(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202114(P2019-202114A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】マウスピース、マウスピースの作成支援システム及びミニスプリント
(51)【国際特許分類】
A61C 19/05 20060101AFI20191101BHJP
【FI】
A61C19/05 120
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【全頁数】82
(21)【出願番号】特願2018-150927(P2018-150927)
(22)【出願日】2018年8月10日
(11)【特許番号】特許第6499793号(P6499793)
(45)【特許公報発行日】2019年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2018-96001(P2018-96001)
(32)【優先日】2018年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518177582
【氏名又は名称】株式会社ミュージックキャップトーキョー
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】新居 弘章
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052NN03
4C052NN12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線維筋痛症等の不定愁訴による全身の疼痛症状を歯牙の侵襲を伴わずに比較的安価に解消可能とするマウスピース、作成支援システム、ミニスプリント及び作成方法を提供する。
【解決手段】マウスピース76は患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着される。マウスピース本体78は略均一な厚みがあり、マウスピース本体78の咬合面に、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位おける下顎歯牙列圧痕84が形成されている。患者がマウスピース76を上顎歯牙列に装着して咀嚼時咬合状態又は安静時咬合状態とすると、マウスピース76の装着による患者の舌−顎位反射及び咬筋−顎位反射により、上顎歯牙列に対し下顎歯牙列が全身の基礎的筋緊張をバランスさせる正しい位置関係に誘導され、全身の疼痛症状を消失あるいは大幅に軽減させることができる。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
請求項2記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース本体は、ソフトタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項3】
請求項2記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース本体は、ハードタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項4】
患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、前記最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
前記最適咬合採得ガイダンス手段の前記ガイダンスに従って作成した前記最適咬合圧痕部材を、前記上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合模型が構築された前記咬合器により、前記最適化された咀嚼時咬合顎位となるように前記上顎模型の歯牙列圧痕と前記下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
前記マウスピース作成ガイダンス手段で作成された前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、前記患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように前記マウスピースを微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項5】
請求項4記載のマイスピースの作成支援システムに於いて、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者前頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスと前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて前記下顎角と前記オトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、
前記高低差補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段と、
が設けられたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項6】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面に前記ワックスを置かないようする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項7】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項8】
請求項6記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、前記努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項9】
請求項8記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように前記仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項10】
請求項8載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、前記ミニスプリントを前記下顎歯牙列に装着して前記努力性呼気残量を前記肺活量計で測定する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項11】
請求項10記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項12】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は
前記患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項13】
請求項12記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、前記頭位が後屈位の場合は前記下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項14】
請求項13記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項15】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース作成ガイダンス手段は、
前記上顎模型に基づいて前記上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を間に挟んで、前記顎模型と前記下顎模型を咬合器に固定して前記最適咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を外した前記咬合器の前記上顎模型に前記マウスピースパーツを装着し、前記マウスピースパーツを介した前記下顎模型との咬合に基づいて前記マウスピースパーツの咬合面に前記下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする、
ことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項16】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項17】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作前記前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項18】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを肉盛りして、前記下顎の後方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れかに記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、前記マウスピースの厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項20】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
更に、前記マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられたことを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項21】
請求項20記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、前記患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスすることを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項22】
患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
前記固定部と一体に設けられ、前記第1大臼歯の咬合面に嵌合されて、前記第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面と、
を備えたことを特徴とするミニスプリント。
【請求項23】
請求項22記載のミニスプリントに於いて、前記角度補正面による前記仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して前記固定部により前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定されることを特徴とするミニスプリント。
【請求項24】
患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されて患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位を構成させるマウスピースの作成方法に於いて、
患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型を作成する上下顎模型作成手順と、
前記患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する下顎角位置補正手順と、
前記患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正するオトガイ部位置補正手順と、
前記下顎角位置補正手順と前記オトガイ部位置補正手順による補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて前記下顎角と前記オトガイ部の高低差を補正する高低差補正手順と、
前記高低差補正手順による補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する前後位置調整手順と、
前記前後位置調整手順により前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、前記最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材を作成する最適咬合採得手順と、
前記最適咬合採得手順で作成した前記最適咬合圧痕部材を、前記上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型を構築する咬合模型作成手順と、
前記咀嚼時咬合模型が構築された前記咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎歯型の歯牙列圧痕と下顎歯型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースを作成するマウスピース作成手順と、
前記マウスピース作成手順で作成された前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、前記患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように微調整するマウスピース微調整手順と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項25】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記下顎角位置補正手順は、
後頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整し、
前記後頸部の左側に前記基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整し、
前記後頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面に前記ワックスを置かないようにしたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項26】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記オトガイ部位置補正手順は、
前頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整し、
前記前頸部の左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整し、
前記前頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにしたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項27】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記高低差補正手順は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、前記努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項28】
請求項27記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように前記仰角を補正することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項29】
請求項28記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、前記ミニスプリントを前記下顎歯牙列に装着して前記努力性呼気残量を前記肺活量計で測定することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項30】
請求項29記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記ミニスプリントは、
下顎の少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
前記第1大臼歯の咬合面に形成され、前記第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項31】
請求項29記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記ミニスプリントは、前記仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項32】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記前後位置調整手順は
前記患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加えることを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項33】
請求項32記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記前後位置調整手順は、前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、前記頭位が後屈位の場合は前記下顎位を後方へ移動させることを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項34】
請求項33記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記前後位置調整手順は、前記患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整し、
前記頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項35】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記マウスピース作成手順は、
作成された患者の上顎模型に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツを作成する手順と、
作成された患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適咀嚼時咬合顎位における上顎歯牙列と下顎歯牙列の圧痕が象られた最適咬合圧痕部材に基づいて、作成された前記患者の前記上顎模型と下顎模型を咬合器に固定して前記最適咀嚼時咬合顎位を再現させる手順と、
前記咬合器に固定した前記上顎模型に前記マウスピースパーツを装着し、前記マウスピースパーツを介した前記下顎模型との咬合に基づいて前記マウスピースパーツの咬合面に前記下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる手順と、
完成した前記マウスピースを前記患者が装着した場合に最適安静時咬合顎位が得られるように完成したマウスピースの舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを微調整する手順と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項36】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記マウスピース微調整手順は、完成した前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、
後頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させ、
前記後頸部の左側に前記基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させ、
前記後頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わないことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項37】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記マウスピース微調整手順は、完成した前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させ、
前記前頸部の左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させ、
前記前頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わないことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項38】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、
前記マウスピース微調整手順は、完成した前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを減少させ、
前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを肉盛りして、前記下顎の後方方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを増加させることを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項39】
請求項36乃至38の何れかに記載のマウスピースの作成方法に於いて、マウスピースの厚みはミクロンオーダーの単位で変化されることを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項40】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース作成手順は、ソフトタイプの素材で構成された前記マウスピースを作成することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項41】
請求項24記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース作成手順は、ハードタイプの素材で構成された前記マウスピースを作成することを特徴とするマウスピースの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全身の基礎的筋緊張のバランスを最適化するために下顎位置を正しい位置に補正するマウスピース、マウスピースの作成支援システム、ミニスプリント、及びマウスピースの作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マウスピース及びミニスプリントは人工物であり、自然物ではなく、人の上顎の歯牙列に装着される構造物である。
【0003】
従来、咬合診療において、歯科医が理想と思う歯牙を形成した場合に、必ずしも患者から良好な反応が得られない場合がある。
【0004】
従来は、主に口腔模型のみを観察の対象として診察が行われてきたが、歯牙は顔面の骨格の一部であり、脳神経外科医の経験では頭蓋骨から顔面及び下顎骨といった骨格系に一定の変形を有しているものは決して珍しくはないという事実がある。
【0005】
歯科の口腔模型のみを観察すると正常と見える歯牙が顔面の骨格に一定の変形を有した患者の歯牙の形態としてはふさわしくないものである可能性があり、不定愁訴の原因となっている。
【0006】
不定愁訴は、身体各所の慢性疼痛や各種の自律神経症状、疲労感が取れない、よく眠れないなどの、自覚症状を訴えるが、検査をしても原因となる病気が見つからない状態であり、患者からの訴え(主訴)は強いが主観的で多岐にわたり、客観的所見に乏しいのが特徴となり、根本的な原因が見いだせないため治療も難しく、周囲の理解も得られにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−080027号公報
【特許文献2】特開2018−061639号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】2015年7月17日 株式会社MUSIC CAP TOKYO発行 新居弘章著 「顎位異常症 第一巻」
【非特許文献2】2015年7月23日 株式会社MUSIC CAP TOKYO発行 新居弘章著 「顎位異常症 第二巻」
【非特許文献3】2015年7月23日 株式会社MUSIC CAP TOKYO発行 新居弘章著 「顎位異常症 第三巻」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような不定愁訴の改善を提唱する歯科医師は少数ながら存在する。しかしながら、どこの歯科治療所で治療を受けても病状が改善せぬばかりか、治療を受ければ受けるほど病状が悪化し、歯科診療に恐怖感を訴える患者が多数存在する。
【0010】
こうした現状にあっても歯科診療界には統一された見解はなく、ガイドラインすら整備されていないのが現状である。
【0011】
また医科の疾患病名を持つ患者の中に、患者自身が気が付いていないだけで、歯科診療を契機に発症しているものが多数存在する事実が確認されたが、歯科診療界は顎位の全身への影響を否定するものが多数を占めているのが現状である。
【0012】
