例1のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSIM(二次イオン顕微鏡)像である。
図5図5は、比較例1のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSTEM(走査型電子顕微鏡)による暗視野像である。
図6図6は、図5の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、上述した課題を解決すべく、合金元素の種類や製造条件などを適宜変更し、アルミニウム合金の化学組成を変化させたときの諸特性の変化について検討を行った。その結果、合金元素としてCoおよびZrを使用することにより、最終的に得られるアルミニウム合金線材において、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく得られることを見出した。本発明は、当該知見に基づいて成されたものである。
【0012】
<アルミニウム合金線材>
以下、本発明の一実施形態にかかるアルミニウム合金線材について説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
(化学組成)
まず、アルミニウム合金線材(以下、単に合金線材ともいう)を構成するアルミニウム合金(以下、単に合金ともいう)の化学組成について説明する。
【0014】
合金の化学組成は、Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる。
【0015】
Coは、合金線材に添加する必須成分である。Coは、後述するように、合金線材の製造過程(鋳造・凝固時)において、その大部分がAlと反応して晶出物(Al−Co化合物)を形成し、最終的に得られる合金線材では化合物相として存在する。Al−Co化合物は実際には、アルミニウム合金中に不可避的に存在するFeを吸収したAl−Co−F−e化合物の形で存在する。Al−Co−Fe化合物は、合金のAl再結晶粒の微細化に寄与するとともに、合金線材の伸びを向上させる。Coは合金の導電率を低下させるおそれがあるが、Coの含有量を0.1質量%〜1.0質量%とすることにより、合金線材においてCoによる導電率の低下を抑制しつつ、Coによる強度、伸び、耐熱性を高い水準でバランスよく有する効果を得ることができる。Coの含有量は、0.2質量%〜1.0質量%であることが好ましく、0.3質量%〜0.8質量%であることがより好ましい。
【0016】
Zrは、Coと同様に、合金線材の製造時に添加する必須成分である。Zrは、後述するように、鋳造後のインゴット(鋳造材)中では固溶状態で存在するが、時効熱処理後の合金線材ではAl−Zr化合物として析出する。Al−Zr化合物は、主に合金線材の耐熱性の向上に寄与する。Zrは、含有量が過度に多くなると、合金線材の製造過程で合金の延性を低下させて、合金線材の細径化を妨げるおそれがある。この点、Zrの含有量を0.2質量%〜0.5質量%とすることにより、合金の延性を高く維持するとともに、合金線材において所望の耐熱性を得ることができる。Zrの含有量は、0.3質量%〜0.4質量%であることがより好ましい。
【0017】
Feは、アルミニウム原料に由来して不可避的に取り込まれる成分である。Feは、合金の強度の向上に寄与する。Feは、鋳造時にFeAlとして晶出した場合、あるいは時効熱処理中にFeAlとして析出した場合、合金の延性を低下させて、製造時に合金線材の細径化を妨げるおそれがある。本実施形態では、Coを配合することで、Al−Co化合物を晶出させたときにFeを吸収することでAl−Co−Fe化合物を形成している。これにより、FeをAl−Co−Fe化合物とすることで、FeAlの形成を抑制している。この結果として、合金の延性の低下を抑制しつつ、合金の強度を向上させることができる。Feの含有量は、Al−Co化合物に吸収させる観点からはCoの含有量以下とするとよく、0.02質量%〜0.09質量%とする。これにより、合金線材を細径化しつつ、高い強度を得ることができる。Feの含有量は、0.04質量%〜0.09質量%であることが好ましい。なお、Feは、所定の含有量となるように、添加してもよい。
【0018】
Siは、Feと同様に、アルミニウム原料に由来して不可避的に取り込まれる成分である。Siは、合金のAl結晶粒中に固溶したり、Feとともに析出したりすることで、合金の強度の向上に寄与する。Siは、Feと同様に合金の伸びを低下させたり、合金線材の細径化を妨げたりするおそれがあるが、Siの含有量を0.02質量%〜0.09質量%とすることにより、合金の伸びの低下を抑制しつつ、強度を向上させることができる。Siの含有量は、0.04質量%〜0.08質量%であることが好ましい。なお、Siは、所定の含有量となるように、添加してもよい。
【0019】
Mg、Ti、B、Cu、Ag、Au、Mn、Cr、Hf、V、ScおよびNiは、アルミニウム原料に由来して取り込まれたり、必要に応じて適宜添加したりする随意成分である。ここで、随意成分とは、含有してもよいし含有しなくてもよい成分を示す。各合金元素は、合金線材においてAl相の結晶粒の粗大化を抑制し、その強度の向上に寄与する。このうち、Cu、Ag、およびAuは、結晶粒界に析出して粒界強度も向上させることができる。各合金元素の含有量をそれぞれ、上記範囲とすることで、合金の伸びの低下を抑制するとともに、各合金元素による効果が得られる。
【0020】
上述した成分以外の残部は、Alおよび不可避不純物となる。ここで、不可避不純物は、合金線材の製造工程上、不可避的に取り込まれてしまうものであって、合金線材の特性に影響を及ぼさない程度の少ない含有量のものを示す。不可避不純物としては、例えば、Ga、Zn、Bi、Pbなどが挙げられる。