本発明は、歯科診療、加齢、先天性等に起因した下顎位の変化とそれに応じた全身の基礎的筋緊張のバランスの変化との因果関係を明確にし、普遍性を持ち再現性を持つものであることを立証しつつ、線維筋痛症等の不定愁訴による全身の疼痛症状を歯牙の侵襲を伴わずに比較的安価に解消可能とするマウスピース、マウスピースの作成支援システム、ミニスプリント、及びマウスピースの作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1発明:マウスピース)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位おける下顎歯牙列の歯痕が形成されたことを特徴とする。
【0014】
(マウスピースの材質)
マウスピース本体は、ソフトタイプの素材又はハードタイプの素材で構成される。
【0015】
(第2発明:マウスピースの作成支援システム)
本発明の別の形態にあっては、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
最適咬合採得ガイダンス手段のガイダンスに従って作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型の歯牙列圧痕と下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
マウスピース作成ガイダンス手段で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるようにマウスピースを微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0016】
(咀嚼時咬合顎位ガイダンス)
咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、
ディスプレイの画面操作により入力された患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、
ディスプレイの画面操作により入力された患者の前頚部の筋緊張亢進に基づき、患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、
下顎角位置補正ガイダンス手段のガイダンスとオトガイ部位置補正ガイダンス手段のガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて下顎角とオトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、
高低差補正ガイダンス手段のガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段と、
が設けられる。
【0017】
(下顎角位置補正ガイダンス)
下顎角位置補正ガイダンス手段は、
ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により後頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようする診療操作をガイダンスする。
【0018】
(オトガイ部位置補正ガイダンス)
オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、
ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスする。
【0019】
(高低差補正ガイダンス)
高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスする。
【0020】
(努力性呼気残量)
高低差補正ガイダンス手段は、努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように仰角を補正する診療操作をガイダンスする。
【0021】
(ミニスプリント)
高低差補正ガイダンス手段は、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、ミニスプリントを下顎歯牙列に装着して努力性呼気残量を肺活量計で測定する診療操作をガイダンスする。
【0022】
(ミニスプリントの選択)
高低差補正ガイダンス手段は、仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスする。
【0023】
(前後位置調整ガイダンス)
前後位置調整ガイダンス手段は、患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスする。
【0024】
(前屈位と後屈位の前後位置調整)
前後位置調整ガイダンス手段は、患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、頭位が後屈位の場合は下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスする。
【0025】
(前後位置調整の補助)
前後位置調整ガイダンス手段は、患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0026】
(マウスピース作成ガイダンス)
マウスピース作成ガイダンス手段は、
上顎模型に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、最適咬合圧痕部材を間に挟んで、上顎模型と下顎模型を咬合器に固定して最適咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、最適咬合圧痕部材を外した咬合器の上顎模型にマウスピースパーツを装着し、マウスピースパーツを介した下顎模型との咬合に基づいてマウスピースパーツの咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする。
【0027】
(下顎角位置調整に対応したマウスピース微調整ガイダンス)
マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により後頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスする。
【0028】
(オトガイ部位置調整に対応したマウスピース微調整ガイダンス)
マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスする。
【0029】
(前後位置調整に対応したマウスピース微調整ガイダンス)
マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
ディスプレイの画面操作により患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを肉盛りして、下顎の後方移動を補助するようにマウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスする。
【0030】
(ミクロンオーダーの厚み調整)
マウスピース微調整ガイダンス手段は、マウスピース本体の厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスする。
【0031】
(ツールガイダンス)
更に、マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられ、例えば、ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスする。
【0032】
(第3発明:ミニスプリント)
本発明は、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1小臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
固定部と一体に設けられ、第1大臼歯の咬合面に嵌合されて、第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面と、
を備えたことを特徴とする。
【0033】
(仰角の異なるミニスプリント)
角度補正面による仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して固定部により患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定される。
【0034】
(第4発明:マウスピース作成方法)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されて患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位を構成させるマウスピースの作成方法に於いて、
患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型を作成する上下顎模型作成手順と、
患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する下顎角位置補正手順と、
患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正するオトガイ部位置補正手順と、
下顎角位置補正手順とオトガイ部位置補正手順による補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて下顎角とオトガイ部の高低差を補正する高低差補正手順と、
高低差補正手順による補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する前後位置調整手順と、
前後位置調整手順により患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材を作成する最適咬合採得手順と、
最適咬合採得手順で作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型を構築する咬合模型作成手順と、
咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎歯型の歯牙列圧痕と下顎歯型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースを作成するマウスピース作成手順と、
マウスピース作成手順で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように微調整するマウスピース微調整手順と、
を備えたことを特徴とする。
【0035】
(下顎角位置補正手順の詳細)
下顎角位置補正手順は、
後頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整し、
後頸部の左側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整し、
後頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようする。
【0036】
(オトガイ部位置補正手順の詳細)
オトガイ部位置補正手順は、
前頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整し、
前頸部の左側に基礎的筋緊張の亢進ある場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整し、
前頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする。
【0037】
(高低差補正手順)
高低差補正手順は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する。
【0038】
(努力性呼気残量の上限値)
努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように仰角を補正する。
【0039】
(ミニスプリント)
下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、ミニスプリントを下顎歯牙列に装着して努力性呼気残量を肺活量計で測定する。
【0040】
(ミニスプリントの詳細)
ミニスプリントは、
下顎の少なくとも第2小臼歯に着脱自在に装着固定される固定部と、
第1大臼歯の咬合面に形成され、第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面と、
を備える。
【0041】
(仰角の異なるミニスプリント)
ミニスプリントは、仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用する。
【0042】
(前後位置調整手順)
前後位置調整手順は
患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える。
【0043】
(前後位置調整手順の詳細)
前後位置調整手順は、患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、頭位が後屈位の場合は下顎位を後方へ移動させる。
【0044】
(ワックス置きによる前後移動の補助)
前後位置調整手順は、患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するようにワックスの厚みを調整し、
頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するようにワックスの厚みを調整する。
【0045】
(マウスピースの作成)
マウスピース作成手順は、
作成された患者の上顎模型に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツを作成する手順と、
作成された患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適咀嚼時咬合顎位における上顎歯牙列と下顎歯牙列の圧痕が象られた最適咬合圧痕部材に基づいて、作成された患者の上顎模型と下顎模型を咬合器に固定して最適咀嚼時咬合顎位を再現させる手順と、
咬合器に固定した上顎模型にマウスピースパーツを装着し、マウスピースパーツを介した下顎模型との咬合に基づいてマウスピースパーツの咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを作成させる手順と、
完成したマウスピースを患者が装着した場合に最適安静時咬合顎位が得られるように完成したマウスピースの舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを微調整する手順と、
を備える。
【0046】
(下顎角に対応したマウスピースの微調整)
マウスピース微調整手順は、完成したマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、
後頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させ、
後頸部の左側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させ、
後頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない。
【0047】
(オトガイ部に対応したマウスピース微調整)
マウスピース微調整手順は、完成したマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、
前頸部の右側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させ、
前頸部の左側に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させ、
前頸部の基礎的筋緊張に左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない。
【0048】
(ワックス置きによる前後移動の補助)
マウスピース微調整手順は、完成したマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、
患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するようにマウスピースの厚みを減少させ、
患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを肉盛りして、下顎の後方移動を補助するようにマウスピースの厚みを増加させることを特徴とするマウスピース作成方法。
【0049】
(ミクロンオーダーの厚み微調整)
マウスピースの厚みはミクロンオーダーの単位で変化(減少又は増加)される。
【0050】
(ソフトタイプ)
マウスピース作成手順は、ソフトタイプの素材で構成されたマウスピースを作成する。
【0051】
(ハードタイプ)
マウスピース作成手順は、ハードタイプの素材で構成されたマウスピースを作成する。
【発明の効果】
【0052】
(第1発明:マウスピースの効果)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成されたため、次に説明する第2発明によるマウスピースの作成支援システムと同じ効果が得られる。
【0053】
(マウスピースの材質による効果)
また、マウスピース本体は、ソフトタイプ又はハードタイプの素材で構成されたため、最初は、全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位おける下顎歯牙列の歯痕が形成されたソフトタイプのマウスピースを作成して使用し、ソフトタイプのマウスピースを用いて咀嚼時咬合顎位と安静時咬合顎位が適正化することにより開閉口運動においても適切な顎運動が維持されることが確認できた際には、第2段階のマウスピースとして、作成されたソフトタイプのマウスピースと同等の形態となるように、最適化された咀嚼時咬合顎位おける下顎歯牙列の歯痕が付与され且つ微調整されたハードタイプの素材を用いてマウスピースを作成することで、素材の摩耗や劣化を防いで恒久的な使用を可能とする。
【0054】
(第2発明:マイスピースの作成支援システムの効果)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、最適咬合採得ガイダンス手順のガイダンスに従って作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型を構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手順と、咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型の歯牙列圧痕と下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、マウスピース作成ガイダンス手段で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるようにマウスピースを微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段とを備えたため、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従った診療操作により患者の全身の基礎的筋緊張がバランスして最適化された咀嚼時咬合顎位が構築され、続いて最適咬合採得ガイダンス手順のガイダンスに従って最適咬合圧痕部材が作成され、続いて、マウスピース作成ガイダンス手段のガイダンスに従って最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎歯型の歯牙列圧痕と下顎歯型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースが作成され、更に、マウスピース微調整ガイダンス手段のガイダンスに従ったマウスピースの微調整により最適化された安静時顎位が構築され、このようにして作成されたマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した状態で咀嚼時咬合状態又は安静時顎位状態を構築すると、マウスピースの下面の下顎歯牙列圧痕に患者の下顎歯牙列が咬合して位置決めされることで、下顎が正しい位置となるように咀嚼時咬合顎位又は安静時顎位が適正化され、後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスと前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスが同等となり、全身の基礎的筋緊張がバランスし、その結果、線維筋痛症等の不定愁訴に起因した全身の疼痛症状を消失あるいは大幅に軽減させることができる。
【0055】
また、マウスピースを上顎歯牙列に装着するだけで良いことから、歯牙の侵襲は一切行われず、比較的安価に、全身の基礎的筋緊張がバランスして、線維筋痛症等の不定愁訴に起因した全身の疼痛症状を瞬時に消失あるいは大幅に軽減させることができる。
【0056】
(咀嚼時咬合顎位ガイダンスの効果)
また、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、ディスプレイの画面操作により入力された患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、ディスプレイの画面操作により入力された患者の前頚部の基礎的筋緊張の亢進に基づき、患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、下顎角位置補正ガイダンス手段のガイダンスとオトガイ部位置補正ガイダンス手段のガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて下顎角とオトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、高低差補正ガイダンス手段のガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段とが設けられたため、ガイダンスに従った診療操作により、患者の全身の基礎的筋緊張がバランスして最適化された咀嚼時咬合顎位を確実に構築することができる。
【0057】
(下顎角位置補正ガイダンスの効果)
また、下顎角位置補正ガイダンス手段は、ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により後頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようする診療操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従って患者の後頚部の基礎的筋緊張のバランスを確認しつつ、主に下顎大臼歯の下側歯面にワックスを貼り付け、左右のバランスが拮抗するように厚みを調整することで、後頸部の基礎的筋緊張がバランスした正しい下顎角の位置に舌−顎位反射により誘導され、後頚部の基礎的筋緊張の亢進が解消された咀嚼時咬合顎位が構成される。
【0058】
(オトガイ部位置補正ガイダンスの効果)
また、オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従って患者の前頚部の基礎的筋緊張のバランスを確認しつつ、主に下顎小臼歯の下側歯面にワックスを貼り付け、左右のバランスが拮抗するように厚みを調整することで、前頸部の基礎的筋緊張がバランスした正しいオトガイ部の位置に舌−顎位反射により誘導され、前頚部の基礎的筋緊張の亢進が解消された咀嚼時咬合顎位が構成される。
【0059】
(高低差補正ガイダンスの効果)
また、高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、努力性呼気残量が所定値以下、例えば500ミリリットル以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従った顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角の補正により、下顎角とオトガイ部の高低差を補正した咀嚼時咬合顎位を構成することができる。
【0060】
(ミニスプリントの効果)
また、高低差補正ガイダンス手段は、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、ミニスプリントを下顎歯牙列に装着して努力性呼気残量を肺活量計で測定する診療操作をガイダンスするようにしたため、患者の努力性呼気残量が500ミリリットル以下に減少しない場合は、事前に準備したミニスプリントの装着により咬合基準面の仰角を増加させる補正を行うことで、患者の努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように、下顎角とオトガイ部の高低差を補正することが可能となる。
【0061】
(ミニスプリントの選択の効果)
また、 高低差補正ガイダンス手段は、仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスするようにしたため、仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントを選択的に患者の下顎歯牙列に装着して努力性呼気残量を肺活量計で測定することで、咬合基準面の仰角を増加させる補正を簡単に行って、努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように、下顎角とオトガイ部の高低差を補正することが可能となる。
【0062】
(前屈位と後屈位の前後位置調整の効果)
また、前後位置調整ガイダンス手段は、患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従った診療操作により、前屈または後屈している患者の安静脱力時の頭位が、自己の視線に対し正中位を保つ正しい位置に微調整され、身体前面と後面の基礎的筋緊張をバランスさせることができる。
【0063】
(前後位置調整の補助による効果)
また、前後位置調整ガイダンス手段は、患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、頭位が後屈位の場合は下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスし、より詳細には、前後位置調整ガイダンス手段は、患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従ったワックスの貼り付けと厚みの調整により、前屈または後屈している患者の安静脱力時の頭位が、自己の視線に対し正中位を保つ正しい位置に微調整され、身体前面と後面の基礎的筋緊張をバランスさせることができる。
【0064】
(マウスピース作成ガイダンスの効果)
また、マウスピース作成ガイダンス手段は、上顎模型に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、次に、最適咬合圧痕部材を間に挟んで、顎模型と下顎模型を咬合器に固定して最適咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、次に、最適咬合圧痕部材を外した咬合器の上顎模型にマウスピースパーツを装着し、マウスピースパーツを介した下顎模型との咬合に基づいてマウスピースパーツの咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスするようにしたため、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適咀嚼時咬合顎位における上顎歯牙列と下顎歯牙列の圧痕が象られた最適咬合圧痕部材に基づいて、咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕が形成されたマウスピースを咬合器を用いて簡単に作成することができる。
【0065】
(下顎角位置補正に対応したマウスピース微調整ガイダンスの効果)
また、マウスピース微調整ガイダンス手段は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により後頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従ってマイスピースを研磨する微調整操作により、患者の安静時顎位状態での後頚部の基礎的筋緊張がバランスした正しい下顎角の位置に舌−顎位反射により誘導され、後頚部の基礎的筋緊張の亢進を解消できる。
【0066】
(オトガイ部位置補正に対応したマウスピース微調整ガイダンスの効果)
また、マウスピース微調整ガイダンス手段は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従ってマイスピースを研磨する微調整操作により、患者の安静時顎位状態での前頚部の基礎的筋緊張がバランスした正しい下顎角の位置に舌−顎位反射により誘導され、前頚部の基礎的筋緊張の亢進を解消できる。
【0067】
(前後位置調整に対応したマウスピース微調整ガイダンスの効果)
また、マウスピース微調整ガイダンス手段は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、ディスプレイの画面操作により患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するようにマウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、ディスプレイの画面操作により患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを肉盛りして、下顎の後方移動を補助するようにマウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスするようにしたため、ガイダンスに従ったマウスピースの研磨又は肉盛りにより、前屈または後屈している患者の安静脱力時の頭位が、自己の視線に対し正中位を保つ正しい前方位置または後方位置に微調整され、身体前面と後面の基礎的筋緊張をバランスさせることができる。
【0068】
(ミクロンオーダーの厚み調整による効果)
また、マウスピース微調整ガイダンス手段は、マウスピース本体の厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスするようにしたため、調整前の状態でマウスピースは基本的に全身の基礎的筋緊張をバランスさせる正しい咀嚼時咬合状態及び安静時咬合状態が得られるように構築されており、更に、バランスを取るための調整をマウスピース本体の厚み研磨によりミクロンオーダーの単位で例えば減少させることで、マウスピース作成時と装着時の誤差が解消され、より確実に基礎的筋緊張をバランスさせることができる。
【0069】
(ツールガイダンスの効果)
また、マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられ、例えば、ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスするようにしたため、姿勢測定器により治療前と治療後の姿勢を測定して評価することで、マウスピースの装着により患者の基礎的筋緊張のバランスが回復して正しい姿勢を維持している治療効果が確認できる。また、筋電計を使用することで、後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進が確認でき、触診による診断結果をより確実なものとし、下顎角位置補正やオトガイ部位置補正の治療操作の精度を高めることができる。
【0070】
(第3発明:ミニスプリントの効果)
本発明の他の形態にあっては、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、固定部と一体に設けられ、第1大臼歯の咬合面に嵌合されて、第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面とを備えたため、全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された患者の咀嚼時咬合顎位を一時的に構築する場合に、ミニスプリントの装着により仰角補正を加えた正しい咬合基準面が簡単に形成されることで、オトガイ部と下顎角との高低差が最適化された咀嚼時咬合顎位を構成することができる。
【0071】
この場合、下顎位置及びオトガイ部を正しい位置に補正して後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスの崩れを解除した状態で、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置き、下顎歯牙列に装着したミニスプリントの仰角補正された咬合基準面に対し咀嚼位顎位を構築し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、努力性呼気残量が望ましくは500ミリリットル以下に減少すれば、前傾姿勢又は後傾姿勢における基礎的筋緊張のバランスの崩れが解消されて良好なバランスへと変化させることができる。
【0072】
ここで、努力性呼気残量とは、最大吸気の後に呼息筋と吸息筋の双方を脱力させた際に、肺内に残存する空気の量をさし、肺活量計で測定する。通常は脱力するだけで大部分の空気は肺内より呼息されるのが理想的な呼吸のバランスとされている。
【0073】
(仰角の異なるミニスプリントの効果)
また、角度補正面による仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して固定部により患者の下顎歯牙列における少なくとも第2大臼歯から第1小臼歯にかけて装着固定されるようにしたため、例えば、仰角補正角度が7°、14°、21°、28°といった複数種類のミニスプリントを準備しておき、努力性呼気残量が500ミリリットル以下に減少するように、仰角補正角度が7°、14°、21°、28°というように順次増加するようにミニスプリントを選んで装着することで、簡単に仰角補正角度を変更して努力性呼気残量を減少させることができる。
【0074】
(第4発明:マウスピースの作成方法の効果)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されて患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位を構成させるマウスピースの作成方法に於いて、患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型を作成する上下顎模型作成手順と、患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する下顎角位置補正手順と、患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正するオトガイ部位置補正手順と、下顎角位置補正手順とオトガイ部位置補正手順による補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて下顎角とオトガイ部の高低差を補正する高低差補正手順と、高低差補正手順による補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する前後位置調整手順と、前後位置調整手順により患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材を作成する最適咬合採得手順と、最適咬合採得手順で作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型を構築する咬合模型作成手順と、咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎歯型の歯牙列圧痕と下顎歯型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースを作成するマウスピース作成手順と、マウスピース作成手順で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時咬合状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように微調整するマウスピース微調整手順とを備えたため、前述した第2発明によるマウスピースの作成支援システムの場合と同様の効果が得られることから、その説明は省略する。この点は、マウスピースの作成方法の具体的に態様についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】本発明に係るマウスピースの作成手順を示したフロー図
【
図2】マウスピースの作成根拠となる顎位の形態変化に対する脳幹反射を示した説明図
【
図4】
図1のステップS2における下顎角の位置補正の詳細を示したフロー図
【
図5】後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張に左右差がなく下顎角の位置を補正しない第1パターンを示した説明図
【
図6】後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角の位置を補正する第2パターンを示した説明図
【
図7】後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角の位置を補正する第3パターンを示した説明図
【
図8】
図1のステップS3におけるオトガイ部の位置補正の詳細を示したフロー図
【
図9】前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合のオトガイ部の位置を補正する第4パターンを示した説明図
【
図10】前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合のオトガイ部の位置を補正する第5パターンを示した説明図
【
図11】後頸部右と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合の下顎角とオトガイ部の位置を補正する第6パターンを示した説明図
【
図12】後頸部右と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合の下顎角とオトガイ部の位置を補正する第7パターンを示した説明図
【
図13】後頸部左と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合の下顎角とオトガイ部の位置を補正する第8パターンを示した説明図
【
図14】後頸部左と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合の下顎角とオトガイ部の位置を補正する第9パターンを示した説明図
【
図15】
図1のステップS4における下顎角とオトガイ部の高低差を補正する手順の詳細を示したフロー図
【
図16】下顎角とオトガイ部の高低差の補正に使用するミニスプリントを示した説明図
【
図17】異なる補正仰角が設定されたミニスプリントの説明図
【
図18】
図1のステップS5における下顎位を前後微調整する手順の詳細を示したフロー図
【
図19】安静脱力時の頭位が前屈している場合に下顎を前方に移動させる前方移動パターンを示した説明図
【
図20】安静脱力時の頭位が後屈している場合に下顎を後方に移動させる後方移動パターンを示した説明図
【
図21】最適化された咀嚼時咬合状態から採得された最適咬合歯痕部材を使用して上下顎模型を固定した咬合器を示した説明図
【
図22】
図21に示す咬合器を使用した本発明に係るマウスピースの作成を示した説明図
【
図23】
図22の咬合器を使用して作成された本発明に係るマウスピースの平面、側面、底面を示した説明図
【
図24】
図23に示したマウスピースを微調整する手順を示したフロー図
【
図25】
図24のステップS52における下顎角に対応したマウスピース微調整の詳細を示したフロー図
【
図26】後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張に左右差がなくマウスピースの微調整は行わない第1微調整パターンを示した説明図
【
図27】後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第2微調整パターンを示した説明図
【
図28】後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第3微調整パターンを示した説明図
【
図29】
図24のステップS53におけるオトガイ部に対応したマウスピース微調整の詳細を示したフロー図
【
図30】前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第4微調整パターンを示した説明図
【
図31】前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第5微調整パターンを示した説明図
【
図32】後頸部右と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第6微調整パターンを示した説明図
【
図33】後頸部右と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第7微調整パターンを示した説明図
【
図34】後頸部左と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第8微調整パターンを示した説明図
【
図35】後頸部左と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第9微調整パターンを示した説明図
【
図36】
図24のステップS54における下顎位の前後位置に対応したマウスピース微調整の詳細を示したフロー図
【
図37】安静脱力時の頭位が前屈している場合にマウスピースを微調整する前方移動微調整パターンを示した説明図
【
図38】安静脱力時の頭位が後屈している場合にマウスピースを微調整する後方移動微調整パターンを示した説明図
【
図39】マウスピース作成支援システムの実施形態を示したブロック図
【
図40】咀嚼時咬合顎位ガイダンス部の詳細を示したブロック図
【
図41】マウスピース微調整ガイダンス部の詳細を示したブロック図
【
図42】メインメニューのガイダンス画面を示した説明図
【
図43】咀嚼時咬合顎位を選択した場合に表示される下顎角とオトガイ部を補正するガイダンス画面を示した説明図
【
図44】下顎角とオトガイ部の高低差を補正するガイダンス画面を示した説明図
【
図45】咀嚼時顎位の前方移動を補助するガイダンス画面を示した説明図
【
図46】咀嚼時顎位の後方移動を補助するガイダンス画面を示した説明図
【
図47】最適咬合採得のガイダンス画面を示した説明図
【
図48】咬合模型作成のガイダンス画面を示した説明図
【
図49】マウスピース作成のガイダンス画面を示した説明図
【
図50】下顎角位置とオトガイ部位置に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図
【
図51】咀嚼時顎位の前方移動補助に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図
【
図52】咀嚼時顎位の後方移動補助に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図
【
図53】ツールガイダンス部により表示されるツールのガイダンス画面を示した説明図
【
図54】姿勢測定計のガイダンス画面を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0076】
[マウスピース作成の概要]
図1は本発明に係るマウスピースの作成手順の概要を示したフロー図である。なお、
図1のフロー図における手順はステップS1〜S9に分けて示しており、ステップは時系列的に進む作業手順であり、ステップ以外に、工程、段階、フェーズ等と表現しても良いが、本実施形態にあっては、ステップを使用する。
【0077】
本実施形態は、例えば線維筋痛症を持つ患者を対象に、全身の基礎的筋緊張のバランスを最適化するために下顎位(下顎の位置)を補正するマウスピースを次のステップS1〜S9に従って作成する。
【0078】
ステップS1〜S9に従って作成された患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースは、
図23に示すように、マウスピース76における略均一な厚みを有するマウスピース本体78の上部開口80の中に上顎模型による上顎歯牙列圧痕82が象られ、また、マウスピース本体78の底面(咬合面)には、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位おける下顎模型による下顎歯牙列圧痕84が象られている。
【0079】
このように構成されたマウスピース76を患者の上顎歯牙列に装着することで、最適化された咀嚼時咬合状態及び安静勢時咬合状態となる上顎に対する正しい下顎の咬合位置関係が再現される。
【0080】
ステップS1は、上下顎模型作成手順であり、患者の歯牙列を配置した上顎模型と下顎模型を作成する。ステップS2は、下顎角位置補正手順であり、患者を対象に、下顎角の位置を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。ステップS3は、オトガイ部位置補正手順であり、患者を対象に、オトガイ部の位置を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。ステップS4は、高低差補正であり、患者を対象に、ステップS2,S3の補正が済んだ状態で、下顎角とオトガイ部の高低差を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。ステップS5は、前後位置調整手順であり、ステップS4の補正が済んだ状態で、下顎位の前後位置が微調整された咀嚼時咬合顎位を構成する。
【0081】
このようなステップS2〜S5の手順により、全身の基礎的筋緊張がバランスして最適化された咀嚼時咬合顎位が構築される。
【0082】
続いて、ステップS6は、最適咬合採得手順であり、ステップS2〜S5により最適化された咀嚼時咬合顎位を構成した状態で、バイト材を使用して、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列を圧痕した最適咬合圧痕部材を作成する。
【0083】
ステップS7は、咬合模型作成手順であり、ステップS6で作成した最適咬合圧痕部材を、ステップS1で作成した上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んで最適化された咀嚼時咬合顎位を構成し、これを咬合器に固定する。
【0084】
ステップS8は、マウスピース作成手順であり、マウスピース成形器を用いて上顎模型に対する一定の厚みをもつマウスピースパーツを作成し、続いて、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型と下顎模型が固定された咬合器により、マウスピースパーツに下顎歯牙列を圧痕してマウスピースを作成する。
【0085】
ステップS9は、マウスピース微調整手順であり、ステップS8で作成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着して、適正化された安静時顎位となるように、マウスピースの舌側歯面の研磨等により微調整し、咀嚼時咬合顎位及び安静時顎位の両方が最適かされ、更に、開閉口運動においても適切な顎運動が維持されるマウスピースが完成する。
【0086】
[全身の基礎的筋緊張のバランスが最適化された咀嚼時咬合顎位の構成]
ステップS1〜S9の説明に先立ち、下顎骨を正しい位置とすることが、全身の基礎的筋緊張のバランスが最適化される、という発明者の知見を説明する。
【0087】
図2は本実施形態によるマウスピースの作成根拠となる顎位の形態変化に対する脳幹反射を示した説明図である。
【0088】
本願発明者は、下顎骨の位置に異常が起きると、全身の基礎的筋緊張のバランスが崩れると考えている。
図2に示すように、頭蓋骨に対し下顎骨が正しい位置となる正しい顎位100が得られた状態では、全身の基礎的筋緊張のバランスがとれているが、下顎骨の位置は加齢による歯牙の摩耗、交通事故等による外傷、歯科診療等により正常な位置からずれ、下顎骨の頭蓋骨に対する相対的な位置関係が変化する。
【0089】
このような下顎骨の位置変化は、上下の変化101と左右の変化102に大別される。勿論、上下の変化101と左右の変化102は同時に複合的にも起きる。上下の変化101に対しては、咬筋−顎位反射103により中枢神経系が咀嚼にもっと相応しいと判断する位置に顎位を移動させる。即ち、下顎骨の上下の変化は咀嚼に関係する筋肉の位置覚・運動覚から三叉神経の知覚線維を介して中枢神経系に伝達し、中枢神経系が咀嚼にもっと相応しいと判断する位置に顎位を移動させる。
【0090】
また、左右の変化102に対しては、舌−顎位反射104により、舌を介して三叉神経の触覚が感知して中枢神経系に伝達し、中枢神経系が咀嚼にもっと相応しいと判断する位置に顎位を移動させる。
【0091】
咬筋−顎位反射103及び舌−顎位反射104は、両方とも脳幹反射であるから、歯牙の形態の変化と同時に顎位反射が起こり、その顎位の変化が顎位−姿勢制御反射105として、全身の筋肉のバランスを変えて基礎的筋緊張バランスの崩れ106となる。
【0092】
このようにして引き起こされた全身の基礎的筋緊張バランスの崩れ106となるバランス障害が、長期間持続的に続き、全身の痛みを強く訴えた時に診断される症状病名が線維筋痛症107といえる。この結果、線維筋痛症107の真の病態は顎位異常症であると考えることができる。
【0093】
本願発明者の研究の結果によれば、歯牙の形態修正により変化する下顎位には、以下の因子が存在することが確認されている。
【0094】
(1)下顎角の左右の位置
後頸部や身体背面と基礎的筋緊張の左右のバランスと相関があり、触診と症状により確認される。
【0095】
(2)オトガイ部の左右の位置
前頸部や身体前面と基礎的筋緊張の左右のバランスと相関があり、触診と症状により診断される。
【0096】
前記(1)(2)の条件に関しては三叉神経の舌表在覚を介した「舌−顎位反射」試験により瞬時(数秒程度)に顎位の補正が可能であることが確認されている。
【0097】
(3)下顎角とオトガイ部の高位差と咬合平面の水平性
前傾姿勢と後傾姿勢のバランスと相関がある。努力性呼気残量を指標とし、0〜500ミリリットル程度となるように調整する。症状としては腰痛との因果関係が高い。
【0098】
ここで、努力性呼気残量とは、最大吸気の後に呼息筋・吸息筋の双方を脱力させた際に、肺内に残存する空気の量をさし、肺活量計を用いて測定する。通常は脱力するだけで大部分の空気が肺内より呼出されるのが理想的な呼吸バランスとされている。
【0099】
(4)前後の位置
前頸部と後頸部、身体前面と後面の基礎的筋緊張のバランスと相関がある。安静脱力時の頭位(頭の位置)が前屈位をとるか後屈位をとるかを指標とし、正中位を取る位置を最適な前後位置とする。三叉神経や咬筋深部覚を介した咬合平面(咬合基準面)の仰角調整等により、咬合平面の水平性と、下顎角とオトガイ部の高位差との間に密接な相関関係が観測されている。以下、ステップS1〜S9を詳細に説明する。
【0100】
[ステップS1:上下顎模型の作成]