【0021】
合金線材の導電率の観点からは、Alの含有量は97質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、98.4質量%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
(金属組織)
続いて、アルミニウム合金の有する金属組織について説明する。
【0023】
合金の金属組織は、Al結晶粒と、晶出物または析出物からなるAl−Co−Fe化合物、およびAl−Zr化合物を含み、これらの化合物が微細に分散して構成されている。
【0024】
ここで、晶出物とは、アルミニウム合金を鋳造する際に溶湯を冷却により凝固させる段階、もしくは、凝固後であって高温度の鋳造材を室温付近まで冷却させる段階で形成される化合物を示す。つまり、晶出物は、鋳造材の段階でアルミニウム合金中に形成される化合物である。
また、析出物とは、時効処理により、室温まで冷却された鋳造材を融点以下の高温雰囲気下で加熱保持する段階で形成される化合物を示す。具体的には、鋳造材のAl相中に固溶していた金属元素が、時効処理によってAl相中に拡散し凝集することで、初めて形成される化合物である。つまり、析出物は、鋳造材の段階ではAl合金中に存在せず、時効処理後の合金線材の段階で存在する。
【0025】
また、合金の強度、伸び、導電率および耐熱性をより高い水準で実現する観点からは、合金の金属組織が、上記化合物が微細に分散する微細な結晶組織であることが好ましい。具体的には、合金の金属組織は、線材の長手方向に平行な断面において、結晶粒径の最大値が10μm以下のAl結晶粒が占める領域が面積比で90%以上であることが好ましい。このような面積比を有する金属組織では、Al結晶粒の大部分が10μm以下の微細な結晶であるため、その結晶粒の間に形成される結晶粒界は細かな網目構造を形成する。このような結晶粒界とその近傍領域に、Al−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物の2種類の化合物が存在することにより、化合物が金属組織中で微細かつ均一に分散することになる。
【0026】
なお、結晶粒径とは、金属組織中にAl結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とが存在するアルミニウム合金線材の長手方向に沿った断面において、Al結晶粒の粒径の最大値を示す。
【0027】
金属組織では、合金線材の長手方向に垂直な断面において、Al−Co−Fe化合物の単位面積当たりの数(以下、単に数密度ともいう)が50個/100μm以上であることが好ましい。このような数密度でAl−Co−Fe化合物を分散させることにより、化合物を金属組織中で微細に分散させることができ、合金線材において諸特性をより高い水準でバランスよく得ることができる。
【0028】
金属組織では、合金線材の長手方向に垂直な断面において、Al−Zr化合物の単位面積当たりの数(数密度)が500個/100μmであることが好ましい。このような数密度でAl−Zr化合物を分散させることにより、化合物を金属組織中で微細に分散させることができ、合金線材において諸特性をより高い水準でバランスよく得ることができる。
【0029】
金属組織において、Al−Zr化合物の大きさは5nm以上100nm以下であることが好ましい。析出物を小さくすることで、合金元素の含有量を少なくした場合であっても析出物の個数を増やすことができ、析出物による効果をバランスよく得ることができる。また、合金の延性を高く維持できるので、伸線工程で加工度を高くすることができ、合金線材をより細径化することが可能となる。
【0030】
また、金属組織において、Al−Co−Fe化合物の大きさは20nm以上500nm以下であることが好ましい。Al−Co−Fe化合物もAl−Zr化合物と同様に、粒子サイズを小さくすることが好ましい。なお、Co原子はAl組織中でZr原子よりも高速で拡散するため、Al−Co−Fe化合物の大きさはAl−Zr化合物よりも増加する。後述するように、Al−Co−Fe化合物の役割は、時効熱処理の初期段階で再結晶粒の成長を抑制することにある。このため時効熱処理が終了した後の金属組織において、Al−Co−Fe化合物のサイズがAl−Zr化合物を上回ることによる支障はない。
【0031】
また、化合物の形状は、特に限定されないが、Al−Co−Fe化合物は球形状あるいは回転楕円体形状であることが好ましい。Al−Zr化合物は球形であることが好ましいが、不定形状であっても支障は無い。なお、回転楕円体形状とは、線材の長手方向に垂直な方向では円形状であり、線材の長手方向に平行な方向では楕円形状である形状を示す。
【0032】
(アルミニウム合金線材の特性)
本実施形態のアルミニウム合金線材は、上述した化学組成および金属組織を有するアルミニウム合金から形成されており、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく有する。具体的には、合金線材は、室温における引張強度が150MPa以上となる強度および、8%以上となる引張り伸びを有する。また、50%IACS以上の導電率を有する。また、200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上となる耐熱性を有する。なお、ここでいう「200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上となる耐熱性」とは、アルミニウム合金線材を特定の温度と時間で加熱することによって得られる引張強度の等温軟化曲線に基づいて、アルミニウム合金線材の引張強度が加熱する前の引張強度(初期の引張強度)よりも10%低下する温度(例えば300℃〜400℃の範囲の任意の温度)と時間(例えば600sec〜3000000secの範囲の任意の時間)をアレニウス・プロットしたときにおいて、当該アレニウス・プロットでの温度が200℃の場合の時間(引張強度が10%低下するときの時間)が10年以上となることを意味する。具体的には、後述する実施例における耐熱性の評価方法によって得ることができる。
【0033】
合金線材の線径は、特に限定されないが、可とう性の観点からは2mm以下であることが好ましく、0.3mm〜1mmであることがより好ましい。本実施形態では、合金を所定の構成とすることにより、線径を2mm以下としながらも、諸特性を高い水準でバランスよく得ることができる。
【0034】
<アルミニウム合金線材の製造方法>
続いて、上述したアルミニウム合金線材の製造方法について説明する。本実施形態のアルミニウム合金線材は、溶湯の準備工程、鋳造工程、成形工程、伸線工程および時効処理工程の各工程を順次行うことにより製造することができる。以下、各工程について詳述する。
【0035】
(準備工程)
まず、アルミニウム合金線材を形成するための溶湯を準備する。本実施形態では、溶湯が上述した化学組成となるように、Al原料、Co原料およびZr原料、必要に応じて、その他の合金原料を混合し、溶解する。原料の混合方法や溶解方法は特に限定されず、従来公知の方法により行うことができる。
【0036】
(鋳造工程)
続いて、溶湯を鋳造して鋳造材を形成する。本実施形態では、溶湯を、Zrの晶出を抑制しつつCoを晶出させるような冷却速度で急冷して凝固させる。これにより、Al−Co−Fe化合物を晶出させ、Al−Co−Fe化合物が分散する鋳造材を形成する。
【0037】
ここで、鋳造段階での急冷によるCoとZrの挙動の違いについて、本発明者らが得た知見を説明する。
【0038】
本発明者らの検討によると、CoとZrとは、アルミニウム固相中での拡散速度が異なることで、晶出や析出のしやすさ(析出速度)が異なることが見出された。
【0039】
具体的には、Al固相中のCoは、その拡散速度がAlの自己拡散速度と同等もしくはそれ以上に大きい。しかも、Coの熱平衡状態でのAl相への固溶度は、最大0.05%未満と非常に小さい。そのため、Coは、溶湯から鋳造、凝固した直後であっても、Al組織中で容易に凝集して晶出しやすい。晶出によりCoの大部分は、鋳造後のインゴット(鋳造材)の段階で、Al組織中に化合物として晶出することになる。
【0040】
また、凝固直後のAl相には晶出した化合物以外に、固溶したCo原子も存在する。凝固直後では熱平衡的な固溶度より多い過飽和なCo原子が、Al相中には固溶する。しかし、Co原子は、Al相中を高速拡散することにより、過飽和に固溶したCo原子は比較的短時間で凝集し、化合物相を形成する。結果として、鋳造、凝固後に鋳造材が室温に冷却されるまでに、添加したCo原子のほとんどはAlとの化合物相として存在しており、Al相中に固溶するCo原子は、熱平衡濃度に近い0.1%未満の少量に留まる。
【0041】
一方、Al相中のZrは、その拡散速度がAlの自己拡散速度よりも著しく小さく、Coに比べてAl組織中における析出速度が小さくなる。しかも、Zrの熱平衡状態でのAl相への最大固溶度は、0.3〜0.4%程度であり、Coより数倍大きい。このため、Zrは鋳造後の鋳造材の段階では晶出しにくく、その大部分はAl組織中に過飽和に固溶した状態で存在することになる。また、Zrは、Coに比べて拡散が著しく遅いため、鋳造後の鋳造材を室温で長時間保管した場合も、過飽和固溶状態はそのまま維持される。過飽和固溶状態のZrは、時効処理により、例えば300℃以上の温度で加熱することにより析出させることができる。
【0042】
本発明者らは、この析出速度の違いに着目し、検討を行った。その結果、溶湯を冷却させる速度を大きくするほど、得られる鋳造材において、Coの大部分をAl−Co−Fe化合物として晶出させながらも、Zrの晶出を抑制してZrを固溶させた状態に維持できることが見出された。このような鋳造材によれば、Zrが晶出した鋳造材と比べて、高い加工度で伸線しても断線を抑制することができ、線径の細い合金線材を製造することができる。
【0043】
鋳造材は、Coが溶湯中のFeとAl−Co−Fe化合物を形成することで、導電率の低下の要因となる固溶状態のFeが少なく、また伸びの低下の要因となる析出物(FeAl)が少ない。一方で、鋳造材に形成されたAl−Co−Fe化合物は、Al組織中に分散することで、後述の時効熱処理段階で、Al結晶粒が再結晶により粗大化するのを抑制するように作用する。本実施形態では、Al−Co−Fe化合物を微細に分散することで、時効処理工程での結晶粒の粗大化をより抑制し、結晶粒の結晶粒径をより小さく維持することが可能となる。
【0044】
なお、Al−Co−Fe化合物は、FeAl化合物のようにAl合金の延性を低下させないため、合金線材の細径化の妨げとならない。なお、Al−Co−Fe化合物は、Al、Co、Feを少なくとも含む化合物であり、その他の金属元素を含んでもよい。また、Al−Co−Fe化合物は、鋳造後のインゴット中では、細長い形状となる。
【0045】
鋳造工程では、冷却速度を1℃/s〜60℃/sとすることが好ましく、20℃/s〜50℃/sとすることがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態では、Al−Co−Fe化合物の微細化と、固溶Zrの偏析を抑制する観点から、溶湯を急冷して鋳造可能なプロペルチ連続鋳造機、もしくは双ロール鋳造機などを用いて、ビレット鋳造または連続鋳造することが好ましい。
【0047】
(成形工程)