ステップS1は、バイト材を使用して患者の上顎歯牙列と下顎歯牙列を採得し、上顎歯牙列が配置された上顎模型と下顎歯牙列が配置された下顎模型を作成する。
【0101】
即ち、印象材として機能するバイト材を患者の口腔内に入れて上顎及び下顎の型を取り、歯型模型(雌型)を作成する。続いて作成した上顎と下顎の歯型模型に石膏等を流し込み、硬化後に取り出すことで、上顎歯牙列が配置された上顎模型と下顎歯牙列が配置された下顎模型が作成される。
【0102】
図3は患者の上下顎模型を示した説明図である。
図3に示すように、上顎模型10には、バイト材を使用して患者から採得された上顎歯牙列14が配置されている。また、下顎模型12には、バイト材を使用して患者から採得された下顎歯牙列16が配置されている。
【0103】
ここで、上側歯牙列14及び下側歯牙列16は、周知のように、中切歯24−1,26−1,28−1,30−1、側切歯24−2,26−2,28−2,30−2、犬歯24−3,26−3,28−3,30−3、第1小臼歯24−4,26−4,28−4,30−4、第2小臼歯24−5,26−5,28−5,30−5、第1大臼歯24−6,26−6,28−6,30−6、第2大臼歯24−7,26−7,28−7,30−7から構成されている。
【0104】
[ステップS2:下顎の位置補正]
図1のステップS2は、下顎角の位置を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。下顎角の位置補正では、後頸部の基礎的筋緊張のバランスを確認しつつ、主に下顎大臼歯の舌側歯面にワックスを貼り付け、左右のバランスが拮抗するように厚みを調節する。
【0105】
図4は
図1のステップS2における下顎角の位置補正の詳細を示したフロー図である。
図4の下顎角の位置補正では、ステップS11で患者の後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS12に進み、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0106】
また、ステップS13で患者の後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS14に進み、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0107】
また、ステップS11で患者の後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がなく、ステップS13で患者の後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がない場合は、ワックスの貼り付けによるバランス調整は行わない。
【0108】
図4の下顎角の位置補正は、
図5乃至
図7に示す第1パターン乃至第3パターンに分けることができる。
【0109】
(第1パターン)
図5は後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張に左右差がなく下顎角の位置を補正しない第1パターンを示した説明図であり、
図5(A)に上顎歯牙列と下顎歯牙列を示し、
図5(B)に患者の後頸部と前頸部の基礎的筋緊張の発生場所(基礎的筋緊張の亢進が発生している場所)を示す。なお、
図5(B)の黒丸は、アメリカリウマチ学会の線維筋痛症分類基準の圧痛点を部分的に示す。
【0110】
第1パターンは、
図5(B)に示すように、患者18の後頸部20及び前頸部22の各々につき左右差のないバランスが取れた場合であり、この場合には、
図5(A)に示すように、ワックスの貼り付けによるバランス調整は行わない。
【0111】
(第2パターン)
図6は後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角の位置を補正する第2パターンを示した説明図である。
【0112】
第2パターンは、
図6(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の前頸部22は左右差のないバランスがとれた場合の位置補正である。この場合には、
図6(A)に示すように、下顎歯牙列16の右側の第1大臼歯24−6及び第2大臼歯24−7の舌側歯面にワックス32−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0113】
ワックス32−1の貼り付けによる左右差のバランスは、最初、薄く伸ばしたワックス32−1を貼り付けて患者18に後頸部右20−1の基礎的筋緊張が解消したか確認し、後頸部右20−1の基礎的筋緊張が解消するまで、薄く伸ばしたワックス32−1を重ねて貼り付けることで、左右差をバランスさせる。このワックスの貼り付けにより基礎時筋緊張の左右差をバランスさせる調整方法は、以下のパターンによる位置補正でも同様である。
【0114】
(第3パターン)
図7は後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角の位置を補正する第3パターンを示した説明図である。
【0115】
第3パターンは、
図7(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の前頸部22は左右差のないバランスがとれた場合の位置補正である。この場合には、
図7(A)に示すように、下顎歯牙列16の左側の第1大臼歯26−6及び第2大臼歯26−7の舌側歯面にワックス32−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0116】
[ステップS3:オトガイ部の位置補正]
図1のステップS3は、患者を対象にオトガイ部の位置を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。オトガイ部の位置補正では、前頸部の基礎的筋緊張のバランスを確認しつつ、主に下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを貼り付け、左右のバランスが拮抗するように厚みを調節する。
【0117】
図8は
図1のステップS3におけるオトガイ部の位置補正の詳細を示したフロー図である。
図8のオトガイ部の位置補正では、ステップS21で患者の前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS22に進み、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0118】
また、ステップS23で患者の前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS24に進み、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0119】
また、ステップS21で患者の前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がなく、ステップS23で患者の前頸部左に基礎的筋緊張の亢進ない場合は、ワックスの貼り付けによるバランス調整は行わない。
【0120】
図8の下顎角の位置補正は、
図9及び
図10に示す第4パターンと第5パターンに分けることができる。
【0121】
(第4パターン)
図9は前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にオトガイ部の位置を補正する第4パターンを示した説明図である。
【0122】
第4パターンは、
図9(B)に示すように、患者18の前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の後頸部20は左右差のないバランスがとれた場合の位置補正である。この場合には、
図9(A)に示すように、下顎歯牙列16の右側の第1小臼歯24−4及び第2小臼歯24−5の舌側歯面にワックス34−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0123】
(第5パターン)
図10は前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にオトガイ部の位置を補正する第5パターンを示した説明図である。
【0124】
第5パターンは、
図10(B)に示すように、患者18の前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の後頸部20は左右差のないバランスがとれた場合の位置補正である。この場合には、
図10(A)に示すように、下顎歯牙列16の左側の第1小臼歯26−4及び第2小臼歯26−5の舌側歯面にワックス34−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0125】
[下顎角とオトガイ部を組み合わせた位置補正]
図4の下顎角の位置補正と
図8のオトガイ部の位置補正を組み合わせた位置補正は次の第6パターン乃至第9パターンがある。
【0126】
(第6パターン)
図11は後頸部右と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角とオトガイ部の位置を補正する第6パターンを示した説明図である。
【0127】
第6パターンは、
図11(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1と前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進がある場合の位置補正である。この場合には、後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図11(A)に示すように下顎歯牙列16の右側の第1大臼歯24−6及び第2大臼歯24−7の舌側歯面にワックス32−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0128】
また、前頸部左22−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図11(A)に示すように、下顎歯牙列16の左側の第1小臼歯26−4及び第2小臼歯26−5の舌側歯面にワックス34−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0129】
(第7パターン)
図12は後頸部右と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角とオトガイ部の位置を補正する第7パターンを示した説明図である。
【0130】
第7パターンは、
図12(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1と前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進がある場合の位置補正である。この場合には、後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図12(A)に示すように下顎歯牙列16の右側の第1大臼歯24−6及び第2大臼歯24−7の舌側歯面にワックス32−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0131】
また、前頸部右22−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図12(A)に示すように、下顎歯牙列16の右側の第1小臼歯24−4及び第2小臼歯24−5の舌側歯面にワックス34−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0132】
(第8パターン)
図13は後頸部左と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角とオトガイ部の位置を補正する第8パターンを示した説明図である。
【0133】
第8パターンは、
図13(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2と前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進がある場合の位置補正である。この場合には、後頸部左20−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図13(A)に示すように下顎歯牙列16の左側の第1大臼歯26−6及び第2大臼歯26−7の舌側歯面にワックス32−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0134】
また、前頸部右22−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図13(A)に示すように、下顎歯牙列16の右側の第1小臼歯24−4及び第2小臼歯24−5の舌側歯面にワックス34−1を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0135】
(第9パターン)
図14は後頸部左と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合に下顎角とオトガイ部の位置を補正する第9パターンを示した説明図である。
【0136】
第9パターンは、
図14(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2と前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進がある場合の位置補正である。この場合には、後頸部左20−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図14(A)に示すように、下顎歯牙列16の左側の第1大臼歯26−6及び第2大臼歯26−7の舌側歯面にワックス32−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0137】
また、前頸部左22−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図14(A)に示すように、下顎歯牙列16の左側の第1小臼歯26−4及び第2小臼歯26−5の舌側歯面にワックス34−2を貼り付けて左右差をバランスさせる。
【0138】
[ステップS4:下顎骨とオトガイ部の高低差の補正]
(ステップ4の手順)
図1のステップS4は、下顎角とオトガイ部の高低差を補正した咀嚼時咬合顎位を構成する。
【0139】
図15は
図1のステップS5における下顎角とオトガイ部の高低差を補正する手順の詳細を示したフロー図である。
図15に示すように、下顎角とオトガイ部の高低差の補正では、ステップS31で、
図3に示した上顎歯牙列14における両側の第1大臼歯28−6,30−6の各々の咬合面にワックスを置き、咀嚼時咬合顎位を構成して、咬筋−顎位反射を誘発したのちにステップS32で努力性呼気残量を肺活量計で測定する。
【0140】
ステップS33で努力性呼気残量が500ミリリットル以下に減少しない場合は、ステップS34に進み、事前に準備したミニスプリントを下顎歯牙列16における両側の第1大臼歯24−6,26−6に装着して咬合基準面の仰角を増加させる仰角補正を行い、ステップS32で測定した努力性呼気残量がステップS33で500ミリリットル以下に減少するまで、ステップS34でミニスプリントの装着により仰角を増加させる仰角補正を繰り返す。
【0141】
なお、咬合基準面の仰角補正を行っても努力性呼気残量が500ミリリットル以下に減少しなくとも、仰角補正を行わない場合に対し努力性呼気残量の十分な減少がみられた場合には、仰角補正に基づく下顎骨とオトガイ部の高低差の補正を有効とすることができる。
【0142】
ここで、努力性呼気残量とは、最大吸気の後に患者の呼息筋。吸息筋の双方を脱力させた際に、肺内に残存する空気の量をさし、肺活量計を用いて測定する。通常は脱力するだけで大部分の空気が肺内より呼出されるのが理想的な呼吸バランスとされている。
【0143】
(ミニスプリント)
図16は下顎角とオトガイ部の高低差の補正に使用するミニスプリントを示した説明図であり、
図16(A)に下顎歯牙列の大臼歯から小臼歯におけるスピーのカーブを示し、
図16(B)にミニスプリントの作成と仰角補正を示す。
【0144】
努力性呼気残量を減少させるために、患者毎に異なる最適な咬合基準面を一時的に実現する、咬合基準面の仰角を補正するためのミニスプリントを作成する。
【0145】
図16(A)に示すように、下顎歯牙列は正しい咬合基準面として上向きに湾曲するスピーのカーブ36を持つことが知られているが、必ずしも解剖学的なスピーのカーブ36が個々に最適な咬合基準面ではない場合があることが知られている。患者の咬合基準面を個々に最適な咬合基準面に近づけるため、第1大臼歯26−6の機能咬頭を中心に個々に最適な仰角を設定する必要がある。
【0146】
図16(B)は補正仰角θ=7°が設定されたミニスプリントの作成を示している。第1大臼歯26−6の頬側咬頭は3つあり、それぞれ前側から第1咬頭45a、第2咬頭45b、第3咬頭45cとした場合、0.5mm未満の厚さのレジン体で第2小臼歯26−5を被覆して固定部46aを形成し、同時に、第1大臼歯26−6の第1咬頭45a、第2咬頭45bまでを被覆し、レジン体で第1咬頭45aからの高さを1mmアップし、第2咬頭45bからの高さを0.5mmアップすることで、第3咬頭45cを中心に水平基準面40に対しθ=7°の仰角補正を加えた咬合基準面42になるように角度補正面46bが形成される。
【0147】
同様に舌側咬頭や咬合面全体にも設定された補正角度に応じて目的とする形態に沿うように小臼歯側から中心部分にかけての部分のみをレジン体で被覆し、第2大臼歯26−7側は被覆しないようにすることで第1大臼歯26−6の咬合面全体が所定の仰角の補正が行われるように形成する。このようにして作成したミニスプリント46を下顎歯牙列から外して準備しておく。
【0148】
図17は異なる補正仰角が設定されたミニスプリントの説明図である。
図17(A)は補正仰角θ=14°が設定されたミニスプリントの作成を示している。このミニスプリント46は、レジン体で第1咬頭45aからの高さを2mmアップし、第2咬頭45bからの高さを1mmアップすることで、第3咬頭45cを中心に水平基準面40に対しθ=14°の仰角補正を加えた咬合基準面42になるように角度補正面46bが形成されている。
【0149】
図17(B)は補正仰角θ=21°が設定されたミニスプリントの作成を示している。このミニスプリント46は、レジン体で第1咬頭45aからの高さを3mmアップし、第2咬頭45bからの高さを1.5mmアップすることで、第3咬頭45cを中心に水平基準面40に対しθ=21°の仰角補正を加えた咬合基準面42になるように角度補正面46bが形成されている。
【0150】
図17(C)は補正仰角θ=28°が設定されたミニスプリントの作成を示している。このミニスプリント46は、レジン体で第1咬頭45aからの高さを4mmアップし、第2咬頭45bからの高さを2mmアップすることで、第3咬頭45cを中心に水平基準面40に対しθ=28°の仰角補正を加えた咬合基準面42になるように角度補正面46bが形成されている。
【0151】
なお、ミニスプリント46による仰角補正の角度θは必要に応じて適宜の角度を設定することができる。
【0152】
[ステップS5:下顎の前後位置の微調整]
図1のステップS5は、ステップS2〜S4により下顎角、オトガイ部、及び高低差が補正された状態で、下顎位の前後位置が微調整された咀嚼時咬合顎位を構成する。
【0153】
ステップS5の下顎位の前後の位置の微調整では、患者は自身の視線に対し安静脱力時の頭位が正中位を得るように、患者自身で下顎の前後の位置に微調整を加える。
【0154】
患者自身による前後の位置の微調整が難しい場合には、下顎前歯部又は上顎前歯部の舌側歯面に対するワックスの貼り付けにより、舌−顎位反射を誘発させて補助する。
【0155】
図18は
図1のステップS5における下顎位を前後微調整する手順の詳細を示したフロー図、
図19は安静脱力時の頭位が前屈している場合に下顎を前方に移動させる前方移動パターンを示した説明図、
図20は安静脱力時の頭位が後屈している場合に下顎を後方に移動させる後方移動パターンを示した説明図である。
【0156】
図18に示すように、ステップS41で患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合はステップS42に進み、患者自身で下顎角を前方移動可能であれば、ステップS44に進む。
【0157】
ステップS42で患者自身での下顎角の前方移動が可能でない場合はステップS43に進み、
図19に示すように、下顎歯牙列16における中切歯24−1,26−1、側切歯24−2,26−2、犬歯24−3,26−3からなる前歯部の舌側歯面にワックス48を貼り付け、必要に応じてワックス48の厚みを調節し、舌−顎位反射を誘発させて患者による下顎角の前方移動を補助する。
【0158】
一方、ステップS44で患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合はステップS45に進み、患者自身で下顎角を後方移動可能であれば、ステップS47に進み、安静脱力時の頭位を正中位とする姿勢を保持させる。
【0159】
ステップS45で患者自身での下顎角の後方移動が可能でない場合はステップS46に進み、
図20に示すように、上顎歯牙列14における中切歯28−1,30−1、側切歯28−2,30−2、犬歯28−3,30−3からなる前歯部の舌側歯面にワックス50を貼り付け、必要に応じてワックス50の厚みを調節し、舌−顎位反射を誘発させて患者による下顎角の後方移動を補助する。
【0160】
以上の
図1におけるステップS2〜S5の手順により、患者について、全身の基礎的筋緊張のバランスがとれた最適化された咀嚼時咬合状態が構成される。
【0161】
[ステップS6:最適咬合圧痕部材の作成]
図1のステップS6は、ステップS2〜S5により構成した患者の最適咬合状態にある上顎歯牙列と下側歯牙列の間にバイト材を置いて、最適咬合状態の位置関係にある上顎歯牙列と下側歯牙列の圧痕が象られた最適咬合圧痕部材を作成する。
【0162】
バイト材を使用した最適咬合圧痕部材の作成に際しては、後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスと前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスが同等となり、腰痛や背部痛がないこと、安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位となっていることなどを確認するとともに、全身の疼痛症状が消失していることを術者と患者自身が相互に確認して行う。
【0163】
[ステップS7:咬合器による最適咬合状態の再現]
図21は最適化された咀嚼時咬合状態から採得された最適咬合圧痕部材を使用して上下顎模型を固定した咬合器を示した説明図であり、
図21(A)に咬合器を示し、
図21(B)に最適咬合圧痕部材を取り出して示す。なお、咬合器は一例であり、適宜の咬合器が使用できる。
【0164】
図21(A)に示すように、咬合器52は、架台54の後方に起立した支持アーム55に軸58により可動アーム56を回動自在に設けており、可動アーム56の先端には位置決めピン60が設けられ、位置決めピン60の先端は架台54の先端に配置したストッパ部64に当接している。位置決めピン60は可動アーム56からの長さが調整可能であり、固定ツマミ62により調整された長さに固定される。
【0165】
また、軸58と支持アーム55の後部横との間にはスプリング66が配置され、可動アーム56を前回りに付勢している。また、支持アーム55の後部横には調整ツマミ68が設けられ、可動アーム56の後部に調整ツマミ68に一体設けたネジ軸を押し当てることで、位置決めピン60の長さを調整する際に、ピン先端を浮上可能としている。
【0166】
図1のステップS6で作成された最適咬合圧痕部材70は、
図21(B)に示すように、上側に最適化された咀嚼時咬合状態での上顎歯牙列圧痕72が象られ、上側に最適化された咀嚼時咬合状態での下顎歯牙列圧痕74が象られている。
【0167】
咬合器52には、ステップS1で作成した
図3に示した上顎模型10と下顎模型12の間に最適咬合圧痕部材70を配置して最適化された咀嚼時咬合状態を作り出し、この状態で可動アーム56の下側の固定部材75−1に石膏を使用して上顎模型10を固定し、また、架台54の上の固定部材75−2に石膏を使用して下顎模型12を固定して最適化された咀嚼時咬合状態を再現し、この状態で位置決めピン60の先端がストッパ部64に当たって可動アーム56を支持する位置で固定ツマミ62により位置決めピン60を固定する。
【0168】
続いて、可動アーム56を上方に回動して開き、上顎模型10と下顎模型12の間に配置していた最適咬合圧痕部材70を取り外すことで、
図1のステップS2〜S5により構成された最適咬合状態が咬合器52に固定された上顎模型10と下顎模型12の位置関係として再現される。
【0169】
[ステップS8:マウスピースの作成]
図1のステップS8は、ステップS7で上顎模型10と下顎模型12が最適化された咀嚼時咬合状態となる位置関係に固定された
図21に示した咬合器を使用して、患者の上顎歯牙列に装着されるマウスピースを作成する。
【0170】
(上顎模型を使用したマウスピースパーツの作成)
まず、ステップS1で作成した上顎模型を使用してマウスピースパーツを作成する。マウスピースパーツは、例えば公知のマウスピース成形器として知られたバキュームフォーマーを使用して作成する。
【0171】