続いて、必要に応じて、鋳造材を伸線しやすいように鋳造材を棒状(いわゆる荒引き線)に成形する。ここでは、例えば、線径が5mm〜50mmとなるように鋳造材に機械加工を施す。機械加工としては、例えば圧延加工、スエージ加工、引抜加工など従来公知の方法を行うとよい。
【0048】
(伸線工程)
続いて、棒状の鋳造材に冷間伸線加工を施して、所定の線径の伸線材に加工する。この伸線加工の際、鋳造材中に分散するAl−Co−Fe化合物は細かく粉砕され、同時に伸線方向に平板上に引き伸ばされる。Al−Co−Fe化合物をより微細かつ緻密に分散させることで、後述の時効処理工程での結晶粒の粗大化をより確実に抑制することができる。伸線加工としては、例えばダイスを用いた引抜伸線加工など従来公知の方法で行うとよい。なお、加工度とは、鋳造材の断面積に対する伸線材の断面積の比率であって、伸線工程での減面率を示す。
【0049】
本実施形態では、鋳造材が、Zrの晶出が抑制されて、高い延性を有するので、伸線加工の加工度を高くすることができる。Al−Co−Fe化合物をより細かく粉砕し、伸線材中により微細に分散させる観点からは、鋳造材を断面積が0.01倍以下となるように伸線し、伸線材の線径を2.0mm以下とすることが好ましい。このような加工度にすることにより、伸線終了後のAl−Co−Fe化合物の大きさを20nm〜500nmに制御しやすくなる。また、後述の時効処理工程にて、Zrを析出させたときに、Al−Zr化合物の大きさも5nm〜100nmに制御しやすくなる。しかも、最終的な合金線材において、析出物をより分散させて析出させることができる。
【0050】
なお、本実施形態では、鋳造材が高い延性を有するので、伸線時の加工歪みを緩和するための焼鈍処理(いわゆる中間焼鈍処理)を省略することができる。これにより、Al結晶粒の再結晶による粗大化をより抑制することができる。
【0051】
(時効処理工程)
続いて、伸線材に時効処理を施す。時効処理としては、例えば270℃〜440℃の温度範囲で伸線材を加熱するとよく、処理時間を10時間以上とするとよい。時効処理により、伸線材においてAl相に固溶するZrをAl−Zr化合物として析出させる。Al−Zr化合物は、AlおよびZrを少なくとも含む化合物であり、その他の金属元素を含んでもよい。なお、時効処理の際、伸線材を構成するAl合金に固溶するCoも析出して、Al−Co−Fe化合物を形成することがある。
【0052】
時効処理の際、Al結晶粒が加熱により再結晶することになる。この点、本実施形態では、伸線材中にCoの化合物が微細に分散しているので、この粒子によってAl結晶粒の粗大化を抑制し、Al結晶粒の大部分を微小サイズ(例えば、10μm以下の結晶粒径)に維持することができる。諸特性をより高い水準でバランスよく得る観点からは、結晶粒径が10μm以下のAl結晶粒が占める領域を面積比で90%以上となるように、Al結晶粒の大きさを微細に維持することが好ましい。
【0053】
また、時効処理の際、Al相中に固溶するZrが結晶粒界まで移動して析出する。このとき、本実施形態では、Al結晶粒が微小で、その間に形成される結晶粒界が細かな網目構造を有するので、ZrがAl相から結晶粒界へ移動するまでの距離が短く、Zrの結晶粒界での析出を促進させることができる。そのため、Zrの析出物を微小サイズ(例えば10nm〜100nm)として伸線材中に微細に分散させて析出させることができる。
【0054】
以上により、伸線材を時効処理して、本実施形態の合金線材が得られる。
【0055】
<本実施形態に係る効果>
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0056】
本実施形態では、上述した化学組成を有する溶湯を、Zrの晶出を抑制しつつCoを晶出させるような冷却速度で急冷している。これにより、溶湯を凝固させる際に、CoをAl−Co−Fe化合物として、凝固組織中に分散させている。また、ZrをAl相中に固溶させた状態として晶出を抑制している。この鋳造材を伸線することにより、Al−Co−Fe化合物が粉砕されて微細化され、かつ均一に分散する伸線材を形成する。そして、この伸線材に時効処理を施すことにより、Al相に固溶するZrをAl−Zr化合物として析出させている。時効処理では、Zrの析出とともに、Al結晶粒が加熱により再結晶することになるが、伸線材中に微細に分散するAl−Co−Fe化合物が、Al結晶粒の再結晶による粗大化を抑制し、Al再結晶粒を小さく維持することができる。また、Zrの多くは、微小なAl再結晶粒同士の間の結晶粒界、および粒界近傍の粒内に析出するので、微細に分散することになる。このように、本実施形態では、所定の冷却速度で急冷した鋳造材に伸線加工および時効処理を施すことで、Al再結晶粒が小さく、かつ、Al−Co−FeおよびAl−Zrの各化合物が微細に分散する合金線材を得ることができる。
【0057】
得られた合金線材は、上述した化合組成を有し、かつAl結晶粒と分散粒子としてAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物を含む金属組織を有する。金属組織では、微細なAl結晶粒が多く存在し、その結晶粒間に形成される結晶粒界は細かな網目構造を有しており、その結晶粒界上に化合物が分散している。つまり、化合物が金属組織中に均一かつ微細に分散している。
【0058】
このような金属組織を有する合金線材は、以下に示す特性を有する。すなわち、Feを、FeAl化合物ではなく、Al−Co−Fe化合物の形態で分散させているので、FeAlによる強度および伸びの低下が抑制されている。また、Feを化合物に吸収させることで、Al相に固溶するFeが少なく、高い導電率を維持することができる。また、Al−Zr化合物が析出しているので、高い耐熱性を得ることができる。さらに、Al結晶粒を微小サイズとして、Al−Co−FeおよびAl−Zrの各化合物を合金中に微細に分散させることで、各化合物粒子による効果を高い水準でバランスよく得ることができる。
【0059】
具体的には、本実施形態の合金線材によれば、引張強度が150MPa以上、引張り伸びが8%以上、導電率が55%IACS以上、200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上であり、強度、伸び、導電率および耐熱性を高い水準でバランスよく得ることができる。
【0060】
また、合金線材は、合金線材の長手方向に平行な断面において、結晶粒径が10μm以下のAl結晶粒が占める領域が面積比で90%以上である金属組織を有することが好ましい。面積比が大きくなるほど、金属組織では、微細なAl結晶粒が多く存在することになり、その結晶粒間に形成される結晶粒界は細かな網目構造を有することになる。本実施形態では、10μm以下のAl結晶粒を面積比で90%以上となるように金属組織を構成することで、結晶粒界の網目構造をより細かくすることができ、結晶粒界に存在する化合物をより分散して存在させることができる。これにより、強度、伸び、導電率および耐熱性をより高い水準でバランスよく得ることができる。
【0061】
また、合金線材は、長手方向に垂直な断面において、Al−Co−Fe化合物の単位面積当たりの数(数密度)が50個/100μm以上であることが好ましい。合金線材は、このような数密度となるようにAl−Co−Fe化合物が微細に分散していることで、合金線材の諸特性をより高い水準で満たすことができる。
【0062】
また、合金線材は、長手方向に垂直な断面において、Al−Zr化合物の単位面積当たりの数(数密度)が500個/100μm以上であることが好ましい。合金線材は、このような数密度となるようにAl−Zr化合物が微細に分散していることで、合金線材の諸特性をより高い水準で満たすことができる。
【0063】
また、合金線材は、Al−Zr化合物の大きさが5nm以上100nm以下であることが好ましい。Al−Zr化合物の大きさが小さくなることで、合金線材の伸びをより向上させて、製造過程での断線率を低減することができる。その結果、合金線材の歩留まりを向上させることができる。
【0064】
また、合金線材は、Al−Co−Fe化合物の大きさが20nm以上500nm以下であることが好ましい。Al−Co−Fe化合物の大きさがこの範囲となることで、Al結晶粒の粗大化を効率よく抑制することが可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、鋳造材においてZrの晶出を抑制し、その延性を高く維持している。そのため、伸線工程にて、高い加工度で伸線することが可能であり、合金線材について、諸特性のバランスを高い水準で維持しながらも、細径化することができる。具体的には、線径を2mm以下とすることができる。
【0066】
また、本実施形態では、鋳造材においてZrの晶出を抑制し、その延性を高く維持しているので、伸線材の加工歪みによる断線を低減することができる。また、伸線材の延性も高いので、加工歪みを緩和するための焼鈍処理を省略することができる。
【0067】
また、本実施形態では、析出物が球形状であることが好ましい。析出物が球形状であることにより、変形によって合金線材の一部に応力が集中するときに、Al相と析出物との界面での亀裂を抑制できるので、合金線材の延性を向上させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、伸線材に時効処理を施すときに、Coの晶出物がAl結晶粒の再結晶を抑制し、Al結晶粒を小さな粒子径に維持している。そのため、Al結晶粒間の結晶粒界が細かな網目構造となるので、固溶するZrがAl相から結晶粒界に移動して析出するまでの時間を短縮することができる。その結果、時効処理を短縮して、合金線材の生産効率を向上させることができる。
【0069】
また、溶湯の鋳造時においては、冷却速度を1℃/s〜60℃/sとすることが好ましく、20℃/s〜50℃/sとすることがより好ましい。このような条件で溶湯を急冷することにより、Zrの晶出をより確実に抑制しつつ、Coをより微細に分散させて晶出させることができる。これにより、諸特性のバランスをより高い水準で得ることができる。
【0070】
また、伸線時においては、鋳造材を断面積が0.01倍以下となるような加工度で伸線することが好ましい。このような加工度で伸線することにより、鋳造材に晶出するAl−Co−Fe化合物をより細かく粉砕し、微細化するとともに均一に分散させることができる。この結果、時効処理において、Al−Zr化合物をより微細に分散させて析出させることができ、諸特性のバランスをより高い水準で得ることができる。
【実施例】
【0071】
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0072】
<合金線材の作製>
(実施例1)
実施例1では、Co、Zr、FeおよびSiが下記表1に示す組成となるように、純度99.9%のアルミニウム、CoおよびZrを配合し、アルゴン雰囲気中で高周波溶解炉を用いて溶解した。得られて溶湯を銅製水冷るつぼ中で鋳造することで、所定の化学組成を有する鋳造材を得た。鋳造時の凝固速度は25℃/SEC(秒)とした。鋳造材の寸法は外径φ30mm、長さ150mmの円柱形であった。この鋳造材をスエージング加工により、φ9.5mmの荒引き線とした後に、ダイスによる引抜きによる伸線加工を繰返すことで、φ0.45mmまで細線化した。ダイスによる伸線下降中の、中間熱処理は実施しなかった。得られたφ0.45mmの線材を300℃に加熱保持したソルトバス中に20時間以上保持することで、時効熱処理を行ない、実施例1の合金線材を作製した。