バキュームフォーマーに、上顎模型と2〜3mm程度の均一な厚みをもつ軟性樹脂シート(エチレン酢酸ビニニルコポリマー:EVA)をセットし、加熱および真空吸引を行う。
【0172】
これにより、加熱され軟性樹脂シートは、真空吸引されることで、上顎模型における上顎歯牙列および歯肉部の外形に沿うように変形し、マウスピース原型が形成される。
【0173】
続いて、軟性樹脂シートからマウスピース原型を切り離すことで、上顎模型を象ったマウスピースパーツが作成される。
【0174】
(咬合器を使用した下顎歯牙列の圧痕の形成)
図22は
図21に示す咬合器を使用した本発明に係るマウスピースの作成を示した説明図である。
【0175】
図21に示した上顎模型10と下顎模型12の最適咬合状態の位置関係を再現している咬合器52の上顎模型10に対し、上顎模型を象ったマウスピースパーツを装着し、マウスピースパーツの底面となる咬合面を加熱して軟化し、この状態で
図22に示すように、咬合器52を閉じ、マウスピースパーツを装着した上顎模型10と下顎模型12を咬合させる。マウスピースハーツが冷却して硬化した後に咬合器52を開くと、マウスピースパーツの咬合面(下面)に、最適咬合状態の位置関係にある下顎模型12の歯牙列を象った圧痕が形成され、マウスピース76が完成する。
【0176】
(マウスピース)
図23は
図22の咬合器を使用して作成された本発明に係るマウスピースの平面、側面、底面を示した説明図である。
【0177】
このようにして作成されたマウスピース76は、
図23に示すように、マウスピース本体78の上部開口80の中の底部には上顎模型10による上顎歯牙列圧痕82が象られ、また、マウスピース本体78の底面には下顎模型12の下顎歯牙列圧痕84が象られ、上顎歯牙列圧痕82と下顎歯牙列圧痕84の間には、最適化された主に咀嚼時咬合状態の咬合位置関係が再現されている。
【0178】
このためマウスピース76を患者の上顎歯牙列に装着して下顎歯牙列との咀嚼時咬合状態とすると、マウスピース76の下面の下顎歯牙列圧痕84に患者の下顎歯牙列が咬合して位置決めされることで、下顎が正しい位置となるように咀嚼時咬合顎位が適正化され、後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスと前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスが同等となり、全身の基礎的筋緊張がバランスし、その結果、線維筋痛症に起因した全身の疼痛症状を消失させることが基本的に可能となる。
【0179】
この段階でのマウスピースは、咀嚼時咬合顎位は適正化されるが、安静時顎位の適正化が残された状態にある。
【0180】
なお、本実施形態は、マウスピースの作成について、マウスピース成形器を用いてマウスピースパーツを作成する工程と、咬合器を用いてマウスピースパーツに下顎歯牙列を圧痕する工程の2工程で作成する場合を示しているが、咬合器の機能を備えたマウスピース成形器を用いることで、1工程でマウスピースを作成することができる。
【0181】
[ステップS9:マウスピースの微調整]
図1のステップS9は、ステップS8で作成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着して微調整を行う。
【0182】
ステップS8におけるマウスピースの微調整は、患者にマウスピースを装着した状態で患者の筋肉に触れ、最適な安静時顎位を得るための微調整を行う。マウスピースの微調整は、下顎角に対応した微調整、オトガイ部に対応した微調整、更に、下顎位の前後位置の微調整を行う。
【0183】
下顎角とオトガイ部に対応した微調整では、後頸部の基礎的筋緊張に左右差が認められる場合には、緊張が亢進している側の大臼歯に位置するマウスピースの舌側面の厚みを研磨により減ずるように調整を行う。また、患者の前頸部の基礎的筋緊張に左右差を認められる場合には、緊張が亢進している側の小臼歯に位置するマウスピースの舌側面の厚みを研磨により減ずるように調整を行う。
【0184】
下顎位の前後位置の微調整は、頭位が前屈している場合は、マウスピースの前歯側の舌側歯面の厚み研磨により減ずるように調整を行う。また、頭位が後屈している場合は、ウスピースの前歯側の舌側歯面の厚みを肉盛りにより増すように調整を行う。
【0185】
図24は
図23に示したマウスピースを微調整する手順を示したフロー図である。
図24に示すように、マウスピースの微調整は、ステップS51で患者の上顎歯牙列にマウスピースを装着して安静時顎位とし、ステップS52で下顎角に対応したマウスピースの微調整を行い、ステップS53でオトガイ部に対応したマウスピースの微調整を行い、ステップS54で下顎位の前後位置に対応したマウスピースの微調整を行う。
【0186】
[ステップS52:下顎角に対応したマウスピースの微調整]
図25は
図24のステップS52における下顎角に対応したマウスピースの微調整の詳細を示したフロー図である。
図25の下顎角に対応したマウスピースの微調整では、ステップS61で患者の後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS62に進み、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨によりミクロンオーダーの単位で減少させて左右差をバランスさせる。
【0187】
また、ステップS63で患者の後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS64に進み、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨によりミクロンオーダーの単位で減少させて左右差をバランスさせる。
【0188】
また、ステップS61で患者の後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がなく、ステップS63で患者の後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がない場合は、舌側歯面に位置するマウスピースの研磨によるバランス調整は行わない。
【0189】
図25の下顎角の位置微調整は、
図26乃至
図28に示す第1微調整パターン乃至第3微調整パターンに分けることができる。
【0190】
(第1微調整パターン)
図26は後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張に左右差がなくマウスピースの微調整は行わない第1微調整パターンを示した説明図であり、
図26(A)に上顎歯牙列と下顎歯牙列を示し、
図26(B)に患者の後頸部と前頸部の基礎的筋緊張の亢進の発生場所を示す。なお、
図26(A)のマウスピース76は上顎歯牙列に装着した場合の断面で示している。
【0191】
第1微調整パターンは、
図26(B)に示すように、患者18の後頸部20及び前頸部22の各々につき左右差のないバランスが取れた場合であり、この場合には、
図26(A)に示すように、マウスピースの研磨によるバランス調整は行わない。
【0192】
(第2微調整パターン)
図27は後頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第2微調整パターンを示した説明図である。
【0193】
第2微調整パターンは、
図27(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の前頸部22は左右差のないバランスがとれた場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、
図27(A)に示すように、上顎歯牙列14の右側の第1大臼歯28−6及び第2大臼歯28−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部90−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0194】
(第3微調整パターン)
図28は後頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第3微調整パターンを示した説明図である。
【0195】
第3微調整パターンは、
図28(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2に基礎的筋緊張があり、患者18の前頸部22は左右差のないバランスがとれた場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、
図28(A)に示すように、上顎歯牙列14の左側の第1大臼歯30−6及び第2大臼歯30−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部90−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0196】
[ステップS53:オトガイ部に対応したマウスピースの微調整]
図29は
図24のステップS53におけるオトガイ部に対応したマウスピースの微調整の詳細を示したフロー図である。
【0197】
図29に示すオトガイ部に対応したマウスピースの微調整では、ステップS71で患者の前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS72に進み、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピースの厚みを研磨によりミクロンオーダーの単位で減少させて左右差をバランスさせる。
【0198】
また、ステップS73で患者の前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合は、ステップS74に進み、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置するするマウスピースの厚みを研磨によりミクロンオーダーの単位で減少させて左右差をバランスさせる。
【0199】
また、ステップS71で患者の前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がなく、ステップS73で患者の前頸部左に基礎的筋緊張ない場合は、マウスピースの研磨による微調整は行わない。
【0200】
図29の下顎角に対応したマウスピースの微調整は、
図30及び
図31に示す第4微調整パターンと第5微調整パターンに分けることができる。
【0201】
(第4微調整パターン)
図30は前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第4微調整パターンを示した説明図である。
【0202】
第4微調整パターンは、
図30(B)に示すように、患者18の前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の後頸部20は左右差のないバランスがとれた場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、
図30(A)に示すように、上顎歯牙列14の右側の第1小臼歯24−4及び第2小臼歯24−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0203】
(第5微調整パターン)
図31は前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第5微調整パターンを示した説明図である。
【0204】
第5微調整パターンは、
図31(B)に示すように、患者18の前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進があり、患者18の後頸部20は左右差のないバランスがとれた場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、
図31(A)に示すように、上顎歯牙列14の左側の第1小臼歯30−4及び第2小臼歯30−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0205】
[下顎角とオトガイ部を組み合わせたマウスピースの微調整]
図24の下顎角とオトガイ部の両方に対応したマウスピースの微調整は次の第6微調整パターン乃至第9微調整パターンがある。
【0206】
(第6微調整パターン)
図32は後頸部右と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第6微調整パターンを示した説明図である。
【0207】
第6微調整パターンは、
図32(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1と前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進がある場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図32(A)に示すように上顎歯牙列14の右側の第1大臼歯28−6及び第2大臼歯28−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部90−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0208】
また、前頸部左22−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図32(A)に示すように、上顎歯牙列14の左側の第1小臼歯30−4及び第2小臼歯30−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0209】
(第7微調整パターン)
図33は後頸部右と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第7微調整パターンを示した説明図である。
【0210】
第7微調整パターンは、
図33(B)に示すように、患者18の後頸部右20−1と前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進がある場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図33(A)に示すように上顎歯牙列14の右側の第1大臼歯28−6及び第2大臼歯28−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0211】
また、前頸部右22−1の基礎的筋緊張に対しては、
図33(A)に示すように、上顎歯牙列14の右側の第1小臼歯28−4及び第2小臼歯28−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0212】
(第8微調整パターン)
図34は後頸部左と前頸部右に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第8微調整パターンを示した説明図である。
【0213】
第8微調整パターンは、
図34(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2と前頸部右22−1に基礎的筋緊張の亢進がある場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、後頸部左20−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図34(A)に示すように上顎歯牙列14の左側の第1大臼歯30−6及び第2大臼歯30−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部90−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0214】
また、前頸部右22−1の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図34(A)に示すように、上顎歯牙列14の右側の第1小臼歯28−4及び第2小臼歯28−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−1を形成して左右差をバランスさせる。
【0215】
(第9微調整パターン)
図35は後頸部左と前頸部左に基礎的筋緊張の亢進がある場合にマウスピースを微調整する第9微調整パターンを示した説明図である。
【0216】
第9微調整パターンは、
図35(B)に示すように、患者18の後頸部左20−2と前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進がある場合のマウスピース76の微調整である。この場合には、後頸部左20−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図35(A)に示すように、上顎歯牙列14の左側の第1大臼歯30−6及び第2大臼歯30−7の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部90−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0217】
また、前頸部左22−2の基礎的筋緊張の亢進に対しては、
図35(A)に示すように、上顎歯牙列14の左側の第1小臼歯30−4及び第2小臼歯30−5の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨により減少させた研磨部92−2を形成して左右差をバランスさせる。
【0218】
[ステップ54:下顎の前後位置に対応したマウスピースの微調整]
図36は
図24のステップS54における下顎位の前後位置に対応したマウスピース微調整の詳細を示したフロー図、
図37は安静脱力時の頭位が前屈している場合にマウスピースを微調整する前方移動微調整パターンを示した説明図、
図38は安静脱力時の頭位が後屈している場合にマウスピースを微調整する後方移動微調整パターンを示した説明図である。
【0219】
図36に示すように、ステップS81で患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合はステップS82に進み、
図37に示すように、上顎歯牙列14における中切歯28−1,30−1、側切歯28−2,30−2、犬歯28−3,30−3からなる前歯部の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨によりミクロンオーダーの単位で減少させた研磨部94を形成して前方移動調整パターンとし、舌−顎位反射を誘発させて下顎角の前方移動を調整する。
【0220】
一方、ステップS83で患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合はステップS84に進み、
図38に示すように、上顎歯牙列14における中切歯28−1,30−1、側切歯28−2,30−2、犬歯28−3,30−3からなる前歯部の舌側歯面にマウスピース作成用のビニール素材の溶剤を塗って硬化させることでミクロンオーダー単位で厚みを増加させた盛上げ部96を形成して厚みを調節して後方移動調整パターンを形成し、舌−顎位反射を誘発させて下顎角の後方移動を調整する。
【0221】
以上の
図24におけるステップS51〜S54の手順によるマウスピースの微調整により、下顎が正しい位置となるように安静時顎位が適正化され、適正化された咀嚼時顎位は
図1のステップS8でマウスピースを作成した際に実現されていることから、マウスピースの微調整が済むと咀嚼時顎位及び安静時顎位の両方の適正化を可能とするマウスピースが完成し、患者が完成したマウスピースを上顎歯牙列に装着すると、咀嚼時及び安静時のいずれにおいても、後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスと前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスが同等となり、全身の基礎的筋緊張がバランスし、その結果、全身の疼痛症状を消失させることができる。
【0222】
[ハードタイプのマウスピース]
図1のステップS1〜S9により作成されたソフトタイプのマウスピースについて、咀嚼時顎位と安静時顎位が適正化することにより開閉口運動においても適切な顎運動が維持されることが確認できた際には、素材の摩耗や劣化を防ぐため第2段階のマウスピースとして、ステップS8,S9の手順により作成され、微調整されたソフトタイプのマウスピース76と同等の形態となるように、ハードタイプの素材を用いてマウスピースを作成する。
【0223】
[マウスピースの作成支援システム]
図39はマウスピース作成支援システムの実施形態を示したブロック図である。
図39に示すように、本実施形態のマウスピース作成支援システムは制御プロセッサ100を備え、制御プロセッサ100に対しては、タッチパネル付きの液晶パネル等を用いたディスプレイ102、キーボード104、マウス106、及びキーパッド108が設けられる。
【0224】
制御プロセッサ100には、CPU110が設けられ、CPU110からのバス112に、制御ロジック114、ROM116、RAM118が接続されている。なお、制御ロジック114はCPU110の制御処理に伴うバス制御などの各種のハードウェア機能を実現する。
【0225】
バス112には、外部に設けられたディスプレイ102、キーボード104、マウス106、及びキーパッド108が接続される。
【0226】
CPU110にはROM116に記憶されたプログラムの実行により実現される機能として、顎模型作成ガイダンス手段として機能する顎模型作成ガイダンス部120、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段として機能する咀嚼時咬合顎位ガイダンス部122、最適咬合採得ガイダンス手段として機能する最適咬合採得ガイダンス部124、咬合模型作成ガイダンス手段として機能する咬合模型作成ガイダンス部126、マウスピース作成ガイダンス手段として機能するマウスピース作成ガイダンス部128、マウスピース微調整ガイダンス手段として機能するマウスピース微調整ガイダンス部130、及びツールガイダンス手段として機能するツールガイダンス部131が設けられる。
【0227】
RAM118には画面記憶部132が設けられ、マウスピース作成支援に使用するガイダンス画面情報が予め記憶されている。
【0228】
図39に示すマウスピース作成支援システムは、例えば、歯科診療室の診療台と一体又は近傍に配置され、医師と歯科医師を利用者とし、主に医師による診断と歯科医師による治療操作に従って、線維筋痛症等の不定愁訴による全身の疼痛症状を訴える患者の全身の基礎的筋緊張のバランスを最適化するために下顎位置を正しい位置に補正するマウスピースの作成を支援するためのガイダンスを、主にディスプレイ102に対する画面表示により行い、必要に応じて音声ガイダンスを行う。
【0229】
[ガイダンス部の概要]
顎模型作成ガイダンス部120は、
図3に示した患者の歯牙列が配置された上顎模型10と下顎模型12の作成をガイダンスする。
【0230】
咀嚼時咬合顎位ガイダンス部122は、患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする。
【0231】
最適咬合採得ガイダンス部124は、咀嚼時咬合顎位ガイダンス部122のガイダンスに従って患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、
図21(B)に示した最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材70の作成をガイダンスする。
【0232】
咬合模型作成ガイダンス部126は、最適咬合採得ガイダンス部124のガイダンスに従って作成された最適咬合圧痕部材70を、
図21(A)に示したように、上顎模型10と下顎模型12の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器52に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする。
【0233】
マウスピース作成ガイダンス部128は、
図22及び
図23に示したように、咀嚼時咬合模型が構築された咬合器52により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型10の歯牙列圧痕82と下顎模型12の歯牙列圧痕84が形成された略均一な厚みを有するマウスピース76の作成をガイダンスする。
【0234】
マウスピース微調整ガイダンス部130は、マウスピース作成ガイダンス部128によるガイダンスに従って作成されたマウスピース76を装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるようにマウスピース76を微調整する診療操作をガイダンスする。
【0235】
ツールガイダンス部131は、マウスピースの作成診断に利用することのできる姿勢測定器や筋電計等のツールの使用方法等をオプションとしてガイダンスする。
【0236】
それぞれのガイダンス機能を詳細に説明すると次のようになる。なお、最適咬合採得ガイダンス部124と咬合模型作成ガイダンス部126は、既に説明した通りであることから、詳細な説明は省略する。
【0237】
[咀嚼時咬合顎位ガイダンス部]
図39の咀嚼時咬合顎位ガイダンス部122には、
図40に示すように、下顎角位置補正ガイダンス手段として機能する下顎角位置補正ガイダンス部134、オトガイ部位置補正ガイダンス手段として機能することオトガイ部位置補正ガイダンス部136、高低差補正ガイダンス手段として機能する高低差補正ガイダンス部138、及び前後位置調整ガイダンス手段として機能する前後位置調整ガイダンス部140の機能が設けられる。
【0238】