【0073】
【表1】
【0074】
(実施例2〜12)
実施例2〜12では、Co、Zr、FeおよびSiの化学組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様に合金線材を作製した。
【0075】
(実施例13〜15)
実施例13〜15では、冷却速度を表1に示すように変更した以外は、実施例4と同様に合金線材を作製した。
【0076】
(比較例1〜9)
比較例1〜9では、Co、Zr、FeおよびSiの化学組成を下記表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様に合金線材を作製した。
【0077】
【表2】
【0078】
<評価方法>
作製した合金線材について、金属組織、金属組織に分散する化合物の形態、伸び、引張強さ、導電率および耐熱性について以下の方法により評価した。
【0079】
(金属組織)
合金線材の金属組織は、Al結晶粒の粒径分布に基づいて、その微細性を評価した。具体的には、まず、合金線材を樹脂に埋め込んだ後に、長手方向に垂直な断面を研磨により露出させた。次に、その断面をSIM(Scanning Ion Microscope:二次イオン顕微鏡)により観察するとともに、得られたSIM像を画像解析した。そして、得られた画像解析結果から、10μm以下のAl結晶粒、10μmを超えるAl結晶粒のそれぞれの断面に占める面積比を求め、粒径分布を測定した。本実施例では、10μm以下のAl結晶粒の面積比が90%以上であれば、金属組織が微細な結晶組織を有するものと評価し、○と表記した。一方、90%未満であれば、微細な結晶組織を持たないと評価し、×と表記した。
【0080】
(化合物の形態)
合金線材の金属組織に分散する化合物の形態は、長手方向に垂直な断面を研磨により露出させ、その断面をSTEM(走査透過型電子顕微鏡)により観察した。観察には電界放出(FE)型の電子線源を有するSTEM装置を使用し、広角環状暗視野像(High Angle Annular Dark Field image、HAADF)を撮影して、Co、Fe、Zrを含む微細な化合物粒子を観察した。本実施例では、Al−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物の有無とその数密度を測定した。数密度の測定は、合金線材の長手方向で異なる5か所の断面についてそれぞれ数密度を測定し、その平均を算出した。本実施例では、Al−Co−Fe化合物については、数密度が50個/100μm以上であれば○、50個未満であれば×とした。Al−Zr化合物については500個/100μm以上であれば○、500個未満であれば×とした。
【0081】
(伸びおよび引張強さ)
合金線材の伸びと引張強さは、合金線材の引張試験により測定した。本実施例では、伸びが8%以上であれば伸び性が良好であると評価した。また、引張強度が150MPa以上であれば、強度が高いと評価した。
【0082】
(導電率)
合金線材の導電率は、直流四端子法により、作製した合金線材の20℃における電気抵抗を測定して導電率を算出した。本実施例では、電電率が55%IACS以上であれば、高い導電率を有するものと評価した。
【0083】
(耐熱性)
合金線材の耐熱性は、以下の方法により、200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上となる耐熱性の有無を評価した。まず、合金線材に対し、加熱温度と加熱時間とを変えた時効処理を実施し、時効処理後の線材の引張試験から引張強さを測定した。同一の化学組成及び時効条件の線材5本について、引張試験を実施し、5本の試験結果の平均を引張強さとして採用した。次に、加熱温度と加熱時間と引張強度の値から、種々の温度での引張強度の等温軟化曲線を作成した。次に、該等温軟化曲線から、加熱によって引張強度が初期値(加熱する前の引張強度の値)から10%低下する時間を求めた。次に、引張強度が初期値から10%低下する温度と時間(300℃、350℃および400℃の温度で加熱したときに引張強度が初期値から10%低下する時間)をアレニウス・プロットし、当該アレニウス・プロットでの温度が200℃の場合の時間(引張強度が10%低下するときの時間)を求めた。このとき、アレニウス・プロットでの温度が200℃の場合の時間が10年以上であれば所望の耐熱性を有するものとして合格(○)と判定し、200℃の場合の時間が10年未満であれば所望の耐熱性を得られないものとして不合格(×)と判定した。なお、本測定では、10%以下の軟化現象はすべて同一の活性化エネルギーで起こる現象と仮定した。
【0084】
<評価結果>
実施例4の合金線材についてSIM像を図1に示す。図1では、横方向が合金線材の長手方向(伸線方向)に該当する。図1によると、多数のAl結晶粒が形成されていることが確認された。ほとんどのAl結晶粒は、アスペクト比が小さな等軸結晶粒であることが確認された。また、図1に示すSIM像について、画像解析処理により結晶粒サイズの分布を測定したところ、一部に長手方向の長さが10μmを越える粗大な結晶粒も認められたが、粗大結晶粒が占める面積比は3.3%と少なく、大部分はサイズが10μm未満の微細結晶粒であることが確認された。
【0085】
実施例4の合金線材についてSTEM像を図2に示す。図2によれば、丸形状の粒子(白色)の分散が確認された。丸形状の粒子のサイズは数十〜数百nmの範囲にあり、主に結晶粒界上に分布している。図2の金属組織中には、これらの丸形状の粒子よりも微細な粒子も存在する。図2のSTEM像の一部を拡大した金属組織を図3に示す。図3によると、サイズが数十μmの粒子が、結晶粒界、粒内の両方に分散する様子が確認された。図3で認められる粒子の形状は、点状、棒状、帯状等の不定形状であることもわかった。