(下顎角位置補正ガイダンス部)
下顎角位置補正ガイダンス部134は、患者の診断結果に基づくディスプレイ102に表示された画面のタッチ操作により入力された患者の後頸部の基礎的筋緊張の亢進に対応して、患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする。
【0239】
まず、下顎角位置補正ガイダンス部134は、
図5(B)のように、患者の後頸部20の基礎的筋緊張の亢進に左右差のない診断結果が得らたれ場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図5(A)の第1パターンのように、下顎大臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようする診療操作をガイダンスする。
【0240】
また、下顎角位置補正ガイダンス部134は、
図6(B)のように、患者の後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進がありの診断結果が得らたれ場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図6(B)の第2パターンに示すように、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックス32−1を置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックス32−1の厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0241】
また、下顎角位置補正ガイダンス部134は、
図7(B)のように、後頸部左20−2に基礎的筋緊張の亢進がありの診断結果が得られた場合、この診断結果の入力に基づき、
図7(A)の第3パターンに示すように、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックス32−2を置いて、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0242】
(オトガイ部位置補正ガイダンス部)
オトガイ部位置補正ガイダンス部136は、患者の診断結果に基づくディスプレイ102に表示された画面のタッチ操作により、入力された患者前頸部の基礎的筋緊張の亢進に対応して、患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする。
【0243】
まず、オトガイ部位置補正ガイダンス部136は、
図5(B)のように、患者の前頸部22の基礎的筋緊張に左右差なしの診断結果が得らたれ場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図5(A)の第1パターンのように、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスする。
【0244】
また、オトガイ部位置補正ガイダンス部136は、
図9(B)のように、患者の前頸部右22−1の基礎的筋緊張の亢進がありの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、これ入力された場合は、
図9(A)の第4パターンに示すように、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックス34−1を置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックス34−1の厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0245】
また、オトガイ部位置補正ガイダンス部136は、
図10(B)のように、患者の前頸部左22−2の基礎的筋緊張の亢進ありの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図10(A)の第5パターンに示すように、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックス34−2を置いて、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにワックス34−2の厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0246】
更に、下顎角位置補正ガイダンス部134とオトガイ部位置補正ガイダンス部136による後頸部と前頸部の基礎的筋緊張の亢進の組み合わせとなる診断結果の画面入力操作に基づき、
図11〜
図14に示した第6〜第9パターンの何れかにおける大臼歯と小臼歯の舌側歯面の各々にワックスを置いて、後頸部又は前頸部の基礎的筋緊張の左右差をバランスさせる治療操作を、ディスプレイ102の画面表示によりガイダンスする。
【0247】
(高低差補正ガイダンス部)
高低差補正ガイダンス部138は、下顎角位置補正ガイダンス部134のガイダンスとオトガイ部位置補正ガイダンス部136のガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて下顎角とオトガイ部の高低差を補正する診療操作を、ディスプレイ102の画面表示によりガイダンスする。
【0248】
即ち、高低差補正ガイダンス部138は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスする。
【0249】
この場合、高低差補正ガイダンス部138は、努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように仰角を補正する診療操作をガイダンスする。
【0250】
また、高低差補正ガイダンス部138は、努力性呼気残量が500ミリリットル以下にならない場合、
図16に示したように、下顎歯牙列の咬合基準面42の水平基準面40に対する所定の補正仰角θが設定されたミニスプリント46を準備し、ミニスプリント46を下顎歯牙列に装着して努力性呼気残量を肺活量計で測定する診療操作をガイダンスする。
【0251】
また、高低差補正ガイダンス部138は、
図17に示したように、仰角補正角度θの異なる複数種類のミニスプリント46を準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリント46を選択して使用する診療操作をガイダンスする。
【0252】
(前後位置調整ガイダンス部)
前後位置調整ガイダンス部140は,患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスする。
【0253】
即ち、前後位置調整ガイダンス部140は、患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、頭位が後屈位の場合は下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスする。
【0254】
具体的には、前後位置調整ガイダンス部140は、患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、患者の安静脱力時の頭位が前屈位のときは、
図19に示したように、下顎前歯部の舌側歯面にワックス48は、を置いて、前方移動を補助するようにワックス48の厚みを調整する診療操作をガイダンスし、一方、患者の安静脱力時の頭位が後屈位のときは、
図20に示したように、上顎前歯部の舌側歯面にワックス50を置いて、後方移動を補助するようにワックス50の厚みを調整する診療操作をガイダンスする。
【0255】
[マウスピース作成ガイダンス部]
図39のマウスピース作成ガイダンス部128は、まず、上顎模型10に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスする。
【0256】
次に、マウスピース作成ガイダンス部128は、
図21に示したように、最適咬合圧痕部材70を間に挟んで、上顎模型10と下顎模型12を咬合器52に固定して最適咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスする。
【0257】
次に、マウスピース作成ガイダンス部128は、
図22に示したように、最適咬合圧痕部材70を外した咬合器52の上顎模型10にマウスピースパーツ76aを装着し、マウスピースパーツ76aを介した下顎模型12との咬合に基づいてマウスピースパーツ76aの咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕84を付与して
図23に示したマウスピース76を完成させる操作をガイダンスする。
【0258】
[マウスピース微調整ガイダンス部]
マウスピース微調整ガイダンス部130には、
図41に示すように、下顎角位置微調整ガイダンス手段として機能する下顎角位置微調整ガイダンス部142、オトガイ部位置微調整ガイダンス手段として機能するオトガイ部位置微調整ガイダンス部144、及び前後位置微調整ガイダンス手段として機能する前後位置微調整ガイダンス部146の機能が設けられる。
【0259】
(下顎角位置微調整ガイダンス部)
下顎角位置微調整ガイダンス部142は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、
図26(B)に示すように、患者の後頸部20の基礎的筋緊張の亢進無しの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図26(A)の第1調整パターンに示すように、マウスピース76の研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスする。
【0260】
また、下顎角位置微調整ガイダンス部142は、
図27(B)に示すように、患者の後頸部右20−1の基礎的筋緊張の亢進ありの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図27(A)の第2調整パターンの研磨部90−1に示すように、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピース76の厚みを減少させる微調整操作をガイダンスする。
【0261】
また、下顎位置微調整ガイダンス部142は、
図28(B)に示すように、患者の後頸部左20−2の基礎的筋緊張の亢進ありの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図28(A)の研磨部90−2に示すように、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨して、後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピース76の厚みを減少させる微調整操作をガイダンスする。
【0262】
(オトガイ部位置微調整ガイダンス部)
オトガイ部位置微調整ガイダンス部144は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、
図26(B)に示したように、患者の前頸部22の基礎的筋緊張に左右差なしの診断結果が得られた場合は、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図26(A)の第1調整パターンに示すように、マウスピース76の研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスする。
【0263】
また、オトガイ部位置微調整ガイダンス部144は、
図30(B)に示したように、患者の前頸部右22−1の基礎的筋緊張の亢進ありの診断結果が得られた場合、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図30(A)の研磨部92−1に示すように、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピース76の厚みを減少させる微調整操作をガイダンスする。
【0264】
また、オトガイ部位置微調整ガイダンス部144は、
図31(B)に示したように、前頸部左22−2に基礎的筋緊張の亢進ありの診断結果が得られた場合、この診断悔過の画面入力操作に基づき、
図31(A)の研磨部92−2に示すように、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨して、前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるようにマウスピース76の厚みを減少させる微調整操作をガイダンスする。
【0265】
更に、下顎角位置微調整ガイダンス部142とオトガイ部位置微調整ガイダンス部144による後頸部と前頸部の基礎的緊張の亢進の組み合わせによる診断結果の画面入力操作に基づき、
図32〜
図35に示した第6〜第9調整パターンの何れかにおける大臼歯と小臼歯の舌側歯面の各々を研磨して厚みを減少させることにより、後頸部又は前頸部の基礎的筋緊張の左右差をバランスさせる治療操作を、ディスプレイ102の画面表示によりガイダンスする。
【0266】
(前後位置微調整ガイダンス部)
前後位置微調整ガイダンス部146は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、患者の安静脱力時の頭位が前屈位である診断結果が得られた場合は、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図37の研磨部94に示したように、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するようにマウスピース86の厚みを減少させる微調整操作をガイダンスする。
【0267】
また、前後位置微調整ガイダンス部146は、完成したマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した患者の安静時顎位状態で、患者の安静脱力時の頭位が後屈位である診断結果が得られ、この診断結果の画面入力操作に基づき、
図38の盛上げ部96に示したように、上顎前歯部の舌側歯面に位置するマウスピース76の厚みを肉盛りして、下顎の後方移動を補助するようにマウスピース76の厚みを増加させる微調整操作をガイダンスする。
【0268】
[ガイダンス画面]
図39のマウスピース作成支援システムによりディスプレイ102に表示されるガイダンス画面の例を説明すると次のようになる。
【0269】
(メインメニューのガイダンス画面)
図42はメインメニューのガイダンス画面を示した説明図である。
図42に示すように、メインメニューのガイダンス画面148には、治療操作の開始を示すガイダンス150とメニュー選択部152が設けられる。
【0270】
メニュー選択部152には、メインメニュー、顎模型作成、咀嚼時咬合顎位、最適咬合採得、咬合模型作成、マウスピース作成、マウスピース微調整及びツールの操作項目に対応して選択ボタン154,155,156,158,160,162,164,165が設けられている。また、メニュー選択部152には、画面切り替えに使用する前ボタン166と次ボタン168が設けられている。
【0271】
システムの利用者は、メニュー選択部152の選択ボタン154,156,158,160,162,164を上から順番にタッチ操作により選択することで、ガイダンス画面を使用したマウスピース作成のためのガイダンスが行われる。
【0272】
(顎模型作成のガイダンス画面)
図42の選択ボタン154をタッチ操作すると、模型型作成のガイダンス画面に切り替わる。模型型作成のガイダンス画面は、図示しないが、
図42の画面上部のタイトルが「顎模型作成」となり、ガイダンス150の部分に「バイト材を使用して患者の上顎模型と下顎模型を作成する」旨のガイダンスが示される。
【0273】
[咀嚼時咬合顎位のガイダンス画面]
(下顎角とオトガイ部を補正するガイダンス画面)
図43は下顎角とオトガイ部を補正するガイダンス画面を示した説明図であり、
図42の選択ボタン156の操作により「咀嚼時咬合顎位」を選択することで切替え表示される。
【0274】
図43に示すように、下顎角とオトガイ部を補正するガイダンス画面170には、入力部172,174、診断画像176及び診療操作画像178が表示され、
図11(B)に示した診断結果を例にとっている。
【0275】
入力部172は、患者の後頸部の基礎的筋緊張の診断結果を、右のラジオボタンと左のラジオボタンで入力する。
図11(B)の診断結果は、後頸部右に基礎的筋緊張の亢進があることから、右のラジオボタンが操作されており、これに対応して右側に治療操作ガイダンス173が表示される。
【0276】
入力部174は、患者の前頸部の基礎的筋緊張の診断結果を、右のラジオボタンと左のラジオボタンで入力する。
図11(B)の診断結果は、前頸部左に基礎的筋緊張の亢進があることから、左のラジオボタンが操作されており、これに対応して右側に治療操作ガイダンス175が表示される。
【0277】
診断画像176は
図11(B)に示したと同じ画像であり、診療操作画像178は
図11(A)に示した下顎歯牙列と同じ画像である。
【0278】
下顎角とオトガイ部を補正するガイダンス画面170には、これ以外に、
図5〜
図7及び
図10〜
図14の何れかに示した診断結果と診療操作に対応したガイダンス画面が、入力部172,174による診断結果の入力操作に応じて表示される。
【0279】
(高低差を補正するガイダンス画面)
図44は下顎角とオトガイ部の高低差を補正するガイダンス画面を示した説明図であり、
図43のガイダンス画面170の次ボタン168を操作することで切り替えられる。
【0280】
図44に示すように、下顎角とオトガイ部の高低差を補正するガイダンス画面180には、ガイダンス182,184,186,188が表示される。ガイダンス182は、努力性呼気残量の測定操作を表示する。ガイダンス184は、努力性呼気残量の測定値の入力枠を表示する。ガイダンス186は、努力性呼気残量が500ml以下の場合の補正終了を表示する。ガイダンス188は、努力性呼気残量が500mlを超えた場合のミニスプリントを使用した診療操作を表示する。
【0281】
(前後位置調整の前方移動補助のガイダンス画面)
図45は咀嚼時咬合顎位の前方移動を補助するガイダンス画面を示した説明図であり、
図44の次ボタン168の操作で切り替えられる。
【0282】
図45に示すように、前方移動補助のガイダンス画面190−1には、ガイダンス192、入力部194、ガイダンス196−1及び診療操作画面198−1が設けられる。
【0283】
ガイダンス192は、患者の前後姿勢を診断するための診療操作を表示する。入力部194は、安静時顎位の診断結果を入力するもので、前屈位、正中位、後屈位に対応してラジオボタンが配置されている。
【0284】
ここで安静時の診断結果が前屈位であった場合、前屈位のラジオボタンが操作され、これに対応してガイダンス196−1に患者の前方移動を補助するための診療操作が表示され、併せて、診療操作画像198−1が表示される。本実施形態の診療操作画像198−1は、
図19に示した前方移動パターンにおける下顎歯牙列16と同じ画像となる。
【0285】
(前後位置調整の後方移動補助のガイダンス画面)
図46は咀嚼時咬合顎位の後方移動を補助するガイダンス画面を示した説明図であり、
図45の次ボタン168の操作で切り替えられる。
【0286】
図46に示すように、後方移動補助のガイダンス画面190−2には、ガイダンス192、入力部194、ガイダンス196−2及び診療操作画面198−2が設けられる。
【0287】
ガイダンス192と入力部194は
図45と同じである。ここで安静時の診断結果が後屈位であった場合、後屈位のラジオボタンが操作され、これに対応してガイダンス196−2に患者の後方移動を補助するための診療操作が表示され、併せて、診療操作画像198−2が表示される。本実施形態の診療操作画像198−2は、
図20に示した前方移動パターンにおける上顎歯牙列46と同じ画像となる。
【0288】
[最適咬合採得のガイダンス画面]
図47は最適咬合採得のガイダンス画面を示した説明図であり、
図42の選択ボタン158を操作した場合、又は、
図46の次ボタン168を操作した場合に切替えられる。
【0289】
図47に示すように、最適咬合採得のガイダンス画面200には、ガイダンス202と画像204が表示される。ガイダンス202は、バイト材を使用した最適咬合圧痕部材の作成操作が表示される。画像204には、
図21(B)に示したと同じ、作成された最適咬合圧痕部材が表示される。
【0290】
[咬合模型作成のガイダンス画面]
図48は咬合模型作成のガイダンス画面を示した説明図であり、
図42の選択ボタン160を操作した場合、又は、
図47の次ボタン168を操作した場合に切替えられる。
【0291】
図48に示すように、咬合模型作成のガイダンス画面210には、ガイダンス212と画像214が表示される。ガイダンス212は、最適咬合圧痕部材を使用して咬合器によって咬合模型を構築する操作を表示する。画像214には、
図21(A)に示したと同じ、咬合模型を構築した咬合器の画像が表示される。
【0292】
[マウスピース作成のガイダンス画面]
図49はマウスピース作成のガイダンス画面を示した説明図であり、
図42の選択ボタン162を操作した場合、又は、
図47の次ボタン168を操作した場合に切替えられる。
【0293】
図49に示すように、マウスピース作成のガイダンス画面220には、ガイダンス222,224と画像226が表示される。ガイダンス222は、バキュームフォーマ―を使用したマウスピースパーツの作成操作を表示する。
【0294】
ガイダンス224は、咬合器を使用してマウスピースパーツの咬合面に舌顎歯牙列の圧痕を象る操作を表示する。更に、画像226には、
図22に示したと同じ咬合器を用いてマウスピースを速成する画像が表示される。なお、画像226としては、静止画以外に、咬合器を用いてマウスピースを作成する動画を再生表示させるようにしても良い。
【0295】
[マウスピース微調整のガイダンス画像]
(下顎角とオトガイ部に対応したマウスピース微調整のガイダンス画面)
図50は下顎角位置とオトガイ部位置に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図であり、
図42の選択ボタン164の操作、又は、
図49の次ボタン168の操作により切替え表示される。
【0296】
図50に示すように、下顎角とオトガイ部に対応したマウスピース微調整のガイダンス画面230には、入力部232,234、治療操作ガイダンス233,235、診断画像236及び診療操作画像238が表示され、
図32(B)に示した診断結果を例にとっている。
【0297】
入力部232は、患者の後頸部の基礎的筋緊張の診断結果を、右のラジオボタンと左のラジオボタンで入力する。
図32(B)の診断結果は、後頸部右に基礎的筋緊張の亢進があることから、右のラジオボタンが操作されており、これに対応して右側に治療操作ガイダンス233が表示される。
【0298】
入力部234は、患者の前頸部の基礎的筋緊張の診断結果を、右のラジオボタンと左のラジオボタンで入力する。
図32(B)の診断結果は、前頸部左に基礎的筋緊張の亢進があることから、左のラジオボタンが操作されており、これに対応して右側に治療操作ガイダンス235が表示される。
【0299】
診療画像236は
図32(B)に示したと同じ画像であり、診療操作画像238は
図32(A)に示したマウスピース76を装着した上顎歯牙列14の研磨部90−1,92−2を示したと同じ画像である。
【0300】
下顎角とオトガイ部に対応したマウスピース微調整のガイダンス画面230には、これ以外に、
図26〜
図28及び
図31〜
図35の何れかに示した診断結果と診療操作に対応した画面が、入力部232,234による診断結果の入力に応じて表示される。
【0301】
(前後位置調整における前方移動補助のガイダンス画面)
図51は咀嚼時顎位の前方移動補助に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図であり、
図50の次ボタン168の操作により切替え表示される。
【0302】
図51に示すように、前方移動補助に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面240−1には、ガイダンス242、入力部244−1、ガイダンス246−1及び診療操作画像248−1が表示される。
【0303】
ガイダンス242には、患者の前後姿勢を診断するための診療操作が表示される。入力部244−1は、安静時顎位の診断結果を入力するもので、前屈位、正中位、後屈位に対応してラジオボタンが配置されている。
【0304】
ここで、安静時の診断結果が前屈位であった場合、ガイダンス244−1の中の前屈位のラジオボタンが操作され、これに対応してガイダンス246−1に患者の前方移動を補助するための診療操作が表示され、併せて、診療操作画像248−1が表示される。本実施形態の診療操作画像248−1は、
図37に示した前方移動パターンにおける上顎歯牙列14に装着したマウスピース76の研磨部94を示す画像と同じ画像となる。
【0305】
(前後位置調整の後方移動補助のガイダンス画面)
図52は咀嚼時顎位の後方移動補助に対応してマウスピースを微調整するガイダンス画面を示した説明図であり、
図50の次ボタン168の操作により切替え表示される。
【0306】
図52に示すように、後方移動補助のガイダンス画面240−2には、ガイダンス242、入力部244−2、ガイダンス246−2及び診療操作画像248−2が表示される。
【0307】
ガイダンス242と入力部244−2は
図51と同じである。ここで、安静時の診断結果が後屈位であった場合、入力部244−2の中の後屈位のラジオボタンが操作され、これに対応してガイダンス246−2に患者の後方移動を補助するための診療操作が表示され、併せて、診療操作画像248−2が表示される。本実施形態の診療操作画像248−2は、
図38に示した後方移動パターンにおける上顎歯牙列14に装着したマウスピース76の盛上げ部96を示す画像と同じ画像となる。
【0308】
なお、
図39の実施形態にあっては、患者の後頸部及び前頸部における基礎的筋緊張の亢進の有無を、歯科医師等の利用者により診断しているが、基礎的筋緊張の亢進の有無を検出する適宜のセンサーの使用により自動的に検出して制御プロセッサ100に入力するようにしても良い。
【0309】
[ツールのガイダンス画面]
図53はツールガイダンス部により表示されるガイダンス画面を示した説明図であり、メニュー選択部152のツールを示す選択ボタン165をタッチ操作することで表示される。
【0310】
図53に示すように、ツールのガイダンス画面250には、姿勢測定器選択ボタン252、姿勢測定器ガイダンス254、姿勢測定装置画像256、筋電計選択ボタン258、筋電計ガイダンス260及び筋電計画像262が表示される。
【0311】
姿勢測定器選択ボタン252をタッチ操作すると
図54に示す姿勢測定器のガイダンス画面270に切り替わり、筋電計選択ボタン258をタッチ操作すると
図55に示す筋電計のガイダンス画面280に切り替わる。
【0312】
(姿勢測定器のガイダンス画面)
図54に示すように、姿勢測定器のガイダンス画面270には、ガイダンス272,治療前姿勢入力部274及び治療後姿勢入力部276が表示される。ガイダンス272は、姿勢測定器を使用して、治療前と治療前の患者の姿勢を測定する旨が表示される。
【0313】
本実施形態で使用する姿勢測定器としては、患者を測定台に起立させた状態で、例えば前面又は背面と右側面又は左側面を専用カメラで撮像して画面表示し、姿勢を評価する。
【0314】
治療前姿勢入力部274は治療前の測定結果をタッチ操作により入力して設定するものであり、患者の背骨を通る中心軸につき、右傾斜、左傾斜、垂直の入力ボタン274−1,274−2,274−3が設けられ、また、患者の肩の向きにつき、右肩下がり、左肩下がり、水平の入力ボタン274−4,274−5,274−6が設けられている。
【0315】
ここで、患者の中心軸は後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスで決まり、患者の肩の向きは前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスで決まる。例えば
図43のガイダンス画面170のガイダンス画像176に示すように、後頸部右に基礎的筋緊張の亢進があると、「中心軸が右傾斜」との測定結果が得られ、入力ボタン274−1をタッチ操作することで、斜線のように設定色が変化する。また、前頸部左に基礎的筋緊張の亢進があると、「右肩が下がる」との測定結果が得られ、入力ボタン274−4をタッチ操作することで、斜線のように設定色が変化する。
【0316】
治療後姿勢入力部276は、
図39のマウスピース作成支援システムのガイダンスに従って作成されたマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した状態で、姿勢測定器により姿勢を測定した結果が入力される。
【0317】
この治療後の姿勢測定器による測定結果は、マウスピースの装着により後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスがとれていることから、「中心軸が垂直」との測定結果が得られ、入力ボタン276−3をタッチ操作することで、斜線のように設定色が変化する。
【0318】
また、マウスピースの装着により頸部の基礎的筋緊張の左右バランスがとれていることから、「肩が水平」との測定結果が得られ、入力ボタン276−6をタッチ操作することで、斜線のように設定色が変化する。
【0319】
このように画面入力された治療前と治療後の姿勢測定結果は、治療データとしてメモリに記憶され、必要に応じて読出し表示することができる。
【0320】
更に、姿勢測定器による患者の姿勢の測定評価は、マウスピースの使用中において、例えば3ケ月に1回というように定期的に行い、正しい姿勢からずれが生じた場合には、マウスピースの微調整をガイダンスに従って行うようにする。
【0321】
(筋電計のガイダンス画面)
図55に示すように、筋電計のガイダンス画面280には、ガイダンス282とガイダンス画像284,286が表示される。筋電計は後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定し、触診による診断結果の確認に利用し、これに基づき
図43又は
図50に示したガイダンス画面170,230において、診断結果を画面操作によりに入力することになる。
【0322】
ガイダンス282には筋電計の電極の患者に対する貼り付けを表示する。筋電計の電極は、患者の後頸部の左右及び前頸部の左右の4箇所に張り付け、4箇所の基礎的筋緊張の度合を同時に測定することが望ましい。
【0323】
この場合、電極を正しい位置に張り付けることが重要であることから、ガイダンス画像284には患者の後頸部の左右2箇所の電極貼り付け位置が表示され、また、ガイダンス画像286には患者の前頸部の左右2箇所の電極貼り付け位置が表示される。ここで、ガイダンス画像284,286により表示される筋電計の電極を貼り付ける位置は、患者の後頚部については後頚部筋群とし、前頸部について胸鎖乳突筋・斜角筋群としている。
【0324】
[本発明の変形例]
本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0325】
10:上顎模型
12:下顎模型
14:上顎歯牙列
16:下顎歯牙列
18:患者
20:後頸部
20−1:後頸部右
20−2:後頸部左
22:前頸部
22−1:前頸部右
22−2:前頸部左
24−1,26−1,28−1,30−1:中切歯
24−2,26−2,28−2,30−2:側切歯
24−3,26−3,28−3,30−3:犬歯
24−4,26−4,28−4,30−4:第1小臼歯
24−5,26−5,28−5,30−5:第2小臼歯
24−6,26−6,28−6,30−6:第1大臼歯
24−7,26−7,28−7,30−7:第2大臼歯
32−1,32−2,34−1,34−2,48,50:ワックス
36:スピーのカーブ
40:水平基準面
42:咬合基準面
46:ミニスプリント
52:咬合器
54:架台
55:支持アーム
56:可動アーム
58:軸
60:位置決めピン
62:固定ツマミ
64:ストッパ部
66:スプリング
68:調整ツマミ
70:最適咬合圧痕部材
72,82:上顎歯牙列圧痕
74,84:下側歯牙列圧痕
76:マウスピース
78:マウスピース本体
80:上部開口
90−1,90−2,92−1,92−2,94:研磨部
96:盛上げ部
100:制御プロセッサ
102:ディスプレイ
104:キーボード
106:マウス
108:キーパッド
110:CPU
112:バス
114:制御ロジック
116:ROM
118:RAM
120:顎模型作成イダンス部
122:咀嚼時咬合顎位ガイダンス部
124:最適咬合採得ガイダンス部
126:咬合模型作成ガイダンス部
128:マウスピース作成ガイダンス部
130:マウスピース微調整ガイダンス部
131:ツールガイダンス
132:画面記憶部
134:下顎角位置補正ガイダンス部
136:オトガイ部位置補正ガイダンス部
138:高低差補正ガイダンス部
140:前後位置調整ガイダンス部
142:下顎角位置微調整ガイダンス部
144:オトガイ部位置微調整ガイダンス部
146:前後位置微調整ガイダンス部
【手続補正書】
【提出日】2018年9月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
請求項2記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース本体は、ソフトタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項3】
請求項2記載のマウスピースの作成方法に於いて、前記マウスピース本体は、ハードタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピースの作成方法。
【請求項4】
患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、前記最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
前記最適咬合採得ガイダンス手段の前記ガイダンスに従って作成した前記最適咬合圧痕部材を、前記上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合模型が構築された前記咬合器により、前記最適化された咀嚼時咬合顎位となるように前記上顎模型の歯牙列圧痕と前記下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
前記マウスピース作成ガイダンス手段で作成された前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、前記患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように前記マウスピースを微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項5】
請求項4記載のマイスピースの作成支援システムに於いて、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者前頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスと前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて前記下顎角と前記オトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、
前記高低差補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段と、
が設けられたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項6】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面に前記ワックスを置かないようする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項7】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項8】
請求項6記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、前記努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項9】
請求項8記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように前記仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項10】
請求項8載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、前記ミニスプリントを前記下顎歯牙列に装着して前記努力性呼気残量を前記肺活量計で測定する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項11】
請求項10記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項12】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は
前記患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項13】
請求項12記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、前記頭位が後屈位の場合は前記下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項14】
請求項13記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項15】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース作成ガイダンス手段は、
前記上顎模型に基づいて前記上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を間に挟んで、前記顎模型と前記下顎模型を咬合器に固定して前記最適咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を外した前記咬合器の前記上顎模型に前記マウスピースパーツを装着し、前記マウスピースパーツを介した前記下顎模型との咬合に基づいて前記マウスピースパーツの咬合面に前記下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする、
ことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項16】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項17】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作前記前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項18】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを肉盛りして、前記下顎の後方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れかに記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、前記マウスピースの厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項20】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
更に、前記マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられたことを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項21】
請求項20記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、前記患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスすることを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項22】
患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
前記固定部と一体に設けられ、前記第1大臼歯の咬合面に嵌合されて、前記第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として所定の仰角補正角度を設定する角度補正面と、
を備えたことを特徴とするミニスプリント。
【請求項23】
請求項22記載のミニスプリントに於いて、前記角度補正面による前記仰角補正角度の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリントを選択して前記固定部により前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定されることを特徴とするミニスプリント。
【手続補正書】
【提出日】2018年9月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
請求項1記載のマウスピースに於いて、前記マウスピース本体は、ソフトタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピース。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
請求項1記載のマウスピースに於いて、前記マウスピース本体は、ハードタイプの素材で構成されたことを特徴とするマウスピース。
【手続補正書】
【提出日】2018年12月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成され、且つ、前記利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように安静時顎位における前記マウスピース本体の舌側歯面の厚みが調整されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
請求項1記載のマウスピースに於いて、前記最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕の形成は、前記利用者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着され、前記第1大臼歯の咬合面に嵌合された状態で、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定された角度補正面を有するミニスプリントの使用を含む所定の補正操作により構成されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項3】
請求項1記載のマウスピースに於いて、前記マウスピース本体は、
前記咀嚼時咬合顎位及び前記安静時顎位の最適化を確認するためのソフトタイプと、
前記舌側歯面の厚みが調整されて前記最適化が確認された後のソフトタイプと同等の形状となるように作成されたハードタイプと、
を備えたことを特徴とするマウスピース。
【請求項4】
患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、前記最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
前記最適咬合採得ガイダンス手段の前記ガイダンスに従って作成した前記最適咬合圧痕部材を、前記上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合模型が構築された前記咬合器により、前記最適化された咀嚼時咬合顎位となるように前記上顎模型の歯牙列圧痕と前記下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
前記マウスピース作成ガイダンス手段で作成された前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、前記患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように前記マウスピースの所定の舌側歯面を微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項5】
請求項4記載のマイスピースの作成支援システムに於いて、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、
ディスプレイの画面操作により入力された前記患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者前頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスと前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて前記下顎角と前記オトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、
前記高低差補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段と、
が設けられたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項6】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面に前記ワックスを置かないようする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項7】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項8】
請求項6記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、前記努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項9】
請求項8記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように前記仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項10】
請求項8記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、前記ミニスプリントを前記下顎歯牙列に装着して前記努力性呼気残量を前記肺活量計で測定する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項11】
請求項10記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の補正仰角を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項12】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は
前記患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項13】
請求項12記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、前記頭位が後屈位の場合は前記下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項14】
請求項13記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項15】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース作成ガイダンス手段は、
前記上顎模型に基づいて前記上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を間に挟んで、前記顎模型と前記下顎模型を咬合器に固定して前記最適化された咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を外した前記咬合器の前記上顎模型に前記マウスピースパーツを装着し、前記マウスピースパーツを介した前記下顎模型との咬合に基づいて前記マウスピースパーツの咬合面に前記下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする、
ことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項16】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項17】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作前記前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項18】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを肉盛りして、前記下顎の後方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項19】
請求項16乃至18の何れかに記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、前記マウスピースの厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項20】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
更に、前記マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられたことを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項21】
請求項20記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、前記患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスすることを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項22】
患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