【0086】
また、図2において、エネルギー分散分析(EDS)により、分散粒子の化学組成を測定したところ、丸形状の粒子からは、Alの他にCoとFeが検出された。EDSスペクトルを定量解析した結果、粒子におけるFe含有量はCo含有量に比べて少ないことがわかった。この結果から、図2の丸状粒子はAlCo相に代表されるAlCo化合物であり、Coの一部をFeで置換されているAl−Co−Fe化合物である可能性が示唆された。また、AlFe化合物等の、Coを含まずにFeのみを含むAl−Fe化合物相は、確認されなかった。
【0087】
また、図3において確認される微細な不定形状の粒子について、EDS分析を行ったところ、Alに加えてZrが検出され、Co、Feは検出されなかった。この結果から、これらの不定形状の微細粒子は、AlZrに代表されるAl−Zr化合物であることがわかった。
【0088】
また、実施例4の合金線材では、丸形状のAl−Co−Fe化合物の粒子数は、5箇所の平均で100μmあたり210個であった。また、不定形状のAl−Zr化合物の粒子数は、5箇所の平均で100μmあたり2800個であった。
【0089】
また、実施例4の合金線材は、表1に示すように、諸特性を高い水準でバランスよく有することが確認された。具体的には、伸びが8%、引張強度が179MPa、導電率が56%IACSであることが確認された。また、実施例4の合金線材は、200℃で10年間加熱させた場合であっても、加熱による強度の低下が初期状態から10%以下であって、初期状態の強度の90%以上を維持できることが確認され、高い耐熱性を有することが確認された。これは、合金線材の金属組織において、Al再結晶粒が小さく、かつ、Al−Co−FeおよびAl−Zrの各化合物が微細に分散しているためと推測される。
【0090】
実施例1〜3、及び5〜12では、結晶粒径が10μm以下のAl結晶粒が占める領域が面積比で90%以上であり、微細な結晶組織が形成されていることが確認された。具体的には、結晶粒径が10μmを越える粗大結晶粒が占める領域が面積比でいずれも10%を下回る値であった。また、各実施例について、STEM暗視野像を検討したところ、全てにおいてAl−Co−Fe化合物、Al−Zr化合物が分散していることが確認された。また、実施例4と同様に、諸特性を高い水準でバランスよく有することが確認された。
【0091】
実施例13〜15は、実施例4と同じ化学組成の合金において、鋳造時の凝固速度を25℃/SEC(秒)から、8、12、20℃/SECとした場合の結果である。凝固速度が遅くなるにつれて引張強さが徐々に低下する。一方、導電率は、凝固速度が遅くなるにつれて増加する傾向が確認される。これは、凝固速度が速くなると鋳造時のZrの晶出が抑制されてZrの過飽和固溶量が増加し、時効処理中のAl−Zr化合物の析出が促進されて引張強さが増加するためと考えられる。
【0092】
これに対して、比較例1の合金線材では、図4〜6に示すように、実施例1のような金属組織が形成されていないことが確認された。図4は、比較例1のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSIM(二次イオン顕微鏡)像である。図5は、比較例1のアルミニウム合金線材の長手方向に垂直な断面のSTEM(走査型電子顕微鏡)による暗視野像である。図6は、図5の拡大図である。
【0093】
図4によると、比較例1の合金線材では、Al結晶粒の多くは、長手方向に伸びた、アスペクト比の大きな形状となっている。図4の一部では、長手方向に10μmを越えた粗大なサイズの結晶粒が認められる。これらの長手方向に伸びた結晶粒は、時効熱処理中の再結晶の段階で、結晶粒界が長手方向に容易に移動することで形成されたと考えられる。
【0094】
また、図4に示すSIM像について、画像解析処理により結晶粒サイズの分布を測定したところ、長さが10μmを越える粗大結晶粒は、面積比で観察領域全体の44.7%を占めており、実施例1と比べてAl結晶粒が粗大化しやすいことが確認された。
【0095】
また、図5に示す比較例1のSTEM像によれば、実施例1のような丸形状の粒子(Al−Co−Fe化合物)は存在せず、結晶粒界に100nm以下の微細な粒子が分散する様子が認められる。図6によれば、実施例1の図3と同様に、サイズが数十〜100μm程度の不定形状粒子が、結晶粒界、粒内の両方に分散する様子が認められる。
【0096】
図6の不定形状粒子についてEDS分析したところ、Alに加えてZrが検出され、Co、Feは検出されなかった。この結果からこれらの不定形状の粒子は、AlZrに代表されるAl−Zr化合物であることがわかった。また、少数ではあるが、サイズが数百μm程度とより粗大な粒子で、Al以外にはFeのみが検出される粒子の存在も確認された。このFeのみを含む粗大粒子は、AlFe等のAl−Fe化合物の可能性が高いと推測された。つまり、比較例1の合金線材では、金属組織に分散する化合物としては、Al−Zr化合物と小数のAl−Fe化合物であると推測される。なお、Al−Zr化合物の数密度は、5箇所の平均で100μmあたり3300個であった。
【0097】
また、比較例1の合金線材では、伸びが4%であり、引張強度が149MPaであり、所望の機械特性を得られないことが確認された。これは、Coを配合しないことで、Al−Co−Fe化合物が形成されていないためと推測される。なお、比較例1の耐熱性は合格判定であった。
【0098】