前記固定部と一体に設けられ、前記第1大臼歯の咬合面に嵌合された状態で、前記第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定された角度補正面と、
を備え、
前記補正仰角は、下顎歯牙列に装着された状態で、努力性呼気残量を低下させる所定の角度であることを特徴とするミニスプリント。
【請求項23】
請求項22記載のミニスプリントに於いて、前記角度補正面による前記補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の補正仰角を持つミニスプリントを選択して前記固定部により前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定されることを特徴とするミニスプリント。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、全身の基礎的筋緊張のバランスを最適化するために下顎位置を正しい位置に補正するマウスピース、マウスピースの作成支援システム
及びミニスプリント
に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
マウスピース及びミニスプリントは人工物であり、自然物ではなく、人の上顎
歯牙列又は下顎歯牙列に装着される構造物である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明は、歯科診療、加齢、先天性等に起因した下顎位の変化とそれに応じた全身の基礎的筋緊張のバランスの変化との因果関係を明確にし、普遍性を持ち再現性を持つものであることを立証しつつ、線維筋痛症等の不定愁訴による全身の疼痛症状を歯牙の侵襲を伴わずに比較的安価に解消可能とするマウスピース、マウスピースの作成支援システム
及びミニスプリント
を提供することを目的とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
(第1発明:マウスピース)
本発明は、
利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、
利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる
ように最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成され
、且つ、利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように安静時顎位におけるマウスピース本体の舌側歯面の厚みが調整されたことを特徴とする。
ここで、最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕の形成は、利用者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着され、第1大臼歯の咬合面に嵌合された状態で、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定された角度補正面を有するミニスプリントの使用を含む所定の補正操作により構成される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(マウスピースの材質)
マウスピース本体は、
咀嚼時咬合顎位及び安静時顎位の最適化を確認するためのソフトタイプ
と、舌側歯面の厚みが調整されて前記最適化が確認された後のソフトタイプと同等の形状となるように作成されたハードタイプ
と、を備える。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
(第2発明:マウスピースの作成支援システム)
本発明の別の形態にあっては、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
最適咬合採得ガイダンス手段のガイダンスに従って作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型の歯牙列圧痕と下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
マウスピース作成ガイダンス手段で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるようにマウスピース
の所定の舌側歯面を微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
(ミニスプリントの選択)
高低差補正ガイダンス手段は、
補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の
補正仰角を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスする。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
(マウスピース作成ガイダンス)
マウスピース作成ガイダンス手段は、
上顎模型に基づいて上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、最適咬合圧痕部材を間に挟んで、上顎模型と下顎模型を咬合器に固定して最適
化された咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、最適咬合圧痕部材を外した咬合器の上顎模型にマウスピースパーツを装着し、マウスピースパーツを介した下顎模型との咬合に基づいてマウスピースパーツの咬合面に下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
(第3発明:ミニスプリント)
本発明は、患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1小臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
固定部と一体に設けられ、第1大臼歯の咬合面に嵌合され
た状態で、第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として
、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の
補正仰角が設定された角度補正面と、
を備え
、
補正仰角は、下顎歯牙列に装着された状態で、努力性呼気残量を低下させる所定の角度であることを特徴とする。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
(仰角の異なるミニスプリント)
角度補正面による
補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の
補正仰角を持つミニスプリントを選択して固定部により患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定される。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
(第2発明:マイスピースの作成支援システムの効果)
本発明は、患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、最適咬合採得ガイダンス
手段のガイダンスに従って作成した最適咬合圧痕部材を、上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型を構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス
手段と、咀嚼時咬合模型が構築された咬合器により、最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎模型の歯牙列圧痕と下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、マウスピース作成ガイダンス手段で作成されたマウスピースを装着した患者の安静時顎位状態で、患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるようにマウスピースを微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段とを備えたため、咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従った診療操作により患者の全身の基礎的筋緊張がバランスして最適化された咀嚼時咬合顎位が構築され、続いて最適咬合採得ガイダンス
手段のガイダンスに従って最適咬合圧痕部材が作成され、続いて、マウスピース作成ガイダンス手段のガイダンスに従って最適化された咀嚼時咬合顎位となるように上顎歯型の歯牙列圧痕と下顎歯型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースが作成され、更に、マウスピース微調整ガイダンス手段のガイダンスに従ったマウスピースの微調整により最適化された安静時顎位が構築され、このようにして作成されたマウスピースを患者の上顎歯牙列に装着した状態で咀嚼時咬合状態又は安静時顎位状態を構築すると、マウスピースの下面の下顎歯牙列圧痕に患者の下顎歯牙列が咬合して位置決めされることで、下顎が正しい位置となるように咀嚼時咬合顎位又は安静時顎位が適正化され、後頸部の基礎的筋緊張の左右バランスと前頸部の基礎的筋緊張の左右バランスが同等となり、全身の基礎的筋緊張がバランスし、その結果、線維筋痛症等の不定愁訴に起因した全身の疼痛症状を消失あるいは大幅に軽減させることができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
ここで、努力性呼気残量とは、最大吸気の後に患者の呼息筋
と吸息筋の双方を脱力させた際に、肺内に残存する空気の量をさし、肺活量計を用いて測定する。通常は脱力するだけで大部分の空気が肺内より呼出されるのが理想的な呼吸バランスとされている。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0251
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0251】
また、高低差補正ガイダンス部138は、
図17に示したように、
補正仰角θの異なる複数種類のミニスプリント46を準備し、その中から所定の仰角補正の角度を持つミニスプリント46を選択して使用する診療操作をガイダンスする。
【手続補正書】
【提出日】2019年1月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成され、且つ、前記利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように安静時顎位における前記マウスピース本体の舌側歯面の厚みが調整されたことを特徴とするマウスピース。
【請求項2】
請求項1記載のマウスピースに於いて、前記マウスピース本体は、
前記咀嚼時咬合顎位及び前記安静時顎位の最適化を確認するためのソフトタイプと、
前記舌側歯面の厚みが調整されて前記最適化が確認された後のソフトタイプと同等の形状となるように作成されたハードタイプと、
を備えたことを特徴とするマウスピース。
【請求項3】
患者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記患者の歯牙列が配置された上顎模型と下顎模型の作成をガイダンスする顎模型ガイダンス手段と、
前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築する診療操作をガイダンスする咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段のガイダンスに従って前記患者に最適化された咀嚼時咬合顎位を構築した状態で、前記最適化された咀嚼時咬合顎位の咬合歯牙列が圧痕された最適咬合圧痕部材の作成をガイダンスする最適咬合採得ガイダンス手段と、
前記最適咬合採得ガイダンス手段の前記ガイダンスに従って作成した前記最適咬合圧痕部材を、前記上顎模型と下顎模型の歯牙列の間に挟み込んだ状態で咬合器に固定して最適化された咀嚼時咬合模型の構築する操作をガイダンスする咬合模型作成ガイダンス手段と、
前記咀嚼時咬合模型が構築された前記咬合器により、前記最適化された咀嚼時咬合顎位となるように前記上顎模型の歯牙列圧痕と前記下顎模型の歯牙列圧痕が形成された略均一な厚みを有するマウスピースの作成をガイダンスするマウスピース作成ガイダンス手段と、
前記マウスピース作成ガイダンス手段で作成された前記マウスピースを装着した前記患者の安静時顎位状態で、前記患者における全身の基礎的筋緊張がバランスして最適安静時顎位が得られるように前記マウスピースの所定の舌側歯面を微調整する診療操作をガイダンスするマウスピース微調整ガイダンス手段と、
を備えたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項4】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記咀嚼時咬合顎位ガイダンス手段は、
ディスプレイの画面操作により入力された前記患者の後頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いて下顎角の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスする下顎角位置補正ガイダンス手段と、
前記ディスプレイの画面操作により入力された前記患者前頚部の筋緊張亢進に基づき、前記患者の舌−顎位反射を用いてオトガイ部の左右位置を最適化された位置に補正する診療操作をガイダンスするオトガイ部位置補正ガイダンス手段と、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスと前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で、患者の咬筋−顎位反射を用いて前記下顎角と前記オトガイ部の高低差を補正する診療操作をガイダンスする高低差補正ガイダンス手段と、
前記高低差補正ガイダンス手段の前記ガイダンスに従った補正が済んだ状態で下顎位の前後位置を最適化された位置に調整する診療操作をガイダンスする前後位置調整ガイダンス手段と、
が設けられたことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項5】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記下顎角位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の大臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎大臼歯の舌側歯面に前記ワックスを置かないようする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項6】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記オトガイ部位置補正ガイダンス手段は、
前記ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎右の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、下顎左の小臼歯舌側歯面にワックスを置いて、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、下顎小臼歯の舌側歯面にワックスを置かないようにする診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項7】
請求項5記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記高低差補正ガイダンス手段は、両側の上顎第1大臼歯の咬合面にワックスを置いて咀嚼時顎位を構成し、咬筋−顎位反射を誘発したのちに努力性呼気残量を肺活量計で測定し、前記努力性呼気残量が所定値以下となるように下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項8】
請求項7記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記努力性呼気残量が500ミリリットル以下となるように前記仰角を補正する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項9】
請求項7記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定されたミニスプリントを準備し、前記ミニスプリントを前記下顎歯牙列に装着して前記努力性呼気残量を前記肺活量計で測定する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項10】
請求項9記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記高低差補正ガイダンス手段は、前記補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントを準備し、その中から所定の補正仰角を持つミニスプリントを選択して使用する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項11】
請求項4記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は
前記患者の安静脱力時の頭位が自己の視線に対し正中位を保つように咀嚼時咬合顎位の前後の位置に微調整を加える診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項12】
請求項11記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は下顎位を前方に移動させ、前記頭位が後屈位の場合は前記下顎位を後方へ移動させる診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項13】
請求項12記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記前後位置調整ガイダンス手段は、前記患者が自分自身で前後の位置を微調整することができない場合、
前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位の場合は、下顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、前方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスし、
前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位の場合は、上顎前歯部の舌側歯面にワックスを置いて、後方移動を補助するように前記ワックスの厚みを調整する診療操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項14】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース作成ガイダンス手段は、
前記上顎模型に基づいて前記上顎歯牙列が象られた略均一な厚みをもつマウスピースパーツの作成をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を間に挟んで、前記上顎模型と前記下顎模型を咬合器に固定して前記最適化された咀嚼時咬合顎位を再現させる操作をガイダンスし、
次に、前記最適咬合圧痕部材を外した前記咬合器の前記上顎模型に前記マウスピースパーツを装着し、前記マウスピースパーツを介した前記下顎模型との咬合に基づいて前記マウスピースパーツの咬合面に前記下顎模型の歯牙列圧痕を付与してマウスピースを完成させる操作をガイダンスする、
ことを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項15】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により後頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部左側の前記基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の大臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記後頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記後頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項16】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前頸部右側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎右の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の左側の基礎的筋緊張の亢進が入力された場合は、上顎左の小臼歯舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、前記前頸部の基礎的筋緊張の左右差がなくなるように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記前頸部の基礎的筋緊張の亢進無しが入力されて左右差がない場合は、前記マウスピースの研磨による微調整は行わない微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項17】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、
完成した前記マウスピースを前記患者の上顎歯牙列に装着した前記患者の安静時顎位状態で、
ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が前屈位であることが入力の場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを研磨して、下顎の前方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを減少させる微調整操作をガイダンスし、
前記ディスプレイの画面操作により前記患者の安静脱力時の頭位が後屈位であることが入力された場合は、上顎前歯部の舌側歯面に位置する前記マウスピースの厚みを肉盛りして、前記下顎の後方移動を補助するように前記マウスピースの厚みを増加させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項18】
請求項15乃至17の何れかに記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記マウスピース微調整ガイダンス手段は、前記マウスピースの厚みをミクロンオーダーの単位で変化させる微調整操作をガイダンスすることを特徴とするマウスピースの作成支援システム。
【請求項19】
請求項3記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、
更に、前記マウスピースの作成するための治療操作に使用する所定のツールをガイダンスするツールガイダンス手段が設けられたことを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項20】
請求項19記載のマウスピースの作成支援システムに於いて、前記ツールガイダンス手段は、患者の姿勢を測定する姿勢測定器と、前記患者の後頸部及び前頸部の基礎的筋緊張の亢進を測定する筋電計をガイダンスすることを特徴とするマウスピース作成支援システム。
【請求項21】
患者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせる最適化された咀嚼時咬合顎位の構築に使用されるミニスプリントであって、
前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて着脱自在に装着固定される固定部と、
前記固定部と一体に設けられ、前記第1大臼歯の咬合面に嵌合された状態で、前記第1大臼歯の所定の頬側咬頭を中心として、下顎歯牙列の咬合基準面の水平基準面に対する所定の補正仰角が設定された角度補正面と、
を備え、
前記補正仰角は、下顎歯牙列に装着された状態で、努力性呼気残量を低下させる所定の角度であることを特徴とするミニスプリント。
【請求項22】
請求項21記載のミニスプリントに於いて、前記角度補正面による前記補正仰角の異なる複数種類のミニスプリントが準備されており、その中から所定の補正仰角を持つミニスプリントを選択して前記固定部により前記患者の下顎歯牙列における少なくとも第2小臼歯から第1大臼歯にかけて装着固定されることを特徴とするミニスプリント。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
(第1発明:マウスピース)
本発明は、利用者の上顎歯牙列に着脱自在に装着されるマウスピースであって、
略均一な厚みを有するマウスピース本体の咬合面に、利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように最適化された咀嚼時咬合顎位における下顎歯牙列の歯痕が形成され、且つ、利用者の全身の基礎的筋緊張をバランスさせるように安静時顎位におけるマウスピース本体の舌側歯面の厚みが調整されたことを特徴とする。