比較例2,3では、SIM像について、画像解析処理により結晶粒サイズの分布を測定したところ、長さが10μmを越える粗大結晶粒は、面積比で観察領域全体の20%を超えることが確認された。比較例2では、Zrを添加していないため、Al−Zr化合物が形成されていなかった。このため、伸びは高いものの、引張強度が著しく低くなることが確認された。一方、比較例3では、Zrを添加したものの、0.1質量%と少なかったため、Al−Zr化合物の形成は確認されなかった。そのため、比較例2と同様に所望の機械特性を得られないことが確認された。また、比較例2,3の合金線材では、200℃で加熱したときの強度が初期状態の強度の90%未満となるまでの時間(加熱による強度の低下が10%以上となるまでの時間)が10年未満であり、耐熱性が不合格であることが確認された。これは、Al−Zr化合物が形成されないため、耐熱性が低下したと考えられる。
【0099】
比較例4〜9では、結晶粒径が10μm以下のAl結晶粒が存在するものの、その面積比が80%程度であって90%未満となることが確認された。またAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物が形成されていたものの、Co、Zr、FeおよびSiが適度な含有量となっていたかったため、諸特性のバランスがよくないことが確認された。各実施例における耐熱性はいずれも合格判定であった。
【0100】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0101】
[付記1]
本発明の一態様によれば、
アルミニウム合金からなる線材であって、
前記アルミニウム合金は、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる化学組成を有し、かつ、
Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織を有し、
引張強度が150MPa以上、
導電率が55%IACS以上、
200℃で10年間加熱させたときの強度が初期状態の強度の90%以上である、
アルミニウム合金線材が提供される。
【0102】
[付記2]
付記1のアルミニウム合金線材において、好ましくは、
前記金属組織において、結晶粒径が10μm以下の前記Al結晶粒が占める領域が面積比で90%以上である。
【0103】
[付記3]
付記1又は2のアルミニウム合金線材において、好ましくは、
長手方向に垂直な断面において、前記Al−Zr化合物の単位面積当たりの数が500個/100μm以上である。
【0104】
[付記4]
付記1〜3のいずれかのアルミニウム合金線材において、好ましくは、
長手方向に垂直な断面において、前記Al−Co−Fe化合物の単位面積当たりの数が50個/100μm以上である。
【0105】
[付記5]
付記1〜4のいずれかのアルミニウム合金線材において、好ましくは、
前記Al−Co−Fe化合物の大きさが20nm以上500nm以下である。
【0106】
[付記6]
付記1〜5のいずれかのアルミニウム合金線材において、好ましくは、
前記Al−Zr化合物の大きさが5nm以上100nm以下である。
【0107】
[付記7]
付記1〜6のいずれかのアルミニウム合金線材において、好ましくは、
線径が2.0mm以下である。
【0108】
[付記8]
付記1〜7のいずれかのアルミニウム合金線材において、好ましくは、
前記Al−Co−Fe化合物および前記Al−Zr化合物は球形状を有する。
【0109】
[付記9]
本発明の他の態様によれば、
アルミニウム合金からなる線材の製造方法であって、
Co:0.1〜1.0質量%、Zr:0.2〜0.5質量%、Fe:0.02〜0.09質量%、Si:0.02〜0.09質量%、Mg:0〜0.2質量%、Ti:0〜0.10質量%、B:0〜0.03質量%、Cu:0〜1.00質量%、Ag:0〜0.50質量%、Au:0〜0.50質量%、Mn:0〜1.00質量%、Cr:0〜1.00質量%、Hf:0〜0.50質量%、V:0〜0.50質量%、Sc:0〜0.50質量%、Ni:0〜0.50質量%、残部:Alおよび不可避不純物からなる溶湯を準備する準備工程と、
前記溶湯を、Zrの晶出を抑制しつつCoを晶出させるような冷却速度で急冷して鋳造することで、Al−Co−Fe化合物を含む鋳造材を形成する鋳造工程と、
前記鋳造材を伸線して伸線材を形成する伸線工程と、
前記伸線材に時効処理を施し、前記Al相に固溶するZrをAl−Zr化合物として析出させる時効処理工程と、を有し、
前記アルミニウム合金が、前記化学組成と、Al結晶粒とAl−Co−Fe化合物およびAl−Zr化合物とを含む金属組織とを有し、前記線材の引張強度を150MPa以上、導電率を55%IACS以上、200℃で10年間加熱させたときの強度を初期状態の強度の90%以上となるように構成する、
アルミニウム合金線材の製造方法が提供される。
【0110】
[付記10]
付記9のアルミニウム合金線材の製造方法において、好ましくは、
前記金属組織におけるAl結晶粒の再結晶粒径の最大値が10μm以下である。
【0111】
[付記11]
付記9又は10のアルミニウム合金線材の製造方法において、好ましくは、
前記鋳造工程では、冷却速度を1℃/s以上60℃/s以下とする。
【0112】
[付記12]
付記9〜11のいずれかのアルミニウム合金線材の製造方法において、好ましくは、
前記伸線工程では、前記鋳造材を断面積が0.01倍以下となるような加工度で伸線する。
【0113】
[付記13]
付記9〜12のいずれかのアルミニウム合金線材の製造方法において、好ましくは、
前記伸線工程では、前記伸線材の線径を2.0mm以下とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6